説明

熱可塑性エラストマー組成物及びその用途

【課題】柔軟でゴム弾性に優れ、かつ軽量で、肌荒れがなく外観が良好なオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体が得られるエラストマー組成物、それから得られる発泡体およびその用途を提供する。
【解決手段】エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)とを含み、共重合体ゴム(A)は少なくとも一部が架橋された架橋粒子であって官能基(b)を有し、ポリオレフィン樹脂(B)からなるマ卜リックス相(海相)中に、共重合体ゴム(A)の架橋粒子が分散相(島相)として分散している海島構造を有し、かつ共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン(B)の官能基(b)の少なくとも一部が金属塩(a)で架橋している熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物、それを使用してなる柔軟で軽量であり、かつ成形外観に優れるオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や石油資源の枯渇といった環境問題への対応が急務となっており、産業用プラスチック材料においても、例外なく対応が求められている。その中で、二酸化炭素排出量の低減ならびに材料使用量の削減を意図した方策として、プラスチック材料を発泡させることによる軽量化が盛んに行われている。このうち、隙間埋め材用発泡体、プロテクトスポンジシート等のエラストマーの発泡体を製造する方法として、従来、オレフィン系共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂とからなる部分架橋された組成物が、熱可塑性エラストマーとして使用できることは、たとえば特許文献1(特開昭48-26838号公報)、特許文献2(特開昭54-112967号公報)により公知である。
【0003】
しかしながらこれらの熱可塑性エラストマーにおいては、基本的に加硫ゴムに比べてゴム弾性に劣る上、さらにポリオレフィン系樹脂成分が、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理した時に分解し、発泡時の張力が劣るため、脱泡しやすく、均一な発泡体を得ることが困難で、しかも脱泡による肌荒れが顕著であるという問題があった。
【0004】
また、特許文献3(特開平6-73222号公報)によれば、結晶性ポリオレフィンプラスチックとゴムの混合物からなる熱可塑性エラストマー組成物を水を使用して発泡させる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法では、特殊な発泡専用押出機を使用し、極狭い温度範囲内でのみ発泡が可能なこと、完全フェノール架橋された熱可塑性エラストマー組成物を使用した場合は、押出外観が極めて悪いこと、部分架橋または非架橋の熱可塑性エラストマー組成物を使用した場合は、圧縮永久歪と吸水率が大きく、加硫ゴムを代替できるほどの汎用性はないという問題があった。
【0006】
一方で、ポリオレフィン系樹脂では、例えば特許文献4(特開2005−138508号公報)のようなポリプロピレン系樹脂による発泡シートが知られている。しかし、このようなポリオレフィン系樹脂の発泡シートは柔軟性や弾性に劣るため、例えば自動車内装材のようなソフト感や弾性を求められる用途では、特許文献5(特許1625668号公報)にあるように、ポリオレフィン系樹脂の発泡シートと熱可塑性エラストマーのシートを積層させることが行われてきた。
【0007】
しかしながら、このような積層体を作製するには、ポリオレフィン系樹脂の発泡シートを作製する工程とは別に積層体を作製する工程が必要で手間がかかる等の問題があった。
また特許文献6(特開平09-143297号公報)によれば、オレフィン系熱可塑性エラストマーに有機あるいは無機系の熱分解型発泡剤を混合し、発泡倍率が2倍以上の発泡体を得る方法が開示されているが、発泡はするものの成形体としての強度が不足し、使用可能な用途に制限があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭48-26838号公報
【特許文献2】特開昭54-112967号公報
【特許文献3】特開平6-73222号公報
【特許文献4】特開2005−138508号公報
【特許文献5】特許1625668号公報
【特許文献6】特開平09-143297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記のような背景技術に伴う問題を解決しようとするものであって、柔軟でゴム弾性に優れ、かつ軽量で、肌荒れがなく外観が良好なオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体が得られるエラストマー組成物、それから得られる発泡体およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記のエラストマー組成物を用いることにより前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は
(1)エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)とを含み、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は少なくとも一部が架橋された架橋粒子であって、当該粒子の少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有し、ポリオレフィン樹脂(B)からなるマ卜リックス相(海相)中に、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子が分散相(島相)として分散している海島構造を有し、かつエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン樹脂(B)の官能基(b)の少なくとも一部が金属塩(a)で架橋していることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物である。
【0012】
(2)エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)とを含み、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は少なくとも一部が架橋された架橋粒子であって、当該粒子の少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有し、ポリオレフィン樹脂(B)からなるマ卜リックス相(海相)中に、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子が分散相(島相)として分散している海島構造を有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物である。
【0013】
このエラストマー組成物のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン樹脂(B)の官能基(b)の少なくとも一部を金属塩(a)で架橋することにより、柔軟でゴム弾性に優れ、かつ軽量で、肌荒れがなく外観が良好なオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体を得ることができる。
【0014】
前記(1)および(2)において、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子の平均分散粒子径が0.5μmを超え10μm以下であることは目標とする強度の発現および良好な外観の達成の点で好ましい態様である。
