説明

熱電併給システム

【課題】 省エネルギ性等を追求しつつ、運転時間帯に対するユーザ要望を取り入れた運転計画が可能な熱電併給システムを提供する。
【解決手段】 運転制御装置7が、第1運転時間帯T1を設定する運転時間帯入力部40、電力需要実績データと熱需要実績データに基づいて、電力需要予測データD1及び熱需要予測データD2を生成する需要予測部41、及び、第1運転時間帯T1が設定されている場合、予め設定された複数の運転パターンの中から、電力需要予測データD1と熱需要予測データD2に基づいて算出される運転パターンのエネルギ消費量の削減量に関する第1の評価により複数の運転パターンを選択し、運転パターンにより規定される熱電併給装置の運転時間が第1運転時間帯T1と重複する時間または比率が最大のものを第1運転パターンとして設定する運転計画部42を備え、当該第1運転パターンに基づいて、熱電併給装置の運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電併給システムに関し、特に、熱需要に対応した運転計画技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO排出量の削減や省エネルギを志向したガスエンジン型或いは燃料電池型の熱電併給システムの開発が活発であり実用化も進んでいる。
【0003】
当該熱電併給システムは、ガスエンジン型或いは燃料電池型の熱電併給装置を備え、熱電併給装置の発電電力を電気機器等の電力負荷に供給するとともに、熱電併給装置の発電時に発生する排熱を例えば温水熱に変換して回収し、貯湯タンクに蓄熱し、給湯部や暖房機器等の熱負荷に供給するように構成される。従って、当該熱電併給システムは、電力のみならず、回収された排熱を有効利用できるため、全体的なエネルギ効率の高さで注目を集めている。更に、当該熱電併給システムを商用電力と系統連系して使用することで、商用電力の受電量を削減でき、エネルギ消費量、CO排出量及びエネルギコストを削減でき好適である。
【0004】
ところで、一般家庭やオフィス等では、通常、電力需要と熱需要は別個に、しかも日々変化して発生するため、熱電併給装置では、運転制御手段を備え、例えば24時間分の電力需要及び熱需要の変化を10分〜1時間程度の比較的短い時間間隔で予測し、当該予測した電力需要及び熱需要に基づいて、最適な運転計画を予め設定して、当該運転計画に基づいて運転制御手段が熱電併給装置の運転を制御することが行われている。電力需要及び熱需要の予測には、日々の運転時に電力需要及び熱需要の実績データを取得して蓄積し、当該蓄積された実績データに基づいて、種々の予測手法を用いて当該予測処理が行われる。また、最適な運転計画の設定には、仮の運転パターンに基づいて熱電併給装置を運転させた場合に必要なエネルギ消費量と、熱電併給装置を運転させない場合に必要なエネルギ消費量を夫々算出して、両エネルギ消費量の差からエネルギ削減量を求め、エネルギ削減量が最も大きくなる運転パターンを運転計画として設定することが行われている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−127867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、一般的な熱電併給装置では、運転制御手段による運転制御が自動的に行われるため、ユーザが特定の時間帯に熱電併給装置を運転させることが困難であり、仮に強制的に運転させた場合に、必ずしも電力需要や熱需要に適合していない可能性があり、省エネルギ、省CO排出量、省コストの観点から好ましくない場合もあり得る。
【0007】
ところで、電力需要や熱需要の予測は、あくまでも過去の実績データに基づく予測であるため、突発的な需要の発生や消滅は予測しきれないため、当該事情を把握したユーザが、特定の時間帯に熱電併給装置を強制運転できるようにすることが好ましい場合もある。更に、例えば、電気自動車の充電等のために、通常の電力需要や熱需要とは別の要請から特定の時間帯に熱電併給装置を強制運転させたい場合もある。しかし、ユーザが設定した時間帯に熱電併給装置を強制運転したとして、仮に特定の電力需要に対して十分に電力供給できたとしても、熱需要に対する熱供給や通常の電力需要に対する電力供給が不十分となる可能性もあり、熱電併給装置の運転時間を更に延長した方が、省エネルギ、省CO排出量、省コストの観点から更に好ましい場合もある。
【0008】
本発明は、熱電併給システムの運転計画における上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、省エネルギ性等を追求しつつ、運転時間帯に対するユーザ要望を取り入れた運転計画が可能な熱電併給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、電力と熱を併せて発生する熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生した熱を回収し、回収した熱を温水に変換して蓄熱して熱負荷に供給する熱供給装置と、前記熱電併給装置の運転を制御する運転制御装置と、を備えた熱電併給システムであって、
前記運転制御装置が、電力需要と熱需要の各実績データを蓄積し、蓄積された電力需要実績データと熱需要実績データに基づいて、運転計画対象時間範囲を含む予測時間範囲における電力需要と熱需要の所定の時間間隔における時間変化を予測し、電力需要予測データ及び熱需要予測データとして記憶する需要予測部と、前記熱電併給装置の運転希望時間帯として第1運転時間帯が設定されている場合、予め設定された複数の運転パターンの中から、前記需要予測部が記憶した前記電力需要予測データと前記熱需要予測データに基づいて算出される前記運転パターンのエネルギ消費に関する所定の指標に対する第1の評価と、前記運転パターンにより規定される前記熱電併給装置の運転時間が前記第1運転時間帯と重複する時間または比率に対する第2の評価の内の何れか一方の評価結果に基づいて複数の前記運転パターンを選択し、選択された前記運転パターンの中から前記第1及び第2の評価の内の他方の評価結果が最良の前記運転パターンを第1運転パターンとして選択するか、或いは、前記第1及び第2の評価を複合させた第3の評価の評価結果が最良の前記運転パターンを第1運転パターンとして選択する運転計画部と、を備え、前記運転計画部が選択した前記第1運転パターンに基づいて、前記熱電併給装置の運転を制御することを特徴とする熱電併給システムを提供する。
