説明

燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するためのガス発生器および方法

【課題】燃料を低酸素ガス(保護ガス)および/または高水素ガス(還元ガス)に転化する。
【解決手段】本発明は、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するためのガス発生器に関する。ガス発生器は、低酸素ガスおよび/または高水素ガスを必要とするあらゆるプロセスに用いることができ、SOFCまたはSOECを始動、停止または緊急停止させるための保護ガスまたは還元ガスを発生させるのに好ましくは用いられる。本発明は、さらに、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を低酸素ガス(oxygen−depleted gas)(保護ガス)および/または高水素ガス(hydrogen−enriched gas)(還元ガス)に転化するためのガス発生器に関する。そのガス発生器は、低酸素ガスおよび/または高水素ガスを必要とするあらゆるプロセスに用いることができ、固体酸化物燃料電池(SOFC)または固体酸化物電解セル(SOEC)を始動、停止または緊急停止させるための保護ガスまたは還元ガスを発生させるのに好ましくは用いられる。本発明は、更に、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するための方法に関する。
【0002】
本出願において、用語“「低酸素ガス”または“保護ガス”は、酸素が実質的に除去された、燃焼プロセスの燃焼排ガスを意味する。したがって、保護ガスは、主として、蒸気(水蒸気)、窒素、および二酸化炭素の混合物である。一方、用語“高水素ガス”または“還元ガス”は、一酸化炭素が実質的に除去された合成ガスを意味する。したがって、還元ガスは、主として、蒸気、窒素、水素、および二酸化炭素の混合物である。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、燃料の化学エネルギーを電気に直接転化する。これらの燃料電池は、広範囲の燃料を高効率で転化することができるため、最近の開発では、SOFCの性能を向上させることが対象とされている。
【0004】
単一SOFCは、アノード(燃料電極)とカソード(酸素電極)との間に挟持された、固体酸化物の高密度の電解質を含み、それらアノードおよびカソードは、それぞれ、反応物質を供給するための微細な孔またはチャネルを有する。空気のような酸素含有ガスがカソードに沿って通ると、酸素分子がカソード/電解質界面と接触して、そこで酸素イオンに電気化学的に還元される。これらのイオンは、電解質材料内中へ拡散し、そしてアノードに向かって移動して、そこでアノード/電解質界面において、燃料を電気化学的に酸化する。燃料電池内での電気化学反応は、外部回路に電気を提供する。燃料電池は、燃料の制御された分布を可能にする微細な孔またはチャネルを有する支持体をさらに含んでいてよい。複数のSOFCは、相互接続を介して直列に接続して、いわゆる“SOFCスタック”を形成できる。
【0005】
SOFCは、逆に、すなわち電気を燃料の化学エネルギーに直接転化する、電解セル(SOEC)としても運転できる。例えば、蒸気の電気化学的分解により、水素と酸素とが生じるか、あるいは、二酸化炭素の電気化学的分解により、一酸化炭素と酸素とが生じる。これは、蒸気および二酸化炭素の混合物の電解により、水素および一酸化炭素(合成ガス)の混合物が生じ、そしてこれを、周知のプロセス技術を用いてメタノールまたはジメチルエーテル(DME)のような燃料へ転化できることを意味している。SOECは、風力エネルギー、太陽光発電エネルギーまたは水力発電力のような再生可能エネルギーを効率的に転化する可能性を有している。最近の開発では、SOFCとしてもSOECとしても用いることができる可逆的な固体酸化物電池(SOC)が対象となっている。
【0006】
SOFCのアノードおよびカソードは、電気伝導性は有するが、イオン伝導性は有さない材料から製造されているのに対して、SOFCの電解質は、イオン伝導性は有するが電気伝導性は有さない材料から製造されている。
【0007】
SOFCのカソード、電解質、およびアノードに好適な材料は、当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第7498095号明細書(特許文献1)および国際公開第01/43524A号パンフレット(特許文献2)を参照)。一般に用いられているカソード材料は、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)のようなサーメット、またはこれらの複合体である。アノード材料は、一般にYSZのようなサーメットである。燃料として水素が用いられる場合には、アノード/電解質界面で酸素イオンにより該水素は電気化学的に酸化される。燃料としてメタンのような炭化水素を用いる場合には、ニッケルのような改質触媒がアノード材料に添加される。該触媒は、燃料から水素への転化を助け、これは内部改質として知られている。固体酸化物電解質材料は、一般に、高い温度でだけ十分なイオン伝導性を示すYSZのようなセラミック材料である。したがって、SOFCは、高い電流密度および出力を達成するために、高められた温度(普通、少なくとも300℃)で運転しなければならない。
【0008】
改質触媒を含むアノードは酸素に対して耐性ではないが、SOFCは一定温度を超えて、すなわち約200℃まで加温される。高められた温度における酸素は、低いレドックス安定性に起因して、アノード改質触媒にダメージを与える可能性がある。したがって、SOFCスタックは、始動および停止の間、酸化ガスから保護されていなければならない。
【0009】
国際公開第2008/001119A号パンフレット(特許文献3)は、SOFCスタックの停止間における不活性ガスをベースとするブランケットガスの使用を記載している。この公報は、始動および停止の間に酸化ガスからSOFCスタックを保護するための一酸化炭素および水素を含む還元ガスを生成するための、触媒部分酸化反応器の使用をさらに記載している。
【0010】
還元ガスの一利点は、パージする必要があるのはアノードチャネルのみである一方で、始動中および停止中それぞれの間に、カソード面上の空気を用いて加熱または冷却することができるということである。水素は、カソードからアノードに電解質を介して移動し得る酸素イオンと反応するアノード表面のニッケル粒子を基本的に保護できる。
【0011】
しかし、還元ガスは二つの大きな欠点を有する。第1に、水素および一酸化炭素を大気中へパージできない。始動中および停止中に、毒性ガスおよび爆発性ガスを燃焼するために、SOFCシステムの触媒燃焼器を作動させる必要がある。これは、処理の操作性および安全性に関して、いくつかの難点を招き得る。
