説明

熱剥離性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】本発明は、活性エネルギー線の照射により容易に硬化して高い接着強度が得られ、切削や研磨等の加工の後は加熱により容易に剥離することができ、かつ耐エッチング液性及び保存安定性に優れた実用性の高い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する
【解決手段】特定のエチレン性不飽和基を有する化合物、光重合開始剤及び熱膨張性マイクロカプセルを混合し、樹脂組成物を製造する。これにより、(i)活性エネルギー線硬化性、(ii)接着性、(iii)熱剥離性、(iv)耐エッチング液性、及び(v)保存安定性の全てに優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱剥離性を有する樹脂組成物に関するものであって、特に、熱剥離性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子、レンズやプリズム等の光学デバイス、コンデンサ、パッケージ部品、磁石等の精密部品、平板ガラス製品、及びシリコンウエハ等を基板とする半導体素子等の製造においては、一旦、これらの原材料である粗形状物品を接着剤等により仮固定を行う。そして、仮固定した状態で、上記粗形状物品に切削や研磨等の機械加工を施し所定の形状に加工する。その後、上記接着剤等の硬化物を取り除いて、完成品を得る。
【0003】
水晶振動子やレンズ、プリズム等の仮固定のための接着剤としては、古くはワックスや松ヤニ等のホットメルト系接着剤が多用されていた。しかし、ホットメルト系接着剤は150℃以上に加熱した状態で接着する必要がある。また、粘度が高いため、精密な接着が難しいといった作業性の問題がある。さらに、ホットメルト系接着剤を剥離するために、高濃度のアルカリ水溶液やハロゲン系有機溶剤による洗浄を必要とする。このような作業は危険性を伴う。さらに、上記アルカリ溶液や有機溶剤は、作業環境の悪化や環境汚染をもたらすという問題がある。
【0004】
そこで、現在は、上記例示したような物品の仮固定用の接着剤として、光硬化型接着剤が多用されている。このような光硬化型接着剤は、例えば、特許文献1〜6などに開示されている。上記光硬化型接着剤は一般的に遮光した環境下では液体である。そのため、ホットメルト系接着剤のように加熱溶融して液状にする必要はない。また、粘度が低く、塗布性にも優れている。さらに、光を照射することにより短時間で硬化し高い接着強度が得られるという大きな特徴を有する。
【0005】
このような光硬化型接着剤としては、水溶性の接着剤が主に用いられる。例えば、N,N−ジメチルアクリルアミドやアクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコールモノアクリレート等の水溶性モノマーを主成分とする接着剤が多く用いられる。このような水溶性の光硬化型接着剤は、粗形状物品に対して、所望の加工が行った後、温水、熱水又は水と水溶性有機溶剤との混合液等に浸漬することにより剥離することができる。
【0006】
また、別の剥離性を有する接着剤として、熱膨張性マイクロカプセルを配合した接着剤や粘着剤が多数提案されている。これら接着剤及び粘着剤は、熱剥離性を有する。つまり、これら接着剤及び粘着剤は、粗形状物品を切削や研磨した後、熱処理することにより剥離させることができる。このような接着剤として、例えば、特許文献7には、加熱により膨張する膨張性微小球を熱可塑性樹脂からなる接着剤成分100質量部に対して30〜100質量部含有した粘着剤が開示されている。また、当該粘着剤は、ビニルテープやラベル等の用途に用いることが記載されている。さらに、同様の粘着剤は、例えば、特許文献8〜11にも開示されている。
【0007】
さらに別の剥離性を有する接着剤が、特許文献12〜17等に開示されている。具体的には、特許文献12には、基材の少なくとも片側に、エネルギー線硬化型粘弾性層と熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層とがこの順に積層されているエネルギー線硬化型熱剥離性粘着シートが開示されている。特許文献13には、基材の少なくとも片側に、エネルギー線硬化型粘弾性層と熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層とがこの順に積層されているエネルギー線硬化型熱剥離性粘着シートが開示されている。また、特許文献14には、ブロック共重合体と特定の粘着付与樹脂と熱膨張性微小球とを配合してなる剥離性感圧接着剤が開示されている。
【0008】
特許文献15には、片面に酸化処理層又は/及び表面グラフト重合層からなる改質処理層を有するポリオレフィン系フィルムの他面に、発泡剤含有の接着剤層を有するレンズ固定材が開示されている。上記発泡剤の一例として、熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセル内に、その熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度でガスを発生する発泡成分を包蔵して加熱により膨張ないし発泡する熱膨脹性微粒子が例示されている。
【0009】
特許文献16には、熱硬化性接着剤成分に対して、有機系熱膨張性粒子を添加した熱剥離型接着剤組成物が開示されている。上記熱硬化性接着剤成分としては、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、反応型アクリル系樹脂等が例示されている。また、上記熱剥離型接着剤組成物は、硬化処理後、加熱処理前のJISK6850に準拠した引っ張りせん断接着力が3MPa以上であることが記載されている。
【0010】
さらに、熱膨張性マイクロカプセル以外の熱膨張性物を含有する接着剤も提案されている。例えば、特許文献17には、硬化性樹脂中に膨張開始温度が150℃以上の熱膨張性無機物を配合した熱剥離型接着剤組成物が開示されている。
【0011】
ところで、熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂及び樹脂組成物には、接着目的以外の用途のために開発されたものも知られている。例えば、特許文献18には、膨張性粒子からなる充填剤が混入された光硬化性樹脂を三次元形状の形成に用いることが開示されている。また、特許文献19には、中空状充填剤ないし熱膨張性マイクロカプセルの1種又は2種以上を含む近赤外線照射により硬化する発泡樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特公平5−54878号公報(平成5(1993)年8月13日公告;特開昭61−287976号公報(昭和61(1986)年12月18日公開))
【特許文献2】特開平2−88604号公報(平成2(1990)年3月28日公開)
【特許文献3】特開平10−130309号公報(平成10(1998)年5月19日公開)
【特許文献4】特開平11−71553号公報(平成11(1999)年3月16日公開)
【特許文献5】特開2001−226641号公報(平成13(2001)年8月21日公開)
【特許文献6】特開2003−313510号公報(平成15(2003)年11月6日公開)
【特許文献7】特開昭56−61468号公報(昭和56(1981)年5月26日公開)
【特許文献8】特開昭60−252681号公報(昭和60(1985)年12月13日公開)
【特許文献9】特開平11−228921号公報(平成11(1999)年8月24日公開)
【特許文献10】特開2000−86994号公報(平成12(2000)年3月28日公開)
【特許文献11】特開2000−239620号公報(平成12(2000)年9月5日公開)
【特許文献12】特開2002−121505号公報(平成14(2002)年4月26日公開)
【特許文献13】特開2002−121510号公報(平成14(2002)年4月26日公開)
【特許文献14】特開平6−33025号公報(平成6(1994)年2月8日公開)
【特許文献15】特開平7−132452号公報(平成7(1995)年5月23日公開)
【特許文献16】特開2003−171648号公報(平成15(2003)年6月20日公開)
【特許文献17】特開2000−204332号公報(平成12(2000)年7月25日公開)
【特許文献18】特公平7−45194号公報(平成7(1995)年5月17日公告;特開平2−116537(昭和63(1988)年10月26日公開))
【特許文献19】特開平6−192459号公報(平成6(1994)年7月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1〜17に開示されるような接着剤や粘着剤は、様々な問題を有しており、さらなる改良が必要である。具体的には、特許文献1〜6に開示されるような光硬化型接着剤では、上記接着剤の硬化物を溶解したり膨潤させたりするには、かなりの長時間を要することが多い。そのため、加工する粗形状物品の数量が多い場合には生産性が低いという問題がある。一方、上記接着剤を改変し、その硬化物の温水、熱水又は水と水溶性有機溶剤との混合液等への溶解性や膨潤性を高くすることが可能である。このように上記接着剤を改変すると、上記接着剤の剥離に要する時間を短縮することはできる。その反面、仮固定時の接着強度が低下する。そのため、粗形状物品を切削や研磨する時に、剥がれや位置ずれを生じやすいという問題がある。
【0013】
