説明

燃料タンクの給油口キャップ

【課題】燃料タンク内の燃料から蒸発した有害ガスを外部に放出させることなく環境汚染を防止でき、燃費の向上も図れる燃料タンクの給油口キャップの提供。
【解決手段】燃料タンク100内に気化ガスが発生すると、燃料タンク100内の内圧が高まり、弁体22を上昇させて弁体22の周端部上面を第2空間S2を形成する肩筒状部19の壁面19Aに当接させ、筒本体16内の第2空間S2と大気に連通する第3空間S3との連通を遮断する。燃料タンク100内の圧力が弁体22の設定した変形強度以上の圧力になると、弁体22の中央部が第3空間S3内に入り込んで外径が短くなるように変形して、弁体22の周縁部に第3空間S3を形成する壁面19B下端に当接しない凹んだ部分が形成され、この凹んだ部分の空間を介して第2空間S2と第3空間S3とが連通し、過大な圧力を燃料タンク100外部に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に設けられた燃料給油口を閉塞する燃料タンクの給油口キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等(自動車、農機具、発電機、芝刈り機、オートバイ、船舶、建設機械、道路工事用機械等)に設けられた内燃機関の燃料タンクの給油口キャップには、燃料タンク内の燃料が消費された体積分だけ大気を取り込む必要があり、大気を取り込むための空気通路が設けられている。
【0003】
従って、前記燃料タンク内の燃料が蒸発して発生した気化ガスが、前記給油口キャップに設けられた前記空気通路から大気中に放出されることとなり、環境汚染も問題である。また、自動車等に設けられた前記燃料タンクが所定角度以上に傾斜した場合、前記空気通路から前記燃料が漏れ出して、その燃料に引火してしまうという危険性があった。
【0004】
このため、前記燃料タンク内の前記燃料が前記空気通路から大量に漏れ出してしまうのを防止する技術が提案された(特許文献1参照)。即ち、この技術は前記給油口キャップにおいて、外蓋と内蓋の受入れ部との間の間隙内に前記空気通路の一部を成す蛇行状通路を形成する凹凸部を設けて、この蛇行状通路を介して前記燃料タンク内の前記燃料から蒸発した有害ガスのみを前記給油口キャップの外部へ向かって放出させると共に、前記凹凸部によって前記燃料が大量に外部へ放出するのを阻止していた。
【0005】
また、前記燃料タンク内の前記燃料が前記空気通路からに漏れ出してしまうのを防止するために、前記空気通路中にボールバルブやフロートバルブなどのバルブを設ける技術も考えられる。
【0006】
更に、前記燃料タンク内の前記燃料から蒸発した有害ガスが大気中に放出されてしまうのを防止する技術も提案されている(特許文献2参照)。即ち、この技術は、前記燃料タンク内の燃料から蒸発した有害ガスを、キャニスタ内に設けた吸着部材(活性炭)に吸着させるものである。そして、前記吸着部材へ吸着させた有害ガスを脱離させ、エンジンの吸気管から脱離させたその有害ガスを吸入して燃焼させることにより、前記燃料タンク内の前記燃料から蒸発した有害ガスが前記給油口キャップの前記空気通路から大気中に放出されてしまうのを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−219461号公報
【特許文献2】特開平5−133287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の技術によれば、この蛇行状通路を介して前記燃料タンク内の前記燃料から蒸発した有害ガスを前記給油口キャップの外部へ向かって放出させるため、環境上、好ましくなかった。また、前記空気通路中に前記ボールバルブや前記フロートバルブなどのバルブを設ける技術は、前記空気通路が常に大気に連通して開放している状態であるので、前記有害ガスを前記給油口キャップの外部に放出するもので、環境上、好ましくないばかりか、構造も複雑で高価であり、実用的ではない。
【0009】
更に、前記燃料タンク内の燃料から蒸発した有害ガスを、前記キャニスタ内に設けた吸着部材に吸着させる前記特許文献2の技術によれば、前記燃料タンクが傾斜したり、振動により前記燃料が前記キャニスタ内に流入しないようにするための弁機構(ローリングバルブ等)が必要であり、その構造も複雑で高価であり、実用的ではない。
【0010】
そこで本発明は、上記の点に鑑み、前記燃料タンクが所定角度まで傾斜したときにも前記給油口キャップの前記空気通路から燃料が漏れ出すことが防止できると共に前記燃料から蒸発した有害ガスを外部に放出させることなく環境汚染を防止でき、燃費の向上も図ることができて、構造が簡単で安価に作製できる実用的な燃料タンクの給油口キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため第1の発明は、燃料タンクの給油口に取り付けられ、外蓋と内蓋とから成るキャップ本体内に、前記燃料タンク内部と外部とを連通するための空気通路と、この空気通路中に弁機構部とを設けた燃料タンクの給油口キャップであって、
前記弁機構部は、
前記内蓋の内面側の略中心位置に設けられ前記燃料タンク内部と連通する円柱状の第1空間、この第1空間より小径の円柱状を呈して前記第1空間に連通する第2空間及びこの第2空間に連通すると共に前記燃料タンク外部と連通する第3空間を備えた筒本体と、
前記第1空間内に配設され前記燃料タンク内部と連通する連通路が形成された大径部と、前記連通路に連通する空気通路がその上面に形成され前記大径部より外径が小径の小径部とを備えた弁体支持部材と、
前記弁体支持部材の前記小径部より大径で薄く平面視円形状を呈する非通気性の弾性体材料で構成されて、弾性、柔軟性を有し、その周端部が前記筒本体の前記第2空間を形成する壁面と前記第3空間を形成する壁面とを接続するための上方に向けて傾斜した壁面と少し離れて前記小径部上に載置されると共に、この載置されたときにその中央部が前記第3空間に面する弁体とを備え、
前記燃料タンク内の燃料が蒸発した気化ガスによりこの燃料タンク内の圧力が高まった際に、前記燃料タンク内部と前記弁体支持部材の前記連通路及び前記空気通路を介する前記気化ガスにより前記弁体は上昇して、その周縁部が前記傾斜した壁面に当接して、前記第2空間と前記第3空間との連通を遮断するようにし、
更に前記燃料タンク内の圧力が高まって、前記弁体の設定した変形強度以上の圧力になると、前記弁体の中央部が更に上昇して前記第3空間内に入り込んで外径が短くなるように変形して皺ができて、前記弁体の周縁部には前記筒本体の前記第3空間を形成する壁面下端に当接する部分と当接しない凹んだ部分とが形成され、この凹んだ部分の空間を介して前記第2空間と前記第3空間とが連通して過大な圧力を前記燃料タンク外部に放出して、前記燃料タンク内の圧力を前記変形強度未満の圧力とし、
前記弁体に前記燃料の液圧が作用している状態下で、前記燃料タンク内の燃料の消費によりこの燃料タンク内が負圧になったとき、この負圧により前記弁体の周縁部が前記燃料タンク側へ吸引されて、前記弁体支持部材の前記小径部の上面の周端部を支点として前記弁体の前記周縁部は垂れ下がり、傾斜した前記壁面と前記弁体との隙間を拡大して、前記第2空間と前記第3空間とを連通させ、前記燃料タンク内に大気を導入して大気圧の状態にし、
安全弁、ワンウェイバルブとしての機能を果たす
ことを特徴とする。
【0012】
また第2の発明は、燃料タンクの給油口に取り付けられ、外蓋と内蓋とから成るキャップ本体内に、前記燃料タンク内部と外部とを連通するための空気通路と、この空気通路中に弁機構部とを設けた燃料タンクの給油口キャップであって、
前記弁機構部は、
前記内蓋の内面側の略中心位置に設けられ前記燃料タンク内部と連通する円柱状の第1空間、この第1空間より小径の円柱状を呈して前記第1空間に連通する第2空間及びこの第2空間に連通すると共に前記燃料タンク外部と連通する第3空間を備えた筒本体と、
前記第1空間内に配設され前記燃料タンク内部と連通する連通路が形成された大径部と、前記連通路に連通する空気通路がその上面に形成され前記大径部より外径が小径の小径部とを備えた弁体支持部材と、
前記弁体支持部材の前記小径部より大径で薄く平面視円形状を呈する非通気性の弾性体材料で構成されて、弾性、柔軟性を有し、その周端部が前記筒本体の前記第2空間を形成する壁面と前記第3空間を形成する壁面とを接続するための上方に向けて傾斜した壁面と接触して前記第2空間と前記第3空間との連通を遮断した状態で前記小径部上に載置されると共に、この載置されたときにその中央部が前記第3空間に面する弁体とを備え、
前記燃料タンク内の圧力が高まって、前記弁体の設定した変形強度以上の圧力になると、前記弁体の中央部が上昇して前記第3空間内に入り込んで外径が短くなるように変形して皺ができて、前記弁体の周縁部には前記筒本体の前記第3空間を形成する壁面下端に当接する部分と当接しない凹んだ部分とが形成され、この凹んだ部分の空間を介して前記第2空間と前記第3空間とが連通して過大な圧力を前記燃料タンク外部に放出して、前記燃料タンク内の圧力を前記変形強度未満の圧力とし、
前記燃料タンク内の燃料の消費によりこの燃料タンク内が負圧になったとき、この負圧により前記弁体の周縁部が前記燃料タンク側へ吸引されて、前記弁体支持部材の前記小径部の上面の周端部を支点として前記弁体の前記周縁部は垂れ下がり、傾斜した前記壁面と前記弁体との隙間を形成して、前記第2空間と前記第3空間とを連通させ、前記燃料タンク内に大気を導入して大気圧の状態にし、