【0010】
更に、上記特徴の熱電併給システムは、前記所定の指標が、前記運転パターンに基づいて前記熱電併給装置を運転して前記電力需要予測データと前記熱需要予測データで規定される電力需要と熱需要に対して電力及び熱の供給を行った場合の、前記熱電併給装置を運転せずに代替エネルギを消費して当該電力需要と熱需要に対して電力及び熱の供給を行った場合に対するエネルギ消費量、CO排出量及びエネルギコストの何れか1つの削減量または前記削減量から一義的に導出される換算量であり、前記第1の評価は、前記削減量または前記換算量が所定の基準値以上、或いは、上位所定番目の前記削減量または前記換算量以上であることが好ましい。尚、当該換算量として、例えば、前記削減量を代替エネルギを消費して当該電力需要と熱需要に対して電力及び熱の供給を行った場合のエネルギ消費量で除した比率(エネルギ消費量の削減率)等が想定される。
【0011】
更に、上記特徴の熱電併給システムは、前記第2の評価が、前記第1運転時間帯と重複する時間または比率が所定の基準値以上、或いは、上位所定番目の値以上であることが好ましい。
【0012】
更に、上記特徴の熱電併給システムは、前記運転計画部は、前記運転計画対象時間範囲の開始時刻またはそれより前に前記第1運転パターンの選択処理を実行することが好ましい。
【0013】
更に、上記特徴の熱電併給システムは、前記熱電併給装置の運転希望時間帯を外部から受け付けて前記第1運転時間帯として設定する運転時間帯入力部を備えることが好ましい。この場合、更に、前記運転時間帯入力部が、前記運転計画対象時間範囲の途中において前記第1運転時間帯の入力を受け付けて設定を行った場合、前記運転計画部が、前記運転計画対象時間範囲の前記第1運転時間帯の設定時点以降の時間範囲に対して、前記第1運転パターンの選択処理を実行することが好ましい。
【0014】
更に、上記特徴の熱電併給システムは、前記第1運転時間帯が設定されていない場合、前記運転計画部は、予め設定された複数の運転パターンの中から、前記第1の評価の評価結果が最良の前記運転パターンを前記第1運転パターンとして選択することが好ましい。
【0015】
更に、上記特徴の熱電併給システムは、商用電力と系統連系接続して発電電力を前記商用電力側に逆潮流可能に構成された太陽光発電装置を備え、前記熱電併給装置が、前記商用電力と系統連系接続し、発電電力を前記商用電力側に逆潮流しないよう構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記特徴の熱電併給システムによれば、エネルギ消費量、CO排出量及びエネルギコストの削減等のエネルギ消費に関する所定の指標に対する第1の評価と、例えばユーザが熱電併給装置の運転を希望する時間帯等として設定された第1運転時間帯に関する第2の評価の夫々の評価結果が一定の基準を満足するように熱電併給装置の運転計画が作成されるため、熱電併給装置の運転時間帯に関する外部から入力されたユーザ要望等を反映しつつ、省エネルギ、省CO排出量、或いは、省エネルギコストでの熱電併給装置の運転を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る熱電併給システムの一実施形態における概略構成を示す図
【図2】本発明に係る熱電併給システムの運転制御装置のブロック構成の一例を示すブロック図
【図3】本発明に係る熱電併給システムの需要予測部が予測した電力需要と熱需要の時間変化の一例を示すグラフ
【図4】本発明に係る熱電併給システムの運転制御装置による運転計画の作成処理過程の一例を示すフローチャート
【図5】本発明に係る熱電併給システムの運転制御装置が行うエネルギ消費量の算出で使用されるデータの一例を示す説明図
【図6】本発明に係る熱電併給システムの運転制御装置による運転計画の修正処理過程の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る熱電併給システムの一実施形態につき、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、本熱電併給システム1の全体の概略構成を示す。本熱電併給システム1は、外部から燃料供給を受けて発電する発電ユニット2と、発電ユニット2の運転時に発生する排熱を回収して所定の熱負荷に供給する熱供給ユニット3を備えて構成される。
【0020】
図1に示すように、発電ユニット2は、一例として、電力と熱を併せて発生する熱電併給装置である燃料電池システム4、燃料電池システム4から生成される直流電力を交流電力に変換するインバータ装置5、冷却液循環経路6、及び、発電ユニット2の運転を制御する第1運転制御装置7を備える。尚、冷却液循環経路6には、冷却液を循環させる電動の循環ポンプ8と冷却液を加熱する電気ヒータ9が設けられている。燃料電池システム4は、メタンを主成分とする都市ガス13Aを燃料として水素を生成する改質器等から成る水素製造装置と、固体高分子形等の燃料電池と、燃料電池システム4の運転に必要な補機類等を備えて構成される。尚、燃料電池システム4及び各構成要素の詳細は周知の内容であるので説明は省略する。冷却液循環経路6は、燃料電池システム4を冷却してオーバヒートを防止するとともに、燃料電池システム4で発生した排熱を回収するために設けられている。
【0021】
図1に示すように、発電ユニット2のインバータ装置5は、商用電源10と系統連系接続し、燃料電池システム4の発電電力を、商用電源10から受電する受電電力と同じ周波数及び電圧の交流電力に変換して、発電電力供給ライン11を介して電力負荷12に供給するように構成されている。商用電源10は、例えば、単相3線式100V/200Vであり、受電電力供給ライン13を介して、受電電力が電力負荷12に供給される。受電電力供給ライン13には、発電電力供給ライン11との合流点より上流側に電力計14が設けられている。
【0022】