【0015】
前記(1)および(2)において、ポリオレフィン樹脂(B)が、有機ペルオキシド非架橋型のポリプロピレン樹脂であるプロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体との混合物であることは良好な外観の達成の点で好ましい態様である。
【0016】
前記(1)および(2)において、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の含有量が40〜95重量%、ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が60〜5重量%(但し、(A)と(B)の合計を100重量%とする)であることは柔軟で優れたゴム弾性の発現の点で好ましい態様である。
【0017】
前記(1)および(2)において、共重合体ゴム(A)40〜90重量部、ポリオレフィン樹脂(B)10〜60重量部(ここで、(A)と(B)の合計は100重量部)に対し、1〜200重量部の割合で軟化剤(C)を含有することは成形性を向上および良好な外観の達成の点で好ましい態様である。
【0018】
(3)有機ペルオキシドで架橋可能な基を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A’)と有機ペルオキシドで架橋可能な基を有さないポリオレフィン樹脂(B’)、官能基(b)を有する化合物(c)、金属塩(a)および架橋剤の存在下で動的架橋することにより得られることを特徴とする前記(1)に記載の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0019】
(4)有機ペルオキシドで架橋可能な基を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A’)と有機ペルオキシドで架橋可能な基を有さないポリオレフィン樹脂(B’)、官能基(b)を有する化合物(c)および架橋剤の存在下で動的架橋することにより得られる前記(2)の熱可塑性エラストマー組成物である。
本熱可塑性エラストマーは、さらに金属塩(a)と混練等することにより前記(1)の熱可塑性エラストマー組成物にすることができる。
【0020】
前記金属塩(a)が有機酸基または無機酸基から選ばれる少なくとも1種を金属成分によって中和した塩であることは軽量であり、かつ良好な外観の達成の点で好ましい態様である。
【0021】
(5)無機または有機系の熱分解型化学発泡剤、二酸化炭素、窒素、またはこれらの混合ガスを主成分とするガスから選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いて発泡させることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱可塑性エラストマー組成物から得られる発泡体である。
押出成形機によって押出発泡成形させることは目的とする製品形状の形成および生産性の点で好ましい態様である。
押出成形機に取り付けられたサーキュラーダイを用いて押出発泡成形させることは目的とする製品形状の形成および生産性の点で好ましい態様である。
射出成形機によって射出発泡成形させることは目的とする製品形状の形成および生産性の点で好ましい態様である。
ブロー成形機によってブロー発泡成形させることは目的とする製品形状の形成および生産性の点で好ましい態様である。
【0022】
(6) 前記の発泡体からなる自動車用材料である。
【0023】
(7) 前記の発泡体からなる土木・建築用品である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の金属塩で架橋した熱可塑性エラストマー組成物は、従来の発泡性が悪いか、発泡しても外観が不良であった熱可塑性エラストマーに比べ、柔軟でゴム弾性に優れ、かつ軽量であり、肌荒れがなく外観が良好な発泡体が得られ、意匠性の高い自動車部品等への適用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物およびそれから得られる発泡体について具体的に説明する。
【0026】
(熱可塑性エラストマー組成物)
本発明の金属塩で架橋した熱可塑性エラストマー組成物は、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)とを含み、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は少なくとも一部が架橋した架橋粒子であって、当該粒子の少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有し、ポリオレフィン樹脂(B)からなるマ卜リックス相(海相)中に、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子が分散相(島相)として分散している海島構造を有し、かつエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン樹脂(B)の官能基(b)の少なくとも一部が金属塩(a)で架橋していることを特徴とする。
【0027】
前記のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子の平均分散粒子径は0.5μmを超え10μm以下が好ましく、より好ましくは0.8μmを超え、8μm以下である。この範囲にあると目標とする強度の発現および良好な外観の達成の点で好ましい。
【0028】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は、40〜90重量部が好ましく、さらに好ましくは45〜85重量部、特に好ましくは50〜80重量部、ポリオレフィン樹脂(B)は10〜60重量部が好ましく、さらに好ましくは15〜55重量部、特に好ましくは20〜50重量部である(但し(A)と(B)の合計は100重量部)。
【0029】
また、本発明の熱可塑性エラストマーは、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)とポリオレフィン樹脂(B)との合計100重量部に対し1〜200重量部、好ましくは20〜180重量部の軟化剤(D)を含有することが、良好な成形性と、得られた発泡体の柔軟性付与の点で望ましい。
【0030】
以下各成分につき具体的に説明する。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)
官能基(b)を有する粒子状のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は、例えばエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A’)を金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有する化合物(c)およびポリオレフィン樹脂(B)の存在下で動的架橋させることにより得られる。
【0031】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A’)は、化合物(c)と反応して官能基(b)を形成し、かつポリオレフィン樹脂(B)中で島相を形成できる樹脂であれば特に制限はないが、エチレンと炭素原子数が3〜20のα-オレフィンと非共役ポリエンとからなる無定形ランダムな弾性共重合体であって、有機ペルオキシドと混合し、加熱下で混練することによって、架橋して流動性が低下するか、あるいは流動しなくなる有機ペルオキシドで架橋可能な基を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが好ましい。当該組成物から得られる発泡体へのゴム弾性付与と圧縮永久歪の低減に重要な役目を担う。このような共重合体ゴム(A’)として、具体的には、以下のようなゴムが挙げられる。