安全弁、ワンウェイバルブとしての機能を果たす
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記燃料タンクが所定角度まで傾斜したときにも前記給油口キャップの前記空気通路から燃料が漏れ出すことが防止できると共に、前記燃料から蒸発した有害ガスを前記燃料タンク内の圧力が前記弁体の設定された変形強度以上の圧力になるまでは前記第2空間と大気に連通する前記第3空間との連通を遮断するので、外部に放出させることなく環境汚染を防止でき、燃費の向上も図ることができて、構造が簡単で安価に作製できる実用的な燃料タンクの給油口キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の燃料タンクの給油口キャップを適用した自動車の概略図である。
【図2】給油口キャップの平面図である。
【図3】給油口キャップの裏面図である。
【図4】給油口キャップを構成する外蓋と内蓋とを分解した状態の縦断面図である。
【図5】給油口キャップを構成する外蓋の裏面図である。
【図6】給油口キャップを構成する内蓋の表面図である。
【図7】給油口キャップを構成する内蓋の裏面図である。
【図8】外蓋の筒本体とこの筒本体内に収納される各部品の分解した縦断面図(A)〜(F)と、前記筒本体のX−X断面図(G)及び前記各部品の平面図(H)〜(L)である。
【図9】給油口キャップの縦断面図である。
【図10】燃料タンクの内部と外部の圧力が均衡しており、空気の出入りが無い状態で、各空気通路が開放されている状態の内蓋要部の縦断面図である。
【図11】燃料タンク内の燃料の蒸発により気化ガスが発生して内部の圧力が高まって弁体の上面周端部が第2空間を形成する肩筒状部の傾斜した壁面に当接した状態の内蓋要部の縦断面図である。
【図12】燃料タンク内の燃料の蒸発により気化ガスが発生して内部の圧力が更に高まって弁体の所定幅の周縁部が第2空間を形成する肩筒状部の傾斜した壁面に面接触で密着した状態の内蓋要部の縦断面図である。
【図13】燃料タンク内の燃料の蒸発により気化ガスが発生して内部の圧力が3kPa以上に高まった状態の内蓋要部の縦断面図である。
【図14】燃料タンク内の燃料の蒸発により気化ガスが発生して内部の圧力が3kPa以上に高まった状態であって、内蓋内に収納される弁体等を縦断面しない状態の内蓋要部の縦断面図である。
【図15】燃料タンク内の圧力が負圧となった状態の内蓋要部の縦断面図である。
【図16】肩筒状部内に角錐台形状の空間を形成した筒本体のX−X断面図である。
【図17】第2の実施形態の弁体の平面図(M)、同じく第2の実施形態の弁体の中心を通る縦断面図(N)、第2の実施形態の弁体の中心を通る縦断面図(N)、第3の実施形態の弁体の中心を通る縦断面図(O)、第4の実施形態の弁体の中心を通る縦断面図(P)である。
【図18】他の実施形態の弁体支持部材の縦断面図(Q)、同じく他の実施形態の弁体支持部材の底面図(R)である。
【図19】ネジ式で給油口に取り付ける構造の給油口キャップの縦断面図である。
【図20】他の実施形態の給油口キャップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。先ず、図1に示すように、本実施形態における燃料タンク100の給油口キャップ10は、自動車、農機具、発電機、芝刈り機、オートバイ、船舶、建設機械、道路工事用機械等(以後、これらを総称して「自動車101」という。)に搭載され、エンジン99に燃料(本実施形態では、ガソリン)の供給を行う前記燃料タンク100の給油口98を開閉するものである。尚、前記燃料タンク100と前記エンジン99との間には、ロールオーバーバルブ97、キャニスタ96、気化器95が順次配管接続されている。
【0016】
前記給油口キャップ10は、図2、図3及び図4に示すように、側壁12Cに手回し用の凹凸部11が形成されて収納空間12Aを備えたアウターケース(以下、「外蓋」という。)12と、この外蓋12の前記収納空間12A内に取付けられるインナーケース(以下、「内蓋」という。)13とから構成されるキャップ本体14を備えている。そして、この内蓋13には後述する弁機構部が備えられる。前記凹凸部11は、凸部11Aと凹部11Bとが交互に繰り返して形成される。
【0017】
前記外蓋12は上壁12Bと側壁12Cとを備えた概ね有底円筒形状を呈しており、前記上壁12Bと前記側壁12Cとで形成される前記収納空間12A内に後述するフィルタ38が取り付けられた前記内蓋13を収納した状態で取り付けられる。
【0018】
そして、図4及び図6に示すように、前記内蓋13の内面側の略中心位置に中空の筒本体16が立設されている。そして、該筒本体16は前記内蓋13の底面13Aから上方へ延在するように立設された円筒形状の大径筒状部17と、この大径筒状部17の上端部に連続して形成された前記大径筒状部17より外径が小径の中径筒状部18と、この中径筒状部18の上端部に連続して形成され上方に向けて外径が徐々に小径となる肩筒状部19と、この肩筒状部19の上端部に連続して形成された小径の小径筒状部20とから構成される。
【0019】
そして、図9に示すように、前記外蓋12に前記内蓋13を収納した状態で取り付けた状態では、前記内蓋13の前記肩筒状部19の上部及び前記小径筒状部20は前記外蓋12の裏面の中央部に形成された大径空間SS1内に前記裏面とは離れた状態で収納されると共に、この大径空間SS1に連通する小径空間SS2内に前記小径筒状部20が前記裏面とは離れた状態で収納されることとなる。
【0020】
従って、図8に示すように、前記大径筒状部17内には円柱状の第1空間S1、前記中径筒状部18内には前記第1空間S1に連通する、この第1空間S1の外径より小径の円柱状の第2空間S2、前記肩筒状部19内には前記第2空間S2に連通する概ね円錐台形状の第3空間S3、前記小径筒状部20内には前記第3空間S3に連通すると共に前記燃料タンク100外部(大気)と連通する円柱状の第4空間S4が形成されることとなる。なお、前記第3空間S3を形成すると共に傾斜した壁面19Aを有する前記肩筒状部19は、後述する弁機構部の弁部を構成する。
【0021】
なお、前記肩筒状部19内には前記第3空間S3が形成されるが、図10に示すように、この前記肩筒状部19の内面は、前記第2空間S2を形成する前記中径筒状部18の壁面18Bに接続する外端寄りの底面であって内側に向かうに従って僅か上方に向けて傾斜した壁面19Aと、この壁面19Aの内側寄りに連続して更に内側に向かうに従って、例えば45度程度上方へ傾斜した壁面19Bとにより形成される。傾斜した前記壁面19Aは、一端が前記第2空間S2を形成する前記壁面18Bに接続し、他端が前記第3空間S3を形成する前記壁面19Bに接続している。従って、前記壁面19Aは、前記壁面18Bと前記壁面19Bとを接続している。
【0022】
そして、図8、図9及び図10に示すように、弁体22をその周端部が前記中径筒状部18の前記壁面18Bに設けられた後述するリブ15に接しない状態で前記肩筒状部19の前記壁面19Aとは下方へ僅か離れた、例えば移動するためのストロークを確保するため、例えば0.01〜0.8mm程度離れた位置において、隙間18Sを存して弁体支持部材23の上面上に載置した状態で前記中径筒状部18内の第2空間S2内に収納する。前記弁体22を支持する前記弁体支持部材23は、前記大径筒状部17の最上部に収納され、外形を概ね円柱状を呈して平面視円形の中心には上下に連通する空気通路24が開設され、下の大径部23Aと上の小径部23Bとを備えている。この小径部23Bの上面は、その周縁部が上方に向かって小径となるように、面取りされている。なお、前記弁体22の周縁部の動作を軽減するために、前記燃料タンク100内の圧力の負圧又は昇圧に応じて、前記隙間18Sの寸法を前述した0.01〜0.8mmの範囲内で適宜選択すればよい。
【0023】
従って、前記弁体22は、その周端部が前記壁面19Aと少し離れて前記小径部23B上に載置されると共に、この載置されたときにその上面中央部が前記第3空間S3に面することとなる。
【0024】
なお、例えば0.05〜1.0mm程度の薄い円板状を呈する前記弁体22の外径は前記弁体支持部材23の上面(前記弁体22を支持する面)の外径より大きく、前記壁面18B上に突設した複数条の前記リブ15先端がその円周上に有る円の直径よりも小さい平面視円形状を呈する。そして、前記弁体22は、変形することができ、また変形しても元の形に復帰できる弾性体材料で構成されたもので、ガソリン、軽油、エタノール、メタノール等の溶剤である燃料に対して耐溶剤性、耐熱性(例えば、80℃以上)、弾性、柔軟性、非粘着性などを有し、軽く、また通気性の無い材料で作製される。
【0025】
具体的には、前記弁体22は、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ナイロン6、ナイロン66等や、チタンやアルミニウムなどの錆びにくい金属材料等で作製されるが、この材料に応じて薄板状やフィルム状を呈したり、独立気泡性を有する発泡体や成型品で構成してもよい。また、前記燃料タンク100内の圧力や外気により移動する必要があるので、軽量である。
【0026】
