説明

熱硬化性オリゴマーまたはポリマー、これを含む熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたプリント配線板

【課題】剛性、加工性、耐熱性および機械的物性だけでなく、溶解性、湿潤性および寸法安定性に優れていて、フィルム、プリプレグおよびプリント配線板の製造に有用に使用されることができる熱硬化性オリゴマーまたはポリマー、これを含む熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】側鎖に熱硬化性官能基を有する化学式(1)で表される繰り返し単位を含む熱硬化性オリゴマーまたはポリマー、これを含む熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたプリント配線板。


式中、Zは熱硬化性官能基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性オリゴマーまたはポリマー、これを含む熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたプリント配線板に関し、詳細には、樹脂の熱硬化によって熱膨張係数が低く、ガラス転移温度が高いまたは示されないことにより、耐熱性、機械的物性および寸法安定性が改善した熱硬化性オリゴマーまたはポリマー、これを含む熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信技術の発達により、コンピュータと通信機器とが一体化され、社会はますます高度な情報通信化を遂げている。また、携帯電話、パソコンなどの電子機器が小型化、高性能化されることによって、これらに不可欠な電子デバイスであるプリント配線板の高密度集積化が進んでいる。プリント配線板の高密度集積化は、基板の多層化、薄化、スルーホールの直径および間隔の微小化によって達成されうる。このような背景から、より高性能な基板素材が求められている。
【0003】
コンピュータなどの電子情報機器では、大量の情報を短時間に処理するために、高い動作周波数が用いられるが、一方で、動作周波数を高くすることによって伝送損失および信号遅延が生じるという問題点があった。この問題を解決するためには、低誘電率および低損失正接を有する銅張り積層板が必要であった。一般的に、プリント配線板における信号遅延は配線周囲の絶縁物の比誘電率の平方根に比例して増加するため、高い伝送速度を要する基板の材料としては、誘電率の低い樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0004】
しかしながら、現在、最も汎用されているBT(Bismaleimide Triazine)樹脂またはFR−4銅張り積層板は、4.5〜5.5程度の比較的大きな誘電率を有しているため、伝送損失および信号遅延が大きくなるという問題を有していた。また、このような基板素材は、今後のパッケージング技術で要求されうる優れた機械的物性、高耐熱性、低熱膨張性、低吸湿性を満足することは困難なため、次世代基板に求められる特性を具備した新しい基板素材の開発が望まれていた。
【0005】
これに対して、最近では、液晶高分子(Liquid Crystal Polymer、LCP)樹脂を使用する技術が研究されている。特に、熱可塑性液晶高分子の場合、現在軟性および硬軟性基板材料であるフレキシブル銅張り積層板として用いられているポリイミド(PI)を代替できる材料として脚光を浴びているが、その理由は、ポリイミドの短所である高い水分吸収率、寸法不安定性、高誘電率および高誘電損失値を解決することができるためである。また、液晶高分子樹脂は、高周波(High Frequency、GHz)においても低誘電率および低誘電損失値を有するため、電気的特性にも優れている。
【0006】
このような液晶高分子の場合、誘電率と誘電損失値とが非常に低いという優れた電気的特性および低い熱膨張係数(CTE)を有していることから、軟性および硬軟性基板材料および層間絶縁材料に適用するための研究が活発に行われている。
【0007】
しかしながら、液晶高分子は、単独で使用する場合、剛性が低く、耐熱性が不十分であることにより、半導体プリント配線板に適用しにくいという問題点がある。すなわち、液晶高分子を使用してプリント配線板を製造するためにプリプレグを製造する過程またはプリプレグに銅箔を積層する過程において、溶融性液晶高分子の場合は加工性が低いという問題点があり、可溶性液晶高分子の場合にはガラス転移温度が低く、加工温度が高いだけでなく固形成分の粘度が高いため、含浸性が低く、銅箔の表面に対する湿潤性が良くないため、強い接着強度を達成しにくいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開特許 WO2002−22706 A1
【特許文献2】米国特許 5,198,551
【特許文献3】特開平11−092647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、熱膨張係数が低く、ガラス転移温度が高いまたは示されないことにより、耐熱性、機械的物性および寸法安定性が改善された熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを含む熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを用いたフィルムまたはプリプレグを提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを用いたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の一つの態様は、側鎖に熱硬化性官能基を有する下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含む熱硬化性オリゴマーまたはポリマーに関する。
【0014】
【化1】

