説明

熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法

【課題】優れた機械的特質、耐熱性、耐油性、柔軟性を有し、さらに外観が良好な成形品を与えることができる熱可塑性エラストマー組成物、及びその製造方法、並びに、この熱可塑性エラストマー組成物を使用して得られるチューブや、電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、アクリルゴム(B)及び分子内に2以上の2重結合基を有するアクリルオリゴマー(C)からなる混合組成物(D)とを、混合して得られる熱可塑性エラストマー組成物であって、(A)と(D)の重量比(A)/(D)が60/40〜90/10であり、さらに、(A)の連続相中に、架橋された(D)が分散していることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物、及びその製造方法、並びに、この熱可塑性エラストマー組成物を使用して得られるチューブや、電線・ケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御用ワイヤーハーネスの被覆等に用いられる熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機等における電子制御用ワイヤーハーネスは、高温下、絶縁油、機械油等様々なオイルに曝される環境下で使用される。このため、ワイヤーハーネスを構成する電線・ケーブルの被覆や、電線・ケーブル同士の結束、電線・ケーブル末端の保護等に使用される絶縁チューブ、熱収縮チューブ等(以下、これらを「薄肉成形品」と総称する場合がある)の材料としては、機械的性質に優れるとともに、耐熱性及び耐油性にも優れる熱可塑性ポリエステルエラストマーの成形品が用いられている。
【0003】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、芳香族ポリエステルの繰返し単位等により形成される結晶性のハードセグメントと、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステル等の繰返し単位等により形成されるソフトセグメントを、ポリマー主鎖中に有する多重ブロック共重合体である。熱可塑性ポリエステルエラストマーは、成形性に富み、その成形品は優れた機械的性質、耐熱性及び耐油性を有する。特に、熱可塑性ポリエステルエラストマーを放射線照射等により架橋すると高い耐熱性及び耐油性を付与することができる。しかし、一方、硬度が高く柔軟性に劣るとの問題があった。
【0004】
そこで、柔軟性改良のために、ポリエステルエラストマー中のソフトセグメントの含有量を多くする(非特許文献1)、可塑剤等の軟化剤を添加する等の方法が知られている(特許文献1)。しかし、ポリエステルエラストマー中のソフトセグメントの含有量を多くする方法では、得られた樹脂組成物の融点が低下するとともに、高温下での弾性率の低下が大きく、高温可使用温度域が低くなるとの問題がある。又、可塑剤等の軟化剤を添加する方法では、経時的に軟化剤が抽出又は揮散し、柔軟性が低下する問題がある。さらに、可塑剤のブリードにより、成形品の表面状態を悪化させ外観を損なうとの問題もある。
【0005】
特許文献2では、熱可塑性ポリエステルエラストマーと動的架橋されたゴム成分からなる熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。そして、この組成物によれば、ポリエステルエラストマーの特徴である機械的性質、耐熱性を保持しながら、柔軟性等を向上させることができると述べられている。ここで、ゴム成分としては、ジエン系ゴムとアクリルゴムとの混合物が使用されている。
【特許文献1】特開平10−330605号公報
【特許文献2】特開平7−97507号公報
【非特許文献1】西原康浩、「日本ゴム協会誌」、299−303頁、第76巻第8号(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ゴム成分はポリエステルエラストマーへの分散性が低く、特に、アクリルゴムは粘度が高いことから混合時の分散性が低い。そこで、ポリエステルエラストマーと動的架橋されたゴム成分からなる熱可塑性エラストマー組成物は、ポリエステルエラストマー中に比較的大きなゴムの塊が不均一に分散した状態となりやすい。そして、成形品の表面に凹凸が生じ、成形品の外観が損なわれるとの問題が生じやすい。特に、絶縁チューブ等の薄肉成形品を高速での押出成形により製造する場合は、成形品の厚みのばらつきや外観の悪化を生じやすく、この問題が顕著である。
【0007】
本発明は、熱可塑性ポリエステルエラストマーの有する優れた機械的特質、耐熱性、耐油性を損なうことなく、柔軟性が改善され、さらに外観が良好な成形品、例えば絶縁チューブや熱収縮チューブを与えることができる熱可塑性エラストマー組成物、及びその製造方法を提供することを課題とする。本発明は、さらに、この熱可塑性エラストマー組成物より得られるチューブや、電線・ケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記問題点を解決するために、鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステルエラストマーに、アクリルゴムと分子内に2つ以上の2重結合を有するアクリルオリゴマーの混合物を微細に分散させ、かつ、この混合物を架橋させることにより、架橋されたアクリルゴムがポリエステルエラストマー中に均一かつ微細に分散した所謂海島構造が得られ、外観の良好な成形品を与えること、そしてさらにこの成形品を電離放射線の照射により架橋することで、機械的特性、耐熱性、耐油性及び柔軟性にさらに優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、アクリルゴム(B)及び分子内に2つ以上の2重結合基を有するアクリルオリゴマー(C)からなる混合組成物(D)とを、混合して得られる熱可塑性エラストマー組成物であって、