第1運転制御装置7は、マイクロコンピュータ等を用いて構成され、後述する燃料電池システム4の運転計画を作成し、当該運転計画と電力計14が検出した検出電力値に基づいて、インバータ装置5から出力される電力が商用電源10側に逆潮流しないように、電力負荷12に対して電力負荷追従する運転制御を行う。第1運転制御装置7は、燃料電池システム4の運転時に排熱回収が行われるように、循環ポンプ8の運転を制御するとともに、燃料電池システム4の発電電力に余剰が生じた場合には、逆潮流が生じないように、電気ヒータ9の運転を制御して、余剰電力を熱に変換して、熱供給ユニット3側に供給するように構成されている。尚、電力計14が検出した検出電力値は、後述する電力需要を予測するために使用される。電力負荷12は、本熱電併給システム1が家庭用の場合には、テレビ、冷蔵庫、照明等の家庭用の電気機器が想定される。また、商用電源10からの受電電力及び燃料電池システム4の発電電力は、燃料電池システム4内の補機類でも消費される。
【0023】
尚、本熱電併給システム1と合わせて太陽光発電システム15も備える場合は、図1において破線の枠内に表示するように、太陽光発電システム15に内蔵されているインバータ装置(不図示)は、発電電力供給ライン11の電力計14より上流側で商用電源10と系統連系接続し、燃料電池システム4の発電電力を、商用電源10から受電する受電電力と同じ周波数及び電圧の交流電力に変換して、発電電力供給ライン11を介して電力負荷12に供給するように構成される。太陽光発電システム15は、発電電力に余剰が生じる場合は、商用電源10側に逆潮流させて余剰電力を売電する。
【0024】
図1に示すように、熱供給ユニット3は、一例として、貯湯タンク16、補助熱源機17、湯水循環経路18、熱源用循環経路19、熱媒循環経路20、電動の循環ポンプ21〜23、熱交換器24〜26、三方弁27,28、二方弁(断続弁)29、逆止弁30、給水路31、ラジエータ32、給湯熱負荷計測手段33、循環熱負荷計測手段34、及び、熱供給ユニット3の運転を制御する第2運転制御装置35を備えて、給湯負荷36に対して温水を供給し、循環温水負荷37に対して、温水熱を供給するように構成されている。本熱電併給システム1が家庭用の場合には、給湯負荷36として、例えば、台所、洗面所、浴室等に設けられた混合栓、温水シャワー、及び、風呂の湯はり時の給湯口等が想定され、また、循環温水負荷37として、例えば、温水床暖房等の温水暖房端末や、風呂の追い焚き時の浴槽等が想定される。
【0025】
貯湯タンク16は、例えば、200L(リットル)の貯湯容量のものを使用し、発電ユニット2の燃料電池が固体高分子形の場合には、約60℃の温水を貯湯する。貯湯タンク16には、貯湯量(高温水の量)を検出するために、一例として、タンク内の上部から下部にかけて4箇所にタンク内の温水温度を検出するサーミスタからなる水温計(不図示)が設置されている。また、貯湯タンク16の下部と上部に夫々入出水口38,39設けられ、下部の入出水口38は給水路31を介して上水道等の給水源と連絡している。
【0026】
湯水循環経路18は、貯湯タンク16の下部の入出水口38と上部の入出水口39を連絡する管路で構成され、途中に、三方弁27と循環ポンプ21と熱交換器24を備える。また、本実施形態では、湯水循環経路18は、入出水口38と三方弁27の間で二股に分岐し、一方の分岐路にラジエータ32が介装されており、入出水口38から取り出された湯水は、三方弁27を制御することで、2つの分岐路の何れか一方を通過するように制御される。
【0027】
補助熱源機17は、例えば、内部に送風機、ガスバーナ、熱交換器を備え、都市ガス13Aを燃料とするガス給湯器として構成される。補助熱源機17は、貯湯タンク16の上部の入出水口39からの温水または湯水循環経路18の熱交換器24を通過した温水を加熱して、給湯負荷36に供給する場合、或いは、熱源用循環経路19を循環する湯水を加熱して、熱交換器26及び熱媒循環経路20を経由して循環温水負荷37に対して、温水熱を供給する場合の熱源として使用される。
【0028】
冷却液循環経路6は、燃料電池システム4からの往路上に設けられた三方弁28で二股に分岐し、一方の分岐路に湯水循環経路18との間で熱交換を行う熱交換器24が設けられ、他方の分岐路に熱源用循環経路19との間で熱交換を行う熱交換器25が設けられ、2つの分岐路は夫々熱交換器24,25の下流側で合流して燃料電池システム4に向かう復路となり、循環ポンプ8に連絡する。
【0029】
熱源用循環経路19は、補助熱源機17の熱交換器の出水口から、熱交換器26、二方弁(断続弁)29、循環ポンプ22、熱交換器25を順番に通過して、補助熱源機17の熱交換器の入水口に戻る管路で構成される。
【0030】
湯水循環経路18の循環ポンプ21の下流側と熱源用循環経路19の熱交換器25と補助熱源機17の中間点が、逆止弁30を介して連通しており、貯湯タンク16の上部の入出水口39からの温水または湯水循環経路18の熱交換器24を通過した温水が、必要に応じて補助熱源機17で加熱されて、給湯負荷36に供給される構成となっている。
【0031】
熱媒循環経路20は、循環温水負荷37から循環ポンプ23と熱交換器26を経由して循環温水負荷37に戻る管路で構成される。
【0032】
給湯熱負荷計測手段33と循環熱負荷計測手段34は、後述する熱需要を予測するために熱需要の実績値を蓄積するための手段で、夫々サーミスタ等の水温計と流量計で構成される。給湯熱負荷計測手段33は、熱源用循環経路19より給湯負荷36側の給湯経路上に設けられ、循環熱負荷計測手段34は、熱媒循環経路20上または循環温水負荷37内に設けられている。
【0033】
また、図1に示す熱供給ユニット3の各配管には、各種弁、水温計、流量計等が介装されているが、上記以外にも、排水口、逃し弁、逆止弁、減圧弁、圧力スイッチ、圧力センサ、バキュームブレーカー等が必要に応じて設置されている。
【0034】
第2運転制御装置35は、マイクロコンピュータ等を用いて構成され、燃料電池システム4の運転状態及び熱供給ユニット3の運転モードに応じて、熱供給ユニット3内の水温計や流量計等の検出値に基づいて、循環ポンプ21〜23の運転、補助熱源機17の動作、三方弁27,28の通流方向、二方弁(断続弁)29の開閉、ラジエータ32の運転等を制御する。また、第2運転制御装置35は、上記制御を、必要に応じて第1運転制御装置7と連携して行う。循環ポンプ21は、排熱回収により貯湯タンク16を貯湯する場合に作動し、循環ポンプ22,23は、循環温水負荷37の運転時に作動するように制御される。
【0035】