【0032】
エチレンとα-オレフィンに由来する構造単位のモル比(エチレン/α-オレフィン)は40/60〜85/15、好ましくは55/45〜85/15、さらに好ましくは60/40〜80/20の範囲にあるのが望ましい。
【0033】
α-オレフィンとしては炭素原子数3〜20、好ましくは3〜10である。具体的なものとしてはプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどがあげられる。これらの中ではプロピレン、1-ブテン、1-オクテンが好ましい。
【0034】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを製造する際の非共役ポリエンとしては、環状あるいは鎖状の非共役ポリエンが用いられる。環状非共役ポリエンとしては、たとえば5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどが挙げられる。また、鎖状の非共役ポリエンとしては、たとえば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどが挙げられる。中でも5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましく使用できる。これらの非共役ポリエンは、単独あるいは2種以上混合して用いられ、その共重合量は、ヨウ素価表示で3〜50グラム、好ましくは5〜45グラム、より好ましくは8〜40グラムであることが望ましい。有効網目鎖濃度νの値を最適化し圧縮永久歪を改善するためには、ヨウ素価10グラムよりも高い値であることが望ましい。
【0035】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度[η]は、0.8〜6.0dl/g、好ましくは1.0〜5.0dl/g、より好ましくは1.1〜4.0dl/gの範囲にあるのが望ましい。
【0036】
上記のような特性を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会発行)」、309〜330頁などに記載されている従来公知の方法により調製することができる。
【0037】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、有機ペルオキシドで架橋可能なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A‘)と、それ以外の有機ペルオキシドで架橋可能なゴムを併用することもできる。このような有機ペルオキシドで架橋可能なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム以外のゴムとしては、たとえばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。
【0038】
金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)
官能基(b)とは、化合物に特定の反応性や機能を与える原子または原子団の総称で、(A)成分中に含有される官能基(b)としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、アルデヒド基、酸基(例:カルボン酸基、スルホン酸基)または酸無水物基(例:カルボン酸無水物基、スルホン酸無水物基)などの酸の誘導体基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アゾ基、ジアゾ基などを例示できる。
【0039】
これらの中では、酸または酸無水物が好適であり、カルボン酸またはカルボン酸無水物がより好適であり、特に、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)、それらの酸無水物がとりわけ好適である。また、スルホン酸またはスルホン酸無水物も好適に用いられる。
【0040】
なお、酸基またはその誘導体基とは、酸またはその誘導体含有化合物(例:酸含有化合物の酸無水物、イミド、アミド、エステル)に由来する基であり、本発明においては該官能基を単に酸またはその誘導体ということもある。例えば、上記のカルボン酸およびその誘導体の例示は、例示された酸またはその誘導体含有化合物に由来する基を意味する。
【0041】
官能基(b)を有する化合物(c)
官能基(b)を有する化合物(c)としては、官能基(b)を有し、共重合体ゴム(A)および樹脂(B)と反応するものであれば特に制限なく使用できるが、カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(登録商標)、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸を挙げることが出来る。
【0042】
また、カルボン酸の誘導体としては、例えば、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、イミド、アミド、エステルなどを挙げることが出来る。前記誘導体として、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイミド、マレイン酸モノメチル、グリシジルマレートなどを例示できる。
【0043】
これらの中では、不飽和カルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特に、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)、それらの酸無水物がとりわけ好適である。
【0044】
本発明において、官能基(b)を有する化合物(c)は、共重合体ゴム(A)と樹脂(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.02〜8重量部、特に好ましくは0.03〜5重量部の範囲で含有するように使用する。
【0045】
金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーに使用されるポリオレフィン樹脂(B)は、金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有し、海相を形成できる樹脂であれば特に制限はないが、有機ペルオキシド非架橋型のポリオレフィン系樹脂が好ましく、プロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99モル%以上含有するプロピレン・オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%以上含有するプロピレン・オレフィン共重合体との混合物から得られるポリオレフィン系樹脂が例示できる。使用されるオレフィンとしては、エチレン、前記の炭素原子数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。ポリオレフィン樹脂(B)は、例えば前記の樹脂に後述する官能基(b)を有する化合物(c)を反応させることにより得られる。
【0046】
ポリオレフィン樹脂(B)は、ランダム、ブロックタイプのいずれでもよく、任意のメルトフローレートのものが使用できる。
【0047】
本発明において、有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂とは、有機ペルオキシドと混合し、加熱下で混練することによって、分解して流動性が上昇する有機ペルオキシド非架橋型のポリオレフィン系樹脂である。
【0048】
