説明

熱板装置及び熱転写プレス装置

【課題】 簡単かつ安価な構成でありながら、均一な温度分布をもって急速に加熱及び冷却することができ、以って製品品質を高く維持しながらサイクルタイムの短縮化を図ることができる熱板装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る熱板装置は、被処理対象物に対して熱の授受を行うための板状の熱板30であって被処理対象物に対する熱の授受面に対して略平行に並んで開口される複数の流体通路31を備えた熱板30と、複数の流体通路31の各端部付近にそれぞれ配設され複数の流体通路31と外部とを連通させ流体を流通させる流体接続部(流体マニホールド)50と、を備え、前記流体接続部50が複数の流体通路31の一部と外部とを連通させる室(メインホール)53Aと、残りの複数の流体通路と外部とを連通させる室(メインホール)53Bと、を備えて構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板装置及び当該熱板装置を備えた熱転写プレス装置に関する。例えば、所定温度条件下で板状の被処理対象物(熱可塑性樹脂)に対してスタンパ(転写板)を押圧して所定パターンを転写する熱転写プレス装置に用いられる熱板装置及び当該熱板装置を備えた熱転写プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、例えば特許文献1などには、熱可塑性樹脂製の板状体に対して金型に取り付けられたスタンパを押圧し、該スタンパに刻設されている所定パターンを前記板状体に熱転写(プレス成形)することで、液晶ディスプレイパネル等に用いられる導光板を製造する装置が記載されている。
【0003】
ここで、熱転写によるプレス成形処理においては、被処理対象物である熱可塑性樹脂製の板状体を、所定に加熱し昇温させて軟化させ、かかる状態でプレス成形を行い、当該プレス成形後は離型性を考慮して被処理対象を所定に冷却することが必要とされる。
【0004】
このため、連続プレス成形を行う場合において、生産性を高めるためには、被処理対象を急速に加熱し冷却できるようにして処理サイクルを短縮化できるようにすることが求められる。
【0005】
かかる観点から、特許文献1に記載される装置では、スタンパの背面に熱板を配設し、当該熱板内に配設された流路に蒸気を流入させて熱板を昇温させると共に、前記流路と同じ流路に冷却水を導入することにより熱板延いてはスタンパを冷却するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−83402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される装置では、加熱の際に熱板内に配設された通路に蒸気を流入させて熱板を昇温させ、冷却の際には当該通路に冷却水を流入させる構成であり、蒸気を加熱媒体として用いることは熱板を急速に昇温させることができる点で適しているものの、当該装置のように熱板の一側からのみ流入させる構成では蒸気流入直後における熱板全体での温度ムラが大きく反り等の問題が生じ易いといった問題がある。
【0008】
また、冷却時も同様に片側から冷却水を導入するのでは、冷却水の流れ方向において温度ムラ等を生じるといった問題がある。
【0009】
更に、特許文献1に記載の装置は、特許文献1の段落
【0010】
に記載されているように、熱板24の一側の側面37から導入側分岐通路36の両端に向けて導入側通路38がそれぞれ設けられ、この導入側通路38には管路39が接続され、プレス装置11の外部において図示しないバルブを介して、蒸気、冷却水、及び圧縮空気が選択的に供給される構成となっている(特許文献1の図1等参照)。
【0011】
かかる構成では、導入側分岐通路36の両端に設けられている管路39から導入された流体は、導入側分岐通路36内で衝突することとなり、熱板24に設けられている複数の通路34のうち、その衝突箇所に近い通路34ほど、多くの流体が導かれることになり、これでは熱板24内に並設される複数の通路34に対して、その並設方向においても温度ムラが生じることになる。
【0012】
従って、特許文献1に記載されている装置は、スタンパを加熱するための熱板に対して温度ムラを考慮した設計はなされておらず、熱ひずみにより熱板延いてはスタンパの平面度が悪化して、成形される製品の品質の維持が難しくなるといった実情がある。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価な構成でありながら、均一な温度分布をもって急速に加熱及び冷却することができ、以って製品品質を高く維持しながらサイクルタイムの短縮化を図ることができる熱板装置及び熱転写プレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明に係る熱板装置は、
被処理対象物に対して熱の授受を行うための熱板であって、被処理対象物に対する熱の授受面に対して略平行に並んで配設され熱媒体としての流体が流通される複数の流体通路を備えた熱板と、
複数の流体通路の各端部付近にそれぞれ配設され、複数の流体通路と外部とを連通させ流体を流通させる流体接続部と、
を備えた熱板装置であって、
