説明

熱媒ボイラ

【課題】レキュペレータを用い排ガスと熱交換することにより燃焼用空気の温度が上昇することで、レキュペータ部の圧力損失が高くなり燃焼用空気量が減少することによる燃焼性の悪化を防止し、安定した燃焼状態を維持することができる熱媒ボイラを得る。
【解決手段】気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスを用いてバーナ2に送る燃焼用空気を予熱するレキュペレータ11を備えた熱媒ボイラ1であって、制御手段16は、レキュペレータ11の前後の圧力を検出して差圧を求める差圧検出手段15で検出された差圧により燃焼用空気量を演算し、この燃焼用空気量に応じて燃料ガス流量調整弁13を制御し、燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えたら、制御手段16は燃焼用空気量が所定範囲内になるようインバータ9の周波数を調整するとともに、燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量調整弁13を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒ボイラは、高温の熱媒油の持つ熱を間接的に利用する装置(負荷機器)と熱媒ボイラの間を循環させながら、必要な温度(250℃〜300℃)に熱媒油を加熱する装置である。熱媒ボイラは、利用される温度が高いこともあり、加熱される熱媒油の温度は300℃近傍となるため、熱媒ボイラで加熱したあとの排ガス温度が350℃以上となり、持ち去られるエネルギーが大きい。例えば、小型貫流型の蒸気ボイラのボイラ効率が92%程度であるのに対して、熱媒ボイラではボイラ効率が80%程度と熱効率が低い。熱媒ボイラの効率を上げるためには、ボイラ排ガスと燃焼用空気の熱交換による排ガス温度の低減方法が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−243605号公報
【特許文献2】特開平8−312944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、熱媒ボイラの熱効率を92%程度に上げようとすると、排ガスと熱交換した燃焼用空気の温度が高くなり、燃焼用空気の膨張による体積の増加から圧力損失が大きくなって燃焼用空気量が減少する。その結果、燃料に対して燃焼用空気が不足してしまい、燃焼状態が悪化するといった問題があった。
【0005】
本発明の目的は、レキュペレータを用いて排ガスと熱交換することにより燃焼用空気の温度が上昇することで、レキュペレータ部の圧力損失が高くなり燃焼用空気量が減少することによる燃焼性の悪化を防止し、安定した燃焼状態を維持することができる熱媒ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、バーナへ気体燃料を供給する燃料ガス供給ラインと、前記送風機の回転数を変えるインバータと、燃料ガス流量調整弁と、燃料ガス流量調整弁を制御する制御手段と、前記レキュペレータの前後の圧力を検出して差圧を求める差圧検出手段とを設け、前記制御手段は、前記差圧検出手段で検出された差圧により燃焼用空気量を演算し、この燃焼用空気量に応じて前記燃料ガス流量調整弁を制御し、前記燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えたら、前記制御手段は燃焼用空気量が所定範囲内になるようインバータの周波数を調整するとともに、前記燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量調整弁を制御することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、レキュペレータにより排ガスと熱交換して燃焼用空気が高温となり、レキュペレータの入口側と出口側の圧力差に変化が生じたとき、前記制御手段が、前記差圧検出手段で検出された差圧により燃焼用空気量を演算し、この燃焼用空気量に応じて前記燃料ガス流量調整弁を制御し、減少した燃焼用空気量に応じて燃料ガス流量を減少させるので、安定した燃焼状態を維持することができる。また、前記燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えても、前記制御手段が燃焼用空気量を所定範囲内になるようインバータの周波数を調整するとともに、前記燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量調整弁を制御するので、燃焼量が大きく変化せず、安定した燃焼性を維持できるとともに熱媒油の温度を所定温度に加熱することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、バーナへ気体燃料を供給する燃料ガス供給ラインと、前記送風機の回転数を変えるインバータと、燃料ガス流量調整弁と、燃料ガス流量調整弁を制御する制御手段と、前記レキュペレータの前後の圧力を検出