説明

熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、ラベル及び該成形品及び該ラベルを装着した容器

【課題】 フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性に優れ、かつ自然収縮が小さく、フィルムの層間剥離が抑制された熱収縮性積層フィルム、及び該フィルムからなる熱収縮性ラベルが装着されたプラスチック製容器の提供。
【解決手段】 屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂を主成分とする(I)層と、少なくとも1種のポリ乳酸系樹脂を主成分とする(II)層の少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムにおいて、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率を30%以上、主収縮方向と直交する方向の収縮率を10%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の樹脂を用いた熱収縮性積層フィルムに関し、特に透明性に優れ、かつ低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、及び収縮仕上がり性に優れ、自然収縮率が小さい、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び該成形品又は該ラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶、ペットボトル等の容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差異化や商品の視認性を向上させ商品価値を高める目的で、容器の外側に印刷を施した熱収縮性ラベルを装着することが多い。
【0003】
上記分野において、需要の増大が見込まれるペットボトルのラベル用途等では、比較的短時間かつ低温において高度な収縮仕上がり外観が得られ、小さな自然収縮率を有する熱収縮性フィルムが要求されている。その理由としては、最近のペットボトルに装着されるシュリンクフィルムのラベリング工程における低温化のニーズが挙げられる。すなわち、現在、蒸気シュリンカーを用いて熱収縮フィルムをシュリンクさせてラベリングする方法が主流となっているが、無菌充填や内容物の温度上昇による品質低下を回避するためには、シュリンク工程はできるだけ低温で行うことが望ましい。このような理由から、現在のシュリンクフィルム業界では、ラベリング時に蒸気シュリンカー内でできるだけ低温で収縮を開始し、かつ蒸気シュリンカー通過後に優れた収縮仕上がり特性が得られる熱収縮性フィルムの開発が行われている。
【0004】
この熱収縮性ラベルの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略することがある。)系樹脂やポリスチレン(以下「PS」と略することがある。)系樹脂が用いられている。これらの樹脂で形成された延伸フィルムは、高い透明性や光沢性、剛性を有し、かつ優れた低温収縮特性を有することから、熱収縮性フィルムとして好適に使用することができる。
【0005】
一方、上記PET系樹脂やPS系樹脂はいずれも石油由来の樹脂であるため、石油の枯渇に関わる問題から石油由来樹脂の代替樹脂が求められているという実状がある。他方、や最近のCO2ガス排出量規制の問題から、少しでも環境に配慮された原料を用いたラベルの開発の必要性が指摘されている。
【0006】
このような状況下、石油由来樹脂の代替樹脂の一例として、ポリ乳酸(以下「PLA」と略することがある。)系樹脂が知られている。このPLA系樹脂は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とする植物由来樹脂であり、化学工学的に量産でき、かつ透明性、剛性等に優れるという特徴を有する。さらにその植物由来原料であるために化石資源の節約のみならず二酸化炭素の排出抑制が可能となり、環境配慮型樹脂として注目を集めている。
【0007】
しかしながら、PLA系熱収縮性フィルムは、剛性や透明性は優れているものの、非常に脆いという欠点を持ち、また収縮温度に対し鋭敏な収縮率変化を示すため、均一な収縮が得られにくく、収縮ムラ等の収縮仕上がりの面で問題があった。
【0008】
上記脆性を改良する目的で、PLA系樹脂に様々な軟質樹脂を混合したフィルムが提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、これらフィルムはマトリックスをPLA系樹脂としているために、その目的及び作用効果を考慮しても熱収縮性フィルムに必要な熱収縮特性、収縮仕上がり性、延伸性等を得ることは困難である。
【0009】
また、PO系樹脂とPLA系樹脂とを組み合わせた積層フィルムも報告されている(特許文献4及び5参照)。しかしながら、特許文献4に記載されたフィルムは、表面層で使用されるPO系樹脂の粘度平均分子量が1,000〜7,000と低いため、機械強度や耐熱性などの物性を十分に発現することができず、熱収縮性フィルムの用途としては不適切なものであった。また、特許文献5に記載されたフィルムは、充填材を35〜80質量%含有した外側層を有するため、延伸後のフィルムは透明性を有さず、機械強度に劣っていた。さらに、特許文献5に記載のフィルムは表面に微細孔が多数あるため、印刷性、すべり性などに劣り、ラベル用途として用いることは困難であった。
【0010】
また、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層とポリ乳酸を主成分とする層とを有する 収縮シートが例示されている(特許文献6参照)。しかしながら、このシートはコンビニエンスストアなどで販売される弁当、惣菜などの収縮包装用フィルムを作製することを目的としインフレーション法による収縮シート成形を試みたものであり、低温高収縮が必要とされるボトル用ラベルとして使用した場合には、十分な低温収縮特性が得られなかった。
【特許文献1】特開2005−068232号公報
【特許文献2】特開平05−179110号公報
【特許文献3】特開平09−316310号公報
【特許文献4】特開2003−276144号公報
【特許文献5】特開2002−347184号公報
【特許文献6】特開2002−019053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、植物由来の樹脂を用いた、優れた低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、及び収縮仕上がり性を有し、かつ自然収縮率が小さい、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、積層フィルムを形成する表裏層と中間層、さらには接着層の各組成を鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得る積層フィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、下記(I)層と(II)層の少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムであって、各層が下記樹脂を主成分としてなり、かつ80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が30%以上であり、主収縮方向と直交する方向の収縮率が10%以下であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム(以下「本発明のフィルム」ともいう。)により解決される。