前記流体接続部が、複数の流体通路の一部と外部とを連通させる室と、残りの複数の流体通路と外部とを連通させる室と、を備えて構成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記複数の流体通路の一部と、前記残りの複数の流体通路と、は流体の流れる方向が相互に逆方向であることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、前記複数の流体通路の一部と、前記残りの流体通路と、は、これら複数の流体通路の並び方向において交互に配設されることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明において、前記室は、前記流体接続部内に設けられる前記複数の流体通路の並び方向に亘って延在される穴により構成されることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明に係る熱転写プレス装置は、上記の熱板装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、均一な温度分布をもって急速に加熱及び冷却することができ、以って製品品質を高く維持しながらサイクルタイムの短縮化を図ることができる熱板装置及び熱転写プレス装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係る熱板装置及び熱転写プレス装置について、添付の図面に従って説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る熱転写プレス装置1の構成を示す断面図である。
図1において、熱転写プレス装置1は、下型10と、当該下型10に対向する上型20と、が備えられ、下型10はベース部分に取り付けられ、上型20は、図示しないプレス機構を介してプレス動作(昇降運動)可能に構成されている。
【0022】
下型10及び上型20の相互に対向する面には、図示しないスタンパ(転写板)がそれぞれ取り付けられ、対面するスタンパの間に搬送されるワーク(被処理対象物、例えば、アクリル、ポリカーボネイト等の熱可塑性樹脂製の板状体)に対して、上型20の昇降運動を利用して、スタンパに刻設されている所定パターンを熱転写(プレス成形)し、例えば液晶ディスプレイパネル等に用いられる導光板を製造するようになっている。
【0023】
下型10は、図1において、基台11の上に断熱板12が載置され、その上に熱板30が載置され、当該熱板30の上面に、図示しないスタンパが取り付けられる構成となっている。
【0024】
上型20は、下型10とワークを挟んで略対称に構成されており、図1に示したように、基台11の下に断熱板12が取り付けられ、その下に熱板30が取り付けられ、当該熱板30の下面に、図示しないスタンパが取り付けられる構成となっている。
【0025】
本実施の形態に係る熱板30は、被加熱対象物であるスタンパの処理面を均一かつ急速に加熱及び冷却することができるように、以下のように構成されている。
【0026】
熱板30は、図1〜図3に示すように、例えばステンレス等の金属製の厚さ約7mmの板状体(受圧能力は10MPa程度)で構成され、流体通路31がスタンパ側表面と略平行に比較的細かいピッチ(例えば中心軸間距離5mm)で複数並んで設けられている。
【0027】
なお、当該流体通路31は、例えば、φ3〜4mm程度の貫通穴をガンドリル等で開口して形成することができる。このため、安価な加工法で形成できると共に、入手容易な一般的なサイズの止栓を使用することができ、製品コストを低く維持することができるという利点がある。
【0028】
この流体通路31には、熱板30を加熱する際には、流体マニホールド50、これに接続用コネクタ60(60A、60B)を介して接続される流体供給・排出用ホース61によって蒸気が導入されるようになっている。
【0029】
また、冷却の際には、流体マニホールド50、これに接続用コネクタ60(60A、60B)を介して接続される流体供給・排出用ホース61によって冷却水が導入されるようになっている。但し、冷却水に限定されるものではなく、他の冷媒を導入させる構成とすることも可能である。
【0030】
冷却を開始してから所定時間経過後には、温度を所定に維持するためや次回加熱等に備えて、圧縮空気が導入されるようになっている。
流体供給・排出用ホース61への蒸気、冷却水、及び圧縮空気の選択的な供給は、図示しないバルブ等を介して行われる。
【0031】
なお、熱板30を極力薄く製作することで、昇降温速度が速く、昇降温時の温度ムラも少ない熱板装置(ホットプレート装置)を提供することができる。また、流体マニホールド50についても、同様に、極力薄肉化・小型化することが望まれる。
【0032】
ところで、一方向から流体(熱媒体としての蒸気、冷却水など)の流入は入出方向に対し温度ムラが発生し、スタンパ延いてはワークに温度ムラを与えることに加え、熱板30の温度ムラは熱板30の熱膨張ムラになるので熱板30の板厚方向の板厚差が発生し、スタンパ延いてはワークに対してプレス圧力ムラが発生し、ワークの仕上がり状態にバラツキが生じる原因となることが想定される。
【0033】