して差圧を求める差圧検出手段とを設け、前記制御手段は、特定の燃焼量、熱媒温度に対応した前記レキュペレータの入口側と出口側の差圧、差圧に対応したインバータの周波数のそれぞれの数値を記憶し、前記インバータの周波数を前記検出された差圧に対応する周波数に制御する機能を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、レキュペレータにより排ガスと熱交換して燃焼用空気が高温となり、レキュペレータの入口側と出口側の圧力差に変化が生じたとき、前記制御手段が、前記インバータの周波数を前記差圧検出手段で検出された差圧に対応した前記記憶している数値の周波数に制御するので、燃焼量が一定の状態で燃焼用空気量を燃焼量に追従させることができ、安定した燃焼性を維持するとともに、熱媒油の温度を所定温度に加熱することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レキュペレータの入口側と出口側の圧力差に基づいて燃焼用空気量を演算し、燃焼用空気の温度変化によって前記燃焼用空気量に変化が生じたとき、変化した燃焼用空気に応じて空燃比が一定になるように燃料ガス流量を変化させるので、安定した燃焼状態を維持することができる。また、前記燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えたら、燃焼用空気量を所定範囲内になるようインバータの周波数を調整するとともに、前記燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量を調整するので、燃焼量が大きく変化せず、安定した燃焼性を維持できるとともに熱媒油の温度を所定温度に加熱することができる。
さらに、特定の燃焼量、熱媒油の温度に対応した前記レキュペレータの入口側と出口側の差圧、差圧に対応したインバータの周波数のそれぞれの数値を記憶し、前記インバータの周波数を前記検出したレキュペレータの入口側と出口側の差圧に対応した前記記憶している数値の周波数に制御するので、燃焼量が一定の状態で燃焼用空気量を燃焼量に追従させることができ、安定した燃焼性を維持するとともに、熱媒油の温度を所定温度に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る熱媒ボイラを実施するための形態を、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の一例を示す概略構成図である。
【0013】
本例の熱媒ボイラ1は、上部にバーナ2が配置され、熱媒油加熱管3をコイル状に形成した缶体4の内側に燃焼室5を形成している。バーナ2は缶体4の上部に設けられたウインドボックス6に取り付けられており、ウインドボックス6に送気ダクト7を介して燃焼用空気を送り込む送風機8を備えている。送風機8にはインバータ9が備えられており、インバータ9の周波数を制御することにより送風機8の回転数を制御して燃焼用空気量を制御できるようになっている。缶体4には、燃焼室5で燃焼しコイル状の熱媒油加熱管3の隙間を通過した排ガスを大気に放出する排ガスダクト10が接続されている。
【0014】
また、排ガスダクト10と送気ダクト7とに接続するレキュペレータ11を備えており、排ガスダクト10を流通する排ガスと送気ダクト7を流通する燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するようになっている。
バーナ2には、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ライン12が接続されている。燃料ガス供給ライン12には、バーナ2へ燃料ガスを供給する燃料ガス流量調整弁13が設けられている。
【0015】
また、送気ダクト7には、レキュペレータ11の入口側と出口側に設けた圧力センサ14で構成した差圧検出手段15が設けられており、差圧検出手段15で送気ダクト7を流れるレキュペレータ11の入口側と出口側の燃焼用空気の圧力を検出してその差圧を求め、制御手段16に発信するようになっている。
【0016】
この制御手段16は、差圧検出手段15で検出されたレキュペレータ11の入口側と出口側の差圧により燃焼用空気量を演算し、この燃焼用空気量に応じて燃料ガス流量調整弁13を制御し、燃焼用空気量に応じた燃料ガスをバーナ2に供給させ、燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えたら、燃焼用空気量が所定範囲内になるようインバータ9の周波数を調整するとともに、燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量調整弁13を制御する第1機能を有している。前記の燃焼用空気量に関する所定範囲とは、熱媒油の温度を維持するために必要とされる燃焼量であり、この燃焼量に対して所定の空燃比になる燃焼用空気量の範囲を指す。
【0017】