燃料電池システム4が運転状態の場合は、排熱を回収するために発電ユニット2側の循環ポンプ8が作動する。貯湯タンク16の貯湯量が満状態でない場合は、循環ポンプ21を作動させ、湯水循環経路18の分岐路がラジエータ32を通過しない側となるように三方弁27を制御し、冷却液循環経路6の分岐路が熱交換器24側を通過するように三方弁28を制御することにより、熱交換器24において冷却液循環経路6で回収された排熱により湯水循環経路18内を循環する湯水が加熱され、貯湯タンク16に貯湯される。循環温水負荷37での熱消費がなく、貯湯タンク16の貯湯量が満状態の場合には、湯水循環経路18の分岐路がラジエータ32を通過する側となるように三方弁27を制御する。一方、循環温水負荷37で熱消費できる場合は、冷却液循環経路6の分岐路が熱交換器24側を通過するように三方弁28を制御し、更に、循環ポンプ22,23を作動させることにより、熱交換器25,26を順次経由して、冷却液循環経路6で回収された排熱を循環温水負荷37側に回収することができる。
【0036】
第2運転制御装置35は、上記排熱回収の制御以外にも、給湯時、及び、循環温水負荷37への熱供給時の制御を行うが、その詳細な制御内容は、本発明の本旨ではないので、説明は省略する。
【0037】
尚、第1運転制御装置7と第2運転制御装置35は、夫々独立して設けても良いが、両運転制御装置7,35を統合して1つの運転制御装置として構成しても良い。
【0038】
次に、第1運転制御装置7による、燃料電池システム4の運転計画の作成処理について、図2乃至図5を参照して説明する。
【0039】
図2に示すように、第1運転制御装置7の運転計画作成処理に係る部分は、運転時間帯入力部40、需要予測部41、及び、運転計画部42を備えて構成され、当該各部40〜42は、後述する処理を、マイクロコンピュータを構成する演算処理手段及び記憶手段を用いて、予めマイクロコンピュータ内にプログラムされた手順で実行するように構成されている。
【0040】
運転時間帯入力部40は、例えばリモコン端末等の操作端末43からの使用者の入力操作により入力された熱電併給装置の運転希望時間帯を、第1運転時間帯T1として設定し、上記記憶手段の所定の記憶領域に記憶する。当該第1運転時間帯T1の設定は、運転計画部42が運転計画作成処理の実行を開始する前に完了していることを原則とするが、本実施形態では、運転計画作成後に設定される場合にも対応する。第1運転時間帯T1は、例えば、開始時刻T1aと終了時刻T1bで構成され、各時刻は、例えば30分或いは1時間刻みで指定可能とする。従って、第1運転時間帯T1は、(T1a,T1b)=(13:00,15:00)等と設定される。本実施形態では、一旦設定された第1運転時間帯T1は、取消或いは変更がなされない限り、設定後の各運転計画作成日に対して共通して使用されるものとする。
【0041】
需要予測部41は、電力負荷12における電力需要と、給湯負荷36と循環温水負荷37における熱需要の各実績データを蓄積し、蓄積された電力需要実績データと熱需要実績データに基づいて、運転計画対象時間範囲T2を含む予測時間範囲T3における電力需要と熱需要の所定の時間間隔における時間変化を予測し、電力需要予測データD1及び熱需要予測データD2として、上記記憶手段の所定の記憶領域に記憶する。
【0042】
電力需要の実績データは、電力計14が検出した検出電力値と燃料電池システム4の出力電力値を、例えば、30分或いは1時間等の所定の単位時間毎に集計したデータを、上記記憶手段の所定の記憶領域に記憶して使用する。また、熱需要の実績データは、給湯熱負荷計測手段33と循環熱負荷計測手段34が検出した検出熱量を、例えば、30分或いは1時間等の所定の単位時間毎に集計したデータを、上記記憶手段の所定の記憶領域に記憶して使用する。
【0043】
また、本実施形態では、一例として、運転計画対象時間範囲T2と予測時間範囲T3は、夫々、運転計画作成日当日の午前3時(3:00)から翌日の午前3時(27:00)の24時間とする。電力需要予測データD1及び熱需要予測データD2の時間間隔は、電力需要実績データと熱需要実績データの時間間隔と同様に、例えば、30分或いは1時間間隔とする。電力需要予測データD1及び熱需要予測データD2の予測手法としては、例えば、運転計画作成日と同じ曜日の特異日(祝日等)を除く過去4週間分の実績データを各時間間隔別に平均したものを用いる等の既存の予測手法を用いる。当該予測手法としては種々のものが利用できる。図3に、或る予測時間範囲T3における電力需要予測データD1及び熱需要予測データD2の一例をグラフ化したものを例示する。尚、図3では、時間間隔を1時間とし、電力需要予測データD1を折れ線グラフで、熱需要予測データD2を棒グラフで表示している。
【0044】
運転計画部42は、図4のフローチャートに示すように、運転計画作成日当日の運転計画対象時間範囲T2の開始時刻(午前3時)以前(例えば、午前2時55分)に、以下のステップ#1〜ステップ#5の処理を実行することにより、予め設定された複数の運転パターンの中から、1つの運転パターンを第1運転パターンとして選択する運転計画処理を実行する。当該運転計画処理で使用される運転パターンは、燃料電池システム4の起動時刻と停止時刻で規定され、起動時刻は運転計画作成日当日の午前3時(3:00)から翌日の午前1時(25:00)の22時間の中から所定時間(例えば1時間)刻みで選択され、停止時刻は、運転計画作成日当日の午前5時(5:00)から翌日の午前3時(27:00)の22時間の中から所定時間(例えば1時間)刻みで、且つ、選択された起動時刻より2時間以上後であることを条件として選択され、起動時刻と停止時刻の組み合わせが網羅的に設定される。つまり、(起動時刻,停止時刻)=(3:00,5:00),(3:00,6:00),(3:00,7:00),……,(24:00,26:00)(24:00,27:00),(25:00,27:00)として複数設定される。
【0045】
先ず、予め設定された複数の運転パターンに対して、需要予測部41が記憶した電力需要予測データD1及び熱需要予測データD2に基づいて各運転パターンで燃料電池システム4の起動及び停止を行い、電力負荷追従運転を行った場合におけるエネルギ消費量の削減量ΔEを夫々算出する(ステップ#1)。エネルギ消費量の削減量ΔEの算出手法については別途説明する。