従って、流体を使用する一つの熱板30と二つの流体マニホールド50から構成される熱板装置においては、熱板30には流体を相互に対向する方向から流入させることができる構成であることが望ましい。
【0034】
なお、流体通路31に対して流体を供給し排出するためには、流体供給・排出用供給ホースと接続する必要があるが、流体通路31の径が小さいため、個別に流体供給・排出用供給ホースを接続するには、小さな接続用コネクタ等も必要となる。
【0035】
小さな径の流体供給・排出用供給ホースや接続コネクタは、それぞれに肉厚分を確保する必要があるため実質的な通路面積が小さくならざるを得ず、以って通路抵抗が大きくなり流体の供給・排出の効率が悪いといった実情がある。
【0036】
また、接続用コネクタと流体通路31との接続には、一般に管用テーパねじ(Rc)が採用されるが、径が小さいと、取り付け強度が低く、シール性等を長期に亘って確保することも困難で、更にはねじ穴が破損し易く(所謂バカになり易く)使い勝手が悪いといった実情がある。
【0037】
このようなことから、例えば、管用ねじとして、ある程度以上の強度を有するRc1/4インチ程度(管の外径としては約13.8mm程度)の大きさのものを用いることができるようにすることが望ましい。
【0038】
しかしながら、細かいピッチで配設され小径な流体通路31に対して、個別にこのようなサイズの接続用コネクタを取り付けることは難しく、本実施の形態では、流体マニホールド50を採用することとしている。
【0039】
更に、流体マニホールド50を採用した場合、熱板30の温度ムラを減少させるには熱板30に配設された各々の流体通路31に等量の流体を流入させることができることが望まれる。
【0040】
すなわち、各流体通路31に等圧の流体を導入することが必要であり、そのためには各接続用コネクタ60(60A、60B)から流入した流体を一度流体マニホールド50内にある比較的容量の大きいメインホール部(53A、53B)の底から流入させて、当該メインホール部で圧カを均した後、メインホール部を満たした流体がメインホール部の上部に設置された熱板30への連通穴54A、54Bに押し出されるような構造が望ましい。
【0041】
以上述べたような種々の要求に応えるために、本実施の形態に係る流体マニホールド50は、以下のような構成とした。
【0042】
図3に示したように、流体マニホールド50は、熱板30の流体通路31の長軸方向の両端部の裏側(断熱板12側)に配設される。なお、流体マニホールド50は熱板30と同様の材料を用いて形成されることができる。
【0043】
図4に示すように、流体マニホールド50には、接続用コネクタ60(60A、60B)(Rc1/4インチ程度のサイズの管用テーパねじが備えられている)を取り付けるためのテーパねじ穴51A、51Bが、流体通路31が所定ピッチで複数並んで配設されている方向に比較的大きなピッチで複数並んで設けられている。なお、ここでは、テーパねじ穴51A、51Bに、接続用コネクタ60A、60Bが対応してそれぞれ取り付けられるものとして説明する。
【0044】
そして、図4、図5に示すように、流体マニホールド50の長手方向に亘って2つのメインホール53A、53Bが相互に独立に設けられている。これらメインホール53A、53Bは、例えばφ5mmの内径を有し、ガンドリル等により比較的容易に形成することができ、その端部は止栓される。
【0045】
メインホール53A、53Bには、図4〜図6に示すように、メインホール53A、53Bと前記テーパねじ穴51A、51Bの底部とをそれぞれ連通する連通路52A、52Bが設けられている。
【0046】
なお、連通路52A、52Bは、ドリル加工等により丸穴の断面形状で形成することができるが、本実施の形態では、図4に示したように、通路断面積をできるだけ大きく(通路抵抗を小さく)するためにエンドミル等を用いて略楕円状の断面形状で形成している。
【0047】
また、前記メインホール53A、53Bには、図6に示したように、前記連通路52A、52Bと略直交し、熱板30方向に延びる連通路54A、54Bが接続され、これら連通路54A、54Bは、熱板30に設けられている流体通路31に、それぞれ独立に接続されるようになっている。なお、連通路54A、54Bは、例えばφ3mmの内径を有し、ドリル加工等により形成することができる。
【0048】
すなわち、テーパねじ穴51Aのそれぞれは連通路52Aを介してメインホール53Aに接続されると共に、当該メインホール53Aに接続されている連通路54Aはそれぞれ、熱板30の流体通路31の一つと接続されている。
【0049】
そして、これらとは独立に、テーパねじ穴51Bのそれぞれが連通路52Bを介してメインホール53Bに接続されると共に、当該メインホール53Bに接続されている連通路54Bはそれぞれ、熱板30の流体通路31の一つと接続されている。
【0050】
なお、本実施の形態においては、連通路54Aのそれぞれが接続される流体通路31と、連通路54Bのそれぞれが接続される流体通路31と、は、熱板30に交互に配設されている。
【0051】