(A)と(D)の重量比(A)/(D)が60/40〜90/10であり、
さらに、(A)の連続相中に、架橋された(D)が平均径50μm以下の分散相として分散していることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物を提供する(請求項1)。
【0010】
この熱可塑性エラストマー組成物では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の連続相中に、架橋された混合組成物(D)が微細な分散相として存在しているため、組成物の溶融粘度が、連続相を形成する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)単独に近い、低い値を示す。このため、成形品の外観の悪化を抑制することができ、絶縁チューブ等の薄肉成形品を、厚みのばらつきや外観の悪化を生じさせることなしに、高速の押出成形により製造することができる。
【0011】
ここで微細な分散相としては、平均径が50μm以下のものが好ましく、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5〜0.01μm以下である。平均径が上記の範囲より大きいと成形品の外観が悪化する場合がある。
【0012】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマーの優れた性質を保持する。例えば、軽量性を有し機械的特質や耐熱性、耐油性に優れる成形品を与えることができる。又、ゴム成分(混合組成物(D))の配合により、柔軟性にも優れる成形品を与えることができる。従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いることにより、軽量で、機械的特質や耐熱性、耐油性とともに柔軟性にも優れ、かつ外観も良好なチューブや、このような優れた性質の被覆を有する電線・ケーブル等を、生産効率の良い押出成形等で提供できる。
【0013】
ここで、「熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)」とは、ポリエステルブロック共重合体であり、その重合体主鎖中に、主として芳香族ポリエステル単位からなる結晶性で高融点のハードセグメント(A−1)(硬質セグメント)、及び、主として脂肪族ポリエーテル単位(a)及び/又は脂肪族ポリエステル単位(b)からなる低融点のソフトセグメント(A−2)(軟質セグメント)とを有している。
【0014】
ハードセグメント(A−1)を形成する芳香族ポリエステル単位は、酸成分とグリコール成分の縮合物であるが、この酸成分としては、実質的にテレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸からなるものが挙げられる。ただし、これらのほかに、イソフタル酸等の他の芳香族ジカルボン酸、又はアジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸を少量併用してもよい。
【0015】
又、芳香族ポリエステル単位を形成するグリコール成分としては、炭素数2〜12のグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール等が挙げられる。なお、ハードセグメント(A−1)の融点の下限は特に限定されないが、一般的には150℃以上であり、好ましくは170℃以上である。
【0016】
ソフトセグメント(A−2)を構成する脂肪族ポリエーテル単位(a)としては、平均分子量が約400〜600の範囲にあるポリアルキレングリコールで形成されるものが挙げられる。このポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体等を挙げることができる。特にポリテトラメチレングリコールが好ましい。又、炭素数:酸素数の比が2〜4.5のものが好ましく用いられる。脂肪族ポリエーテル単位(a)は、1種類としてのみならず、2種類以上の混合物としても用いることができる。
【0017】
ソフトセグメント(A−2)を構成するもう一つの単位である脂肪族ポリエステル単位(b)は、主として脂肪族ジカルボン酸からなる酸成分とグリコール成分の重縮合により得ることができる。ホモポリエステルでも共重合ポリエステルでもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸を挙げることができる。酸成分としては、これら脂肪族ジカルボン酸のほかにイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を少量併用してもよい。
【0018】
上記脂肪族ポリエステル単位(b)を形成するグリコール成分としては、炭素数2〜12のグリコール成分を挙げることができ、ハードセグメント(A−1)の芳香族ポリエステル単位を形成するグリコール成分として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0019】