【0046】
次に、第1運転時間帯T1が設定されているか否かを判定する(ステップ#2)。第1運転時間帯T1が設定されていない場合は(ステップ#2でNO)、削減量ΔEが最大となる運転パターンを1つ選択して、第1運転パターンとして設定する(ステップ#3)。
【0047】
第1運転時間帯T1が設定されている場合は(ステップ#2でYES)、削減量ΔEが大きい順に上位所定数(例えば、5〜10程度の範囲で設定)の運転パターンを選定するか(第1の選定基準)、削減量ΔEが所定の基準値を超える複数の運転パターンを選定するか(第2の選定基準)、或いは、第2の選定基準での選定数が少な過ぎる場合(例えば、選定数が0〜2)等に第1の選定基準に切り替えて運転パターンを選定する(第3の選定基準)の何れか1つの選定基準に基づいて複数の運転パターンを選定する(ステップ#4)。
【0048】
引き続き、選択された複数の運転パターンと第1運転時間帯T1との重複時間を計算し、重複時間の最大の運転パターンを1つ選択して、第1運転パターンとして設定する(ステップ#5)。尚、重複時間の最大の運転パターンが複数抽出された場合は、その中の削減量ΔEが最大のものを1つ選択して、第1運転パターンとして設定する。更に、選択された複数の運転パターンの全てにおいて、重複時間が0の場合は、その中の削減量ΔEが最大のもの、或いは、第1運転時間帯T1との乖離が最小のものを1つ選択して、第1運転パターンとして設定する。更に、第1運転時間帯T1との乖離が最小の運転パターンが複数抽出された場合は、その中の削減量ΔEが最大のものを1つ選択して、第1運転パターンとして設定する。
【0049】
尚、上記運転計画処理において、ステップ#2の判定処理を最初に行い、判定結果がYESの場合に、ステップ#1、ステップ#4、ステップ#5の処理を順次実行し、判定結果がNOの場合に、ステップ#1、ステップ#3の処理を順次実行するようにしても良い。
【0050】
次に、エネルギ消費量の削減量ΔEの算出手法について説明する。削減量ΔEは、下記の数1に示すように、燃料電池システム4を運転させない場合のエネルギ消費量E2から、燃料電池システム4を運転させた場合のエネルギ消費量E1を差し引いて算出される。
【0051】
(数1)
ΔE=E2−E1
【0052】
燃料電池システム4を運転させた場合のエネルギ消費量E1は、下記の数2に示すように、運転パターンに従って起動停止させた上で稼働中は電力需要予測データD1で規定される予測電力負荷を最大限燃料電池システム4の発電電力で賄うように電力負荷追従運転を行った場合の燃料電池システム4の当該運転に要したエネルギ消費量(燃料消費量)E1cと、上記予測電力負荷を燃料電池システム4の発電電力で賄えなかった残余の不足電力負荷を商用電源10からの受電電力で賄った場合の商用電源10におけるエネルギ消費量E1eと、熱需要予測データD2で規定される予測熱負荷を燃料電池システム4の当該運転で発生した排熱の回収により賄えなかった不足熱負荷を補助熱源機17の発生熱量で補う場合の補助熱源機17でのエネルギ消費量(燃料消費量)E1gを合計して算出される。エネルギ消費量E1cは、予め設定されている発電出力別の発電効率に基づいて、電力負荷追従する発電電力を単位時間毎に当該発電効率で除したエネルギ消費量を合計して求める。エネルギ消費量E1eは、上記不足電力負荷を商用電源10の発電効率で除して算出する。エネルギ消費量E1gは、上記不足熱負荷を補助熱源機17の発熱効率で除して算出する。
【0053】
(数2)
E1=E1c+E1e+E1g
【0054】
ここで、上記電力負荷追従運転では、商用電源10側への逆潮流を発生させないことを条件としていることから、上記予測電力負荷が、燃料電池システム4の最小出力以下となった場合は、当該最小出力分の電力は、燃料電池システム4の補機類及び電気ヒータ9で消費される。電気ヒータ9が作動した場合には、電気ヒータ9での発生熱量は上記予測熱負荷の一部に充当されるため、その分上記不足熱負荷は減少するため、補助熱源機17でのエネルギ消費量E1gも減少する。また、燃料電池システム4の起動に伴うエネルギ損失や待機時間等を、上記算出処理で考慮するのが好ましい。以下、エネルギ消費量E1の算出について、より具体的に、図5の表を参照して説明する。
【0055】
図5は、エネルギ消費量E1の算出で使用されるデータを一覧表に纏めたもので、運転計画対象時間範囲T2における1時間毎の予測電力負荷(a)、発電出力(=発電電力量)(b)、不足電力量(c)、発生熱量(d)、発電効率(e)、発熱効率(f)、燃料消費量(g)、排熱ロス(h)、余剰電力量(i)、余剰熱量(j)、貯湯熱量(k)、貯湯放熱量(l)、予測熱負荷(m)、予測利用熱量(n)の一例を示している。
【0056】
図5に示すように、運転計画対象時間範囲T2の1時間毎の各時間区分において、項目(a)〜(n)の各値を求める。予測電力負荷(a)と予測熱負荷(m)は、電力需要予測データD1と熱需要予測データD2の当該時間区分毎の値として求められ、個々の運転パターンにおいて規定される運転時間帯における発電出力(b)を、予測電力負荷(a)に追従させて求める。補機類の運転に必要な電力量は発電出力(b)に追加される。
【0057】
ここで、予測電力負荷(a)が燃料電池システム4の最小出力以下である場合は、発電出力(b)は当該最小出力に設定され、その差分を余剰電力量(i)として算出する。一方、予測電力負荷(a)が燃料電池システム4の最大出力以上である場合は、発電出力(b)は当該最大出力に設定され、その差分を不足電力量(c)として算出する。
【0058】
各時間区分において、発電出力(b)とそれに対応する発電効率(e)から、燃料電池システム4の一次エネルギ消費量である燃料消費量(g)を算出し、更に、その燃料消費量(g)と燃料電池システム4の発熱効率(f)から燃料電池システム4の発生熱量(d)を算出する。
【0059】
更に、各時間区分において、貯湯タンク16の最大貯湯容量以下の範囲内で、発生熱量(d)から排熱ロス(h)を差し引いたものを積算し、それに余剰電力量(i)から求めた電気ヒータ9の発生熱量を加えたものから、貯湯タンク16において放熱される貯湯放熱量(l)と、予測熱負荷(m)として利用された予測利用熱量(n)とを差し引いた分を、貯湯タンク16に蓄熱できる貯湯熱量(k)として算出し、更に、貯湯タンク16の最大貯湯容量を超える分の熱量をラジエータ32で放熱される余剰熱量(j)として算出する。
