説明

熱可塑性樹脂ペレットの製造装置およびその製造方法

【課題】高収率かつ高品質の熱可塑性樹脂ペレットを製造する装置および製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を溶融した後、供給機から吐出させることにより得られたストランド群8を搬送する樹脂製コンベアベルト2と、該コンベアベルト2の供給機側に設けられたストランド群8に向けて冷却水を噴霧する冷却装置3と、該冷却装置3より切断機6側に設けられた、エアー吹きつけ装置4および/または水滴吸引装置5を有する水分除去装置と、樹脂製コンベアベルト2により搬送されたストランド群8をペレット状に切断する切断機6、からなる熱可塑性樹脂ペレット製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂ペレットの製造装置およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、混練機や押出機など(以下「供給機」という)から吐出される溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出させることにより得られたストランド群を冷却固化、切断してペレット化するために使用する装置であって、ストランドの冷却、および冷却に使用される冷却水の除去を効果的に行いつつ、高品質なペレットを高収率で製造することができる、樹脂製コンベアベルトを有する熱可塑性樹脂ペレットの製造装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に熱可塑性樹脂製品の製造工程は、樹脂原料とガラス繊維、難燃剤、離型剤などの添加剤を混ぜ合わせて混練し、造粒する1次工程と、該1次工程で造粒されたペレットを射出成形機などに入れ溶融して金型などで製品形状に成形する2次工程とからなる。
【0003】
前述の1次工程において造粒されるペレットは、粒の大きさや形状などが一定で均一であることが、次の2次工程での成形を効率よく行うという観点から好ましく、一般的には、単軸押出機や2軸押出機などの供給機出口に多数の細孔を有する口金を設置し、紐状のストランド群を吐出させ、切断機で適当な長さに切断することによって、粒状のペレットを得ている。
【0004】
このストランド群を切断する方法としては、ストランド群を水浴中で引き取りながら冷却し、固化後水浴中から引き上げて切断機に導入して円筒状のペレットに切断する方法が通常用いられる。しかし、この方法では、供給機出口から吐出されたストランド群が、切断機に導入されるまでの間にしばしば千切れてしまい(ストランド切れ)、収率が低下するなどの問題がある。この対策として、例えば特許文献1には、ストランド群を金属製コンベアベルト上にのせて搬送するとともに、水や空気などを吹きつけて適当な温度にまで冷却固化させて切断機に導入し切断する方法が記載されている。この方法ではストランド群が、該コンベアベルト上にのっているために、ストランド切れが発生しても確実に切断機に導入される利点がある。
【特許文献1】特開2002―265027
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1ではストランド切れに対して有効な方法を提案している一方で、冷却水が該コンベアベルトとストランドの間に付着して、充分に水切りされることなく切断機に搬送されてしまう問題や、該コンベアベルト上でストランド群が滑り蛇行あるいは湾曲するため、隣接するストランドが融着するくっつきペレットや、切断面が斜めになる斜め切れペレットや、ストランド群が急冷されてしまい、ペレット内部にボイド状の空間が生じる中空ペレットや、硬くなりすぎたストランド群を切断するため、製品中への粉末混入量が多くなったり、切断機の刃の切れが早く悪くなり頻繁なメンテナンス作業が必要になるなどの問題がある。
【0006】
このような問題を回避するためには冷却水量を適度に減少させる必要があるが、冷却水量の調整が非常に難しく、逆に冷却不足になり、くっつきペレットが再発したり、ペレット形状が不揃いになったり、ストランド群が切断機内部の引き取りローラーに巻き付いて停止してしまう等の問題が発生してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、前述した従来技術における問題点の解決を課題として研究した結果、達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、
(1)熱可塑性樹脂を溶融した後、供給機から吐出させることにより得られたストランド群を搬送する樹脂製コンベアベルト(A)と、
該コンベアベルトの供給機側に設けられた前記ストランド群に向けて冷却水を噴霧する冷却装置(B)と、
該冷却装置より切断機側に設けられた、エアー吹きつけ装置および/または水滴吸引装置を有する水分除去装置(C)と、
