説明

熱可塑性エラストマーブレンド組成物

本発明は、ポリエーテルエステルエラストマーと架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴムのブレンドを含む熱可塑性エラストマー組成物、およびその製造、ならびに例えば造形または成形ゴム物品におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年10月31日出願の米国特許出願第11/590,565号明細書の利益を主張するものであり、全ての目的でその全体が本明細書の一部として援用される。
【0002】
本発明は、ポリエーテルエステルエラストマーと架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴムのブレンドを含む熱可塑性エラストマー組成物、およびその製造、ならびに例えば造形または成形ゴム物品におけるその使用に関する。
【0003】
石油および自動車産業の多くの用途では、高温において良好な耐油性かつまた周囲温度以下において良好な機械特性を有するエラストマー材料が必要とされている。熱および圧縮永久歪に対して良好な耐性を有する柔軟で軟質な(硬度が低い)材料が特に必要とされている。
【0004】
当該技術分野では、潤滑油およびグリースに対して優れた耐性を有し、したがって選択された自動車用途などで有用な高性能ゴム部品を製造するために硬化性ポリアクリレートエラストマーを使用することが一般に知られている。ゴム状加硫物は、アクリル酸エステルモノマー(例えば、エチル、ブチル、およびメトキシエチルアクリレート;いくらかのビニルアセテートを含むことがある)の共重合に由来するポリアクリレートエラストマー;エチレンモノマーとアクリル酸エステルモノマー(例えば、エチレンとメチルアクリレート;他のコモノマーおよびグラフトを含むことがある。例えば、特許文献1を参照のこと)の共重合に由来するポリエチレン/アクリレートエラストマー;またはフッ化アクリル酸エステルモノマー(例えば、1,1ジヒドロパーフルオロ−n−ブチルアクリレート)の重合に由来するポリパーフルオロアルキルアクリレートエラストマーである。ポリアクリレートエラストマーは、アクリレートグリシジルエステル、マレイン酸、または酸、ヒドロキシル、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、クロロアセテート、もしくはジエンを含めて、反応性基を有する他のコモノマーなど、比較的少量の追加のコモノマーを組み込むことによって官能化することもできる。次いで、これらの官能化ポリアクリレートエラストマーは、ポリアクリレートエラストマーの官能化反応部位に共有結合する官能基を含む硬化助剤を使用して硬化することができる。
【0005】
従来技術の硬化性ポリアクリレートエラストマーに関連する1つの問題は、それが硬化したまたは部分硬化した状態の粘度が高く、溶融流れが低いという流体力学的な固有の限界である。したがって、許容できる特性を実現するためには、通常は、仕上げ部品に直接押出または射出成形する(上記に記述する通り)より、物理的ブレンディングと、続いて圧縮成形、およびその後の硬化が必要である。しかし、特許文献2および3では、ポリエステル樹脂(商標HYTREL(登録商標)(E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington,DEで市販されているセグメント化ポリエーテルエステルエラストマーを含む)と動的加硫された共有架橋アクリレートゴム(商標VAMAC(登録商標)(E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington,DE)で市販されている約1モルパーセントのカルボン酸含有コモノマーを含むエチレン/メチルアクリレートターポリマーを含む)のブレンドを含む熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。これらの開示の共有架橋は、官能化ポリアクリレートエラストマーを反応性の二官能性架橋剤と組み合わせて使用することによって実現される。しかし、これらの二官能性架橋剤はほとんどすべて、ポリアルキレンフタレート中のエステル単位とも反応する(すなわち、アミン、ヒドロキシル、またはカルボン酸基はエステル基と入れ替わり、エポキシまたは酸基はヒドロキシル末端基に付加する)恐れがあり、これによって粘度が高くなり、かつ再現性が欠如する。
【0006】
特許文献4では、ポリアルキレンフタレートポリエステルポリマーまたはコポリマー、および架橋性ポリ(メタ)アクリレートまたはエチレン/(メタ)アクリレートコポリマー加硫物ゴムを、ブレンドの押出または射出成形の最中にゴムを架橋するための過酸化物ラジカル開始剤および有機多オレフィン性助剤と組み合わせて含む硬化可能な熱可塑性エラストマーブレンドが開示されている。それには、高温での使用に有用なエラストマーブレンドを得るために、コポリマー中のポリエステル硬質セグメントブロックは高い溶融温度を有するべきであると教示されている。しかし、一般に硬質セグメントの高い溶融温度によって、ポリマー硬度は上昇し、柔軟性は低下することが判明している。
【0007】
本出願人が所有する特許文献5は、(a)ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマー;(b)架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム;および(c)ゴムを架橋するための架橋系を含む硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物を開示する。特に、架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム、ならびにポリ(トリメチレンエーテル)テレフタレート軟質セグメントおよびポリ(ブチレンテレフタレート)を含むブロックコポリマーを含む組成物から優れた特性を得た。
【0008】
ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメント、特にポリトリメチレンエーテルテレフタレート、およびポリエチレンエステル硬質セグメント、特にポリエチレンテレフタレートを含むポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーは、特許文献6にも記載されている。これらの材料は、ポリエチレンテレフタレート硬質セグメントの融点および熱安定性が、テトラメチレンまたはトリメチレンエステルに基づく硬質セグメントの融点および熱安定性より高いので、ポリ(メタ)アクリレートゴムを含有する組成物で使用するための利点を潜在的に有する。しかし、それらの有用性は、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度が比較的に低いので、これらの用途において限定される。造形品を作製するために使用される組成物において結晶化速度が低いことによって、物品は使用中に結晶化し続け、同時に体積変化が起こる可能性がある。
【0009】
したがって、上記の本出願人が所有する特許文献7で開示されるものなど硬化性エラストマーブレンドのポリエチレンテレフタレート硬質セグメントに基づくこれらの熱可塑性エラストマーを利用する手段を見出すことが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002−0004568A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A−0337976号明細書
【特許文献3】米国特許第4981908号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004−0115450A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願第11/120056号明細書(2005年5月2日出願、「Thermoplastic Elastomer Blend,Method of Manufacture and Use Thereof」という名称)
【特許文献6】米国特許出願公開第2005−0282966A1号明細書
【特許文献7】米国特許出願第11/120056号明細書(2005年5月2日出願、「Thermoplastic Elastomer Blend,Method of Manufacture and Use Thereof」という名称)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマーと、(b)アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される核剤と、(c)架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴムと、(d)ゴムを架橋するための架橋系を含む硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供することによってこの要望に対処する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、(a)連続相であって、(i)ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマー、ならびに(ii)核剤を含む連続相と、(b)架橋されたポリ(メタ)アクリレートゴム分散相を含む溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、組成物から作製された造形品、特にホース、ガスケット、フィルム、ベルト、ケーブル外被、シール、ギヤ、およびベアリングにも関する。
【0014】
さらに別の実施形態において、本発明は、溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法であって、
(a)架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム、そのポリ(メタ)アクリレートゴムを架橋するのに有効な量の架橋系、ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマー、ならびにポリエーテルエステルエラストマーの結晶化時間を短縮させるのに有効な量の核剤を準備するステップと、
(b)架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム、ポリエーテルエステルエラストマー、核剤、および架橋系の混合物を生成するステップと、
(c)架橋系を使用して、混合物中の架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴムを架橋するステップと、
