説明

燃料タンクの配置構造

【課題】側突の際に、スライドドアのレールを収納するレール収納部が燃料タンクに当たることを防ぐことを可能にする。
【解決手段】左右のサイドシル13,13と、燃料を貯留する燃料タンク23と、この燃料タンク23の両側と左右のサイドシル13,13との間にそれぞれ配置され、車体前後方向に延ばした左右の補強メンバ12,12と、左右のサイドシル13,13から車体内側に突出させ、スライドドアのレールを収納するレール収納部71と、を備えた燃料タンクの配置構造20において、レール収納部71に、左右のサイドシル13,13から車体後方に且つ車幅方向内側に傾斜する収納部側傾斜部71aを備え、燃料タンク23に、燃料タンク23の側方に車幅方向内側に傾斜するタンク側傾斜部87を備え、タンク側傾斜部87を、収納部側傾斜部71aに沿わせて形成するとともに、平面視で収納部側傾斜部71aが形成される範囲内に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアのレールを収納するレール収納部が左右のサイドシルから車体内側に突出され、レール収納部に燃料を貯留する燃料タンクが配置される燃料タンクの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの配置構造では、左右のサイドシルが車体前後方向に延ばされ、車体前後方向に延ばした左右の補強メンバが燃料タンクの両側と左右のサイドシルとの間にそれぞれ配置され、スライドドアのレールを収納するレール収納部が左右のサイドシルから車体内側に突出され、レール収納部に燃料を貯留する燃料タンクが配置される。
このように、スライドドアのレールを収納するレール収納部を左右のサイドシルから車体内側に突出させた構造がある。
【0003】
このような、スライドドアのレールを収納するレール収納部を左右のサイドシルから車体内側に突出させる構造として、スライドドア車の下部車体構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22182公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のスライドドア車の下部車体構造では、スライドドアのレールを収納するレール収納部が左右のサイドシルから車体内側に突出している。
例えば、スライドドアを有し、燃料タンクを車体中央に配置される車両では、車体内側に突出させたレール収納部の横に燃料タンクが配置される。従って、側突(車体側方からの衝突)により、レール収納部が車幅方向内方に移動し、レール収納部が燃料タンクに当たる虞がある。すなわち、レール収納部から燃料タンクを保護することが望まれる。
【0006】
本発明は、スライドドアのレールを収納するレール収納部が燃料タンクに当たる距離を稼ぐことができ、側突の際に、スライドドアのレールを収納するレール収納部が燃料タンクに当たることを防ぐことができる燃料タンクの配置構造を提供することを課題とする。 また、燃料タンクに側突荷重が作用する場合に、燃料タンクの横移動を促すことができる燃料タンクの配置構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延ばされた左右のサイドシルと、車幅方向の略中央に配置され、燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクの両側と左右のサイドシルとの間にそれぞれ配置され、車体前後方向に延ばした左右の補強メンバと、左右のサイドシルから車体内側に突出させ、スライドドアのレールを収納するレール収納部と、を備えた燃料タンクの配置構造において、レール収納部に、左右のサイドシルから車体後方に且つ車幅方向内側に傾斜する収納部側傾斜部を備え、燃料タンクに、燃料タンクの側方に車幅方向内側に傾斜するタンク側傾斜部を備え、タンク側傾斜部を、収納部側傾斜部に沿わせて形成するとともに、平面視で収納部側傾斜部が形成される範囲内に形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、燃料タンクの両側と左右の補強メンバとが、車幅方向に関してのそれぞれ間隙部を有し、燃料タンクが、左右の補強メンバの一方が燃料タンクに当接した際に、左右の補強メンバの他方に移動可能に支持されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、燃料タンクが、底に断面視略台形の溝が車体前後方向に形成され、溝に燃料タンクを保持するタンクバンドを通し、タンクバンドの両端を左右のサイドシル若しくは左右の補強メンバに渡される前後のクロスメンバに固定することで支持され、タンクバンドが、断面視で円弧状に形成され、円弧状の外周面を断面視略台形の溝に当接させたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、左右のサイドシルに車体フロアが渡され、燃料タンクの上面と車体フロアとの間に、燃料タンクを保持するとともに燃料タンクの横移動を可能にする弾性部材が設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、燃料タンクに、タンク側傾斜部に連続させてタンク幅を縮小した幅狭部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前後方向に延ばされた左右のサイドシルと、車幅方向の略中央に配置され、燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクの両側と左右のサイドシルとの間にそれぞれ配置され、車体前後方向に延ばした左右の補強メンバと、左右のサイドシルから車体内側に突出させ、スライドドアのレールを収納するレール収納部と、を備える。
レール収納部に、左右のサイドシルから車体後方に且つ車幅方向内側に傾斜する収納部側傾斜部を備え、燃料タンクに、燃料タンクの側方に車幅方向内側に傾斜するタンク側傾斜部を備える。
