説明

熱硬化型樹脂の成形装置及び方法

【課題】成形物が大型化又は長尺化した場合においても生産効率の低下を伴うことなく良好な樹脂硬化を達成することができる熱硬化型樹脂の成形装置及び方法を提供する。
【解決手段】炉内温度を制御する炉内温度制御部11を備える常圧の炉12と、前記炉12内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物13に成形する上型14−1と下型14−2からなる金型14と、前記金型14の形状に応じて温度制御する3つの金型温度制御部15−1〜15−3と、前記炉12内、金型14、成形物13の各温度を計測する炉内温度計T1、上型温度計T2、下型温度計T3、成形物温度計T4と、前記各温度計T−1〜T−4の情報により各温度制御部15−1〜15−3を制御する制御部16とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大型船舶構造物部材、大型航空・宇宙構造物部材、大型厚肉成形物の樹脂成形物の生産効率を向上させることができる熱硬化型樹脂の成形装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂と強化繊維が複合する熱硬化性強化複合材は、その用途が多方面に拡大している。その用途として、船体構造物、航空機構造物、風車翼のような大型構造物に対する適用が注目されている。熱硬化樹脂系複合材料の成形技術として、加圧下で加熱するオートクレーブ成形が知られている。
【0003】
複合材料のオートクレーブ成形過程は、昇温工程と、温度保持工程と、冷却工程とからなる。図76は、前記オートクレーブ成形過程の標準的な樹脂硬化の温度サイクルを例示している。硬化過程では、一般的に発熱的化学反応が生じている。熱硬化材料は、オートクレーブの中の環境温度に基づく加熱と自己発熱に基づく加熱とを受けることとなる。
【0004】
このような両加熱が複合して、図7の破線に示されるように、過加熱に基づく過昇温現象が生じる可能性がある。このような過昇温は、成形後のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics :炭素繊維強化プラスチック)又はGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)の強度の低下要因となる。過昇温実験によれば、圧縮強度と層間せん断強度が低下することが知られている。昇温速度が遅くなれば過昇温は回避されるが、昇温速度が遅くなれば成形時間が長くなる、という生産効率の低下が懸念される。
【0005】
このため、従来は、例えば図8に示すように、オートクレーブ炉100内の温度計T1の計測値に加えて、成形物102に取り付けられた温度計T2の計測値に基づいてガス温度制御が行われ、成形対象物が望ましい温度に保たれる「物温制御」が一般に実行されている(特許文献1)。なお、図中、103は金型、104はバグフィルム、105はシーラント、106はオートクレーブ制御装置を各々図示する。
【0006】
【特許文献1】特開2004−82644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、成形対象物が厚板の場合には単位面積あたりの発熱量が大きくなって、オートクレーブの冷却能力では十分に制御することができない可能性がある。
【0008】
また、一体成形物内で板厚が大きく異なる場合には、場所による温度ムラによって、残留応力による強度低下や反り等が生じる可能性がある。このような問題は厚板部に合わせた炉内温度制御とすることで抑止することになるため、生産効率低下は避けられない。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、成形物が大型化又は長尺化した場合においても生産効率の低下を伴うことなく良好な樹脂硬化成形を達成することができる熱硬化型樹脂の成形装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、炉内温度を制御する炉内温度制御部を備える炉と、前記炉内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物に成形する金型と、前記金型の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上の金型温度制御部と、前記炉内、金型、成形物の各温度を計測する温度計と、前記各温度計の情報により各温度制御部を制御する制御部とを具備することを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記金型の温度を計測する金型温度計及び前記成形物の温度を計測する成形物温度計の総数が、前記金型温度制御部の数と対応していることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0012】
