説明

熱膨張性チューブ

【課題】本発明は、従来技術に鑑み、所定の形状記憶性樹脂組成物を使用し、熱膨張するチューブを提案することであり、さらに結晶融点以下での成形も可能とし、より簡便な成形方法を提案することにある。
【解決手段】本発明は、架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする熱膨張性チューブである。該熱膨張性チューブは、所望の形状に成形、架橋硬化により形状記憶させた上で、結晶性重合体の結晶融点以下でチューブの長さ方向に延伸し結晶化により仮形状に固定するか、または、結晶性重合体の結晶融点以上に再加熱し圧縮することで収縮した仮形状に固定することで容易に製造することが出来、かつ、再度 融点以上に加温することで、成形時の形状まで熱膨張することで復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶性樹脂組成物により形成された熱膨張性チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料の有する結晶性を活かして、成形後、チューブの内径を拡張する方向へ延伸しその応力歪を残留させた状態で形状を仮固定し、現場へ施工した後に、加温等により前記応力歪を解消することで熱収縮するチューブは、既に数種類市販されている。また、結晶性の重合体については、特許文献1にオレフィン末端ポリエステルの製造方法が提案されている。
【0003】
また、形状記憶性樹脂組成物を使い、その成形体(マネキン)を任意の方向へ折り曲げ仮固定したり、再度形状を復元したりするという提案が、特許文献2でされている。しかし、その内容は、折り曲げ変形に限定され、かつその変形方法も結晶融点以上まで加熱した上で変形し、形状を仮固定することが前提になっていた。
【0004】
特許文献3には、プラスチックからなるチューブを架橋処理した後、その長手方向に延伸することにより、延伸前よりも細径化して得られたチューブであって、加熱により延伸前の径まで拡張可能であるチューブが提案されている。しかし、使用されるプラスチックは、ポリオレフィン系であるため、得られるチューブの物性を最適化することが困難であったり、成形加工が困難となる場合があったりするなどの問題があった。即ち、特許文献3では、ポリオレフィン系のプラスチックを架橋する際には、プラスチック材料中に配合した架橋剤を、電子線やγ線等の高エネルギー線などにより架橋反応させる方法などが用いられている。この場合、架橋点はランダムに形成されるため、成形性を確保するために、架橋前のポリオレフィン系材料の分子量を小さくすると、その後の架橋時において、架橋密度が高くなりすぎ、伸びの無い、脆い組成物しか得られないという問題があった。また、一般的なポリオレフィン系材料の架橋方法を採用したとしても、その分子末端ではなく分子中にジエンを共重合し、残留オレフィン部分を硫黄などで架橋する形態をとるものが殆どであるため同様の問題を生じることとなる。
【特許文献1】特開平3−131624号公報
【特許文献2】特開平4−183746号公報
【特許文献3】特開平8−72143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の従来技術に鑑み、所定の形状記憶性樹脂組成物を使用し、熱膨張するチューブを提案することであり、さらに結晶融点以下での成形も可能とし、より簡便な成形方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第1は、架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする熱膨張性チューブである。
【0007】
本発明の第2は、架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする医療用熱膨張性チューブである。
【0008】
本発明の第3は、架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする地下埋設管内側被覆用熱膨張性チューブである。
【0009】
本発明の第4は、前記結晶性重合体の主鎖骨格の主成分が、ε−カプロラクトン、エチレングリコール、または、テトラメチレングリコールからなり、数平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする熱膨張性チューブである。
【0010】
本発明の第5は、前記形状記憶性樹脂組成物の架橋方法が、結晶性重合体の末端基が水酸基でウレタン架橋するもの、結晶性重合体の末端基がビニル基でSiH基を有するシリコーン系硬化剤と付加型加熱硬化するもの、結晶性重合体の末端基が(メタ)アクリロイル基で光硬化するもの、あるいは、結晶性重合体の末端基が加水分解性シリコーン官能基でシラノール縮合触媒を使用してシロキサン結合を形成し縮合硬化するもの、の中から選ばれる一つであることを特徴とする熱膨張性チューブである。
【0011】
本発明の第6は、前記形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により管状成形体に成形して形状記憶させた後、前記結晶性重合体の結晶融点以下で前記管状成形体をその長さ方向に延伸し、前記結晶性重合体を結晶化させることにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定されていることを特徴とする熱膨張性チューブである。