【0015】
前記化学式(1)中、
は、置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のアルキニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキニレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリーレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルケニレン基および置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキニレン基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
およびYは、それぞれ独立して、COO、O、CONR’、NR’’およびCOからなる群より選択される少なくとも一種であり、ここでR’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基および置換または非置換のC〜C30のアリール基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Lは、単一結合であるか、あるいは置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシアリーレン基、O、COOおよびCONR’’’からなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、ここでR’’’は、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Zは、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換の脂環族基、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換のアリール基、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性官能基であり、
nは、1〜4の整数である。
【0016】
また、本発明の他の態様は、前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを含む熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明の別の態様は、前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを用いて製造されたフィルムまたはプリプレグに関する。
【0018】
また、本発明の別の態様は、前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを用いて製造されたプリント配線板に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、熱による硬化特性を有して、熱膨張係数が低く、ガラス転移温度が高いかあるいは示されないことにより、剛性、加工性、耐熱性および機械的物性だけでなく、溶解性、湿潤性、形態維持製および寸法安定性に優れていて、プリプレグおよびプリント配線板の製造に有用に使用されることができる。
また、本発明による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを応用して各種のプリント配線板の製造に使用する場合、製造費用を節減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例3で製造された重合体のDSC曲線を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例4で製造された重合体のDSC曲線を示すグラフである。
【図3】図3は、比較例1で製造された重合体のDSC曲線を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例7で製造されたプリプレグのTMA曲線を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例12で製造されたフィルムのDSC曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明において、特別な言及がない限り、「置換」とは、ハロゲン原子、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、C〜C30のアリール基およびC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される置換基を意味する。
【0023】
本発明において、特別な言及がない限り、「アルキル基」、「アルケニル基」、「アルキニル基」、「アルキレン基」、「アルケニレン基」、「アルキニレン基」、「シクロアルキレン基」、「シクロアルケニレン基」、「シクロアルキニレン基」、「アルコキシ基」および「アルコキシレン基」とは、それぞれC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアルキニル基、C〜C20のアルキレン基、C〜C20のアルケニレン基、C〜C20のアルキニレン基、C〜C20のシクロアルキレン基、C〜C20のシクロアルケニレン基、C〜C20のシクロアルキニレン基、C〜C20のアルコキシ基およびC〜C20のアルコキシレン基を意味し、また、「アリール基」、「アリーレン基」、「アリールオキシ基」および「オキシアリーレン基」とは、それぞれC〜C30のアリール基、C〜C30のアリーレン基、C〜C30のアリールオキシ基およびC〜C30のオキシアリーレン基を意味する。
【0024】
本発明において、特別な言及がない限り、「ヘテロアリーレン基」および「オキシヘテロアリーレン基」とは、それぞれアリーレン基の環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されたヘテロアリーレン基およびオキシヘテロアリーレン基を意味し、また、「ヘテロシクロアルキレン基」、「ヘテロシクロアルケニレン基」および「ヘテロシクロアルキニレン基」とは、それぞれシクロアルキレン基、シクロアルケニレン基およびシクロアルキニレン基の環内に存在する少なくとも1つのCH、CHおよびCがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されたヘテロシクロアルキレン基、ヘテロシクロアルケニレン基およびヘテロシクロアルキニレン基を意味する。
本発明の一実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含む構造を有する。
【0025】
【化2】

【0026】
前記化学式(1)中、
は、置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のアルキニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキニレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリーレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルケニレン基および置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキニレン基からなる群より選択される少なくとも一種からであり、
およびYは、それぞれ独立して、COO、O、CONR’、NR’’およびCOからなる群より選択される少なくとも一種であり、ここでR’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基および置換または非置換のC〜C30のアリール基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Lは、単一結合であるか、あるいは置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシアリーレン基、O、COOおよびCONR’’’からなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、ここでR’’’は、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Zは、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換の脂環族基、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換のアリール基、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性官能基であり、
nは0〜4の整数であり、好ましくは、nは1〜4の整数であり、化学式(1)における(−L−Z)は、上記例示したAの置換の基である。
【0027】
本発明の一実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、上述したように、側鎖に熱硬化性官能基を有する繰り返し単位からなり、このような熱硬化性官能基は、高温硬化処理によって互いに架橋されて堅固な網目形態の安定した構造を形成するため、熱膨張係数が非常に低く、ガラス転移温度が高いかあるいは示されないことにより、プリント配線板に適用する場合、機械的物性を向上させるだけでなく信号遅延の防止などの優れた電気的特性を有することができる。
【0028】
本発明に係る「アルキル基」は、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。好ましいアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル基などの炭素数1〜6(特に、炭素数1〜4)程度のアルキル基が含まれる。
【0029】
本発明に係る「アルケニル基」は、ビニル、アリル、イソプロペニル、2−メチルアリル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、2−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る「アルキニル基」は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等が挙げられる。
【0031】
本発明に係る「アルキレン基」は、−CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)CH−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−(CH(CH))−、−(CHC(CH−、−CHC(CHCH−、−CH(CHCH)(CH−、−(CHC(CH−、−(CHCH(CH)CH−)等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る「アルケニレン基」は、−CH=CH−、−CH−CH=CH−、−C(CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH−CH−CH−等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る「アルキニレン基」は、−C≡C−、−CH−C≡C−、−CH−C≡C−CH−CH−等が挙げられる。
【0034】
本発明に係る「シクロアルキル基」は、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル等が挙げられる。
【0035】
本発明に係る「シクロアルケニル基」としては、例えば1−シクロブテン−1−イル、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル等が挙げられる。
【0036】
本発明に係る「シクロアルキレン基」は、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン等が挙げられる。
【0037】
本発明に係る「シクロアルケニレン基」は、シクロプロペニレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン等が挙げられる。
【0038】
本発明に係る「アルコキシ基」は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0039】
本発明に係る「アルコキシレン基」は、エトキシレン、2−メチルエトキシレン、プロポキシレン、ブトキシレン、ペントキシレン、ドデシルオキシレン、ヘキサデシルオキシレン等が挙げられる。
【0040】
本発明に係る「アリール基」は、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、キシリル、α−ナフチル、またはβ−ナフチル等が具体例として挙げられる。
【0041】
本発明に係る「アリーレン基」は、フェニレン、ビフェニル−ジイル、ターフェニル−ジイル、ナフタレン−ジイル、アントラセン−ジイル、テトラセン−ジイル、フルオレン−ジイル、フェナントレン−ジイルなどが挙げられ、ヘテロアリーレン基としては、例えば、ピリジン−ジイル、ピラジン−ジイル、キノリン−ジイル、イソキノリン−ジイル、アクリジン−ジイル、フェナントロリン−ジイル、フラン−ジイル、ピロール−ジイル、チオフェン−ジイル、オキサゾール−ジイル、オキサジアゾール−ジイル、チアジアゾール−ジイル、トリアゾール−ジイル、ベンゾオキサゾール−ジイル、ベンゾオキサジアゾール−ジイル、ベンゾチアジアゾール−ジイル、ベンゾトリアゾール−ジイル、ベンゾチオフェン−ジイルなどが挙げられる。
【0042】
本発明に係る「オキシアリーレン基」は、上記列挙したアリーレン基の2つの結合子のいずれか1つに酸素原子が結合した二価の基が挙げられる。
【0043】
本発明に係る「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノキシ基、2,6−ジフェニルフェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
本発明に係る脂環族基は、上記「シクロアルキル基」以外、ノルビニル、ノルボルニル基などのビシクロアルキル基;アダマンチル、トリシクロ[2.2.1.13,5]オクチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデシル基などのトリシクロアルキル基;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基などのテトラシクロアルキル基などが挙げられる。
【0045】
本発明の一実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、側鎖に熱硬化性官能基を有していない下記化学式(2)で表される繰り返し単位をさらに含むことができる。この場合、前記オリゴマーまたはポリマーは、前記化学式(1)の繰り返し単位と下記化学式(2)の繰り返し単位とが互いにランダム(random)、ブロック(block)または交互(alternative)の形態で配列されたオリゴまーまたはポリマーであることができる。
【0046】
【化3】