なお、前記弁体22は、全部を同一の厚さとする必要もなく、周縁部よりも中央部を厚くしてもよく、例えば第2の実施形態の前記弁体22の平面図である図17(M)及び同じく第2の実施形態の前記弁体22の中心を通る縦断面図である図17(N)に示すように、平面視円形状を呈するが、前記肩筒状部19の前記壁面19Aの上端(後述する支点19C)を通る円の直径よりも小径の膨出部22Aをその上面中央部に、或いは更にその下面中央部にも設けてもよい。この膨出部22Aは、その外形が円弧状を呈する。また、第3の実施形態の前記弁体22の中心を通る縦断面図である図17(O)に示すように、前記弁体22の上面の外形が円錐状を呈するように、その中心が最も厚くなるように、中心に向かって徐々に厚くなるものでもよい(なお、その下面も同様な形状としてもよい。)。更には、第3の実施形態の前記弁体22の中心を通る縦断面図である図17(P)に示すように、前記弁体22の上面の外形が円弧状を呈するように、その中心が最も厚くなるように、中心に向かって徐々に厚くなるものでもよい(なお、その下面も同様な形状としてもよい。)。以上のようにするのは、反発弾性と曲げ強度を補強するためである。
【0027】
前記小径部23Bの上面には前記空気通路24の上端とその中央部が連通する平面視十字形状の溝23Dが形成され、前記弁体22とで空気通路25が形成される。そして、前記弁体支持部材23の大径部23Aの外径は前記大径筒状部17の内径より僅か小さい。また、前記弁体支持部材23の小径部23Bの外径は前記弁体22の外径よりも小さく、前記弁体22の外径の40%以上〜70%以下とし、前記弁体22が前記弁体支持部材23上面に載置された状態では、前記弁体22の周縁部は前記小径部23B上には載置されずに、前記第2空間S2内で浮いた状態である。
【0028】
従って、この弁体支持部材23を前記大径筒状部17内に収納すると、その小径部23Bが前記弁体22を載置した状態で前記中径筒状部18内に入り込むと共に、且つこの弁体支持部材23の前記大径部23Aと前記小径部23Bとの段差面23Cが前記大径筒状部17の前記第1空間S1を形成する面と前記中径筒状部18の前記第2空間S2を形成する面との段差面18Aに当接した状態となる。
【0029】
そして、前記中径筒状部18の前記第2空間S2を形成する内側面には内方へ向けて所定間隔を存して上下方向に延びる複数条のリブ15が突設されると共に、前記肩筒状部19の円錐台形状の前記第3空間S3を形成する内側面には内方へ向けて所定間隔を存して上下方向に延びる複数条のリブ21が突設される。これにより前記弁体22との接触抵抗を減少させ、この弁体22の上下方向の移動を円滑にしている(図8参照)。
【0030】
27は前記弁体支持部材23の底面外径と同径の平面視円形状を呈する薄板状のフィルタで、前記弁体支持部材23の下方に配設される。28は前記フィルタ27を支持するフィルタ支持体で、図8及び図10に示すように、前記大径筒状部17の空間を形成する面との間で空気通路29を形成するためにその側面には凹溝30が設けられている。また、図8(E)、(K)に示すように、このフィルタ支持体28の上面には、前記空気通路29の上端部と連通する空気通路31が形成されている。この空気通路31は前記弁体支持部材23の前記空気通路24に連通する上面中央部の連通路31Aと、この連通路31Aと前記空気通路29とを連通する連通路31Bとから構成され、迷路となっている。
【0031】
なお、前記フィルタ27は必ずしも設ける必要もなく、また図18(Q)、(R)に示すように、前記弁体支持部材23と前記フィルタ支持体28とは、一体としてもよい。この一体化された弁体支持部材23Xには、その上部に前記第2空間S2に連通する空気通路25A、その中央部に前記空気通路25Aに連通する空気通路24A、この空気通路24Aに連通する空間23Sが形成される。そして、前記空間23Sを形成する側面23XA下部には、後述する連通路35Cに連通する開口23XBが開設される。
【0032】
なお、本実施形態において、前記外蓋12、前記内蓋13、前記弁体22、前記弁体支持部材23、前記フィルタ27、前記フィルタ支持体28は、ガソリン、軽油、エタノール、メタノール等の溶剤である燃料に対して耐溶剤性ある合成樹脂材料であるナイロン6又はナイロン66により作製する。
【0033】
そして、前記内蓋13の前記底面13Aに形成された固定孔13Bと板バネ材料で作製されたスプリング33に形成された固定孔33Aとにリベット34が挿入されて、前記底面13Aに前記スプリング33が固定され、この前記底面13Aと前記スプリング33とにより空気通路35が形成される。
【0034】
尚、前記スプリング33は、錆びにくく、燃料によって溶解することのない金属材料で作製する。このスプリング33は、前記内蓋13との間で前記空気通路35等を形成する通路形成体であると共に、前記燃料タンク100の前記給油口98に前記給油口キャップ10(前記キャップ本体14)を取付け固定するための固定具でもある。また、この前記給油口98に前記給油口キャップ10(前記キャップ本体14)を取り付ける方法は、板バネから成る前記スプリング33に限らず、ネジ式でもよい。
【0035】
前述したネジ式とした場合には、前記内蓋13下部に中空の外筒状部60を形成し、この外筒状部60の内壁面に雌ネジ部61を形成して、前記給油口98に形成した雄ネジ部に螺合することにより、前記給油口98に前記給油口キャップ10(前記キャップ本体14)を取り付ける。
【0036】
このネジ式とした場合の前記給油口キャップ10の実施形態について、図19に基づいて、詳述する。この実施形態では、図18に示す前記弁体支持部材23Xを使用するが、この弁体支持部材23Xには前記開口23XBを開設しない。前記外筒状部60の内方に内筒状部62を形成し、前記大径筒状部17の前記空間内に収納された前記弁体支持部材23Xが落下しないように且つ前記空間23Sの下面開口を塞ぐように、キャップ64の周縁部に形成された嵌合溝65に前記内筒状部62を嵌合させて、前記内蓋13に固定される前記キャップ64が前記弁体支持部材23Xを支持する。
【0037】
そして、前記キャップ64の中央部に、上部が前記空間23Sに連通する空気通路66が形成され、この空気通路66の下部は前記燃料タンク100内部と連通する。即ち、前記キャップ64の下面に開設された溝67内には流体の波動防止用の蓋体68が設けられるが、前記溝67の下面開口は前記燃料タンク100内部と連通する一部(流体吸排口)69を除いて前記蓋体68により塞がれると共にこの蓋体68の上方には前記流体吸排口69に連通する流体通路70及び前記空気通路66が形成される。
【0038】
63は中央部が開口せるガスケットで、前記キャップ64の前記嵌合溝65に前記内筒状部62を嵌合させると、前記キャップ64の外径が前記ガスケット63の内径より大径であるので、前記キャップ64の折返し片64Aにより抜けが防止される。そして、前記給油口98に前記給油口キャップ10を取り付ける際に、前記外筒状部60の内壁面に形成された雌ネジ部61に前記給油口98に形成した雄ネジ部を螺合させると前記給油口98の口金が前記ガスケット63に当接し密閉される。
【0039】
以上のように構成することにより、前記燃料タンク100の内部と外部とが連通可能となる。なお、この外筒状部60の外壁面に雄ネジ部を形成して、前記給油口98に形成した雌ネジ部に螺合することにより、前記給油口98に前記給油口キャップ10を取り付けるようにしてもよい。
【0040】
そして、前述したように、前記スプリング33により、前記キャップ本体14が前記燃料タンク100の前記給油口98に取付けられると、リング状のガスケット45が前記給油口98に当接し、これにより前記給油口98は、前記キャップ本体14にて閉塞される。
【0041】
前記空気通路35は前記燃料タンク100内に連通する連通路35Aと、この連通路35Aに連通する底面視すると蛇行している連通路35Bと、この連通路35Bに連通すると共に前記空気通路29に連通し前記大径筒状部17の空間内に収納された前記フィルタ支持体28の外側面下部との間に形成される連通路35Cとから構成される。
【0042】
以上のように、蛇行する前記連通路35Bを形成したのは、前記自動車101が大きく傾斜した場合に、前記燃料タンク100からの燃料が直進しないようにして、前記燃料タンク100からの燃料が前記給油口キャップ10の前記弁体22に与える衝撃を緩和するためである。
【0043】
なお、38はフィルタで、前記燃料タンク100内にゴミなどの異物が入り込むのを阻止する。このフィルタ38を前記内蓋13の前記筒本体16の周囲の空間13S内に収納させた状態で、前記外蓋12内に前記内蓋13を収納して、前記外蓋12と前記内蓋13とを固定する。即ち、前記フィルタ38の中央部に開設された中抜き部38Aに、前記筒本体16を挿入させるようにして、前記フィルタ38を前記内蓋13内の前記空間13S内に収納させ、前記外蓋12と前記内蓋13とを固定する。
【0044】
この場合、前記内蓋13の上面にはリング状の凸部39が二重に突設され、この凸部39側から前記外蓋12内に前記内蓋13が収納され、一方前記外蓋12の上壁12Bの裏面側に溶着用リブ12Dが隙間12Eを存して所定間隔毎に2条突設され、この各溶着用リブ12Dと前記内蓋13の前記突部39とが超音波によって溶着固定される。
【0045】
また、前記内蓋13が前記外蓋12内に収納された状態において、前記外蓋12の前記側壁12Cの内側面と前記内蓋13の側壁13Cの外側面との間に隙間40が形成されている(図9参照)。この隙間40の下端は開口され、前記給油口キャップ10外部の大気に(前記自動車101の外部に)連通する通気口となっている。
【0046】
