説明

熱膨張性マイクロカプセル及び発泡成形体

【課題】優れた耐熱性を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等に使用する場合であっても、へたり等が生じにくく、優れた外観品質と発泡倍率を有する成形品が得られる熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、最大変位量(Dmax)が1000μm以上、最大発泡温度(Tmax)が210℃以上、かつ、発泡開始温度(Ts)が190℃以上である熱膨張性マイクロカプセルを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性と発泡倍率を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等にも好適に使用可能であり、特に射出成形に用いられた場合に高い外観品質が得られる熱膨張性マイクロカプセル及び該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性マイクロカプセルは、意匠性付与剤や軽量化剤として幅広い用途に使用されており、発泡インク、壁紙をはじめとした軽量化を目的とした塗料等にも利用されている。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されているものが広く知られており、例えば、特許文献1には、低沸点の脂肪族炭化水素等の揮発性膨張剤をモノマーと混合した油性混合液を、油溶性重合触媒とともに分散剤を含有する水系分散媒体中に攪拌しながら添加し懸濁重合を行うことにより、揮発性膨張剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、この方法によって得られた熱膨張性マイクロカプセルは、80〜130℃程度の比較的低温で熱膨張させることができるものの、高温又は長時間加熱すると、膨張したマイクロカプセルが破裂又は収縮してしまい発泡倍率が低下するため、耐熱性に優れた熱膨張性マイクロカプセルを得ることができないという欠点を有していた。
【0004】
一方、特許文献2には、ニトリル系モノマー80〜97重量%、非ニトリル系モノマー20〜3重量%及び三官能性架橋剤0.1〜1重量%を含有する重合成分から得られるポリマーをシェルとして用い、揮発性膨張剤を内包させた熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
また、特許文献3には、ニトリル系モノマー80重量%以上、非ニトリル系モノマー20重量%以下及び架橋剤0.1〜1重量%を含有する重合成分から得られるポリマーを用い、揮発性膨張剤を内包させた熱膨張性マイクロカプセルにおいて、非ニトリル系モノマーがメタクリル酸エステル類又はアクリル酸エステル類である熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。
【0005】
これらの方法によって得られる熱膨張性マイクロカプセルは、従来のマイクロカプセルに比べ耐熱性に優れ、140℃以下では発泡しないとされているが、実際には130〜140℃で1分程度加熱を続けると一部のマイクロカプセルが熱膨張してしまうものであり、最大発泡温度が180℃以上の優れた耐熱性を有する熱膨張性マイクロカプセルを得ることは困難であった。
【0006】
更に、特許文献4には、最大発泡温度が180℃以上、好ましくは190℃以上である熱膨張性マイクロカプセルを得ることを目的として、85重量%以上のニトリル基をもつエチレン性不飽和モノマーの単独重合体又は共重合体からなるシェルポリマーと50重量%以上のイソオクタンを有する発泡剤からなる熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。
このような熱膨張性マイクロカプセルでは、最大発泡温度が非常に高い値となっているものの、その後の膨張した状態を維持することができず、高温領域における長時間の使用は困難であった。
【0007】
更に、特許文献5、特許文献6には、耐熱性をより向上させた熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。しかしながら、これらの熱膨張性マイクロカプセルを強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工、特に射出成形に使用した場合、種々の課題があった。
具体的には、一般的な射出プロセスにおいては、シリンダー内でマトリックス樹脂と熱膨張性マイクロカプセルとを溶融混練する工程を行った後、金型に樹脂溶融物を充填し、金型を開いて(コアバック)発泡させる工程を行うが、シリンダー内で溶融混練する工程では、熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性や強度の問題から、いわゆる「へたり」と呼ばれる現象が生じたり、潰れてしまうがことがあった。また、コアバック後に熱膨張性マイクロカプセルを発泡させる工程においては、熱膨張性マイクロカプセルが充分に発泡せず、未発泡のままとなるため、得られる成形体は、外観や、軽量性等の機能性の面で劣るものとなっていた。これに対して、コアバック後に発泡倍率を発現させる手段としては、蒸気圧の高い炭化水素を揮発性膨張剤に使用する方法や、熱膨張性マイクロカプセルの粒径を大きくする方法等が考えられるが、これらの方法を用いた場合、所望の倍率が得られ、発泡性能には優れるものの、成形品表面でも発泡が起こり、表面がざらつくという問題があった。
従って、優れた耐熱性を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等に使用する場合であっても、へたり等が生じにくく、得られた成形品は、優れた外観品質と発泡倍率を有する熱膨張性マイクロカプセルが必要とされていた。
【0008】
【特許文献1】特公昭42−26524号公報
【特許文献2】特公平5−15499号公報
【特許文献3】特許第2894990号
【特許文献4】欧州特許出願第1149628号公報
【特許文献5】国際公開WO2003/099955号公報
