説明

熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物及びその使用

【課題】画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部とを接着させるための熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との接着に使用する熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、両末端のケイ素原子にアルケニル基を有する、直鎖状ポリオルガノシロキサン(成分A)、両末端のケイ素原子に水素原子を有する、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分B1)、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有する、直鎖状、分岐状又は環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分B2)、白金系触媒(成分C)、及び接着付与剤(成分D)を含み、成分Aのアルケニル基の個数Viに対する、成分B1の水素原子の個数HB1と成分B2の水素原子の個数HB2との和である個数(HB1+HB2)の比が0.2〜1.2であり、HB1が、HB1+HB2に対して0.1〜0.8であり、組成物の23℃における粘度が、300〜10000cPであり、熱硬化後のE硬度が、10〜40である、熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との接着に使用する熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管、液晶、プラズマ、有機EL等の画像表示装置は、一般に、偏光分離素子として、入射光束を回折及び分光し、その回折、分光させた各波長帯域の光を偏光変調素子上に形成されたR(赤色),G(緑色),B(青色)各色画素に対応した位置へ選択的に集光させる偏光分離型回折光学素子(ホログラフィックカラーフィルタ)を用いて構成されている。中でも、パネル型の画像表示装置は、通常、少なくとも一方がガラス等の光透過性をもつ一対の基板の間にアクティブ素子を構成する半導体層や蛍光体層、あるいは発光層からなる多数の画素をマトリクス状に配置した表示領域(画像表示部)を有し、この表示領域(画像表示部)とガラスやアクリル樹脂のような光学用プラスチックで形成される保護部との間隙を接着剤で機密に封止して構成されている。
【0003】
そこで使用される接着剤としては、画像表示装置の保護部の外枠部分に遮光性のペイントが施されているといった構造上の理由から、紫外線硬化型樹脂組成物でなく、熱硬化型樹脂組成物が一般に使用され、中でもアクリル系接着剤が汎用されている。しかしながら、アクリル系接着剤は、部材とのぬれ性が低いため生産性に劣り、また、硬化時の収縮率が高く、部材に対して歪み等の影響を及ぼしうる。さらに硬化後においては、高温下で黄変や割れ等が生じるといった問題もある。そのため、代替となる材料の開発が要望されていた。
【0004】
特許文献1には、シリコーン組成物を硬化してなる、板状体である光学表示体用の透明衝撃緩和部材が開示されている。
特許文献2には、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の封止樹脂により封止されてなる、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、コイル、LSI、IC等の電子部品について封止樹脂と電子部品のリードとの界面にしばしば生じた隙間や、電子部品自体が構造的に有する隙間に、液状の特定の熱硬化型シリコーン樹脂組成物を含浸して熱硬化させ封止状態を回復させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−117831号公報
【特許文献2】特開平9−169908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている透明衝撃緩和部材は、シリコーン組成物を硬化してなる板状体である。板状体である透明衝撃緩和部材を用いて、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部とを張り合わせようとすると、張り合わせ時に気泡が入り易く、また、張り合わせた後にも、高温下で剥離が生じたり、気泡が入り込みやすく、視認性が低下しやすい。
【0007】
特許文献2に開示されている熱硬化型シリコーン樹脂組成物は、本発明が接着対象とする画像表示装置に比べて遥かに狭い空間に充填することを目的としている。画像表示装置のように接着対象が大きくなると、硬化時の収縮の影響も大きいため、硬化収縮率の厳密な制御が要求される。
【0008】
以上のように、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部とを接着させるための熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、基部及び保護部とのぬれ性がよく、硬化収縮率が小さく、硬化後に、耐衝撃性に優れ、かつ高温下での信頼特性が良好な組成物は、従来技術では十分に達成できておらず、このような組成物は、画像表示装置が高輝度、高精細でかつ大型化してきている近年においてさらに要望が高まっている。
【0009】
本発明は、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部とを接着させるための熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、基部及び保護部とのぬれ性がよく、硬化収縮率が小さく、硬化後に、耐衝撃性に優れ、かつ高温下での信頼特性が良好な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との接着に使用する熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、
両末端のケイ素原子にアルケニル基を有する、直鎖状ポリオルガノシロキサン(成分A)、
両末端のケイ素原子に水素原子を有する、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分B1)、
一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有する、直鎖状、分岐状又は環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分B2)
白金系触媒(成分C)、及び
接着付与剤(成分D)
を含み、
