説明

熱電対用増幅回路及び温度監視システム

【課題】温度検出信号の精度が向上する熱電対用増幅回路を提供することを目的とする。
【解決手段】コレクタを接地されており、熱電対の一端の電圧をベースに供給されてエミッタから出力するコレクタ接地の第1のトランジスタQ11と、コレクタを接地されており、熱電対の他端の電圧をベースに供給されてエミッタから出力するコレクタ接地の第2のトランジスタQ12と、ベースを一定電位にされており、第1のトランジスタの出力をエミッタに供給されてコレクタから出力するベース接地の第3のトランジスタQ14と、ベースを一定電位にされており、第2のトランジスタの出力をエミッタに供給されてコレクタから出力するベース接地の第4のトランジスタQ15と、第3のトランジスタの出力と第4のトランジスタの出力とを差動増幅する演算増幅器15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対の両端電圧を増幅する熱電対用増幅回路及び温度監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱電対を用いて温度を計測することが行われている。この場合、熱電対の出力電圧は小さいため、増幅回路で増幅している。
【0003】
図4は従来の熱電対用増幅回路の一例の回路構成図を示す。図4において、端子TC+と端子TC−との間に熱電対1が接続される。端子TC+は抵抗R1を介して接地されると共に、直列接続された抵抗R2,R3を介して接地されている。端子TC−は抵抗R4を介して接地されると共に、直列接続された抵抗R5,R6を介して出力端子6に接続されている。
【0004】
npnトランジスタQ0のコレクタとベースは電流源2を介して電源Vccに接続され、トランジスタQ0のエミッタは抵抗R5,R6の接続点に接続されている。npnトランジスタQ1のベースはトランジスタQ0のベースと共通接続され、トランジスタQ1のコレクタは電流源3を介して電源Vccに接続され、トランジスタQ1のエミッタは抵抗R2,R3の接続点に接続されている。同様に、npnトランジスタQ2のベースはトランジスタQ0のベースと共通接続され、トランジスタQ2のコレクタは電流源4を介して電源Vccに接続され、トランジスタQ2のエミッタは抵抗R5,R6の接続点に接続されている。
【0005】
トランジスタQ1のコレクタは演算増幅器5の非反転入力端子に接続され、トランジスタQ2のコレクタは演算増幅器5の非反転入力端子に接続されている。トランジスタQ1,Q2はトランジスタQ0とカレントミラー回路を構成しており、トランジスタQ1,Q2それぞれはベース接地回路を構成している。
【0006】
これにより、端子TC+,TC−間の電圧はベース接地のトランジスタQ1,Q2を通して演算増幅器5に供給され、演算増幅器5において抵抗R5,R6で決まる電圧利得(=R6/R5)で増幅されて端子6から出力される。
【0007】
ところで、差動対の第1、第2のトランジスタの共通エミッタに接続したエミッタフォロワ−回路を介してレベルシフトダイオードで第1のカスコードブートストラップ回路のバイアス回路を構成し、定電流回路と負供給電源−VCC間に第2のカスコードブートストラップ回路を設け、この第2のカスコードブートストラップ回路のバイアス電圧をエミッタフォロワ−回路のレベルシフト回路によってバイアスする技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−120747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の熱電対用増幅回路は、入力部のトランジスタQ1,Q2をベース接地で使用しているため、トランジスタQ1,Q2のエミッタから抵抗R2,R5を通して端子TC+,TC−に、ある程度大きな電流が流れ込む。このため、トランジスタQ1,Q2のエミッタ電流のバラツキ、抵抗R2,R3,R5,R6の抵抗値のバラツキ、抵抗R2と端子TC+間の配線抵抗、抵抗R5と端子TC−間の配線抵抗のバラツキにより、抵抗R2,R3の接続点であるA点の電位と抵抗R5,R6の接続点であるB点の電位が異なった値となる。これにより、増幅回路の電圧利得が変化し(電圧利得がR6/R5にならない)、端子6から出力される温度検出信号の精度が悪化するという問題があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、温度検出信号の精度が向上する熱電対用増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施態様による熱電対用増幅回路は、熱電対の両端電圧を増幅する熱電対用増幅回路であって、