【特許文献6】国際公開WO2003/531928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた耐熱性を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、特に射出成形等に使用する場合であっても、へたり等が生じにくく、得られる成形品は、優れた外観品質と発泡倍率を有する熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、最大変位量(Dmax)が1000μm以上、最大発泡温度(Tmax)が210℃以上、かつ、発泡開始温度(Ts)が190℃以上であることを特徴とする熱膨張性マイクロカプセルである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、熱膨張性マイクロカプセルの最大変位量(Dmax)を1000μm以上とし、Tmaxを210℃以上、かつ、Tsを190℃以上とすることにより、熱膨張性マイクロカプセルをシリンダー内に投入した際の熱膨張性マイクロカプセルのへたりを防止することができ、かつ、金型に充填した後に、出来るだけ速くコアバックさせることにより、金型内で充分に発泡させ、かつ、優れた外観品質の成形品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大変位量(Dmax)の下限が1000μmである。1000μm未満であると、熱膨張性マイクロカプセルを含有する樹脂溶融物が金型に充填した後に金型内で充分に発泡しない。好ましい下限は1200μmである。また、好ましい上限は2000μmである。
なお、本明細書において、最大変位量は、熱膨張性マイクロカプセル25μgを直径7mm、深さ1mmの容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から220℃まで加熱した場合の測定端子の垂直方向における変位の最大値のことである。
【0013】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の下限が210℃である。Tmaxを210℃以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルをシリンダー内に投入した際の熱膨張性マイクロカプセルのへたりを低減することが可能となる。
210℃未満であると、シリンダー内で熱膨張性マイクロカプセルのへたりが生じてしまうことから、発泡倍率の低下が生じる。好ましい下限は230℃である。
また、好ましい上限は250℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となったとき(最大変位量)における温度を意味する。
【0014】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、発泡開始温度(Ts)の下限が190℃である。Tsを190℃以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂溶融物が金型に充填した後に金型内で充分に発泡した場合でも成形品表面で発泡がおこらず、外観品質の優れた成形品が得ることが可能となる。190℃未満であると、成形品表面で発泡現象がみられる。好ましい下限は200℃である。また、好ましい上限は230℃である。
【0015】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、ニトリル系モノマーを60重量%以上、非ニトリル系モノマーを40重量%以下、金属カチオンを0.1〜10重量%及び架橋剤を含有するビニル系モノマー組成物を重合させてなるシェルに、コア剤としてシェルの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されたものであることが好ましい。
このようなビニル系モノマー組成物及び揮発性膨張剤を用いることで、上述した範囲のDmax、Tmax及びTsを有する熱膨張性マイクロカプセルを実現することができる。
【0016】
上記ニトリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル又はこれらの任意の混合物等が挙げられ、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルが好適に用いられる。
【0017】
本発明では、上記シェルの原料であるビニル系モノマー組成物中における上記ニトリル系モノマーの含有量の好ましい下限は60重量%である。60重量%未満であると、シェルのガスバリア性が低くなるため発泡倍率が低下ことがある。
より好ましい下限は70重量%、好ましい上限は80重量%である。
【0018】
上記非ニトリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類からなる群から選択される。これらのなかでメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0019】
上記ビニル系モノマー組成物中における非ニトリル系モノマーの含有量の好ましい上限は40重量%である。40重量%を超えると、上記と同様にシェルのガスバリア性が低くなるため発泡倍率が低下することがある。
より好ましい上限は30重量%、好ましい下限は20重量%である。
【0020】
上記ビニル系モノマー組成物は、金属カチオンを含有することが好ましい。上記金属カチオンを含有するビニル系モノマー組成物を重合させることにより、上記金属カチオンが非ニトリル系モノマーと反応し、得られる共重合体がイオン架橋していると考えられることから、耐熱性が向上し、高温領域において長時間破裂、収縮の起こらない熱膨張性マイクロカプセルとすることが可能となる。また、高温領域においてもシェルの弾性率が低下しにくいことから、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工を行う場合であっても、熱膨張性マイクロカプセルの破裂、収縮が起こることがない。
【0021】
上記金属カチオンとしては、非ニトリル系モノマーと反応し、イオン架橋させる金属カチオンであれば、特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Zn、Mg、Ca、Ba、Sr、Mn、Al、Ti、Ru、Fe、Ni、Cu、Cs、Sn、Cr、Pb等のイオンが挙げられる。これらのなかでは、2〜3価の金属カチオンであるCa、Zn、Alのイオンが好ましく、特にZnのイオンが好適である。これらの金属カチオンは、単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
なお、上記金属カチオンを2種以上用いる場合の組み合わせとしては特に限定されないが、アルカリ金属のイオンと上記アルカリ金属以外の金属カチオンとを組み合わせて用いることが好ましい。上記アルカリ金属のイオンを有することにより、ビニル系モノマー等の官能基が活性化され、上記アルカリ金属以外の金属カチオンと上記カルボキシル基との反応を促進させることができる。上記アルカリ金属としては、例えば、Na、K、Li等が挙げられる。
【0022】
上記ビニル系モノマー組成物中における上記金属カチオンの含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。0.1重量%未満であると、充分に共重合体をイオン架橋できないことがあり、耐熱性を向上させる効果が得られず、逆に、10重量%を超えると、発泡特性が著しく悪くなることがある。
【0023】
上記シェルは、架橋剤を含有することが好ましい。上記架橋剤を含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。