(I)層:屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂
(II)層:少なくとも1種のポリ乳酸系樹脂
【0014】
本発明のフィルムは前記(I)層を中間層として有し、かつ(II)層を表裏層賭して有することが好ましい。
【0015】
本発明のフィルムにおいて、前記ポリ乳酸系樹脂はD−乳酸及びL−乳酸の共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0016】
本発明のフィルムにおいて、(I)層を構成する樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明のフィルムにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0018】
本発明のフィルムは、フィルム全体の厚みに対する(II)層の厚み比が10%以上70%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のフィルムは、前記(I)層と前記(II)層との間に、接着性樹脂を主成分としてなる、少なくとも一層の(III)層を有することもできる。
【0020】
本発明のもう一つの課題は、本発明の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び前記成形品又は前記熱収縮性ラベルを装着した容器により達成される(以下、順に「本発明の成形品」、「本発明のラベル」及び「本発明の容器」ともいう。)。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフィルムは、PLA系樹脂を主成分とする(II)層と、屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂を主成分とする(I)層を有するため、本発明によれば、透明性に優れたフィルムであり、かつこれまでのPLA系樹脂単独で構成される熱収縮性フィルムでは得られなかった、優れた低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性を兼ね備え、自然収縮率が小さい、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムが得られる。本発明では植物由来のPLA系樹脂を使用するため、本発明のフィルムによれば、バイオマスの利用を促進し、循環型社会を目指す上で好適である。
【0022】
また、本発明の成形品及びラベルは、本発明のフィルムが用いられているため、本発明によれば、透明感があり、かつフィルムの腰強さと収縮仕上がり性の良好な成形品、熱収縮性ラベルを提供することができる。さらに、本発明の容器は、前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着しているため、本発明によれば、外観の見栄えの良好な容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の熱収縮性積層フィルム、並びに成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器について詳細に説明する。
【0024】
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下の範囲を占める成分である。
【0025】
また、本明細書において「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
【0026】
[熱収縮性積層フィルム]
本発明のフィルムの第一の態様は、屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂を主成分として構成される(I)層と、PLA系樹脂を主成分として構成される(II)層との少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムである。
【0027】
<(I)層>
本発明のフィルムにおいて、(I)層は屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂を主成分としてなる層である。本発明の(I)層で使用可能な屈折率1.40以上1.55以下の樹脂は、屈折率がこの範囲にあればよく、好ましくは1.46以上1.52以下の範囲であり、さらに好ましくは1.46以上1.51以下であることが望ましい。この樹脂の屈折率がこの範囲にあれば、そのフィルムのトリミングロスなどをリサイクルする(以下、「再生添加」とも表現する)際の透明性を保つことができる。
【0028】
本発明のフィルムでは、上記屈折率を満たす樹脂であればいずれも樹脂を用いることができる。そのような屈折率を有する樹脂を例示すれば、ポリオレフィン系系樹脂(屈折率1.46〜1.55)、ポリアミド系樹脂(屈折率1.53前後)、芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体(屈折率1.53〜1.55:組成に依存)、などが挙げられる。中でも熱収縮率と成形性の観点からはポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。以下各樹脂について説明する。
【0029】
<ポリオレフィン系樹脂(PO系樹脂)>
本発明のフィルムの(I)層で使用可能なPO系樹脂は、本発明で規定される屈折率を有していれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合体が挙げられる。熱収縮率と成形性の観点からはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物を用いることが好ましい。ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、重合方法や共重合成分などにより多様な種類が存在するため、好ましい種類を以下に示すが、その範囲に限定されるものではない。
【0030】
本発明で使用可能なポリエチレン系樹脂としては、密度が0.94g/cm3以上0.97g/cm3以下の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、密度が0.92g/cm3以上0.94g/cm3以下の中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、密度が0.92g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が挙げられる。
【0031】
上記ポリエチレン系樹脂は、上記の高密度、中密度及び低密度のいずれか又は2種以上を混合したものであってもよいが、フィルムの腰(常温での)剛性、収縮特性等の観点から、その密度は0.87g/cm3以上0.970g/cm3以下の範囲が好ましく、0.875g/cm3以上0.965g/cm3以下の範囲がより好ましく、0.88g/cm3以上0.96g/cm3以下の範囲がさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂の密度が0.87g/cm3以上であればフィルム全体の腰(常温での剛性)や耐熱性を著しく低下させないため、実用上好ましい。一方、ポリエチレン系樹脂の密度が0.97g/cm3以下であれば、低温での延伸性が維持され、実用温度域(70℃以上90℃以下程度)の熱収縮率が充分得ることができる点で好ましい。
【0032】