【0047】
前記化学式(2)中、
、XおよびYは、前記化学式(1)におけるA、XおよびYの定義と同様である。
【0048】
前記化学式(2)の繰り返し単位が本発明の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー内にさらに含まれる場合、本発明による化学式(1)の繰り返し単位は、本発明の熱硬化性オリゴマーまたはポリマーに対して0.1〜90モル%で含まれ、好ましくは5〜50モル%で含まれることができる。前記化学式(1)の繰り返し単位が0.1〜90モル%で含まれる場合、プリプレグ、フィルムまたは銅張り積層物(copper clad laminate)の形態に製造する際に低い熱膨張係数を付与するだけでなく成形体の柔軟性を維持してくれるという長所がある。
【0049】
また、本発明の一実施形態では、前記化学式(1)の繰り返し単位を含むオリゴまーまたはポリマーと前記化学式(2)の繰り返し単位を含むオリゴまーまたはポリマーとを混合して使用することができる。この場合、90:10〜30:70の質量比で混合されることができる。
【0050】
前記化学式(1)におけるAと前記化学式(2)におけるAは、それぞれ独立して、下記化学式(3)〜(5)で表されるアリーレン基からなる群より選択されることが好ましい。
【0051】
【化4】

【0052】
前記化学式(3)中、
は、0〜4の整数であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、nが2以上である場合、前記Rの各々の置換基は互いに異なることができ、
前記芳香族環は、環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されることができる。
【0053】
【化5】

【0054】
前記化学式(4)中、
およびnは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、n20は、0〜2の整数であり、
、RおよびR20は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、nおよびnがそれぞれ2以上である場合、前記R、RおよびR20の各々の置換基は互いに異なることができ、
lは、0〜3の整数であり、
前記芳香族環は、環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されることができる。
【0055】
【化6】

【0056】
前記化学式(5)中、
およびnは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、nおよびnがそれぞれ2以上である場合、前記RおよびRの各々の置換基は互いに異なることができ、
Wは、単一結合であるか、あるいはO、S、CO、SO、SO、置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C20のオキシアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシヘテロアリーレン基、CONR’、下記化学式(5a)で表される連結基、下記化学式(5b)で表される連結基および下記化学式(5c)で表される連結基からなる群より選択される少なくとも一種であり、ここでR’は、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記芳香族環は、環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されることができる。
【0057】
【化7】

【0058】
前記化学式(5a)中、
およびBは、それぞれ独立して、O、S、CO、SOおよびSOからなる群より選択される少なくとも一種の連結基である。
【0059】
【化8】

【0060】
前記化学式(5b)中、
およびBは、それぞれ独立して、O、S、CO、SOおよびSOからなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基である。
【0061】
【化9】

【0062】
前記化学式(5c)中、
Arは、下記化学式(5c−1)〜(5c−6)で表されるなくとも一種を含む4価のアリーレン基である。
【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
【化14】

【0068】
【化15】

【0069】
前記化学式(1)におけるAと前記化学式(2)におけるAは、それぞれ独立して、下記化学式(6)〜(15)で表されるアリーレン基からなる群より選択されることがより好ましい。
【0070】
【化16】

【0071】
【化17】

【0072】
【化18】

【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
【化23】

【0078】
【化24】

【0079】
【化25】

【0080】
前記化学式(1)の主鎖構造は、下記化学式(16)〜(26)で表される構造からなる群より選択されることが好ましい。また、前記化学式(2)の繰り返し単位も下記化学式(16)〜(26)で表される構造においてAがAに代替された構造からなる群より選択されることが好ましい。
【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
【化30】

【0086】
【化31】

【0087】
【化32】

【0088】
【化33】

【0089】
【化34】

【0090】
【化35】

【化36】

【0091】
前記化学式(1)におけるZは、下記化学式(27)〜(33)で表される熱硬化性官能基からなる群より選択されることが好ましい。
【0092】
【化37】

【0093】
前記化学式(27)中、
13およびn14は、それぞれ独立して、0〜6の整数であり、
13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、n13およびn14がそれぞれ2以上である場合、前記R13およびR14の各々の置換基は互いに異なることができ、
およびQは、それぞれ独立して、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数である。
【0094】
【化38】