(d)連続相としてポリエーテルエステルエラストマーおよび核剤、ならびに分散相として架橋されたポリ(メタ)アクリレートゴムを含む溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を回収するステップと
を含む方法に関する。
【0015】
この実施形態の好ましい態様において、溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を押出または射出成形する間に架橋を実施する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載する刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、別段の指示のない限り、その内容全体が記載されたものとしてそれらの全体が全ての目的で本明細書に明確に援用される。
【0017】
別段の定義のない限り、本明細書で使用される科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が優先する。
【0018】
特に記載されている場合を除き、商標は大文字で示す。
【0019】
別段の記載のない限り、百分率、部、比などはすべて、重量による。
【0020】
量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または上方の好ましい値と下方の好ましい値の一覧として記載されている場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関わらず、任意の上方の範囲限界もしくは好ましい値と任意の下方の範囲限界もしくは好ましい値の任意の対から形成された範囲をすべて、具体的に開示するものとして理解されるべきである。数値範囲が本明細書に記載されている場合、別段の記述のない限り、範囲は、その端点、ならびに範囲内の整数および分数すべてを包含するよう意図されている。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に記載する特定の値に限定されるものではない。
【0021】
ある範囲のある値または端点を記載する際に「約」という用語を使用する場合、その開示は、記載の特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0022】
本明細書では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーするよう意図されている。例えば、一覧の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるわけではなく、明示されていない、またはこのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、別段の明白な記載のない限り、「または」は、包含的なまたはを意味し、排他的なまたはを意味しない。例えば、条件AまたはBは、下記のいずれか1つによって満足される。Aは真であり(または存在する)かつBは偽であり(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)かつBは真であり(または存在する)、ならびにAとBが共に真である(または存在する)。
【0023】
「a」または「an」の使用は、本発明の要素および成分を記述するために使用される。これは、便宜上、および本発明の一般的意味を与えるために行われているにすぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別段の意味であることがはっきりしていない限り、その複数も含む。
【0024】
本明細書において、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、特段に記載されている場合を除き、限定するものではない。本明細書に記載するものに類似または匹敵する方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を本明細書に述べる。
【0025】
本発明を記述および/または特許請求する際、用語「コポリマー」は、2つ以上のモノマーを含むポリマーを意味するために使用される。用語「ターポリマー」および/または「ターモノマー」の使用は、コポリマーが少なくとも3つの異なるコモノマーを有することを意味する。用語「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を包括的に意味する。同様に、用語「(メタ)アクリレート」および「アルキル(メタ)アクリレート」は本明細書では同義に使用され、メタクリレートエステルおよび/またはアクリレートエステルを意味する。「ポリ(メタ)アクリレート」は、対応するタイプの両モノマーのどちらか一方または混合物の重合に由来するポリマーを意味する。本明細書では、用語「加硫物」および語句「加硫物ゴム」は、硬化されもしくは部分硬化され架橋されたもしくは架橋性のゴム、および架橋されたゴムの硬化性前駆体に対する総称であるよう意図され、したがってエラストマー、ゴム状物質、および当該技術分野で一般に認識されているいわゆる軟質加硫物を包含する。語句「有機多オレフィン性助剤」の使用は、2つ以上のオレフィン性二重結合を含む有機助剤を意味するよう意図されている。語句「ゴム相」および「熱可塑性相」本明細書では、架橋性(メタ)アクリレートゴムとポリエーテルエステル出発材料を本発明の方法に従って混合し動的架橋することに由来して得られた熱可塑性エラストマーブレンド中に存在するポリマー形態相を指示し意味する。同様に、用語「エラストマー」は、本明細書では本質的に非晶質の材料だけでなく、(プラストマーとしばしば呼ばれる)部分的に結晶質の軟質材料を記述するためにも使用され、エチレンコポリマーの場合はコモノマーを6.5モル%しか含むことができない。
【0026】
本発明に従う硬化可能な熱可塑性エラストマーブレンドは、好ましくは(a)ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントに基づくポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーと、(b)核剤と、(c)ポリ(メタ)アクリレートゴムと、(d)ポリ(メタ)アクリレートゴム用の架橋系を混合することによって調製される。さらに具体的には、架橋系は、好ましくはラジカル開始剤と有機多オレフィン性助剤の組合せを含む。ラジカル開始剤と多オレフィン性助剤の使用によって、硬化可能な熱可塑性ブレンドが得られ、これは溶融ブレンディングおよび/または溶融二次加工の最中に動的架橋することができる。したがって、硬化可能な熱可塑性エラストマーブレンドの押出、射出成形などを行い、ラジカル開始剤および多オレフィン性助剤は、硬化剤/系として働き、ブレンド内でゴムの現場架橋が起こる。
【0027】
好ましくは、本発明の組成物は、エラストマーとゴムの総合重量を基準にして約15〜約75重量%のポリトリメチレンエーテルエステルエラストマー、および約25〜約85重量%のポリ(メタ)アクリレートゴムを含む。
【0028】
本発明に従って得られた動的架橋生成物はそれ自体、溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物である。したがって、架橋生成物は、熱成形可能であり、かつリサイクル可能である。通常は、得られた溶融加工可能な熱可塑性エラストマーは、熱可塑性のポリエステル相が存在しない場合のその成分ゴム相より熱可塑性が高く、ゴム相が存在しない場合の熱可塑性のポリエステル相より弾性が高い。さらに、得られた溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物には、連続相として存在するポリエーテルエステルエラストマーが含まれ、架橋されたポリ(メタ)アクリレートまたはエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーゴムが分散相として存在する。
【0029】
ポリエーテルエステルエラストマー
ポリエーテルエステルエラストマーは、好ましくはポリエーテルエステルエラストマーの重量を基準にして約10〜約90重量%、より好ましくは約20〜約80重量%、さらにより好ましくは約30〜約70重量%のポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメント、および約10〜約90重量%、より好ましくは約20〜約80重量%、さらにより好ましくは約30〜約70重量%のポリエチレンエステル硬質セグメントを含む。
【0030】
ポリエーテルエステルエラストマーは、インヘレント粘度が好ましくは少なくとも約0.6dl/g、より好ましくは少なくとも約1.0dl/g、および好ましくは約2.4dl/gまで、より好ましくは約1.9dl/gまでである。
【0031】
用語「ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメント」および「軟質セグメント」は、高分子量エーテルグリコールと「ジカルボン酸等価物」のエステル結合を介した反応生成物を意味するために本発明に関連して使用され、ここで軟質セグメントを形成するために使用された高分子量エーテルグリコールの少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約85重量%、さらにより好ましくは約95〜100重量%は、ポリトリメチレンエーテルグリコール(「PO3G」)である。
【0032】
「ポリエチレンエステル硬質セグメント」および「硬質セグメント」は、1つまたは複数のジオールと1つまたは複数のジカルボン酸等価物のエステル結合を介した反応生成物を意味するために本発明に関連して使用され、ここで硬質セグメントを形成するために使用されたジオールの約50モル%超、より好ましくは少なくとも約75モル%、はるかにより好ましくは少なくとも約85モル%、さらにより好ましくは約95〜100モル%は、エチレングリコールである。
【0033】
「ジカルボン酸等価物」は、当業者なら一般に認識する通り、高分子グリコールおよびジオールとの反応において実質的に同様なジカルボン酸の役割を果たす化合物である、ジカルボン酸およびその等価物を意味する。ジカルボン酸に加えて、本発明ではジカルボン酸等価物としては、例えばジカルボン酸のモノ−およびジエステル、ならびに酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)および無水物などのジエステル形成誘導体が挙げられる。
【0034】
軟質セグメント用高分子量エーテルグリコール
本発明ではPO3Gは、オリゴマーおよび/または高分子量エーテルグリコールであり、ここで繰返し単位の少なくとも50%はトリメチレンエーテル単位である。繰返し単位のより好ましくは約75%〜100%、さらにより好ましくは約90%〜100%、はるかにより好ましくは約99%〜100%は、トリメチレンエーテル単位である。
【0035】