上記ポリエチレン系樹脂において、延伸性、フィルムの耐衝撃性、透明性等の観点からは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が特に好適に用いられる。LLDPEとしては、エチレンと炭素数3乃至20、好ましくは炭素数4乃至12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。この中でも1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンとの共重合体が好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【0033】
また、上記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:2.16kg)が0.5g/10分以上15g/10分以下であることが好ましく、1.0g/10分以上10g/10分以下であることがさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂のMFRは、均一な厚みのフィルムを得るためにPLA系樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することが好ましい。
【0034】
次にPO系樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレンジエンゴムなどが挙げられる。一般にポリプロピレン系樹脂は高結晶性で強度も高く耐熱性も良好であるが、高結晶性のため熱成形時には高温を要するが、本発明では比較的低温域においても熱成形性の良好な(I)層を形成するために、結晶性が比較的低い軟質ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
前記ポリプロピレン樹脂がプロピレン共重合体である場合、プロピレンと共重合させるα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数2乃至20、より好ましくは炭素数4乃至12のものが挙げられ、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。本発明においては、延伸性、熱収縮特性、フィルムの耐衝撃性や透明性、剛性等の観点から、α−オレフィンとしてエチレン単位の含有率が2質量%以上10質量%以下のランダムポリプロピレンが特に好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【0036】
また、前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:230℃、荷重:2.16kg)が、0.5g/10分以上15g/10分以下が好ましく、1.0g/10分以上10g/10分以下であるものが用いられる。ポリプロピレンのMFRは、均一な厚みのフィルムを得るためにPLA系樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することが好ましい。
【0037】
本発明のフィルムでは、上記PO系樹脂と共重合可能なモノマーとの共重合体も好適に用いることができる。PO系樹脂と共重合可能なモノマーとの共重合体を例示すれば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体などが挙げられる。
【0038】
PO系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体中のエチレン単量体単位の含有率は50質量%以上、好ましくは60質量%以上であり、95質量%以下、好ましくは85質量%以下のものが好適に用いられる。エチレン単量体単位の含有率が50質量%以上であれば、フィルム全体の剛性を良好に維持できるため、好ましい。一方、エチレン単量体単位の含有率が95質量%以下であれば、フィルム全体の腰(常温での剛性)や耐熱性を著しく低下させないため、実用上好ましい。
【0039】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:2.16kg)が、0.5g/10分以上15g/10分以下であることが好ましく、1.0g/10分以上10g/10分以下であることがさらに好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは均一な厚みのフィルムを得るためにPLA系樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することが好ましい。
【0040】
本発明で使用可能なPO系樹脂は、重量平均分子量の50,000以上、好ましくは100,000以上であり、700,000以下、好ましくは600,000以下、さらに好ましくは500,000であることが好ましい。PO系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であれば、所望の機械物性や耐熱性等の実用物性を発現でき、また適度な溶融粘度が得られ、良好な成形加工性が得られる。
【0041】
さらに、本発明のフィルムは、PO系樹脂に収縮率を調整する等の用途目的で、必要に応じて水素添加石油樹脂などを適当量添加することができる。本発明において炭化水素樹脂類とは、石油樹脂類、テルペン樹脂、ロジン系樹脂などを指す。石油樹脂類としては、シクロペンタジエン又はその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂を例示できる。また、テルペン樹脂としては、β−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が例示できる。また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂等が例示できる。炭化水素樹脂類は、PO系樹脂等に混合した場合に比較的良好な相溶性を示すことが知られているが、色調、熱安定性、及び相溶性から水素添加誘導体を用いることが好ましく、水添石油樹脂や部分水添石油樹脂が特に好ましい。
【0042】
本発明に好ましく使用されるPO系樹脂の代表的なものとしては、日本ポリプロ(株)製のランダムポリプロピレン「ウィンテック」シリーズ、出光興産(株)製のポリオレフィン系軟質樹脂「TPO」シリーズ、宇部興産(株)製の線状低密度ポリエチレン「ユメリット」シリーズ等が商業的に入手されるものとして挙げられる。
【0043】
さらに本発明のフィルムの(I)層を構成する樹脂は、振動周波数10Hzで測定したときの20℃の貯蔵弾性率(E’)が10MPa以上2,000MPa以下であることが好ましく、50MPa以上1,000MPa以下であることがより好ましい。貯蔵弾性率(E’)が上2,000MPa以下であれば、積層フィルムの耐衝撃性を低下させることはなく、また貯蔵弾性率(E’)が10MPa以上であれば積層フィルムの剛性を維持することができる。
【0044】
さらに本発明のフィルムの(I)層を構成する樹脂は、振動周波数10Hzで測定したときの70℃の貯蔵弾性率(E’)が10MPa以上1,000MPa以下であることが好ましく、50MPa以上700MPa以下であることがより好ましく、70MPa以上500MPa以下であることがさらに好ましい。70℃の貯蔵弾性率(E’)が1,000MPa以下であれば積層フィルムの延伸性が良好となり、その結果十分な収縮率を確保することが容易となる。一方、70℃の貯蔵弾性率が10MPa以上であれば、収縮時のフィルムの剛性を維持することが可能となりシワの発生や倒れこみなどを抑制することができる。
【0045】