第3の発明は、炉内温度を制御する炉内温度制御部を備える炉と、前記炉内に設けられ、熱硬化型樹脂をダミー成形物に成形するダミー用金型と、前記ダミー用金型の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上のダミー用金型温度制御部と、前記炉内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物に成形する製品用金型と、前記製品用金型の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上の製品用金型温度制御部と、前記炉内、ダミー用金型及び製品用金型、ダミー成形物の各温度を計測する温度計と、前記各温度計の情報により各温度制御部を制御する制御部とを具備することを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記ダミー用金型及び製品用金型の温度を計測する温度計及び前記ダミー成形物の温度を計測するダミー成形物温度計の総数が、前記金型温度制御部の数と対応していることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0014】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記金型温度制御部が金型の裏面側に設けてなることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0015】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記金型が上型と下型とからなり、金型温度制御部が上型又は下型のいずれか一方もしくは両方に設けてなることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0016】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、前記炉がオートクレーブであることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0017】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、前記成形物が大型船舶構造物部材、大型航空・宇宙構造物部材、大型厚肉成形物のいずれかであることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置にある。
【0018】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの熱硬化型樹脂の成形装置を用い、金型の形状又は厚みに応じて金型温度制御部の温度を制御しつつ成形物を成形することを特徴とする熱硬化型樹脂の成形方法にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一体成形物内で厚さが大きく異なっていても、各肉厚部位に温度管理する温度制御部を設置することにより、生産効率の低下を招くことなく、成形物を成形することができる。更に、炉内のガス温度が場所によりバラツキがあるような場合においても、その影響を受けることがなく、適切な温度管理により、残留応力による強度低下や反り等が少ない良質な樹脂硬化品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例1に係る熱硬化型樹脂の成形装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係る熱硬化型樹脂の成形装置を示す概念図である。
図1に示すように、本実施例に係る熱硬化型樹脂の成形装置10Aは、炉内温度を制御する炉内温度制御部11を備える常圧の炉12と、前記炉12内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物13に成形する上型14−1と下型14−2からなる金型14と、前記金型14の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上の金型温度制御部(本実施例では3つ)15−1〜15−3と、前記炉12内、金型14、成形物13の各温度を計測する炉内温度計T1、上型温度計T2、下型温度計T3、成形物温度計T4と、前記各温度計T1〜T4の情報により各温度制御部である炉内温度制御部15−1〜15−3を制御する制御部(CPU)16とを具備するものである。
本実施例では、成形物13の形状が三種類の肉厚を有しているので、それに対応して、下型14−2の裏面側に金型温度制御部として第1〜第3金型温度制御部15−1〜15−3が設けられている。
そして、第1〜第3の金型温度制御部15−1〜15−3に対応するように、3つの下型温度計T3−1〜T3−3と、3つの成形物温度計T4−1〜T4−3とが各々設置されている。
【0022】
また、前記温度制御部15−1〜15−3には温度状況に応じて金型を加熱又は冷却するための熱媒体21又は冷媒体22を、熱媒体供給部23又は冷媒体供給部24から適宜供給するようにしている。なお、図1においては、供給された熱媒体21又は冷媒体22の排出ラインは省略している。
【0023】