成分Aのアルケニル基の個数Viに対する、成分B1の水素原子の個数HB1と成分B2の水素原子の個数HB2との和である個数(HB1+HB2)の比が0.2〜1.2であり、
B1が、HB1+HB2に対して0.1〜0.8であり、
組成物の23℃における粘度が、300〜10000cPであり、
熱硬化後のE硬度が、10〜40である、
熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部とを接着させるための熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、基部及び保護部とのぬれ性がよく、硬化収縮率が小さく、硬化後に、耐衝撃性に優れ、かつ高温下での信頼特性が良好な組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の成分Aは、両末端のケイ素原子にアルケニル基を有する、直鎖状ポリオルガノシロキサンである。硬化時に架橋反応による安定した3次元構造を確保し、硬化収縮を制御し抑制し、良好な視認性を確保する観点から、両末端の各ケイ素原子に、好ましくは1〜2個ずつ、より好ましくは1個ずつ、アルケニル基が結合している。
【0013】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基又は5−ヘキセニル基が挙げられる。合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性や、硬化物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基がより好ましい。
【0014】
成分Aにおけるケイ素原子に結合するアルケニル基以外の基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;シクロヘキシルのようなシクロアルキル基;フェニルのようなアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基等の1価の炭化水素基、あるいはクロロメチル、クロロフェニル、2−シアノエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルのようなハロゲン原子、シアノ基等の置換基を有する1価の炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易であって、組成物の流動性や硬化後の機械的強度等のバランスが優れているという点から、メチル基が好ましい。
【0015】
成分Aとしては、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンが好ましい。
【0016】
成分Aの粘度は、組成物の安定した液状性を確保する観点から、23℃において300〜12000cPであることが好ましく、より好ましくは2000cP超である。例えば3000〜8000cPとすることができ、3000〜5000cPとすることもできる。これらの粘度範囲になるように、成分Aの重量平均分子量を調整することが好ましい。本発明における、粘度は、回転粘度計を用いて、60rpm、23℃の条件で測定した値である。
【0017】
本発明の成分B1は、両末端のケイ素原子に水素原子を有する、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。成分B1は、両末端の各ケイ素原子に、好ましくは1〜2個ずつ、より好ましくは1個ずつ、水素原子を有する。
【0018】
成分B1におけるケイ素原子に結合する水素原子以外の基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;シクロヘキシルのようなシクロアルキル基;フェニルのようなアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基等の1価の炭化水素基、あるいはクロロメチル、クロロフェニル、2−シアノエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルのようなハロゲン原子、シアノ基等の置換基を有する1価の炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易であって、機械的強度および硬化前の流動性などの特性のバランスが優れているという点から、メチル基が好ましい。
【0019】
成分B1としては、両末端がジメチルハイドロジェンシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルハイドロジェンシロキサンが好ましい。
【0020】
成分B1の粘度は、23℃において0.1〜300cPが好ましく、1〜200cPがより好ましい。
【0021】
本発明の成分B2は、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を3個以上含む、直鎖状、分岐状又は環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、硬化物を網状化して、硬度を調整するのに寄与する成分である。ケイ素原子に結合した水素原子は、一分子中に、3〜100個であることが好ましく、より好ましくは、3〜50個である。
【0022】
成分B2としては、RHSiO1/2単位(式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す)及びSiO4/2単位からなり、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンが挙げられる。取り扱い性等の点から、H(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位の比率が、SiO2単位1モルに対してH(CHSiO1/2単位1.5〜2.2モルが好ましく、1.8〜2.1モルがさらに好ましい。典型的には、[H(CHSiO1/2[SiO4/2又は[H(CHSiO1/210[SiO4/2のように、3〜5個のQ単位が環状シロキサン骨格を形成し、各Q単位に2個のM’単位が結合しているものが、特に好ましい。
【0023】
また、成分B2の粘度は1〜100cPが好ましく、1〜50cPがより好ましい。
【0024】
硬化物に適切な硬度を付与する観点から、成分Aのケイ素原子に結合したアルケニル基の個数Viに対する、成分B1のケイ素原子に結合した水素原子の個数HB1と、成分B2のケイ素原子に結合した水素原子の個数HB2との合計の比:
(HB1+HB2)/Vi
が0.2〜1.2であり、好ましくは0.5〜1.0である。
【0025】
また、硬化物の耐衝撃性や高温での信頼性確保の観点から、HB1が、HB1+HB2に対して0.1〜0.8であり、好ましくは0.2〜0.7である。
【0026】