該樹脂製コンベアベルトにより搬送された前記ストランド群をペレット状に切断する切断機(D)、からなる熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(2)(A)の樹脂製コンベアベルトが、ストランド群を連続して搬送できるように連設した2以上の単位樹脂製コンベアベルトで構成されることでなる(1)の熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(3)(A)の樹脂製コンベアベルトがポリエステル製コンベアベルトであることを特徴とする(1)または(2)の熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(4)(B)の冷却装置が供給機に最も近い単位樹脂製コンベアベルト上に設けられることを特徴とする(1)〜(3)いずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(5)(B)の冷却装置が冷却水トレイを有する(1)〜(4)いずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(6)(C)の水分除去装置が、(B)の冷却装置が設けられていない1または2以上の単位樹脂製コンベアベルト上に設けられていることを特徴とする(1)〜(5)いずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(7)(C)の水分除去装置が2以上の単位樹脂製コンベアベルトの間に設置されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(8)(A)の樹脂製コンベアベルトの搬送速度より、(D)の切断機の切断速度の方が速いことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(9)(D)の切断機の切断速度と(A)の樹脂製コンベアベルトの搬送速度の比が、1.0〜2.0であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(10)(D)の切断機と(A)の樹脂製コンベアベルトが連動することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの熱可塑性樹脂ペレット製造装置、
(11)供給機から溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出させて得られたストランド群を、樹脂製コンベアベルトにて搬送し(a)、
該コンベアベルトの供給機側で、前記ストランド群に向けて冷却水を噴霧する冷却装置にてストランド群を冷却し(b)、
該冷却装置より切断機側にある、エアー吹きつけ装置および/または水滴吸引装置、
を有する水分除去装置にてストランド群に付着した水分を除去した後に(c)、
該樹脂製コンベアベルトにより搬送された前記ストランド群をペレット状に切断する切断すること(d)、を特徴とする熱可塑性樹脂ペレットの製造方法、
からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂ペレットの製造装置および製造方法によれば、供給機から吐出されるストランド群を安定的に切断機まで搬送するとともに、ストランド群の冷却と冷却水の除去を効果的に行い、高収率でペレットを製造することができる。また、ペレット断面の形状は真円に近く、形状も揃っており、製品中に混入する粉末量も少なく、ペレット内部にボイド状の空間のある中空ペレットの混入も少ない、高品質なペレットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の熱可塑性樹脂ペレット製造装置の実施形態の全体の構成を示す概略説明図である。図2は、本発明の第2の実施形態の全体の構成を示す概略説明図である。
図1および2において、本発明の熱可塑性樹脂ペレット製造装置1は、樹脂製コンベアベルト2、冷却装置3、エアー吹きつけ装置4および水滴吸引装置5と切断機6から構成される。なお、本発明は本発明の効果を奏するものについて、これらの例に限定されるものではない。
【0012】
本発明では図1および2の左方に示したように供給機7の口金から吐出されるストランド群8を樹脂製コンベアベルト2で受け、冷却装置3で冷却水を噴霧後、エアー吹きつけ装置4と水滴吸引装置5で水滴を除去するとともに、右方に位置する切断機6まで搬送する。切断機6においてストランド群8は、ペレット9に切断される。以下に図1に示す本発明の第1の実施形態について説明する。
【0013】
供給機7は、樹脂と添加剤、充填剤などを溶融混練する機械であれば良く、たとえば、単軸または2軸押出機などが挙げられる。供給機7の出口には多数の孔を有する口金を設置して、ストランド状に吐出させる。供給機7から吐出される熱可塑性樹脂としては、一般的に使用されているものなら何でも良く、たとえば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、アクリル系樹脂、および各種熱可塑性エラストマーなど幅広く使用可能であり、これらの樹脂に、ガラス繊維や炭酸カルシウム、難燃剤、離型剤、着色剤等の無機・有機添加剤成分を任意の量配合したコンパウンド品にも使用可能である。
【0014】