従って、図5に示すように、接続用コネクタ60B(図2の左側の接続用コネクタ60Bに相当)から流体マニホールド50に流体が供給されると、流体は、一つおきの流体通路31を通って反対側の流体マニホールド50に導かれ、これに接続されている接続用コネクタ60B(図2の右側の接続用コネクタ60Bに相当)を介して排出されることになると共に、図2の左側の接続用コネクタ60Aから流体マニホールド50に流体が供給されると、流体は、一つおきの流体通路31を通って反対側の流体マニホールド50に導かれ、図5に示される接続用コネクタ60A(図2の左側の接続用コネクタ60Aに相当)を介して排出されることになる。
【0052】
なお、本実施の形態では、隣接する流体通路31同士は、流体の流れる方向が相互に逆行するようにし、これにより流体通路31について流体を同一方向に流す場合に比べて熱板30の温度分布を均一化することができ、以って熱板30の熱ひずみ等を最小に抑制することができる。このように、隣接する流体通路31の流体流れ方向を相互に逆方向にしたマニホールドを双方向流入マニホールドと称する。
【0053】
但し、本実施の形態において、流体を同一方向に流すことは可能であるし、一つおきに限らず、部分的に流体の流れ方向を逆行させることも可能である。すなわち、少なくとも一つの接続用コネクタ60A或いは60Bへの流体の流れ込み(或いは排出)方向を、他の接続用コネクタ60A或いは60Bへの流体の流れ込み(或いは排出)方向と異ならせることができるものである。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、管用ねじとして所定以上の強度を有するRc1/4インチ程度(管の外径としては約13.8mm程度)の大きさのものを用いることを可能にしながら、流体マニホールド50の質量、サイズ延いては熱容量をできる限り小さくすることができ、以って使い勝手を所望に維持しながら、エネルギロスの少ない効率の良い加熱冷却サイクルを実現することができ、延いてはサイクルタイムを短縮することが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、隣接する流体通路31の流体の流れる方向を相互に逆行させることができるので、流体を同一方向に流す場合に比べて熱板30の温度分布を均一化して熱ひずみ等を効果的に抑制することができる。
【0056】
更に、本実施の形態によれば、メインホール53A、53Bを設け、各接続用コネクタ60A、60Bから導入される流体をここで一旦混合して圧力を均すことができると共に、メインホール53A、53Bを満たした流体がメインホール53A、53Bの上部に配設された連通穴54A、54Bに押し出される構成としたので、複数の流体通路31のうち一部の流体通路31への供給圧が高く流れる流体量にバラツキが生じて熱の授受量にバラツキが生じるといったことを効果的に抑制することができ、以って熱板30の温度分布を均一化して、成形される製品の品質等を良好なものとすることができる。
【0057】
(実験結果)
なお、本発明に係るホットプレート装置を用いて昇降温サイクル(加熱冷却サイクル)の実験を行った結果を示しておく。
流体マニホールド50の厚さ方向(熱板30の厚さ方向)の寸法は18mm、幅方向(流体通路31の流体流れ方向に沿う方向)の寸法は29mmとした。
熱板30に配設される流体通路31は、熱板30を軽量化でき、ガンドリル加工が可能で、止栓も一般的な購入品で対応できるφ3mmとし、配列ピッチは5mmとした。
熱板30の板厚方向の寸法は7mm、熱板有効範囲は160mm×160mm、受圧能力を10MPaとした。
昇温には絶対圧力0.7MPaの蒸気を使用し、冷却には水道水を使用し、熱板30の中央部温度が基準の30°Cから160°Cまでの昇降温サイクル試験を行った。
昇温速度は10secであり、昇温中の有効範囲面内の最大温度ムラは20°Cであり、昇温後に160°Cを維持した際の有効範囲内の温度ムラは1°C以下で、
冷却は冷却開始後10secで熱板中央部の温度が76°Cになり、有効範囲内の温度ムラは3°C以内であった。
【0058】
これに対し、同じ熱板に板厚18mm、幅29mmの同じ大きさの一方向流入用のマニホールドを用意し、同じ30°Cから160°Cまでの昇降温サイクル試験を行った。
昇温速度、昇温後160°Cを所定時間維持した際の有効範囲内の温度ムラ、及び冷却開始10sec後の熱板中央部の温度は、本発明に係る双方向流入マニホールドと同等とした場合に、
昇温中の有効範囲面内の最大温度ムラは50°Cであり、
冷却開始10sec後の有効範囲内の温度ムラは30°Cであった。
【0059】
以上より、薄型の双方向流入マニホールド50を使用することで昇降温速度が速く、昇降温時の温度ムラの少ないホットプレート装置を提供できることが確認された。
【0060】
ところで、例えば7mmの厚さの熱板30の断熱材12側に、ヒータ穴32を有する加熱板を熱板30と一体的に或いは別体として配設し、加熱時には、当該ヒータ穴32に挿通された電熱ヒータを介して加熱するように構成することもできる。
このヒータ穴32は、流体通路31に対して断熱板12側寄りの部位に、スタンパ側表面と略平行に比較的粗いピッチ(例えば中心軸間距離10mm)で複数並んで開口されることができる。
【0061】
本実施の形態では、加熱媒体として蒸気、冷却媒体として冷却水として説明したが、これに限定されるものではなく、他の流体(液体、気体)を熱媒体として用いることができるものである。