本発明のフィルムは、PLA系樹脂を主成分とする(II)層を有する積層フィルムであるため、PLAのガラス転移温度である55℃付近を超えると急激に貯蔵弾性率(E’)が低下し、70℃付近では約10MPa以下となり、その結果、良好な収縮特性を示せなくなる。そこで、本発明では(II)層を構成する樹脂の貯蔵弾性率(E’)を上記範囲に調整することにより、フィルム全体の収縮時におけるフィルムの剛性(腰)を維持する。それにより、本発明のフィルムであればシワの発生や倒れこみなどを抑制できる。
【0046】
<(II)層>
本発明において、(II)層はPLA系樹脂を主成分としてなる。本発明では上記(I)層以外に(II)層としてPLA系樹脂を主成分とする層を有するため、PET系樹脂やPS系樹脂からなる層よりも優れた低温収縮性と優れた剛性を熱収縮性フィルムに付与できる。また、本発明において、(II)層はPLA系樹脂を主成分とする組成物で構成されているため、(II)層を表裏層、(I)層を中間層とする層構成の熱収縮性フィルムであれば、印刷時に良好なインキ密着性が得られ、製膜後のコロナ処理等を省略でき、製造工程を簡略化することが可能となる。さらに、PLA系樹脂を主成分としてなる(II)層を表裏層として配することにより、製袋時にTHFなどの溶剤によるシールが良好であるため、シール時における接着剤の使用を省略することができ、製造コストの低廉化に資することができる。
【0047】
(II)層で使用されるPLA系樹脂の種類は特に制限されないが、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸の共重合体(ポリ(DL−乳酸))を好適に用いることができる。
【0048】
構造単位がL−乳酸及びD−乳酸である共重合体は、D−乳酸とL−乳酸との共重合比がD−乳酸/L−乳酸=99.5/0.5〜85/15、又はD−乳酸/L−乳酸=0.5/99.5〜15/85、好ましくはD−乳酸/L−乳酸=99/1〜87/13又はD−乳酸/L−乳酸=1/99〜13/87であることが望ましい。かかる共重合比のPLA系樹脂であれば、結晶性が低くなりすぎて耐熱性に劣り、フィルム同士の融着がおこるというような不具合が生じることがない。
【0049】
なお、本発明では、L−乳酸(以下、L体と称すこともある)とD−乳酸(以下、D体と称すともある)の共重合比が異なる複数の乳酸系樹脂をブレンドしてもよく、この場合には、複数の乳酸系樹脂のL体とD体の共重合比の平均値が上記範囲に入るようにブレンドすることが好ましい。
【0050】
上記PLA系樹脂は、縮合重合法、開環重合法等の各種の公知の方法を採用して重合することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸又はD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して、任意の組成を有するPLA系樹脂を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを必要に応じて重合調整剤等を用いながら、適当な触媒、例えばオクチル酸スズ等を使用してPLA系樹脂を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらに、L−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性を有するPLA系樹脂を得ることができる。
【0051】
本発明において、耐熱性を向上させる等の目的で、上記PLA系樹脂の本質的な性質を損なわない範囲、すなわち、PLA系樹脂成分が(II)層全体に対して90質量%以上含有され得るような範囲内であれば、少量の共重合成分として乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。また、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
【0052】
乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0053】
また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、及び、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0054】
(II)層で使用可能なPLA系樹脂の重量平均分子量は、50,000以上、好ましくは100,000以上であり、かつ400,000以下、好ましくは300,000、さらに好ましくは250,000であることが望ましい。PLA系樹脂の重量平均分子量が小さすぎると機械物性や耐熱性等の実用物性がほとんど発現されず、大きすぎると溶融粘度が高くなりすぎて成形加工性に劣ることがある。
【0055】
本発明に好ましく使用されるPLA系樹脂の代表的なものとしては、三井化学(株)製の「レイシア」シリーズ、NatureWorksLLC社製の「Nature Works」シリーズ等が商業的に入手されるものとして挙げられる。
【0056】
本発明においては、耐衝撃性や耐寒性を向上させる等のために、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂や、芳香族ポリエステル樹脂を、PLA系樹脂100質量部に対して70質量部以下の範囲でブレンドしてもよい。このような脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル等のPLA系樹脂を除く脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0057】
具体的には、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステルは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール、又はこれらの無水物や誘導体と、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、又はこれらの無水物や誘導体の中からそれぞれ1種類以上選んで縮合重合することにより得られる。この際に、必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップすることにより、所望のポリマーを得ることができる。また、耐熱性や機械強度を高めるために、ジカルボン酸成分として50mol%以下のテレフタル酸等の芳香族モノマー成分を共重合してもよい。
【0058】
このような成分を含む生分解性プラスチックとして、例えば、商品名「イースターバイオ」(イーストマンケミカルズ社製)や、商品名「エコフレックス」(BASF社製)が挙げられる。
【0059】
また環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルは、環状モノマーとしてε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等から1種類以上を選択して、重合することにより得ることができる。さらに、合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸等の環状酸無水物と、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のオキシラン類との共重合体等が挙げられる。
【0060】
<(III)層>
本発明のフィルムの第2の態様としては、前記(I)層と前記(II)層との間に接着性の向上を目的とした接着性樹脂からなる(III)層を配した態様を例示することができる。
【0061】