コレクタを接地されており、前記熱電対の一端の電圧をベースに供給されてエミッタから出力するコレクタ接地の第1のトランジスタ(Q11)と、
コレクタを接地されており、前記熱電対の他端の電圧をベースに供給されてエミッタから出力するコレクタ接地の第2のトランジスタ(Q12)と、
ベースを一定電位にされており、前記第1のトランジスタの出力をエミッタに供給されてコレクタから出力するベース接地の第3のトランジスタ(Q14)と、
ベースを一定電位にされており、前記第2のトランジスタの出力をエミッタに供給されてコレクタから出力するベース接地の第4のトランジスタ(Q15)と、
前記第3のトランジスタの出力と前記第4のトランジスタの出力とを差動増幅する演算増幅器(15)と、を有する。
【0012】
好ましくは、前記第3のトランジスタのコレクタと電源との間に設けられ、抵抗値を調整する第1のトリミング回路(12)と、
前記第4のトランジスタのコレクタと電源との間に設けられ、抵抗値を調整する第2のトリミング回路(13)と、を有する。
【0013】
好ましくは、前記第1又は第2のトリミング回路は、
直列接続されたN(Nは2以上の整数)個の抵抗(R20〜R22)と、
前記複数の抵抗のうちN−1個の抵抗それぞれの両端間に並列接続されたヒューズ(22,23)と、を有する。
【0014】
本発明の一実施態様による温度監視システムは、検出温度に応じた両端電圧を出力する複数の熱電対(31a〜31c)と、
前記複数の熱電対それぞれの両端電圧を増幅する複数の請求項1又は2記載の熱電対用増幅回路(30a〜30c)と、
前記複数の熱電対用増幅回路の出力する温度検出信号を順次選択して出力するマルチプレクサ(33)と、
前記マルチプレクサの出力信号をデジタル化するADコンバータ(35)と、
前記ADコンバータの出力するデジタルの温度検出信号を供給されるマイクロコンピュータ(37)と、を有する。
【0015】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、温度検出信号の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱電対用増幅回路の一実施形態の回路構成図である。
【図2】トリミング回路の一実施形態の回路図である。
【図3】本発明の熱電対用増幅回路を用いた温度監視システムの一実施形態のブロック構成図である。
【図4】従来の熱電対用増幅回路の一例の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<熱電対用増幅回路の構成>
図1は本発明の熱電対用増幅回路の一実施形態の回路構成図を示す。図1において、端子TC+と端子TC−との間に熱電対11が接続される。端子TC+はプルダウン用の抵抗R11を介して接地されると共に、直列接続された抵抗R12,R13を介して接地されている。端子TC−はプルダウン用の抵抗R14を介して接地されると共に、直列接続された抵抗R15,R16を介して出力端子16に接続されている。なお、抵抗R12〜R16の抵抗値は例えばR12=R15,R13=R16に設定している。
【0020】
抵抗R12,R13の接続点であるA点にはpnpトランジスタQ11のベースが接続されると共に、ノイズ除去用のコンデンサC11の一端が接続され、コンデンサC11の他端は接地されている。トランジスタQ11のコレクタは接地され、トランジスタQ11のエミッタはnpnトランジスタQ14のエミッタに接続されている。
【0021】
抵抗R15,R16の接続点であるB点にはpnpトランジスタQ12のベースが接続されると共に、pnpトランジスタQ13のベースが接続されている。トランジスタQ12のコレクタは接地され、トランジスタQ12のエミッタはnpnトランジスタQ15のエミッタに接続されている。トランジスタQ13のコレクタは接地され、トランジスタQ13のエミッタはnpnトランジスタQ16のエミッタに接続されている。つまり、トランジスタQ11,Q12,Q13それぞれはコレクタ接地回路を構成している。