【0062】
ところで、流体マニホールド50と熱板30との間に温度差があると、流体マニホールド50の長手方向(複数の流体通路31の並び方向)において比較的大きな熱膨張差(熱膨張差は長さに比例する)が生じるため、両者の接合面に滑りが生じ、熱板30がボルト締結部の影響で変形し、熱板30の平面度が低下する惧れがある。
【0063】
このような熱板の平面度の低下は、スタンパの平面度の低下を招き、以って成形される製品の品質の維持が難しくなるといった実情がある。
【0064】
このため、本実施の形態においては、複数の流体通路31の並び方向において、流体マニホールド50を少なくとも2つに分割した構成とすることができる。これにより、温度差により生ずる流体マニホールド50と熱板30の長さの差を低減し(熱膨張差は長さに比例する)、以って熱板30と流体マニホールド50間の滑り量を減少させ、延いては滑ったことで発生する熱板30の反り量(たわみ量)を減少させることができ、成形される製品の品質を高く維持することができることになる。
【0065】
なお、流体マニホールド50を長手方向において分割した場合、隣接する流体マニホールド50の間に隙間を設けることで、流体マニホールド50が高温となって膨張した場合でも、隣接する流体マニホールド50同士が干渉し合うことを回避でき、以って熱板30に反りを発生させるなどの悪影響を一層確実に抑制することができる。
【0066】
ところで、最終的な被処理対象物はワークであるが、熱板から見ると、熱の授受を行う対象はスタンパ(延いてはワーク)であり、従って、本発明において、スタンパを熱板が熱の授受という処理を行う対象、すなわち被処理対象物とすることもできるものである。
【0067】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る熱板装置及び熱転写プレス装置によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、均一な温度分布をもって急速に加熱及び冷却することができ、以って製品品質を高く維持しながらサイクルタイムの短縮化を図ることができ有益である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施の形態に係る熱板装置を備えた熱転写プレス装置を概略的に示す正面図である。
【図2】同上実施の形態に係る熱板装置の構造を説明するための熱板装置の上面図である。
【図3】同上実施の形態に係る熱板装置の側面図である。
【図4】同上実施の形態に係る熱板装置の流体マニホールドをテーパねじ穴方向から見た図である。
【図5】同上実施の形態に係る熱板装置の流体マニホールドを熱板方向から見た図である。
【図6】同上実施の形態に係る熱板装置の流体マニホールドの側面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 熱転写プレス装置
10 下型
20 上型
30 熱板
31 流体通路
50 流体マニホールド
51A、51B テーパねじ穴
52A、52B 連通路
53A、53B メインホール
54A、54B 連通路
60A、60B 接続用コネクタ
61 流体供給・排出用ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理対象物に対して熱の授受を行うための熱板であって、被処理対象物に対する熱の授受面に対して略平行に並んで配設され熱媒体としての流体が流通される複数の流体通路を備えた熱板と、
複数の流体通路の各端部付近にそれぞれ配設され、複数の流体通路と外部とを連通させ流体を流通させる流体接続部と、
を備えた熱板装置であって、
前記流体接続部が、複数の流体通路の一部と外部とを連通させる室と、残りの複数の流体通路と外部とを連通させる室と、を備えて構成されたことを特徴とする熱板装置。
【請求項2】
前記複数の流体通路の一部と、前記残りの複数の流体通路と、は流体の流れる方向が相互に逆方向であることを特徴とする請求項1に記載の熱板装置。
【請求項3】
前記複数の流体通路の一部と、前記残りの流体通路と、は、これら複数の流体通路の並び方向において交互に配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱板装置。
【請求項4】
前記室は、前記流体接続部内に設けられる前記複数の流体通路の並び方向に亘って延在される穴により構成されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の熱板装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の熱板装置を備えたことを特徴とする熱転写プレス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−64412(P2010−64412A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234338(P2008−234338)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】