(III)層で使用可能な接着性樹脂としては、(II)層のPLA系樹脂に対し、反応性又は親和性を有する部位と、(I)層の樹脂と親和性を有する部位とを兼ね備えた樹脂が好適に用いられる。
【0062】
ここで、「PLA系樹脂に対し反応性又は親和性を有する」とは、PLA系樹脂と親和性の高い官能基又はPLA系樹脂と反応し得る官能基を有することを意味する。そのような特性を有する官能基の例としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、又はオキサゾリン基などの官能基が挙げられ、中でも酸無水物基、カルボン酸基、又はカルボン酸エステル基が好ましい。
【0063】
また、「(I)層の樹脂と親和性を有する部位」とは、使用される樹脂によって様々であるが、(I)層を構成する樹脂成分と親和性のある連鎖を有することを意味し、より詳しくは、直鎖又は分岐した飽和炭化水素部位を主鎖あるいはブロック鎖、グラフト鎖として有することを意味する。
【0064】
(I)層がPO系樹脂を主成分として構成される場合に、具体例としては、PO系樹脂あるいはスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体を水素添加した樹脂、例えばスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体などが挙げられる。
【0065】
上記PLA系樹脂と親和性の高い、又は反応可能な極性基を有し、かつ(I)層の樹脂と相溶可能な樹脂の具体的な商品としては、例えば、エポキシ基を有するGMAとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマー「ボンドファースト」(住友化学)や、変性スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体「タフテック」(旭化成)等が挙げられる。
【0066】
(III)層で使用可能な接着性樹脂は、下記(a)、(b)及び(c)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体又は樹脂を用いることも好ましい。
(a)酢酸ビニル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びメタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる1種の単位と、エチレン単量体単位とからなる共重合体(以下「エチレン系共重合体」ともいう。)
(b)軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はこれらの水素添加誘導体
(c)変性ポリオレフィン系樹脂
【0067】
先ず(a)のエチレン系共重合体について説明する。上記エチレン系共重合体は、(I)層において相溶化剤としても機能し得るものであり、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体を好適に使用できる。
【0068】
上記エチレン系共重合体は、エチレン単量体単位の含有率が50質量%以上95質量%以下、好ましくは60質量%以上85質量%以下であることが望ましい。エチレン単量体単位の含有率が50モル%以上であれば、フィルム全体の剛性を良好に維持できるため、好ましい。一方、エチレン単位の含有率が95質量%以下であれば、柔軟性を十分に維持でき、フィルムに応力が加わった場合に、(I)層と(II)層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
【0069】
上記エチレン系共重合体は、MFR(JIS.. K7210、温度:190℃、荷重:2.16kg)が0.1g/10分以上10g/10分以下のものが好適に用いられる。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持でき、一方、MFRが10g/10分以下で有れば積層フィルムの厚み斑や力学強度の低下を起こしにくく、好ましい。
【0070】
上記エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体として「ボンダイン」(住友化学社製)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体として「ボンドファースト」(住友化学社製)などが商業的に入手できる。
【0071】
次に、上記(b)の共重合体及びその水素添加誘導体について説明する。軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体を構成する芳香族系炭化水素としては、スチレンが好適に用いられ、α−メチルスチレン等のスチレン同族体なども用いることができる。また、共役ジエン系炭化水素としては、1,3−ブタジエン、1,2−イソプレン、1,4−イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらは水素添加誘導体であってもよい。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
上記芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体は、芳香族系炭化水素の含有率が共重合体の総量の5質量%以上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である軟質な共重合体であることが望ましい。芳香族系炭化水素の含有率が5質量%以上であれば、フィルムを(I)層に再生添加した場合に、良好な相溶性が得られ、フィルムの白濁化を抑えることができる。一方、芳香族系炭化水素の含有率が50質量%以下であれば、(II)層の柔軟性を低下させることなく、フィルムに応力が加わった場合に、(I)層と(II)層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
【0073】
上記芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体としては、スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体を好ましく用いることができる。スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体の詳細な内容及びその製造方法については、特開平2−158643号、特開平2−305814号及び特開平3−72512号の各公報に開示されている。
【0074】
芳香族系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体は、上記例示した各々の共重合体を単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
芳香族系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の市販品としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマーとして商品名「タフプレン」(旭化成社製)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体として商品名「タフテックH」(旭化成社製)、商品名「クレイトンG」(クレイトンジャパン社製)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加誘導体として商品名「ダイナロン」(JSR社製)、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加誘導体として商品名「セプトン」(クラレ)、スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体エラストマーとして商品名「ハイブラー」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0076】