樹脂製コンベアベルト2は、駆動ローラー10と複数の従動ローラー11を介して、ベルト上面にストランド群8を載せて切断機6方向へ搬送可能なように構成されている。図1の実施形態のように駆動ローラー10に駆動用モーター26を接続して、制御盤12の速度調整器を操作して搬送速度を調整することが、様々な樹脂種類に対応できるため望ましいが、切断機6の引き取りローラー軸に設置した歯車13と駆動ローラー10をチェーン等の手段で接続して駆動力を得ても構わない。
【0015】
また、樹脂製コンベアベルト2には、この例では上流側(供給機7側)から下流側(切断機6側)に向けて高くなるような傾斜がつけられており、周囲を同様に傾斜の設けられた冷却水回収用の回収槽14内に配設されている。これにより、冷却装置3が噴出する冷却水や、エアー吹出機構4などにより水切りされた水は、回収槽14の傾斜に沿って供給機7側に流れて排水口15に集められ、外部に排出される。なお、樹脂製コンベアベルト2の傾斜は、上流側から下流側に向けて高くなるように傾斜するとは限らず、上流側から下流側に向けて低くなるように傾斜させてもよく、また水平でもよいが、切断機6側に冷却水が流れ込むことを防ぐために、図1および図2のように、上流側から下流側に向けて高くなるように傾斜させた方がより好ましい。
【0016】
樹脂製コンベアベルト2の材質としては、金属以外の樹脂製で、吐出後のストランド群の樹脂温度でコンベアベルト表面とストランド群が融着せず、蛇行しない程度に適度な張力があるものが好ましい。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリウレタン、フッ素樹脂、アラミド樹脂、シリコン樹脂、その他各種ゴム系樹脂などが挙げられ、搬送する熱可塑性樹脂の融点に応じて選択すればよい。特に好ましくは、撥水性、剥離性の観点からポリエステルである。ここで例えば、材質として金属製を選択すると、コンベアベルト表面でストランド群8が滑りやすく安定的に切断機6側に搬送しにくい。特に水・エアー等の流体がストランド群8と金属製コンベアベルト表面の間に入ると、さらに滑りやすくなり、コンベアベルト上でストランド群8が蛇行あるいは湾曲して切断機6に入っていくため、斜め切れペレットなどの形状不良品が発生し、ペレット形状が不揃いになる。さらに、金属製コンベアベルトでは吐出後のストランド群8をその表面で急冷しすぎてしまい、ストランド断面が大きく変形したり、ペレット内部にボイド状の空間が生じる中空ペレットなどの不良品を発生させやすい。また、急冷しすぎたストランド群8は表面が硬くなってしまうため、製品中の粉末量が多くなり、切断機6の刃の切れが早く悪くなるため、頻繁にメンテナンスを行う必要が生じる。
【0017】
一方、材質として樹脂製、特に好ましくはポリエステル帆布製を選択した場合には、ストランド群8と樹脂製コンベアベルト2との間で適度な摩擦力を有するため、ストランド群8が樹脂製コンベアベルト2の上で保持された状態で切断機6まで安定的に搬送できる。さらに、樹脂製コンベアベルト2は金属製コンベアベルトに比較して冷却されにくいので、ストランド群8を徐冷することができ、前記のような金属製コンベアベルトで起きる不具合が発生しない。
【0018】
冷却装置3は、ストランド群を冷却固化させるための装置である。複数のノズルを有するスプレー配管16を複数有し、この各スプレー配管16は、図1および2では一定間隔に5本の配管が並んでいるが、本発明はこれに限定されず、樹脂や充填剤の種類・配合量等に応じて、所望の間隔、個数で図1および2の上下左右、適切な位置に調整できるよう構成されている。また、各スプレー配管16は、ストランド群8の搬送方向にほぼ直交するように延びているのが好ましいが、ストランド群8を効率的に冷却することができるのであれば、これに限定されるものではない。スプレー配管は樹脂製コンベアベルト2の上を並んで搬送されるストランド群8を冷却するため、ストランド群8の上方からストランド群8方向に向けて冷却水を噴霧するように配置され、水量も各々調整できるように各スプレー配管16にバルブが設置されている。そして各スプレー配管16は給水管17を介して冷却水供給源に連結されている。
【0019】
なお、樹脂成分、充填剤成分の種類・配合量等によっては、冷却水噴霧だけでは冷却不足となることもあるため、より強力な冷却装置として、冷却トレイ18を使用することもできる。冷却トレイ18は少量の冷却水を貯める装置であり、供給器7から吐出直後のストランド群8を浸漬、冷却固化させた後、樹脂製コンベアベルト2上に載せる。そのため、冷却トレイ18は供給器7に最も近い樹脂製コンベアベルト2上に、ボルト・ナット等任意の手段により容易に着脱が可能なように設置され、給水管19を介して冷却水供給源に連結されている。
【0020】