上記架橋剤としては特に限定はされず、一般的にはラジカル重合性二重結合を2以上有するモノマーが好適に用いられる。具体例には例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、200℃を超える高温領域でも熱膨張したマイクロカプセルが収縮しにくく、膨張した状態を維持しやすいので、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能性架橋剤が好しく、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート等の3官能性架橋剤がより好ましい。
【0024】
上記シェルにおける上記架橋剤の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は3重量%である。より好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は1重量%である。
【0025】
また、本発明の熱膨張性マイクロカプセルのシェルは、ニトリル系モノマーに由来するセグメントと、カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数が3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーに由来するセグメントとを有する共重合体、及び、2〜3価の金属カチオン0.1〜10重量%を含有するものであることが好ましい。
【0026】
上記カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数が3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、イオン架橋させるための遊離カルボキシル基を分子当たり1個以上持つものを用いることができ、具体的には例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸やその無水物又はマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸のモノエステルやその誘導体挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
【0027】
上記シェルを構成する共重合体における、前記カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は50重量%である。10重量%未満であると、最大発泡温度が180℃以下となることがあり、50重量%を超えると、最大発泡温度は向上するものの、発泡倍率が低下するため好ましくない。
【0028】
上記共重合体は、必要に応じて、上記ニトリル系モノマーに由来するセグメント及び上記カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数が3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーに由来するセグメント以外のセグメントを有していてもよい。このようなセグメントとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等に由来するセグメント等が挙げられる。これらのモノマーは、熱膨張性マイクロカプセルに必要な特性に応じて適宜選択されて使用され得るが、なかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル等が好適に用いられる。
ただし、このようなセグメントの含有量は10重量%未満であることが好ましい。10重量%以上であると、シェルのガスバリア性が低下してしまうことがある。
【0029】
上記共重合体の重量平均分子量の好ましい下限は10万、好ましい上限は200万である。10万未満であると、シェルの強度が低下することがあり、200万を超えると、シェルの強度が高くなりすぎ、発泡倍率が低下することがある。
【0030】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルにおいて、上記シェルの架橋度の好ましい下限は75重量%である。75重量%未満であると、最大発泡温度が低くなることがある。
上記架橋度は、架橋剤による共有結合性架橋と、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基と上記金属カチオンとによってイオン架橋された架橋の双方を含む。
なお、本発明の熱膨張性マイクロカプセルでは、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基の一部又は全部がイオン化して、カルボキシルアニオンとなり、上記金属カチオンをカウンターカチオンとしてイオン結合を形成することから、上記金属カチオンの含有量によって架橋度を容易に調節することができる。
また、上記イオン架橋は、例えば、赤外吸収スペクトル測定を行った場合に、1500〜1600cm−1付近にCOO−の非対称伸縮運動による吸収が存在することにより確認することができる。
【0031】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルにおいて、上記シェルの中和度の好ましい下限は5%である。5%未満であると、最大発泡温度が低くなることがある。
なお、上記中和度は、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基のうち、上記金属カチオンが結合したカルボキシル基の割合を表す。
【0032】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルとして、ニトリル系モノマーに由来するセグメントと、カルボキシル基を有するエステル残基を除いた炭素数3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーに由来するセグメントとを有する共重合体を含有するシェルを有するものを用いる場合、上記金属カチオンとしては、2〜3価のものを用いることが好ましい。
上記金属カチオンは、シェルを構成する共重合体のカルボキシル基と反応して共重合体がイオン架橋していると考えられることから、耐熱性が向上し、高温領域において長時間破裂、収縮の起こらない熱膨張性マイクロカプセルとすることが可能となる。また、高温領域においてもシェルの弾性率が低下しにくいことから、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工を行う場合であっても、熱膨張性マイクロカプセルの破裂、収縮が起こることがない。
【0033】
上記シェルにおける上記金属カチオンの含有量の下限は0.1重量%、上限は10重量%である。0.1重量%未満であると、充分に共重合体をイオン架橋できず、耐熱性を向上させる効果が得られず、逆に、10重量%を超えると、発泡特性が著しく悪くなる。
