説明

熱分解装置

【課題】 シンプルな装置構成で、炭化物の歩留まり及び性状を良好にする。
【解決手段】 内筒27と外筒28からなり内外筒間に加熱流路29を形成したキルン炉本体26を、軸心方向一端側より他端側が低くなるよう傾斜させて回転駆動可能に横置きする。キルン炉本体26の軸心方向他端側に、分離室30を、内筒27内と加熱流路29の双方に連通させて設ける。分離室30より加熱流路29に流入する熱分解ガス18へ空気32を供給するための空気供給手段31を備えて熱分解装置を形成する。内筒27内に供給される廃棄物11を熱分解処理することで生じる熱分解ガス18を、分離室30で炭化物19と分離した後、加熱流路29へ流入させて、空気供給手段31より供給される空気により燃焼させ、発生する高温の燃焼ガス33を加熱流路29に流通させることで、内筒27内の廃棄物11の間接加熱による熱分解処理を行なわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物、産業廃棄物やバイオマス等の廃棄物を熱分解処理して熱分解ガスと炭化物を発生させて炭化物を回収すると共に、上記熱分解ガスを燃料として上記廃棄物の熱分解処理を行なうための熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物の処理システムのうち、廃棄物を焼却炉で燃焼するようにした燃焼方式に代るものとして、近年では、廃棄物を低酸素雰囲気で加熱することにより熱分解処理して、可燃性の熱分解ガスと、熱分解残渣としての炭化物(チャー)及び灰分を発生させ、該熱分解ガスと熱分解残渣を溶融炉へ導き、少ない空気量(たとえば、空気比1.3程度)で高温にして燃焼させ、溶融スラグとして取り出すようにし、更に排ガスは排ガス処理装置で処理して大気へ放出するようにした廃棄物の熱分解ガス化溶融設備や、上記熱分解ガスは燃焼炉で燃焼させた後、排ガス処理を施してから大気へ放出させるようにし、一方、熱分解残渣は、選別、粉砕をして、燃料等として利用可能な炭化物を回収するようにした廃棄物の炭化処理設備(熱分解ガス化設備)が開発され、実用化されている。
【0003】
上記廃棄物の熱分解処理を実施するための熱分解装置としては、従来、内熱(部分燃焼)方式のものと、外熱(間接加熱)方式のものが知られている。
【0004】
図4は内熱方式の熱分解装置の一例の概略を示すもので、回転駆動可能に横置きした熱分解炉1の出口側に設けた分離室2に、バーナ3を取り付け、該バーナ3に、補助燃料供給ライン4を接続して、プロパン等の補助燃料5を供給するようにすると共に、バーナ3に着火用のパイロットバーナ6を取り付け、又、バーナ3に空気供給ライン7を接続して空気8を供給し、バーナ3で補助燃料5を燃焼させて温風を熱分解炉1内へ送給させるようにし、投入ホッパ9から投入されて給じん機(スクリューコンベヤ)10で供給される廃棄物11の加熱に供した後、熱分解ガス取出部12より熱分解ガス取出ライン13へ取り出すようにしてある。14は補助燃料供給ライン4の途中に設けた流量調整弁、15は空気供給ライン7の途中に設けた流量調整弁、16はガス温度を調整するために空気8を導入させる希釈空気ラインである。
【0005】
又、図5は外熱方式の熱分解装置の一例の概略を示すもので、入口側よりも出口側が約3度低くなるように傾斜させて横置きさせたロータリーキルン型の熱分解炉17の入口側に、給じん機(スクリューコンベヤ)10を設置して、投入ホッパ9からの廃棄物11を上記給じん機10で熱分解炉17内に供給するようにし、一方、出口側に、熱分解ガス18と炭化物(熱分解残留物)19とを分離する分離室20を設け、更に、熱分解炉17の外側に、高温ガス21を流通させる加熱流路22を設け、該加熱流路22内へ熱分解炉17の出口側から入口側へ高温ガス21を流通させることにより、熱分解炉17内の廃棄物11を間接加熱して熱分解させ、発生した熱分解ガス18と炭化物19は上記分離室20内で互いに分離させた後、熱分解ガス18は分離室20の頂部の熱分解ガス取出ライン23を通して取り出すようにしてある。24は回転継手、25は回転シールプレートである(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3738504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、一般的に、上記図4に示した如き内熱方式の熱分解装置は、構造が簡単で装置の小型化に有利であるが、廃棄物を部分燃焼させるため、回収される炭化物の歩留まりが低下し、性状が悪化する傾向がある。又、回収される熱分解ガスには燃焼ガスが混入するため、ガスの成分がよくなく、熱量も低くなる傾向がある。
【0008】
一方、図5に示した如き外熱方式の熱分解装置は、炭化物の性状と歩留まりはよいが、熱分解炉の構造及びシステムが複雑になる。すなわち、外熱方式の熱分解装置は、熱分解炉17で発生する可燃性の熱分解ガス18と、加熱流路22を流通させる高温ガスとの接触を完全に遮断できる構造とする必要があるため、回転部分と固定部分との間を気密にシールするためのシール部が多くて、構造が複雑化しているというのが実状である。
【0009】
又、外熱方式の熱分解装置は、加熱流路22へ流通させる高温ガス21を発生させるための熱風発生炉が別途必要になり、更に、該熱風発生炉で高温ガス21を発生させるための燃料として上記熱分解ガス18を使用する場合には、熱分解ガス取出ライン23上に図示しない熱分解ガスファンを設ける必要が生じるが、この熱分解ガス取出ライン上の熱分解ガスファンには、上記熱分解ガス18中のタール分やダスト分の付着による動作不良や異常振動発生への対策も必要とされる。しかし、このような対策を講じても上記熱分解取出ライン23上の熱分解ガスファンやバルブに対する上記タール分やダスト分の付着を完全に防止することは難しいというのが実状である。