【0012】
本発明の第7は、前記形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により管状成形体に成形して形状記憶させた後、前記結晶性重合体の結晶融点以上に再加熱、かつ圧縮して前記結晶性重合体を結晶化させ、冷却することにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定されていることを特徴とする熱膨張性チューブである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする熱膨張性チューブは、前記結晶性重合体の結晶融点以上に再加温することにより、熱膨張して成形時に形状記憶させた管状成形体の形状に容易に復元することができる。また、このように、架橋可能な結晶性重合体が、ポリエステルまたはポリエーテルであるため、比較的容易に前記結晶性重合体の両末端に架橋基を導入可能となる。この結果、硬化性の形状記憶性樹脂組成物の架橋前の分子量を小さくすることができるため、成形前の樹脂の粘度を低くすることができ、成形加工を容易に行うことができる。更に、架橋点が結晶性重合体の両末端に導入されているため、成形、架橋硬化後の形状記憶性樹脂組成物の破断伸びを大きくすることができ、また、延伸配向によって、容易に前記管状成形体をその径方向に収縮した形状に仮固定することができる。
【0014】
よって、本発明に係る熱膨張チューブによれば、所定の管(生体の管状器官、地下埋設管など)内にその内径より小さい外径を有する熱膨張性チューブを挿入した後に、前記結晶性重合体の結晶融点以上に再加温し、予め形状記憶させた前記管と同程度の外径を有する管状成形体にその形状を復元することにより、例えば閉塞した生体の管状器官であれば、その管を内側から拡張する医療用熱膨張性チューブとして、あるいは地下埋設管であれば、その内側を被覆する地下埋設管内側被覆用熱膨張性チューブとして好適に使用することができる。
【0015】
また、本発明に係る熱膨張性チューブは、前記形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により管状成形体に成形して形状記憶させた後、前記結晶性重合体の結晶融点以下で前記管状成形体をその長さ方向に延伸し、前記結晶性重合体を結晶化させることにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定することにより容易に製造することができる。更に、前記形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により管状成形体に成形して形状記憶させた後、前記結晶性重合体の結晶融点以上に再加熱、かつ圧縮して前記結晶性重合体を結晶化させ、冷却することにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定することによっても、容易に製造することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、硬化性の形状記憶性樹脂組成物の分子設計を容易に行うことができるため、その物性を十分な柔軟性、可撓性を有するように容易に制御することができ、かつ工業的に容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る熱膨張チューブは、架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする。
【0018】
本発明でいう「形状記憶性」とは、形状記憶性樹脂組成物が架橋硬化時の形状を記憶し、その後、結晶性能により新たな仮固定された形状から、結晶融点を超える加温あるいは溶媒などによる結晶性融解に伴い、再度架橋硬化時の形状に復元する性能をいう。また、本発明でいう「仮固定」とは、外部から物理的作用を付与することなく、所定の形状に保持されていることを意味する。更に、本発明でいう「熱膨張性チューブ」とは、ある一定温度以上に加温することで、チューブの内径が、形状復元力のみにより加温前に比べて拡大する性能を有するチューブをいい、加熱以外の外部からの物理的作用を要しない。
【0019】
前記結晶性重合体は、架橋可能な官能基をその両端に有し、硬化性の樹脂組成物となりうるポリエステルまたはポリエーテルであることが好ましい。これらの結晶性重合体は、比較的容易にその両末端に架橋基を導入可能である。この結果、硬化性の形状記憶性樹脂組成物の架橋前の分子量を小さくすることができるため、成形前の樹脂の粘度を低くすることができ、成形加工を容易に行うことができる。更に、架橋点が結晶性重合体の両末端に導入されているため、成形、架橋硬化後の形状記憶性樹脂組成物の破断伸びを大きくすることができ、また、延伸配向によって、容易に前記管状成形体をその径方向に収縮した形状に仮固定することができる。このように、前記の結晶性重合体を採用することにより、架橋物の機械物性の伸びや強度のバランスが取り易く、その形状記憶時の形状への高い復元力を発揮することができる。