また、前記制御手段16は、特定の燃焼量、熱媒温度に対応したレキュペレータ11の入口側と出口側の差圧、差圧に対応したインバータ9の周波数のそれぞれの数値を記憶しており、インバータ9の周波数を検出された差圧に対応する周波数に制御し、所望の熱媒油の温度に加熱するために必要な燃焼量に応じて供給される燃料ガス流量に対して空燃比が一定になるように燃焼用空気量を供給させる第2機能を有している。
そして、前記第1機能と第2機能の優先順位にあっては、任意に選択できるようになっている。
【0018】
このように構成した本例の熱媒ボイラ1によれば、レキュペレータ11で排ガスダクト10を流通する排ガスと送気ダクト7を流通する燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱すると、高温となった燃焼用空気は膨張して体積が増し、流速が早くなりレキュペレータ11部の圧力損失が大きくなって風量が減少する。
本例では、レキュペレータ11の入口側と出口側に設けた圧力センサ14で構成した差圧検出手段15により送気ダクト7を流れるレキュペレータ11の入口側と出口側の燃焼用空気の圧力を検出してその差圧を求め、制御手段16に発信する。
【0019】
制御手段16にあって、第1機能が選択されている場合は、差圧検出手段15で検出されたレキュペレータ11の入口側と出口側の差圧により燃焼用空気量を演算し、算出された燃焼用空気量に応じて燃料ガス流量調整弁13を制御する。すなわち、排ガスと熱交換して高温となって膨張して体積が増し、流速が早くなり減少した燃焼用空気量に応じて燃料ガス流量を減少させる。
また、前記燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えたら、すなわち、燃焼用空気量の減少が特定の燃焼量、熱媒温度を維持するために必要とされる燃焼用空気量の範囲を超えたら、燃焼用空気量が所定範囲内になるようインバータ9の周波数を調整するとともに、燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量調整弁13を制御し、特定の燃焼量、熱媒温度を維持するために必要とされる燃焼用空気量とするとともに、この燃焼用空気量に応じた燃料ガス流量に調整する。
【0020】
制御手段16にあって、第2機能が選択されている場合、差圧検出手段15で検出されたレキュペレータ11の入口側と出口側の差圧を制御手段16に発信すると、制御手段16は、インバータ9の周波数を、差圧検出手段15で検出されたレキュペレータ11の入口側と出口側の差圧に対応した前記記憶している数値の周波数に制御する。すなわち、排ガスと熱交換して高温となった燃焼用空気は膨張して体積が増し、流速が早くなり圧力損失が大きくなることにより減少した燃焼用空気量を、特定の燃焼量、熱媒温度に応じて供給される燃料ガス供給量に応じた量に増加させる。
【符号の説明】
【0021】
1 熱媒ボイラ
2 バーナ
3 熱媒油加熱管
4 缶体
5 燃焼室
6 ウインドボックス
7 送気ダクト
8 送風機
9 インバータ
10 排ガスダクト
11 レキュペレータ
12 燃料ガス供給ライン
13 燃料ガス流量調整弁
14 圧力センサ
15 差圧検出手段
16 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、
バーナへ気体燃料を供給する燃料ガス供給ラインと、前記送風機の回転数を変えるインバータと、燃料ガス流量調整弁と、燃料ガス流量調整弁を制御する制御手段と、前記レキュペレータの前後の圧力を検出して差圧を求める差圧検出手段とを設け、前記制御手段は、前記差圧検出手段で検出された差圧により燃焼用空気量を演算し、この燃焼用空気量に応じて前記燃料ガス流量調整弁を制御し、前記燃焼用空気量の変化が所定範囲を超えたら、前記制御手段は燃焼用空気量が所定範囲内になるようインバータの周波数を調整するとともに、前記燃焼用空気量に合わせて燃料ガス流量調整弁を制御することを特徴とする熱媒ボイラ。
【請求項2】
気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、
バーナへ気体燃料を供給する燃料ガス供給ラインと、前記送風機の回転数を変えるインバータと、燃料ガス流量調整弁と、燃料ガス流量調整弁を制御する制御手段と、前記レキュペレータの前後の圧力を検出して差圧を求める差圧検出手段とを設け、前記制御手段は、特定の燃焼量、熱媒温度に対応した前記レキュペレータの入口側と出口側の差圧、差圧に対応したインバータの周波数のそれぞれの数値を記憶し、前記インバータの周波数を前記検出された差圧に対応する周波数に制御する機能を有することを特徴とする熱媒ボイラ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−87958(P2013−87958A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225475(P2011−225475)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】