また、特許文献7〜13、及び15に開示される接着剤やレンズ固定材は、主成分として基本的に低弾性率のアクリル系熱可塑性樹脂が含まれる。そのため、接着力や耐熱性、耐薬品性に乏しい。つまり、高い接着力や耐久性が要求される用途には、事実上使用することが困難である。さらに、この種の粘着剤は、複雑な形状をした物品の固定は困難であり、また、塗布性、浸透性といった作業性も低いという問題もある。
【0014】
また、特許文献14の剥離性感圧接着剤は、弾性率が低く、被着体に対する接着力が乏しい。そのため、高い接着力や機械的特性が要求される場合には使用することが困難である。さらに、粘着剤は複雑な形状をした物品の固定は困難であり、また、塗布性、浸透性といった作業性も低いという問題がある。
【0015】
さらに、特許文献16の熱硬化型接着剤組成物は、接着力、機械的特性の点では優れているが、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂を用いる場合、剥離のための加熱温度よりもかなり低い温度で硬化させると、硬化に要する時間が長くかかり作業性が悪いという問題がある。また、特許文献16には、反応型アクリル系樹脂を用いる場合は30〜40℃で5分以内の硬化が可能とされている。しかし、紫外線等の活性エネルギー線で硬化させる場合に比べると依然として長い時間が必要である。そのため、物品の位置ずれを防ぐために、冶具等で固定する必要がある。また、硬化に時間を要するため、接着剤が仮固定以外の場所に流れてしまう恐れがある。さらに、反応型アクリル系樹脂は、保存安定性が悪いことが多い。その場合は、使用する直前に有機系熱膨張性粒子を配合する必要がある。そのため、均一性の不足により初期接着力や剥離性のばらつきが生じやすい。加えて、作業性や泡かみ等の問題が生じる恐れもある。
【0016】
また、特許文献17の熱剥離型接着剤組成物は加熱処理による接着力の低下が乏しい。さらに、剥離に要する加熱温度が高い。そのため、被着体の耐熱性が低い場合には適用が困難であったり、電磁誘導加熱といった特別の方法を使用したりする必要があるといった問題がある。また、上記熱膨張性無機物は比重や粒径が大きい。そのため、硬化性樹脂中に均一に混合することが困難である。その結果、初期接着力がばらついたり、剥離性がばらついたりするという問題もある。
【0017】
一方、特許文献18及び19に開示される樹脂及び樹脂組成物は、物品を接着することを目的として開発されたものではない。そのため、熱剥離性や、硬化性、接着性、保存安定性について全く考慮されていない。例えば、特許文献18では、上記膨張性粒子は、硬化収縮を少なくして形状精度を高めたり、残留応力の発生を防止したりするために用いられている。また、特許文献19では、中空状充填剤ないし熱膨張性マイクロカプセルは、発泡状の硬化物を作製するために用いられるものである。
【0018】
このような樹脂及び樹脂組成物を物品の接着用途に用いると様々な問題が生じる。例えば、保存安定性について全く考慮されていないため、保存安定性によっては、使用する直前に膨張性粒子を配合することが必要である。そのため、均一性の不足により初期接着力や剥離性のばらつきが生じる可能性がある。加えて、作業性や泡かみ等の問題が生じる恐れもある。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、活性エネルギー線の照射により容易に硬化して高い接着強度が得られ、切削や研磨等の加工の後は加熱により容易に剥離することができ、かつ耐エッチング液性及び保存安定性に優れた実用性の高い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、エチレン性不飽和基を有する化合物、光重合開始剤及び熱膨張性マイクロカプセルからなる組成物において、エチレン性不飽和基を有する化合物、及び光重合開始剤として特定のものを用いた場合に、硬化性、接着強度、加熱による剥離性及び保存安定性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
すなわち、本発明にかかる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物と、光重合開始剤とを少なくとも含有する樹脂成分と、熱膨張性マイクロカプセルとを含むことを特徴としている。
【0022】
上記樹脂成分は、1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物をさらに含有することが好ましい。
【0023】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、上記1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物は、ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0024】
また、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物として、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート、(c)直鎖アルキル基又は分岐アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート、及び(d)ヒドロキシル基、カルボン酸基、又はエポキシ基を有するモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0025】
また、上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物として、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及び(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0026】
上記(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環有するモノ(メタ)アクリレート、及び(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートの合計含有量は、上記樹脂成分の合計重量に対して、30質量%以上であることが好ましい。
【0027】
また、上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物として、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及び(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートの少なくとも一方に加えて、(d)ヒドロキシル基、カルボキシル基又はエポキシ基を含むモノ(メタ)アクリレートをさらに含有することが好ましい。
【0028】
さらに、上記(d)ヒドロキシル基、カルボキシル基又はエポキシ基を含むモノ(メタ)アクリレートの含有量は、上記樹脂成分100質量部に対して5〜40質量%であることが好ましい。
【0029】
さらに、上記光重合開始剤は、380nm〜600nmの可視光感光性を有することが好ましい。
【0030】
また、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、上記熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、上記樹脂成分100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。
【0031】
さらに、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ヒュームドシリカをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、以上のように、エチレン性不飽和基を有する特定の化合物及び光重合開始剤と、熱膨張性マイクロカプセルとを含有する。そのため、活性エネルギー線の照射により容易に硬化して高い接着性を有するという効果を奏する。さらに、硬化後、当該硬化物を加熱することにより、当該硬化物を容易に剥離できるという効果を奏する。また、上記構成によれば、当該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、高い耐エッチング液性、及び保存安定性を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<I.活性エネルギー線硬化型樹脂組成物>
本発明にかかる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称する)は、(A)1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する樹脂成分と、(D)熱膨張性マイクロカプセルとを含む組成物である。さらに、上記樹脂成分は、(B)1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物を含有することが好ましい。また、本発明にかかる樹脂組成物には、上記樹脂成分及び熱膨張性マイクロカプセルに加えて、(E)その他の成分を含有させることもできる。ここで、本発明にかかる樹脂組成物の各構成成分について、具体的に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレート及びメタクリレートの総称として用いる。
【0035】
(A)1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物