【0095】
前記化学式(28)中、
およびnは、それぞれ1および0〜3の整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、nが2以上である場合、前記RおよびRの各々の置換基は互いに異なることができる。
【0096】
【化39】

【0097】
前記化学式(29)中、
は、0〜2の整数であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、nが2以上である場合、前記Rの各々の置換基は互いに異なることができる。
【0098】
【化40】

【0099】
前記化学式(30)中、
21およびn22は、それぞれ0〜8の整数および0〜6の整数であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、n21およびn22がそれぞれ2以上である場合、前記R21およびR22の各々の置換基は互いに異なることができ、
は、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数である。
【0100】
【化41】

【0101】
前記化学式(31)中、
15およびn16は、それぞれ0〜7の整数および0〜6の整数であり、
15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、n15およびn16がそれぞれ2以上である場合、前記R15およびR16の各々の置換基は互いに異なることができ、
およびQは、それぞれ独立して、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数である。
【0102】
【化42】

【0103】
前記化学式(32)中、
10およびn11は、それぞれ0〜9の整数および0〜6の整数であり、
10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、n10およびn11がそれぞれ2以上である場合、前記R10およびR11の各々の置換基は互いに異なることができ、
は、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数である。
【0104】
【化43】

【0105】
前記化学式(33)中、
17およびn18は、それぞれ0または1および2であり、
17は、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
それぞれのR18は、置換または非置換のC〜C20のアルキル基であり、互いに異なることができる。
【0106】
また、前記化学式(1)におけるZの他の好ましい例としては、アセチレン、プロパルギルエーテル、ベンゾシクロブテン、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0107】
本発明の一実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する構造であることができる。
【0108】
前記熱硬化性官能基は、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換の脂環族基、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換のアリール基、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であり、前記熱硬化性官能基の好ましい例としては、上述した前記化学式(1)におけるZの好ましい例である化学式(27)〜(33)で表される熱硬化性官能基が挙げられる。また、他の好ましい例としては、アセチレン、プロパルギルエーテル、ベンゾシクロブテン、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0109】
本発明の一実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーの数平均分子量は、好ましくは300〜300000、より好ましくは500〜200000であることが良い。このように、オリゴマーまたはポリマーの数平均分子量が300〜300000である場合、適切な架橋密度を有し、溶媒に対する溶解性に優れていて、プリプレグの製造のために網状支持体に含浸する際に高い固形分含有量を有することにより、優れた物性を確保することができる。
【0110】
本発明の一実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーの製造方法としては、特に制限されないが、好ましくは、溶融重合または溶媒重合による製造方法が挙げられる。
【0111】
前記溶融重合による製造方法を例を挙げて説明すると、本発明の熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、本発明の化学式(1)の繰り返し単位を提供する下記化学式(34)で表される熱硬化性基を含む単量体を製造し、前記単量体を単独で重縮合反応して製造されることができ、または前記単量体と熱硬化性基とを含まない芳香族、ヘテロ環または脂肪族ジカルボン酸単量体;芳香族、ヘテロ環または脂肪族ジオール単量体;芳香族、ヘテロ環または脂肪族ジアミン単量体;ヒドロキシ基を有するアミン単量体;およびヒドロキシ基を有するカルボン酸単量体からなる群より選択される少なくとも一種を含む混合物を加熱して重縮合反応して製造されることができる。
【0112】
【化44】