PO3Gは、好ましくは1,3−プロパンジオールを含むモノマーの重縮合によって調製され、したがって−(CHCHCHO)−結合(例えば、トリメチレンエーテル繰返し単位)を含むポリマーまたはコポリマーが生じる。
【0036】
トリメチレンエーテル単位に加えて、より少ない量の他の単位、具体的には他のポリアルキレンエーテル繰返し単位が存在してもよい。本開示の文脈においては、用語「ポリトリメチレンエーテルグリコール」は、本質的に純粋な1,3−プロパンジオールから作製されたPO3G、ならびに50重量%までのコモノマーを含有するそれらのオリゴマーおよびポリマー(後述するものを含む)を包含する。
【0037】
PO3Gを調製するのに使用される1,3−プロパンジオールは、様々な周知の化学的経路のいずれかまたは生化学的変換経路によって得ることができる。好ましい経路は、例えば米国特許第5015789号明細書、米国特許第5276201号明細書、米国特許第5284979号明細書、米国特許第5334778号明細書、米国特許第5364984号明細書、米国特許第5364987号明細書、米国特許第5633362号明細書、米国特許第5686276号明細書、米国特許第5821092号明細書、米国特許第5962745号明細書、米国特許第6140543号明細書、米国特許第6232511号明細書、米国特許第6235948号明細書、米国特許第6277289号明細書、米国特許第6297408号明細書、米国特許第6331264号明細書、米国特許第6342646号明細書、米国特許第7038092号明細書、米国特許出願公開第20040225161A1号明細書、米国特許出願公開第20040260125A1号明細書、米国特許出願公開第20040225162A1号明細書、および米国特許出願公開第20050069997A1号明細書に記載されている。
【0038】
好ましくは、1,3−プロパンジオールは、再生可能な供給源から生化学的に得られる(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)。
【0039】
1,3−プロパンジオールの特に好ましい供給源は、再生可能な生物学的供給源を使用する発酵過程を介するものである。再生可能な供給源からの出発材料を説明する例として、トウモロコシ供給材料など生物学的および再生可能な供給源から生成された供給材料を利用する1,3−プロパンジオール(PDO)への生化学的経路が記載されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに変換することができる菌株は、クレブシエラ(Klebsiella)種、シトロバクター(Citrobacter)種、クロストリジウム(Clostridium)種、およびラクトバチルス(Lactobacillus)種に見られる。技法は、以前に援用された米国特許第5633362号明細書、米国特許第5686276号明細書、および米国特許第5821092号明細書を含めて、いくつかの公報に開示されている。米国特許第5821092号明細書は、とりわけ組換え有機体を使用してグリセロールから1,3−プロパンジオールを生物学的に生産する方法を開示する。この方法は、1,2−プロパンジオールに対して特異性を有する、異種pduジオール脱水酵素遺伝子で形質転換された大腸菌(E.coli)細菌を組み込む。形質転換された大腸菌(E.coli)は炭素源としてのグリセロールの存在下で増殖し、1,3−プロパンジオールが増殖培地から単離される。細菌と酵母は両方とも、グルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の炭水化物をグリセロールに変換することができるので、これらの公報に開示される方法は、1,3−プロパンジオールモノマーの迅速で、安価で、かつ環境的に責任のある供給源を提供する。
【0040】
先に記載し参照した方法で生成したものなど生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールを生成するための供給材料を構成する植物によって組み込まれた大気中の二酸化炭素からの炭素を含む。この方式において、本発明の文脈で使用するのに好ましい生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールは、再生可能な炭素のみを含み、化石燃料系または石油系炭素は含まない。したがって、生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールを利用するPO3Gおよびそれに基づくエラストマーは、組成物で使用される1,3−プロパンジオールが、漸減する化石燃料を激減させず、分解時に、もう一度植物による使用のために炭素を放出して大気中に戻すので、環境に影響を与えない。したがって、本発明の組成物は、石油系グリコールを含む類似の組成物より自然であり、環境に影響を与えないことを特徴とすることができる。
【0041】
生物学的に誘導された1,3−プロパンジオール、ならびにPO3Gおよびそれに基づくエラストマーは、デュアル炭素同位体フィンガープリント法によって石油化学供給源または化石燃料炭素から生成された類似の化合物と区別することができる。この方法は、化学的に同一材料を有用に識別し、コポリマー中の炭素を生物圏(植物)成分の成長の供給源(およびおそらく年)により配分する。同位体の14Cおよび13Cは、この問題に補完情報をもたらす。核の半減期が5730年の放射性炭素年代測定用同位体(14C)によって、標本の炭素を明らかに化石供給材料(「死んでいる」)と生物圏(「生きている」)供給材料に配分することが可能である(Currie, L. A.、「Source Apportionment of Atmospheric Particles」、Characterization of Environmental Particles、J. BuffleおよびH.P. van Leeuwen編、1 of Vol. I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992年)3〜74頁)。放射性炭素年代測定法における基礎的仮定は、大気中の14C濃度の一定性によって、生体中の14C濃度の一定性がもたらされるということである。単離された試料を取り扱う場合、試料の年代は、次の関係式:
t=(−5730/0.693)ln(A/A
でほぼ推定することができ、式中、t=年代、5730年は放射性炭素の半減期であり、AおよびAはそれぞれ、試料および現在の標準の特定の14C活性である(Hsieh, Y., Soil Sci. Soc. Am J., 56巻, 460頁,(1992年))。しかし、1950年以降の大気圏核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼のため、14Cは第2の地球化学的時代特性を帯びてきた。大気中のCOにおけるその濃度、したがって生きている生物圏におけるその濃度は、1960年代半ばの核実験のピーク時に約2倍になった。それ以来、定常状態の宇宙線生成(大気)ベースライン同位体率(14C/12C)が約1.2×10−12に徐々に戻っているところであり、近似の緩和「半減期」は7〜10年である。(この後者の半減期は文字通りに解釈されるべきでない。むしろ、核時代の開始以来、詳細な大気中の核の投入/減衰機能を使用して、大気中および生物圏の14Cの変動を追跡しなければならない。)最近の生物圏の炭素の年単位の年代測定が有望であることを示すのは、この後者の生物圏の14Cの時間特性である。14Cは、速器質量分析法(AMS)で測定することができ、結果は「現代の炭素の分画」(f)の単位で得ることができる。fは、それぞれシュウ酸標準物質HOxIおよびHOxIIと呼ばれるNational Institute of Standards and Technology(NIST)Standard Reference Materials(SRM)4990Bおよび4990Cによって定義される。基本的定義は、HOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に合致する(西暦1950年を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木質部におおよそ等しい。現在生きている生物圏(植物性の材料)では、f≒1.1。
【0042】
安定な炭素同位体比(13C/12C)は、供給源の識別および配分への相補的経路をもたらす。所与の生物由来材料における13C/12C比は、二酸化炭素が一定であり、また正確な代謝経路も反映するとき大気中の二酸化炭素における13C/12C比の結果である。地域差も生じる。石油、C植物(広葉樹)、C植物(牧草)、および海洋炭酸塩はすべて、13C/12Cおよび対応するδ13C値で有意差を示す。さらに、代謝経路の結果として、CおよびC植物の脂質物質の分析は、同じ植物の炭水化物成分に由来する材料の分析とは異なる。測定の精度内で、13Cは、同位体分別効果のため大きな変化を示し、その最も重要なことは、本発明では光合成機構である。植物における炭素同位体比の差の主な原因は、植物における光合成炭素代謝、特に最初のカルボキシル化中に起こる反応、すなわち大気中のCOの初期固定化の経路の差と密接に関連する。植生の2つの大クラスは、「C」(またはCalvin−Benson)光合成サイクルを組み込むクラスと「C」(またはHatch−Slack)光合成サイクルを組み込むクラスである。広葉樹および針葉樹などのC植物は、温暖気候帯で優勢である。C植物において、最初のCO固定化またはカルボキシル化反応は、酵素であるリブロース−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを含み、第1の安定な生成物は3炭素化合物である。一方、C植物としては、暖地型牧草、トウモロコシ、およびサトウキビのような植物が挙げられる。C植物において、別の酵素であるホスフェノール−ピルべートカルボキシラーゼが関与する追加のカルボキシル化反応は、最初のカルボキシル化反応である。第1の安定な炭素化合物は、4炭素酸であり、その後に脱カルボキシル化される。このようにして放出されたCOは、Cサイクルで再固定される。
【0043】
植物とC植物は共に、所定範囲の13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は、約−10〜−14/ミル(C)および−21〜−26/ミル(C)である(Weberら、J.Agric. Food Chem.,45巻,2942頁(1997年))。石炭および石油は、一般にこの後者の範囲に入る。13C測定スケールは、本来ピーディー・ベレムナイト(PDB)石灰石で設定されたゼロによって定められ、ここで値はこの材料からの1000分の1偏差で与えられる。「δ13C」値は、1/1000(/ミル)の単位(‰と略記)で与えられ、以下のように算出される。
【0044】
【数1】