ここで、前記熱媒体21及び冷媒体22としては、液体(水、油等)、気体(スチーム、空気、窒素等)を用いることができる。なお、熱媒体21の代わりにヒータ等の加熱手段を適用するようにしてもよい。
【0024】
前記熱硬化型樹脂の成形装置を用いて、樹脂硬化する場合には、金型14内に設置された樹脂又は樹脂積層体に対して、炉12内温度を炉内温度制御部11で制御して硬化させる。この硬化の過程において、上型温度計T2、3つの下型温度計T3−1〜T3−3及び成形物温度計T4−1〜T4−3の情報を元に、制御部16で制御することにより、必要に応じて熱媒体供給部23又は冷媒体供給部24から熱媒体21や冷媒体22を前記第1〜第3金型温度制御部15−1〜15−3に供給して、個別に温度調節することができる。この結果、炉12内のガス温度が場所によりバラツキがあった場合においても、その形状に応じて個別に温度制御することができる。
【0025】
これにより、一体成形物内で厚さが大きく異なっていても、各肉厚部位毎に温度管理する金型温度制御部を設置することにより、生産効率の低下を抑止することができる。
更に、炉内のガス温度が場所によりバラツキがあるような場合においても、その影響を受けることがなく、適切な温度管理ができ、残留応力による強度低下や反り等が少ない良質な樹脂硬化品を製造することができる。
よって、本実施例のような製造装置を適用することで、複雑な形状を有する大型品において、残留応力による強度低下や反り等が少ない良質な樹脂硬化品を製造することができ、製品品質の向上を図ることができる。
【0026】
本発明の成形物としては、その大きさを問うものではないが、特には、前記成形物が大型船舶構造物部材、大型航空・宇宙構造物部材、大型厚肉成形物のいずれかとすることで、従来における大型成形物の硬化収縮(硬化時の樹脂の収縮。繊維は収縮しないため残留応力発生)と熱収縮(硬化温度から常温へ移行する際の収縮。繊維と樹脂の線膨張係数の違いから残留応力発生)が場所によって異なることで生じる強度低下や反り等の発生を低減することとなる。
【0027】
例えば、図6に示すような20〜50mの長さの大型風車の風車翼50を製造する場合においても、金型の裏面側に例えば1〜2m毎に温度制御部を各々設置して個別の温度制御を適切に行うことができる。
【0028】
この結果、熱硬化樹脂の硬化作業において適切な昇温条件とすることができるので、一体成形物内で板厚が大きく異なる場合や厚板の場合にも好適な成形方法を提供でき、成形時間が短縮され、生産効率の向上を図ることができる。
【0029】
樹脂の硬化法としては、流動性樹脂を型内に導入して反応熱または加熱によって硬化する方法や型の上にプリプレグシートを積層したものを加熱硬化する方法等が公知の樹脂硬化方法として知られており、本実施例を適用することができる。また、上型の代わりに、バグフィルムを用いるようにしてもよい。
【実施例2】
【0030】
本発明による実施例2に係る熱硬化型樹脂の成形装置について、図面を参照して説明する。
図2は、実施例2に係る熱硬化型樹脂の成形装置を示す概念図である。なお、図1に示した実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る熱硬化型樹脂の成形装置10Bは、上型14−1に対しても第1〜第3の金型温度制御部15−1〜15−3を設置したものである。
【0031】
そして、実施例1に加えて3つの上型温度計T2−1〜T2−3による温度情報をもとにして、第1〜第3の金型温度制御部15−1〜15−3により適切な管理をすることで、成形物13の形状に応じたきめ細かな制御を行うことができる。
【実施例3】
【0032】
本発明による実施例3に係る熱硬化型樹脂の成形装置について、図面を参照して説明する。
図3は、実施例3に係る熱硬化型樹脂の成形装置を示す概念図である。なお、図1に示した実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る熱硬化型樹脂の成形装置10Cは、実施例1の炉12に代えて圧力制御部32を有するオートクレーブ31としたものである。
これにより、オートクレーブ加圧条件においても、成形物13の形状に応じたきめ細かな制御を行うことができる。
【実施例4】
【0033】
本発明による実施例4に係る熱硬化型樹脂の成形装置について、図面を参照して説明する。
図4は、実施例4に係る熱硬化型樹脂の成形装置を示す概念図である。なお、図1に示した実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、本実施例に係る熱硬化型樹脂の成形装置10Dは、ダミー成形物13Aと製品成形物13Bとを同一の炉12内においてそれぞれの金型(ダミー用金型14A、製品用金型14B)を用いて製造するものである。
【0034】