【0022】
トランジスタQ14のベースはトランジスタQ16のベースと共通接続され、トランジスタQ14のコレクタは電流源としてのトリミング回路12を介して電源Vccに接続されている。トランジスタQ15のベースはトランジスタQ16のベースと共通接続され、トランジスタQ15のコレクタは電流源としてのトリミング回路13を介して電源Vccに接続されている。トランジスタQ16のベースとコレクタは電流源14を介して電源Vccに接続されている。
【0023】
トランジスタQ14のコレクタは演算増幅器15の非反転入力端子に接続され、トランジスタQ15のコレクタは演算増幅器15の反転入力端子に接続されている。トランジスタQ14,Q15はトランジスタQ16とカレントミラー回路を構成しており、これによりベースを一定電位にされたトランジスタQ14,Q15はベース接地回路を構成している。
【0024】
これにより、端子TC+,TC−間の電圧はコレクタ接地のトランジスタQ11,Q12を通し、ベース接地のトランジスタQ14,Q15を通して演算増幅器15に供給され、演算増幅器15において抵抗R15,R16で決まる電圧利得(=R16/R15)で増幅されて端子16から出力される。
【0025】
本実施形態ではコレクタ接地のトランジスタQ11,Q12を設けているため、トランジスタQ11,Q12のベースA点,B点に流れ込む電流は従来に比して大幅に小さくなる。このため、A点の電位とB点の電位の変化は従来に比して大幅に小さくなり、増幅回路の電圧利得の変化が従来に比して大幅に小さくなり(電圧利得がR16/R15に略固定される)、端子16から出力される温度検出電圧の精度が向上する。
【0026】
<トリミング回路の構成>
図2はトリミング回路12,13の一実施形態の回路図を示す。トリミング回路は、端子20,21間に直列接続された抵抗R20,R21,R22と、抵抗R21の両端間に並列接続されたヒューズ22と、抵抗R22の両端間に並列接続されたヒューズ23で構成されている。ここで、抵抗R20の抵抗値を数100Ωとすると、抵抗R21の抵抗値は数Ω、抵抗R22の抵抗値は抵抗R21の抵抗値の1/2程度に設定されている。なお、抵抗R22と端子21の間に、更に、両端間にヒューズを並列接続された1又は複数の抵抗を直列接続しても良い。つまり、トリミング回路は、直列接続されたN(Nは2以上の整数)個の抵抗と、上記複数の抵抗のうちN−1個の抵抗それぞれの両端間に並列接続されたヒューズとを有する。
【0027】
ここで、製造当初はヒューズ22,23は導通しており、トリミング回路の抵抗値(端子20,21間)はR20であり、ヒューズ22又は23をレーザトリミングで切断するとトリミング回路の抵抗値はR20+R21又はR20+R22となり、また、ヒューズ22及び23をレーザトリミングで切断するとトリミング回路の抵抗値はR20+R21+R22となる。
【0028】
図1の熱電対用増幅回路では、入力インピーダンスの小さなベース接地のトランジスタQ14,Q15を用いているため、ノイズ電流が混入した場合の上記入力インピーダンスによる電圧変化が小さくなり、ノイズ耐性を大きくできる。また、ベース接地のトランジスタQ14(又はQ15)の電圧利得はトリミング回路12(又は13)の抵抗値をトランジスタQ14(又はQ15)のエミッタ抵抗値で除算した値である。このため、トリミング回路12(又は13)の抵抗値をレーザトリミングで調整することにより、演算増幅器15の非反転入力端子,反転入力端子それぞれに接続されたC点とD点の間のオフセット調整(オフセットを例えばゼロにする)を容易に行うことができる。
【0029】
<熱電対用増幅回路の構成>
図3は本発明の熱電対用増幅回路を用いた温度監視システムの一実施形態のブロック構成図を示す。図3において、熱電対用増幅回路30a,30b,30cそれぞれは図1に示す回路構成の熱電対用増幅回路であり、熱電対31a,31b,31cの検出電圧を増幅して出力する。熱電対31a,31b,31cは例えばガスコンロに設置されている3つのガスバーナそれぞれの温度を検出する。熱電対用増幅回路30a,30b,30cそれぞれはアナログ回路用のレギュレータ32から電源Vccを供給されており、熱電対用増幅回路30a,30b,30cそれぞれの出力する温度検出信号はマルチプレクサ33に供給される。
【0030】