【0010】
そこで、本発明は、原料の熱分解処理により生じる炭化物を、従来の外熱方式の熱分解装置と同等の性状と歩留まりで回収でき、しかも、従来の外熱方式の熱分解装置に比して装置構成をよりシンプルなものとすることができる熱分解装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、内筒と外筒とからなる二重筒構造として内外筒間に加熱流路を形成してなるキルン炉本体を回転駆動可能に横置きし、上記キルン炉本体の軸心方向一端側に、上記内筒内へ原料を供給するための原料供給装置を設けると共に、上記キルン炉本体の他端側に、上記内筒内における原料の熱分解により発生する熱分解ガスと炭化物を分離するための分離室を設けて、該分離室を上記内筒内と加熱流路に連通させて熱分解ガスを加熱流路に流入させるようにし、更に、上記加熱流路に空気を供給して熱分解ガスを燃焼させるようにするための空気供給手段を備えてなる構成とする。
【0012】
又、上記構成において、加熱流路のガス流通方向下流側に誘引通風機を設けて、該誘引通風機の誘引作用により、分離室内の熱分解ガスを加熱流路へ流入させることができるようにした構成とする。
【0013】
更に、上記構成において、加熱流路と誘引通風機との間に2次燃焼室を設け、該2次燃焼室でダイオキシン類を分解可能な温度及びガスの滞留時間を確保できるようにした構成とする。
【0014】
更に又、上記構成において、分離室と2次燃焼室をダンパを備えた熱分解ガスバイパスラインを介して接続し、且つ加熱流路への空気供給手段による空気供給個所の近傍に温度コントローラを設けて、熱分解ガスを空気供給手段より供給される空気で燃焼させることで発生する燃焼ガスの温度に応じて上記ダンパの開閉量を制御するようにした構成とする。
【0015】
上述の各構成において、誘引通風機の上流側にダンパを設け、且つ分離室に圧力コントローラを備えて、該圧力コントローラにより上記ダンパの開閉量を調整して上記分離室内の圧力が外気の圧力に対して常に所要圧力低くなるようにした構成とする。
【0016】
更に、上述の各構成において、加熱流路への空気供給手段による空気供給個所の近傍に、パイロットバーナを設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱分解装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)内筒と外筒とからなる二重筒構造として内外筒間に加熱流路を形成してなるキルン炉本体を回転駆動可能に横置きし、上記キルン炉本体の軸心方向一端側に、上記内筒内へ原料を供給するための原料供給装置を設けると共に、上記キルン炉本体の他端側に、上記内筒内における原料の熱分解により発生する熱分解ガスと炭化物を分離するための分離室を設けて、該分離室を上記内筒内と加熱流路に連通させて熱分解ガスを加熱流路に流入させるようにし、更に、上記加熱流路に空気を供給して熱分解ガスを燃焼させるようにするための空気供給手段を備えてなる構成としてあるので、分離室より加熱流路へ流入する熱分解ガスを空気供給手段より供給する空気で燃焼させることで生じる燃焼ガスを加熱流路を流すことで、キルン炉本体の内筒内へ供給する原料を、上記熱分解ガスの燃焼ガスの保有する熱により間接加熱して熱分解処理することができる。この際、燃焼させるのは、熱分解ガスのみであるため、原料の熱分解処理により発生させる炭化物の歩留まり及び性状を、従来の外熱式の熱分解装置における炭化物の歩留まり及び性状と同等とすることができる。
(2)更に、上記キルン炉本体の内筒の内側と、内外筒間の加熱流路は、分離室を介して連通させてあるため、該内筒と加熱流路との間で厳密な気密性を保つ必要をなくすことができる。このため、従来の外熱式の熱分解装置に比して、回転シール部の数を削減できて、装置構成をよりシンプルなものとすることが可能になる。
(3)加熱流路のガス流通方向下流側に誘引通風機を設けて、該誘引通風機の誘引作用により、分離室内の熱分解ガスを加熱流路へ流入させることができるようにした構成とすることにより、内筒内における原料の熱分解処理により発生する熱分解ガスは、分離室で炭化物と分離させた後、上記誘引通風機の誘引作用により、キルン炉本体の加熱流路へ流入させることができる。このため、上記熱分解ガスを外部へ取り出すための熱分解ガスファンを備えた熱分解ガス取出ラインを不要にできることから、従来、熱分解ガスファンに熱分解ガス中のタール分が付着して動作不良や異常振動が生じる等の虞を解消できる。
(4)加熱流路と誘引通風機との間に2次燃焼室を設け、該2次燃焼室でダイオキシン類を分解可能な温度及びガスの滞留時間を確保できるようにした構成とすることにより、上記加熱流路を流通させることにより原料の熱分解処理用の熱源に供した後の熱分解ガスの燃焼ガス中に残存する未燃分を完全燃焼させることができると共に、上記熱分解ガスの燃焼ガスに由来するダイオキシン類が外部へ放出される虞を防止することができる。