ポリオレフィン樹脂(B)が有する官能基(b)としては、例えば、前記の(A)が有する官能基(b)に例示したものを挙げることができる。これらの中では、不飽和カルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特に、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)、それらの酸無水物がとりわけ好適である。
【0049】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂以外の、有機ペルオキシド非架橋型ゴム状物質を含んでいてもよい。
【0050】
この有機ペルオキシド非架橋型ゴム状物質は、有機ペルオキシドと混合し、加熱下で混練しても架橋せず、流動性が低下しない炭化水素系のゴム状物質であり、具体的には、ポリイソブチレン、ブチルゴム、プロピレン含量が70モル%以上のプロピレン・エチレン共重合体ゴム、プロピレン・1-ブテン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらの内では、プロピレン・エチレン共重合体ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴムが性能および取扱い上好ましい。特にこれらはムーニー粘度[ML(1+4)100℃]が60以下であることが、組成物の流動性を改善する点で好ましい。
【0051】
金属塩(a)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーのエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン樹脂(B)の官能基(b)の少なくとも一部と架橋する金属塩(a)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子および/またはポリオレフィン樹脂(B)の官能基(b)と相互作用(例えば反応)しうる部位(反応性部位ともいう。)を分子中に有する化合物である。この金属塩(a)を介しての共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合などの分子間相互作用により、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子同士、および/またはポリオレフィン樹脂(B)同士、および/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子とポリオレフィン樹脂(B)の少なくとも一部で架橋構造を形成することにより、発泡体としての優れた物性が発現する。
【0052】
金属塩(a)と共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン樹脂(B)が架橋(相互作用)していることは、金属塩(a)を加えることにより、樹脂の溶融張力が向上することから間接的に示唆される。
【0053】
金属塩(a)としては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子およびポリオレフィン樹脂(B)の官能基(b)と相互作用(例えば反応)し、可逆的、不可逆的のいかんによらず、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子同士、および/またはポリオレフィン樹脂(B)同士、および/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子とポリオレフィン樹脂(B)の分子鎖架橋を促進すると推測されるものであれば特に制限なく使用でき、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、有機酸あるいは無機酸の金属塩および金属錯体、アミノ基含有化合物、水酸基含有化合物、イソシアネート基含有化合物などが挙げられる。金属酸化物の具体例としては、CuO、MgO、BaO、ZnO、Al23、Fe23、SnO、CaO、TiO2、ZrO2などが挙げられる。金属水酸化物の具体例としては、LiOH、NaOH、KOH、Cu(OH)2、Cu2O(OH)2、Mg(OH)2、Mg2O(OH)2、Ba(OH)2、Zn(OH)2、Sn(OH)2、Ca(OH)2などが挙げられる。
【0054】
本発明では、これらの中でも、有機酸あるいは無機酸の金属塩が好適である。つまり、金属塩(a)が有する反応性部位は、有機酸基および無機酸基から選ばれる少なくとも1種が金属成分によって中和された基であることが好ましい。有機酸基とは、有機酸が有するカルボキシル基、スルホ基などの官能基をいい、無機酸基とは、無機酸が有するリン酸基、ホウ酸基などの官能基をいう。
【0055】
上記金属塩における金属成分(金属カチオン)の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セシウム、ストロンチューム、ルビジウム、チタン、亜鉛、銅、鉄、錫、鉛などの周期表第I〜VIII族の金属を挙げることができる。これらの中では、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウムが好ましく、分子鎖架橋を促進させうる観点から、1価の金属カチオンである、ナトリウム、カリウムなどがより好ましく、カリウムが特に好ましい。
【0056】
従来、有機酸金属塩としては、ステアリン酸、酢酸、炭酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、イミノ二酢酸、クエン酸、ニトリロ三酢酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ブタンテトラカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロペリト酸、ジエチレントリアミン五酢酸、メリト酸などの有機酸の金属塩が知られているが、本発明においてはこれらの中でも、分子中に2つ以上の反応性部位を有する有機酸金属塩が好ましく用いられる。
【0057】
すなわち本発明においては、コハク酸塩、イミノ二酢酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩などが好ましく用いられる。具体例としては、コハク酸カリウム、イミノ二酢酸カリウム、クエン酸カリウム、ニトリロ三酢酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カリウムを例示することができる。また、これらの有機酸金属塩は、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0058】
従来、無機酸金属塩としては、リン酸、ホウ酸、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、クロム酸、臭化水素酸、次亜塩素酸、過塩素酸などの無機酸の金属塩が知られている。本発明においてはこれらの中でも、気化しにくく、樹脂中に残留しやすいため、リン酸基やホウ酸基を2つ以上有する無機酸金属塩が好ましく用いられる。また、これらの無機酸金属塩は、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0059】
本発明において、金属塩(a)は、共重合体ゴム(A)およびポリオレフィン樹脂(B)100重量部に対し、0.01〜50重量部、好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.03〜20重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0060】
軟化剤(D)
軟化剤(D)としては、たとえば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、トール油、密ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩、ナフテン酸またはその金属石鹸、パイン油、ロジンまたはその誘導体、テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤、ジイソドデシルカーボネート等の炭酸エステル系可塑剤、その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも石油系軟化剤と炭化水素系合成潤滑油が好ましい。