【0020】
また、前記結晶性重合体の中でも、その主鎖骨格の主成分が、ε−カプロラクトン、エチレングリコール、または、テトラメチレングリコールからなり、数平均分子量が1,000〜100,000であるものが好ましく、10,000〜50,000であるものが特に好ましい。前記数平均分子量が低いほど、架橋密度が上がり、もとの形状に復元する際の高い復元力になる。また、この分子量が高いほど、架橋密度が下がり、硬化後(形状記憶後)の硬化物を大きく変形させて形状を仮固定することができる。従って、最終目的とするチューブの形状と、仮固定させる形状との関係で、前記の分子量の範囲で任意に選択することで、所望の復元力と仮固定形状を選択することができる。数平均分子量が1,000未満であれば、仮固定するための延伸、圧縮等の処理を行うことが困難となり、100,000を超えると形状記憶性樹脂組成物の架橋密度が低くなりすぎ、形状復元力が低下しすぎるため、望ましくない。
【0021】
さらに、前記結晶性重合体の結晶融点をコントロ−ルする目的で、一部に非晶性の主鎖骨格を導入することもできる。例えば、結晶性のε−カプロラクトン主鎖と非晶性のメチルバレロラクトン主鎖を適切な割合で保有する結晶性重合体とし、ε−カプロラクトン単独の主鎖の融点を10〜20℃低下させ、形状復元が開始する温度を低下させることができる。
【0022】
本発明に用いられる架橋可能な結晶性重合体の結晶融点は、30℃以上100℃以下であることが好ましい。結晶融点が前記範囲であることにより、変形、仮固定および形状復元を容易に行うことができる。
【0023】
前記架橋可能な結晶性重合体の架橋方法としては、具体的には、結晶性重合体の末端基を水酸基としウレタン架橋させる、結晶性重合体の末端基をビニル基としSiH基を有するシリコーン系硬化剤と付加型加熱硬化させる、結晶性重合体の末端基を(メタ)アクリロイル基として光硬化させる、あるいは、結晶性重合体の末端基を加水分解性シリコーン官能基としシラノール縮合触媒を使用してシロキサン結合を形成し縮合硬化させる、などの架橋方法があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
ただし、いずれの架橋形式においても、形状記憶性樹脂組成物に、この架橋反応により所望の形状を記憶させるという観点から、その架橋反応の段階で、化学反応は完結していることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明に用いられる架橋可能な結晶性重合体の含有する硬化性組成物からなる形状記憶性樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、滑剤、顔料、発泡剤、接着性改良剤、物性調整剤、などの各種添加剤を添加することが可能である。
【0026】
また、より強靭な構造とするために、多様な繊維やファイバーなどで出来た伸縮可能なチューブとの複合化も可能である。
【0027】
本発明に係る熱膨張チューブは、以下のように作製することができる。
形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により所望の形状の管状成形体を成形する。管状に成形する方法としては、例えば、結晶性重合体を含有する硬化性組成物を架橋剤などとともに溶媒に溶解して形状記憶性樹脂組成物を含む液体を調製し、ディッピング法により成形したり、形状記憶性樹脂組成物を押出成形もしくは射出成形など既知の方法により成形したりすることができる。成形、架橋、硬化を行う条件は、使用する樹脂により異なるため一概にはいえないが、概ね100℃以上で30分以上、加熱硬化させることが望ましく、こうして得られた硬化物のゲル分率は70%以上であることが好ましい。
【0028】
前記のようにして所望の形状に形状記憶させた管状成形体を、その結晶性重合体の結晶融点以下でその長さ方向に延伸し、前記結晶性重合体を結晶化させることにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定される。このように延伸処理を結晶性重合体の結晶融点以下で行うことができるため、前記管状成形体の延伸を極めて容易に行うことができる。
【0029】
また、前記形状記憶させた管状成形体を、前記結晶性重合体の結晶融点以上に再加熱、圧縮して前記結晶性重合体を結晶化させることにより、前記管状成形体をその径方向に収縮した仮形状に固定してもよい。圧縮する方法としては、結晶融点以上に加熱し、前記形状記憶性樹脂組成物が軟化した状態で管状成形体を強制的にその外周部から圧縮し、内径を押しつぶす方法、あるいは、管状成形体の内腔部を陰圧にして内径を小さくする方法が挙げられる。また、このように圧縮する場合には、内腔部分がなくなる程度に管状成形体の外壁部分が折り畳まれた状態になることもある。
【0030】
尚、前記結晶化は、延伸配向等の結晶化により弾性率が急激に高くなることから、容易に確認することができる。前記樹脂組成物の構成にもよるが、簡易的には、例えば、延伸処理後にチューブ外観が白色に変化すること、あるいは、延伸処理後にチューブが硬くなることを観察することにより行うことができる。
【0031】