また、上記芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体は、極性基を導入することで、ポリ乳酸系樹脂を主成分とする(II)層との層間接着性を一層向上させることができる。導入する極性基としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基などが挙げられる。極性基を導入したスチレン系化合物と共役ジエンの共重合体又はその水素添加誘導体としては、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが代表的に挙げられる。これらの共重合体は、各々単独に又は2種以上を混合して使用することができる。
【0077】
具体的には、商品名「タフテックM」(旭化成社製)、「エポフレンド」(ダイセル化学社製)などが市販されている。
【0078】
次に、上記(c)の変性ポリオレフィン樹脂について説明する。本発明において、(II)層を構成し得る変性ポリオレフィン樹脂とは、不飽和カルボン酸又はその無水物、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸あるいはこれらの誘導体のモノエポキシ化合物と上記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの中でも、無水マレイン酸がより好ましく用いられる。また、これらの共重合体は、各々単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
また、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシランなどを挙げることができる。
【0080】
変性ポリオレフィン樹脂を製造するには、例えば、予めポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、一旦重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。また変性はこれらの変性モノマーを単独で又は複数を併用し、その含有率が0.1質量%以上5質量%以下の範囲のものが好適に使用される。この中でもグラフト変性したものが好適に用いられる。
【0081】
具体的には、商品名「アドマー」(三井化学社製)、「モディック」(三菱化学社製)などが市販されている。
【0082】
また、本発明では、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば、成形加工性、生産性及び熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、(I)層、(II)層及び(III)層の各層にシリカ、タルク、カオリン等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加できる。
【0083】
また、本発明のフィルムは、(I)層、(II)層及び(III)層から選ばれる少なくとも1層(好ましくは(I)層)にリサイクルされた本発明のフィルム樹脂(以下「リサイクル樹脂」ともいう。)を含有することができる。リサイクル樹脂の含有量は、含有すべき層を構成する樹脂100質量部に対し、50質量部以下、好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下であることが望ましい。リサイクル樹脂の含有量が50質量部以下であれば、添加後においてもフィルムの良好な透明性を維持することができる。
【0084】
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムは、少なくとも1種の屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂を主成分とする(I)層と、少なくとも1種のPLA系樹脂を主成分とする(II)層の少なくとも2層で構成される。本発明のフィルムは、屈折率を本発明範囲に調整した樹脂とPLA樹脂とからなる熱収縮性フィルムであるため、従来のSBS系樹脂とPET系樹脂からなるフィルムよりもリターン時の透明性を確保することができる。
【0085】
本発明のフィルムは、上記2層を少なくとも有していればよく、好ましくは(I)層を中間層として有し、かつ(I)層の両面に表裏層として(II)層を積層した3層以上の層構成である。ここで、「(I)層の両面に(II)層を積層する」とは、中間層として(I)層に隣接して表裏層として(II)層が積層される場合(第一の態様)のみならず、中間層として(I)層、表裏層として(II)層の間に第3の層(例えば、第二の態様で例示した(III)層)を有する場合も含まれる。また、中間層は表裏層と同様の層を含んでいても構わない。
【0086】
本発明において、フィルムの積層構成は、(II)層/(I)層/(II)層からなる3層構成であり、より好ましい層構成は(II)層/(III)層/(I)層/(III)層/(I)層からなる5層構成である。この層構成を採用することにより、本発明の目的である低温収縮性、フィルムの腰(常温での剛性)、収縮仕上がり性に優れ、かつ自然収縮が小さく、フィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
【0087】
次に、本発明の好適な実施形態の例である(II)層/(I)層/(II)層の3層構成のフィルム、及び(II)層/(III)層/(I)層/(III)層/(II)層からなる5層構成のフィルムについて説明する。
【0088】
各層の厚み比は、上述した作用効果を考慮して設定すればよく、特に限定されるものではない。フィルム全体の厚みに対する(II)層の厚み比は10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であり、かつ70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、最も好ましくは40%以下の範囲にすることができる。またフィルム全体の厚みに対する(I)層の厚み比は、20%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは30% 以上であり、かつ90%以下、好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0089】
(I)層と(II)層との間に(III)層を有する場合、(III)層はその機能から、0.5μm以上、好ましくは0.75μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、6μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0090】
各層の厚み比が上記範囲内であれば、フィルムの低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性に優れ、かつ自然収縮が小さく、フィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムが得ることができる。
【0091】