エアー吹きつけ装置4は、水冷後のストランド群8をさらに空冷し、かつストランド群8に付着した冷却水を取り除くため、ストランド群8の上方または下方から空気を吹きつける装置である。複数のノズルを有するスプレー配管20を複数有し、図1および2ではストランド群8の上方に一定間隔に4本の配管が並んでいるが、本発明はこれに限定されるものではなく、樹脂や充填剤の種類・配合量等に応じて、所望の間隔、個数でストランド群8の上下左右、適切な位置に調整できるよう構成される。また、各スプレー配管20は、ストランド群8の搬送方向に直交する方向に延びており、樹脂製コンベアベルト2の上を並んで搬送されるストランド群8に吹きつけるため、ストランド群8の上方または下方からストランド群8方向に向けてエアーを吹きつけるように配置され、エアー量も各々調整できるように各スプレー配管20にバルブが設置されている。そして各スプレー配管20はエアー供給管21を介してエアー供給源に連結されている。
【0021】
水滴吸引装置5はストランド群8に付着した水滴を吸引除去するため、ストランド群8の上方または下方から水滴を吸引するものである。ストランド群8の搬送方向に直行する方向にスリット状の隙間を有するノズル配管22を複数有し、図1および2ではストランド群8の下方に一定間隔に4本の配管が並んでいるが、本発明はこれに限定されるものではなく、樹脂や充填剤の種類・配合量等に応じて、所望の間隔、個数でストランド群8の上下左右、適切な位置に調整できるよう構成されている。また、各ノズル配管22は、ストランド群8の搬送方向に直交する方向に延びており、樹脂製コンベアベルト2の上を並んで搬送されるストランド群8の上方または下方からストランド群8の表面に向けて配置され、ストランド群8の表面に接するように調整すると水分除去の効率を一層高めることができる。そして各ノズル配管22は真空供給管23を介して真空供給源に連結されている。
【0022】
切断機6は紐状のストランド群8を適当な長さに切断し、ペレット9にする装置であり、公知の様々な方法を使用可能であるが、例えば、図1および図2に示すような回転刃24と固定刃25を有するカッターあるいはペレタイザー等が挙げられる。
【0023】
また、切断機6は樹脂製コンベアベルト2と連動するよう構成されており、切断機6の切断速度が、樹脂製コンベアベルト2の搬送速度より速い方が、ストランド群8が樹脂製コンベアベルト2上で滞留することなく安定してストランド群8を切断でき、ペレット9の形状も揃うので好ましい。更に好ましくは、切断機6の切断速度と樹脂製コンベアベルト2の搬送速度の比が1.0〜2.0、最も好ましくは1.0〜1.5とすることにより、樹脂製コンベアベルト上でのストランド切れが少なく収率低下を防ぐことができる。切断機6の切断速度が、樹脂製コンベアベルト2の搬送速度より遅くなると、ストランド群8は樹脂製コンベアベルト2の上で滞留し蛇行あるいは湾曲するため、切断機6にストランド群2が斜めに入ってしまい斜め切れペレットや、隣接するストランド同士が融着するくっつきペレットなどの形状不良品が発生するため収率が低下する。なお、切断機6と樹脂製コンベアベルト2を連動する方法としては、切断機6の駆動モーター29の速度と樹脂製コンベアベルト2の駆動用モーター26の速度を制御盤12の速度調整器にて制御したり、切断機6の引き取りローラー軸に設置した歯車13と駆動ローラー10をチェーン等の手段で接続して駆動力を得て連動させても構わないが、これらの例に限定されるものではない。なお、切断機6の引き取りローラー軸に設置した歯車13と駆動ローラー10をチェーン等の手段で接続する場合は、歯車13と駆動ローラー10のギア比を変更することにより、切断機6の切断速度と樹脂製コンベアベルト2の搬送速度の比を変更することができる。
【0024】
次に図2に示す本発明の第2の実施形態について説明する。図2において第1の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明を省略する。第2の実施形態は、樹脂製コンベアベルト2が複数の単位樹脂製コンベアベルト27、28から構成されているという点で、第1の実施形態と異なっている。
【0025】
上流側の単位樹脂製コンベアベルト27と、下流側の単位樹脂製コンベアベルト28は駆動ローラー31、32と複数の従動ローラー11を介して、ベルト上面にストランド群8を載せて上流側から下流側方向へ搬送可能なように構成されている。それぞれ単独の駆動モーターに接続され、制御盤12の速度調整器を操作して搬送速度を調整できることが好ましいが、図2のように切断機6の駆動モーター29によって回転する引き取りローラー軸に設置した歯車13を、単位樹脂製コンベアベルト28の駆動ローラー32にチェーン33等の手段を用いて接続して駆動力を得、さらに単位樹脂製コンベアベルト28の供給機7に最も近い従動ローラー軸に設置した歯車30を、単位樹脂製コンベアベルト27の駆動ローラー31にチェーン34等の手段を用いて接続することで、単位樹脂製コンベアベルト27の駆動力をも得ることができる。
【0026】
この実施形態の樹脂製コンベアベルトでは、ストランド群8の搬送は次のようにして行われる。供給機7から吐出されたストランド群8は、まず単位樹脂製コンベアベルト27によって搬送される。ストランド群8は、冷却装置3によって冷却されるため、単位樹脂製コンベアベルト27の下流側端に達する頃には十分に硬化され、単位樹脂製コンベアベルト28に受け継がれる。単位樹脂製コンベアベルト28に受け継がれたストランド群8は、単位樹脂製コンベアベルト28上でエアー吹きつけ装置4や水滴吸引装置5によって水分を除去されるとともに、切断機6に搬送されて、ペレット9に切断される。