脂肪族ポリエステル単位(b)は、環状のラクトンを開環重合して得られるポリラクトン(例えばポリ−ε−カプロラクトン)であってもよい。脂肪族ポリエステル単位(b)の融点の上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下が好ましく、特に好ましくは100℃以下である。
【0020】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)中のハードセグメント(A−1)とソフトセグメント(A−2)との組成比は、ハードセグメントとソフトセグメントの構成単位にも依存するが通常、好ましくは重量比で95/5〜5/95であり、さらに好ましくは70/30〜30/70である。ハードセグメント(A−1)の組成比が上記の範囲より高い場合は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の融点が向上し、動的架橋に使用する架橋剤の反応温度でも十分に溶融せず分散不良となりやすくなる。一方、ハードセグメント(A−1)の組成比が上記の範囲より低い場合は、耐熱性が低下する傾向がある。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)としては、軟化点が100℃以上であるエラストマーが特に好適である。
【0021】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)として特に好ましく用いられるポリエステルブロック共重合体は、ハードセグメント(A−1)としてポリテトラメチレンテレフタレート又はポリトリメチレンテレフタレート−2,6−ナフタレートを用い、ソフトセグメント(A−2)としてポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル、ポリテトラメチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルを用いて形成されるものである。
【0022】
前記ジカルボン酸やグリコールの一部としてポリカルボン酸や多官能性ヒドロキシ化合物、オキシ酸等の多官能性成分が共重合されたものでもよい。該多官能性成分は、3モル%以下の範囲で共重合せしめることにより、高粘度化成分として有効に作用する。該多官能性成分としては、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はそれらのエステルや酸無水物等を挙げることができる。
【0023】
「アクリルゴム(B)」としては、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、架橋性モノマーを含む単量体混合物を共重合して得られるもの(B−1)、及び、架橋性モノマーの重合単位を含むオレフィン−アクリル酸アルキルエステルの共重合体ゴム(B−2)を挙げることができる。架橋性モノマーの重合単位を含むことにより、アクリルゴム(B)に架橋活性基を導入することができ、アクリルゴム(B)を含む混合組成物(D)を架橋することができる。
【0024】
(B−1)の製造に使用できるアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル等が挙げられる。これらの中で優れた柔軟性と耐油性を発揮できるという点で、アルキル基の炭素数が2〜4のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0025】
(B−1)の製造に使用できるアクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜4のアクリル酸アルコキシアルキルエステル、例えばアクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチル、アクリル酸−2−ブトキシエチル等が挙げられる。これらの中で優れた耐油性を発揮できるという点で、アクリル酸−2−メトキシエチルが好ましい。(B−1)の製造には、上記例示の単量体の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる
【0026】
(B−1)の製造には、上記例示の単量体が主成分として使用され、さらに架橋性モノマーが使用されるが、これらに加えて、耐油性、成形加工性、柔軟性等の物性を向上させる目的で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−2−エトキシエチル等のメタクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有単量体;2−クロロエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニル、アリルクロロアセテート等の活性塩素含有単量体;(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル等のフッ素系(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のビニルアミド;エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;二官能性(メタ)アクリレート類、三官能性(メタ)アクリレート類及び酢酸ビニル、塩化ビニル等の共重合性単量体を、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用し、共重合させることもできる。