そして、前記内蓋13の上面の前記各凸部39には所定間隔を存して複数の溝41が形成されているが、前記外蓋12に設けた複数の前記溶着用リブ12Dは前記内蓋13の前記各凸部39に設けた前記溝41に対向する位置を避けて(間隔INを置いて)設けていない。これにより、前記外蓋12と前記内蓋13とが超音波によって溶着固定された際に、溶着用リブ12Dによって、各前記各凸部39に設けた前記溝41が塞がれないように構成されている。
【0047】
従って、前記外蓋12と前記内蓋13との間には空気通路43が形成されて、外気がこの給油口キャップ10を経て前記燃料タンク100内に導入でき、また前記燃料タンク10内の気化ガス(Volatile Organic Compounds Gasで、「VOCガス」と略す。)は、前記弁体22の設定した変形強度以上のVOCガスの圧力がこの弁体22に作用したときのみ、前記空気通路43や前記隙間40を介して前記燃料タンク100外に放出できることとなる。従って、この弁機構部は前記筒本体16と、前記弁体支持部材23及び前記弁体22とから構成され、安全弁、ワンウェイバルブとしての機能を果たすこととなる。
【0048】
なお、前記弁体22の設定した変形強度に至らないVOCガス(又は燃料)の圧力では、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに当接して、前記第2空間S2と大気に連通する前記第3空間S3との連通を遮断して、有害ガスである前記VOCガス(又は燃料)を前記給油口キャップ10外部へ放出せず、即ち前記燃料タンク100内部の圧力が前記弁体22の変形強度を設定した圧力以内であれば常時前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断して、前記VOCガス(又は燃料)を前記給油口キャップ10外部へ放出しない。
【0049】
以上の構成により、次に給油口キャップ10の組み立て説明を行う。尚、前記フィルタ38の中抜き部38Aに前記内蓋13の前記筒本体16を挿入させた状態で、前記外蓋12内に前記内蓋13を収納させ、一方前記外蓋12の前記各溶着用リブ12Dと前記内蓋13の前記各突部39とが超音波によって溶着固定され、前記内蓋13と前記外蓋12とは固定されているものとする。
【0050】
先ず、例えば前記弁体支持部材23上に前記弁体22を載置させた状態で、前記大径筒状部17の上部に前記弁体支持部材23を収納する。すると、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bが前記弁体22を載置した状態で前記中径筒状部18内に入り込むと共に、且つこの弁体支持部材23の前記大径部23Aと前記小径部23Bとの段差面23Cが前記大径筒状部17の前記第1空間S1を形成する面と前記中径筒状部18の前記第2空間S2を形成する面との段差面18Aに当接した状態となる。このとき、前記中径筒状部18の前記第2空間S2内には、前記弁体22が前記肩筒状部19の前記壁面19Aと僅か離れた位置に前記隙間18S(移動するためのストロークとして、例えば0.01〜0.8mmである。)を存して収納されることとなる。
【0051】
次に、前記フィルタ27を載置させた状態の前記フィルタ支持体28を前記大径筒状部17内の前記第1空間S1内に収納させた状態で、前記内蓋13の前記底面13Aに形成された前記固定孔13Bと前記スプリング33に形成された前記固定孔33Aとに前記リベット34を挿入させて、前記底面13Aに前記スプリング33を固定する。これにより、前記弁機構部を備えた前記給油口キャップ10の組み立てが終了する。そして、このようにして組み立てられた前記給油口キャップ10は、前記給油口98を塞ぐように取り付けられて、利用されることとなる。
【0052】
次に、図10から図15に基づいて、前記給油口キャップ10の作用について説明する。先ず、前記燃料タンク100内に燃料を入れて、前記給油口キャップ10を前記給油口98を塞ぐように取り付けた直後では、前記燃料タンク100の内部と外部の圧力が均衡しており、空気の出入りが無い状態で、空気の出入りのための前記給油口キャップ10の各空気通路が開放されて前記燃料タンク100の内部と外部とが連通している状態である(図10参照)。
【0053】
即ち、前記弁体支持部材23上には前記弁体22が載置されており、この弁体22が前記中径筒状部18の前記第2空間S2内に、前記肩筒状部19の前記壁面19Aと僅か離れた位置に前記隙間18Sを存して収納されており、前記給油口キャップ10の前記外蓋12と前記内蓋13との間の前記空気通路43、前記筒本体16内の空気通路、前記弁体支持部材23内の空気通路、前記弁体支持部材23と前記フィルタ支持体28との間の前記空気通路25、前記フィルタ支持体28と前記大径筒状部17との間の前記空気通路29、前記内蓋13の底面13Aと前記スプリング33との間の前記空気通路35を介して、前記燃料タンク100の内部と外部とが連通していて、前述の如く、空気の出入りのための前記給油口キャップ10の各空気通路が開放されている状態である。
【0054】
詳述すると、前記外蓋12の前記側壁12Cと前記内蓋13の側壁13Cとの間の前記隙間40、前記フィルタ38と前記外蓋12の裏面との空間、前記外蓋12と前記内蓋13との間の前記大径空間SS1及び前記小径空間SS2、前記筒本体16の前記小径筒状部20内の前記第4空間S4、前記肩筒状部19内の前記第3空間S3、前記中径筒状部18内の前記第2空間S2、前記弁体22と前記弁体支持部材23との間の前記空気通路25、前記弁体支持部材23の前記空気通路24、前記フィルタ支持体28の上部の空気通路31、前記フィルタ支持体28と前記大径筒状部17との間に形成される前記空気通路29、前記内蓋13の前記底面13Aと前記スプリング33とにより形成された前記空気通路35を介して、前記燃料タンク100の内部と外部とが連通していて、前述の如く、空気の出入りのための前記給油口キャップ10の各空気通路が開放されている状態である。
【0055】
次に、前記エンジン99の停止中において、外気温度が上昇して、前記燃料タンク100内の燃料が蒸発して気化ガス(VOCガス)が発生した場合には、前記燃料タンク100内の内圧が高まるので、軽い前記弁体22を上昇させる。従って、図11に示すように、この弁体22の上面周端部が前記第2空間S2を形成する前記肩筒状部19の傾斜した前記壁面19Aに当接することとなる(図11参照)。
【0056】
但し、この場合、前記燃料タンク100内の圧力が上昇して、例えば0.1kPaになると、上昇した前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触で当接する。この当接により、前記筒本体16内の前記第2空間S2と前記第3空間S3(大気に連通している。)との連通が遮断されることとなる。
【0057】
従って、前記燃料タンク100内の燃料が蒸発して前記VOCガスが発生しても、前記給油口キャップ10内の前記弁体22により前記自動車101外部へ放出されることが防止される。このため、前記燃料から蒸発した有害な前記VOCガスを前記自動車101外部に放出させることなく、環境汚染を防止できる。
【0058】
そして、前記エンジン99の停止中において、外気温度の更なる上昇に伴い、前記燃料タンク100内の前記燃料が蒸発することによる前記VOCガスの発生量が増大して、前記燃料タンク100内の内圧が更に高まるにつれ、前記弁体22の中央部が上方へ凹んで前記第3空間S3内内に入り込む量も増大して、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触している状態から徐々に面接触する面積が増大することとなる。
【0059】
なお、前記弁体22と前記肩筒状部19の前記壁面19Aとの前記隙間18Sを設けることなく、前記弁体22の周端部が前記壁面19と接触して前記第2空間と前記第3空間との連通を遮断した状態で、この弁体22を前記小径部23B上に載置した場合には、前記燃料タンク100内の圧力が0.1kPa以上になると、前記弁体22を前記隙間18Sを設けて配設した場合と同様に、前記燃料タンク100内の内圧が更に高まるにつれ、前記弁体22の中央部が上方へ凹んで前記第3空間S3内内に入り込む量も増大して、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触している状態から徐々に面接触する面積が増大することとなる。
【0060】
そして、前記燃料タンク100内の圧力が、例えば1kPa以上となると、前述したように前記弁体22を前記隙間18Sを設けて配設した場合や、前記隙間18Sを設けないで配設した場合でも、この弁体22の中央部が上方へ相当量凹むこととなり、図12に示すように、平面視すると、前記弁体22の中央部が上方へ凹んで外径が短くなるように変形して、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触して当接している状態から、この弁体22の設定した変形強度の圧力である、例えば3kPaに至るまではこの弁体22の所定幅の周縁部が傾斜した前記壁面19Aに面接触で密着することとなる。
【0061】
従って、図11に示す状態よりも、前記燃料が蒸発することによる前記VOCガスの発生量が増大した場合でも、このVOCガスが前記弁体22により前記自動車101外部へ放出されることが防止される。このため、前記燃料から蒸発した有害な前記VOCガスを前記自動車101外部に放出させることなく、前記自動車101の燃費向上が図れると共に環境汚染の防止ができる。