本発明にかかる樹脂組成物の上記樹脂成分には、1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物が含有される。上記1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物は、多官能基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーであり、分子量が中高分子量のものであることが好ましい。上記中高分子量とは、具体的には、重量平均分子量500〜30000であることが好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0036】
上記のような(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、本発明にかかる樹脂組成物の硬化物の接着強度を高めることができる。また、分子量が中高分子量のものを用いることにより、上記樹脂組成物が硬化した樹脂中における分子間の絡み合いや架橋が増加し、当該樹脂硬化物柔軟性や靭性を付与することができる。さらに、上記(メタ)アクリレートオリゴマーを添加することにより、硬化収縮を低減し、硬化時の残留応力による接着強度の低下を抑えることができる。
【0037】
上記1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物の具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリオレフィン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明では、上記例示した(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、ウレタン(メタ)アクリレート、又はエポキシ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。これにより、本発明にかかる樹脂組成物の硬化性、当該樹脂組成物の硬化物の物性、接着強度及び剥離性をより優れたものとすることができる。
【0038】
ここで、本発明に用いることが可能なウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリオレフィン(メタ)アクリレートについて、より具体的に説明する。
【0039】
(1)ウレタン(メタ)アクリレート
本発明に用いることが可能なウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリカーボネート変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン変性ウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。特に、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物等を好ましく用いることができる。
【0040】
ここで、ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の低分子量ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びにポリエチレンポリプロポキシブロックポリマージオール等のブロック又はランダムポリマーのジオール等のポリエーテルポリオール;上記低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール又は/及びポリカーボネートポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0041】
また、上記有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシイレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート2量体、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート相互付加物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリス(トリレンジイソシアネート)付加物及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
さらに、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
(2)ポリエステル(メタ)アクリレート
本発明に用いることが可能なポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
【0044】
ここで、ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとのカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。また、カルボン酸又はその無水物としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。
【0045】
(3)エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物である。具体的には、文献「UV・EB硬化材料」の74〜75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。上記エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o−フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ーブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX−310[ナガセ化成(株)]等が挙げられる。さらに、文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の289〜296頁に記載されているような化合物等が挙げられる。本発明では、上記アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等を用いることが好ましい。
【0046】
(4)ポリエーテル(メタ)アクリレート
本発明に用いることが可能なポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、ポリアルキレングリコール(メタ)ジアクリレートがあり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
(5)ポリオレフィン(メタ)アクリレート
本発明に用いることが可能なポリオレフィン(メタ)アクリレートとしては、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール等と(メタ)アクリル酸の脱水縮合物や、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のエポキシ変性物への(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0048】
本発明において、上記例示したような1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明にかかる樹脂組成物において、1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物の含有量は、上記樹脂成分の合計質量に対して、5〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることが特に好ましい。この割合が5質量%に満たない場合は、得られる硬化物が脆くなったり、接着強度が低くなったりする傾向がある。一方、60質量%を超える場合は、樹脂組成物の粘度が上昇し、作業性が低下することがある。
【0050】
また、1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物には粘度調整などの目的で、必要に応じて1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「ポリ(メタ)アクリレート」ともいう)を配合することができる。ポリ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)クリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0051】
(B)1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物
上記樹脂成分には、1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物が含有される。上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物を含有させることによって、上記樹脂組成物の粘度を低減させ、作業性を改善することができる。また、上記樹脂組成物の硬化物の物性や接着強度、剥離性、及び保存安定性を調節することができる。
【0052】
本発明において用いることが可能な1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物としては、具体的には、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「モノ(メタ)アクリレート」ともいう)を挙げることができる。
【0053】