【0060】
運転計画対象時間範囲T2における各時間区分の燃料消費量(g)を合計して、エネルギ消費量E1cが算出され、各時間区分の不足電力量(c)を合計してエネルギ消費量E1eが算出され、貯湯熱量(k)が予測利用熱量(n)よりも小さい場合にその差として算出される各時間区分の不足熱負荷を合計して、エネルギ消費量E1gが算出され、夫々を数2に代入して、燃料電池システム4を運転させた場合のエネルギ消費量E1が算出される。
【0061】
次に、燃料電池システム4を運転させない場合のエネルギ消費量E2は、下記の数3に示すように、上記予測電力負荷を全て商用電源10からの受電電力で賄った場合の商用電源10におけるエネルギ消費量E2eと、上記予測熱負荷を全て補助熱源機17の発生熱量で賄った場合の補助熱源機17でのエネルギ消費量(燃料消費量)E2gを合計して算出される。エネルギ消費量E2eは、上記予測電力負荷を商用電源10の発電効率で除して算出する。エネルギ消費量E2gは、上記予測熱負荷を補助熱源機17の発熱効率で除して算出する。
【0062】
(数3)
E2=E2e+E2g
【0063】
運転計画部42は、運転計画作成日当日の運転計画対象時間範囲T2が開始する以前に、運転計画処理を実行して、第1運転パターンを設定すると、当該第1運転パターンに基づいて、燃料電池システム4の起動及び停止を行い、実際に発生する電力負荷に対して電力負荷追従運転を行う。但し、前日に設定された第1運転パターンの停止時刻が午前3時で、当日に設定された第1運転パターンの開始時刻が午前3時の場合には、燃料電池システム4は、当日の午前3時に停止することなく連続運転される。
【0064】
次に、運転計画作成日当日の運転計画対象時間範囲T2が開始した後に、第1運転時間帯T1が新規に設定された場合、変更された場合、取り消された場合における既に設定された第1運転パターンの修正処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
先ず、第1運転時間帯T1の新規設定、変更、または、取り消しの何れかが行われた場合、当該時点、つまり、第1運転パターンの修正処理の時点において、既に設定されている第1運転パターンによる燃料電池システム4の起動が開始しているか否かを判定し(ステップ#6)、起動が開始している場合は、既に停止しているか否かを判定する(ステップ#7)。
【0066】
ステップ#6の判定で、燃料電池システム4の起動開始前である場合は(ステップ#6でYES)、ステップ#1の処理対象となる運転パターンの内、起動時刻が修正処理時点以降の運転パターンのみを対象とし、上記ステップ#1〜#5の処理を実行する(ステップ#8)。ここで、第1運転時間帯T1が新規設定または変更された場合で、新規設定または変更後の第1運転時間帯T1の終了時刻が修正処理時点より後の場合は、ステップ#2の判定でYESとなり、新規設定または変更後の第1運転時間帯T1の終了時刻が修正処理時点以前の場合、或いは、第1運転時間帯T1が取り消された場合は、ステップ#2の判定でNOとなる。
【0067】
ステップ#6の判定で、燃料電池システム4の起動開始後で(ステップ#6でNO)、停止前(ステップ#7でYES)である場合、つまり、燃料電池システム4が稼働中の場合は、上記ステップ#1〜#5の処理を、ステップ#1の処理対象となる運転パターンの内、起動時刻が現在稼働中の燃料電池システム4の起動時刻で(但し、前日から連続運転の場合は、午前3時とする。)、停止時刻が修正処理時点以降となる運転パターンのみを対象とし、上記ステップ#1〜#5の処理を実行する(ステップ#9)。ここで、第1運転時間帯T1が新規設定または変更された場合で、新規設定または変更後の第1運転時間帯T1の終了時刻が修正処理時点より後の場合は、ステップ#2の判定でYESとなり、新規設定または変更後の第1運転時間帯T1の終了時刻が修正処理時点以前の場合、或いは、第1運転時間帯T1が取り消された場合は、ステップ#2の判定でNOとなる。
【0068】
ステップ#6の判定で、燃料電池システム4の起動開始後で(ステップ#6でNO)、更に、停止後(ステップ#7でNO)である場合、つまり、運転計画作成日当日の運転計画対象時間範囲T2が開始前に設定された第1運転パターンによる燃料電池システム4の運転が既に終了している場合は、同じ運転計画作成日における2回目の第1運転パターンの設定は行わない。
【0069】
運転計画部42は、運転計画作成日当日の運転計画対象時間範囲T2の開始後に、第1運転時間帯T1が新規設定、変更、或いは、取り消されたことにより、第1運転パターンを変更した場合は、変更後については、当該変更後の第1運転パターンに基づいて、燃料電池システム4の起動停止または停止を行い、実際に発生する電力負荷に対して電力負荷追従運転を行う。
【0070】
以下に、別の実施形態につき説明する。
【0071】
〈1〉上記実施形態では、運転計画部42による運転計画処理において、第1運転時間帯T1が設定されている場合は、予め設定された複数の運転パターンの夫々につきステップ#1で算出されたエネルギ消費量の削減量ΔEに基づいて、ステップ#4で、複数の運転パターンを選定し、ステップ#5で、重複時間の最大の運転パターンを1つ選択して、第1運転パターンとして設定するという処理手順を説明した。しかし、最終的に運転パターンを1つ選択して、第1運転パターンとして設定する処理手順は、図4に示す処理手順に限定されるものではない。
【0072】
上記処理手順の別形態として、ステップ#2の判定処理を最初に行い、判定結果がYESの場合に、予め設定された複数の運転パターンの中から、第1運転時間帯T1と例えば少なくとも1時間以上重複する複数の運転パターン、或いは、第1運転時間帯T1と少なくとも重複或いは重複はしないが接する複数の運転パターンを選択し、当該選択された複数の運転パターンに対してエネルギ消費量の削減量ΔEを夫々算出して、当該削減量ΔEの最大の運転パターンを1つ選択して、第1運転パターンとして設定するようにしても良い。重複はしないが接するとは、運転パターンの開始時刻または停止時刻が、第1運転時間帯T1の停止時刻または開始時刻と同じで、両時間帯が重複せずに連続していることを意味する。尚、重複はしないが接する運転パターンを選択対象から除外しても良い。