【0012】
第2に、低温(通常は300℃未満)の一酸化炭素が、アノード表面上および予備改質/改質触媒上でニッケルナノ粒子と反応する場合があり、ひいては、ニッケルカルボニル(Ni(CO);沸点43℃)の形成を招く。ニッケルカルボニルは、高度に揮発性であり、そして極めて毒性である。この化合物は、空気中で低濃度であっても致命的である可能性がある(LC50=3ppm)。さらに、ニッケルカルボニルは、触媒燃焼器内で熱的に分解される場合があり、ひいては、触媒の不活性化をもたらす。
【0013】
一方で、保護ガスは、大気中へ容易にパージでき、かつ、触媒材料および燃料電池材料と相互作用しない。しかし、保護ガスは、カソード側から固体電解質を介して拡散し得る酸素イオンからは、アノード表面において改質触媒を保護できない。この問題は、電解質のイオン伝導性が高い燃料電池の運転温度に近い高温においては、より深刻である。
【0014】
したがって、保護ガスは、SOFCスタック温度が300℃未満であり、一方で触媒燃焼器が作動されることのない場合に用いることができる。通常、これより高い温度では、システム内の触媒燃焼器温度が最低作動温度を超える。そのため、還元ガスを用いてSOFCスタックを保護できる。還元ガスが低一酸化炭素含量を有するため、炭素形成の機会はほとんどない。
【0015】
上記の問題は、SOECの始動間および停止間にも生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7498095号明細書
【特許文献2】国際公開第01/43524A号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/001119A号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第504937A号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/88459号明細書
【特許文献6】米国特許第4111848号明細書
【特許文献7】米国特許第4522894号明細書
【特許文献8】米国特許第5628931号明細書
【特許文献9】米国特許第6110861号明細書
【特許文献10】国際公開第98/55227号パンフレット
【特許文献11】米国特許第5536699号明細書
【特許文献12】米国特許第4985230号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第396650A号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第433223A号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第208929A号明細書
【特許文献16】国際公開第2007/70260A号パンフレット
【特許文献17】米国特許出願公開第2006/230680号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第1445235A号明細書
【特許文献19】米国特許第7517374号
【特許文献20】欧州特許出願公開第1149799A号明細書
【特許文献21】米国特許第7160533号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2005/22450号明細書
【特許文献23】米国特許第7560496号
【特許文献24】欧州特許出願公開第1413547A号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Ind. Eng. Chem. Res. 2002, 41, 2775−2784
【非特許文献2】Ind. Eng. Chem. Res. 2002, 41, 4837−4840
【非特許文献3】Ind. Eng. Chem. Res. 2003, 42, 4376−4381
【非特許文献4】AIChE Journal, Feb. 2006, Vol. 52, No. 2, 574−581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、種々の用途で用いるのに適した、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するためのガス発生器を提供することである。
【0019】
本発明の別の課題は、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、反応器シェル内に一体化され、直列に配置された以下のユニット:
− 第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化域、
続いて
− 燃焼または触媒部分酸化を実施するための第2の触媒燃焼器、
− 第1および/または第2の触媒燃焼器または触媒部分酸化域からの燃焼排ガスを冷却するための冷却装置、
− 第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスから酸素を吸収するための酸素吸収器、それに続く、
− 第2の触媒燃焼器からの燃焼排ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素またはメタンに転化するためのシフト転化器またはメタン化器、
を含む、燃料を低酸素ガス(oxygen−depleted gas)および/または高水素ガス(hydrogen−enriched gas)に転化するためのガス発生器を提供する。
【0021】
本発明はまた、低酸素ガスおよび/または高水素ガスを必要とするプロセス中での上記のガス発生器の使用、特に、SOFCまたはSOECを始動、停止または緊急停止させるための保護ガスまたは還元ガスを発生させるためのガス発生器の使用にも関する。
【0022】
本発明によるガス発生器の利点は、燃料電池システムの始動プロセス中および停止するプロセス中に燃料電池スタックを保護するための外部のガス源または材料を必要としないことである。システム燃料は、ガスであっても液体であってもよく、これを用いて保護/還元ガスを生成して、燃料電池システム中の燃料電池スタックおよびその他の自然発火性成分を保護あるいは還元する。
【0023】
本発明はさらに、
− 酸素を含む燃焼排ガスを生成するために、第1の触媒燃焼器中で酸素含有ガスによって燃料を触媒的に燃焼するステップ、
引き続く、
− 水素および一酸化炭素を含むガスまたは微量の酸素を含むガスを生成するために、第2の触媒燃焼器中で、過剰燃料によって前記酸素を含む燃焼排ガスを燃焼または部分的に酸化するステップ、