上記モノ(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)クリレート、フェノキシエチル(メタ)クリレート、p−ノニルフェニルエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、p−クミルフェニルエチレンオキサイド変性(メタ)クリレート等の芳香族環を有するもの;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するもの;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基を有するもの;2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシエチル(メタ)クリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノメチルテトラヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、グリシジル(メタ)クリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエステル等のヒドロキシル基カルボン酸基、又はエポキシ基等の極性基を有するもの;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエーテル鎖を有するものなどを挙げることができる。また、これ以外にも、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)クリレート等を用いることができる。
【0054】
これら1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、本発明に用いることが可能な(1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物は、上記例示したモノ(メタ)アクリレートに限定されるものではない。
【0055】
本発明では、上記例示した(メタ)アクリレートのうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートを上記樹脂成分に含有させることが特に好ましい。このようなモノ(メタ)アクリレートを用いることにより、上記樹脂組成物の硬化物の物性、接着強度、剥離性、及び保存安定性に優れた樹脂組成物とすることができる。具体的には、芳香族環又は脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、樹脂硬化物の吸水率を低くすることができる。そのため、切削や研磨等の加工時に薬液を使用しても接着強度の低下が生じにくい。また、樹脂硬化物が粘着質となりにくい。そのため、樹脂硬化物を剥離した後に、当該樹脂硬化物が再付着したり、糊残りが生じたりすることがない。その結果、硬化物の剥離性、作業性に優れたものとすることができる。さらに、熱膨張性マイクロカプセルの高分子外殻材を膨潤させにくいため、保存安定性を良好なものとすることができる。
【0056】
上記ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートを上記樹脂成分に含有させる場合、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及びヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートの合計含有量は、上記樹脂成分の30質量%以上であることが好ましい。上記範囲とすることにより、上記樹脂組成物の硬化物の物性、接着強度、剥離性、及び保存安定性の良好なものとすることができる。逆に、30質量%未満であると、硬化物物性、接着強度、剥離性、及び保存安定性の低下を生じやすくなる傾向がある。
【0057】
また、本発明では、上記樹脂成分には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はエポキシ基を有するモノ(メタ)アクリレートを含有させることもできる。このようなモノ(メタ)アクリレートを用いることにより、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等の種々材質に対する密着性を優れたものとすることができる。
【0058】
上記樹脂成分において、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はエポキシ基を有するモノ(メタ)アクリレートを含有させる場合、その含有量は、上記樹脂成分の5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。上記範囲内とすれば、接着強度、及び保存安定性の良好なものとすることができる。逆に、5質量%未満では十分な密着性が得られなくなる傾向がある。また、40質量%を超えると保存安定性が著しく低下し、作業性が悪くなる傾向がある。さらに、40質量%を超えた場合には、切削や研磨等の加工において使用される薬液への耐久性が低下することもある。
【0059】
本発明では、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシル基、カルボキシル基、及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はエポキシ基を有するモノ(メタ)アクリレートとを併用することが特に好ましい。
【0060】
一方、本発明にかかる樹脂組成物の樹脂成分として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はエポキシ基を含み、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシル基、カルボキシル基、又はエポキシ基を含み、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートを含有させる場合、その含有量が多くなると、芳香族環及び/又は脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしての上記効果が得られにくくなる傾向がある。具体的には、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノメチルテトラヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタクリレート)等では吸水率が高くなって、加工時の接着強度低下を生じたり、熱膨張性マイクロカプセルの高分子外殻材を膨潤させて保存安定性が不良となったりする傾向がある。
【0061】
本発明にかかる樹脂組成物の樹脂成分には、さらに、ラジカル重合性を有するビニル化合物を配合してもよい。上記ビニル化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、及びスチレン等が挙げられる。これらのうち、特にN,N−ジメチルアクリルアミド、及びアクリロイルモルフォリン等のアクリルアミド類を用いることが好ましい。これらのアクリルアミド類を用いることにより、本発明にかかる樹脂組成物の硬化性、硬化物物性、接着強度、保存安定性、取り扱い時の安全性等を良好なものとすることができる。また、これらのビニル化合物の配合割合は、上記樹脂成分の0〜20質量%であることが好ましい。すなわち、本発明において、上記ビニル化合物を必ずしも用いなくてもよい。
【0062】
(C)光重合開始剤
本発明にかかる樹脂組成物の樹脂成分には、光重合開始剤が含有される。上記光重合開始剤としては、一般的に用いられるラジカル性光重合性開始剤を用いることができる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4’−トリメチルペンチルホソフィンオキサイド、カンファーキノン等を挙げることができる。
【0063】
これらの光重合開始剤の中では、380〜600nmの可視光感光性を有する光重合開始剤を用いることがより好ましい。一般に、熱膨張性マイクロカプセルは波長の短い紫外線を透過させにくい。したがって、上記のような可視光感光性を有する光重合開始剤を使用することにより上記樹脂組成物の硬化性を優れたものとすることができる。380〜600nmの可視光感光性を有する光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4’−トリメチルペンチルホソフィンオキサイド、カンファーキノン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等を挙げることができる。
【0064】
本発明にかかる樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、上記樹脂成分の0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜7質量%であることが特に好ましい。上記範囲内とすれば、本発明にかかる樹脂組成物の良好に硬化させることができる。逆に、上記含有量が0.1質量%未満であると、組成物を硬化させることができないことがある。また、10質量%を超えると、照射された光が光重合開始剤に吸収され、上記(メタ)アクリレートオリゴマー、及び(メタ)アクリレートへの光透過性が不充分となり、硬化性が低下することがある。なお、本発明では、上記例示したような光重合開始剤を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、上記樹脂成分には、アミン系増感剤等の増感剤を含有させることもできる。
【0065】
(D)熱膨張性マイクロカプセル