本発明のフィルムの総厚みは特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には延伸後のフィルムの総厚みが80μm以下であり、好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であり、最も好ましくは40μm以下である。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、10μm以上であることが好ましい。
【0092】
<物理的性質>
(1)熱収縮率
本発明のフィルムは、80℃温水中で10秒間加熱したときの熱収縮率が少なくとも一方向において30%以上であり、かつ直交方向において10%以下であることが重要である。この熱収縮率は、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される収縮率はその形状によって様々であるが一般に主収縮方向において20%以上70%以下程度である。
【0093】
また、現在ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。
【0094】
このような工業生産性も考慮して、上記条件における主収縮方向の熱収縮率が30%以上のフィルムであれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着することができるため好ましい。これらのことから、80℃温水中で10秒間加熱したときの主収縮方向の熱収縮率は、少なくとも一方向、通常は主収縮方向に30%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上であり、85%以下、好ましくは75%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0095】
また、本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、直交方向の熱収縮率は、80℃温水中で10秒間加熱したときは10%以下であることが重要であり、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。直交方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後のフィルム主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難く、好ましい。
【0096】
(2)自然収縮率
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃で30日保存後の自然収縮率が3.0%以下、好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下であることが望ましい。上記条件下における自然収縮率が3.0%であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。
【0097】
(3)フィルムの透明性
本発明のフィルムの透明性は、透明性が要求される用途、例えば、フィルムの裏面に印刷された印刷面を表面から視認させるような用途においては、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合、ヘーズ値は15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが更により好ましい。ヘーズ値が15%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
【0098】
(4)貯蔵弾性率(E’)
また、本発明のフィルムは、周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で動的粘弾性測定を行った際、温度20℃下の貯蔵弾性率(E’)が1,100MPa以上3,000MPa以下の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは1,200MPa以上2,500MPa以下の範囲である。貯蔵弾性率E’が1,100MPa以上であれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)を高くすることができ、フィルムが柔らかくなり過ぎて変形しやすくなり、印刷、製袋等の2次加工時にロールテンションによってフィルムが伸びるなどの不具合や、フィルムの厚みを薄くした場合において、ペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシンなどで被せる際に、斜めに被ったり、フィルムの腰折れなどで歩留まりが低下したりしやすいなどの問題点が発生し難いため、好ましい。一方、貯蔵弾性率E’が3,000MPa以内であれば、硬くて伸びにくいフィルムになり、2次加工時にシワが入りやすくなる、使用時にカサカサした感触を感じさせるといった不具合が起きないため、好ましい。
【0099】
[成形品、熱収縮性ラベル及び容器]
本発明のフィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品及び容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0100】
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0101】
本発明のフィルムが利用できるプラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0102】
以下に本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
【0103】
(1)貯蔵弾性率(E’)
得られたフィルムを横4mm×縦60mmの大きさに正確に切り出し、サンプルとした。粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で、縦方向について動的粘弾性を測定した。なお、貯蔵弾性率としては、20℃における貯蔵弾性率を示した。
【0104】
(2)熱収縮率
得られたフィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃及び80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向および横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0105】
(3)自然収縮率
得られたフィルムを縦100mm、横1000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
【0106】
(4)ヘーズ値
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定し、15%以上を×、5%以上15%未満を○、5%未満を◎として評価した。
【0107】
(5)層間接着強度
得られたフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向のフィルムの両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃以上85℃以下の範囲とした。ボトル装着時のフィルムの様子を目視により確認し、以下の基準で評価した。
◎:ボトル装着後も層間剥離がない。
○:ボトル装着時、シール部分にわずかに層間剥離が生じる。
×:ボトル装着時、シール部分の全面に層間剥離が生じる。
【0108】