【0061】
〔熱可塑性エラストマー組成物の調整〕
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物の調整は、共重合体(A)とポリオレフィン樹脂(B)が海島構造を形成する調整方法であれば特に制限はないが、例えば有機ペルオキシドで架橋可能な基を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A’)と、有機ペルオキシドで架橋可能な基を有さないポリオレフィン樹脂(B’)、官能基(b)を有する化合物(c)、金属塩(a)および架橋剤、必要に応じて軟化剤(D)の存在下、動的に熱処理することで得られる。金属塩(a)は、共重合体ゴム(A’)とポリオレフィン樹脂(B’)を動的に熱処理したのちに添加して架橋してもよい。
【0062】
動的に熱処理するとは、上記のような各成分を融解状態で混練することをいう。動的な熱処理は、解放型のミキシングロール、非解放型のバンバリーミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機、連続ミキサーなどの混練装置を用いて行なわれるが、非開放型の混練装置中で行なうことが好ましく、特に2軸押出機を用いて行うことが好ましい。また、動的な熱処理は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なっても良い。
通常は、樹脂温度170℃〜270℃、混練時間1〜10分、せん断速度2000〜7000sec-1で、2軸押出機を用いて行うことが好ましい。
【0063】
本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、その発明の目的を損ねない範囲で、さらにポリオレフィン樹脂(B’)を動的に熱処理しても良い。ここで用いるポリオレフィン樹脂(B’)とは、有機ペルオキシド非架橋型のポリオレフィン系樹脂であって、かつ、金属塩(a)と架橋可能なプロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99モル%以上含有するプロピレン・オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%以上含有するプロピレン・オレフィン共重合体が好ましい。使用されるオレフィンとしてはエチレン、前記の炭素原子数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。共重合体はランダム、ブロックタイプのいずれでもよく、任意のメルトフローレートのものが使用できる。
【0064】
架橋剤
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)を架橋して粒子を形成する方法は特に制限は無いが、例えば架橋剤として有機ペルオキシドを使用する方法が挙げられる。
【0065】
有機ペルオキシドとしては、具体的には、ジクミル有機ペルオキシド、ジ-tert-ブチル有機ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイル有機ペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイル有機ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチル有機ペルオキシド、ラウロイル有機ペルオキシド、tert-ブチルクミル有機ペルオキシドなどが挙げられる。
【0066】
これらの内では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、中でも、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0067】
本発明において、架橋剤の使用量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)100重量部に対して、0.02〜10重量部が好ましく、さらには0.03〜5重量部が好ましい。
【0068】
本発明においては、上記有機ペルオキシドによる部分架橋処理に際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0069】
上記のような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、上記の被架橋処理物の主成分であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)、ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性が良好であり、かつ、有機過酸化物を可溶化する作用を有し、有機過酸化物の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた部分架橋熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0070】
本発明においては、上記のような架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーは、上記の被架橋処理物全体に対して、0.5〜5重量%、好ましくは0.6〜4重量%、より好ましくは0.7〜3重量%の割合で用いるのが好ましく、従来技術より多量配合することが望ましい。架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーの配合割合が上記範囲にあると、圧縮永久歪が小さく、成形性の良好な発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0071】
その他の添加剤
本発明においては、熱可塑性エラストマー組成物中に、必要に応じて、公知の充填剤、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、金属セッケン、ワックス等の滑剤、顔料、染料、結晶核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で、添加することができる。
上記充填剤としては、通常ゴムに使用される充填剤が適当であり、具体的には、カーボンブラック、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、けいそう土、雲母粉、アスベスト、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、グラファイト、アルミナなどが挙げられる。
これらの充填剤は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、0〜120重量部、好ましくは2〜100重量部の割合で用いる。
【0072】
また、本発明において必要に応じて用いられる公知の耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系安定剤などが挙げられる。
【0073】
また、本発明において必要に応じて用いられる公知の結晶核剤としては、ポリオレフィン樹脂に一般的に使用されているタルク、マイカ、シリカ、アルミナム、ブロム化ビフェニルエーテル、アルミニウムヒドロキシジp-tert-ブチルベンゾエート(TBBS)、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、置換DBS、低級アルキルジベンジリデンソルビトール(PDTS)、有機リン酸塩、置換トリエチレングリコールテレフタレート、Terylene&Nylon繊維などが挙げられ、特に2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、PDTSが望ましい。