成分Cは、成分Aのアルケニル基と、成分B1及びB2のヒドロシリル基との間の付加反応を促進するための触媒である。触媒活性が良好な観点から、白金、ロジウム、パラジウムのような白金族金属原子の化合物が好適に用いられ、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ケトン錯体、白金−ホスフィン錯体のような白金化合物、ロジウム−ホスフィン錯体、ロジウム−スルフィド錯体のようなロジウム化合物、パラジウム−ホスフィン錯体のようなパラジウム化合物が好ましく、白金化合物がより好ましく、白金−ビニルシロキサン錯体が更に好ましい。
【0027】
成分Cは、適切な硬化速度の確保の観点から、成分Aの配合重量に対して、白金族金属原子換算で、好ましくは0.1〜1000重量ppm、より好ましくは0.5〜200重量ppmである。
【0028】
成分Dは、接着付与剤であり、アルコキシシラン類が挙げられる。例えば、1,1,3,5,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサンと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物を使用することができる。
【0029】
具体的には、下記式:
【化1】


(式中、Q1およびQ2は、互いに独立して、アルキレン基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R3は、炭素数1〜4のアルキル基を表す)で示される側鎖を有するアルコキシシラン類が好ましい。
【0030】
このようなアルコキシシラン類としては、下記の化合物が挙げられる。
【化2】

【0031】
成分Dは、適切な接着性確保の観点から、成分A100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2重量部である。
【0032】
本発明の組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化遅延剤、無機質充填剤等を配合してもよい。硬化遅延剤としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールのようなアセチレン化合物、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのような、環ケイ素原子にビニル基が結合したビニル基含有環状シロキサン等が挙げられる。無機質充填剤としては、煙霧質シリカ、アークシリカのような乾式微粉末シリカが例示され、煙霧質シリカが好ましい。また、このようなシリカの表面を、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンのようなシラザン化合物;オクタメチルシクロテトラシロキサンのようなポリオルガノシロキサン等で処理したものであってもよい。
【0033】
本発明の組成物は、成分A、B1、B2、C、D及びさらに必要に応じて配合される他の成分を、万能混練機、ニーダーなどの混合手段によって均一に混練して調製することができる。
【0034】
本発明の組成物は、23℃における粘度が、300〜10000cPであり、1500cP超が好ましい。例えば、2000〜10000cPとすることができる。
【0035】
本発明の組成物は、50〜80℃の加熱温度で、硬化させることができる。加熱時間は、適宜、設定することができるが、例えば、0.1〜3時間とすることができる。
【0036】
本発明の組成物は、硬化後のE硬度が10〜40であり、好ましくは10〜37である。その際の硬化条件は、70℃、1時間とすることができる。E硬度をこの範囲にすることによって、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間で、組成物を熱硬化させた後、外部からの応力を適度に緩和して対変形性を確保し、視認性を確保することができる。E硬度は、成分B1と成分B2との割合を通して、調整することができる。本発明におけるE硬度は、JIS K 6253 Eに準拠して測定した値とする。
【0037】
本発明の組成物は、画像表示部の基部に塗布し保護部を合わせ、乾燥機などを用いて加熱を行い硬化させることにより、画像表示装置の基部と透光性の保護部とを接着させることができる。画像表示部の基部には、必要に応じて外周縁部に組成物の流出を妨げるための段差を設けてもよい。本発明の組成物は、硬化収縮率が小さいため、画像表示部(パネル)が、好ましくは5〜100インチの大画面画像表示装置の製造に好適である。
【実施例】
【0038】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
表1に示す組成で、各成分を、手混ぜで混練することにより、実施例及び比較例の各組成物を調製した。
【0039】
使用した各成分は、以下のとおりである。
A−1:両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサン(23℃での粘度4600cP)
A−2:両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサン(23℃での粘度10000cP)
A−3:両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサン(23℃での粘度20000cP)
B1:両末端がジメチルハイドロジェンシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルハイドロジェンシロキサン(23℃での粘度20cP)
B2:平均単位式が[H(CHSiO1/2[SiO4/2 (有効水素量1%)
C:塩化白金酸を1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとモル比1:2で加熱することによって得られ、白金含有量が2重量%である錯体。
D:1,1,3,5,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサンと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物
E:3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール
【0040】
物性の評価は、下記のようにして行った。結果を、表1に示す。
(1)粘度
回転粘度計(ビスメトロン VDA−L)(芝浦システム株式会社製)を用いて、60rpm(ただし、比較例4は、30rpm)、ローターNo.4の条件で、23℃における粘度を測定した。
【0041】
(2)硬化後のE硬度
実施例及び比較例の組成物を、テフロン(登録商標)コートされた金型上に、厚さ6mmとなるように塗布した後、70℃、1時間で加熱硬化させた。