【0027】
これらの共重合性単量体の共重合量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。この共重合量が40質量%を越える場合、アクリルゴム(B−1)の柔軟性、耐油性、低温特性、成形加工性等の物性のバランスを損なう場合がある。
【0028】
(B−1)や(B−2)の製造に使用される架橋性モノマーとしては、カルボキシル基含有単量体が、動的架橋で使用する架橋剤との反応が比較的速やかに進行するため、好ましい。架橋性モノマーとしてカルボキシル基含有単量体を使用することにより、アクリルゴム(B)が、分子内にカルボキシル基を含むアクリルゴムである熱可塑性エラストマー組成物(請求項2)を得ることができる。
【0029】
カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸等を挙げることができる。又、(B−1)や(B−2)中の架橋性モノマーの重合単位の割合としては0.5〜15質量%の範囲が好ましい。0.5%未満となると、混合組成物(D)の架橋が十分に行われなくなる場合がある。一方、15%を越える場合には混合組成物(D)の架橋が過度になり、熱可塑性エラストマー組成物の良好な成形加工性が得られなくなる場合がある。
【0030】
一方、(B−2)オレフィン−アクリル酸エステル共重合体ゴムは、オレフィンとアクリル酸エステル及び架橋性モノマーを公知の方法により共重合して得ることができる(B−2)を構成するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができる。この中では、C1〜C4のα−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。2種類以上のオレフィンの混合物であってもよい。
【0031】
架橋性モノマーとしてカルボキシル基含有単量体を用い、オレフィンとして特に好ましいエチレンを使用することにより、アクリルゴム(B)が、分子内にカルボキシル基を含むエチレンアクリルゴムである熱可塑性エラストマー組成物(請求項3)を得ることができる。
【0032】
(B−2)を構成するアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等C1〜C12のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができるが、このうちC1〜C4のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0033】
(B−2)中の、オレフィン、アクリル酸アルキルエステル、及びカルボキシル基含有単量体等の架橋性モノマーの割合としては、オレフィン30〜89.5質量%、アクリル酸アルキルエステル69.5〜10質量%、架橋性モノマー0.5〜15質量%が好ましい。より好ましくはオレフィン30〜80質量%、アクリル酸エステル69.5〜10質量%、架橋性モノマー0.5〜10質量%であり、さらに好ましくはオレフィン35〜80質量%、アクリル酸エステル64〜19質量%、架橋性モノマー1〜8質量%である。
【0034】
前記のアクリルゴム(B)と混合され混合組成物(D)を構成するアクリルオリゴマー(C)とは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等のアルキルアクリレートやアルキルメタアクリレートを主成分モノマーとし、これと、アクリロイル基、メタアクリロイル基等の2重結合基を有するモノマーを共重合して得ることができるアクリルアクリレート(又はアルキルメタアクリレート)の重合体(オリゴマー)であり、アクリルゴム(B)と結合(架橋)するための2重結合性の官能基を、分子内に2つ以上有するものである。2重結合性官能基の存在様式は、ペンダント状に有する場合(例えば、下記式(1)で表される化合物)、もしくは、両末端に有する場合(例えば、下記式(2)で表される化合物)の、いずれも好適に使用できる。
【0035】
【化1】


(式中、Rはアルキル基を表し、R’はH又はアルキル基を表す。)
【0036】
アクリルオリゴマー(C)としては、その25℃における粘度が900〜50000mPa・sのものが好ましく、より好ましくは、1000〜20000mPa・sのものである。アクリルオリゴマー(C)の粘度が低すぎると、成形品からのブリードが起こりやすくなり、べた付き等の原因になる。一方、アクリルオリゴマー(C)の粘度が高すぎると、アクリルゴム(B)を微細に分散させる効果が小さくなり、成形品の外観不良を生じやすくなる。
【0037】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、アクリルゴム(B)を含む混合組成物(D)は、微細に分散されかつ架橋されたものである。架橋により、弾性が向上し、さらに耐熱性、耐油性が向上する。架橋は、好ましくは動的架橋により行われる。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、混合組成物(D)を架橋するため、好ましくは、アクリルゴム用架橋剤を含有する。アクリルゴム用架橋剤としては、アクリルゴムの分子中に導入した架橋活性基の種類に応じて、それに適した種々の架橋剤が使用可能である。例えば、架橋活性基がエポキシ基である場合に好適に使用できる架橋剤としては、安息香酸アンモニウム等が挙げられ、必要によりジ−o−トリルグアニジン等のグアニジン系化合物等の架橋促進剤を使用することができる。又、架橋活性基がカルボキシル基である場合に好適に使用できる架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、ジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、及び2,2’−(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン(PBO)等のビスオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0039】