すなわち、図4に示すように、炉12内温度を制御する炉内温度制御部11を備える炉12と、前記炉12内に設けられ、熱硬化型樹脂をダミー成形物13Aに成形するダミー用金型14Aと、前記ダミー用金型14Aの形状に応じて温度制御する少なくとも2以上(本実施例では3つ)のダミー用の第1〜第3の金型温度制御部15A−1〜15A−3と、前記炉12内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物13Bに成形する製品用金型14Bと、前記製品用金型14Bの形状に応じて温度制御する少なくとも2以上(本実施例では3つ)の製品用の第1〜第3の金型温度制御部15B−1〜15B−3と、前記炉12内、ダミー用金型14A及び製品用金型14B、ダミー成形物13Aの各温度を計測する炉内温度計T1、上型温度計T2、下型温度計T3、ダミー成形物温度計T5と、前記各温度計T1〜T3,T5の情報により各金型温度制御部15A−1〜15A−3、15B−1〜15B−3を制御する制御部16とを具備するものである。
【0035】
前記ダミー用金型14Aは製品形状と同一又は縮尺のもの又は製品形状を模擬したダミー成形物13Aを成形するものとすることができる。また製品の複数種類の厚みに対応した型としてもよい。通常は、製品の複数種類の厚みに対応した小型のものがよい。
【0036】
本実施例では、ダミー成形物13A(製品成形物13Bとは別に例えば数種類の板厚の積層物)を別途炉12内に設置し、そのダミー成形物13A内部温度や硬化度、並びにダミー用金型14Aの温度をリアルタイムに計測し、その計測結果に応じて温度制御部15A−1〜15A−3、15B−1〜15B−3を制御することで、製品成形物13Aの温度を計測せずに、温度制御を行うことができる。
【0037】
すなわち、製品成形物13Bの形状や厚さに応じたダミー成形物の硬化状況を把握することで、製品成形物13Bの状況を予測することができ、製品成形物の形状に対応したダミー成形物の部位の温度制御と同様な制御をすることで、良好な製品成形物の製造を行うことができる。
【0038】
また、リアルタイムの型温度制御により製品成形物13Bの温度制御が迅速になり、過昇温現象を抑止することができる。
また、一体成形物内で板厚が大きく異なっても、各板厚部位毎に温度制御するため生産効率の低下を抑止することができる。
【0039】
さらに、ダミー成形物13Aを用いることで、製品成形物13Bに温度計の温度センサー跡などの傷をつけることがなく、製品品質の向上を図れる。
【実施例5】
【0040】
本発明による実施例5に係る熱硬化型樹脂の成形装置について、図面を参照して説明する。
図5は、実施例5に係る熱硬化型樹脂の成形装置を示す概念図である。なお、図1に示した実施例1乃至4と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係る熱硬化型樹脂の成形装置10Eは、ダミー部Aと製品部Bとからなり、ダミー成形物13Aと製品成形物13Bとを異なる炉12Aと12B内においてそれぞれの金型(ダミー用金型14A、製品用金型14B)を用いて製造するものである。
【0041】
すなわち、図5に示すように、熱硬化型樹脂の成形装置10Eは、炉内温度を制御する炉内温度制御部11Aを備えるダミー用炉12Aと、前記炉12A内に設けられ、熱硬化型樹脂をダミー成形物13Aに成形するダミー用金型14Aと、前記ダミー用金型14Aの形状に応じて温度制御する少なくとも2以上(本実施例では3つ)のダミー用の第1〜第3の金型温度制御部15A−1〜15A−3と、前記炉12A、ダミー用金型14A及びダミー成形物13Aの各温度を計測する炉内温度計T1A、上型温度計T2A、下型温度計T3A、ダミー成形物温度計T5とからなるダミー部Aと、炉内温度を制御する炉内温度制御部11Bを備える製品用炉12Bと、前記炉12B内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物13Bに成形する製品用金型14Bと、前記製品用金型14Bの形状に応じて温度制御する少なくとも2以上(本実施例では3つ)の製品用の第1〜第3の金型温度制御部15B−1〜15B−3と、前記炉12B、製品用金型14B及び製品成形物13Bの各温度を計測する炉内温度計T1B、上型温度計T2B、下型温度計T3Bとからなる製品部Bと、前記各温度計T1A〜T3A,T5、T1B〜T3B,T5の情報により各金型温度制御部15A−1〜15A−3、15B−1〜15B−3を制御する制御部16とを具備するものである。
【0042】
前記ダミー用金型14Aは製品形状と同一又は縮尺のもの又は製品形状を模擬したダミー成形物13Aを成形するものとすることができる。また製品の複数種類の厚みに対応した型としてもよい。通常は、製品の複数種類の厚みに対応した小型のものがよい。
【0043】
本実施例では、ダミー成形の成形過程を製品成形より時間差を設けて早く開始し、ダミー成形物13A(製品成形物13Bとは別に例えば数種類の板厚を有する小型の積層物)を小型のダミー用炉12A内に設置し、そのダミー成形物13A内部温度や硬化度、並びにダミー用金型14Aの温度をリアルタイムに計測し、その計測結果を製品成形過程のフィードフォワード制御に用いて、製品成形物13Aに対して過昇温を未然防止しつつ、製品用の炉内温度制御部11Bと金型温度制御部15Bの温度制御を行うことができる。
【0044】