上記熱膨張性マイクロカプセルとは、低沸点炭化水素(炭素数1〜8の炭化水素、例えば、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、オクタン、イソオクタン等)をガスバリア性のある高分子外殻材(塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、又は塩化ビニリンデン−アクリロニトリル共重合体)でマイクロカプセル状に包み込んだ微小球体である。当該熱膨張性マイクロカプセルは、加熱することによって高分子外殻材が軟化するとともに、殻内のガス圧が増すことで体積が数倍から100倍程度まで急激に膨張する。本発明では、この膨張力により、上記樹脂組成物の硬化物を剥離させる。このような熱膨張性マイクロカプセルは、一般に乳化重合によって合成される。例えば、分散剤の入った水中に、高分子外殻材を形成するポリマーの単量体、重合開始剤、及び発泡剤(低沸点炭化水素)を投入し、高速で攪拌して乳化させる。その後、重合反応によって得た水分散微粒子を乾燥することによって、熱膨張性マイクロカプセルを得ることができる(特公昭42−26524号を参照)。このようにして製造される熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は3〜50μm程度である。本発明においても、平均粒子径が3〜50μmである熱膨張性マイクロカプセルを用いることが好ましい。
【0066】
また、熱膨張性マイクロカプセルの加熱による発泡開始温度は、その高分子外殻材の種類、厚さ、そして内包される低沸点炭化水素によって変化する。本発明では、80℃〜150℃で発泡開始する熱膨張性マイクロカプセルを用いることが好ましい。このような熱膨張性マイクロカプセルを用いれば、加熱剥離を良好に行うことができる。
【0067】
また、このような熱膨張性マイクロカプセルは、広く市販されている。本発明では、そのような市販品の熱膨張性マイクロカプセルを用いてもよい。市販の熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えば、日本フィライト社製の商品名「エクスパンセル551DU」、「エクスパンセル461DU」、「エクスパンセル051DU」、「エクスパンセル091DU」、「エクスパンセル092DU」、「エクスパンセル642DU」、「エクスパンセル009DU80」、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアーF−20D」、「マツモトマイクロスフェアーF−30D」、「マツモトマイクロスフェアーF−36D」、「マツモトマイクロスフェアーF−40D」、「マツモトマイクロスフェアーF−85D」、「マツモトマイクロスフェアーF−100D」、大日精化社製の商品名「ダイフォームL320」、「ダイフォームL330」、「ダイフォームM320」、「ダイフォームM330」等が挙げられる。
【0068】
本発明にかかる樹脂組成物において、上記熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、上記樹脂成分100質量部に対し10〜100質量部であることが好ましく、15〜70質量部であることがより好ましく、20質量部〜50質量部であることが特に好ましい。上記範囲内とすれば、上記樹脂組成物の硬化物の物性、接着強度、剥離性、及び保存安定性に優れた樹脂組成物とすることができる。逆に、上記含有量が10質量部より少ないと加熱処理時の剥離性が低下する傾向がある。また、100質量部を超えると粘度が高くなり、塗布性、作業性が悪くなったり、硬化性、硬化物物性、接着強度が低下したりする傾向がある。
【0069】
また、上記熱膨張性マイクロカプセルには、その周囲に無機材料や熱硬化性樹脂からなる最外層を設けることもできる。これにより、上記熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度を制御したり、保存安定性を向上させたりすることができる。
【0070】
上記熱膨張性マイクロカプセルに上記最外層を設ける方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、メッキ法、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、浸漬法、光硬化法等の手法により、無機材料、例えば、金、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、鉛、半田、錫、二酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を被覆したり、熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等を被覆したりする方法を用いればよい。
【0071】
(E)その他の添加剤
本発明にかかる樹脂組成物には、上記樹脂成分、及び熱膨張性マイクロカプセルに加えて、ヒュームドシリカ等の粘度調整剤;シリカ、アルミナ、ポリマー粒子等の充填剤;シランカップリング剤;可塑剤;粘着性付与剤;顔料;染料;及び各種安定剤等の種々の添加剤を加えることができる。
【0072】
ヒュームドシリカを添加することにより、上記樹脂組成物にチキソ性を付与することができる。その結果、熱膨張性マイクロカプセルの浮遊、沈降等の分離を抑制することができる。また、ヒュームドシリカの添加により、上記樹脂組成物の塗布性、作業性を適宜調整することもできる。本発明に用いることが可能なヒュームドシリカとしては、四塩化珪素を原料として高温で加水分解することにより得られる無水非晶質シリカ微粒子を挙げることができる。また、必要に応じてヘキサメチルジシラザン、メチルクロロシラン類及びシリコーンオイル類等で表面処理をした疎水性シリカ微粒子を、ヒュームドシリカとして添加してもよい。本発明で添加するヒュームドシリカの一次粒子平均径は、0.03μm以下であることが好ましい。上記範囲内とすれば、上記の効果を得ることができる。一方、一次粒子平均径が0.03μmを超えると、熱膨張性マイクロカプセルの浮遊や沈降を抑制する効果が乏しくなり、保存安定性に問題を生じることがある。また、本発明におけるヒュームドシリカの含有量は、上記樹脂成分100質量部に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0073】
本発明にかかる樹脂組成物は、以上のような成分を含有するが、その製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、上記の各成分を従来公知の方法を適宜選択して用いて、混合することにより製造することができる。
【0074】
次に、本発明にかかる樹脂組成物が有する物性について説明する。本発明にかかる樹脂組成物は、上述の構成を備えているため、活性エネルギー線硬化性、接着性、熱剥離性、耐エッチング液性及び保存安定性の全てが優れている。ここでは、本発明にかかる樹脂組成物の(i)活性エネルギー線硬化性、(ii)接着性、(iii)熱剥離性、(iv)耐エッチング液性、及び(v)保存安定性について、より詳しく説明する。
【0075】
(i)活性エネルギー線硬化性
本発明にかかる樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により、短時間で硬化する。上記活性エネルギー線としては、紫外線又は可視光線等を用いることができる。特に、本発明にかかる樹脂組成物は、波長380〜600nmの活性エネルギー線の照射により、硬化することが好ましい。
【0076】
また、上記樹脂組成物を硬化させるために照射する活性エネルギー線の照度、及び照射時間は、特に限定されるものではなく、上記樹脂組成物自体の硬化性、塗布状態や活性エネルギー線の照射具合等を考慮して選択すればよい。一般的には、積算光量(照度と照射時間の積)を100〜6000mJ/cmとすることが好ましく、上記照射時間は、3分間以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、上記樹脂組成物を、短時間で硬化させることができる。
【0077】
(ii)接着性
本発明にかかる樹脂組成物は、接着強度が高い。具体的には、上記樹脂組成物の接着強度は、引張りせん断接着強さが1.0MPa以上であることが好ましい。また、クロス引張り接着強さが、0.2MPa以上であることが好ましい。上記範囲内であれば、上記樹脂組成物を仮固定用の接着剤やマスキング剤として好適に用いることができる。
【0078】
(iii)熱剥離性
本発明にかかる樹脂組成物は、上記活性エネルギー線照射により被着体上で硬化した後、上記樹脂組成物の硬化物を加熱することにより、当該硬化物を上記被着体から剥離することができる。上記硬化物を剥離する際の加熱温度は、特に限定されるものではないが、70〜200℃の範囲内とすることが好ましく、80〜150℃の範囲内とすることがより好ましく、90〜120℃の範囲内とすることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、被着体を熱変形させたり、熱劣化させたりすることなく、上記硬化物を被着体から剥離させることができる。一方、上記加熱温度が70℃未満となると、熱膨張性マイクロカプセルの発泡性が不十分となって、剥離が困難となったり、剥離に要する時間が異常に長くなったりする場合がある。また、上記加熱温度が200℃を超えると、被着体自身が熱変形したり、熱劣化したりすることがある。さらに、上記硬化物自体の熱分解により糊残りが生じたりする恐れがある。
【0079】
本発明にかかる樹脂組成物の硬化物を剥離する際の加熱手段については特に限定されるものではない。例えば、熱水への浸漬、オーブン、ドライヤー、加熱蒸気、フッ素系炭化水素蒸気、フッ素系炭化水素浴への浸漬、赤外線加熱炉、及び高周波加熱炉等への投入等が挙げられる。これらの中で安全性やコスト、剥離時の糊残り等を考慮すると、熱水への浸漬が最も好ましい。なお、剥離処理を行う際に、機械的な浸漬揺動、超音波及びバブリング等の操作を加えることもできる。