(6)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向のフィルム両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃から85℃までの範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが生じない。
○:収縮は十分であるが、所々シワ、アバタ又は格子目の歪みが生じている。
×:収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる。又は、収縮が十分でなく、ボトルへの被覆が不十分である。
【0109】
(実施例1)
表1に示すように、(II)層で使用するPLA系樹脂として、NatureWorksLLC社製の「Nature Works 4060(L体/D体比=88/12)」(以下「PLA1」と略称する)を用い、(I)層で使用するPO系樹脂として、日本ポリプロ(株)製のランダムPP「ウィンテックWFX4T:屈折率1.4971(以下「PO1」と略称する)50質量%と宇部興産(株)製の線状低密度ポリエチレン「ユメリット0540F:屈折率1.5025(以下「PO3」と略称する)50質量%との混合樹脂組成物を用いた。各樹脂をそれぞれ別個の三菱重工業株式会社製単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、未延伸積層シートでの各層の厚みが(II)層/(I)層/(II)層=45μm/160μm/45μmとなるよう2種3層ダイスより共押出し、40℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械株式会社製フィルムテンターにて、予熱温度105℃、延伸温度75℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0110】
(実施例2)
表1に示すように、(II)層で使用するPLA系樹脂として、PLA1を50質量部と、NatureWorksLLC社製の「Nature Works 4050(L体/D体比=95/5)」(以下「PLA2」と略称する)を用い、(I)層で使用するPO系樹脂として、PO1を50質量%と、軟質ポリプロピレン(屈折率1.4855、以下「PO2」と略称する)50質量%との混合樹脂組成物を用い、さらに(III)層で使用する接着性樹脂として三井化学(株)製の変性ポリオレフィン「アドマーSF731」(以下「AD1」と略称する)を用いた。各樹脂をそれぞれ別個の三菱重工業株式会社製単軸押出機に投 入し、設定温度200℃で溶融混合後、各層の厚みが(II)層/(III)層/(I)層/(III)層/(II)層=40μm/10μm/150μm/10μm/40μmとなるよう3種5層ダイスより共押出し、40℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械株式会社製フィルムテンターにて、予熱温度105℃、延伸温度75℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0111】
(比較例1)
表1に示すように、(I)層を設けずに(II)層の単層からなる未延伸単層シートを厚みが250μmとなるように作製した以外は実施例1と同様の方法で熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0112】
(比較例2)
表1に示すように、(II)層を設けずに、PO1:80質量%とPO3:20質量%とからなる厚み250μmの未延伸単層シートを作製した以外は実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表1及び2より本発明で規定する範囲内で構成された実施例1及び2のフィルムは、低温収縮性、腰強さ(積層フィルムの貯蔵弾性率)、自然収縮、収縮率の立ち上がり、層間接着性、及び収縮仕上がり性が比較例1、2と同等以上であった。
これに対し、(I)層に屈折率が1.46以上1.55以下である樹脂を有さず、(III)層を有さない場合(比較例1)には70℃において著しく高い収縮率を示し、また、(II)層としてPLA系樹脂を有さない場合(比較例2)には、腰強さ、熱収縮率、及び自然収縮がそれぞれ低下した。
また、(II)層の厚みが厚い場合(参考例1)には高い熱収縮率を示し、収縮仕上がり性が実施例1、2のフィルムより僅かに劣っていた。一方、(II)層の厚みが薄い場合(比較例4)には、自然収縮率が大きくなると共に、腰強さと収縮仕上がり性が実施例1及び2のフィルムより僅かに劣っていた。
これより、本発明のフィルムは、低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性、自然収縮性に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や熱収縮性ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、剛性、収縮仕上がり性、及び低い自然収縮性を有するため、熱収縮性を必要とする成形品、特にシュリンクラベル等に好適に利用することができる。また、本発明に使用するPLA系樹脂は植物由来樹脂であるため、バイオマスの利用を促進し、循環型社会を目指す上で好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)層と(II)層の少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムであって、各層が下記樹脂を主成分としてなり、かつ80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が30%以上であり、主収縮方向と直交する方向の収縮率が10%以下であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
(I)層:屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂
(II)層:少なくとも1種のポリ乳酸系樹脂
【請求項2】
前記(I)層を中間層として有し、かつ前記(II)層を表裏層として有する請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリ乳酸系樹脂が、D−乳酸及びL−乳酸の共重合体からなる樹脂である請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
(I)層を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物である請求項4に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項6】
フィルム全体の厚みに対する(II)層の厚み比が10%以上70%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項7】
前記(I)層と前記(II)層との間に、接着性樹脂を主成分としてなる、少なくとも一層の(III)層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
【請求項10】
請求項8に記載の成形品又は請求項9に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2008−23801(P2008−23801A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197508(P2006−197508)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】