(5)分離室と2次燃焼室をダンパを備えた熱分解ガスバイパスラインを介して接続し、且つ加熱流路への空気供給手段による空気供給個所の近傍に温度コントローラを設けて、熱分解ガスを空気供給手段より供給される空気で燃焼させることで発生する燃焼ガスの温度に応じて上記ダンパの開閉量を制御するようにした構成とすることにより、余剰の熱分解ガスを上記2次燃焼室へ導いて燃焼させることができる。更に、上記加熱流路へ流通させる熱分解ガスの燃焼ガスの温度が所望する温度よりも低い場合は、上記温度コントローラにより熱分解ガスバイパスライン上のダンパの開度が小さくなるように調整することで、加熱流路へ流入させて燃焼させる熱分解ガスの量を増加させて、加熱流路へ流通させる熱分解ガスの燃焼ガスの温度を上昇させることができる。一方、上記加熱流路へ流通させる熱分解ガスの燃焼ガスの温度が所望する温度よりも高い場合は、上記温度コントローラにより熱分解ガスバイパスライン上のダンパの開度が大きくなるように調整することで、加熱流路へ流入させて燃焼させる熱分解ガスの量を減少させて、加熱流路へ流通させる熱分解ガスの燃焼ガスの温度を引き下げることができる。よって、上記加熱流路へ流通させる熱分解ガスの燃焼ガスの温度を所望する温度に保持することが可能になる。
(6)誘引通風機の上流側にダンパを設け、且つ分離室に圧力コントローラを備えて、該圧力コントローラにより上記ダンパの開閉量を調整して上記分離室内の圧力が外気の圧力に対して常に所要圧力低くなるようにした構成とすることにより、キルン本体の内筒内で原料の熱分解により発生する可燃性の熱分解ガスが外部へ漏れ出る虞を防止できる。
(7)加熱流路への空気供給手段による空気供給個所の近傍に、パイロットバーナを設けるようにした構成とすることにより、該パイロットバーナに種火を常時点けておくことで、分離室より加熱流路へ導かれる熱分解ガスの燃焼を確実に行なわせることができる。よって、該加熱流路へ流入する熱分解ガスの燃焼が不安定になったり、失火する虞を未然に防止することで、加熱流路へ流入する熱分解ガスの燃焼の安全性を高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の熱分解装置の実施の一形態を示すもので、内筒27と外筒28とからなる二重筒構造として内外筒間に加熱流路29を形成してなるキルン炉本体26を、軸心方向一端側より他端側の方がやや低くなるように、所要角度、たとえば、約3度傾斜させて回転駆動可能に横置きする。上記キルン炉本体26の軸心方向他端側に、上記内筒27の内部と内外筒間の加熱流路29の双方に連通する分離室30を設けて、該分離室30にて、上記内筒27内で原料としての廃棄物11の熱分解により生じる熱分解ガス18と炭化物19とを分離して、熱分解ガス18を、上記加熱流路29へ軸心方向他端側より流入させることができるようにする。更に、上記分離室30より加熱流路29に流入する熱分解ガス18へ空気32を供給するための空気供給手段31を備えてなる構成として、上記分離室30より加熱流路29へ送られる熱分解ガス18を、上記空気供給手段31より供給される空気32を用いて燃焼させ、この燃焼により発生する高温の燃焼ガス33を上記加熱流路29に流通させることで、該燃焼ガス33の保有する熱を熱源(外熱)として、上記内筒27内に供給される廃棄物11を間接加熱して熱分解処理を行わせることができるようにしてある。
【0020】
詳述すると、上記キルン炉本体26は、内筒27の軸心方向の両端部が、外筒28の両端部よりも所要寸法ずつ突出した構成としてあり、内筒27の軸心方向一端側の入口27a側には、軸心方向に所要の長さ寸法を有する所要径の供給管34が一体に接続してある。
【0021】
上記キルン炉本体26の軸心方向一端側には、キルン炉本体26に臨む一方の側壁35aに該キルン炉本体26の外筒28に対応した大きさの開口部を有するガス取出室35を、上記供給管34の周りを取り囲むように配置して設ける。上記ガス取出室35の内部には、上記供給管34の内径寸法に応じた外径寸法を有する給じん機取付管36を、上記キルン炉本体26の軸心方向に沿わせて配置すると共に、該給じん機取付管36の軸心方向一端部を、上記ガス取出室35における反キルン炉本体26側となる他方の側壁35bに貫通させて取り付け、該給じん機取付管36におけるガス取出室35内側への突出部分の外周に、上記供給管34を回転自在に嵌合させた構成としてある。
【0022】
又、上記ガス取出室35の一方の側壁35aに設けた開口部の外側には、上記キルン炉本体26の外筒28に対応した径の円筒形状としてある加熱流路出口側接続管37を、キルン炉本体26の軸心方向に沿って所要寸法突出させて設けて、該加熱流路出口側接続管37の突出端部に、上記外筒28の軸心方向一端部が、気密性を保持した状態で外筒28の回転を許容できる回転シール部46を介して接続してある。これにより、上記給じん機取付管36の内側に挿入して取り付けた原料供給装置としての給じん機10によって、投入ホッパ9に投入される原料としての廃棄物11を上記内筒27の入口27aへ供給できるようにしてある。更に、上記キルン炉本体26の加熱流路29の軸心方向一端部側が、上記加熱流路出口側接続管37を介してガス取出室35に連通するようにしてある。
【0023】
なお、内筒27に接続してある上記供給管34は、上記給じん機取付管36の外周に単に回転自在に嵌合させたものであるため、該供給管34と給じん機取付管36との間には、上記ガス取出室35の内部とキルン炉本体26の内筒27の内部の双方に連通する隙間が存在することになるが、この隙間の断面積が、上記した分離室30と加熱流路29の軸心方向他端部側との連通部分の断面積に比して十分狭くなるようにすることで、上記給じん機取付管36と供給管34との間に回転シール部を特に設けなくても、上記キルン炉本体26の内筒27の内部で廃棄物11を熱分解処理する際に発生する熱分解ガス18が上記給じん機取付管36と供給管34との間の隙間を通ってガス取出室35側へ直接漏れ出る量をほぼ無視することができる程度の量に制限できるようにしてある。
【0024】
上記ガス取出室35の頂部には、耐火材を内張りして耐火構造としてある2次燃焼室38の下端に設けた入口38aが連通接続してある。更に、上記2次燃焼室38の頂部に設けてある排ガス出口38bの下流側には、ボイラ形式又は水噴射によって燃焼排ガス39を冷却するようにしてある排ガス冷却設備41と、脱HCl処理やバグフィルタ等による集塵処理を行なうようにしてある排ガス処理設備42と、誘引通風機43とを順に備えた排ガスライン40を介して煙突44が接続してある。