【0113】
前記化学式(34)中、
、L、Zおよびnは、それぞれ前記化学式(1)におけるA、L、Zおよびnの定義と同様であり、XおよびYは、それぞれ前記化学式(1)におけるXおよびYを誘導する反応性基である。
【0114】
一方、前記溶媒重合による製造方法を例を挙げて説明すると、本発明の熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、本発明の化学式(1)の繰り返し単位を提供する前記化学式(34)で表される熱硬化性基を含む単量体を製造し、前記単量体を一般的なアミドまたはエステル交換反応により、必要であれば塩基性触媒を添加して溶媒下で重合反応させて製造されることができ、または前記単量体に存在する全てのCOOH基がCOCl基で置換された単量体をジアミン化合物と溶媒下で重合反応させて製造されることができる。
【0115】
本発明の他の実施形態では、本発明のオリゴマーまたはポリマーを含む熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0116】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、フィルム、プリプレグおよびプリント配線板を製造するに非プロトン性極性溶媒をさらに含むことができる。
【0117】
前記非プロトン性溶媒の例としては、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのアセテート系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒;トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどのサルファイド系溶媒;ヘキサメチルリン酸アミド、リン酸トリ−n−ブチルなどのリン酸系溶媒;およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
このうち、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルカプロラクタム、γ−ブチルラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を使用することが好ましい。
【0119】
また、本発明による非プロトン性溶媒は、120〜250℃の沸点を有することが好ましい。
【0120】
本発明の一実施形態による熱硬化性樹脂組成物が前記非プロトン性溶媒をさらに含む場合、前記熱硬化性樹脂組成物は、溶媒100質量部に対して本発明の他の実施形態による熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを0.1〜300質量部含むことが好ましい。
【0121】
本発明の一実施形態による熱硬化性樹脂組成物は、熱膨張係数の低下、水分吸収量の減少、機械的強度の増加のために、本発明の目的を達成できる範囲内で、必要に応じて本発明以外の高分子、金属酸化物、充填剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種をさらに含むことができる。
【0122】
前記本発明以外の高分子としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびこれらの混合共重合体、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂、またはポリエチレン−グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体などの弾性重合体を使用することができる。
【0123】
前記充填剤としては、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、スチレン樹脂粉末、カーボン、黒鉛などの有機充填剤;シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの無機充填剤;およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種を使用することができる。
【0124】
また、本発明の一実施形態による熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド系架橋剤をさらに含むことができる。前記マレイミド系架橋剤としては、ビスマレイミドを使用することが好ましい。
【0125】
また、本発明の一実施形態による熱硬化性樹脂組成物は、その他の添加剤をさらに含むことができる。前記その他の添加剤の例としては、カップリング剤、沈降防止剤、UV吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0126】
本発明の別の実施形態では、熱硬化性樹脂組成物から製造されるフィルムまたはプリプレグを提供する。本願で、「製造」とは、熱硬化性樹脂組成物を硬化して熱硬化性オリゴマーまたは熱硬化性ポリマーが架橋結合された硬化製品を提供することを意味する。
【0127】
1つの実施形態では、物品は、熱硬化樹脂組成物の硬化製品を含む。物品は、フィルム、プリプレグ、プリント配線板または銅被服積層物であることができる。物品の熱膨張係数は、15ppm/℃未満、好ましくは10ppm/℃未満、より好ましくは8ppm/℃であり、ガラス転移温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上であることができる。
【0128】
本発明の別の実施形態では、本発明の一実施形態による熱硬化性樹脂組成物から製造されるフィルムまたはプリプレグを提供する。
【0129】
前記プリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物による混合溶液をガラス繊維に含浸させ、非プロトン溶媒を除去して製造されることができる。ガラス繊維に基板形成用組成物を含浸させる方法としては、ディップコーティング法、ロールコーティング法などがあり、その他の当該分野で使用される公知の含浸方法を制限なく使用することができる。
【0130】
本発明の別の実施形態では、本発明の一実施形態による熱硬化性樹脂組成物から製造されるプリント配線板を提供する。
【0131】
積層物の形態、例えば銅被覆積層物(copper clad laminate)の形態に製造する場合には、本発明の基板形成用組成物を銅箔上に塗布または鋳造した後、溶媒を除去してから熱処理を行う方法により製造することができる。溶媒の除去は、好ましくは溶媒を蒸発させることで行われる。溶媒を蒸発させる方法の例としては、減圧下で加熱する方法、換気する方法などが挙げられる。
【0132】
基板形成用組成物を塗布する方法の例としては、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、カーテンコーティング法、スロットコーティング法、スクリーンコーティング法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の基板形成用組成物は、銅箔上に塗布または鋳造される前にフィルターなどでろ過して溶液中に含まれた微細な不純物を除去することが好ましい。
【0133】
前記積層物における金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔などが使用される。金属箔の厚さは、用途に応じて異なるが、5〜100μmの厚さの金属箔が好適に使用される。金属箔被覆積層板の金属箔に対して回路加工を行うことで、プリント配線板を製作することができる。また、印刷積層板の表面にさらに金属箔被覆積層板を同一に積層して加工して多層プリント配線板を製作することができる。
【0134】
本発明の一実施形態によるプリント配線板は、フィルム、プリント基板、銅被覆積層物およびプリプレグからなる群より選択される少なくとも一種を含んでなる。
【0135】
また、前記プリント配線板は、銅張積層板またはフレキシブル銅張積層板であることができる。
【0136】
以下、実施例を挙げてより詳しく本発明を説明するが、これら実施例は説明を目的としたものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0137】
実施例1:単量体(5−ノルボネン−1,2−マレイミドイソフタル酸)の合成
1000mlフラスコに5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5−norbornene−2,3−dicarboxylic anhydride、nadic anhydride)38.06g(0.23mol)および酢酸(acetic acid、glacial)400mlを入れて110℃に徐々に加熱した。全ての固体が溶解した後、5−アミノイソフタル酸(5−aminoisophthalic acid)39.48g(0.22mol)を添加し、前記混合物を還流条件下で2時間反応させた。前記反応液を常温まで冷却させて沈殿物を得た。得られた沈殿物を減圧濾過した後、酢酸および水で洗浄した。前記化合物を100℃で真空条件下で乾燥させて69.05g(収率:96.8%)の5−ノルボネン−1,2−マレイミドイソフタル酸(5−norbornene−1,2−maleimidoisophthalic acid、NI−IPA)を得た。
【0138】
前記単量体の製造は、下記反応式(1)で表されることができる。
【0139】
【化45】

【0140】
H NMR(300MHz)data(DMSO−d6):δ1.62(s、2H、−CH−)、3.34(m、2H、2x−CH−)、3.53(m、2H、2x−CH−CON−)、6.25(m、2H、2x−C−CH=)、7.9〜8.4(m、3H、3x−ArH−)]
実施例2:単量体(テトラヒドロフタルイミドイソフタル酸)の合成
500mlフラスコに1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物(1,2,3,6−tetrahydrophthalic anhydride)15.21g(0.10mol)および酢酸(acetic acid、glacial)160mlを入れて110℃に徐々に加熱した。全ての固体が溶解した後、5−アミノイソフタル酸(5−aminoisophthalic acid)18.11g(0.10mol)を添加し、前記混合物を還流条件下で4時間反応させた。前記反応液を常温まで冷却させて沈殿物を得た。得られた沈殿物を減圧濾過した後、酢酸および水で洗浄した。前記化合物を100℃で真空条件下で乾燥させて28.73g(収率:78.6%)のテトラヒドロフタルイミドイソフタル酸(tetrahydrophthalimidoisophthalic acid、THPI−IPA)を得た。
【0141】
前記単量体の製造は、下記反応式(2)で表されることができる。
【0142】
【化46】