【0074】
結晶核剤は熱可塑性エラストマー組成物中のポリオレフィン樹脂(B)100重量部に対して0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部であることが望ましい。
【0075】
熱可塑性エラストマー組成物の発泡体
本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる発泡体の密度は700kg/m未満、好ましくは650kg/m未満、特に好ましくは600kg/m未満の範囲にあることが望ましい。この範囲の密度の発泡体は、柔軟性、クッション性、軽量性、断熱性等を十分に発揮でき、実用性が高い。発泡体密度の下限はその目的に応じて決定され、特に限定するものではないが、例えば100kg/m以上であると発泡体の製造が容易である。
【0076】
また、発泡体の気泡径は、好ましくは300μm未満、より好ましくは200μm未満であることが、折り皺を少なくする観点から望ましい。気泡径の下限はその目的に応じて決定され、特に限定するものではないが、例えば50μm以上であると発泡体の製造が容易である。
【0077】
〔オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体の調製〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、発泡剤を用いて発泡させ、発泡体とすることができる。発泡剤としては、無機系あるいは有機系の熱分解型発泡剤(化学発泡剤)、二酸化炭素、窒素、二酸化炭素と窒素の混合物を主成分とする不活性ガスを挙げることができる。
【0078】
無機系の熱分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩を挙げることができる。
【0079】
有機系の熱分解型発泡剤としては、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;
アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ-ト等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;
カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0080】
二酸化炭素や窒素を使用する場合は、超臨界状態で発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物中に混合することが、迅速・均一混合、気泡の微細化の面から好ましい。
【0081】
発泡剤は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部の割合で用いられる。
【0082】
また、均一微細な気泡構造を有する発泡体を得るには、発泡形成核剤の使用が望ましい。その添加量は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、0.02〜5重量部であることがより好ましい。
【0083】
発泡形成核剤としては、亜鉛、カルシウム、鉛、鉄、バリウム等の金属化合物、ステアリン酸等の高級脂肪酸、及びその金属塩、タルク、硫酸バリウム、シリカ、ゼオライト、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の微粒無機粒子、四フッ化エチレン系樹脂微粉末、シリコーンゴム粉末、
クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シクロヘキサン1、2ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ酸等の多価カルボン酸と、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムアルミニウム、炭酸水素カリウム等の無機炭酸化合物の混合物や、これらの反応により生じる中間体、例えばクエン酸ニ水素ナトリウム、シュウ酸カリウム等のポリカルボン酸の塩、
N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ-ト等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などの熱分解型発泡剤が挙げられる。これらの中では、四フッ化エチレン系樹脂微粉末が特に好ましい。
【0084】
多カルボン酸と炭酸水素塩の混合物(好ましくはクエン酸と炭酸水素ナトリウムの混合物、またはその反応中間体であるクエン酸ニナトリウム)、アゾジカルボンアミドを用いて、本発明の熱可塑性エラストマーを発泡させると、低密度、低圧縮歪みで、かつ、微細気泡構造を有する発泡体が得られるので特に好ましい。
【0085】
これらの分解物化合物は、発泡押出時に分解する場合の他、予め、ペレット化等の工程で一部または全部が分解したものでも使用できる。発泡形成核剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、発泡核の形成、気泡の均一化などの働きをし、一般に使用することが望ましい。特に、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の押出温度付近で分解しガス化する化合物は、発泡セル径を細かく、且つ、均一に生成させる効果がある。
【0086】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体を調製するに際しては、上記のようにして得られたペレット状の熱可塑性エラストマー組成物に、熱分解型化学発泡剤を使用する場合は、粉末または樹脂をバインダーとしペレット状にした発泡剤と、必要に応じ発泡形成核剤や湿潤剤を一旦タンブラー型ブラベンダー、V型ブラベンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合するか、必要であれば開放型のミキシングロールや非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連続ミキサー等で、発泡剤の分解温度以下で混練し、発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とする。
金属塩(a)をこのときに加え、金属塩架橋を同時に行っても良い。
【0087】
発泡剤として二酸化炭素や窒素を使用する場合は、熱可塑性エラストマー組成物に発泡形成核剤と湿潤剤を一旦タンブラー型ブラベンダー、V型ブラベンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混練した後、樹脂可塑化シリンダー内で、130〜300℃で溶融し、熱可塑性エラストマーと二酸化炭素や窒素が、相溶状態にある溶融熱可塑性エラストマー組成物を形成する。なお、樹脂可塑化シリンダー内で熱可塑性エラストマー組成物に、二酸化炭素や窒素を溶解する際は、二酸化炭素や窒素は超臨界状態にあることが、相容性と発泡体のセルの均一性の点から好ましい。
【0088】
次に、上記のようにして得られた発泡性熱可塑性エラストマー組成物から発泡体を調製する方法としては、射出成形、押出成形、インフレーション成形、スタンピングモールド成形、圧縮成形等、公知の樹脂加工方法に使用される成形機を適用することができる。特に射出成形機によって射出発泡成形、押出成形機によって押出発泡成形を行うことが好ましい。
【0089】