【0062】
このように、前記燃料タンク100内の圧力が、後述するような前記弁体22の設定した変形強度の圧力である、例えば3.0kPaとなる前であれば、前記燃料が蒸発することにより発生した前記VOCガスが前記弁体22により前記自動車101外部へ放出されることが防止される。また、前記エンジン99の停止中において、前記自動車101が30度程度傾斜した場合でも、燃料の前記自動車101外部への放出を防止できる。即ち、前記傾斜したときの燃料の液圧により、前記弁体22の所定幅の周縁部が前記壁面19Aに面接触で密着することとなって、燃料の前記自動車101外部への放出が防止される。
【0063】
なお、本出願人が前記燃料タンク100の傾斜時の燃料漏れの試験を行った結果は、以下のとおりである。即ち、外気温度が30℃において、前記燃料タンク100の傾斜角度が20度で10分経過しても燃料漏れは無く、同じく30度で10分経過しても燃料漏れは無く、同じく45度で10分経過しても燃料漏れは無く、同じく90度で3分経過しても燃料漏れは無く、同じく180度で1分経過しても燃料漏れは無かった。
【0064】
なお、空気通路中に前述した本実施形態の弁機構部を備えない通気口キャップについて、前記燃料タンク100の傾斜時の燃料漏れの試験を行った結果は、以下のとおりである。即ち、前記燃料タンク100の傾斜角度を20〜30度とした場合の1回目の実験によれば、1分前後経過したら燃料漏れが発生し、また同条件の2回目の実験によれば10秒前後経過したら燃料漏れが発生した。
【0065】
更には、前記エンジン99の停止中において、更に外気温度が上昇して、前記燃料タンク100内の前記燃料が蒸発することによる前記VOCガスの発生量が更に増大し、前記燃料タンク100内の圧力が更に高まって前記弁体22の設定した変形強度以上になると、前述したように前記弁体22を前記隙間18Sを設けて配設した場合や、前記隙間18Sを設けないで配設した場合でも、その圧力に前記弁体22が抗しきれずに変形して、前記弁体22の中央部が更に上方へ凹むこととなる。
【0066】
即ち、図13及び図14に示すように、前記弁体22の中央部が更に上方へ凹んで、平面視、即ち上方から見ると外径が短くなるように変形する。従って、この弁体22は弾性体材料で構成されて、柔軟性を有するので、図14に示すように、この弁体の中央部が上昇して前記第3空間S3内に入り込んで、傘が畳まれたときのように窄まって、外径が短くなるように変形して、この弁体22の支点19C(前記壁面19Aと19Bとの境界部分で、前記壁面19Bの下端)に接する位置がこの弁体における外側の位置に移動して、その移動した分だけ折り畳まれて前記弁体22に皺ができて、この弁体22の前記周縁部には支点19Cに当接する部分と当接しない凹んだ部分とができるように変形することとなる。
【0067】
このため、前記燃料タンク100内の圧力が、弁体22の設定した変形強度以上の圧力、例えば3kPa以上となって、上述したように、この前記弁体22が大きく変形すると、前記支点19Cに当接しない前記凹んだ部分の空間を介して、前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通することとなる。従って、前記燃料タンク100内の過大な圧力(VOCガスを含む。)は、瞬時に前記外蓋12と前記内蓋13との間の前記空気通路43や前記隙間40を介して、前記燃料タンク100外部、即ち前記自動車101外部に放出されることとなり(図13及び図14参照)、前記燃料タンク100の内の圧力は前記弁体22に設定された変形強度の圧力未満の圧力の状態になる。
【0068】
以上のように、前記燃料タンク100内の圧力が所定圧力まで上昇すると、前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通して、前記燃料タンク100内の前記VOCガスを前記燃料タンク100外部に放出させるようにしたのは、このようにしないと、前記給油口キャップ10を前記自動車101から外した際に、前記燃料タンク100内の圧力によって燃料が自動車101外部に飛び散ることとなって危険であるからであり、前記弁機構部は安全弁としての機能を果たすものである。
【0069】
前述したように、前記肩筒状部19に、前記筒本体16を構成する前記肩筒状部19の内部空間を形成して前記弁体22の周端部が当接する前記壁面19Aと、外気に連通する前記小径筒状部20の前記第4空間S4に連通すると共に前記弁体22の中央部が入り込める前記第3空間S3とを形成し、図11に示すように、前記肩筒状部19の上下方向の中心軸線と前記支点19Cとの長さL1と前記支点19Cと前記壁面19Aの外端部との長さL2(前記支点19Cと前記弁体22の外端部との長さとも言える。)との比率を変更することにより、前記支点19Cを支点とする梃子の原理の応用によって、前記弁体22の変形強度が設定できる。
【0070】
従って、前記弁体22による前記筒本体16内の前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通又は遮断するための圧力、即ち前記燃料タンク100の内部と外部との連通又は遮断するための圧力を設定することができる。以上のように、前記弁体22の材質、厚み、大きさ等による強度と前述した梃子の原理の組み合わせにより、前記支点19Cを基点として前記弁体22が変形する圧力を可変に設定できる。
【0071】
なお、前記肩筒状部19の前記壁面19Aの上端(前記支点19C)を通る円の直径は、前記弁体22の外径の45%以上から65%以下とする。これより大きいと、前記弁体22の密着面(前記壁面19Aと密着する面)が無くなり、逆に小さいと前記弁体22が上方へ凹むことが困難となるからである。また、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bの上面の外径寸法は、前記弁体22の外径の40%以上から70%以下とする。そして、前記肩筒状部19の前記壁面19Aの上端(前記支点19C)を通る円の直径及び前記小径部23Bの上面の外径寸法は、前記弁体22の強度と梃子の原理により設定する圧力により可変する。
【0072】
なお、本実施形態では、前記燃料タンク100内の圧力が、例えば3kPaになった際に、前記弁体22が図12の状態から図13や図14の状態になるように、前述した長さL1とL2との比率を設定するものとする。
【0073】
次に、前述したように、前記燃料タンク100内の圧力が、例えば3kPaになって前記弁体22が大きく変形すると、前記弁体22の前記支点19Cに当接しない凹んだ部分の空間を介して、前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通して、前記燃料タンク100内の過大な圧力(VOCガスを含む。)が瞬時に前記燃料タンク100外部に放出されると、図13及び図14に示す状態から前記燃料タンク100内の圧力を前記弁体22の設定された変形強度の圧力未満の圧力として図12に示すような状態となる。
【0074】
即ち、前述したように、前記弁体22の所定幅の周縁部が前記壁面19Aに面接触で密着することとなって、前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断して前記VOCガスの前記自動車101外部への放出が防止される。
【0075】
なお、前記燃料の液圧が前記弁体22に作用している状態で、前記エンジン99の駆動による前記燃料の消費により前記燃料タンク100内の圧力が負圧になったときについて、以下説明する。前記燃料の液圧が前記弁体22に作用している状態とは、前記自動車101が傾斜していない状態で前記燃料タンク100内の前記燃料が満杯状態のときや、前記自動車101が傾斜して前記燃料タンク100が傾斜しているが前記燃料が前記弁体22に接しているときや、同じく前記燃料タンク100が傾斜しているが前記燃料の液面レベルが前記弁体22より上方の位置にあるときや、前記燃料タンク100が上下180度反転しているとき等が該当する。
【0076】
これらの前記燃料の液圧が前記弁体22に作用している状態では、前記弁体22は前記燃料の落差による液圧の大きさにより図11又は図12に示す状態にある。そして、これらの状態において、前記エンジン99の駆動による前記燃料の消費により前記燃料タンク100内の圧力が負圧になったときには、前記弁体22は前記液圧が小さいときの図11又は前記液圧が大きいときの図12に示す状態から図15に示す状態となって、前記隙間18Sを拡大してより多くの大気が前記燃料タンク100内に入り込む。
【0077】
即ち、図15に示すように、前記弁体22の外径は前記弁体支持部材23の上面(前記弁体22を支持する面)の外径より大きいので、前記負圧により前記弁体22の前記周縁部が前記燃料タンク100側へ吸引されて、柔軟性を有する前記弁体22の前記周縁部は前記弁体支持部材23の上面の周端部を支点として垂れ下がる状態となる。このため、前記肩筒状部19の前記傾斜した壁面19Aと前記弁体22との前記隙間18S(空間)が拡大することとなるので、瞬時に大気が前記外蓋12と前記内蓋13との間の前記隙間40や前記空気通路43を介して、前記内蓋13の前記第4空間S4、前記第3空間S3及び前記第2空間S2内に前記自動車101外部から入り込むこととなる。
【0078】