【0143】
H NMR(300MHz)data(DMSO−d6):δ1.90〜2.45(m、4H、2x−CH−C−CON−)、3.31(m、2H、2x−CH−CON−)、5.97(t、2H、2x−C−CH=)、8.03〜8.47(m、3H、3x−ArH−)、13.46(s、2H、2x−COH−)]
実施例3:重合体の製造
機械的撹拌器、窒素注入チューブ、温度計および還流コンデンサーを装着した500ml四つ口フラスコに、4−アミノフェノール13.096g(0.120mol)、イソフタル酸4.984g(0.030mol)、前記実施例1で製造された単量体NI−IPA9.819g(0.030mol)、4−ヒドロキシベンゾ酸8.287g(0.060mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸11.291g(0.060mol)および無水酢酸38ml(0.396mol)を入れ、窒素雰囲気下で140℃まで温度を上げた後、その温度を維持しながら3時間還流させてアセチル化反応を完結した。
【0144】
次いで、反応副生成物である酢酸および未反応無水酢酸を除去しながら、200℃まで昇温した後、その温度で3時間過熱し、最後の30分の間に徐々に真空を加えながら重合反応をさらに進行させて下記化学式(35)で表される重合体を得た。この重合体の数平均分子量(Mn)は793であった。
【0145】
【化47】

【0146】
前記化学式(35)中、
a+b+c+d+e=1であり、a=0.40;b、c=0.10;およびd、e=0.20であり、nは、前記重合体の数平均分子量に依存する値である。
【0147】
実施例4:重合体の製造
機械的撹拌器、窒素注入チューブ、温度計および還流コンデンサーを装着した3L四つ口フラスコに、4−アミノフェノール163.69g(1.5mol)、前記実施例1で製造された単量体NI−IPA327.29g(1.0mol)、4−ヒドロキシベンゾ酸172.65g(1.25mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸235.22g(1.25mol)および無水酢酸571ml(6.05mol)を入れた。
実施例3の反応条件と同様にして、下記化学式(36)で表される重合体を得た。この重合体の数平均分子量(Mn)は1048であった。
【0148】
【化48】

【0149】
前記化学式(36)中、
a+b+c+d+e=1であり、a=0.30;b=0;c=0.20;およびd、e=0.25であり、nは、前記重合体の数平均分子量に依存する値である。
【0150】
実施例5:重合体の製造
機械的撹拌器、窒素注入チューブ、温度計および還流コンデンサーを装着した500ml四つ口フラスコに、4−アミノフェノール32.740g(0.3mol)、前記実施例2で製造された単量体THPI−IPA63.056g(0.2mol)、4−ヒドロキシベンゾ酸34.53g(0.25mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸47.045g(0.25mol)および無水酢酸115ml(1.21mol)を入れた。
【0151】
実施例3の反応条件と同様にして、下記化学式(37)で表される重合体を得た。この重合体の数平均分子量(Mn)は1230であった。
【0152】
【化49】