【0034】
また、上記共重合体の有するカルボキシル基と金属カチオンとを適度にイオン架橋させるためには、所望の架橋度に応じて、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基あたりの金属カチオンの量を調整する必要があるが、金属カチオンの量の好ましい下限は、上記共重合体のカルボン酸量に対して0.01倍モル、好ましい上限は0.5倍モルである。0.01倍モル未満であると、架橋度が上がらず耐熱性に効果が得られにくい。0.5倍モルを超えで配合してもそれ以上の効果が得られない。より好ましい下限は0.05倍モルである。
【0035】
上記シェルは、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0036】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上記シェルにコア剤として揮発性膨張剤が内包されている。
上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質が好ましく、低沸点有機溶剤が好適である。
上記揮発性膨張剤としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素;CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルでは、上述した揮発性膨張剤のなかでも、沸点が60℃以上の炭化水素を用いることが好ましい。このような炭化水素を用いることにより、成形時の高温、高剪断条件下においても、熱膨張性マイクロカプセルが容易に破壊されず、耐熱性に優れた熱膨張性マイクロカプセルとすることができる。
【0038】
上記沸点が60℃以上の炭化水素としては、例えば、n−へキサン、ヘプタン、イソオクタン等が挙げられる。なお、60℃以上の沸点を有する炭化水素は、それぞれ単独で用いてもよく、沸点が60℃未満の炭化水素と組み合わせて用いてもよい。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を用いることとしてもよい。
【0039】
また、揮発性膨張剤として、2種以上のものを用いる場合は、沸点が最も低い揮発性膨張剤と、沸点が最も高い揮発性膨張剤との沸点の差が60℃以上であるものを用いることが好ましい。これにより、シリンダー内での熱膨張性マイクロカプセルのへたり防止と、金型内での発泡性とを両立させることが可能となる。これらの組み合わせとしては、例えば、n−ペンタンとイソオクタンとの組み合わせ等が挙げられる。
【0040】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径の好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。5μm未満であると、得られる成形体の気泡が小さすぎるため、成形体の軽量化が不充分となることがあり、100μmを超えると、得られる成形体の気泡が大きくなりすぎるため、強度等の面で問題となることがある。より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は40μmである。
【0041】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、水性媒体を調製する工程、ニトリル系モノマー、カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数が3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー及び揮発性膨張剤を含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、金属カチオンを生じる化合物を添加して、上記カルボキシル基と金属カチオンとを反応させる工程、並びに、分散液を加熱することによりモノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
【0042】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体例には例えば、重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0043】
上記分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0044】
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類、マイクロカプセルの粒子径等により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0045】
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0046】
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
【0047】
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0048】
上記コロイダルシリカの添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、ビニル系モノマー100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。更に好ましい下限は2重量部、更に好ましい上限は10重量部である。また、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量についても熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が2重量部である。
【0049】
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルが得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0〜100重量部が好ましい。
【0050】
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3〜4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