【0080】
(iv)耐エッチング液性
本発明にかかる樹脂組成物は、耐エッチング液性が高い。具体的には、フッ酸含有のエッチング液に対して、耐性を有することが好ましい。特に、本発明にかかる樹脂組成物では、フッ酸含有のエッチング液に浸漬しても、ガラスなどの基材との剥離がなく、また基材自体の腐食が見られないことが好ましい。このような基材との剥離や、基材自体の腐食の状態は、目視や、場合によっては光学顕微鏡によって確認することができる。
【0081】
(v)保存安定性
本発明にかかる樹脂組成物は、高い保存安定性を有する。具体的には、23℃、褐色のガラス瓶又は黒色のポリエチレン製容器内で保管することにより、1ヶ月以上、物性に影響を与えることなく保存可能な保存安定性を有することが好ましい。なお、本発明にかかる樹脂組成物の保管は、褐色のガラス瓶や黒色のポリエチレン製容器内での保管に限定されるものではなく、遮光条件で保管できる方法であれば、どのような方法で行ってもよい。
【0082】
なお、上記(i)活性エネルギー線硬化性、(ii)接着性、(iii)熱剥離性、(iv)耐エッチング液性、及び(v)保存安定性は、後述する実施例に記載の方法により評価することができる。
【0083】
本発明にかかる樹脂組成物は、上記のような物性を有するため、上記樹脂組成物によれば、必要なときには物品を接着し、その後、接着が不要となったときには、加熱により、剥離することができる。
<II.活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の利用>
本発明にかかる樹脂組成物は、上述したように、活性エネルギー線硬化性、接着性、熱剥離性、耐エッチング液性及び保存安定性の全てが優れている。したがって、本発明にかかる樹脂物は、必要なときには物品を接着し、接着が不要となったときには剥離させることが求められる用途に好適に用いることができる。例えば、物品に対して、切削や研磨等の加工を行う際の仮固定用の接着剤として用いることができる。仮固定用の接着剤として用いる場合、例えば、従来公知の塗布法により、物品に対して上記樹脂組成物を塗布し、その上に当該物品と接着させたい他の物品を重ね、積層状態とした後、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を照射して、上記樹脂組成物を硬化させることにより、仮固定することができる。また、重ね合わされた物品と物品との間に、上記樹脂組成物を浸透して積層した状態とした後、活性エネルギー線を照射して、上記樹脂組成物を硬化させることにより、仮固定することができる。さらに、本発明にかかる樹脂組成物を積層接着とは異なるポッティング接着や含浸による方法で仮固定することも可能である。また、本発明にかかる樹脂組成物は、部分的なマスキング剤として使用することも可能である。例えば、マスキング剤として用いる場合、マスキングが必要な個所に本発明の樹脂組成物を塗布する。その後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、マスキングを行うことができる。
【0084】
このように、本発明にかかる樹脂組成物は、様々な用途に用いることができるため、多様多岐の技術分野で利用することができる。例えば、ガラス部品及びセラミック部品等の無機部品、金属部品、並びにプラスチック部品等の各種物品の製造において、当該物品を加工する際の仮固定用の接着剤として好適に用いることができる。なかでも、水晶振動子、レンズやプリズム等の光学デバイス;コンデンサ、パッケージ部品、磁石等の精密部品;平板ガラス製品;シリコンウエハ等を基板とする半導体素子等の製造において、特に好適に用いることができる。上記例示したような用途で用いれば、加工対象となる物品に対して、目的とする加工処理を容易に行うことができる。つまり、本発明にかかる樹脂組成物は、優れた作業性を有する。その結果、上記例示したような物品の生産性を高めることが可能となる。さらに、本発明にかかる樹脂組成物は、上述の構成、及び物性を有するため、作業の安全性を向上させ、環境汚染を低減できるという点でも優れた効果を奏することもできる。
【0085】
ここで、本発明の樹脂組成物の利用にかかる実施形態について、図1〜図4を用いて、より具体的に説明する。なお、以下の記載は、あくまで例示に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
(1)ウエットエッチング法による半導体基板加工への利用
まず、ウエットエッチング法による半導体基板加工において、本発明にかかる樹脂組成物を用いる実施形態について、説明する。図1は、本発明にかかる樹脂組成物をマスキング剤として用いて、ウエットエッチング法により半導体基板を加工する工程を模式的に示す図である。図1における基板11は、シリコンウエハのように半導体の基板に用いられる基板である。また、樹脂組成物31、樹脂硬化物32、及び加熱後樹脂硬化物33は、それぞれ、本発明にかかる樹脂組成物、当該樹脂組成物を硬化させた硬化物、及び当該硬化物を加熱して剥離可能な状態とした硬化物を指す。
【0087】
樹脂組成物31を用いて、基板11を半導体基板に加工する場合、まず、基板11の裏面側全面に、樹脂組成物31を、従来公知の方法により塗布する。その後、紫外線20を照射し、樹脂組成物31を硬化させる。これにより、樹脂組成物31は、樹脂硬化物32になる。上記の工程を、以下、「塗布及び硬化工程」ともいう。上記塗布及び硬化工程における紫外線20の照度及び照射時間は特に限定されないが、例えば、2000W高圧水銀灯にて積算光量1000mJ/cm(365nm)程度の紫外線を、おおよそ25秒間照射すればよい。
【0088】
次に、上記塗布及び硬化工程後の基板11の表面に、フォトレジスト110でパターニングを行う(以下、「パターニング工程」ともいう)。その後、エッチャント40に上記基板11を浸漬し、基板11の表面を所定のパターンに加工する(以下、「ウエットエッチング工程」ともいう)。上記ウエットエッチング工程において、基板11の裏面全体は、樹脂硬化物32によって保護されている。そのため、基板11の裏面をエッチャント40に触れさせることなく、ウエットエッチング工程を行うことができる。上記エッチャント40は、特に限定されるものではなく、ウエットエッチングに用いることが可能な従来公知のエッチング液を用いることができる。
【0089】
上記ウエットエッチング工程後、基板11を熱水50に浸漬することにより、樹脂硬化物32を加熱する。これにより、樹脂硬化物32は、加熱後樹脂硬化物33となり、基板11から剥離させることが可能となる。このとき、機械的な浸漬揺動、超音波及びバブリング等の操作を加えてもよい。次に、基板11の表面の加工に使用したフォトレジスト110を薬液60を用いて剥離処理する(以下、「レジスト剥離工程」ともいう)。ここで、薬液60としては、フォトレジスト110を剥離させることが可能なレジスト剥離液もしくは適当な有機溶剤を適宜選択して用いればよい。なお、加熱後樹脂硬化物33の一部が、熱剥離時において基板11に付着して残った場合でも、薬液60による剥離処理によって完全に洗浄される。よって、加熱後樹脂硬化物33の付着による歩留まり低下は起こらない。
【0090】
以上のような工程を経ることにより、基板11の裏面側をエッチャント40から保護しながら表面側をウエットエッチング処理により加工することができる。
【0091】
本実施形態では、基板11の裏面全体を保護する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、基板11の裏面の一部を保護してもよいし、基板11の表面の一部(例えば周辺だけ)を保護してもよい。
【0092】
また、上記塗布及び硬化工程後に、上記パターニング工程を行う実施形態について説明したが、他の実施形態として、上記パターニング工程の後に、上記塗布及び硬化工程を行ってもよい。
【0093】
さらに、本実施形態では、基板11の裏面全体に樹脂組成物31を塗布する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記塗布及び硬化工程において、図2(b)に示すように、スペーサー70を介して、耐エッチング性を有する保護シート80を基板11に積層し、周辺部分だけを樹脂組成物31によってシールすることもできる。この場合でも、基板11の裏面全体を保護することに限定されず、目的に応じて様々なマスキングを行うことが可能である。
【0094】
(2)フォトレジスト代替物としての利用
本発明にかかる樹脂組成物は、紫外線などの活性エネルギー線によって露光されると、露光された部分が硬化する。したがって、本発明にかかる樹脂組成物は、半導体装置製造などで使用しているフォトレジストの代替物として用いることができる。ここで、本発明にかかる樹脂組成物をフォトレジスト代替物として利用する実施形態について、図3に基づき説明する。
【0095】
図3は、本発明にかかる樹脂組成物をフォトレジストに用いて、半導体基板を加工する工程を模式的に示す図である。なお、説明の便宜上、図1及び図2で用いた部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0096】