このように、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定されたものが、熱膨張性チューブとして使用される。この熱膨張性チューブは各種の用途に使用可能であるが、特に医療分野においては医療用のカテーテルや拡張部材として、土木分野においては、地下埋設管の内側被覆用のチューブとして好適に使用することができる。
【0032】
医療用のカテーテルや拡張部材としては、例えば、生体内の管状器官(消化器、血管など)の閉塞した部位を拡張する場合に使用できる。即ち、予め、結晶性重合体の結晶融点が40〜50℃程度になるように調整した形状記憶性樹脂組成物を使用して、正常な管状器官の内径と同程度の内径(器官により異なるが、概ね0.1mm〜2cm程度)となるように形状記憶させた1mm〜10cm程度の長さの管状成形体をディッピングなどにより成形した後、常温下で、長さ方向に延伸して、両端が開放した細径(内径0.01mm〜1cm程度)の熱膨張性チューブを作製する。そして、該熱膨張性チューブを市販のカテーテル等を使用して管状器官の閉塞部位に挿入した後、外部から前記カテーテルを介して供給される加熱手段により熱膨張性チューブを加熱し、形状記憶した元の形状に膨張させ、閉塞した部位を拡張することができる。より具体的な加熱手段としては、バルーンカテーテルの非拡張状態にあるバルーンの外周部に熱膨張性チューブを予め通しておきし、バルーン内に高温の液体を注入して加熱膨張させる場合などが例示できる。
【0033】
また、地下埋設管の内側被覆用の熱膨張性チューブとしては、例えば次のようにして作製、使用することができる。即ち、予め調製した形状記憶性樹脂組成物を用いて、被覆対象とする地下埋設管の内径とその外径が同程度となるように押出成形により長尺の管状成形体を成形、架橋硬化し、形状を記憶させる。次いで、常温下、前記管状成形体を長さ方向に延伸し、前記形状を記憶させた管状成形体より細径となるように形状を仮固定して熱膨張性チューブを作製する。
【0034】
得られた熱膨張性チューブを対象となる地下埋設管に挿入し、前記熱膨張性チューブの一端を封止した状態で他端から加熱蒸気を注入するなどの方法で熱膨張性チューブを前記形状記憶性樹脂組成物の主成分である結晶性重合体の結晶融点以上の温度に加熱し、形状記憶した元の形状に膨張させることで、地下埋設管の内側を被覆することができる。尚、結晶融点や形状記憶させる管状成形体の内径などは、地下埋設管の形状、使用温度などにより適宜決定することができる。
【実施例1】
【0035】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
また、以下の製造例1〜3における、H−NMRおよびGPC分析は、下記の条件により行い、GPC分析で得られた数平均分子量を用い、主鎖部分のプロトンの積分値と末端官能基部分のオレフィンプロトンの積分値の比較で末端官能化率を算出することで、結晶性重合体1分子当たりに導入された末端の官能基数を求めた。
<GPC>
カラム:昭和電工(株)製のShodex K−804およびK−802.5を連結したもの
内部標準:無し
キャリア:クロロホルム
検量線:標準分子量のP−Stを使用して作成
<H−NMR>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3
内部標準:無し
【0036】
(製造例1)
それぞれモレキュラーシーブス4A(1/16)で乾燥したジアリルイソフタレート4.4mLおよび同様に乾燥したテトラブチルチタネート0.2mLを170℃で30分間攪拌した後、同様に乾燥したε−カプロラクトン250mLを170℃で攪拌しながら少量ずつ分けて添加した。この際、添加したε−カプロラクトンがほぼ消費されたことをH−NMRにより確認しながら次の添加を行った。全量のε−カプロラクトンを添加した後さらに攪拌を継続し、攪拌開始から170℃の温度条件下で約8時間反応を行い、約250gの淡黄色固体を得た。H−NMRおよびGPC分析の結果、生成物は、両末端に約2.0個のアリルエステル基を有し、数平均分子量16,700、重量平均分子量53,400のポリカプロラクトンであることが確認された。
【0037】
(製造例2)
市販の分子量20,000の水酸基末端ポリエチレングリコール200gに、28%NaOMe(メタノール溶液)8gを添加し、130℃で加熱しながら約5時間かけてメタノールを減圧で留去した。その後、90℃まで降温し、塩化アリル6mLを添加し、110℃で5時間攪拌を継続した。この反応液に、約800mLのトルエンを追加し攪拌し、トルエン溶液とした後、80℃で、硫酸マグネシウムの粉を約100g添加し攪拌した。この混合溶液を約80℃に維持しながら、濾過助剤を使用して減圧濾過を行い、塩を除去し、淡黄色透明なトルエン溶液を得た。このトルエン溶液を減圧留去し、約180gの淡黄色固体を得た。H−NMRおよびGPC分析の結果、生成物は、両末端に約2.4個のアリルエーテル基を有し、数平均分子量38,500、重量平均分子量42,300のポリエチレングリコールであることが確認された。
【0038】
(製造例3)