JIS K 6253 Eに準拠し、DUROMETER HARDNESS TYPE E(ASKER製)にて23℃における硬化物のE硬度を測定した。
【0042】
(3)部材とのぬれ性
5cm角の清浄な、中性洗剤で洗浄して乾燥したガラス板中央上に、10mlの容器から2gの組成物をたらし、ガラスの端まで広がる時間で評価した。温度23℃、湿度50%で評価した。5秒以内にガラスの端部に達した場合又10分以上かかってガラスの端部に達した場合を×、5秒〜10分にガラスの端部に達した場合を○とした。
【0043】
(4)高温時の変色
実施例及び比較例の組成物を200μm厚となるように、2枚の1mm厚のガラス板の間に塗布し、70℃、1時間で加熱硬化させた試料を85℃の高温条件に設定した恒温恒湿層に500時間放置後、23℃の状態に戻した後に、変色の度合いの指標であるイエローインデックスを分光測式計((株)ミノルタ製CM−3500d)によって評価を行なった。イエローインデックスが1.0未満であれば○、イエローインデックスが1.0以上であれば×とした。
【0044】
(5)高湿時の変化
実施例及び比較例の組成物を0.2mm厚となるように、0.6mm厚の3インチのガラスパネルと0.5mm厚の3インチのPMMAパネルの間に塗布し、70℃、1時間で加熱硬化させた。試料を85℃、85%RHの高温多湿条件に設定した恒温恒湿層に500時間放置後、23℃、50%RHの状態に戻した後に、試料の状態を観察した。硬化物に、剥離や樹脂割れが生じている場合を×、これらの剥離や樹脂割れが全く認められない場合を○とした。
【0045】
(6)ヒートショック
実施例及び比較例の組成物を0.2mm厚となるように、0.6mm厚の3インチのガラスパネルと0.5mm厚の3インチのPMMAパネルの間に塗布し、70℃、1時間で加熱硬化させた。試料を−50℃から125℃までの温度サイクル300回(各温度30分間保持)にて環境試験を行なった(機器名:エスペック株式会社製TSA−71S−A)。
その後、23℃の状態に戻した後、硬化物の状態を観察した。硬化物に、0.02mm以上のクラック及び/若しくは最大径0.02mm以上の空気層が生じている場合を×、これらのクラック、空気層、損傷が全く認められない場合を○とした。
【0046】
(7)硬化収縮率
組成物の硬化前の比重を比重カップにより測定し、硬化後の比重を電子比重計(MIRAGE社製SD−120L)により測定し、下記式より双方の比重差から算出した。
硬化収縮率(%)=(硬化後の比重−硬化前の比重)/ 硬化後の比重)×100 比重差が、1%未満であれば○、1%以上であれば×とした。
【0047】
(8)点押し試験
実施例及び比較例の組成物を0.2mm厚となるように、0.6mm厚の3.5インチのガラスパネルと0.5mm厚の3.5インチのPMMAパネルの間に塗布し、70℃、1時間で加熱硬化させた。
試料のPMMA板側を上側にして、その上を直径10mmの半円状の先端部を持つ金属棒を所定の荷重7.5mm/分の速度にて試料を10kgfまで加圧する。
1つの試料について、3.5インチ内を略均等に5箇所を上記の条件で加圧する。
この加圧により、加圧箇所の硬化物に微細なクラックが生じたり、ガラス板又はPMMA板と硬化物の間に剥離が生じる。クラック又は剥離の存在は白く変色することで、加圧箇所の外観が、非加圧箇所に比べて変化する。この外観の変化を目視で確認し、1つの試料について1カ所以上外観の変化が確認されなかったら○、1つの試料について1カ所以上外観の変化が確認されたら×とした。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例の各組成物は、部材とのぬれ性がよく、硬化収縮率が小さく、硬化後に、耐衝撃性に優れ、かつ高温下での信頼特性も良好である。
E硬度が本発明の範囲外である比較例1及び2は、高温下での信頼性に欠け、耐衝撃性にも劣っていた。組成物の粘度が本発明の範囲外である比較例4は、部材とのぬれ性に劣っていた。これらから、本発明の組成物が、画像表示装置の製造に好適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物は、ブラウン管、液晶、プラズマ、有機EL等の画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との接着において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との接着に使用する熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、
両末端のケイ素原子にアルケニル基を有する、直鎖状ポリオルガノシロキサン(成分A)、
両末端のケイ素原子に水素原子を有する、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分B1)、
一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有する、直鎖状、分岐状又は環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分B2)、
白金系触媒(成分C)、及び
接着付与剤(成分D)
を含み、
成分Aのアルケニル基の個数Viに対する、成分B1の水素原子の個数HB1と成分B2の水素原子の個数HB2との和である個数(HB1+HB2)の比が0.2〜1.2であり、
B1が、HB1+HB2に対して0.1〜0.8であり、
組成物の23℃における粘度が、300〜10000cPであり、
70℃、1時間の条件で熱硬化させた硬化物のE硬度が、10〜40である、
熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
23℃における粘度が、2000〜10000cPである、請求項1記載の熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
成分Dが、アルコキシシランである、請求項1又は2記載の熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の熱硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を用いて、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部とを接着した画像表示装置。

【公開番号】特開2012−144705(P2012−144705A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266621(P2011−266621)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】