樹脂組成物31をフォトレジストに用いて基板11を半導体基板に加工する場合には、まず、基板11の表面に形成された被加工膜90上に樹脂組成物31を所定の厚さとなるように均一に塗布する。次に、所定のパターンが焼き付けられたフォトマスク100を介して、紫外線20を照射する。上記フォトマスク100は、ガラスなどにより形成され、紫外線20を透過させる部分と、透過させない部分とを有する。そのため、被加工膜90上に塗布された樹脂組成物31の一部分には紫外線20が照射され、一部分には照射されない。その結果、紫外線20が照射された部分では、樹脂組成物31が硬化し、樹脂硬化物32となる。一方、紫外線20が照射されなかった部分では、樹脂組成物31は、硬化せず液体状のまま残存することになる。つまり、樹脂組成物31のままである。なお、紫外線20の照度及び照射時間は特に限定されるものではなく、例えば、2000W高圧水銀灯にて積算光量1000mJ/cm(365nm)程度の紫外線を、おおよそ25秒間照射すればよい。
【0097】
次に、上記基板11を有機溶剤61を用いて洗浄し、硬化していない余分な樹脂組成物31を除去する。上記有機溶剤61は、特に限定されるものではない。例えば、IPAなどを用いることができる。本発明にかかる樹脂組成物は、有機溶剤に可溶性である。そのため、上記有機溶剤61による洗浄により、基板11から余分な樹脂組成物31を、効率よく除去することができる。その後、上記(1)ウエットエッチング法による半導体基板加工への利用で説明した方法を用いて、樹脂硬化物32のパターニングを行う。このようにして形成された樹脂硬化物32のパターンは、耐エッチング性に優れたレジスト膜となる。
【0098】
次に、パターン形成された基板11に対してウエットエッチング処理を行い、所望のパターンに加工する。最後に、当該基板11を熱水50に浸漬することによって、樹脂硬化物32を加熱する。これにより、樹脂硬化物32は、加熱後樹脂硬化物33となり、基板11から剥離除去することができる。図2には図示していないが、加熱後樹脂硬化物33を剥離した後、当該基板11を必要に応じて有機溶剤などによって、洗浄処理してもよい。
【0099】
このように、本発明にかかる樹脂組成物は、シリコンウエハ基板の表面をウエットエッチングで加工する為のレジストパターンとして好適に利用できる。つまり、このような用途では、本発明にかかる樹脂組成物は、ネガレジストのように機能する。本発明は、上記に限定されるものではなく、様々な態様でウエットエッチング処理に利用可能である。さらに、ウエットエッチングに限らず、ドライエッチングや物理的加工などに対するマスキングパターン材料としても好適に利用できる。
【0100】
(3)ガラス板のエッチング加工における利用
本発明にかかる樹脂組成物は、上述したように、接着強度が強力である。そのため、大面積の平板ガラスの仮固定用途に対しても好適に利用できる。具体的には、ガラス板をエッチングする際、保護シートの仮固定用の接着剤として用いることも可能である。ここで、本発明にかかる樹脂組成物を保護シートの仮固定用の接着剤に用いて、ガラス板を所望の厚みにエッチングする実施形態について、図4を用いて説明する。なお、説明の便宜上、図1〜3で用いた部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0101】
図4に示すように、まず、300×400mmの平板ガラス12の片面に対し、スペーサー70を介して、適当な耐エッチング性を有する保護シート80を積層する。周辺部分に樹脂組成物31を浸透させる。これに、紫外線20を照射し、樹脂組成物31を硬化させる。これにより、樹脂組成物31は、樹脂硬化物32になる。紫外線20の照度及び照射時間は特に限定されるものではないが、例えば、2000W高圧水銀灯にて積算光量1000mJ/cm(365nm)程度の紫外線を、約25秒間照射すればよい。
【0102】
次に、平板ガラス12をエッチャント40に浸漬し、所望の厚さになるまでエッチングして薄型加工する。エッチャント40は、特に限定されるものではなく、バッファードフッ酸などを用いればよい。この時、保護シート80によってマスキングされている面側はエッチングされることはない。加工終了後、平板ガラス12を熱水50に浸漬し、樹脂硬化物32を加熱する。これにより、樹脂硬化物32は、加熱後樹脂硬化物33となり、平板ガラス12から剥離する。このとき、機械的な浸漬揺動、超音波及びバブリング等の操作を加えてもよい。
【0103】
以上のように、本発明にかかる樹脂組成物によれば、平板ガラスの片面だけを化学的に加工することによって、ガラスの厚みを所望のサイズまで薄型加工できる。
【0104】
なお、ここでは、保護シート80を用いる実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、平板ガラス12の保護面全体に樹脂組成物31を塗布する実施形態、すなわち、樹脂組成物31をマスキング剤として用いる実施形態も本発明に含まれることは言うまでもない。
【0105】
さらに、様々な態様でウエットエッチング処理に利用可能である。例えば、平板ガラス12全面を薄型加工するのでなく、平板ガラス12の一部の領域を選択的に薄型加工することも可能である。また、選択的に平板ガラス12の両面をマスキングすることによって平板ガラス12の大きさを変えるような加工も可能である。さらに、ウエットエッチングに限らず、ドライエッチングや物理的加工などに対するマスキングにも好適に利用できる。
【0106】
このような平板ガラス加工技術は、例えば、キャンバスの代わりに平板ガラスに描いた絵画を額縁に入れようとした際、厚すぎて収まらない場合に絵画の描かれた面をマスキングしてガラスを薄型加工し、所望の厚みにして額縁に収めるために用いることができる。また、ガラスを極端に薄型加工することにより、額縁も含めた総重量を低くして安全性を確保するようなケースにも利用できる。他にも、例えば、教会などの窓にはまっているステンドグラスを別の教会に移設するなどの場合に、教会の窓枠の設計に合わせてステンドグラスの厚みを調整するために用いることができる。さらに、ガラスの厚みが薄くなれば光の透過率が上がり、その結果として、教会の部屋の明るさを改善するという効果も得られる。
【0107】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲にしめした範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0108】
本発明について、実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行うことができる。なお、本実施例において、樹脂組成物の保存安定性、硬化性、引張りせん断接着強さ、クロス引張り接着強さ、耐エッチング液性、及び剥離性は、以下のようにして評価した。また、以下において、「部」とは質量部を意味する。
【0109】
〔保存安定性〕
樹脂組成物を褐色ガラス瓶中、23℃で1週間保存した。熱膨張性マイクロカプセルの浮遊又は沈降等の分離の有無を外観から観察した。また、内容物をスパチュラでかき混ぜて、ゲル化物が生じていないか、粘度が著しく変化していないかを確認した。なお、保存安定性の評価は、表1では、糸曳きの有無を目視で確認し、糸曳きがなかったときを○、糸曳きがあったときを△、底部での凝集があったときを×と示した。
【0110】
〔硬化性〕
樹脂組成物を使用して2mm厚の層を形成し、250W高圧水銀灯にて100mW/cm(365nm)の照度にて紫外線照射を行い、底面の硬度が飽和するまでに要した光照射量を評価した。
【0111】
〔引張りせん断接着強さ〕
JIS K 6850の引張りせん断接着強さ試験方法に準じて測定した。接着面積は半径5mmの円又は縦25mm×横12.5mmの長方形とした。光照射条件としては、100mW/cm(365nm)、30秒間で行なった。
【0112】
〔クロス引張り接着強さ〕
スライドガラス(26mm×76mm×1.2mm厚)の中央部に樹脂組成物を塗布し、もう1枚のスライドガラスを交差させ十字状にして貼りあわせた。接着面積は半径が約5mmの円となるようにした。光照射条件としては、100mW/cm(365nm)、30秒間で行った。硬化後、各々のスライドガラスの両端を面に垂直方向、それぞれ反対方向に力をかけ、剥離した際の強度を接着面積で割り込んだ値をクロス引張り接着強さとした。
【0113】
〔耐エッチング液性〕
スライドガラス(26mm×26mm×1.2mm厚)2枚の中心部に厚さ200μmのスペーサーを挟み込み、樹脂組成物をスライドガラスの4辺に5mm以下だけ染み込ませ、1.5kWメタルハライドランプにて2000mJ/cmの紫外線照射を行い硬化させた。その後、上記処理を施したスライドガラスを40℃に加熱したエッチング液に90分間浸漬した。次に、樹脂組成物の硬化物に囲まれたガラス板の中央部に腐食が無いことを目視で確認した。なお、耐エッチング液性の評価は、表1では、マスキングしたガラスの内部を目視で観察し、ガラスに腐食がなく、かつガラスと樹脂組成物との間に剥離がないものを○で示した。また、ガラスに腐食はないものの、剥離が認められたものを△で示し、ガラスの腐食が認められたものを×で示した。
【0114】
〔剥離性〕
スライドガラス(26mm×76mm×1.2mm厚)2枚の両端に200μm厚のスペーサーを挟んで、樹脂組成物を介して26mm幅×約70mm長で積層した。1.5kWメタルハライドランプにて2000mJ/cmの紫外線照射を行い硬化させた。次に、上記の処理を施したスライドガラスを、90〜100℃の熱水に浸漬し、剥離に要する時間を測定した。また、剥離後の状態に関して、ガラス表面に接着剤が残っているか否かを目視で確認した。その結果、全く痕跡無く剥離した場合を○、樹脂の痕跡が発生した数が50%以下のものは△、50%以上の確率でガラス上に樹脂の一部が残った場合を×として評価した。
【0115】
〔実施例1:活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造〕