PDB標準物質(RM)は使い尽されたので、IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際同位体研究所と協力して一連の代替RMが開発されている。PDBからの1000分の1偏差の表示は、δ13Cである。質量44、45、および46の分子イオンについて、高精度安定同位体比質量分析(IRMS)でCOの測定を行う。
【0045】
したがって、生物学的に誘導された1,3−プロパンジオール、および生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールを含む組成物は、14C(f)を基準としてそれらの石油化学由来対応物と完全に識別されることができ、デュアル炭素同位体フィンガープリンティングによって、新しい組成物が示唆される。これらの生成物を識別する能力は、商業においてこれらの材料を追跡する際に有益である。例えば、「新しい」炭素同位体プロファイルと「古い」炭素同位体プロファイルを両方含む生成物は、「古い」材料のみで作製された生成物と識別することができる。したがって、本材料は、それらの独自のプロファイルを基準として、競合を定義するため、貯蔵寿命を決定するため、かつ特に環境影響を評価するため、商業において追跡することができる。
【0046】
好ましくは、反応物質または反応物質の成分として使用される1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析で確定して、純度が約99重量%超、より好ましくは約99.9重量%超である。上記で援用された米国特許第7038092号明細書、米国特許出願公開第2004−0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004−0225161A1号明細書、および米国特許出願公開第2005−0069997A1号明細書に開示される精製1,3−プロパンジオール、ならびに米国特許出願公開第2005−0020805A1号明細書に開示されるそれから作製されたPO3Gが特に好ましい。
【0047】
精製1,3−プロパンジオールは、好ましくは次の特性を有する。
(1)220nmにおける紫外吸収約0.200未満、および250nmにおける紫外吸収約0.075未満、および275nmにおける紫外吸収約0.075未満;ならびに/または
(2)組成物のL ”b”明度約0.15未満(ASTM D6290)、および270nmにおける吸光度約0.075未満;ならびに/または
(3)過酸化物組成物約10ppm未満;ならびに/または
(4)ガスクロマトグラフィーで測定して、全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、さらにより好ましくは約150ppm未満。
【0048】
PO3Gを作製するための出発材料は、所望のPO3G、出発材料の入手可能性、触媒、装置などに依存し、「1,3−プロパンジオール反応物質」を含む。「1,3−プロパンジオール反応物質」は、1,3−プロパンジオール、ならびに好ましくは重合度2〜9の1,3−プロパンジオールのオリゴマーおよびプレポリマー、ならびにそれらの混合物を意味する。場合によっては、10%までまたはそれ以上の入手可能な低分子量オリゴマーを使用することが望ましい可能性がある。したがって、好ましくは出発材料は、1,3−プロパンジオール、ならびにそのダイマーおよびトリマーを含む。特に好ましい出発材料は、1,3−プロパンジオール反応物質の重量を基準にして約90重量%以上の1,3−プロパンジオール、より好ましくは約99重量%以上の1,3−プロパンジオールからなる。
【0049】
PO3Gは、米国特許第6977291号明細書および米国特許第6720459号明細書に開示される方法など当該技術分野で知られているいくつかの方法で作製することができる。好ましい方法は、上記で援用された米国特許出願公開第2005−0020805A1号明細書に記載されるものである。
【0050】
上記に示唆する通り、PO3Gは、トリメチレンエーテル単位に加えて、より少ない量の他のポリアルキレンエーテル繰返し単位を含むことができる。したがって、ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する際に使用するためのモノマーは、1,3−プロパンジオール反応物質に加えて、50重量%まで(好ましくは約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、さらにより好ましくは約2重量%以下)のコモノマーポリオールを含むことができる。適当なコモノマーポリオールとしては、脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、および3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,12−ドデカンジオール;脂環式ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびイソソルビド;ならびにポリヒドロキシ化合物、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリトールが挙げられる。コモノマージオールの好ましい基は、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、C〜C10ジオール(1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、および1,10−デカンジオールなど)およびイソソルビド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。1,3−プロパンジオール以外の特に好ましいジオールとしては、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、およびC〜C10ジオールが挙げられる。
【0051】
コモノマーを含有する好ましい一PO3Gは、米国特許出願公開第2004−0030095号明細書に記載されるPO3Gなどのポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールである。好ましいポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールは、50モル%超〜約99モル%(好ましくは約60〜約98モル%、より好ましくは約70〜約98モル%)の1,3−プロパンジオールと50モル%までから約1モル%(好ましくは約40〜約2モル%、より好ましくは約30〜約2モル%)のエチレングリコールの酸触媒重縮合によって調製される。
【0052】
好ましくは、精製後のPO3Gは、本質的に酸触媒末端基を有していないが、非常に低レベルの不飽和末端基、主にアリル末端基を約0.003〜約0.03meq/gの範囲で含む。このようなPO3Gは、次式(II)および(III)を有する化合物:
HO−((CHO)−H (II)
HO−((CH−O)CHCH=CH (III)
を含む(本質的にそれからなる)とみなすことができ、
式中、mはMn(数平均分子量)が約200〜約5000の範囲内であるような範囲であり、式(III)の化合物は、アリル末端基(好ましくはすべての不飽和末端または末端基)が約0.003〜約0.03meq/gの範囲で存在するような量で存在する。PO3G中の少数のアリル末端基は、エラストマー分子量を過度に制限することなく制御するのに有用であり、したがって例えば繊維最終用途に理想的に適した組成物を調製することができる。
【0053】
本発明で使用するための好ましいPO3Gは、Mnが少なくとも約250、より好ましくは少なくとも約1000、さらにより好ましくは少なくとも約2000である。Mnは、好ましくは約5000未満、より好ましくは約4000未満、さらにより好ましくは約3500未満である。PO3Gのブレンドを使用することもできる。例えば、PO3Gはより高分子量およびより低分子量のPO3Gのブレンドを含むことができ、好ましくはより高分子量のPO3Gは数平均分子量が約1000〜約5000であり、より低分子量のPO3Gは数平均分子量が約200〜約950である。ブレンドされたPO3GのMnは、やはり上記の範囲であることが好ましい。
【0054】
本明細書で使用するのに好ましいPO3Gは、典型的には多分散性(すなわち、Mw/Mn)が好ましくは約1.0〜約2.2、より好ましくは約1.2〜約2.2、さらにより好ましくは約1.5〜約2.1である多分散ポリマーである。多分散性は、PO3Gのブレンドを使用することによって調整することができる。
【0055】
本発明で使用するためのPO3Gは、明度が好ましくは約100APHA未満、より好ましくは約50APHA未満である。
【0056】
実質的に1,3−プロパンジオールをベースとするPO3Gを使用して軟質セグメントを形成するとき、軟質セグメントは次の構造で表わされる単位:
【化1】

を含むものとして表すことができ、
式中、Rは、カルボキシル官能基をジカルボン酸等価物から取り除いた後に残る2価のラジカルを表し、xは、PO3G中のトリメチレンエーテル単位の数を表す整数である。
【0057】
ポリエーテルエステルのポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントを調製するのに使用される高分子量エーテルグリコールは、PO3G以外の高分子量エーテルグリコールを50重量%まで含むこともできる。好ましいこのような他の高分子量エーテルグリコールとしては、例えばポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランと3−アルキルテトラヒドロフランのコポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
ポリエチレンエステル硬質セグメント
ポリエチレンエステル硬質セグメントは、次の構造を有する単位:
【化2】

を含むものとして表すことができ、
式中、R’は、カルボキシル官能基をジカルボン酸等価物から取り除いた後に残る2価のラジカルを表す。ほとんどの場合、本発明のポリエーテルエステルの軟質セグメントおよび硬質セグメントを調製するのに使用されるジカルボン酸等価物は同じである。
【0059】
硬質セグメントは、エチレングリコール以外の好ましくは約400より低分子量のジオールを50モル%未満、好ましくは約25モル%まで、より好ましくは約15モル%まで、さらにより好ましくは約5モル%まで用いて調製することもできる。他のジオールは、好ましくは脂肪族ジオールであり、非環式または環式とすることができる。トリメチレン、テトラメチレン、イソブチレン、ブチレン、ペンタメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2−メチルトリメチレン、ヘキサメチレン、およびデカメチレングリコール;ジヒドロキシシクロヘキサン;シクロヘキサンジメタノール;ならびにヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルなど3〜15個の炭素原子を有するジオールが好ましい。3〜8個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、特に1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)および/または1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)がより好ましい。2つ以上の他のジオールを使用することができる。