【0073】
また、上記処理手順の更に別形態として、ステップ#2の判定結果がYESの場合に、予め設定された複数の運転パターンに対して第1運転時間帯T1との重複時間TOを夫々算出し、例えば、以下の数4の算出式で指標値Rを求め、指標値Rが最大の運転パターンを1つ選択して、第1運転パターンとして設定するようにしても良い。数4において、c1及びc2は夫々係数である。また、第1運転時間帯T1と重複しないが接している運転パターンと第1運転時間帯T1と重複せず接してもいない運転パターンとを区別するために、第1運転時間帯T1と重複せず接してもいない運転パターンの重複時間TOに所定の負値を設定するようにしても良い。尚、指標値Rの算出式として数4に例示するような多項式に代えて、非線形な算出式を用いても良い。
【0074】
(数4)
R=c1×ΔE+c2×TO
【0075】
〈2〉上記実施形態では、第1運転制御装置7による燃料電池システム4の運転計画を作成する処理において、エネルギ消費量の削減量ΔEを用いたが、エネルギ消費量の削減量ΔEに代えて、削減量ΔEを、燃料電池システム4を運転させない場合のエネルギ消費量E2で除した比率で与えられるエネルギ消費量の削減率を用いても良い。
【0076】
更に、エネルギ消費量の削減量ΔEに代えて、エネルギ消費量の削減により生じるCO排出量の削減量または削減率、或いは、エネルギ消費量の削減により生じるエネルギコストの削減量または削減率を使用しても良い。更には、これらの指標を複合的に使用しても良い。例えば、上記運転計画作成処理のステップ#1で、エネルギ消費量の削減量ΔE、CO排出量の削減量、エネルギコストの削減量の内の少なくとも2つの指標を同時に算出しておき、ステップ#4で複数の運転パターンを選択する際に、当該指標の夫々が上位所定順位内となる複数の運転パターンを選択するようにしても良い。
【0077】
〈3〉上記実施形態では、上記運転計画の作成処理において、第1運転時間帯T1と運転パターンとの間の重複時間を用いたが、これに代えて、当該重複時間の第1運転時間帯T1に占める重複率を用いても良い。
【0078】
〈4〉上記実施形態では、上記運転計画の作成処理において、操作端末43からの使用者の入力操作により入力された熱電併給装置の運転希望時間帯を、第1運転時間帯T1として設定する場合を説明したが、第1運転時間帯T1は、使用者の入力操作により入力するのではなく、本熱電併給システム1の設置時等において、初期設定値の1つとして設定され、固定値として使用される構成であっても良い。但し、第1運転時間帯T1が固定値と使用される場合には、上述の運転計画の修正処理が発生することはない。
【0079】
〈5〉上記実施形態では、燃料電池システム4が電力負荷追従運転する場合を想定したが、例えば、使用する熱電併給装置において、電力負荷追従運転が困難または不可能、或いは、定格出力運転以外では発電効率が著しく低下する場合は、エネルギ消費量の削減量ΔEの算出過程におけるエネルギ消費量E1の算出において、電力負荷追従運転に代えて定格出力運転を行うことを条件としても良い。
【0080】
〈6〉上記実施形態において、第1運転制御装置7による燃料電池システム4の運転計画の作成処理の説明で例示した、第1運転時間帯T1、運転計画対象時間範囲T2、予測時間範囲T3、電力需要予測データD1、熱需要予測データD2は、一例であって上記説明の内容に限定されるものではない。更に、エネルギ消費量E1の算出のアルゴリズムも、本熱電併給システム1の具体的な構成に応じて適宜変更しても良い。
【0081】
〈7〉上記実施形態では、本熱電併給システム1の発電ユニット2は、燃料電池システム4を備える場合を説明したが、燃料電池システム4の燃料電池は固体高分子形に限定されるものではなく、他の形式の燃料電池であっても良く、また、燃料電池システム4に代えてガスエンジン型のコージェネレーションシステムを用いた構成としても良い。
【0082】
更に、上記実施形態では、燃料電池システム4及び補助熱源機17に供給される燃料またはエネルギ源として都市ガスを想定したが、夫々に供給する燃料またはエネルギ源は必ずしも都市ガスに限定されるものではなく、燃料電池システム4と補助熱源機17間で同じでなくても良い。
【0083】
更に、上記実施形態で説明した熱供給ユニット3の構成は、一例であり、図1で例示した構成に限定されるものではない。
【0084】
〈8〉上記実施形態では、本熱電併給システム1の周辺部の構成として、太陽光発電システム15が商用電源10と系統連系接続する場合を、オプション構成として破線枠で囲って表示したが、太陽光発電システム15は、必ずしも本熱電併給システム1と併設される必要はない。但し、太陽光発電システム15を併設する当該オプション構成においては、運転計画作成処理で設定された第1運転パターンに、従来の運転計画作成処理に比べて、第1運転時間帯T1が含まれる可能性が高いため、第1運転時間帯T1として、太陽光発電システム15の発電電力が多くなる日照時間帯(例えば、9時〜16時等)が設定される場合は、本熱電併給システム1の稼働時間帯と上記日照時間帯が重複する可能性が高くなり、当該重複期間においては、太陽光発電システム15の発電電力のほぼ全量は、商用電源10側に逆潮流することになり、その結果として、太陽光発電システム15の発電電力は殆どが余剰電力として商用電源10側に売電される。また、当該売電量の増加を目的とする場合には、第1運転時間帯T1(運転希望時間帯)の入力を、操作端末43から使用者が行うのではなく、太陽光発電システム15の制御装置が、発電電力が多くなる時間帯を算定して、第1運転制御装置7の運転時間帯入力部40に入力する構成としても良い。
【0085】
〈9〉上記実施形態では、運転計画部42は、上述の運転計画作成処理を毎日実行する場合を想定して説明したが、例えば、定期的に或いは随時必要に応じて、燃料電池システム4を終日停止状態とする制御がなされる場合には、当該終日停止状態となる運転計画作成日には、運転計画部42は、第1運転パターンが設定されないように、上記運転計画作成処理を行わないのも好ましい。
【0086】