【0025】
上記キルン炉本体26の軸心方向他端側に設ける分離室30は、キルン炉本体26に臨む一方の側壁30aに、上記キルン炉本体26の外筒28に対応した大きさの開口部が設けてあると共に、該開口部の外側に、上記外筒28と対応した径の円筒形状としてある加熱流路入口側接続管45を、キルン炉本体26の軸心方向に沿って所要寸法突出させて設けてなる構成として、上記キルン炉本体26の内筒27の軸心方向他端部の出口27bを、上記開口部を通して分離室30の内側へ所要寸法挿入して配置すると共に、上記外筒28の軸心方向他端部を、上記加熱流路入口側接続管45の突出端部に、気密性を保持した状態で外筒28の回転を許容できる回転シール部46を介して接続する。これにより、上記内筒27内での廃棄物11の熱分解処理によって生じる熱分解ガス18と炭化物19を、該内筒27の出口27bより上記分離室30内へ排出できるようにしてある。更に、分離室30と加熱流路29の軸心方向他端部側が連通されることから、上記2次燃焼室38の下流側の排ガスライン40上に設けてある上記誘引通風機43の誘引作用により、上記2次燃焼室38とガス取出室35とを介して上記キルン炉本体26の加熱流路29内のガスを上記ガス取出室35側となる軸心方向一端側へ引くことで、上記分離室30内で炭化物19と分離される熱分解ガス18を、上記加熱流路入口側接続管45を経て上記キルン炉本体26の加熱流路29へ流入させることができるようにしてある。
【0026】
上記分離室30より加熱流路29に流入する熱分解ガス18へ空気32を供給するための空気供給手段31は、たとえば、上記加熱流路入口側接続管45の外周に、環状の空気供給ヘッダ47を配置して、押込送風機48に空気供給ライン49を介して接続し、更に、上記空気供給ヘッダ47の周方向所要間隔位置に内向きに設けた複数の空気ノズル50を、上記加熱流路入口側接続管45の周壁における対応する個所にそれぞれ接続してなる構成とする。これにより、上記押込送風機48の運転によって上記空気供給ライン49を経て空気供給ヘッダ47へ供給される空気32を、各空気ノズル50より上記加熱流路入口側接続管45の内側へ吹き込むことができるようにしてある。したがって、上記したように分離室30より上記加熱流路入口側接続管45を経て上記加熱流路29へ流入させる熱分解ガス18に、上記各空気ノズル50より吹き込む空気32を供給して燃焼させることができるようにしてあると共に、この燃焼によって発生する高温の燃焼ガス33を、上記キルン炉本体26の加熱流路29を流通させることで、上記燃焼ガス33の保有する熱を熱源として、内筒27内へ供給される廃棄物11を間接加熱して熱分解処理できるようにしてある。
【0027】
更に、上記加熱流路入口側接続管45における上記空気ノズル50の設置個所よりも熱分解ガス18流通方向の下流側となる位置には、プロパン等の補助燃料52を用いたパイロットバーナ51を設ける。これにより、本発明の熱分解装置の運転中は、上記パイロットバーナ51にて種火を常時点けておくことで、上記分離室30より加熱流路入口側接続管45を経て加熱流路29へ導かれる熱分解ガス18の燃焼を確実に行なわせることができるようにして、該加熱流路29へ流入する熱分解ガス18の燃焼が不安定になったり、失火する虞を未然に防止することで、加熱流路29へ流入する熱分解ガス18の燃焼の安定性を高めることができるようにしてある。
【0028】
上記加熱流路入口側接続管45における空気ノズル50の設置個所よりも熱分解ガス18流通方向の上流側となる内周面所要個所と、該個所に対向(対面)するキルン炉本体26の内筒27の他端部における外周面所要個所との間には、加熱流路入口側接続管45の内周面と、内筒27の外周面の一方又は双方より径方向に所要寸法張り出して熱分解ガス18の流路を絞るための隔壁53を設ける。なお、図では内筒27の外周面に径方向外向きに張り出す隔壁53を設けた状態を示してある。これにより、上記したように、誘引通風機43の誘引作用により上記分離室30より熱分解ガス18を加熱流路入口側接続管45を経て加熱流路29へ流入させる際、上記隔壁53の設置部分で圧損をたてることにより、内筒27と連通している分離室30の内圧よりも、上記加熱流路29内の圧力の方が十分低くなるように、たとえば、両者の差圧が、98〜196Pa程度となるようにさせることで、上記内筒27内で発生した後、分離室30へ導かれる熱分解ガス18を、上記加熱流路29へ確実に流入させることができるようにすると共に、上記加熱流路29で熱分解ガス18の燃焼により生じる高温の燃焼ガス33が上記分離室30側へ逆流する虞を防止できるようにしてある。
【0029】
上記空気供給ライン49には、灯油やプロパン等の起動用燃料56を上記押込送風機48より供給される空気32により燃焼させるバーナ55を具備した熱風発生炉54を設ける。これにより、本発明の熱分解装置の起動時は、上記熱風発生炉54のバーナ55にて上記起動用燃料56の燃焼により発生させる高温の燃焼ガスと、上記押込送風機48より空気供給ライン49を経て供給される空気32とを混合して所要温度、たとえば、550℃に温度調整した高温空気57を、図1に二点鎖線で示す矢印のように、上記空気供給ライン49を介して空気供給ヘッダ47へ供給して、各空気ノズル50より上記加熱流路入口側接続管45内へ吹き込んで、キルン炉本体26の加熱流路29へ流通させることにより、該高温空気57の保有する熱を熱源として、内筒27内へ供給される廃棄物11を間接加熱して該廃棄物11の熱分解処理を開始させることができるようにしてある。