【0060】
ジカルボン酸等価物
ジカルボン酸等価物は、芳香族、脂肪族、または脂環式とすることができる。この点に関しては、「芳香族ジカルボン酸等価物」は、各カルボキシル基がベンゼン環系の炭素原子に結合しているジカルボン酸等価物、具体的には後述するものである。「脂肪族ジカルボン酸等価物」は、各カルボキシル基が完全飽和炭素原子またはオレフィン性二重結合の一部分である炭素原子に結合しているジカルボン酸等価物である。炭素原子が環にある場合、等価物は「脂環式」である。ジカルボン酸等価物は、任意の置換基またはその組合せを、その置換基が重合反応に干渉せずまたはポリエーテルエステル生成物の特性に悪影響を及ぼさない限り含むことができる。
【0061】
ジカルボン酸およびジカルボン酸のジエステルからなる群から選択されるジカルボン酸等価物が好ましい。ジカルボン酸のジメチルエステルがより好ましい。
【0062】
芳香族ジカルボン酸、あるいはそれ自体による、または少量の脂肪族もしくは脂環式のジカルボン酸またはジエステルとのジエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルが特に好ましい。
【0063】
本発明において有用である代表的な芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ビ安息香酸、ナフタル酸、ベンゼン核を含む置換ジカルボン酸化合物、具体的にはビス(p−カルボキシフェニル)メタン、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、ならびにC1〜C10アルキルおよび他の環置換誘導体、具体的にはハロ、アルコキシ、またはアリール誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も存在するという条件で、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸を使用することもできる。本発明において有用である代表的な脂肪族および脂環式のジカルボン酸は、セバシン酸、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、ジエチルマロン酸、フマル酸、シトラコン酸、アリルマロネート酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、2−エチルスベリン酸、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−(または2,6−)ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸、4,4’メチレンビス(シクロヘキシルカルボン酸)、3,4−フランジカルボキシレート、および1,1−シクロブタンジカルボキシレートである。上記の脂肪族ジカルボン酸のジエステル、酸ハロゲン化物、および無水物の形のジカルボン酸等価物も、本発明のポリエーテルエステルを提供するのに有用である。代表的な芳香族ジエステルとしては、テレフタル酸ジメチル、二安息香酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、およびナフタル酸ジメチルが挙げられる。
【0064】
上記のうち、テレフタル酸、ビ安息香酸、イソフタル酸、およびナフタル酸;テレフタル酸ジメチル、二安息香酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ナフタル酸ジメチル、およびフタル酸ジメチル;ならびにそれらの混合物が好ましい。特に好ましいジカルボン酸等価物は、フェニレンジカルボン酸の等価物、特にテレフタル酸およびイソフタル酸、ならびにそれらのジエステル、特にジメチルエステルであるテレフタル酸ジメチルおよびイソフタル酸ジメチルからなる群から選択されるものである。さらに、2つ以上のジカルボン酸等価物を使用することができる。例えば、テレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルを、少量の他のジカルボン酸等価物と使用することができる。
【0065】
好ましい実施形態において、ジカルボン酸等価物の少なくとも約70モル%(より好ましくは少なくとも約80モル%、さらにより好ましくは少なくとも約90モル%、さらにより好ましくは約95〜100モル%)は、テレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルである。
【0066】
ポリエーテルエステルを作製する方法
ポリエーテルエステルは、好ましくは(a)PO3G、(b)エチレングリコール、および(c)ジカルボン酸等価物を準備し、反応させることによって調製される。上述された他のグリコール、ジオールなども準備し、反応させることができる。
【0067】
本発明のポリエーテルエステルは、出発物のジカルボン酸等価物に応じて通常のエステル交換反応、エステル化、またはトランスエステル化で始まって作製されることが好都合である。例えば、テレフタル酸ジメチルを、触媒の存在下でポリトリメチレンエーテルグリコールおよび過剰のエチレングリコールと共に150〜250℃で加熱し、同時にエステル交換で生成されたメタノールを留去する。この反応は、典型的には約1気圧の圧力で行われる。本明細書で「初期縮合生成物」と呼ばれる反応生成物は、テレフタル酸ジメチルとポリトリメチレンエーテルグリコールおよびエチレングリコールのエステル交換反応生成物の混合物であり、主にビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、様々な量の(ヒドロキシ−ポリトリメチレンエーテル)テレフタレート、および少量の対応するオリゴマーである。次いで、この初期縮合生成物混合物は、重合または重縮合を受けて、ポリトリメチレンエーテルグリコール軟質セグメントおよびポリエチレンテレフタレート硬質セグメントを含む弾性ポリエーテルエステルのコポリマー(エチレングリコールとテレフタル酸ジメチルの縮合生成物)になる。重合(重縮合)は、ジオールを除去して分子量を増大させるための追加のエステル交換および蒸留を含む。重縮合は、典型的には真空下で行われる。圧力は、典型的には約0.01〜約18mmHg(1.3〜2400Pa)の範囲、好ましくは約0.05〜約4mmHg(6.7〜553Pa)の範囲、より好ましくは約0.05〜約2mmHgである。重縮合は、典型的には約220℃〜約290℃の範囲の温度で実施される。
【0068】
初期縮合(エステル交換)および重合工程は、上述する過程に代わる過程を含むことができる。例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコールと、ポリジメチレンエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を、触媒(具体的には、エステル交換で記載された触媒、好ましくはチタン酸テトラブチルなどのチタン触媒)の存在下で、無作為化が起こるまで反応させることができる。両課程によって、ブロックコポリマーが生じる。
【0069】
高温における過剰な滞在時間および可能な随伴する熱劣化を回避するために、触媒をエステル交換で使用することができ、(好ましくは使用される)。エステル交換過程において有用である触媒としては、チタン、ランタン、スズ、アンチモン、ジルコニウム、マンガン、亜鉛、リンの有機および無機の化合物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。酢酸マンガンは、好ましいトランスエステル化触媒であり、三酸化アンチモンが好ましい重縮合触媒である。チタン酸テトライソプロピルおよびチタン酸テトラブチルなどのチタン触媒も好ましく、仕上げポリマーの重量を基準にして少なくとも約25重量ppm(好ましくは少なくとも約50重量ppm、より好ましくは少なくとも約100重量ppm)および約1000重量ppmまで(好ましくは約500重量ppmまで、より好ましくは約400重量ppmまで)の量のチタンとして添加される。エステル交換または直接エステル化反応後および重合前に、追加の触媒を添加することができる。
【0070】
エステル交換重合は、一般に溶媒を添加することなく溶融状態で実施されるが、不活性溶媒を添加して、低温において水およびジオールなどの揮発性成分の除去を容易にすることができる。この技法は、ポリトリメチレンエーテルグリコールまたはジオールとジカルボン酸等価物の反応中、特に直接エステル化を含むとき、すなわちジカルボン酸等価物が二酸であるとき有用である。他の特殊な重合技法は、特定のポリマーの調製に有用であり得る。重合(重縮合)は、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ジカルボン酸等価物、およびエチレングリコールの真空中または不活性ガス流中での反応によって分離した固体生成物を加熱して、遊離したジオールを除去することによって固相でも実現することができる。本明細書では、このタイプの重縮合を「固相重合」と呼ぶ(または「SPP」と略す)。
【0071】
上述する過程またはポリエーテルエステル調製の任意の段階で、バッチまたは連続方法を使用することができる。エステル交換による連続重合が好ましい。
【0072】
本発明のポリエーテルエステルエラストマーを調製する際に、周知の分岐剤を組み込んで溶融強度を増大させることは望ましいことがある。このような場合、分岐剤は、典型的にはポリマー100グラム当たり約0.00015〜約0.005当量の濃度で使用される。分岐剤は、3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオール、3個または4個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、または合計3〜6個のヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するヒドロキシ酸とすることができる。代表的なポリオール分岐剤としては、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパン、および1,2,6−ヘキサントリオールが挙げられる。適当なポリカルボン酸分岐剤としては、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、および同様の酸が挙げられる。酸をそのままで使用することができるが、その低級アルキルエステルの形で使用することが好ましい。