例えば、熱分解型化学発泡剤を用いて押出成形方法により発泡体を調製する方法としては、上述した発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を押出機に供給し、バレル内で組成物の融点と発泡剤の分解温度以上に加熱し、加圧しながら組成物中に発泡剤分解生成ガスを均一に分散させる。
【0090】
次いで、発泡剤分解生成ガスが均一に分散された溶融発泡性熱可塑性エラストマー組成物を、最適発泡温度に設定した押出機先端部に取り付けられたダイへと移送し、ダイから大気中または水中に押出し急激に圧力を低下させて発泡させ、後続の冷却装置で冷却固化し、目的の発泡体を製造する。なお、押出時の熱可塑性エラストマー組成物の温度は140〜250℃の範囲が好ましい。
【0091】
例えば、超臨界状態の二酸化炭素を発泡剤とし、押出成形方法により発泡体を調製する方法としては、上述した発泡形成核剤を含有した熱可塑性エラストマー組成物を押出機で溶融し、二酸化炭素を臨界圧力(7.4MPa〜40MPa)の範囲内で、臨界温度(31℃)以上に昇温して、超臨界二酸化炭素としてから、押出機中の溶融した熱可塑性エラストマーに混合する。
【0092】
次いで、超臨界二酸化炭素が混合された溶融熱可塑性エラストマー組成物を、最適発泡温度に設定した押出機先端部に取り付けられたダイへと移送し、ダイから大気中に押出し急激に圧力を低下させて、二酸化炭素をガス化し発泡させ、後続の冷却装置で冷却固化し、目的の発泡体を得る。なお、押出時の熱可塑性エラストマー組成物の温度は130〜250℃の範囲が好ましい。
【0093】
さらに押出機先端部に取り付けられたダイがサーキュラーダイであり、サーキュラーダイで押し広げながら円周の1箇所を切り開き、シート状成形品を得ることが最も好ましい。
【0094】
上記のような本発明に係る製造方法により得られた発泡体は、有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム部が架橋されているため、耐熱性、引張特性、柔軟性、耐候性、反発弾性等のゴム的性質が優れており、また加硫ゴムに較べ、リサイクルにも適している。
【0095】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体の用途としては、自動車内装表皮材、ボディパネル等の自動車部品;
靴底、サンダル等の履物;
地盤改良用シート、騒音防止壁等の土木資材;
防水布、水切りシート、化粧用パフ等の雑品が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例における発泡体の成形および基礎物性の評価、発泡体成形前のオレフィン系熱可塑性エラストマー(以降、未発泡品、と称する)の評価は、以下の方法により行った。
【0097】
(試験方法)
(1)押出発泡成形装置
押出機:50mmφ単軸押出機[日本製鋼所(株)P50-32ABV]
シリンダー最高温度:220℃
ダイ温度:170℃
ダイ:サーキュラーダイ
二酸化炭素・窒素供給装置:AKICO社製
引き取り速度:15m/分
(2)基本物性
【0098】
〔発泡体密度の測定〕
発泡体密度はJIS K6268 A法、または種々のメーカーから発売されている自動比重計、例えばミラージュ貿易社製電子比重計MS-200Sで求めることが出来る。当実施例ではミラージュ貿易社製電子比重計MS-200Sを使用し求める。
【0099】
〔表面粗さの測定〕
触針式表面粗さ計サーフコム200B型(東京精密社製)を使用し、長さ50mmの発泡体表面の凹凸を数値化し、最高方10番目までの凸部分の総和(h1)から、最低から10番目までの凹部分の総和(h2)を差し引いた値(h1-h2)を10で除して求める。
【0100】
〔引張強度の測定〕
引張強度の測定は、押出成形したシート状発泡体の長手方向に沿って、JIS K6251に記載のダンベル状3号形試験片(平行部分が規定寸法に達すれば可とする)を4個打ち抜き、JIS K6251に記載の方法によって測定する。
【0101】
〔気泡径の測定〕
発泡体の長手方向と垂直な断面を、高精細デジタルマイクロスコープVH-6300(キーエンス社製)で100倍に拡大し、代表的な気泡10個を選び、長さ測定格子で長径寸法を測定し、平均値で求める。
【0102】
〔極限粘度の測定〕
135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度[η]。
【0103】
〔メルトフローレートMFRの測定〕
ASTM-D-1238-65Tの方法で、230℃、2.16kg荷重で測定する。
【0104】
〔未発泡品の無水マレイン酸の同定〕
フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-4000、日本分光株式会社製)を用いて、波数帯が1770cm-1〜1790cm-1の吸収ピークを確認して同定する。
【0105】
〔未発泡品の溶融張力の測定〕
キャピログラフ−1C(東洋精機社製)により、長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用いて、温度180℃、ピストン速度50mm/minの条件で、溶融張力を測定した。
【0106】
(実施例1)
エチレン含量が68モル%、ヨウ素価22、極限粘度[η]が3.9dl/gであるエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPT-1)100重量部に、鉱物油系軟化剤(出光興産製ダイナプロセスオイルPW-380)75重量部をブレンドした油展EPT175重量部と、メルトフローレート(ASTM-D-1238-65T,230℃、2.16kg荷重)が2.0g/10分であるホモタイプのポリプロピレン(PP-1)40重量部を、予め密閉式混合機[神戸製鋼(株)ミクストロンBB16]で混合し、シーティングロールに通しシート状にした後、朋来鉄工社製ペレタイザーにより角ペレットを製造した。
【0107】
次いで、得られたペレット215重量部、無水マレイン酸1.5重量部、架橋剤1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン1.75重量部と架橋助剤ジビニルベンゼン1.75重量部の混合溶液3.5重量部、酸化防止剤テトラキス[メチレン-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.2重量部をタンブラーブレンダーにより混合し、ペレット表面に均一に付着させた。
【0108】
次いで、この無水マレイン酸、架橋剤、架橋助剤と酸化防止剤が表面に付着したペレット220.2重量部と前述の鉱物油系軟化剤50重量部とを、2軸混合押出機(東芝機械(株)製TEM-50)を用いて、220℃で1時間当たり40kgの処理速度で混練・押出して動的な熱処理を行い、PP-1中に架橋EPT-1の分散粒子が均一に分散している部分的に架橋された熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0109】
得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、四酸化ルテニウムにより染色した後、約100nm程度の厚さの超薄切片を、Leica社製ウルトラミクロトームにより、約−190℃の温度(液体窒素温度)で切り出した。その超薄切片を透過型電子顕微鏡H−7650(日立ハイテクノロジーズ社製)により撮影を実施して得た写真中の島相(架橋EPT-1)500個の粒子径を計測して平均値を求めた結果、架橋EPT-1の平均粒子径は、5.5μmであった。
【0110】
得られた熱可塑性エラストマー組成物を145℃に熱されたn-デカンに溶解し、320メッシュの金網を用いて濾過を行い、まず可溶成分と不溶成分とに分離した。次いで、可溶成分を一昼夜静置して析出したポリマー成分を取り出した。フーリエ変換赤外分光光度計にて不溶成分と析出したポリマー成分の測定を実施した結果、不溶成分はEPT−1が主成分であること、また析出したポリマー成分はポリプロピレンが主成分であり、いずれの測定チャートでも1780cm-1付近に吸収が見られたことから、無水マレイン酸が両成分と反応していることが確認された。