【0030】
更に、上記空気供給ライン49における上記空気供給ヘッダ47の上流側位置には、図1に二点鎖線で示す如き空気予熱器58を設けて、本発明の熱分解装置の通常運転時に上記各空気ノズル50より加熱流路入口側接続管45内を流れる熱分解ガス18へ吹き込む空気32を、該空気予熱器58にて予め所要温度に予熱させることができる構成とすることが好ましい。
【0031】
上記分離室30の頂部には、熱分解ガス取出口59を設けて、熱分解ガスバイパスライン60の上流側端部となる一端部を接続し、該熱分解ガスバイパスライン60の下流側端部となる他端部を、上記2次燃焼室38に接続する。又、上記空気供給ライン49における熱風発生炉54よりも上流側位置より分岐させた分岐空気供給ライン49aが、上記2次燃焼室38に接続してある。これにより、キルン炉本体26の加熱流路29へ流通させる燃焼ガス33を発生させるために上記分離室30より加熱流路入口側接続管45へ導いて燃焼させることが所望される量の熱分解ガス18以外の余剰の熱分解ガス18を、上記熱分解ガスバイパスライン60を通して2次燃焼室38へ導くようにして、該余剰の熱分解ガス18と、上記加熱流路29を流通して廃棄物11の間接加熱用の熱源に供された後にガス取出室35を経て2次燃焼室38の入口38aより導かれる燃焼ガス33中に残存する未燃分とを、上記分岐空気供給ライン49aを通して供給される空気32により一緒に燃焼させることができるようにしてある。この際、上記2次燃焼室38では、燃焼室内温度が850℃以上、各ガス18及び33の滞留時間が3秒以上となるようにすることで、ダイオキシン類を分解できるようにしてある。
【0032】
更に、上記熱分解ガスバイパスライン60の途中位置にダンパ61を設けると共に、上記加熱流路入口側接続管45における加熱流路29寄りの端部に、温度コントローラ62を設け、上記分離室30より加熱流路入口側接続管45へ導かれる熱分解ガス18の燃焼により発生する燃焼ガス33の温度の検出値に応じて上記熱分解ガスバイパスライン60上のダンパ61の開閉量を制御するようにする。これにより、上記温度コントローラ62で検出される加熱流路29を流通する燃焼ガス33の温度が所要の設定温度、たとえば、550℃を超える場合は、該温度コントローラ62により上記ダンパ61の開度を大きくして上記熱分解ガスバイパスライン60を経て2次燃焼室38へ直接導く熱分解ガス18の量を増加させることにより、上記分離室30より上記加熱流路入口側接続管45へ導いて燃焼させる熱分解ガス18の量を減少させて、上記キルン炉本体26の加熱流路29へ流通させる燃焼ガス33の温度を引き下げることができるようにしてある。
【0033】
一方、上記温度コントローラ62で検出されるキルン炉本体26の加熱流路29へ流通させる燃焼ガス33の温度が550℃を下回る場合は、該温度コントローラ62により上記ダンパ61の開度を小さくして、上記熱分解ガスバイパスライン60を経て2次燃焼室38へ直接導く熱分解ガス18の量を減少させることにより、上記分離室30より上記加熱流路入口側接続管45へ導いて燃焼させる熱分解ガス18の量を増加させて、上記キルン炉本体26の加熱流路29へ流通させる燃焼ガス33の温度を上昇させることができるようにしてある。
【0034】
なお、上記2次燃焼室38にて、余剰の熱分解ガス18と、上記加熱流路29を流通して廃棄物11の間接加熱用の熱源に供された後の燃焼ガス33中に残存する未燃分とを一緒に燃焼させる際、該2次燃焼室38の内部温度が、850℃を下回る虞が懸念される場合は、図1に二点鎖線で示す如く、補助燃料を燃焼させることで該2次燃焼室38内の温度を上昇させる補助バーナ63を設けると共に、該2次燃焼室38に、内部温度を検出して、その検出温度が850℃を下回るときに、上記補助バーナ63の運転(燃焼)を行わせるための温度コントローラ64を設ける構成とすればよい。かかる構成とすれば、上記2次燃焼室38の内部温度を常に850℃以上に保持できるため、ダイオキシン類の分解をより確実なものとすることができるようになる。
【0035】
更に又、上記燃焼排ガスライン40における誘引通風機43の上流側にダンパ65を設けると共に、分離室30に、該分離室30の内部圧力の検出値に応じて、上記誘引通風機43の上流側のダンパ65の開閉量を制御するための圧力コントローラ66を設ける。これにより、上記圧力コントローラ66で検出される上記キルン炉本体26の内筒26に連通している分離室30の内部圧力が、外気の圧力に対して常に低く、たとえば、4.9Pa程度低くなるように、該圧力コントローラ66により、上記ダンパ65の開閉量を制御して上記誘引通風機43による誘引作用の強度を変化させることができるようにしてある。
【0036】
上記分離室30には、上記キルン炉本体26の内筒27内での廃棄物11の熱分解処理により発生した後、該分離室30へ回収される熱分解ガス18の温度を検出し、その検出値に応じて上記空気供給手段31より上記加熱流路29へ流入する空気32の量を制御するための温度コントローラ67を設ける。これにより、上記温度コントローラ67で検出される上記分離室30内の熱分解ガス18の温度が所要の設定温度、たとえば、450℃に保持されるようにしてある。具体的には、上記温度コントローラ67で検出される熱分解ガス18の温度が450℃を下回る場合は、上記空気供給手段31の所要個所に設けた図示しないダンパの開度を大きくして、空気供給ライン49より空気供給ヘッダ47と各空気ノズル50を介して上記加熱流路入口側接続管45内へ吹き込む空気32の量を増加させる。これにより、空気32の供給量に対する熱分解ガス18の相対的な供給比率が低下するため、発生する燃焼ガス33の温度が低下する。この燃焼ガス33の温度低下が、加熱流路入口側接続管45に設けてある上記温度コントローラ62により検出されると、上記したと同様に、熱分解ガスバイパスライン60上のダンパ61の開度が小さくなるように操作されて、上記分離室30より上記加熱流路入口側接続管45へ導いて燃焼させる熱分解ガス18の量が増加させられるようになることから、上記キルン炉本体26の加熱流路29へ流通させる燃焼ガス33の温度が上昇させられる。よって、この加熱流路29を流通する燃焼ガス33の温度上昇により、廃棄物11を熱分解処理して発生させる熱分解ガス18の温度を上昇させることができるようにしてある。