【0027】
このとき、エアー吹きつけ装置4や水滴吸引装置5を、単位樹脂製コンベアベルト27と28の間の空間に、ストランド群8に向けて配置すると、単位樹脂製コンベアベルト27とストランド群8の間に溜まる水分を容易に除去できるため、単位樹脂製コンベアベルト28に持ち込む水分量を減少させることができ、切断機6に持ち込む水分を効果的に除去することができる。
【実施例】
【0028】
以下実施例にて本発明をさらに詳述する。
本実施例における評価方法は以下のものを用いた。
[ストランド群の走行性]コンベアベルト内のストランド群の状態を目視により観測した。
[収率]吐出された樹脂組成物全量を目開き5mmと1mmのふるいに通して、目開き5mmのふるいを通過して、目開き1mmのふるいは通過しなかったペレットの重量の吐出された樹脂組成物全量に対する割合(重量%)を求めた。
[製品中の粉末混入量]吐出装置から吐出された樹脂組成物全量に対する、目開き1mmのふるいを通過した粉末量の割合(重量%)を求めた。
[ペレット形状]得られたペレットを目視し、斜め切れペレットや、くっつきペレット、中空ペレットの有無の観測を行った。
[製品水分率]得られたペレットを140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥し、乾燥前後の重量差を製品水分量として求め、乾燥後のペレット重量に対する製品水分量の割合(重量%)を求めた。
【0029】
[実施例1]
ポリフェニレンスルファイド樹脂40重量部と炭酸カルシウム20重量部とガラス繊維40重量部からなる樹脂組成物Aと、ポリアミド樹脂70重量部とガラス繊維30重量部からなる樹脂組成物Bを2軸押出機で溶融混練し、吐出量80kg/hでストランド10本を吐出させた。得られたストランド群を図1に記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置をもちいてポリエステル帆布製コンベアベルト(2)にて搬送速度25m/分で搬送するとともに、供給機(7)側のコンベアベルト上の冷却装置(3)にてストランド群(8)を冷却し、切断機(6)側のコンベアベルト上のエアー吹きつけ装置(4)および水滴吸引装置(5)にてストランド群(8)に付着した水分を除去した後に、コンベアベルトと連動した切断速度28m/分の切断機(6)にて、ストランド群をペレット状に切断した。
【0030】
[実施例2]
前述の樹脂組成物Aと、樹脂組成物Bを実施例1と同様に2軸押出機で溶融混練し、吐出量80kg/hでストランド10本を吐出させた。得られたストランド群を図2に記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置をもちいてポリエステル帆布製コンベアベルト(2)にて搬送速度25m/分で搬送するとともに、供給機(7)側のコンベアベルト(27)上の冷却装置(3)にてストランド群(8)を冷却し、供給機(7)側のコンベアベルト(27)と切断機(6)側のコンベアベルト(28)の間および、切断機(6)側のコンベアベルト(28)上に設置したエアー吹きつけ装置(4)および水滴吸引装置(5)にて、ストランド群(8)に付着した水分を除去した後に、コンベアベルトと連動した切断速度28m/分の切断機(6)にて、ストランド群をペレット状に切断した。
【0031】
[比較例]
実施例1、2と同様に、前述の樹脂組成物Aと樹脂組成物Bを2軸押出機で溶融混練し、吐出量80kg/hでストランド10本を吐出させた。得られたストランド群を図3に記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置をもちいて金属製コンベアベルト(35)にて搬送速度25m/分で搬送するとともに、供給機(7)側のコンベアベルト(36)上の冷却装置(3)にてストランド群(8)を冷却し、切断機(6)側のコンベアベルト(37)上に設置したエアー吹きつけ装置(4)および水滴吸引装置(5)にて、ストランド群(8)に付着した水分を除去した後に、コンベアベルトと連動した切断速度28m/分の切断機(6)にて、ストランド群をペレット状に切断した。
実施例1、2、比較例の各条件でペレットを製造した場合のストランド群の走行性、収率、製品中の粉末混入量、ペレット形状、製品水分率の評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂ペレットの製造装置では、比較例で示した方法と比較して、ストランド群が安定に走行し、収率が高く、製品中の粉末混入量も少なく、ペレット形状も良好で、製品水分率も少なく、高品質なペレットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂ペレット製造装置の第1の実施形態の全体の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の熱可塑性樹脂ペレット製造装置の第2の実施形態の全体の構成を示す説明図である。