混合組成物(D)の架橋を動的架橋により行う場合には、特に、架橋活性基としてのカルボキシル基と、架橋剤としてのビスオキサゾリン化合物との組み合わせが、架橋反応の反応温度とマトリクスになる熱可塑性ポリエステルエラストマーの溶融温度とがうまくバランスするため、架橋工程の制御、操作が容易となり好ましい。又、架橋剤は、アクリルゴムを過不足なく架橋させることを考慮すると、架橋剤の官能基の理論当量と、アクリルゴムの架橋活性基の理論当量とがほぼ一致するように、その添加量を調整することが好ましい。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と混合組成物(D)の割合は、重量比で(A)/(D)=60/40〜90/10の範囲である。混合組成物(D)の割合がこの範囲より小さい場合には、この組成物により製造された成形品に柔軟性が十分付与されない。その結果、電線・ケーブルの被覆の場合には、複数本の電線・ケーブルを束ねてハーネスとした際に、狭い箇所での取り回しが容易でなくなる等の問題を生じる。
【0041】
一方、混合組成物(D)の割合が、この範囲より大きい場合には、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)からなる連続相中で、混合組成物(D)が微細にかつ均一に分散した熱可塑性エラストマー組成物を得ることが困難となり、押出成形性が低下し、この組成物により製造された成形品の表面に凹凸が生じ外観不良となる等の問題が生じやすくなる。
【0042】
例えば、架橋を動的架橋で行う場合は、混合物中に多量に存在する混合組成物(D)(アクリルゴム成分)が、架橋により熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)から相分離する際に融合して、分散相の分散粒径が大きくなったり、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の連続相と同等の大きな連続相を生成したりする。混合組成物(D)を架橋させた後、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)からなる連続相中に分散させて熱可塑性エラストマー組成物を得る場合も、連続相を構成する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の量が相対的に不足するため、前記分散相の凝集等が生じやすくなる。
【0043】
そのため、いずれの場合にも、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)からなる連続相中に、混合組成物(D)の架橋物からなる微細な分散相が、凝集等を生じることなく、均一に分散された構造を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることが困難である。その結果、樹脂組成物の押出加工性が低下し、例えば、厚み0.3〜1.0mm程度で良好な外観を有する薄肉成形品を、高速で押出成形して製造することが困難になる。
【0044】
さらに、架橋ゴム相が粗大となるため、薄肉成形品の耐摩耗性が大幅に低下するという問題もある。又、混合組成物(D)の架橋物の分散粒径が大きい場合や、混合組成物(D)が、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の連続相と同等の大きな連続相を生成する場合は、成形品の体積固有抵抗が低下するため、薄肉成形品に、先に説明した各用途に適した十分な絶縁性を付与できない場合もある。
【0045】
そこで、前記の問題を防ぐため、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と混合組成物(D)の割合を、重量比で(A)/(D)=60/40〜90/10の範囲とする必要がある。
【0046】
請求項4に記載の発明は、前記混合組成物(D)を構成する、アクリルゴム(B)及びアクリルオリゴマー(C)の重量比(B)/(C)が、96/4〜80/20であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。である。
【0047】
(B)/(C)が96/4より大きい場合は、押出成形性が低下して、成形品の外観が不良となりやすくなり、外観良好なチューブや電線・ケーブル等を、高速の押出成形により得にくくなる傾向がある。一方、(B)/(C)が80/20より小さい場合は、(C)成分が多く成形品に残存しやすくなり、成形品よりの(C)成分のブリードが生じやすくなる傾向がある。