【0037】
一方、上記分離室30の温度コントローラ67で検出される熱分解ガス30の温度が450℃を超える場合は、上記空気供給手段31の所要個所に設けた図示しないダンパの開度を小さくして、上記空気供給ライン49より空気供給ヘッダ47と各空気ノズル50を介して上記加熱流路入口側接続管45内を流通する熱分解ガス18へ吹き込む空気32の量を減少させる。これにより、空気32の供給量に対する熱分解ガス18の相対的な供給比率が増加するため、発生する燃焼ガス33の温度が上昇する。この燃焼ガス33の温度上昇が上記加熱流路入口側接続管45に設けてある温度コントローラ62により検出されると、上記の場合とは逆に、熱分解ガスバイパスライン60上のダンパ61の開度が大きくなるように操作されて、上記分離室30より上記加熱流路入口側接続管45へ導いて燃焼させる熱分解ガス18の量が減少させられることで、上記キルン炉本体26の加熱流路29へ流通させる燃焼ガス33の温度が引き下げられる。よって、この加熱流路29を流通する燃焼ガス33の温度低下に伴い、廃棄物11を熱分解処理して発生させる熱分解ガス18の温度が低下させられるようにしてある。
【0038】
上記分離室30に設けた加熱流路入口側接続管45と、キルン炉本体26の外筒28と、ガス取出室35と、加熱流路出口側接続管37と、給じん機取付管36は、上記燃焼ガス33と接するため、該燃焼ガス33と接する面部を耐火材により被覆して耐火構造としてある。
【0039】
68は上記加熱流路29を流通して廃棄物11の間接加熱用の熱源に供された後の燃焼ガス33の温度を確認するために、ガス取出室35の加熱流路出口側接続管37に設けた温度検出器、69は分離室30の底部より熱分解残差としての炭化物19を取り出して回収するための炭化物回収ラインである。
【0040】
以上の構成としてある熱分解装置を使用する場合は、予め、2次燃焼室38の下流側の排ガスライン40上に設けてある誘引通風機43を運転して、その誘引作用により上記キルン炉本体26の内筒27の内側より分離室30、加熱流路入口側接続管45、加熱流路29、加熱流路出口側接続管37、ガス取出室35、2次燃焼室38を順に経てガスを誘引できるようにしておく。又、キルン炉本体26を図示しない駆動装置により回転駆動させた状態にて、熱風発生炉54のバーナ55にて起動用燃料56を燃焼させて、このバーナ55の燃焼により発生する高温の燃焼ガスと、押込送風機48より供給される空気32とを熱風発生炉54で混合して所要温度、たとえば、550℃程度に温度調整した高温空気57を、上記空気供給ライン49と空気供給ヘッダ47と各空気ノズル50を経て上記加熱流路入口側接続管45内へ供給して、上記キルン炉本体26の加熱流路29を流通させるようにしておく。更に、パイロットバーナ51には常に種火を点けておくようにする。
【0041】
この状態にて、給じん機10によりホッパ9内の廃棄物11をキルン炉本体26の内筒27の入口27aへ供給すると、該廃棄物11がキルン炉本体26の回転に伴って内筒出口27b側へ送られる間に、上記加熱流路29を流通する高温空気57の保有する熱により内筒27の周壁を介し間接加熱されて、熱分解処理が開始されるようになる。
【0042】
上記のようにして内筒26内における廃棄物11の熱分解処理が開始されると、この廃棄物11の熱分解処理により発生した熱分解ガス18と炭化物19が、上記内筒27の出口27bより順次分離室30へ送られ、該分離室30にて上記熱分解ガス18と炭化物19が分離される。その後、上記炭化物19と分離された熱分解ガス18は、上記誘引通風機43の誘引作用により、分離室30から加熱流路入口側接続管45を経て加熱流路29へ流入させられるようになり、この際、可燃性の熱分解ガス18が、上記空気ノズル50より供給されている高温空気57と混合された状態で上記パイロットバーナ51の種火に接することで点火されて、該熱分解ガス18の燃焼が開始される。
【0043】
上記のようにして分離室30から加熱流路入口側接続管45を経て加熱流路29へ流入する熱分解ガス18の燃焼が開始された後は、上記熱風発生炉54のバーナ55を消火する。これにより、各空気ノズル50より上記加熱流路入口側接続管45内へ吹き込まれるのは、高温空気57に代えて、押込送風機48より空気供給ライン49と空気供給ヘッダ47を介して導かれる単なる空気32となるが、上記熱分解ガス18の燃焼開始以降は、熱分解ガス18が上記各空気ノズル50より供給される空気32により燃焼されることで生じる高温の燃焼ガス33が、上記加熱流路29を流通し、この燃焼ガス33の保有する熱によって上記内筒27内での廃棄物11の間接加熱が行われるため、該廃棄物11の熱分解処理が継続して行われるようになる。
【0044】
なお、通常運転時は、上記加熱流路29へ流通させる熱分解ガス18に対して上記空気供給部31の各空気ノズル50より吹き込む空気32の量や温度を調整することで、内筒27内での廃棄物11の熱分解処理に必要な燃焼ガス33温度を得るようにするが、熱分解ガス18の燃焼による燃焼ガス33の熱量だけでは内筒27内での廃棄物11の熱分解処理に必要とされる熱量に不足が生じる場合は、上記熱風発生炉54のバーナ55の燃焼を適宜行わせて、上記したと同様に、熱風発生炉54より導く高温空気57を加熱流路29へ供給するようにしてもよい。