タンク側傾斜部を、収納部側傾斜部に沿わせて形成するとともに、平面視で収納部側傾斜部が形成される範囲内に形成したので、燃料タンクの体積の減少を最小限に止め、側突安全性能の向上を図ることができる。すなわち、側突の際にレール収納部が燃料タンクに当たることを防ぐことができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、燃料タンクの両側と左右の補強メンバとが、車幅方向に関してのそれぞれ間隙部を有し、燃料タンクに、左右の補強メンバの一方が燃料タンクに当接した際に、左右の補強メンバの他方に移動可能に支持されたので、タンク体積を減少することなく、側突安全性能を向上することができる。すなわち、側突の際に燃料タンクを逃がすことによって、レール収納部が燃料タンクに当たる距離を稼ぐことができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、燃料タンクは、底に断面視略台形の溝が車体前後方向に形成され、溝に燃料タンクを保持するタンクバンドを通し、タンクバンドの両端を左右のサイドシル若しくは左右の補強メンバに渡される前後のクロスメンバに固定することで支持した。
タンクバンドが、断面視で円弧状に形成され、円弧状の外周面を断面視略台形の溝に当接させたので、燃料タンクに側突荷重が作用した場合には、燃料タンクがタンクバンドから外れ易くすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、左右のサイドシルに車体フロアが渡され、燃料タンクの上面と車体フロアとの間に、燃料タンクを保持するとともに燃料タンクの横移動を可能にする弾性部材が設けられたので、燃料タンクに側突荷重が作用した場合には、燃料タンクの横移動が可能になる。
【0016】
請求項5に係る発明では、燃料タンクに、タンク側傾斜部に連続させてタンク幅を縮小した幅狭部が設けられたので、レール収納部に大きな側突荷重が作用する場合にも、レール収納部から燃料タンクを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る燃料タンクの配置構造が採用された車両を示す斜視図である。
【図2】図1に示される車両の車体下部構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示される車両の車体下部構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る燃料タンクの配置構造の平面図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図6に示された燃料タンクの配置構造の背面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】図4に示された燃料タンクの配置構造のタンクバンドの比較検討図である。
【図10】図4に示された燃料タンクの配置構造のタンクバンドの作用説明である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0019】
実施例の燃料タンクの配置構造20に係る車体フロア構造10について説明する。
図1〜図6に示すように、車体フロア構造10は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム11と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11aから車体後方に向けてそれぞれ延出された左右のフロアフレーム12と、左右のフロアフレーム12の車体外側に設けられるとともに車体前後方向に延出された左右のサイドシル13と、左右のサイドシル13に架け渡された後クロスメンバ14と、後クロスメンバ14の左右の端部14a,14aから車体後方に向けて延出された左右のリヤフロアフレーム15と、後クロスメンバ14、左右のフロアフレーム12および左右のリヤフロアフレーム15に載置されたフロアパネル16と、フロアパネル16に載置されるとともに左右のサイドシル13に架け渡された上部前クロスメンバ17と、上部前クロスメンバ17の下部前方で左右のサイドシル13に架け渡され、燃料タンク23を保持する前クロスメンバ82と、を備えている。
【0020】
車体フロア構造10の左サイドシル13に沿ってスライドドア18が車体前後方向にスライド移動自在に設けられている。
左サイドシル13内に、スライドドア18をスライド自在に案内するレール(ガイドレール)19(図4、図5参照)が設けられている。
【0021】
この車体フロア構造10は、フロアパネル16のフロア膨出部21が隆起するように設けられ、フロア膨出部21に燃料タンク23が下方から収納されている。
図4、図6に示すように、燃料タンク23は、平面視略矩形状に形成され、左右の補強メンバ(フロアフレーム)12,12及び前後のクロスメンバ82,14間には空間25が設けられている。
この燃料タンク23は、後部左端23aから車体後方に延出された給油配管26と、上面(上部)23bから車体後方に延出されたブリーザ管27と、後部右端23cから延出され燃料タンク23の右側を経て車体前方に延出された燃料供給管(不図示)とを備えている。
【0022】
また、燃料タンク23の下方右側に排気管31が車体前後方向に延ばされている。
給油配管26は、給油口(図示せず)から燃料タンク23に連通される給油用の配管である。ブリーザ管27は、燃料タンク23内の内圧を好適に保つための管である。燃料供給管(不図示)は、エンジン(図示せず)に燃料を供給する供給管である。
【0023】
左右のフロントサイドフレーム11は、車幅方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、車体前後方向に延出されている。
左フロントサイドフレーム11の後端部11a近傍および左サイドシル13の前端部13aが左アウトリガー34で連結されている(図2、図3も参照)。
右フロントサイドフレーム11の後端部11a近傍および右サイドシル13の前端部13aが右アウトリガー34で連結されている(図2、図3も参照)。
【0024】