引き続く、次の、
− 前記微量の酸素を含むガスからの微量の酸素を低減し、そして低酸素ガスを得るステップ、
および、
− 高水素ガスを得るために、前記水素および一酸化炭素を含むガス中に存在する一酸化炭素の量を、二酸化炭素またはメタンへの触媒転化によって低減するステップ、
のいずれか一方を含む、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化する方法を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、
− 一酸化炭素および水素を含む燃焼排ガスを生成するために、第1の触媒燃焼器中で酸素含有ガスによって燃料を触媒的に部分酸化するステップ、
引き続く、
− 微量の酸素、二酸化炭素、蒸気および不活性物質(窒素および希ガス類を含む)からなるガス、または水素および一酸化炭素を含むガスを生成するために、一酸化炭素および水素を含む燃焼排ガスを第2の触媒燃焼器中で燃焼するステップであって、前記第2の触媒燃焼器中での燃焼排ガスの燃焼後に存在する一酸化炭素の量が、前記第2の触媒燃焼器中での燃焼排ガスの燃焼前に存在するその量と比較して低減されている、該ステップ、
引き続く、次の
− 前記微量の酸素、二酸化炭素、蒸気および不活性物質からなるガス中の酸素の量を低減し、そして低酸素ガスを得るステップ、
および、
− 前記水素および一酸化炭素を含むガス中に存在する一酸化炭素を二酸化炭素またはメタンに転化し、そして高水素ガスを得るステップ、
のいずれか一方を含む、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化する方法を提供する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明によるガス発生器を操作する一態様を示す略ブロック図である。
【図2】図2は、本発明によるガス発生器を操作する別の態様を示す略ブロック図である。
【図3】図3は、本発明によるガス発生器の具体的な実施形態を示す図式図である。
【図4】図4は、ガス発生器が統合された天然ガス系SOFCシステムの典型的なシステムの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明による燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化するためのガス発生器および方法を、図を参照して詳細に説明する。
【0028】
本発明によるガス発生器は、第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化区域;燃焼または触媒部分酸化を実施するための第2の触媒燃焼器;第1および/または第2の触媒燃焼器からの、または触媒部分酸化区域からの燃焼排ガスを冷却するための冷却装置;第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスからの酸素を吸収するための酸素吸収器;および第2の触媒燃焼器からの燃焼排ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素またはメタンに転化するためのシフト転化器またはメタン化器を含む。
【0029】
第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化区域、および第2の触媒燃焼器は、適当な燃焼触媒を含む。その例としては、欧州特許出願公開第504937A号(特許文献4)に記載されている、固定床に配置されたモノリス形態または円筒または球形態の多孔質セラミック担体上に、活性成分として白金、パラジウム、銅、マンガン、および/またはクロムを含浸させて含む触媒;米国特許出願公開第2006/88459号(特許文献5)に記載されている、1超の酸化状態を有する金属酸化物(例えば、酸化スズ、または酸化マンガン)、ルテニウム、および白金、パラジウム、金、ロジウム、および銀から選択される少なくとも一種の他の貴金属、および酸化鉄類、酸化ニッケル類、酸化コバルト類、および酸化タングステン類から選択される少なくとも一種の促進剤を含む触媒;および、米国特許第4111848号(特許文献6)に記載されている、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムから選択される少なくとも一種の触媒金属、好ましくは、白金と、ロジウムおよびイリジウムの少なくとも一方との組合せが表面上に分布されたアルミナの担体を含む触媒、が挙げられる。第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化区域での使用に適したその他の触媒材料の例としては、任意に、ロジウム、イリジウム、オスミウムまたはルテニウムと組み合わせた、パラジウムおよび白金が挙げられる。これらの触媒材料は、クロム、銅、バナジウム、コバルト、ニッケルまたは鉄のような卑金属で補充できる。これらの触媒材料は、複数の微細に分割されたガス流路を有するモノリス担体上で支持できる。その担体材料は、アルミナ、アルミナ−シリカ、アルミナ−シリカ−チタニア、ムライト、コージライト、ジルコニア、ジルコニア−スピネル、ジルコニア−ムライトまたは炭化ケイ素のような一種または複数種の金属酸化物から構成される、セラミック多孔質材料であってよい。そのような触媒は、米国特許第4522894A号(特許文献7)に開示されている。その他の適当な触媒は、米国特許第5628931A号(特許文献8)、米国特許第6110861A号(特許文献9)および国際公開第98/55227A号(特許文献10)中で説明されている。市場から入手可能な燃焼触媒の例には、Haldor Topsoe A/Sから入手可能な、銅、マンガン、アルミニウム、白金およびパラジウムをベースとする触媒が挙げられる。
【0030】
本発明における触媒の使用形態は、適当な形態のいずれであってもよい。従来の固定床触媒、ペレット、メッシュ、触媒化ハードウェアまたは構造化触媒であることができる。
【0031】
触媒化ハードウェアの場合、触媒材料は金属表面に直接添加される。セラミック前駆体を含有するスラリーの薄層を、噴霧、塗装、浸漬などによって金属表面上に設ける。被膜を設けた後、スラリーを乾燥させて、通常350℃〜1000℃の範囲の温度でか焼する。最後に、セラミック層を触媒材料に含浸する。あるいはまた、触媒的に活性な材料を、セラミック前駆体と同時に使用する。本発明で使用する触媒化ハードウェアは、プロセスガスが流れるチャネルの壁に直接取り付けられた触媒か、または構造化触媒を形成する金属構造化エレメントに取り付けられた触媒かのいずれかであることができる。その構造化エレメントは、触媒の支持体を提供する働きをする。さらに、触媒化ハードウェアは、例えばメッシュ形態で反応器の壁に付着させる、金属またはセラミック構造体に堆積させた触媒の形態で使用できる。