すなわち、製品成形物13Bの形状や厚さに応じたダミー成形物13Aの温度状況や硬化状況を事前に把握することで、製品成形物13Bの未来の状況を予測することができ、製品成形物の形状に対応したダミー成形物の部位の温度計測結果に基づき、製品部Bの温度をフィードフォワード制御することで、良好な製品成形物の製造を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る熱硬化型樹脂の成形装置は、成形物の形状に応じた温度制御を行うようにするので、生産効率を低下させずに反応熱による温度の異常上昇と硬化収縮と熱収縮による残留応力が場所によって異なることで生じる強度低下や反り等を抑制することができ、大型の樹脂構造物の製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1に係る熱硬化型樹脂の成形装置の概略図である。
【図2】実施例2に係る熱硬化型樹脂の成形装置の概略図である。
【図3】実施例3に係る熱硬化型樹脂の成形装置の概略図である。
【図4】実施例4に係る熱硬化型樹脂の成形装置の概略図である。
【図5】実施例5に係る熱硬化型樹脂の成形装置の概略図である。
【図6】熱硬化型樹脂からなる風車翼の概略図である。
【図7】樹脂成形における昇温、温度保持、冷却における時間と温度との関係図である。
【図8】従来技術に係る熱硬化型樹脂の成形装置の概略図である。
【符号の説明】
【0047】
11 炉内温度制御部
11A ダミー用炉内温度制御部
11B 製品用炉内温度制御部
12 炉
12A ダミー用炉
12B 製品用炉
13 成形物
13A ダミー成形物
13B 製品成形物
14 金型
14A ダミー用金型
14B 製品用金型
15 温度制御部
15A ダミー用温度制御部
15B 製品用温度制御部
16 制御部(CPU)
31 オートクレーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内温度を制御する炉内温度制御部を備える炉と、
前記炉内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物に成形する金型と、
前記金型の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上の金型温度制御部と、
前記炉内、金型、成形物の各温度を計測する温度計と、
前記各温度計の情報により各温度制御部を制御する制御部とを具備することを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記金型の温度を計測する金型温度計及び前記成形物の温度を計測する成形物温度計の総数が、前記金型温度制御部の数と対応していることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項3】
炉内温度を制御する炉内温度制御部を備える炉と、
前記炉内に設けられ、熱硬化型樹脂をダミー成形物に成形するダミー用金型と、
前記ダミー用金型の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上のダミー用金型温度制御部と、
前記炉内に設けられ、熱硬化型樹脂を成形物に成形する製品用金型と、
前記製品用金型の形状に応じて温度制御する少なくとも2以上の製品用金型温度制御部と、
前記炉内、ダミー用金型及び製品用金型、ダミー成形物の各温度を計測する温度計と、
前記各温度計の情報により各温度制御部を制御する制御部とを具備することを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ダミー金型及び製品金型の温度を計測する温度計及び前記ダミー成形物の温度を計測するダミー成形物温度計の総数が、前記金型温度制御部の数と対応していることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記金型温度制御部が金型の裏面側に設けてなることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記金型が上型と下型とからなり、金型温度制御部が上型又は下型のいずれか一方もしくは両方に設けてなることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
前記炉がオートクレーブであることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記成形物が大型船舶構造物部材、大型航空・宇宙構造物部材、大型厚肉成形物のいずれかであることを特徴とする熱硬化型樹脂の成形装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つの熱硬化型樹脂の成形装置を用い、金型の形状又は厚みに応じて金型温度制御部の温度を制御しつつ成形物を成形することを特徴とする熱硬化型樹脂の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−334831(P2006−334831A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159759(P2005−159759)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】