【0111】
次いで、得られた部分的に架橋された熱可塑性エラストマー組成物270.2重量部に、コハク酸カリウムを10重量パーセントの濃度で蒸留水に溶解した水溶液16.3重量部と、極限粘度[η]が8.5dl/gの高分子量成分を12質量%含有し、メルトフローレートが3.0g/10分のホモタイプのポリプロピレン(PP-2)40重量部と、前述の鉱物油系軟化剤35重量部とを、前述の2軸押出機を使用して、200℃で1時間当たり40kgの押出速度で混練・押出して、目的のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
得られた熱可塑性エラストマー組成物の溶融張力を測定した結果を表1に示す。
【0112】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100重量部当たり、発泡核剤としてハイドロセルロールCF(ベーリンガーインゲルハイムケミカル社製)0.1重量部をドライブレンドし、押出発泡成形装置を使用し、押出樹脂温度170℃、押出速度20kg/時間、二酸化炭素供給圧力15MPa、二酸化炭素供給量をオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100重量部当たり0.5重量部の条件で成形し、サーキュラーダイ先端に取り付けられたカッターで切り開くことにより、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡シートを得た。得られた発泡シートの基本物性を表2に示す。
【0113】
(実施例2)
実施例1の二酸化炭素供給量をオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100重量部当たり1.5重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0114】
(実施例3)
実施例2のコハク酸カリウムをエチレンジアミン四酢酸カリウムとした以外は、実施例2と同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0115】
(比較例1)
実施例1の無水マレイン酸およびコハク酸カリウムを10重量パーセントの濃度で蒸留水に溶解した水溶液を使用しなかった以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1および2に示す。
【0116】
(比較例2)
比較例1の二酸化炭素供給量をオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100重量部当たり1.5重量部とした以外は、比較例1と同様に行った。結果を表1および2に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)とを含み、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は少なくとも一部が架橋された架橋粒子であって、当該粒子の少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有し、ポリオレフィン樹脂(B)からなるマ卜リックス相(海相)中に、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子が分散相(島相)として分散している海島構造を有し、かつエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)および/またはポリオレフィン(B)の官能基(b)の少なくとも一部が、金属塩(a)で架橋していることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
有機ペルオキシドで架橋可能な基を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A’)と有機ペルオキシドで架橋可能な基を有さないポリオレフィン樹脂(B’)、官能基(b)を有する化合物(c)、金属塩(a)および架橋剤の存在下で動的架橋することにより得られる請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有するポリオレフィン樹脂(B)とを含み、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は少なくとも一部が架橋された架橋粒子であって、当該粒子の少なくとも一部に金属塩(a)と架橋可能な官能基(b)を有し、ポリオレフィン樹脂(B)からなるマ卜リックス相(海相)中に、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子が分散相(島相)として分散している海島構造を有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の架橋粒子の平均分散粒子径が0.5μmを超え10μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン樹脂(B)が、有機ペルオキシド非架橋型のポリプロピレン樹脂であって、プロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体との混合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の含有量が40〜95重量%、ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が60〜5重量%(但し、(A)と(B)の合計を100重量%とする)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
共重合体ゴム(A)40〜90重量部、ポリオレフィン樹脂(B)10〜60重量部(ここで、(A)と(B)の合計は100重量部)に対し、1〜200重量部の割合で軟化剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記金属塩(a)が有機酸基または無機酸基から選ばれる少なくとも1種を金属成分によって中和した塩であることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
無機または有機系の熱分解型化学発泡剤、二酸化炭素、窒素、またはこれらの混合ガスを主成分とするガスから選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いて発泡させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる発泡体。
【請求項10】
押出成形機によって押出発泡成形させることを特徴とする請求項9に記載の発泡体。
【請求項11】
押出成形機に取り付けられたサーキュラーダイを用いて押出発泡成形させることを特徴とする請求項9に記載の発泡体。
【請求項12】
射出成形機によって射出発泡成形させることを特徴とする請求項9に記載の発泡体。
【請求項13】
ブロー成形機によってブロー発泡成形させることを特徴とする請求項9に記載の発泡体。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか一項に記載の発泡体からなる自動車用材料。
【請求項15】
請求項9〜13のいずれか一項に記載の発泡体からなる土木・建築用品。

【公開番号】特開2011−178827(P2011−178827A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41831(P2010−41831)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】