【0051】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、ニトリル系モノマー、カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数が3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー及び揮発性膨張剤を含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。この工程では、モノマー及び揮発性膨張剤を別々に水性分散媒体に添加して、水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に添加しても良い。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0052】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、上記モノマーに可溶な過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の過酸化ジアシル;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のパーオキシエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0053】
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法としては、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
【0054】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、上記金属カチオンを生じる化合物(以下、金属カチオン供給体ともいう)を添加して、上記カルボキシル基と金属カチオンとを反応させる工程を行う。この工程を行うことにより、上記金属カチオンとカルボキシル基とが反応してイオン架橋することから、耐熱性が向上し、高温領域において長時間破裂、収縮の起こらない熱膨張性マイクロカプセルを製造することが可能となる。また、上記シェルの弾性率が向上することから、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工を行う場合であっても、熱膨張性マイクロカプセルの破裂、収縮が起こることがない。
【0055】
上記金属カチオン供給体は、上記モノマーを重合させる前の分散液中に添加してもよく、上記モノマーを重合した後に添加してもよい。また、上記金属カチオン供給体は、それ自体を直接添加してもよく、水溶液等の溶液の形態で添加してもよい。
【0056】
上記金属カチオン供給体としては、特に限定されず、例えば、上述した金属カチオンの酸化物、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、亜硝酸塩、亜硫酸塩やオクチル酸、ステアリン酸等の各有機酸の塩等が挙げられる。これらのなかでは、水酸化物、塩化物、カルボン酸塩が好ましい。具体的には、Zn(OH)、ZnO、Mg(OH)等が好ましく、高温領域における弾性率の低下が少ないことから、Zn(OH)がより好ましい。
【0057】
また、上記金属カチオン供給体を添加する場合は、予めアルカリ金属の水酸化物を添加した後、上記アルカリ金属の水酸化物以外の金属カチオン供給体を添加することが好ましい。上記アルカリ金属の水酸化物を予め添加することにより、カルボキシル基等の官能基が活性化され、上記金属カチオンとの反応を促進させることができる。
また、Zn(OH)は水溶性が低く、添加によって所望のイオン架橋を得ることができないことがあるが、このような方法を用いることで、例えば、NaOHを添加した後、水溶液の高いZnClを添加することにより、Zn(OH)を添加した場合と同様の効果を得ることができる。
【0058】
上記アルカリ金属の水酸化物としては特に限定されないが、Na、K、Liの水酸化物が好ましく、なかでも塩基性の強いNa、Kの水酸化物を用いることが好ましい。
【0059】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上述した工程を経て得られた分散液を加熱することによりモノマーを重合させる工程を行うことにより、製造することができる。このような方法により製造された熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度が高く、耐熱性に優れ、高温領域や成形加工時においても破裂、収縮することがない。
【0060】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルに、熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂を加えた樹脂組成物又はマスターバッチペレットを、射出成形等の成形方法を用いて成形し、成形時の加熱により、上記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、発泡成形体を製造することができる。このような発泡成形体もまた本発明の1つである。
このような方法で得られる本発明の発泡成形体は、高外観品質が得られ、独立気泡が均一に形成されており、軽量性、断熱性、耐衝撃性、剛性等に優れるものとなり、住宅用建材、自動車用部材、靴底等の用途に好適に用いることができる。
【0061】
上記熱可塑性樹脂としては、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン等の一般的な熱可塑性樹脂;ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。また、エチレン系、塩化ビニル系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系等の熱可塑性エラストマーを使用してもよく、これらの樹脂を併用して使用してもよい。
【0062】
上記熱可塑性樹脂100重量部に熱膨張性マイクロカプセルの添加量は0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部が適量である。また、重曹などの化学発泡剤と併用することも出来る。
【0063】
上記マスターバッチペレットを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂、各種添加剤等の原材料を、同方向2軸押出機等を用いて予め混練する。次いで、所定温度まで加熱し、熱膨張マイクロカプセル等の発泡剤を添加した後、更に混練することにより得られる混練物を、ペレタイザーにて所望の大きさに切断することによりペレット形状にしてマスターバッチペレットとする方法等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂や熱膨張性マイクロカプセル等の原材料をバッチ式の混練機で混練した後、造粒機で造粒することによりペレット形状のマスターバッチペレットを製造してもよい。
上記混練機としては、熱膨張性マイクロカプセルを破壊することなく混練できるものであれば特に限定されず、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0064】