【0073】
ポリエーテルエステルの特性は、組成物(ジカルボン酸等価物、エチレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、他のジオール、他のグリコールなど)、硬質セグメントの重量%、および硬質セグメントと軟質セグメントのモル比を変更することで影響を受ける。組み込まれたポリトリメチレンエーテルグリコールの量に応じて、軟質ゴム状エラストマーから硬質樹脂まで作製することができる。ポリトリメチレンエーテルグリコールの好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして、軟質グレードポリマーでは約60〜約90重量%、中間グレードポリマーでは約30〜約59重量%、硬質グレードポリマーでは約1〜約29重量%である。ポリトリメチレンエーテルグリコールの好ましい分子量(Mn)は、軟質ポリマーでは約1500〜約5000、中間グレードポリマーでは約800〜約2000、硬質グレードポリマーでは約250〜約1200である。
【0074】
核剤
本発明の組成物は、ポリエーテルエステルエラストマーの結晶化速度を改善するための核剤を含む。本発明で使用するための好ましい核剤は、例えば、スルフィン酸、ホスフィン酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、水酸化物、脂肪族カルボン酸、および芳香族カルボン酸のアルカリ金属(第IA族)塩またはアルカリ土類金属(第IIA族)塩である。すなわち、塩は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウム)カチオンまたはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウム)カチオン、ならびに好ましくはカルボキシレート、スルフィネート、ホスフィネート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ヒドロキシド、脂肪族カルボキシレート、および芳香族カルボキシレートからなる群から選択されるアニオンを含む。好ましい金属カチオンはリチウム、ナトリウム、カリウム、およびカルシウムである。好ましいアニオンは、ホスフェート、サルフェート、アセテートおよびプロピオネートなどの脂肪族カルボキシレート、ならびにベンゾエート酸、テレフタレート、イソフタレート、およびフタレートなどの芳香族カルボキシレートである。特に好ましい核剤は、リン酸三ナトリウムおよび酢酸ナトリウムである。
【0075】
好ましくは、核剤は、ポリエチレンエステル硬質セグメントの重量を基準にして約0.005〜約2重量%、より好ましくは約0.01〜約1重量%のレベルで存在する。
【0076】
核剤は、数種類の方式でポリエーテルエステルに導入することができる。核剤を、ポリマーの合成中いつでも添加することができる。すなわち、核剤を、(トランス)エステル化工程および/または重縮合工程中添加することができる。核剤を、押出機または他の溶融ミキサー中で処理しながら仕上げポリエーテルエステルと混合することも可能である。好ましくは、(トランス)エステル化段階中に核剤を添加する。核剤を、純粋な化合物として、または核剤が添加されている同じもしくは異なるポリエーテルエステル中のマスターバッチとして添加してもよい。
【0077】
架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム
本発明で有用な架橋性ポリマーゴムはアクリレート型ゴムである。通常は、このようなゴムは、1つより多いアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルまたはその混合物の共重合によって誘導された線状コポリマーであり、あるいはエチレンと1つまたは複数のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルまたはその混合物との共重合によって誘導される。アクリレートゴムが多量のエチレンを含有する場合、アクリレートを6.5モル%とわずかにすることができるが、最適に低い圧縮永久歪のためには、アクリレートを20モル%超とすべきである。本発明では、このようなポリ(メタ)アクリレートおよびエチレン/(メタ)アクリレートコポリマーは、官能化ターモノマーの存在を必要としない。しかし、単に特定の最終用途特性のために意図的に添加された官能化コモノマーが少量存在していることは、本発明の範囲内であると考えられる。ただし、このような官能性が、ラジカル開始反応による動的架橋の最中に実現される硬化速度に悪影響を及ぼさないことを条件とする。また、本発明では、1,1−ジヒドロパーフルオロ−n−ブチルアクリレートなどのモノマーおよびフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとに由来するフッ化コポリマーをベースとするいくつかのポリパーフルオロアルキルアクリレート(FPA)型ポリマーは、アクリレート型ゴムに等価と見なされるべきであると考えられる。より好ましくは、架橋性アクリレートゴムは、エチレンと1つまたは複数のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはその混合物とのコポリマーであり、アクリル酸エステル(すなわち、アルキルアクリレート)で共重合されたエチレンの相対量がコポリマーの80重量%未満であり、アルキルアクリレートは20重量%超である。
【0078】
エチレンとアクリレートエステルのコポリマーは周知である。これらは、2つの高圧ラジカルプロセス:チューブラープロセスまたはオートクレーブプロセスを使用して製造することができる。2つのプロセスで作製されたエチレン/アクリレートコポリマーの差は、例えば「High Flexibility EMA Made From High Pressure Tubular Process」、Annual Technical Conference − Society of Plastics Engineers(2002年)、第60版(第2巻)、1832−1836頁に記載されている。
【0079】
エチレンとメチルアクリレートのコポリマー、およびエチレンとブチルアクリレートのコポリマーが注目されている。約25重量%〜約40重量%のメチルアクリレートを含む、エチレンとメチルアクリレートのコポリマーが特に注目されている。また、約25重量%〜約40重量%のブチルアクリレートを含む、エチレンとブチルアクリレートのコポリマーも特に注目されている。チューブラープロセスで調製されたこのようなコポリマーが特に注目に値する。チューブラープロセスのエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、販売名ELVALOY(登録商標)AC(E.I. du Pont de Nemours and Company)で市販されている。
【0080】
また、エチレン、メチルアクリレート、および第2のアルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)のコポリマー(ターポリマー)も注目されている。特定の実施形態は、エチレン、メチルアクリレートコモノマー、およびn−ブチルアクリレートコモノマーの共重合に由来するコポリマーを提供する。ただし、メチルアクリレートコモノマーは、コポリマー中に、約5重量%の下限から、n−ブチルアクリレートが約41重量%で存在する場合に約45重量%からn−ブチルアクリレートが約15重量%で存在する場合に約47.5重量%まで直線的に変化する上限まで存在し、n−ブチルアクリレートは、前記コポリマー中に、メチルアクリレートが約23〜47.5重量%の範囲内で存在する場合に約15重量%の下限、およびメチルアクリレートが約5重量%で存在する場合に約57重量%の下限、および約5重量%のメチルアクリレートの下限と約23重量%のメチルアクリレートの下限との間を直線的に変化する下限から、メチルアクリレートが約45重量%で存在する場合に約41重量%の上限、およびメチルアクリレートが約5重量%で存在する場合に約80重量%の上限、および約45重量%のメチルアクリレートと5重量%のメチルアクリレートとの間を直線的に変化する上限まで存在し、残部はエチレンである。
【0081】
同様に、別の実施形態では、メチルアクリレートは、コポリマー中に約10〜40重量%で存在し、n−ブチルアクリレートは、コポリマー中に、メチルアクリレートが約23〜40重量%の範囲内で存在する場合に約15重量%の下限から、およびメチルアクリレートが約10重量%で存在する場合に約47重量%の下限、および約10重量%のメチルアクリレートの下限と約23重量%のメチルアクリレートの下限との間で直線的に変化する下限から、メチルアクリレートが約40重量%で存在する場合に約35重量%の上限、およびメチルアクリレートが約10重量%で存在する場合に約65重量%の上限、および約40重量%のメチルアクリレートと10重量%のメチルアクリレートとの間を直線的に変化する上限まで存在する。
【0082】
ターポリマーが特に注目されている。ただし、メチルアクリレートは、ターポリマー中に、約15〜30重量%で存在し、n−ブチルアクリレートは、コポリマー中に、メチルアクリレートが約27〜30重量%の範囲内で存在する場合に約20重量%の下限、およびメチルアクリレートが約15重量%で存在する場合に約45重量%の下限、および約15重量%のメチルアクリレートの下限と約25重量%のメチルアクリレートの下限との間で直線的に変化する下限から、メチルアクリレートが約30重量%で存在する場合に約45重量%の上限、およびメチルアクリレートが約15重量%で存在する場合に約60重量%の上限、および約30重量%のメチルアクリレートと15重量%のメチルアクリレートとの間で直線的に変化する上限まで存在する。これらのターポリマーは、米国特許出願公開第2005−0020775A1号明細書により詳細に記載されている。
【0083】
あるいは、架橋性アクリレートゴムは、2つ以上の異なるエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの混合物を含むことができる。単一のコポリマーの代わりに、2つ以上のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの混合物を、コモノマー含有量の平均値が上記に示す範囲内である限り本発明で使用することができる。適切に選択された2つのエチレン/アルキルアクリレートコポリマーを本発明のブレンドで使用すると、特に有用な特性を得ることができる。例えば、架橋性アクリレートゴムは、異なるアルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)を含むエチレンコポリマーと混合されたエチレン/メチルアクリレートコポリマーを含むことができる。異なるポリエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは両方とも、オートクレーブプロセスを使用して調製することができ、両方とも、チューブラープロセスを使用して調製することができ、あるいは一方はオートクレーブプロセスを使用して調製することができ、他方はチューブラープロセスを使用して調製することができる。