また、図15に示すように、大気が前記燃料タンク100内に入り込んで、この燃料タンク100内が大気圧となると、前記弁体22は前記液圧により押し戻され、この図15に示す状態から図11又は図12に示す状態となる。従って、図11又は図12に示す状態と図15に示す状態とが繰り返えされることとなり、前記燃料タンク100が傾斜しても、前記弁体22の設定された変形強度の圧力に至るまでの前記液圧であれば、前記燃料タンク100内に大気を取り込んで、前記エンジン99の駆動が可能となる。
【0079】
次に、前記燃料の液圧が前記弁体22に作用していない状態で、前記エンジン99の駆動による前記燃料の消費により前記燃料タンク100内の圧力が負圧になったときについて、以下説明する。前記燃料の液圧が前記弁体22に作用していない状態とは、前記燃料タンク100内の前記燃料が満杯状態でない状態であって、前記自動車101が傾斜していない状態で前記燃料タンク100内の前記燃料が少なくて前記燃料が前記弁体22に接していないときや、前記自動車101が傾斜して前記燃料タンク100が傾斜していて前記燃料タンク100内の前記燃料が少なくて前記燃料が前記弁体22に接していないときや、同じく前記燃料タンク100が傾斜していて前記燃料タンク100内の前記燃料が少なくて前記燃料の液面レベルが前記弁体22より下方の位置にあるとき等が該当する。
【0080】
前記自動車101が傾斜していない状態で前記燃料タンク100内の前記燃料が少なくて前記燃料が前記弁体22に接していないときには、前記燃料タンク100内が前記負圧になると、前記弁体22が図11又は図12に示す状態から前記弁体支持部材23の前記小径部23B上に落下し、図10に示す状態となって、前記弁体22と前記壁面19Aとの前記隙間18Sが確保されて、前記燃料タンク100内に大気が入り込み、この燃料タンク100内は大気圧の状態にされる。
【0081】
また、前記自動車101が傾斜して前記燃料タンク100が、例えば45度程度傾斜していて前記燃料タンク100内の前記燃料が少なくて前記燃料が前記弁体22に接していないときには、前記燃料タンク100内が前記負圧になると、前記弁体22が図11又は図12に示す状態から前記弁体支持部材23の前記小径部23B上に落下し、前述したように、図10に示す状態となって、前記隙間18Sが確保されて、前記燃料タンク100内に大気が入り込み、この燃料タンク100内は大気圧の状態にされる。
【0082】
また、同じく前記燃料タンク100が、例えば90度程度傾斜していて前記燃料タンク100内の前記燃料が少なくて前記燃料の液面レベルが前記弁体22より下方の位置にあるときには、前記燃料タンク100内が前記負圧になると、前記弁体22は図11又は図12に示す状態から前記弁体支持部材23の前記小径部23B上面に接すると共に前記弁体22下端が前記中径筒状部18の前記壁面18Bに接するようになる。このため、前記隙間18Sが確保されて、前記燃料タンク100内に大気が入り込み、この燃料タンク100内は大気圧の状態にされる。
【0083】
以上のように、前記燃料の液圧が前記弁体22に作用していない状態で、前記エンジン99の駆動による前記燃料の消費により前記燃料タンク100内の圧力が負圧になったときにも、前記隙間18Sが確保されて、前記燃料タンク100内に大気が入り込み、前記エンジン99の駆動が継続できる。
【0084】
その後、燃料タンク100内の圧力が上昇すると、前述したように、図11又は図12に示す状態となり、再び前記燃料が消費されて、前記燃料タンク100内の圧力が負圧になると、前述したように、前記隙間18Sが確保されて、前記燃料タンク100内に大気が入り込む。
【0085】
なお、前記弁体22と前記壁面19Aとの前記隙間18Sを小さく設定した場合において、前記燃料タンク100が傾斜しても、前記燃料の液圧が前記弁体22に作用していない状態で、前記燃料タンク100内が負圧になったときに、前記燃料タンク100内に大気が入り込む際の空気通路の抵抗が大きくなって、前記燃料タンク100内への前記大気の入り込む量が負圧に対して不足し、図15に示すように、前記弁体22の前記周縁部は垂れ下がり、前記隙間18Sを拡大してより多くの大気を前記燃料タンク100内に入り込ませて、前記負圧を解除することができる。
【0086】
また、前記隙間18Sを小さく設定すると、空気通路の抵抗が増大し、前記VOCガスが前記燃料タンク100外部に放出する量を少なくして、より小さな前記VOCガスの圧力で、前記弁体22を前記小径部23Bから浮き上がらせることができて、前述したように、前記弁体22が前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断することができて、前記VOCガスの前記燃料タンク100外部への放出量を減少させることができる。
【0087】
なお、前記弁体22と前記肩筒状部19の前記壁面19Aとの前記隙間18Sを設けることなく、前記弁体22の周端部が前記壁面19と接触して前記第2空間と前記第3空間との連通を遮断した状態で、この弁体22を前記小径部23B上に載置した場合には、前記燃料の液圧が前記弁体22に作用している状態及び作用していない状態でも、前記エンジン99の駆動による前記燃料の消費により前記燃料タンク100内の圧力が負圧になると、図11又は図12の状態から図15に示す状態となる。即ち、前記負圧により前記弁体22の前記周縁部が前記燃料タンク100側へ吸引されて、柔軟性を有する前記弁体22の前記周縁部は前記弁体支持部材23の上面の周端部を支点として垂れ下がる状態となる。このため、前記肩筒状部19の前記傾斜した壁面19Aと前記弁体22との隙間を形成することとなるので、瞬時に大気が前記外蓋12と前記内蓋13との間の前記隙間40や前記空気通路43を介して、前記内蓋13の前記第4空間S4、前記第3空間S3及び前記第2空間S2内に前記自動車101外部から入り込み、前記弁体22は前記負圧が作用していない状態に戻ることとなる。
【0088】
なお、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bと前記壁面18Bに設けられた前記リブ15の先端との隙間は、前記弁体22が垂れ下がるときの移動を妨げない空間を確保している。また、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bの外径が長すぎると、前記弁体22の垂れ下がり量が少なくなり、前記弁体22と前記壁面19Aとの前記隙間18Sが確保できない。
【0089】
なお、以上の実施形態では、前記肩筒状部19内に概ね円錐台形状の前記第3空間S3を形成したが、図16に示すように、例えば八角形などの角錐台形状としてもよく、更には半球状としてよい。上面、下面及び複数の側面とで構成される角錐台形状とした場合には、前記燃料タンク100内の圧力が、例えば3kPa以上まで上昇して前記第3空間S3内に前記弁体22の中央部が入り込んで、この前記弁体22が大きく変形すると、前記弁体22の前記支点19Cに当接しない凹んだ部分の空間を介して前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通することに加えて、前記側面を形成する斜辺を含む8つの角部CPと前記弁体22との間に形成される隙間を介して前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通することとなって、より瞬時に、前記燃料タンク100内の過大な圧力(VOCガスを含む。)が前記燃料タンク100外部に放出されて、前記燃料タンク100内の圧力を設定された変形強度未満の圧力とされ、前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を確保し、安全弁として機能する。
【0090】
また、以上の実施形態で示したように、前記燃料タンク100の外部と内部とを連通する前述した空気通路内に仕切りなどを設けたり、この空気通路の断面積を変更するなどして連通する際の通路抵抗を増大させることによって、前記燃料タンク100内より前記給油口キャップ10内に流入する前記自動車101の振動による波動や温度上昇による圧力などの変動を最小限にすることができて、前記弁体22に作用する前記燃料タンク100側からの波動や圧力などの変動を最小限に抑えることができて、前記弁体22の変形動作及び復元動作を安定化させることができる。
【0091】
本発明の前記弁機構部は、前記燃料タンク100内の圧力が前記弁体22の設定した変形強度以上の圧力になったときに、この燃料タンク100を大気開放し、それ以外のときには、外気温度により蒸発する前記VOCガスの圧力により、前記弁体22が前記第2空間S2と前記第3空間S3(大気に連通している。)との連通を遮断するので、前記有害なVOCガスを前記弁体22の設定された変形強度の圧力に至るまでは前記燃料タンク100外部に放出せず、前記自動車101の燃費向上が図れると共に環境汚染の防止ができる。
【0092】