本発明の発泡成形体の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。
【発明の効果】
【0065】
本発明は、優れた耐熱性と発泡倍率を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等にも好適に使用可能であり、特に射出成形に用いられた場合に発泡成形体表面において高い外観品質が得られる熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
重合反応容器に、水8Lと、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製)10重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.3重量部を投入し、水性分散媒体を調製した。次いで、表1に示した配合量のモノマー、架橋剤、揮発性膨張剤及び重合開始剤からなる油性混合液を水溶性分散媒体に添加し、更に表1に示した配合量の金属カチオン供給体を添加することにより、分散液を調製した。得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器(20L)内へ仕込み、加圧(0.2MPa)し、60℃で20時間反応させることにより、反応生成物を調製した。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル1〜6を得た。
【0068】
(熱膨張性マイクロカプセルの評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた熱膨張性マイクロカプセル1〜6の性能(体積平均粒子径、発泡開始温度、最大発泡温度、最大変位量)について、性能を評価した。結果を表1に示した。
【0069】
(1−1)体積平均粒子径
粒度分布径測定器(LA−910、HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径を測定した。
【0070】
(1−2)発泡開始温度、最大発泡温度、最大変位量、50%変位時発泡温度
熱機械分析装置(TMA)(TMA2940、TA instruments社製)を用い、発泡開始温度(Ts)、最大変位量(Dmax)及び最大発泡温度(Tmax)を測定した。具体的には、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から220℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度、その変位の最大値を最大変位量とし、最大変位量における温度を最大発泡温度とした。
【0071】
【表1】

【0072】
(実施例4〜7、比較例4〜6)
(マスターバッチペレットの作製)
粉体状及びペレット状の低密度ポリエチレン100重量部と、滑剤としてエチレンビスステアリン酸アマイド0.2重量部とをバンバリーミキサーで混練し、約140℃になったところで得られた熱膨張性マイクロカプセル50重量部を添加し、更に30秒間混練して押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチペレットを得た。
【0073】
(成形体の作製)
得られたマスターバッチペレット5重量部と、ポリプロピレン樹脂100重量部とを混合し、得られた混合ペレットをアキュムレーターを備えたスクリュー式の射出成形機のホッパーに供給して溶融混練し、射出成形を行い、板状の成形体を得た。なお、成形条件は、シリンダー温度:200℃、射出速度:60mm/sec、型開遅延時間:0秒、金型温度:40℃とした。
【0074】
(成形体の評価)
実施例4〜7及び比較例4〜6で得られた成形体について、性能(発泡倍率、外観、密度)を評価した。結果を表2に示した。
【0075】
(2−1)発泡倍率
発泡後の成形体の板厚を発泡前の成形体の板厚で除した値を算出し、発泡倍率とした。
【0076】
(2−2)外観
得られた成形体の表面状態を最大山高さとして表面粗さ形状測定機(サーフコム130A/480A、東京精密社製)にて測定した。
【0077】
(2−3)密度の測定
得られた成形体の密度をJIS K−7112 A法(水中置換法)に準拠した方法により測定した。
【0078】
【表2】

【0079】
表2に示すように、実施例4〜7では発泡倍率が高く、また、成形品表面の外観品質も良好であった。一方、比較例4〜6では発泡倍率の高いものは、外観品質が悪く、外観品質の良いものは、発泡倍率が低く、双方を満足するものは出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、優れた耐熱性と発泡倍率を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等にも好適に使用可能であり、特に射出成形に用いられた場合に発泡成形体表面において高い外観品質が得られる熱膨張性マイクロカプセル及び該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、最大変位量(Dmax)が1000μm以上、最大発泡温度(Tmax)が210℃以上、かつ、発泡開始温度(Ts)が190℃以上であることを特徴とする熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項2】
ニトリル系モノマーを60重量%以上、非ニトリル系モノマーを40重量%以下、金属カチオンを0.1〜10重量%及び架橋剤を含有するビニル系モノマー組成物を重合させてなるシェルに、コア剤としてシェルの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されていることを特徴とする請求項1記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項3】
シェルは、ニトリル系モノマーに由来するセグメントと、カルボキシル基を有し、エステル残基を除いた炭素数が3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーに由来するセグメントとを有する共重合体、及び、2〜3価の金属カチオン0.1〜10重量%を含有し、コア剤は、沸点が60℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項4】
射出成形に用いられることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の熱膨張性マイクロカプセルと熱可塑性樹脂を用いてなることを特徴とする発泡成形体。

【公開番号】特開2008−133366(P2008−133366A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320415(P2006−320415)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】