市販の分子量2,000の水酸基末端ポリテトラメチレングリコール200gに少量のトルエンを入れ、90℃で減圧留去することで、系内の脱水を実施した。その後、28%NaOMe(メタノール溶液)48.3gを添加し、125℃で加熱しながら約3時間かけてメタノールを減圧で留去した。その後、90℃まで降温し、塩化メチレン7.0gを添加し、約1時間攪拌を継続した。さらに塩化アリル12mLを添加し、110℃で5時間攪拌を継続した。この反応液に、約600mLのトルエンを追加、攪拌し、トルエン溶液とした後、80℃で硫酸マグネシウムの粉を約100g添加し攪拌した。この混合溶液を約80℃に維持しながら、濾過助剤を使用して減圧濾過を行い、塩を除去し、淡黄色透明なトルエン溶液を得た。このトルエン溶液を減圧留去することにより約190gの乳白色液体(常温放置後、固化)を得た。H−NMRおよびGPC分析の結果、生成物は、両末端に約2.1個のアリルエーテル基を有し、数平均分子量10,200、重量平均分子量12,600のポリテトラメチレングリコールであることが確認された。
【0039】
(製造例4)
(−Si−O−)繰り返しユニットを平均して10個持つメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下、全ヒドロシリル基量の0.5当量のα−メチルスチレンを添加し、1分子中に平均5個のヒドロシリル基を有する化合物を得た。この化合物のSi−H基含有量は3.8mmol/gであった。
【0040】
(実施例1〜3)
表1に記載した配合処方に従い、ぞれぞれ、架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物を準備し、フッ素系離型剤で処理した外形1cmの金属棒上に前記形状記憶性樹脂組成物をディッピングにより塗布し、約80℃で溶剤を揮発させた上で、150℃で5時間加熱し、長さ約3cm、内径1cmの円筒状に形状を記憶した管状成形体を作製した。尚、この成形体を塩化メチレンに24時間浸漬し、その抽出溶解分から算出したゲル分率を表1に記載する。
【0041】
前記管状成形体の両端を把持し、常温下で、円筒形状の長さ方向に、元の寸法に対し約300%(約12cm)まで延伸し、熱膨張性チューブを得た。この熱膨張性チューブは、何れの実施例においても、結晶化が観察される(延伸配向等の結晶化により弾性率が急激に高くなる。)と共に、内径が約0.5cm程度の管状の形状に仮固定できた。
【0042】
各実施例において作製した熱膨張性チューブを、結晶融点以上の温度である80℃のオーブン中に放置したところ、約5分間で結晶が融解することにより内径が膨張し、形状記憶した元の内径約1cm、長さ約3cmの管状の形状に復元した。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする熱膨張性チューブ。
【請求項2】
架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする医療用熱膨張性チューブ。
【請求項3】
架橋点がその両端に存在するポリエステルまたはポリエーテルである架橋可能な結晶性重合体を主成分とする硬化性の形状記憶性樹脂組成物からなる管状成形体であって、前記結晶性重合体が結晶化していることを特徴とする地下埋設管内側被覆用熱膨張性チューブ。
【請求項4】
前記結晶性重合体の主鎖骨格の主成分が、ε−カプロラクトン、エチレングリコール、または、テトラメチレングリコールからなり、数平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性チューブ。
【請求項5】
前記形状記憶性樹脂組成物の架橋方法が、結晶性重合体の末端基が水酸基でウレタン架橋するもの、結晶性重合体の末端基がビニル基でSiH基を有するシリコーン系硬化剤と付加型加熱硬化するもの、結晶性重合体の末端基が(メタ)アクリロイル基で光硬化するもの、あるいは、結晶性重合体の末端基が加水分解性シリコーン官能基でシラノール縮合触媒を使用してシロキサン結合を形成し縮合硬化するもの、の中から選ばれる一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張性チューブ。
【請求項6】
前記形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により管状成形体に成形して形状記憶させた後、前記結晶性重合体の結晶融点以下で前記管状成形体をその長さ方向に延伸し、前記結晶性重合体を結晶化させることにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張チューブ。
【請求項7】
前記形状記憶性樹脂組成物を架橋硬化により管状成形体に成形して形状記憶させた後、前記結晶性重合体の結晶融点以上に再加熱、かつ圧縮して前記結晶性重合体を結晶化させ、冷却することにより、前記管状成形体がその径方向に収縮した形状に仮固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張チューブ。



【公開番号】特開2009−143130(P2009−143130A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323551(P2007−323551)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】