【図3】比較例の熱可塑性樹脂ペレット製造装置の実施形態の全体の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1.熱可塑性樹脂ペレット製造装置
2.樹脂製コンベアベルト
3.冷却装置
4.エアー吹きつけ装置
5.水滴吸引装置
6.切断機
7.供給機
8.ストランド群
9.ペレット
10.駆動ローラー
11.従動ローラー
12.制御盤
13.引き取りローラー軸に設置した歯車
14.回収槽
15.排水口
16.スプレー配管
17.給水管
18.冷却トレイ
19.冷却トレイ18の給水管
20.エアー吹きつけ装置4のスプレー配管
21.エアー供給管
22.ノズル配管
23.真空供給管
24.回転刃
25.固定刃
26.樹脂製コンベアベルト2の駆動用モーター
27.供給機7側の単位樹脂製コンベアベルト
28.切断機6側の単位樹脂製コンベアベルト
29.切断機6の駆動モーター
30.単位樹脂製コンベアベルト28の供給機7側に最も近い従動ローラー11の軸に設置した歯車
31.単位樹脂製コンベアベルト27の駆動ローラー
32.単位樹脂製コンベアベルト28の駆動ローラー
33、34.チェーン
35.金属製コンベアベルト
36.供給機7側の単位金属製コンベアベルト
37.切断機6側の単位金属製コンベアベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を溶融した後、供給機から吐出させることにより得られたストランド群を搬送する樹脂製コンベアベルト(A)と、
該コンベアベルトの供給機側に設けられた前記ストランド群に向けて冷却水を噴霧する冷却装置(B)と、
該冷却装置より切断機側に設けられた、エアー吹きつけ装置および/または水滴吸引装置を有する水分除去装置(C)と、
該樹脂製コンベアベルトにより搬送された前記ストランド群をペレット状に切断する切断機(D)、からなる熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項2】
(A)の樹脂製コンベアベルトが、ストランド群を連続して搬送できるように連設した2以上の単位樹脂製コンベアベルトで構成されることでなる請求項1記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項3】
(A)の樹脂製コンベアベルトがポリエステル製コンベアベルトであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項4】
(B)の冷却装置が供給機に最も近い単位樹脂製コンベアベルト上に設けられることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項5】
(B)の冷却装置が冷却水トレイを有する請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項6】
(C)の水分除去装置が、(B)の冷却装置が設けられていない1または2以上の単位樹脂製コンベアベルト上に設けられていることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項7】
(C)の水分除去装置が2以上の単位樹脂製コンベアベルトの間に設置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項8】
(A)の樹脂製コンベアベルトの搬送速度より、(D)の切断機の切断速度の方が速いことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項9】
(D)の切断機の切断速度と(A)の樹脂製コンベアベルトの搬送速度の比が、1.0〜2.0であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項10】
(D)の切断機と(A)の樹脂製コンベアベルトが連動することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット製造装置。
【請求項11】
供給機から溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出させて得られたストランド群を、樹脂製コンベアベルトにて搬送し(a)、
該コンベアベルトの供給機側で、前記ストランド群に向けて冷却水を噴霧する冷却装置にてストランド群を冷却し(b)、
該冷却装置より切断機側にある、エアー吹きつけ装置および/または水滴吸引装置、
を有する水分除去装置にてストランド群に付着した水分を除去した後に(c)、
該樹脂製コンベアベルトにより搬送された前記ストランド群をペレット状に切断する切断すること(d)、を特徴とする熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−264325(P2006−264325A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47643(P2006−47643)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】