【0048】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、アクリルゴム(B)とアクリルオリゴマー(C)からなる混合組成物(D)を混合し、さらに混合組成物(D)を架橋して製造することができる。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と混合組成物(D)の混合は、アクリルゴム(B)とアクリルオリゴマー(C)を混合し混合組成物(D)を製造した後行われる。予め、アクリルゴム(B)とアクリルオリゴマー(C)を混合した後、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と混合することにより、混合組成物(D)が微細かつ均一な相で分散した組成物が得られる。又、混合組成物(D)の架橋としては、アクリルゴム用架橋剤を用いた、動的架橋が好ましい。
【0049】
請求項5に記載の発明は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法の、前記の好ましい態様に該当し、
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、並びにアクリルゴム(B)及び分子内に2以上の2重結合基を有するアクリルオリゴマー(C)からなる混合組成物(D)を、(A)/(D)=60/40〜90/10の重量比で含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
アクリルゴム(B)とアクリルオリゴマー(C)を混合して混合組成物(D)を製造する第1工程と、
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、前記第1工程で製造された混合組成物(D)及びアクリルゴム用架橋剤を混合しながら、混合組成物(D)を動的架橋する第2工程、を有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供するものである。
【0050】
第1工程における混合は、オープンロールミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸又は多軸の押出機型混合機等、あるいはこれらを組み合わせたもの等により、上記各成分を混練することによって行われる。生産性の観点からは、連続的に生産する方法として二軸押出機を用いる方法が好ましい。
【0051】
又、ここでいう動的架橋とは、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、混合組成物(D)を、アクリルゴム用架橋剤とともに混合(混錬)しながら、混合組成物(D)を高度に架橋させ、かつ架橋物を微細に分散させる架橋方法である。混合組成物(D)を架橋させた後(A)に分散させる方法では、相対的に連続相を構成する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の量が不足するため、混合組成物(D)の分散相の凝集等を生じやすくなるが、動的架橋による場合は、架橋された(D)が微細かつ均一な相で分散した組成物が得られる。
【0052】
第2工程における混合も、第1工程における混合と同様に、オープンロールミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸又は多軸の押出機型混合機等、あるいはこれらを組み合わせたもの等により行われ、中でも二軸押出機を用いる方法が好ましい。
【0053】
このとき用いる二軸押出機としては、L/D=30以上のものが好ましい。溶解混練時に各成分を添加する方法は、本発明の(A)、(D)両成分と架橋剤を同時に添加する方法と、両成分を混練した後途中から架橋剤を添加する方法のいずれでもよいが、(A)、(D)両成分を混練したのち架橋剤を添加する方法が、架橋ゴムの分散性の面から好ましい。この場合、押出機の途中から可塑剤と架橋剤の添加を行う。
【0054】
前記のようにして製造された本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、押出成形等により、電線・ケーブルの被覆や、電線・ケーブル同士の結束、電線・ケーブル末端の保護等に使用される絶縁チューブ、熱収縮チューブ等の薄肉成形品に加工される。押出成形は、前記第2工程の混合後、金型への押出等により行われるが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は押出成形性が良好であるため、例えばおよそ0.3〜1.0mm程度といった厚みの小さい薄肉成形品であっても、高速で押出成形により容易に製造でき、厚みが均一でかつ外観が良好な製品を、効率よく製造することができる。さらにこの製品は、高い耐熱性と耐油性とを満足し、なおかつ、柔軟性を両立することができるので、電線・ケーブルの被覆、絶縁チューブ、熱収縮チューブ等の薄肉成形品として好適に用いられる。
【0055】
ここで、電線・ケーブルの被覆としては、導体の表面を直接被覆して、導体を絶縁する絶縁被覆や、絶縁被覆された単芯又は複数芯の導体のさらに外側を被覆するシース(保護層)等が挙げられる。このうち、絶縁被覆は、導体を一定速度で送りながら、その外周に、押出成形機を用いて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を連続的に押出成形しながら被覆して形成することができる。
【0056】
被覆後、熱可塑性エラストマー組成物中の熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)を架橋すると、より高い耐熱性及び耐油性を付与することができるので、好ましくは被覆後、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の架橋が行われる。架橋の方法としては、加速電子線、ガンマ線等の電離放射線を照射する方法が好ましく、特に電子線照射する方法がその制御が容易である等の理由により好ましい。