【0032】
構造化エレメントは、隣接する層間に流路が存在する複数の層を含むデバイスである。層は、隣接する層が一緒を配置することによって、流路が、例えば、互いに交差できるか、または直線状の流路を形成できる要素がもたらされるように造形される。構造化エレメントは、米国特許第5536699A号(特許文献11)、米国特許第4985230A号(特許文献12)、欧州特許出願公開第396650A号(特許文献13)、欧州特許出願公開第433223A号(特許文献14)および欧州特許出願公開第208929A号(特許文献15)中でさらに説明されている。
【0033】
2種類の構造化エレメント、すなわち、直線状流路エレメントおよび交差波形エレメントが、本発明での使用に特に適している。直線状流路エレメントは、断熱条件を要求し、そしてそれらのエレメントの様々な幾何学形状が可能である。交差波形エレメントは、反応器壁からガス流への効率的な熱移動を可能にする。高面積構造化エレメントのようなその他の触媒構造化エレメントも本発明において使用できる。構造化触媒の例としては、触媒化モノリス、触媒化交差波形構造体、および触媒化リング(例えば、ポールリング)が挙げられる。反応器の壁に直接適用された触媒化ハードウェア、および構造化触媒のいずれの場合においても、触媒の量は、所与の操作条件でのプロセス反応に必要な触媒活性に合わせて調整できる。このように、圧力低下が減少し、そして、触媒の量が所要量を超えないため、費用がかかる貴金属を用いるときに特に有利である。
【0034】
熱燃焼器は、第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化区域の上流に位置し得る。熱燃焼器は、始動期の間に触媒を操作温度まで加熱するのに利用することができる。熱燃焼器は、燃料点火デバイスを含むことができ、該デバイスは、スパークプラグ、電気フィラメント、または電熱器であってよい。適切な点火デバイスの選択は、燃料の自動点火温度に依存する。
【0035】
第2の触媒燃焼器は、炎色反応下で酸素含有ガスによって燃料を熱的点火することで操作温度にまで加熱できる。
【0036】
ガス発生器は、第1および/または第2の触媒燃焼器、または触媒部分酸化区域からの燃焼排ガス類を冷却するための冷却デバイスをさらに含む。
【0037】
第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化区域の燃焼排ガスの温度、および第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスの温度は、1000℃に到達し得る。したがって、燃焼排ガスは、次のステップに適切な温度まで、冷却デバイスによって少なくとも部分的に冷却される。冷却デバイスは、強制対流型冷却器であっても自由対流型熱交換器であってもよい。例えば、冷却デバイスは、空気強制対流冷却用のガスマニホールドを有するか、または自然対流冷却用の開放チャネルまたはフィン付きチューブを有することができる。
【0038】
ガス発生器の触媒および冷却デバイスは、触媒被覆熱交換器のような、触媒被覆冷却デバイスとして一体化できる。
【0039】
第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスから酸素を吸収するための酸素吸収器は、酸素を燃焼排ガスから除去するための適切な高温耐性材料からなる。異なる高温酸素吸収剤を用いることができる。酸素吸収剤は、充填層の形態、またはモノリスの形態であってよい。適切な吸収剤は、超微細な鉄粉末、および酸素欠乏ペロブスカイト型セラミックを含む。ペロブスカイト型セラミック材料の例としては、一般式La1−xSrCo1−yFe3−δ(式中、xは0.2〜0.95、好ましくは0.5〜0.9の範囲であり、yは、0〜1、好ましくは0.05〜0.6の範囲であり、δは、酸素欠乏(酸素非化学量論)であり、好ましくは0超〜約0.5の範囲である。)を有するストロンチウム−鉄ドープ型ランタンコバルタイトが挙げられる。その具体例は、La0.1Sr0.9Co0.5Fe0.53−δおよびLa0.1Sr0.9Co0.9Fe0.13−δである。これらの材料は、酸素を可逆的に吸収し、そして高められた温度で水素含有ガスにより再生できる。吸収剤は、アルミナのような高温耐性担体上に支持されることができる。酸素吸収器の操作温度は、200℃〜600℃未満の範囲であってよい。超微細な鉄粉末をベースとする吸収剤は、一般に、より低い温度で用いられるが、ペロブスカイト型吸収剤は、一般に、より高い温度で用いられる。好適な吸収剤は、Ind. Eng. Chem. Res. 2002, 41, 2775−2784(非特許文献1); Ind. Eng. Chem. Res. 2002, 41, 4837−4840(非特許文献2); Ind. Eng. Chem. Res. 2003, 42, 4376−4381(非特許文献3);およびAIChE Journal, Feb. 2006, Vol. 52, No. 2, 574−581(非特許文献4)に記載されている。吸収剤は、合成ガスのような還元ガスで再生できる。
【0040】
シフト転化器は、いずれの好適なシフト触媒を含有していてもよい。床の圧力低下および寸法を低減できるため、モノリス形態の触媒が好ましくは用いられる。本発明での使用に好適なシフト触媒の例としては、国際公開第2007/70260A号(特許文献16)に記載されている、鉄−クロムをベースとする触媒、銅−亜鉛−アルミニウムをベースとする触媒、および貴金属をベースとする触媒;Haldor Topsoe A/Sから入手可能であり、米国特許出願公開第2006/230680号(特許文献17)に記載されている、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、および鉄−クロム酸化物;Haldor Topsoe A/Sから入手可能であり、欧州特許出願公開第1445235A号(特許文献18)に記載されている、マンガン−ジルコニウムベースのシフト触媒;Haldor Topsoe A/Sから入手可能であり、米国特許第7517374号(特許文献19)に記載されている、銅−亜鉛−アルミニウムベース触媒、および銅−亜鉛−クロム触媒;およびHaldor Topsoe A/Sから入手可能であり、欧州特許出願公開第1149799A号(特許文献20)に記載されている、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、および/またはネオジムを含むシフト触媒が挙げられる。