【0153】
前記化学式(37)中、
a+b+c+d+e=1であり、a=0.30;b=0;c=0.20;およびd、e=0.25であり、nは、前記重合体の数平均分子量に依存する値である。
比較例1:重合体の製造
機械的撹拌器、窒素注入チューブ、温度計および還流コンデンサーを装着した500ml四つ口フラスコに、4−アミノフェノール16.369g(0.15mol)、イソフタル酸24.919g(0.15mol)、4−ヒドロキシベンゾ酸41.436g(0.30mol)および無水酢酸68ml(0.72mol)を入れた。
【0154】
実施例3の反応条件と同様にして、熱硬化性官能基を含まない重合体を得た。この重合体の数平均分子量(Mn)は2517であった。
【0155】
実施例6:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.285gに、実施例3で得た前記化学式(35)で表される重合体2.0gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)0.857gとを入れて混合溶液を製造した。ガラス板上に固定させた電解銅箔上に40×40×0.05(mm)の大きさのガラス繊維を載せた後、製造した混合溶液を用いてガラス繊維組織に均一に含浸させた。そして、高温炉で常温から290℃まで昇温して、含浸した試片を硬化させた後、得られた試片を50質量部の硝酸溶液で処理してきれいに銅箔を除去してプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は1.27質量部であった。
【0156】
実施例7:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.5gに、実施例3で得た前記化学式(35)で表される重合体1.5gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)1.5gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は1.14質量部であった。
【0157】
実施例8:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.5gに、実施例4で得た前記化学式(36)で表される重合体2.0gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)2.0gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は0.96質量部であった。
【0158】
実施例9:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.5gに、実施例4で得た前記化学式(36)で表される重合体1.8gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)1.2gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は1質量部であった。
【0159】
実施例10:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.5gに、実施例5で得た前記化学式(37)で表される重合体1.5gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)1.5gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は1.18質量部であった。
【0160】
実施例11:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.285gに、実施例5で得た前記化学式(37)で表される重合体2.0gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)0.857gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は1.31質量部であった。
【0161】
実施例12:フィルムの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.5gに、実施例3で得た前記化学式(35)で表される重合体1.5gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)1.5gとを入れて混合溶液を製造した。製造した混合溶液を10×10(cm)の大きさのガラス板上にコーティングし、150℃で1時間加熱した後、減圧オーブンで同一温度で24時間追加乾燥させた。乾燥したフィルムをガラス板から剥離して試片を得た。
【0162】
比較例2:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.5gに、比較例1で得た重合体1.5gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)1.5gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は0.92質量部であった。
【0163】
比較例3:プリプレグの製造
N−メチルピロリドン(NMP)4.285gに、比較例1で得た重合体2.0gと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(4,4−bismaleimidodiphenylmethane、BMI−1000、大和化成)0.857gとを入れて混合溶液を製造したことを除いて、実施例6と同様の方法でプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子の量は0.91質量部であった。
【0164】
重合体の熱特性の評価
実施例3、4および比較例1で製造された重合体の熱特性を示差走査熱量計(TA Instrument DSC 2010)を用いて測定し、その結果をそれぞれ図1〜3に示した。
【0165】
図1は、実施例3で製造された重合体のDSC曲線を示すグラフである。
【0166】
前記図1に示したように、1次曲線を通して145℃でガラス転移温度を有し、275℃から融点を有し、332℃で硬化反応が起こることを確認することができ、2次曲線を通していかなる相変化もみられないことを確認することができた。
【0167】
図2は、実施例4で製造された重合体のDSC曲線を示すグラフである。
【0168】
前記図2に示したように、1次曲線を通して135℃でガラス転移温度を有し、225℃から融点を有し、300℃で硬化反応が起こることを確認することができ、2次曲線を通していかなる相変化もみられないことを確認することができた。
【0169】
図3は、比較例1で製造された重合体のDSC曲線を示すグラフである。
【0170】
前記図3に示したように、熱硬化性官能基を含まない重合体の場合、1次曲線を通して200℃でガラス転移温度を有し、245℃から融点を有することを確認することができ、2次曲線を通して200℃から再び相変化特性を有することを確認することができた。
【0171】
プリプレグの熱特性の評価
実施例6〜11および比較例2、3で製造されたプリプレグのガラス転移温度および熱膨張係数を熱分析器(TA Instruments TMA 2940)を用いてそれぞれ測定した。なお、前記熱膨張係数は、窒素下で測定し、この際、温度は10℃/分で昇温させながら測定した。その結果を下記表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
表1の結果より、本発明により、側鎖に熱硬化性官能基を有する繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを用いてプリプレグを製造した場合(実施例6〜11)は、熱硬化性官能基を有していない繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを用いてプリプレグを製造した場合(比較例2および3)に比べて、熱膨張係数が極めて低いことが示された。なお、ガラス転移温度は示されなかった。これにより、本発明のオリゴマーまたはポリマーをプリント配線板に適用する場合、信号遅延の防止などの優れた電気的特性を有することができる。
【0174】
また、図4は、実施例7で製造されたプリプレグのTMA曲線を示すグラフである。前記図4に示したように、50〜150℃での熱膨張係数が4.45ppm/℃であることを確認することができた。
【0175】
フィルムの熱特性の評価
実施例12で製造されたフィルムの熱特性を示差走査熱量計(TA Instrument DSC 2010)を用いて測定し、その結果を図5に示した。図5は、実施例12で製造されたフィルムのDSC曲線を示すグラフである。前記図5に示したように、1次曲線を通して200℃から溶解現象と共に硬化反応が起こることを確認することができ、2次曲線を通していかなる相変化もみられないことを確認することができた。
【0176】
以上、好適な実施例を参考として本発明を詳細に説明したが、これらの実施例は例示的なものに過ぎない。本発明に属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、各種の変更例または均等な他の実施例に想到し得ることは明らかである。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に熱硬化性官能基を有する下記化学式(1):
【化1】

前記化学式(1)中、
は、置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のアルキニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキニレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリーレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルケニレン基および置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキニレン基からなる群より選択される少なくとも一種であり、XおよびYは、それぞれ独立して、COO、O、CONR’、NR’’およびCOからなる群より選択される少なくとも一種であり、ここでR’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基および置換または非置換のC〜C30のアリール基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Lは、単一結合であるか、あるいは置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシアリーレン基、O、COOおよびCONR’’’からなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、ここでR’’’は、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Zは、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換の脂環族基、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換のアリール基、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性官能基であり、
nは、1〜4の整数である、
で表される繰り返し単位を含む熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項2】
前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、側鎖に熱硬化性官能基を有していない下記化学式(2):
【化2】

前記化学式(2)中、
、XおよびYは、前記化学式(1)におけるA、XおよびYの定義と同様である、
で表される繰り返し単位をさらに含む、請求項1に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項3】
前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーに対して化学式(1)の繰り返し単位を0.1〜90モル%含む、請求項1または2に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項4】
前記Aは、下記化学式(3)〜(5)で表されるアリーレン基からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー:
【化3】

前記化学式(3)中、
は、0〜4の整数であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
が2以上である場合、前記Rの各々の置換基は互いに異なることができ、
前記化学式(3)で示される芳香族環は、環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されることができ、
【化4】

前記化学式(4)中、
およびnは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、n20は、0〜2の整数であり、
、RおよびR20は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
およびnがそれぞれ2以上である場合、前記R、RおよびR20の各々の置換基は互いに異なることができ、
lは、0〜3の整数であり、
前記化学式(4)で示される芳香族環は、環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されることができ、
【化5】

前記化学式(5)中、
およびnは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
およびnがそれぞれ2以上である場合、前記RおよびRの各々の置換基は互いに異なることができ、Wは、単一結合であるか、あるいはO、S、CO、SO、SO、置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C20のオキシアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシヘテロアリーレン基、CONR’、下記化学式(5a)で表される連結基、下記化学式(5b)で表される連結基および下記化学式(5c)で表される連結基からなる群より選択される少なくとも一種であり、ここでR’は、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記化学式(5)で示される芳香族環は、環内に存在する少なくとも1つのCHがN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されることができ、
【化6】

前記化学式(5a)中、
およびBは、それぞれ独立して、O、S、CO、SOおよびSOからなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、
【化7】