【0057】
本発明は、請求項6として、製造方法の好ましい態様、すなわち、前記第2工程後、さらに、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、混合組成物(D)及びアクリルゴム用架橋剤の混合物に電離放射線照射する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供する。
【0058】
さらに本発明は、請求項7として、前記の好ましい電線又はケーブル、すなわち、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる被覆を有し、電離放射線照射されていることを特徴とする電線又はケーブルを提供する。
【0059】
なお、導体としては、その許容電流値、引張強度、耐振動性等の観点から、断面積が0.35〜1.0mm程度の軟銅の撚り導体が、一般的に使用される。又、撚り導体を被覆するための絶縁被覆の厚みは、およそ0.3〜1.0mm程度とされる。又、シースも同様にして形成される。
【0060】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物をチューブ状に成形し、電離放射線照射されて得られることを特徴とするチューブであり、絶縁チューブ等として使用できるものである。
【0061】
このチューブは、押出成形機を用いて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、連続的にチューブ状に押出成形して形成することができる。被覆後、熱可塑性エラストマー組成物中の熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)を架橋することにより高い耐熱性及び耐油性を付与することができるので、好ましくは、加速電子線、ガンマ線等の電離放射線の照射等により、(A)の架橋が行われる。特に電子線照射する方法が、制御の容易さ等の点から好ましい。チューブの厚みは、およそ0.3〜1.0mm程度である。
【0062】
このチューブは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成されたものであるので、優れた機械的特質、耐熱性、耐油性を有し、柔軟性、従って屈曲性等も優れ、又外観も良好なものであり、絶縁チューブとして好適に使用される。
【0063】
請求項9に記載の発明は、さらに、径方向に拡大されて熱収縮性が付与されていることを特徴とする請求項8に記載のチューブである。
【0064】
熱収縮チューブは、請求項8に記載のチューブを形成した後、このチューブを、加熱して軟化させながら径方向に拡大させた状態で急冷して、前記絶縁チューブに熱収縮性を付与することで製造される。チューブを径方向に拡大する条件や方法、冷却条件等は、公知の熱収縮チューブの製造の場合と同様な条件で行うことができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、押出成形性が優れるので、生産効率の良い押出成形等でこの組成物を成形することができ、優れた機械的特質、耐熱性、耐油性及び柔軟性を有し、さらに外観が良好な薄肉成形品を得ることができる。このような優れた性質を有する熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法により容易に製造することができる。又、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記の優れた性質を有するので、この組成物を原料として得られる本発明の電線又はケーブルやチューブ、特にさらに電離放射線の照射等により架橋して得られる電線又はケーブルやチューブは、機械的特質、耐熱性、耐油性及び柔軟性に優れ、さらに外観が良好であり、自動車、航空機等における電子制御用ワイヤーハーネスを構成する電線・ケーブルの被覆や、電線・ケーブル同士の結束、電線・ケーブル末端の保護等に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明の実施の形態を、実施例により説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨を損ねない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0067】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造に用いた材料)
実施例及び比較例の熱可塑性エラストマー組成物を製造する材料として、以下のものを用いた。
・ポリエステルエラストマー(請求項1における(A)):ハイトレル4056(デュポン社製)
・エチレンアクリルゴム(AEM)(請求項1における(B)):ベイマックGLS(デュポン社製)
・アクリルオリゴマー(請求項1における(C)):EBECRYL745(ダイセル・サイテック社製)
・充填材:カーボンブラック
・架橋助剤:トリアシルシアヌレート(TAIC、日本化成社製)
・酸化防止剤:4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
・加水分解抑制剤:ポリカルボジイミド(試薬)