【0045】
上記加熱流路29を流通して内筒27内における廃棄物11の熱分解処理用の熱源に供された後の燃焼ガス33は、ガス取出室35を経て2次燃焼室38へ導かれ、該2次燃焼室38にて、上記燃焼ガス33中に未燃分が残存している場合は、その未燃分が、上記分離室30より熱分解ガスバイパスライン60を経て導かれる余剰の熱分解ガス18と一緒に燃焼させられ、この際、2次燃焼室38の内部温度が850℃以上、ガスの滞留時間が3秒以上に保持されることで、ダイオキシン類の分解が行われる。
【0046】
その後、上記2次燃焼室38にて発生するダイオキシン類が分解処理された燃焼排ガス39が、排ガスライン40上の排ガス冷却設備41と、排ガス処理設備42にて処理された後、煙突44へ導かれて放出されるようになる。
【0047】
上記廃棄物11の熱分解処理によって生じる炭化物19は、上記分離室30の底部に接続してある炭化物回収ライン69より適宜取り出して回収するようにすればよい。
【0048】
このように、本発明の熱分解装置によれば、キルン炉本体26の内筒27内へ供給する原料としての廃棄物11を、内外筒間の加熱流路29を流通させる熱分解ガス18の燃焼ガス33による外熱によって間接加熱して熱分解処理することができる。この際、燃焼させるのは、熱分解ガス18のみであるため、該廃棄物11の熱分解処理により発生させる炭化物19の歩留まり及び性状を、前記した図5に示した如き従来の外熱式の熱分解装置における炭化物の歩留まり及び性状と同等とすることができる。
【0049】
更に、上記キルン炉本体26の内筒27の内側と、内外筒間の加熱流路29とは、分離室30を介して連通させてあるため、該内筒27と加熱流路29との間で厳密な気密性を保つ必要をなくすことができる。よって、図5に示した如き内筒となる熱分解炉17と加熱流路22との間で厳密な気密性を保つ必要がある従来の外熱式の熱分解装置に比して、回転シール部46の数を削減できて、装置構成をよりシンプルなものとすることができる。
【0050】
しかも、上記内筒27内における廃棄物11の熱分解処理により発生する熱分解ガス18は、分離室30で炭化物19と分離した後、2次燃焼室38の下流側の排ガスライン40上に設けた誘引通風機43の誘引作用により、キルン炉本体26の加熱流路29へ導いて燃焼させることができるようにしてあり、又、分離室30から熱分解ガスバイパスライン60を経た2次燃焼室38への余剰の熱分解ガス18の導入も、上記誘引通風機43の誘引作用によって行わせることができるため、上記熱分解ガス18を外部へ取り出すための熱分解ガスファンを備えた熱分解ガス取出ラインを不要にできる。このために、従来、熱分解ガスファンを備えた熱分解ガスラインを設ける場合に懸念されていた、該熱分解ガスファンに熱分解ガス18中のタール分が付着して動作不良や異常振動が生じる等の虞を解消できる。
【0051】
次に、図2は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1に示したと同様の構成において、分離室30の頂部と2次燃焼室38とを接続する熱分解ガスバイパスライン60を省略して、キルン炉本体26の内筒27内における廃棄物11の熱分解により発生する熱分解ガス18を、分離室30で炭化物19と分離した後、該熱分解ガス18の全量を、分離室30より加熱流路入口側接続管45を経て加熱流路29へ流入させる構成としたものである。
【0052】
なお、上記熱分解ガスバイパスライン60を省略したことに伴って、図1に示した加熱流路入口側接続管45上の温度コントローラ62も省略した構成としてある。
【0053】
その他の構成は図1に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0054】
本実施の形態の熱分解装置を使用する場合は、上記したように、内筒27内での廃棄物11の熱分解によって生じる熱分解ガス18の全量を、分離室30より上記加熱流路入口側接続管45を経て加熱流路29へ流入させるようにしてあることに鑑みて、空気供給ヘッダ47より各空気ノズル50を通して上記加熱流路入口側接続管45を流通する熱分解ガス18へ供給する空気32の量を、加熱流路29へ流入するときに熱分解ガス18の一部のみが部分燃焼されるような量に制限することで、該熱分解ガス18の部分燃焼で生じる高温の燃焼ガスと、燃焼されていない熱分解ガス18の残部とが混合されて生じる混合ガス70の温度が550℃程度に調整されるようにする。
【0055】
これにより、上記のように温度調整された混合ガス70が加熱流路29に流通することで、内筒27内に供給される廃棄物11が、上記加熱流路29を流通する混合ガス70の保有する熱により間接加熱されて、熱分解ガス18と炭化物19に熱分解処理されるようになる。
【0056】
上記加熱流路29を流通することで廃棄物11の熱分解処理用の熱源に供された後の上記混合ガス70は、ガス取出室35を経て2次燃焼室38へ導かれると、押込送風機48より空気供給ライン49と分岐空気供給ライン49aを経て2次燃焼室38へ供給される空気32により、該混合ガス70中に含まれている未燃の熱分解ガス18の燃焼が行われるようになる。
【0057】
よって、本実施の形態によっても、上記実施の形態と同様に効果を得ることができる。
【0058】