【0084】
架橋系
本発明の組成物は、ゴムを架橋するための架橋系を含有する。架橋系(およびその成分)は、ゴムを架橋するのに有効な量で存在する。好ましくは、架橋系は選択され、遅い反応速度、および最大G’速度における対応する望ましい中央の時間を実現するのに十分なほどの量で使用される(好ましい実施形態で、最大G’速度における時間3.9分以上と数量化することができる)。G’速度は米国特許出願公開第2004−0115450A1号明細書に記載されている。
【0085】
好ましくは、架橋系は、過酸化物ラジカル開始剤を有機多オレフィン性助剤と組み合わせて含む。好ましくは、架橋系は、ゴムの重量を基準にして約0.1〜約5重量%、より好ましくは約1〜約5重量%、およびさらにより好ましくは約1.5〜約3重量%の過酸化物ラジカル開始剤を含む。好ましくは、架橋助剤を、ゴムの重量により約0.5〜約8重量%、より好ましくは約2〜約6重量%の量で使用する。
【0086】
本発明で使用するための好ましいラジカル開始剤は、動的架橋温度で急速に分解するが、成分を混合する溶融温度では急速に分解しない。これらには、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジクミルペルオキシド、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンなどが含まれる。最も好ましいラジカル開始剤は、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;およびt−ブチルペルオキシベンゾエートである。
【0087】
有機多オレフィン性助剤は、好ましくは有機ジエンである。架橋助剤は、例えばジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、テトラメチレンジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどとすることができる。好ましくは、架橋助剤は、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、およびトリアリルイソシアヌレートである。
【0088】
成分の実際の混合、およびその後の動的架橋は、当該技術分野で一般に実施されるように通常の溶融ブレンディング装置を使用してバッチモードまたは連続モードで行うことができる。好ましくは、方法は溶融押出機または射出成形装置で連続的に行われる。重要な考慮点は、低温における低い硬化速度を利用し、したがって架橋前に十分な混合および分散が実現されるようにステップを行うことである。この方式では、より高いレベルの分散が行われた後に、その後のより高い温度によって、ゴム相が架橋される。これらの方法を使用して、様々な造形品または成形品を本発明の組成物から生成することができる。このような物品の例として、ホース、ガスケット、フィルム、ベルト、ケーブル外被、シール、ギヤ、およびベアリングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明による動的架橋された熱可塑性エラストマー組成物は、一般に当該技術分野で知られている様々なタイプの充填剤、顔料、着色剤、熱および紫外線安定剤、酸化防止剤、離型剤、分岐剤などの添加によって有利に改質することができる。好ましくは、米国特許第3896078号明細書に教示されているように、溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物はポリアミドと酸化防止剤の組合せで安定化される。
【0090】
充填剤の例として、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、粘土、カオリン、タルク、シリカ、珪藻土、マイカ粉末、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。好ましい充填剤はカーボンブラックである。充填剤の量は、組成物の流動性および機械的強度を損なうべきではない。充填剤の好ましい量は全組成物の約0.1〜約10重量%の範囲である。
【実施例】
【0091】
下記の実施例は、本発明を例示するために記載するものであり、限定するものではない。部、百分率などはすべて、別段の指摘がない限り重量による。
【0092】
実施例で利用される1,3−プロパンジオールは、第2005−0069997A1号明細書に記載された生物学的方法で調製した。純度は>99.8%であった。
【0093】
PO3Gは、米国特許出願公開第2005−0020805A1号明細書に記載の通り1,3−プロパンジオールから調製した。
【0094】
数平均分子量(Mn)は、NMR分光法を用いて末端基分析で確定した。
【0095】
融点(Tm)、(再)結晶化温度(Trc)、ガラス転移温度(Tg)、およびΔH(ポリマー結晶化によって生じた熱)は、ASTM D−3418(1988)に従ってDuPont DSC Instrument Model 2100(E.I. du Pont de Nemours and Co., Wilmington, DE)を使用して確定した。約3mgの試料をDSCアルミニウムパンに密封し、窒素雰囲気中で試料を270℃に加熱し、次いで冷却した。加熱および冷却速度は10℃/分であった。
【0096】
ポリエーテルエステルエラストマーの結晶化挙動を示差走査熱分析(DSC)で調査した。ポリマー試料のインヘレント粘度(IV)を、PolyVISC(登録商標)自動粘度計(Cannon Instrument Co.)で、温度30℃、m−クレゾール中0.5%の濃度で分析した。
【0097】
ポリエーテルエステルエラストマー(PE1)の調製
この実施例は、50重量%のポリエチレンテレフタレート硬質セグメントおよび50重量%のポリトリメチレンエーテルテレフタレート軟質セグメントを有するポリエーテルエステルのリン酸三ナトリウム核剤の存在下での合成を説明する。
【0098】
25ガロンのオートクレーブに、36.5ポンドのテレフタル酸ジメチル、30ポンドのPO3G(Mn 1770)、16ポンドのエチレングリコール、87gのETHANOX(登録商標)330 酸化防止剤、12gのTYZOR(登録商標)TPT触媒、22gのトリメリト酸トリメチル(1,2,4−ベンゼン−トリカルボン酸、メチルエステル)、および150gのリン酸ナトリウム核剤を加えた。窒素中、温度を215℃に上げ、生成したメタノールを蒸留で凝縮液として除去した。さらにメタノールが留出しなくなり、トランスエステル化反応の終わりを示唆するまで、温度を210℃に約1.5時間保持した。
【0099】
次いで、温度を250℃に上げ、その温度に圧力0.3mmHgで2.5時間保持した。ポリマーをリボンに押し出し、フレークに変換した。
【0100】
ポリマーの特性を表1に列挙する。
【0101】
比較ポリエーテルエステルエラストマー(CPE)の調製
この比較例は、55重量%のポリエチレンテレフタレート硬質セグメントおよび45重量%のポリトリメチレンエーテルテレフタレート軟質セグメントを有するポリエーテルエステルの合成を説明する。核剤は利用しなかった。
【0102】
250mlの三つ口フラスコに、42.1gのテレフタル酸ジメチル、29.3gのPO3G(Mn 1770)、20gのエチレングリコール、0.15gのIRGANOX(登録商標)1098抗酸化剤(Ciba Specialty Chemicals Inc.)、および25mgのTYZOR(登録商標)TPT触媒を加えた。窒素フラッシュ中、温度を215℃に上げ、生成したメタノールを蒸留で凝縮液として除去した。さらにメタノールが留出しなくなり、トランスエステル化反応の終わりを示唆するまで、温度を210℃に約1.5時間保持した。
【0103】
次いで、温度を250℃に上げ、その温度に圧力0.2mmHgで2時間保持した。熱および真空を取り除くことによって、反応を止めた。
【0104】
ポリマーの特性を表1に列挙する。
【0105】
ポリエーテルエステルエラストマー(PE2)の調製
この実施例は、比較ポリエーテルエステルエラストマー(CPE)の化学量論と同じ化学量論であるが、リン酸三ナトリウム核剤を含むポリエーテルエステルの調製を示す。
【0106】
250mlの三つ口フラスコに、42.1gのテレフタル酸ジメチル、29.3gのPO3G(Mn 1770)、20gのエチレングリコール、0.15gのIRGANOX(登録商標)1098抗酸化剤、25mgのTYZOR(登録商標)TPT触媒、および核剤として0.36gのリン酸三ナトリウム(最終ポリマーを基準にして2100ppmのナトリウム)を加えた。窒素中、温度を215℃に上げ、生成したメタノールを蒸留で凝縮液として除去した。さらにメタノールが留出しなくなり、トランスエステル化反応の終わりを示唆するまで、温度を210℃に約1.5時間保持した。
【0107】
温度を250℃に上げ、その温度に圧力0.2mmHgで2時間保持した。次いで、熱および真空の除去によって反応を止め、ポリマーを回収した。
【0108】
ポリマーの特性を表1に列挙する。
【表1】

【0109】
表から分かる通り、核剤なしに作製されたポリマーは、類似しているが核剤を含む組成物のポリマーに比べて大幅に高いt1/2結晶化時間および低い再結晶開始温度を有する。
【0110】
下記の実施例で、次の材料を利用した。
HYTREL(登録商標)5556熱可塑性ポリマー樹脂:ポリブチレンテレフタレートの硬質(結晶質)セグメントおよび長鎖ポリエーテルグリコールに基づく軟質(非晶質)セグメントからなるブロックコポリマー(E.I. du Pont de Nemours and Company製)。
PAR1:エチレン/62%メチルアクリレートコポリマー(ガラス転移温度−29℃)。
PAR2:エチレン/メチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/酸硬化部位コポリマー(ガラス転移温度−42℃)。
DEGDM:エラストマーに組み込ませたジエチレングリコールジメタクリレート架橋助剤。
DYBP:2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3架橋性過酸化物。
IRGANOX(登録商標)565:多官能性フェノール系酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicals)。
IRGAFOS(登録商標)126:有機ホスファイト加工安定剤(Ciba Specialty Chemicals)。
HYTREL(登録商標)30HS:HYTREL(登録商標)用の市販の熱安定化添加剤(E.I. duPont de Nemours and Company)。