その他の好適なシフト触媒の例には、米国特許第7160533号(特許文献21)に記載されている、白金および/またはその酸化物、ルテニウムおよび/またはその酸化物、およびアルカリ金属、アルカリ土類金属、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、イリジウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、ランタン、セリウム、プラセオジム、サマリウム、およびユーロピウム、これらの酸化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含有する、貴金属ベースのシフト触媒;および米国特許出願公開第2005/22450号(特許文献22)に記載されている、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、イリジウム、コバルト、銅、金、鉄、銀、これらの酸化物類、およびこれらの組合せを含むシフト触媒が挙げられる。
【0041】
メタン化器は、従来のメタン化触媒を含有してよい。適当な触媒およびメタン化条件の例は、米国特許第7560496号(特許文献23)に記載されている。好ましいメタン化触媒としては、ルテニウム、ニッケル、またはこれらの組合せが挙げられる。市場から入手可能な触媒の例は、Haldor Topsoe A/Sから入手可能なPK−7Rである。
【0042】
本発明によるガス発生器の操作の好ましい実施形態を以下に与える。
【0043】
ガス発生器操作の第1のモード
本発明によるガス発生器の操作の第1のモードを図1に示す。
【0044】
第1のステップにおいて、第1の触媒燃焼器中で酸素含有ガスによって燃料を触媒的に燃焼して、酸素を含む燃焼排ガスを生成する。このモードにおいて、第1の触媒燃焼器に導入される酸素含有ガスは、燃料に対して過剰量(λ>1)で用いられる。第1の触媒燃焼器中での燃焼は、超化学量論量の空気でもって実施されることが好ましい。上記または以下の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態において、λは、1〜10、より好ましくは2〜6の範囲であり、最も好ましくは約3である。
【0045】
第1の触媒燃焼器中での使用に適した触媒材料は上述した。
【0046】
適した燃料の例は、天然ガス、バイオガス、エタン、プロパン、ブタンのような炭化水素燃料、ならびにアルコール類(例えば、メタノールまたはエタノール)、DME、および液化石油ガス(LPG)、ディーゼル、灯油、またはナフサのような石油系燃料のような液体である。
【0047】
酸素含有ガスの例は、空気、酸素、不活性ガスで希釈した酸素、および空気/蒸気混合物であり、空気が好ましい。
【0048】
第1の触媒燃焼器における一般的な燃焼反応は次のとおりである。
2n+2+[(3n+1)/2]O → nCO+(n+1)H
(式中、nは、少なくとも1の整数である。)
【0049】
天然ガスおよび空気が第1の触媒燃焼器の供給物として用いられる場合、第1の触媒燃焼器の燃焼排ガスは、酸素、窒素、二酸化炭素、蒸気、および残余の他の不活性ガスを含有する。燃焼排ガスは、次いで、第2の触媒燃焼器に導入される前に、第2のステップにおいて、適した冷却デバイスによって冷却され得る。
【0050】
第3のステップにおいて、追加の燃料が添加され、これは、第2の触媒燃焼器中で得られた酸素含有の燃焼排ガスでもって燃焼または部分的に酸化される。
【0051】
第2の触媒燃焼器中で使用に適した触媒材料は上述した。第2の触媒燃焼器はまた、空気/燃料比が1未満であるとき、触媒部分酸化ネットとして機能することもできる。
【0052】
第2の触媒燃焼器中で使用される触媒は、二重の機能性(double functionality)を有する。この触媒は、完全燃焼に必要な化学量論値よりも高いO/C比では、燃焼触媒として機能し、一方、完全燃焼に必要な化学量論値より低いO/C比では、過剰燃料を合成ガスに転化する。
【0053】
保護ガスの生成
保護ガス生成のため、第3のステップにおいて、過剰空気がゼロを僅かに超える程度まで低下するような割合で追加の燃料を添加する。過剰空気の量は、10%まで、好ましくは5%まで、より好ましくは2%まで、最も好ましくは1%までであってよい。
【0054】
保護ガスのモードにおいて、第2の触媒燃焼器における一般的な燃焼反応は次のとおりである。
2n+2+[(3n+1)/2]O → nCO+(n+1)H
(式中、nは、少なくとも1の整数である。)
【0055】
第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスは、窒素、二酸化炭素、蒸気、微量の酸素、および残余の他の不活性ガスを含有しており、次いで、第5のステップで微量の酸素が除去される酸素吸収器に導入される前に、第4のステップで適した冷却デバイスによって冷却され得る。
【0056】
得られる保護ガス(低酸素ガス)は、主として、蒸気、窒素、および二酸化炭素の混合物であり、次いで、第6のステップで反応なしにシフト転化器またはメタン化器を通過する。
【0057】
還元ガスの生成
還元ガス生成のために、第3のステップで、O/C比が完全燃焼に必要な化学量論値より低いような割合で追加の燃料を添加する。上記または以下の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態において、λは、0.1〜1.0未満、より好ましくは0.3〜0.9の範囲であり、最も好ましくは約0.6である。
【0058】
還元ガスのモードにおいて、追加の燃料が部分的に酸化される。第2の触媒燃焼器中の触媒部分酸化反応は、主として、次のとおりである。
2n+2+(n/2)O → nCO+(n+1)H
(式中、nは、少なくとも1の整数である。)
【0059】
第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスは、水素および一酸化炭素、ならびに窒素、二酸化炭素、蒸気、および残余の他の不活性ガスを含有しており、次いで、第5のステップで酸素吸収器の吸収剤を再生させる酸素吸収器を通過する前に、第4のステップで適した冷却デバイスによって冷却され得る。
【0060】
酸素吸収器からのガス混合物は、シフト転化器中に導入されて一酸化炭素が二酸化炭素に転化されるか、またはメタン化器に導入されて一酸化炭素がメタンに転化される。
【0061】
シフト転化器中では、一酸化炭素は、以下の反応に従って二酸化炭素に転化される。
CO+HO ←→ CO+H
【0062】
メタン化器中では、一酸化炭素は、以下の反応に従ってメタンに転化される。
CO+3H ←→ CH+H