〈10〉上記実施形態では、本熱電併給システム1として一般家庭用を想定して説明したが、本熱電併給システム1は、例えば、オフィスや店舗用、或いは、宿泊施設や病院向けの一般家庭用より大規模な構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る熱電併給システムは、運転時間帯に対するユーザ要望を取り入れることができ、しかも、省エネルギ、省CO排出量、省コストに優れた運転計画が可能な熱電併給システムに利用できる。
【符号の説明】
【0088】
1: 熱電併給システム
2: 発電ユニット
3: 熱供給ユニット
4: 燃料電池システム
5: インバータ装置
6: 冷却液循環経路
7: 第1運転制御装置
8,21〜23: 循環ポンプ
9: 電気ヒータ
10: 商用電源
11: 発電電力供給ライン
12: 電力負荷
13: 受電電力供給ライン
14: 電力計
15: 太陽光発電システム
16: 貯湯タンク
17: 補助熱源機(ガス給湯器)
18: 湯水循環経路
19: 熱源用循環経路
20: 熱媒循環経路
24〜26: 熱交換器
27,28: 三方弁
29: 二方弁(断続弁)
30: 逆止弁
31: 給水路
32: ラジエータ
33: 給湯熱負荷計測手段
34: 循環熱負荷計測手段
35: 第2運転制御装置
36: 給湯負荷
37: 循環温水負荷
38: 下部入出水口
39: 上部入出水口
40: 運転時間帯入力部
41: 需要予測部
42: 運転計画部
43: 操作端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力と熱を併せて発生する熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生した熱を回収し、回収した熱を温水に変換して蓄熱して熱負荷に供給する熱供給装置と、前記熱電併給装置の運転を制御する運転制御装置と、を備えた熱電併給システムであって、
前記運転制御装置が、
電力需要と熱需要の各実績データを蓄積し、蓄積された電力需要実績データと熱需要実績データに基づいて、運転計画対象時間範囲を含む予測時間範囲における電力需要と熱需要の所定の時間間隔における時間変化を予測し、電力需要予測データ及び熱需要予測データとして記憶する需要予測部と、
前記熱電併給装置の運転希望時間帯として第1運転時間帯が設定されている場合、予め設定された複数の運転パターンの中から、前記需要予測部が記憶した前記電力需要予測データと前記熱需要予測データに基づいて算出される前記運転パターンのエネルギ消費に関する所定の指標に対する第1の評価と、前記運転パターンにより規定される前記熱電併給装置の運転時間が前記第1運転時間帯と重複する時間または比率に対する第2の評価の内の何れか一方の評価結果に基づいて複数の前記運転パターンを選択し、選択された前記運転パターンの中から前記第1及び第2の評価の内の他方の評価結果が最良の前記運転パターンを第1運転パターンとして選択するか、或いは、前記第1及び第2の評価を複合させた第3の評価の評価結果が最良の前記運転パターンを第1運転パターンとして選択する運転計画部と、を備え、
前記運転計画部が選択した前記第1運転パターンに基づいて、前記熱電併給装置の運転を制御することを特徴とする熱電併給システム。
【請求項2】
前記所定の指標が、前記運転パターンに基づいて前記熱電併給装置を運転して前記電力需要予測データと前記熱需要予測データで規定される電力需要と熱需要に対して電力及び熱の供給を行った場合の、前記熱電併給装置を運転せずに代替エネルギを消費して当該電力需要と熱需要に対して電力及び熱の供給を行った場合に対するエネルギ消費量、CO排出量及びエネルギコストの何れか1つの削減量または前記削減量から一義的に導出される換算量であり、
前記第1の評価は、前記削減量または前記換算量が所定の基準値以上、或いは、上位所定番目の前記削減量または前記換算量以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱電併給システム。
【請求項3】
前記第2の評価は、前記第1運転時間帯と重複する時間または比率が所定の基準値以上、或いは、上位所定番目の値以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電併給システム。
【請求項4】
前記運転計画部は、前記運転計画対象時間範囲の開始時刻またはそれより前に前記第1運転パターンの選択処理を実行することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱電併給システム。
【請求項5】
前記熱電併給装置の運転希望時間帯を外部から受け付けて前記第1運転時間帯として設定する運転時間帯入力部を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の熱電併給システム。
【請求項6】
前記運転時間帯入力部が、前記運転計画対象時間範囲の途中において前記第1運転時間帯の入力を受け付けて設定を行った場合、
前記運転計画部は、前記運転計画対象時間範囲の前記第1運転時間帯の設定時点以降の時間範囲に対して、前記第1運転パターンの選択処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の熱電併給システム。
【請求項7】
前記第1運転時間帯が設定されていない場合、前記運転計画部は、予め設定された複数の運転パターンの中から、前記第1の評価の評価結果が最良の前記運転パターンを前記第1運転パターンとして選択することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の熱電併給システム。
【請求項8】
商用電力と系統連系接続して発電電力を前記商用電力側に逆潮流可能に構成された太陽光発電装置を備え、
前記熱電併給装置が、前記商用電力と系統連系接続し、発電電力を前記商用電力側に逆潮流しないよう構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の熱電併給システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209113(P2012−209113A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73409(P2011−73409)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】