また、外気温度が下がり続ければ、前記燃料タンク100の内圧も上昇せずに前記VOCガスの発生が抑制され、前記外気温度の下降が止まると前記燃料の蒸発が始まり、前記燃料タンク100の内圧は上昇することとなる。そして、前記内圧が、例えば0.1kPa以上になると、薄くて軽い前記弁体22は前記空気通路24及び前記空気通路25より上方に噴出する流体圧力により前記弁体支持部材23上面より浮き上がり、前記傾斜した壁面19Aに当接して前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断する。そして、前記弁体22の設定した変形強度の圧力まで至らない内圧までは前記遮断は継続され、前記VOCガスを前記燃料タンク100外部へ放出しない。そして、前記燃料タンク100内の燃料の消費により負圧になったとき、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bの上面の周端部を支点として前記弁体22の前記周縁部は前記燃料タンク100方向へ垂れ下がり、傾斜した前記壁面19Aと前記弁体22との前記隙間18S(空気通路の役目を果たす。)を拡大し、前記第2空間S2と前記第3空間S3とを連通させて、前記燃料タンク100内に大気を導入し、前記弁機構部は前記燃料タンク100内を大気圧の状態にするワンウェイバルブとして機能する。
【0093】
従って、前記燃料タンク100が負圧のとき、前記第2空間S2と前記第3空間S3とを連通させ、それ以外のときには常に外気温度によって蒸発する前記VOCガスの圧力によって、前記弁体22が前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断して、前記VOCガスを前記燃料タンク100外部に放出しないので、前記弁機構部は前記自動車101の燃費向上が図れると共に環境汚染の防止ができる。
【0094】
また、前記弁体22にこの弁体22の設定した変形強度以上の流体圧力が作用すれば、前記弁体22の中央部が更に上昇して前記第3空間S3内に入り込んで外径が短くなるように変形して、前記弁体22の前記支点19Cに接する位置がこの弁体における外側の位置に移動して、その移動した分だけ折り畳まれて皺ができて、前記支点19C上で空気通路が形成されて、過大な圧力を前記燃料タンク100外部に放出し、前記弁機構部は安全弁として機能する。
【0095】
なお、例えば道路工事用のプレートコンパクターに従来の給油口キャップを取り付けた場合、上下左右の振動が激しく、エンジンの駆動開始直後より、この給油口キャップの給油口から燃料が漏れ出し危険であった。しかし、本発明の前記給油口キャップは、燃料タンク内に燃料を満タンに給油した状態で傾斜角度30度程度で駆動しても、前記燃料タンク外部へ漏れることもなく、エンジンの駆動に支障なく、燃料タンク内も大気圧の状態にされ、順調に駆動を継続することができた。また、エンジンの駆動により燃料が消費され、前記燃料タンク内が負圧になっても、瞬時に前記弁体が空気通路を開放し、この燃料タンク内に大気を導入し、大気圧の状態にし、駆動に支障をきたさなかった。また、前記燃料タンク内が大気圧になれば、弾性体材料で構成された前記弁体はその弾性によりに復帰し、負圧が解除されれば、燃料は蒸発を開始し、前記弁体は前記筒本体の前記第2空間を形成する壁面と前記第3空間を形成する壁面とを接続するための上方に向けて傾斜した壁面に押し付け、更に前記弁体の設定した変形強度以上の圧力がこの弁体に作用すれば、前記弁体の中央部が上昇して前記第3空間内に入り込んで外径が短くなるように変形して、前記弁体の前記第3空間を形成する壁面の下端(支点)に接する位置がこの弁体における外側の位置に移動して、その移動した分だけ折り畳まれて皺ができて、空気通路が形成されて、過大な前記燃料タンクの内圧を前記燃料タンク外部に放出し、前記弁機構部は前記燃料タンク内を常時前記弁体の設定した変形強度の圧力未満の圧力にするワンウェイバルブ又は安全弁として機能し、圧力調整弁としての機能を発揮する。
【0096】
なお、以上の実施形態では、前記燃料タンク100内の燃料が蒸発して前記VOCガスが発生して、前記燃料タンク100内の圧力が高まって、前記弁体22の設定した変形強度以上の圧力になった際に、前記弁体22が変形して前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通して、前記給油口キャップ10から前記燃料タンク100の外部、即ち自動車101外部に過大な圧力と前記VOCガスを放出したが、本発明は以上の実施形態で示す前記給油口キャップ10に限定されるものではなく、図20に示すような実施形態としてもよく、以下説明する。
【0097】
即ち、図1の点線に示すように、前記給油口キャップ10を前記キャニスタ96に接続し、前述したように、前記VOCガスが発生して、前記燃料タンク100内の圧力が高まって、前記弁体22の設定した変形強度以上の圧力になった際に、前記弁体22が変形して前記第2空間S2と前記第3空間S3とが連通して、前記給油口キャップ10から前記燃料タンク100外部に過大な圧力と前記VOCガスを放出し、この放出された前記VOCガスを前記キャニスタ96内に設けた吸着部材(活性炭)に吸着させると共に前記気化器95に放出して、前記エンジン99にて燃焼させる。これにより、前記VOCガスを前記自動車101外部の大気中に放出することがなくなり、環境汚染を更に防止でき、燃費の向上も図ることができる。
【0098】
以下具体的に説明すると、前記外蓋12の上面中央部に、上方に向けて延在する中空円筒状を呈して前記第4空間S4に連通するパイプ装着部50を形成する。このパイプ装着部50に、略直角に折れ曲がった側面視L字形状の中空のパイプ51の一端側が装着される。即ち、前記パイプ51の一端側は、前記パイプ装着部50の内径より僅か小径に形成されており、このパイプ51の一端側がパイプ装着部50内に挿入されることにより、このパイプ51は前記パイプ装着部50に装着されている。また、前記パイプ装着部50の内面中央には前記Oリング52の装着用の溝が設けられると共に、前記パイプ51の外面にも前記パイプ装着部50の前記溝に対向してOリング52の装着用の溝が設けられ、両溝内に弾性シリコンゴムからなるOリング52が装着されている。これにより、前記パイプ装着部50と前記パイプ51との隙間は塞がれる。
【0099】
なお、前記筒本体16の前記小径筒状部20が前記パイプ51の内部空間を形成するこのパイプ51の内壁との間に空間を存するように挿入されて、前記パイプ51が前記Oリング52を介して前記パイプ装着部50に装着され、この装着がされると前記パイプ51は回動できるように構成される。
【0100】
そして、前記パイプ51の他端側(前記パイプ装着部50に装着した箇所の反対側)に接続される湾曲可能なホース(図示せず)の抜けを防止するための抜防止部51Aが前記パイプ51に設けられている。前記ホースの一端は前記パイプ51の他端側に装着され、このホースの他端が前記キャニスタ96に接続され、これによって前記キャニスタ96を介して大気に(前記自動車101外部に)連通する前記気化器95と前記外蓋12とが連通している。しかし、前記内蓋13の上面の前記各凸部39には前記溝41を形成せずに、また前記各溶着用リブ12Dも前記間隔INを置くことなく連続したものに形成して、前記各溶着用リブ12Dと前記各凸部39とを超音波によって溶着固定して、常時前記第4の空間S4と前記隙間40とが連通しないようにして、結果として前記隙間40を介して前記燃料タンク100の内部と前記自動車101の外部とが連通しないように、構成される。
【0101】
従って、前述したように、前記燃料タンク100内の圧力が前記弁体22の設定した変形強度以上の圧力になった際に、前記給油口キャップ10から前記パイプ51及び前記ホースを介して前記燃料タンク100外部に放出された前記VOCガスを前記キャニスタ96内に設けた前記吸着部材に吸着させると共にこのキャニスタ96から前記気化器95に放出して、前記エンジン99にて燃焼させる。これにより、前記VOCガスを前記自動車101外部の大気中に放出することがなくなり、環境汚染を更に防止でき、燃費の向上も図ることができる。
【0102】
また、前述したように、前記燃料タンク100内の燃料の消費により負圧になったときには、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bの上面の周端部を支点として前記弁体22の前記周縁部は垂れ下がり、傾斜した前記壁面19Aと前記弁体22との前記隙間18Sを拡大し、前記第2空間S2と前記第3空間S3とを連通させて、大気に連通する前記気化器95及び前記キャニスタ96を介して前記自動車101外部から前記燃料タンク100内に大気を導入し、前記弁機構部は前記燃料タンク100内を大気圧の状態にするワンウェイバルブとして機能する。
【0103】
なお、以上のような前記燃料タンク100から外部に放出された前記VOCガスを前記キャニスタ96内に設けた吸着部材(活性炭)に吸着させると共にこのキャニスタ96から前記気化器95に放出して、前記エンジン99にて燃焼させるようにした構造は、図19に示すようなネジ式で前記給油口98に取り付ける構造の前記給油口キャップ10にも適用できる。
【0104】
更には、第2の発明に係る前記給油口キャップ10のように、前記弁体22の周端部が前記筒本体16の前記第2空間S2を形成する前記壁面18Bと前記第3空間S3を形成する前記壁面19Bとを接続するための上方に向けて傾斜した前記壁面19Aと接触した状態で、前記弁体22が前記小径部23B上に載置されたときに、その中央部が前記第3空間S3に面するように配設すると、前記燃料タンク100の表面温度の上昇により、徐々に前記燃料タンク100内の前記燃料の蒸発により前記VOCガスの圧力は上昇するが、その圧力が小さくとも、前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断した状態であり、前記VOCガスの圧力が発生すれば、前記VOCガスが前記燃料タンク100外部へ放出されることがない。従って、前記燃料タンク100内の圧力の上昇に伴って、前記弁体支持部材23の前記空気通路24及び前記小径部23Bの上面と前記弁体22との間の前記空気通路25より噴出する圧力により前記第2空間S2が満たされ、前記弁体22の中央部は押上げられ、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触している状態から面接触に移行し、前記弁体22の設定された前記変形強度の圧力に至るまでは前記VOCガスを前記燃料タンク100外部に放出しない。