【0063】
シフト転化器またはメタン化器を出る生成された還元ガス(高水素ガス)は、主として、蒸気、窒素、水素、二酸化炭素、および残余の他の不活性ガスの混合物である。
【0064】
ガス発生器操作の第2のモード
本発明によるガス発生器の操作の第2のモードを図2に示す。
【0065】
第1のステップでは、第1の触媒燃焼器中で酸素含有ガスによって燃料が部分的に酸化されて、一酸化炭素および水素を含む燃焼排ガスが生成される。このモードにおいて、第1の触媒燃焼器に導入される燃料は、酸素含有ガスに対して過剰量で用いられる。上記または以下の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態において、λは、0.1〜1.0未満、より好ましくは0.3〜0.9の範囲であり、最も好ましくは約0.6である。
【0066】
第1の触媒燃焼器での使用に適した触媒材料の例、ならびに好適な燃料および酸素含有ガスの例は、上記した。
【0067】
天然ガスおよび空気が第1の触媒燃焼器の供給物として用いられる場合、第1の触媒燃焼器の燃焼排ガスは、水素および一酸化炭素、ならびに二酸化炭素、蒸気、窒素、および残余の他の不活性ガスを含有する。燃焼排ガスは、次いで、第2の触媒燃焼器中に導入される前に、第2のステップで適した冷却デバイスによって冷却され得る。
【0068】
第3のステップでは、一酸化炭素および水素を含む燃焼排ガスを第2の触媒燃焼器中で燃焼させるために追加の燃料が添加される。
【0069】
第2の触媒燃焼器での使用に適した触媒材料は、上記した。
【0070】
保護ガスの生成
保護ガス生成のために、第3のステップにおいて、水素および一酸化炭素を含有する第1の触媒燃焼器の燃焼排ガスの燃焼が実質的に完了するような割合で追加の空気が添加される。上記または以下の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態において、λは、1〜1.5の範囲であり、より好ましくは約1.1である(水素および一酸化炭素に関したλ)。
【0071】
第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスは、微量の酸素、二酸化炭素、蒸気、および不活性ガス(窒素および希ガスを含む)からなり、次いで、第5のステップで微量の酸素が除去される酸素吸収器に導入される前に、第4のステップで適した冷却デバイスによって冷却され得る。
【0072】
得られる保護ガス(低酸素ガス)は、主として、蒸気、窒素、および二酸化炭素の混合物であり、次いで、第6のステップで、反応することなくシフト転化器またはメタン化器を通過する。
【0073】
還元ガスの生成
還元ガス生成のために、第3のステップで水素および一酸化炭素を含有する第1の触媒燃焼器の燃焼排ガスの部分的な燃焼を実施するために、追加の空気を準化学量論量で添加する。上記または以下の実施形態のいずれかと組み合わせた好ましい実施形態において、λは、0.1〜0.7、より好ましくは0.2〜0.5の範囲であり、最も好ましくは約0.3である。
【0074】
第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスは、水素および一酸化炭素、ならびに窒素、二酸化炭素、蒸気、および残余の他の不活性ガスを含有しており、次いで、第5のステップで酸素吸収器の吸収剤を再生させる酸素吸収器を通過する前に、第4のステップで適した冷却デバイスによって冷却され得る。
【0075】
酸素吸収器からのガス混合物は、一酸化炭素を二酸化炭素に転化させるためにシフト転化器中に導入されるか、または一酸化炭素をメタンに転化させるためにメタン化器中に導入される。
【0076】
シフト転化器またはメタン化器を出る生成された還元ガス(高水素ガス)は、主として、蒸気、窒素、水素、二酸化炭素、および残余の他の不活性ガスの混合物である。
【0077】
図3は、第1のモードに従って操作されるガス発生器の具体的な実施形態を示す図式図である。
【0078】
図3に示す保護/還元ガス発生器は、燃料(1)、および酸素含有ガス(4)を導入するための手段を含む。燃料(1)は、ガスノズル(2)を介して燃料燃焼室(6)中に導入され、ここで、空気分配器(3)を通る酸素含有ガスとして用いられる空気(4)と混合される。混合物は、スパークプラグ、電気フィラメント、または電熱器であってよい適切な点火デバイス(5)によって点火される。過剰空気は、1200℃を下回る断熱火炎温度に等しく、燃焼に用いられる。燃焼室(6)を下流の成分から分け、それら成分を保護するために炎シールド(7)を設けることができる。
【0079】
第1の触媒燃焼器(8)が、一定温度(例えば、天然ガスでは約580℃)まで加温されると、ガスノズル(2)が数秒間閉鎖されて燃焼室(6)内の炎が消される。この間に、空気を流して燃焼室(6)を燃料自動点火温度より下に冷却する。燃焼を燃焼室(6)から第1の触媒燃焼器(8)に切り替え、ここで、燃料を過剰空気によって燃焼する。
【0080】
第1の触媒燃焼器(8)の燃焼排ガスは、酸素、窒素、二酸化炭素、蒸気、および残余の他の不活性ガスを含有する。
【0081】
第1の触媒燃焼器(8)の燃焼排ガスの温度は、1000℃に到達し得る。したがって、燃焼排ガスは、冷却デバイス(9)によって適切な温度(例えば、600℃未満)に少なくとも部分的に冷却される。冷却デバイス(9)は、強制対流型冷却器であるか、または自由対流型熱交換器であることができる。冷却デバイスは、例えば、空気強制対流冷却用のガスマニホールドを有するか、または自然対流冷却用の開放チャネルまたはフィン付きチューブを有することができる。図3は、冷却デバイス(9)を示しており、これは、冷却空気(11)がフィン付きチャネル(10)を介して導入されるバッフル付き燃焼排ガス冷却器である。加温された冷却空気(11)は、ポート(12)を介して除去される。
【0082】
次いで、燃焼排ガスに含有される酸素は、第2の触媒燃焼器(14)中で追加の燃料(15)でもって燃焼される。
【0083】
追加の燃料(15)は、ガスノズル(17)を介して供給されることができ、そして冷却された燃焼排ガスと混合区域(13)中で混合され得る。次いで、得られた混合物は、燃料噴射チャネル(16)を通過して第2の触媒燃焼器(14)中に入る。あるいはまた、第2の触媒燃焼器(15)の触媒が固定床の形態である場合、固定床の上に追加の燃料を添加できる。燃料の添加量は、マスフローコントローラ、注入ポンプ、電磁弁、または制御弁によって調節できる。適した調節デバイスの選択は、保護/還元ガスの生産量に依存する。
【0084】
保護ガスの生成
保護ガス生成のために、過剰空気がゼロを僅かに超える程度まで低下するような割合で追加の燃料(15)を添加する。