なお、上記各実施の形態では、排ガスライン40上の誘引通風機43の上流側に設けたダンパ65の開閉量の制御が、分離室30に設けた圧力コントローラ66により行われるものとして示してあるが、上記分離室30から加熱流路29とガス取出室35を経て2次燃焼室38に至る流路での圧損が既知である場合は、図3に示す如く、2次燃焼室38に、上記排ガスライン40上の誘引通風機43の上流側に設けたダンパ65の開閉量の制御を行うための圧力コントローラ66aを設けて、該圧力コントローラ66aにより、2次燃焼室38の内部圧力の検出値と、上記分離室30から加熱流路29とガス取出室35を経て2次燃焼室38に至る流路での圧損の情報を基に、上記分離室30の内部圧力が、外気の圧力に対して常に4.9Pa程度低くなるように、上記ダンパ65の開閉量を制御して、上記誘引通風機43による誘引作用の強度を変化させるようにしてもよい。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、分離室30における熱分解ガス18の温度条件や、加熱流路29を流通させる燃焼ガス33や混合ガス70の温度条件は、原料としての廃棄物11の熱分解温度条件や、キルン炉本体26のサイズ、熱伝達効率等に応じて適宜変更してもよい。
【0060】
空気供給手段31は、分離室30より加熱流路29へ流入させる熱分解ガス18に所要量の空気32を供給して燃焼させることができるようにしてあれば、図示した以外のいかなる形式の空気供給手段を採用してもよい。
【0061】
分離室30より加熱流路29へ流入する熱分解ガス18の流路を絞るための隔壁53は、設けることが好ましいが、2次燃焼室38の下流側の排ガスライン40上に設けた誘引通風機43の誘引作用により、熱分解ガス18が分離室30より狭い加熱流路29へ流入するときに生じる圧損に基いて、該加熱流路29を流通させる熱分解ガス18の燃焼ガス33が分離室30へ逆流する虞が防止できるようにしてあれば、上記隔壁53を省略した構成としてもよい。
【0062】
ガス取出室35に対する2次燃焼室38の取り付け方向は、周辺機器の配置等に応じて、ガス取出室35の側方や下方等、任意の方向に変更してもよい。又、ガス取出室35に配管やダクト等を介して2次燃焼室38を接続するようにしてもよい。2次燃焼室38はダイオキシン類を分解できるような燃焼条件を得ることができるようにしてあれば、図示した以外の形式の2次燃焼室38を採用してもよい。
【0063】
本発明の熱分解装置は、熱分解処理を望む原料であれば、廃棄物11以外の原料の熱分解処理行うための装置としても適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の熱分解装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の更に他の形態における一部を示す概要図である。
【図4】従来提案されている内熱式の熱分解装置の一例を示す概要図である。
【図5】従来提案されている外熱式の熱分解装置の一例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0065】
10 給じん機(原料供給装置)
18 熱分解ガス
19 炭化物
26 キルン炉本体
27 内筒
28 外筒
29 加熱流路
30 分離室
31 空気供給手段
32 空気
33 燃焼ガス
38 2次燃焼室
43 誘引通風機
51 パイロットバーナ
60 熱分解ガスバイパスライン
61 ダンパ
62 温度コントローラ
65 ダンパ
66 圧力コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と外筒とからなる二重筒構造として内外筒間に加熱流路を形成してなるキルン炉本体を回転駆動可能に横置きし、上記キルン炉本体の軸心方向一端側に、上記内筒内へ原料を供給するための原料供給装置を設けると共に、上記キルン炉本体の他端側に、上記内筒内における原料の熱分解により発生する熱分解ガスと炭化物を分離するための分離室を設けて、該分離室を上記内筒内と加熱流路に連通させて熱分解ガスを加熱流路に流入させるようにし、更に、上記加熱流路に空気を供給して熱分解ガスを燃焼させるようにするための空気供給手段を備えてなる構成を有することを特徴とする熱分解装置。
【請求項2】
加熱流路のガス流通方向下流側に誘引通風機を設けて、該誘引通風機の誘引作用により、分離室内の熱分解ガスを加熱流路へ流入させることができるようにした請求項1記載の熱分解装置。
【請求項3】
加熱流路と誘引通風機との間に2次燃焼室を設け、該2次燃焼室でダイオキシン類を分解可能な温度及びガスの滞留時間を確保できるようにした請求項2記載の熱分解装置。
【請求項4】
分離室と2次燃焼室をダンパを備えた熱分解ガスバイパスラインを介して接続し、且つ加熱流路への空気供給手段による空気供給個所の近傍に温度コントローラを設けて、熱分解ガスを空気供給手段より供給される空気で燃焼させることで発生する燃焼ガスの温度に応じて上記ダンパの開閉量を制御するようにした請求項3記載の熱分解装置。
【請求項5】
誘引通風機の上流側にダンパを設け、且つ分離室に圧力コントローラを備えて、該圧力コントローラにより上記ダンパの開閉量を調整して上記分離室内の圧力が外気の圧力に対して常に所要圧力低くなるようにした請求項2、3又は4記載の熱分解装置。
【請求項6】
加熱流路への空気供給手段による空気供給個所の近傍に、パイロットバーナを設けるようにした請求項1、2、3、4又は5記載の熱分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−186120(P2009−186120A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27940(P2008−27940)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】