【0105】
このため、第2の発明に係る前記給油口キャップ10にあっては、前記弁体22が前記壁面19Aとの前記隙間18Sが無く前記小径部23B上に載置されるので、前記弁体22の周端部が傾斜した前記壁面19Aと前記隙間18Sを存して前記小径部23B上に載置された場合の第1の発明に係る前記給油口キャップ10のような、前記弁体22が上昇して前記壁面19Aに当接して前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断するまでの前記VOCガスの前記燃料タンク100外部への放出がなく、前記弁体22の設定された前記変形強度の圧力以上になった場合のみ、前記燃料タンク100内の過大な圧力を前記燃料タンク100外部に放出して、前記燃料タンク100内の圧力を前記変形強度未満の圧力とする。
【0106】
また、第2の発明に係る前記給油口キャップ10において、前記燃料の消費により前記燃料タンク100内が負圧になれば、前記弁体支持部材23の前記小径部23Bの上面の周端部を支点として前記弁体22の前記周縁部は前記燃料タンク100方向へ垂れ下がり、前記壁面19Aと前記弁体22との隙間を形成して、前記第2空間S2と前記第3空間S3とを連通させて、前記燃料タンク100内に大気を導入し、前記燃料タンク100内を大気圧の状態にして前記負圧が解除される。この負圧が解除されると、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触することとなり、前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断することとなる。なお、前記燃料タンク100内の前記負圧が解除されない場合は、前述したような大気の導入と前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通の遮断を繰り返すことにより、前記負圧を解除する。また、前記エンジン99の連続駆動により、前記負圧が続く場合には、前記弁体22の前記周縁部の前記燃料タンク100方向への垂れ下がりが続き、前記負圧が終了すれば、前記弁体22は元の形に復帰して、前記弁体22の上面周端部が前記壁面19Aに線接触することとなり、前記第2空間S2と前記第3空間S3との連通を遮断する。
【0107】
なお、前記燃料タンク表面に作用する直射日光、外気温度、前記エンジン等の熱源等からの熱を遮断すれば、前記燃料タンク内の圧力の上昇を抑制することができるので、前記燃料タンクの表面に反射塗料やメッキを施したり、断熱処理をしたり、前記燃料タンクの塗装の色を熱の吸収が大きい黒色系から熱の吸収が小さい白色系に変更したり、前記燃料タンクに日除けカバーを取り付ける等の対策をして、内部圧力の上昇を抑制した前記燃料タンクと本発明の前記給油口キャップ10との組み合わせにより、前記VOCガスの前記燃料タンク外部への放出を更に防止し、燃費の向上を図ることができ、前記キャニスタ等を不要することもでき、安価で環境の汚染を防止することができる。
【0108】
以上のように、本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0109】
10 給油口キャップ
12 外蓋
13 内蓋
16 筒本体
17 大径筒状部
18 中径筒状部
18S 隙間
19 肩筒状部
19A、19B 壁面
19C 支点
20 小径筒状部
22 弁体
23 弁体支持部材
23B 小径部
24、25 空気通路
98 給油口
100 燃料タンク
S2 第2空間
S3 第3空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの給油口に取り付けられ、外蓋と内蓋とから成るキャップ本体内に、前記燃料タンク内部と外部とを連通するための空気通路と、この空気通路中に弁機構部とを設けた燃料タンクの給油口キャップであって、
前記弁機構部は、
前記内蓋の内面側の略中心位置に設けられ前記燃料タンク内部と連通する円柱状の第1空間、この第1空間より小径の円柱状を呈して前記第1空間に連通する第2空間及びこの第2空間に連通すると共に前記燃料タンク外部と連通する第3空間を備えた筒本体と、
前記第1空間内に配設され前記燃料タンク内部と連通する連通路が形成された大径部と、前記連通路に連通する空気通路がその上面に形成され前記大径部より外径が小径の小径部とを備えた弁体支持部材と、
前記弁体支持部材の前記小径部より大径で薄く平面視円形状を呈する非通気性の弾性体材料で構成されて、弾性、柔軟性を有し、その周端部が前記筒本体の前記第2空間を形成する壁面と前記第3空間を形成する壁面とを接続するための上方に向けて傾斜した壁面と少し離れて前記小径部上に載置されると共に、この載置されたときにその中央部が前記第3空間に面する弁体とを備え、
前記燃料タンク内の燃料が蒸発した気化ガスによりこの燃料タンク内の圧力が高まった際に、前記燃料タンク内部と前記弁体支持部材の前記連通路及び前記空気通路を介する前記気化ガスにより前記弁体は上昇して、その周縁部が前記傾斜した壁面に当接して、前記第2空間と前記第3空間との連通を遮断するようにし、
更に前記燃料タンク内の圧力が高まって、前記弁体の設定した変形強度以上の圧力になると、前記弁体の中央部が更に上昇して前記第3空間内に入り込んで外径が短くなるように変形して皺ができて、前記弁体の周縁部には前記筒本体の前記第3空間を形成する壁面下端に当接する部分と当接しない凹んだ部分とが形成され、この凹んだ部分の空間を介して前記第2空間と前記第3空間とが連通して過大な圧力を前記燃料タンク外部に放出して、前記燃料タンク内の圧力を前記変形強度未満の圧力とし、
前記弁体に前記燃料の液圧が作用している状態下で、前記燃料タンク内の燃料の消費によりこの燃料タンク内が負圧になったとき、この負圧により前記弁体の周縁部が前記燃料タンク側へ吸引されて、前記弁体支持部材の前記小径部の上面の周端部を支点として前記弁体の前記周縁部は垂れ下がり、傾斜した前記壁面と前記弁体との隙間を拡大して、前記第2空間と前記第3空間とを連通させ、前記燃料タンク内に大気を導入して大気圧の状態にし、
安全弁、ワンウェイバルブとしての機能を果たす
ことを特徴とする燃料タンクの給油口キャップ。
【請求項2】
燃料タンクの給油口に取り付けられ、外蓋と内蓋とから成るキャップ本体内に、前記燃料タンク内部と外部とを連通するための空気通路と、この空気通路中に弁機構部とを設けた燃料タンクの給油口キャップであって、
前記弁機構部は、
前記内蓋の内面側の略中心位置に設けられ前記燃料タンク内部と連通する円柱状の第1空間、この第1空間より小径の円柱状を呈して前記第1空間に連通する第2空間及びこの第2空間に連通すると共に前記燃料タンク外部と連通する第3空間を備えた筒本体と、
前記第1空間内に配設され前記燃料タンク内部と連通する連通路が形成された大径部と、前記連通路に連通する空気通路がその上面に形成され前記大径部より外径が小径の小径部とを備えた弁体支持部材と、
前記弁体支持部材の前記小径部より大径で薄く平面視円形状を呈する非通気性の弾性体材料で構成されて、弾性、柔軟性を有し、その周端部が前記筒本体の前記第2空間を形成する壁面と前記第3空間を形成する壁面とを接続するための上方に向けて傾斜した壁面と接触して前記第2空間と前記第3空間との連通を遮断した状態で前記小径部上に載置されると共に、この載置されたときにその中央部が前記第3空間に面する弁体とを備え、
前記燃料タンク内の圧力が高まって、前記弁体の設定した変形強度以上の圧力になると、前記弁体の中央部が上昇して前記第3空間内に入り込んで外径が短くなるように変形して皺ができて、前記弁体の周縁部には前記筒本体の前記第3空間を形成する壁面下端に当接する部分と当接しない凹んだ部分とが形成され、この凹んだ部分の空間を介して前記第2空間と前記第3空間とが連通して過大な圧力を前記燃料タンク外部に放出して、前記燃料タンク内の圧力を前記変形強度未満の圧力とし、
前記燃料タンク内の燃料の消費によりこの燃料タンク内が負圧になったとき、この負圧により前記弁体の周縁部が前記燃料タンク側へ吸引されて、前記弁体支持部材の前記小径部の上面の周端部を支点として前記弁体の前記周縁部は垂れ下がり、傾斜した前記壁面と前記弁体との隙間を形成して、前記第2空間と前記第3空間とを連通させ、前記燃料タンク内に大気を導入して大気圧の状態にし、
安全弁、ワンウェイバルブとしての機能を果たす
ことを特徴とする燃料タンクの給油口キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−79106(P2013−79106A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264403(P2011−264403)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(506181874)
【出願人】(592224828)
【Fターム(参考)】