(A)成分のポリカーボネート系ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:約16000)11部、ポリエステルアクリレート11部、(B)成分のラウリルアクリレート45部、(C)成分の2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド3部、並びに(D)成分の熱膨張性マイクロカプセルとしてマツモトマイクロスフェアーF−36D 30部(平均粒子径5〜15μm、熱膨張開始温度75〜85℃)、及びヒュームドシリカであるアエロジルR202 0.3部を常法に従い攪拌混合することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。こうして得られた樹脂組成物を、上記の方法に従い、その物性を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
本実施例1では、(B)成分として、ヒドロキシル基、カルボキシル基あるいはエポキシ基を含まず、芳香族環及び/又は脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートであるラウリルアクリレートを使用した。その結果、表1に示すように、剥離時に糊残りがあるものの、本用途が要求する性能は満たした。
【0118】
〔実施例2〜6:活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造〕
各成分を表1に示す組成に変更する以外は実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物について、上記の方法にしたが、その物性を評価した。それらの結果を表1にそれぞれ示す。
【0119】
実施例2では、(B)成分として、2−アクリロイルオキシエチルコハクを使用した。その結果、表1に示すように、本用途が要求する性能は満たしたものの、1ヶ月の冷蔵保管でゲル状物質の発生がみられた。また、実施例3、4では、いずれも本用途が要求する性能を満たしていた。さらに、実施例5では、熱膨張性粒子であるマツモトマイクロスフェアーF−36Dを15部とした。その結果、表1に示すように、熱水中の剥離速度が低下するものの、本用途が要求する性能を満たしていた。また、実施例6では、熱膨張性粒子であるマツモトマイクロスフェアーF−36Dを60部とした。その結果、表1に示すように、樹脂量が低下したためか、やや接着性・耐エッチング性で低下はみられたものの、本用途が要求する性能は満たしていた。
【0120】
〔比較例1〜2〕
各成分を表1に示す組成に変更する以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を使用して実施例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0121】
表1に示すように、実施例1〜6の樹脂組成物は、硬化性、接着強度、剥離性及び保存安定性の全てが優れていた。一方、比較例1のように、(D)成分の熱膨張性粒子であるマツモトマイクロスフェアーF−36Dを含まない場合は、熱水浸漬や加熱により剥離させることができなかった。また、比較例2のように、(A)成分であるアクリルオリゴマーを含まない場合は十分な接着強度が得られず、また耐エッチング液性が全く見られなかった。
【0122】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明では、特定のエチレン性不飽和基を有する化合物、光重合開始剤、及び熱膨張性マイクロカプセルを樹脂組成物に含有させるため、硬化性、接着強度、剥離性及び保存安定性の全てが優れた樹脂組成物とすることができる。そのため、本発明は、水晶振動子、レンズやプリズム等の光学デバイス、コンデンサ、パッケージ部品、磁石等の精密部品、平板ガラス製品、シリコンウエハ等を基板とする半導体素子等の部品、並びにそれらを備える装置に利用することができる。また、ポッティング接着、含浸接着等での仮固定、部分的なマスキング剤としても使用可能であり、仮固定や、マスキングを必要する諸産業に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明にかかる実施形態において、本発明にかかる樹脂組成物をマスキング剤として用いて、ウエットエッチング法により半導体基板を加工する工程を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、それぞれ、本発明にかかる樹脂組成物を用いて表面全面がマスキングされた基板、及び表面の周辺のみがマスキングされた基板の縦断断面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる実施形態において、本発明にかかる樹脂組成物をフォトレジストとして用いて、半導体基板を加工する工程を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明にかかる実施形態において、本発明にかかる樹脂組成物を仮固定用の接着剤として用いて、平板ガラスを薄型加工する工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0125】
10 加工対象となる物品
11 基板
12 平板ガラス
20 紫外線(UV)
31 樹脂組成物(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)
32 樹脂硬化物
33 加熱後樹脂硬化物
40 エッチャント
50 熱水
60 薬液
61 有機溶剤
70 スペーサー
80 耐エッチング性を有する保護シート
90 被加工膜
100 フォトマスク
110 フォトレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物と、光重合開始剤とを少なくとも含有する樹脂成分と、
熱膨張性マイクロカプセルと、
を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
上記樹脂成分が、1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
上記1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物が、ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物として、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート、(c)直鎖アルキル基又は分岐アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート、及び(d)ヒドロキシル基、カルボン酸基、又はエポキシ基を有するモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物として、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環を有するモノ(メタ)アクリレート、及び(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
上記(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、芳香族環有するモノ(メタ)アクリレート、及び(b)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基を含まず、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートの合計含有量が、上記樹脂成分の合計重量に対して、30質量%以上であることを特徴とする請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
上記1分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物として、(d)ヒドロキシル基、カルボキシル基又はエポキシ基を含むモノ(メタ)アクリレートをさらに含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
上記(d)ヒドロキシル基、カルボキシル基又はエポキシ基を含むモノ(メタ)アクリレートの含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して5〜40質量%であることを特徴とする請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
上記光重合開始剤が、380nm〜600nmの可視光感光性を有する光重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
上記熱膨張性マイクロカプセルの含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、10〜100質量部であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
ヒュームドシリカをさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−326917(P2007−326917A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157852(P2006−157852)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(506148165)クリテックサ−ビス株式会社 (8)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】