【0085】
第2の触媒燃焼器(14)の燃焼排ガスは、窒素、二酸化炭素、蒸気、微量の酸素、および残余の他の不活性ガスを含有する。
【0086】
第2の触媒燃焼器(14)の燃焼排ガスの温度は、1000℃に到達し得る。微量の酸素を除去するために、燃焼排ガスを600℃未満の温度まで冷却しなければならない。燃焼排ガス冷却器は、強制対流型冷却器であるか、または自由対流型熱交換器であることができる。この冷却器は、例えば、空気強制対流冷却用のガスマニホールドを有するか、あるいは自然対流冷却用の開放チャネルまたはフィン付きチューブを有することができる。図3は、冷却空気(20)がフィン付きチャネル(18)を通過する冷却デバイス(19)を示す。加温された冷却空気(20)は、出口(24)を介して除去される。
【0087】
600℃未満の温度を有する冷却された燃焼排ガスは、微量の酸素が除去される酸素吸収器(22)を通過する。
【0088】
生成された保護ガスは、主として、蒸気、窒素、および二酸化炭素の混合物であり、反応することなく一酸化炭素転化器(23)を通り、次いで、出口(24)を経てガス発生器を出る。
【0089】
還元ガスの生成
還元ガスの生成のために、O/C比が完全燃焼に必要な化学量論値より低いような割合で追加の燃料(15)を添加する。これは、一酸化炭素転化器(23)が高温(300℃超)である場合にだけ実施されなければならない。
【0090】
第2の触媒燃焼器(14)の燃焼排ガスは、窒素、二酸化炭素、蒸気、水素、一酸化炭素、および残余の他の不活性ガスを含有する。
【0091】
生成された合成ガスは、酸素吸収器(22)を通過し、そこで吸収剤を再生させる。続いて、該ガスは、一酸化炭素転化器(24)を通過し、そこで、一酸化炭素は二酸化炭素またはメタンに転化される。
【0092】
生成された還元ガスは、主として、蒸気、窒素、水素、二酸化炭素、および残余の他の不活性ガスの混合物であり、その後、出口(24)を介してガス発生器を出る。
【実施例】
【0093】

図4を参照して、保護/還元ガス発生器が一体化されている天然ガス(NG)ベースのSOFCシステムの典型的なシステム構成の例が与えられる。
【0094】
本発明によるガス発生器は、出力が数百ワットから数百キロワットであるSOFCシステムに適用可能である。
【0095】
本例で用いる第1の触媒燃焼器(8)および第2の触媒燃焼器(14)の触媒は、パラジウムをベースとする。保護ガスを用いてSOFCスタックを約300℃まで加熱する一方で、還元ガスを利用して該スタックをさらに操作温度、すなわち約650℃〜800℃まで加熱する。本例で用いる一酸化炭素転化器(24)は、シフト転化器である。
【0096】
図4に示すシステムは、予備改質器供給物加熱器(1);天然ガスに含有される高次炭化水素をメタンに転化する、予備改質器(2);アノードガス加熱器(3);保護/還元ガス発生器(4);SOFCスタック(5);カソード空気加熱器(6);スタックアノード排ガスに含有される毒性ガスおよび爆発性ガスを燃焼する触媒燃焼器(7);リサイクルアノードガス冷却器(8);およびアノードガスリサイクルブロワ(9)を含む。
【0097】
予備改質器(2)はメタン発生器として機能し、従来の予備改質触媒、例えばニッケルベース触媒、および/または白金もしくはロジウムなどの貴金属をベースとする触媒を含有する。本発明での使用に好適な予備改質器の例は、欧州特許出願公開第1413547A号(特許文献24)に記載されている。
【0098】
触媒燃焼器(7)は、任意に適当な担体上に支持された従来の酸化触媒を含有する。酸化触媒の例には、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、および銀のような貴金属、ならびにこれらの化合物、合金、および混合物が挙げられる。担体の例は、酸化アルミニウム類、安定化酸化アルミニウム類、酸化ジルコニウムル、酸化イットリウム類、酸化ランタン類、酸化セシウム類、酸化スカンジウム類、およびこれらの組合せなどの多孔質材料を含む。第1および第2の触媒燃焼器(8)および(15)での使用に好適な以前に説明した貴金属触媒は、触媒燃焼器(7)において用いることもできる。
【0099】
システムの始動
保護/還元ガス発生器(4)および触媒燃焼器(7)を始動させる。始動のために、保護/還元ガス発生器(4)は保護ガスを発生させる。アノードガスをリサイクルして蒸気を閉ループ((5)、(3)、(8)、(9)、(1)、(2)、(4)、(5);図4参照)中で蓄積する一方で、カソード空気を加温して、SOFCスタック(5)を約300℃まで加熱するのに用いる。その一方で、予備改質器(2)を天然ガスおよび保護ガスの混合物によって保護しながら、徐々に加温する。
【0100】
典型的な天然ガス(メタン89%、エタン6%、プロパン3%、ブタン0.5%、不活性ガス1.5%)を燃料として用い、そして空気を酸素含有反応物として用いる。
【0101】
第1の触媒燃焼器(8)中、空気/燃料の体積比を17.8(O/C=6.5)に調整する一方で、第2の触媒燃焼器(15)中に追加の燃料を添加して、全体のO/C比を3.9に低下させる。
【0102】
上記条件下で、窒素69%、蒸気19%、二酸化炭素9%、残余の他の不活性ガスのモル組成を有する保護ガスが焼く1000℃で得られる。
【0103】
SOFCスタック(5)の温度が300℃を超えると、保護/還元ガス発生器(4)を還元ガスモードに切り替える。これは、O/C比が完全燃焼に必要な化学量論値が下回って降下するように、第2の触媒燃焼器(14)中にさらなる燃料を導入することによって達成される。O/C比を約3に低下させることで、窒素65%、二酸化炭素7.5%、蒸気16.5%、水素5.5%、一酸化炭素4%、残余の他の不活性ガスのモル組成を有し、そして約1000℃の温度を有する合成ガスが得られる。次いで該ガスを600℃未満に冷却する。冷却された合成ガスは、酸素吸収器(22)を通り、ここで、吸収剤を再生させる。続いてのシフト転化器(23)において、一酸化炭素は二酸化炭素に転化される。
【0104】
シフト転化器(24)を通った後、窒素65%、二酸化炭素11%、蒸気13%、水素9%、一酸化炭素0.5%、残余の他の不活性ガスを有する還元ガスが440℃で得られる。
【0105】
SOFCスタック(5)および予備改質器(2)の内部が還元雰囲気を有することにより、スタックは約650℃まで加温される。
【0106】
システムの停止
保護/還元ガス発生器(4)中に、空気および過剰燃料を導入することによって該発生器を始動させて合成ガスを生成する。SOFCスタック(5)を約400℃に冷却し、そして触媒燃焼器(7)を停止させる。保護/還元ガス発生器(4)への余分の燃料をカットして保護ガスを発生させる。SOFCスタック(5)および予備改質器(2)をさらに冷却して150℃未満にし、次いで保護/還元ガス発生器(4)への燃料および空気の供給を遮断する。