前記化学式(5b)中、
およびBは、それぞれ独立して、O、S、CO、SOおよびSOからなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
【化8】

前記化学式(5c)中、
Arは、下記化学式(5c−1)〜(5c−6)で表されるなくとも一種を含む4価のアリーレン基であり、
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

で表されるアリーレン基からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項5】
前記化学式(1)の繰り返し単位は、下記化学式(16)〜(26):
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

で表される少なくとも一種の主鎖を含む、請求項1に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項6】
前記Zは、下記化学式(27)〜(33):
【化26】

前記化学式(27)中、
13およびn14は、それぞれ独立して、0〜6の整数であり、
13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、n13およびn14がそれぞれ2以上である場合、前記R13およびR14の各々の置換基は互いに異なることができ、
およびQは、それぞれ独立して、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数であり、
【化27】

前記化学式(28)中、
およびnは、それぞれ1および0〜3の整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
が2以上である場合、前記RおよびRの各々の置換基は互いに異なることができ、
【化28】

前記化学式(29)中、
は、0〜2の整数であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
が2以上である場合、前記Rの各々の置換基は互いに異なることができ、
【化29】

前記化学式(30)中、
21およびn22は、それぞれ0〜8の整数および0〜6の整数であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、n21およびn22がそれぞれ2以上である場合、前記R21およびR22の各々の置換基は互いに異なることができ、
は、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数であり、
【化30】

前記化学式(31)中、
15およびn16は、それぞれ0〜7の整数および0〜6の整数であり、
15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
15およびn16がそれぞれ2以上である場合、前記R15およびR16の各々の置換基は互いに異なることができ、
およびQは、それぞれ独立して、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数であり、
【化31】

前記化学式(32)中、
10およびn11は、それぞれ0〜9の整数および0〜6の整数であり、
10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、
10およびn11がそれぞれ2以上である場合、前記R10およびR11の各々の置換基は互いに異なることができ、
は、メチレン基、OおよびSからなる群より選択される少なくとも一種であり、
は、0〜2の整数であり、
【化32】

前記化学式(33)中、
17およびn18は、それぞれ0または1および2であり、
17は、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシ基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基であり、それぞれのR18は、置換または非置換のC〜C20のアルキル基であり、それぞれ互いに異なることができる、
で表される少なくとも一種の熱硬化性官能基である、請求項1に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、少なくとも一方の末端に二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換の脂環族基、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換のアリール基、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される熱硬化性官能基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項8】
数平均分子量は、300〜300000である、請求項1〜7のいずれか1項に熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物は、非プロトン性極性溶媒をさらに含む、請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記非プロトン性極性溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルカプロラクタム、γ−ブチルラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記溶媒100質量部に対して熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを0.1〜300質量部含む、請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂組成物は、高分子、金属酸化物、充填剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド系架橋剤をさらに含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物から製造される製品
【請求項16】
前記製品は、プリプレグ、フィルムまたはプリント配線板を含む、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
前記プリント配線板は、フィルム、プリント基板、銅被覆積層物およびプリプレグからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項16に記載のプリント配線板。
【請求項18】
前記プリント配線板は、銅張積層板またはフレキシブル銅張積層板である、請求項16に記載のプリント配線板。
【請求項19】
前記熱硬化性オリゴマーまたはポリマーは、側鎖に熱硬化性官能基を有していない下記化学式(2)で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーをさらに含む、請求項1に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー:
【化33】

前記化学式(2)中、
、XおよびYは、前記化学式(1)におけるA、XおよびYの定義と同様である。
【請求項20】
前記熱硬化性化学式(1)の繰り返し単位(1)を含む熱硬化性オリゴまーまたは熱硬化性ポリマーと前記化学式(2)の繰り返し単位(2)を含むオリゴマーまたはポリマーとは、90:10〜30:70の質量比で混合される、請求項19に記載の熱硬化性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項21】
側鎖に熱硬化性官能基を有する下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含む熱硬化性オリゴマーまたはポリマーを含む熱硬化性樹脂組成物を利用した硬化製品を含む物品であって、前記物品は、プリプレグ、プリント配線板または銅被覆積層物である物品。
【化34】

前記化学式(1)中、
は、置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のアルキニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルケニレン基、置換または非置換のC〜C20のシクロアルキニレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリーレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルケニレン基および置換または非置換のC〜C20のヘテロシクロアルキニレン基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
およびYは、それぞれ独立して、COO、O、CONR’、NR’’およびCOからなる群より選択される少なくとも一種であり、ここで前記R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基および置換または非置換のC〜C30のアリール基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Lは、単一結合であるか、あるいは置換または非置換のC〜C20のアルキレン基、置換または非置換のC〜C20のアルコキシレン基、置換または非置換のC〜C30のアリーレン基、置換または非置換のC〜C30のオキシアリーレン基、O、COOおよびCONR’’’からなる群より選択される少なくとも一種の連結基であり、ここで前記R’’’は、水素原子、置換または非置換のC〜C20のアルキル基、置換または非置換のC〜C30のアリール基および置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であり、
Zは、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換の脂肪族基または脂環族基、二重結合あるいは三重結合を有する置換または非置換のアリール基、(イソ)シアネートおよびこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性官能基であり、
nは、1〜4の整数である。
【請求項22】
前記物品の熱膨張係数は、8ppm/℃未満であり、ガラス転移温度は、250℃以上である、請求項21に記載の物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−150505(P2010−150505A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180926(P2009−180926)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【出願人】(500323513)三星精密化学株式会社 (22)
【Fターム(参考)】