【0111】
下記の実施例で利用された試験方法は、ASTM D 2240(デュロメーター硬度)およびASTM D 1708(マイクロ引張試験片の使用によるプラスチックの引張特性(Tensile Properties of Plastics by Use of Microtensile Specimens))であった。
【0112】
実施例1および2、ならびに比較例1
ブレンドした組成物(実施例1および2)を、リン酸三ナトリウム核剤(PE1)の存在下に50重量%のポリエチレンテレフタレート硬質セグメントおよび50重量%のポリトリメチレンエーテルテレフタレート軟質セグメントを有するポリエーテルエラストマーから二軸押出機によって連続プロセスで調製した。比較のために(比較例1)、連続相としてHYTREL(登録商標)5556を使用して、類似の組成物を調製した。架橋性化学品(DEGDMおよびDYBP)とエラストマー(PAR1またはPAR2)を、反応が起こらないように十分低い温度(約100℃)でブレンドした。次いで、ポリエステル連続相を押出機スクリュー構成要素で分散し、温度を徐々に(約250℃に)上げた。この2つのポリマーの分散および温度上昇中に、エラストマーは架橋し、分散した(動的加硫)。ポリエステルは熱可塑性連続相になり、エラストマーは架橋した分散相になった。得られた生成物はゴム様の物理的諸特性を有したが、熱可塑性物質のように成形および押出が可能であった。
【0113】
物理試験用の部品をバレル温度225〜240℃で射出成形した。ショアーA硬度および圧縮永久歪評価用の小板(1/8インチ)、ならびに引張特性評価用の1/8インチのマイクロ引張試験片を利用した。
【0114】
実施例1および2、ならびに比較例1の組成物を下記の表2に示す。
【表2】

【0115】
表3は、周囲温度条件における組成物の引張特性を示す。表4は、ショアーA硬度および圧縮永久歪特性の値を含む。「アニールした」圧縮永久歪値は、ポリエステル連続相をさらに完全に結晶化させるための圧縮永久歪試験の前に150℃で3時間加熱処理した材料について確定した。
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
下記の表5のデータは、空気加熱老化を指定された時間行った後に保持された物理的諸特性の百分率(破断引張応力および破断歪)を示す。実施例1および2は、連続相としてHYTREL(登録商標)5556を使用した組成物の性能と同様の性能を示した。加熱老化における成功は、通常空気オーブン中で所与の時間および温度で経過した後に元の測定した歪(%)の少なくとも50%が保持されていることによって示される。
【0119】
【表5】

【0120】
下記の表6は、実施例1および2、ならびに比較例1について、周囲温度未満(0℃および−40℃)における引張データを含む。実施例1および2の組成物は、周囲温度未満において比較例1より高い弾性を保持する顕著な利点を示し、これは自動車最終用途に極めて望ましい。特に、実施例1の組成物は、−40℃において100%近い破断歪を保持し、−40℃において破断応力の増加が最小になった。
【0121】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物であって、(a)ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマー、(b)アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびそれらの混合物からなる群から選択された増核剤、(c)架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム、ならびに(d)前記ゴムを架橋するための架橋系を含む組成物。
【請求項2】
エラストマーおよびゴムの総合質量を基準にして約15〜約75質量%のポリトリメチレンエーテルエステルエラストマー、および約25〜約85質量%のポリ(メタ)アクリレートゴムを含む、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
ポリエーテルエステルエラストマーが、ポリエーテルエステルエラストマーの質量を基準にして約10〜約90質量%のポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメント、および約10〜約90質量%のポリエチレンエステル硬質セグメントを含む、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
ポリエーテルエステルエラストマーが、好ましくは少なくとも約0.6dl/gおよび約2.4dl/gまでの固有粘度を有する、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントが、重合体エーテルグリコールとジカルボン酸等価物のエステル結合を介した反応生成物であり、前記軟質セグメントを形成するために使用された前記重合体エーテルグリコールの少なくとも約50質量%がポリトリメチレンエーテルグリコールである、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
ポリトリメチレンエーテルグリコールが、オリゴマーおよび/または重合体エーテルグルコールであり、繰返し単位の少なくとも50%がトリメチレンエーテル単位である、請求項5に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
ポリトリメチレンエーテルグリコールが、少なくとも50モル%の1,3−プロパンジオールを含むモノマーの酸触媒重縮合によって調製される、請求項6に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
1,3−プロパンジオールが、再生可能な生物学的供給源を使用する発酵過程に由来する、請求項7に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
ジカルボン酸等価物が、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が約250〜約5000である、請求項6に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
ポリエチレンエステル硬質セグメントが、1つまたはそれ以上のジオールと1つまたはそれ以上のジカルボン酸等価物のエステル結合を介した反応生成物であり、前記硬質セグメントを形成するために使用された前記ジオールの約50モル%超がエチレングリコールである、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
ジカルボン酸等価物が、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項13】
増核剤が、ポリエチレンエステル硬質セグメントの質量を基準にして約0.005〜約2質量%のレベルで存在する、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項14】
増核剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびカルシウムからなる群から選択された金属カチオン、ならびにホスフェート、サルフェート、およびカルボキシレートからなる群から選択されたアニオンを含む、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項15】
架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴムが、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーゴム、およびポリパーフルオロアルキルアクリレートゴムからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項16】
架橋系が、過酸化物フリーラジカル開始剤を有機多オレフィン性助剤と組み合わせて含む、請求項1に記載の硬化可能な熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項17】
溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物であって、
(a)(i)ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマー、および(ii)増核剤を含む連続相;ならびに
(b)架橋されたポリ(メタ)アクリレートゴム分散相
を含む組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を含む造形品。
【請求項19】
溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法であって、
(a)架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム、そのポリ(メタ)アクリレートゴムを架橋するのに有効な量の架橋系、ポリトリメチレンエーテルエステル軟質セグメントおよびポリエチレンエステル硬質セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマー、ならびにポリエーテルエステルエラストマーの結晶化時間を短縮させるのに有効な量の増核剤を提供する工程と、
(b)前記架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴム、前記ポリエーテルエステルエラストマー、前記増核剤、および前記架橋系の混合物を生成する工程と、
(c)前記架橋系を使用して、前記混合物中の前記架橋可能なポリ(メタ)アクリレートゴムを架橋する工程と、
(d)連続相として前記ポリエーテルエステルエラストマーおよび増核剤、ならびに分散相として前記架橋されたポリ(メタ)アクリレートゴムを含む前記溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を回収する工程と
を含む方法。
【請求項20】
溶融加工可能な熱可塑性エラストマー組成物を押出成形または射出成形する間に架橋を実施する、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2010−508393(P2010−508393A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534706(P2009−534706)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/022987
【国際公開番号】WO2008/054776
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】