【符号の説明】
【0107】
1 燃料、予備改質器供給加熱器
2 ガスノズル、予備改質器
3 空気分配器、アノードガス加熱器
4 酸素含有ガス、保護/還元ガス発生器
5 点火デバイス、SOFCスタック
6 燃料燃焼室、カソード空気加熱器
7 炎遮断体、触媒燃焼器
8 第1の触媒燃焼器、リサイクルアノードガス冷却器
9 冷却デバイス、アノードガスリサイクルブロワ
10 フィン付きチャネル
11 冷却空気
12 ポート
13 混合区域
14 第2の触媒燃焼器、第2の触媒燃焼器
15 追加の燃料、触媒燃焼器、第2の触媒燃焼器
16 燃料噴射チャネル
17 ガスノズル
18 フィン付きチャネル
19 冷却デバイス
20 冷却空気
22 酸素吸収器
23 一酸化炭素転化器、シフト転化器
24 出口、シフト転化器、一酸化炭素転化器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器シェル内で一体化され、そして直列に配置されている以下のユニット:
− 第1の触媒燃焼器または触媒部分酸化域、
続いて
− 燃焼または触媒部分酸化を実施するための第2の触媒燃焼器、
− 第1および/または第2の触媒燃焼器または触媒部分酸化域からの燃焼排ガスを冷却するための冷却装置、
− 第2の触媒燃焼器の燃焼排ガスから酸素を吸収するための酸素吸収器、それに続く、
− 第2の触媒燃焼器からの燃焼排ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素またはメタンに転化するためのシフト転化器またはメタン化器、
を含む、燃料を低酸素ガス(oxygen−depleted gas)および/または高水素ガス(hydrogen−enriched gas)に転化するためのガス発生器。
【請求項2】
前記第1の触媒燃焼器または前記触媒部分酸化域の上流に熱燃焼器が置かれている、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記熱燃焼器が燃料点火デバイスを含む、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第1および第2の触媒燃焼器が貴金属触媒を含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載のガス発生器。
【請求項5】
前記貴金属触媒が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、金および銀の少なくとも1種を含む、請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記貴金属触媒が、固定床触媒、ネット、メッシュ、触媒化ハードウェアまたは構造化触媒の形態である、請求項4または5に記載のガス発生器。
【請求項7】
低酸素ガスおよび/または高水素ガスを必要とするプロセスにおける、請求項1〜6のいずれか一つに記載のガス発生器の使用。
【請求項8】
固体酸化物燃料電池または固体酸化物電解セルを始動、停止または緊急停止させるための低酸素ガスまたは高水素ガスを発生させるための、請求項1〜6のいずれか一つに記載のガス発生器の使用。
【請求項9】
− 酸素を含む燃焼排ガスを生成するために、第1の触媒燃焼器中で酸素含有ガスによって燃料を触媒的に燃焼するステップ、
引き続く、
− 水素および一酸化炭素を含むガスまたは微量の酸素を含むガスを生成するために、第2の触媒燃焼器中で、過剰燃料によって前記酸素を含む燃焼排ガスを燃焼または部分的に酸化するステップ、
引き続く、次の、
− 低酸素ガスを得るために、前記微量の酸素を含むガスからの微量の酸素を低減するステップ、
および、
− 高水素ガスを得るために、前記水素および一酸化炭素を含むガス中に存在する一酸化炭素の量を、二酸化炭素またはメタンへの触媒転化によって低減するステップ、
のいずれか一方を含む、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化する方法。
【請求項10】
前記第1および前記第2の触媒燃焼器が、燃料を炎色反応下で酸素含有ガスでもって熱的点火することによって運転温度まで加熱される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸素を含む燃焼排ガスおよび/または水素および一酸化炭素を含むガスまたは微量の酸素を含むガスが、次のステップの前に冷却される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の触媒燃焼器中での燃焼が、超化学量論量の空気でもって実施される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
− 一酸化炭素および水素−を含む燃焼排ガスを生成するために、第1の触媒燃焼器中で酸素含有ガスによって燃料を触媒的に燃焼するステップ、
引き続く、
− 微量の酸素、二酸化炭素、蒸気および不活性物質からなるガス、または水素および一酸化炭素を含むガスを生成するために、一酸化炭素および水素を含む燃焼排ガスを第2の触媒燃焼器中で燃焼するステップであって、前記第2の触媒燃焼器中での燃焼排ガスの燃焼後に存在する一酸化炭素の量が、前記第2の触媒燃焼器中での燃焼排ガスの燃焼前に存在するその量と比較して低減されている、該ステップ、
引き続く、次の
− 前記微量の酸素、二酸化炭素、蒸気および不活性物質からなるガス中の酸素の量を低減させ、そして低酸素ガスを得るステップ、
および、
− 前記水素および一酸化炭素を含むガス中に存在する一酸化炭素を二酸化炭素またはメタンに転化して、高水素ガスを得るステップ、
のいずれか一方を含む、燃料を低酸素ガスおよび/または高水素ガスに転化する方法。
【請求項14】
前記第1および第2の触媒燃焼器が、炎色反応下で酸素含有ガスでもって燃料を熱的点火することによって運転温度まで加熱する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の触媒燃焼器における燃焼が完了しているか、または準化学量論量の空気によって実施される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−181490(P2011−181490A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−279987(P2010−279987)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(505360328)
【Fターム(参考)】