・架橋剤:1,3−フェニレンビスオキサゾリン(1,3−PBO)(試薬)
【0068】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造方法)
先ず、エチレンアクリルゴム(AEM)とアクリルオリゴマーの所定量(表1に記載)を予めオープンロールで混合した。混合温度は100−120℃、混合時間は5分であった。
【0069】
前記混合により得られた混合組成物(請求項1における(D))、及び、架橋剤を除く他の原料の所定量(表1に記載)を、加圧ニーダーに投入し、5〜10分間、100〜170℃で混合した後、架橋剤を添加して200℃で10分間混合し、最後に加水分解抑制剤を添加して練り上げた。得られた混合物の形状を整えペレット状とした後、単軸押出機にて、連続的にチューブ状に押出成形した。単軸押出機は、シリンダ径:30mmφ、L/D=24、C/R=2.6、スクリュー形状:フルフライトであるものを使用した。又、押出機の設定温度は、供給部は180℃、圧縮部は200℃、計量部は200℃、ヘッドおよびダイは220℃とした。押出線速は20m/分とした。
【0070】
チューブ状に押出成形した後、加速電圧1MeVの加速電子線を、照射線量が150kGyとなるように照射して、熱可塑性ポリエステルエラストマーを架橋させて、絶縁チューブを得た。絶縁チューブの設計形状は、内径:2.1mmφ、厚み0.75mmとした。
【0071】
このようにして得られた絶縁チューブについて、表面状態観察を行い、表面状態が、多少とも鮫肌状になる場合を「押出外観不良」とし、表面が平滑な場合を「押出外観良好」とし、その結果を、表1の「押出加工性」の欄に示す。又、ブリードの有無についても目視で観察しその結果も表1に示した。
【0072】
【表1】


なお、表1中のPE(A)はポリエステルエラストマーを、AEM(B)はエチレンアクリルゴムを、AC(C)はアクリルオリゴマーを、CBはカーボンブラックを示す。
【0073】
表1に示すように、実施例のチューブは、何れも押出後の外観が良好であり、またブリードも見られなかった。一方、比較例1は、外観が不良であり、ブリードも見られた。又比較例2では、アクリルオリゴマーが多すぎ、押出時に滲み出すためスクリューが滑り押出が連続的にできない状態であった。すなわち比較例2は、押出しそのものが不安定でありしっかりした形状のチューブの製造そのものが困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、アクリルゴム(B)及び分子内に2つ以上の2重結合基を有するアクリルオリゴマー(C)からなる混合組成物(D)とを、混合して得られる熱可塑性エラストマー組成物であって、
(A)と(D)の重量比(A)/(D)が60/40〜90/10であり、
さらに、(A)の連続相中に、架橋された(D)が平均径50μm以下の分散相として分散していることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記アクリルゴム(B)は、分子内にカルボキシル基を含むアクリルゴムであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記アクリルゴム(B)は、分子内にカルボキシル基を含むエチレンアクリルゴムであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記混合組成物(D)を構成する、アクリルゴム(B)及びアクリルオリゴマー(C)の重量比(B)/(C)が、96/4〜80/20であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、並びにアクリルゴム(B)及び分子内に2以上の2重結合基を有するアクリルオリゴマー(C)からなる混合組成物(D)を、(A)/(D)=60/40〜90/10の重量比で含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
アクリルゴム(B)とアクリルオリゴマー(C)を混合して混合組成物(D)を製造する第1工程と、
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と、前記第1工程で製造された混合組成物(D)及びアクリルゴム用架橋剤を混合しながら、混合組成物(D)を動的架橋する第2工程を有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程後、さらに、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、混合組成物(D)及びアクリルゴム用架橋剤の混合物に電離放射線照射する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる被覆を有し、電離放射線照射されていることを特徴とする電線又はケーブル。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物をチューブ状に成形し、電離放射線照射されて得られることを特徴とするチューブ。
【請求項9】
さらに、径方向に拡大されて熱収縮性が付与されていることを特徴とする請求項8に記載のチューブ。

【公開番号】特開2010−7011(P2010−7011A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170227(P2008−170227)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】