アナログ回路用のレギュレータ32は端子34から供給される電源を安定化した電源Vccを熱電対用増幅回路30a,30b,30c及びADコンバータ35に供給している。デジタル回路用のレギュレータ36はアナログ回路用のレギュレータ32と同様に端子34から供給される電源を安定化した電源をマイクロコンピュータ37に供給している。このように、アナログ回路用のレギュレータ32とデジタル回路用のレギュレータ36を分離しているのは、デジタル回路(マイクロコンピュータ37)で発生した高周波ノイズが熱電対用増幅回路30a,30b,30cやADコンバータ35に混入することをできるだけ防止するためである。
【0031】
マイクロコンピュータ37はマルチプレクサ33に選択指示信号を供給して、マルチプレクサ33に熱電対用増幅回路30a,30b,30cが出力する温度検出信号を時系列的に選択させてADコンバータ35に供給される。ADコンバータ35は供給される温度検出信号をアナログ/デジタル変換し、得られたデジタル温度検出信号をマイクロコンピュータ37に供給する。マイクロコンピュータ37は3種類の上記デジタル温度検出信号を所定の閾値と比較することで3つのガスバーナが着火しているか、又は、失火しているかを判定し、その判定結果を内蔵のメモリに格納し、このデジタル温度検出信号に基づいて図示しない3つのガスバーナに対するアラーム処理等の制御処理に利用する。
【符号の説明】
【0032】
11,31a,31b,31c 熱電対
12,13 トリミング回路
14 電流源
15 演算増幅器
22,23 ヒューズ
30a,30b,30c 熱電対用増幅回路
32,36 レギュレータ
33 マルチプレクサ
35 ADコンバータ
37 マイクロコンピュータ
C11 コンデンサ
Q11〜Q16 トランジスタ
R11〜R22 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対の両端電圧を増幅する熱電対用増幅回路であって、
コレクタを接地されており、前記熱電対の一端の電圧をベースに供給されてエミッタから出力するコレクタ接地の第1のトランジスタと、
コレクタを接地されており、前記熱電対の他端の電圧をベースに供給されてエミッタから出力するコレクタ接地の第2のトランジスタと、
ベースを一定電位にされており、前記第1のトランジスタの出力をエミッタに供給されてコレクタから出力するベース接地の第3のトランジスタと、
ベースを一定電位にされており、前記第2のトランジスタの出力をエミッタに供給されてコレクタから出力するベース接地の第4のトランジスタと、
前記第3のトランジスタの出力と前記第4のトランジスタの出力とを差動増幅する演算増幅器と、
を有することを特徴とする熱電対用増幅回路。
【請求項2】
請求項1記載の熱電対用増幅回路において、
前記第3のトランジスタのコレクタと電源との間に設けられ、抵抗値を調整する第1のトリミング回路と、
前記第4のトランジスタのコレクタと電源との間に設けられ、抵抗値を調整する第2のトリミング回路と、
を有することを特徴とする熱電対用増幅回路。
【請求項3】
請求項2記載の熱電対用増幅回路において、
前記第1又は第2のトリミング回路は、
直列接続されたN(Nは2以上の整数)個の抵抗と、
前記複数の抵抗のうちN−1個の抵抗それぞれの両端間に並列接続されたヒューズと、
を有することを特徴とする熱電対用増幅回路。
【請求項4】
検出温度に応じた両端電圧を出力する複数の熱電対と、
前記複数の熱電対それぞれの両端電圧を増幅する複数の請求項1又は2記載の熱電対用増幅回路と、
前記複数の熱電対用増幅回路の出力する温度検出信号を順次選択して出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力信号をデジタル化するADコンバータと、
前記ADコンバータの出力するデジタルの温度検出信号を供給されるマイクロコンピュータと、
を有することを特徴とする温度監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247217(P2012−247217A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117124(P2011−117124)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】