左右のフロアフレーム12は、車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。右フロアフレーム12は、左フロアフレーム12と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0025】
図4〜図6に示すように、左右のサイドシル13は、スライドドア18のレール19及びローラ76を収納する左右のレール収納部(シル膨張部)71を有している。
左のレール収納部71は、左サイドシル13から車幅方向内側に張り出されることで、後クロスメンバ14の端部14aに連結されるとともに、左の補強メンバ(フロアフレーム)12の後端部12aに連結されている。
【0026】
このレール収納部71は、左サイドシル13および上部前クロスメンバ17の端部17bの連結部73から左フロアフレーム12の後端部12aに向けて傾斜状に延出された収納部側傾斜部(前傾斜部)71aと、後クロスメンバ14の端部14aから左サイドシル13に向けて車体後方へ傾斜状に延出された後傾斜部71bとを有している。
収納部側傾斜部(前傾斜部)71aは、上部前クロスメンバ17に対して傾斜している。
【0027】
右のレール収納部(シル膨張部)71は、左のレール収納部71と左右対称に形成された部材である。
すなわち、右のレール収納部71は、右サイドシル13および上部前クロスメンバ17の端部17bの連結部73から右フロアフレーム12の後端部12aに向けて傾斜状に延出された収納部側傾斜部(前傾斜部)71aと、後クロスメンバ14の端部14aから右サイドシル13に向けて車体後方に傾斜状に延出された後傾斜部71bとを有している。
【0028】
図5に示すように、左のレール収納部71の後傾斜部71bに沿ってレール(ガイドレール)19が設けられている。レール19には、スライドドア18からL字のアーム77が延ばされ、このアーム77の先端にローラ76が回転自在に設けられ、スライドドア18のスライドを可能とする。
レール19は、ロアレール袋体75の上部75aに設けられている。このロアレール袋体75の上部75aは、左のレール収納部71の上部71dに設けられている。
この状態で、レール19が左のレール収納部71の後傾斜部71bに沿って設けられている(図4参照)。
【0029】
レール(ガイドレール)19は、スライドドア18(図1も参照)のローラ76を車体前後方向にスライド自在に案内するレールである。
このように、左後傾斜部71bに沿ってレール19が設けられることで、レール19で左後傾斜部71bが補強されている。
【0030】
図6〜図8に示されたように、燃料タンク23は、底81から見たときに、前クロスメンバ82に沿わせた前平行部84と、後クロスメンバ14に沿わせた後平行部85と、左右の補強メンバ12,12に沿わせた前方側面平行部86,86と、レール収納部71,71の収納部側傾斜部71a,71aに沿わせたタンク側傾斜部87,87と、左右の補強メンバ12,12に沿わせた後方側面平行部88,88と、を備える。
【0031】
すなわち、燃料タンク23は、左右の補強メンバ12,12に沿わせた後方側面平行部88,88と、を備えることで、車幅方向の燃料タンク23の幅が狭く形成された幅狭部92が形成される。
【0032】
燃料タンク23の上面23bと車体フロア16との間には、燃料タンク23を保持するとともに燃料タンク23の横移動を可能にする複数の弾性部材93が設けられている。
燃料タンク23の底81には、燃料タンク23を車体側に保持するための左右の溝94,94が形成されている。左右の溝94,94は、車体前方に開いたハ字状に形成される。図8に示されたように、左右の溝94,94は、断面視略台形に形成される。
【0033】
燃料タンクの配置構造20では、左右の補強メンバ12,12と後方側面平行部88,88との間に、前方側面平行部86,86よりも広い間隙部(空間)91,91が設けられている。
【0034】
さらに、左右の溝94,94には、左右のタンクバンド95,95がそれぞれ嵌りこみ、左右のタンクバンド95,95の前端95a,95aは、前クロスメンバ82にボルト96,96で止められ、左右のタンクバンド95,95の後端95b,95bは、後クロスメンバ14にボルト97,97で止められる。
図8に示されたように、タンクバンド95は、断面視で円弧状に形成され、円弧状の外周面98が断面視略台形の溝94に当接している。
【0035】
図9(a),(b)に示されるように、比較例の燃料タンクの配置構造200では、燃料タンク201に断面視略台形の溝202が形成され、燃料タンク201は、断面視平坦なタンクバンド203で車体側に止められる。図9(a)に示されたように、燃料タンク201の側方から矢印a1の如く荷重が作用する場合に、燃料タンク201は、矢印a1方向に移動を開始する。
【0036】
しかし、図9(b)に示されたように、断面視略台形の溝202のコーナ部202aに、タンクバンド203のエッジ203aが矢印a2の如く引っ掛かり、燃料タンク201の十分な移動を促すことはできない。
【0037】
図9(c),(d)に示されたように、実施例の燃料タンクの配置構造20では、燃料タンク23に断面視略台形の溝94が形成され、燃料タンク23は、断面視で円弧状のタンクバンド95で前後のクロスメンバ82,14に止められる。
図9(c)に示されたように、燃料タンク23の側方から矢印a3の如く荷重が作用する場合に、燃料タンク23は、矢印a3方向に移動を開始する。
【0038】
図6、図7に示されたように、燃料タンク23の上面23bと車体フロア16との間には、燃料タンク23を保持するとともに燃料タンク23の横移動を可能にする弾性部材93が設けられているとともに、図9(d)に示されたように、タンクバンド95は、断面視で円弧状に形成され、円弧状の外周面98が断面視略台形の溝94に当接している。従って、タンクバンド95から燃料タンク23の溝94が矢印a4及び矢印a5の如く外れることができ、燃料タンク23の横移動が可能となる。
【0039】
図10(a)に示されたように、燃料タンクの配置構造20では、レール収納部71の収納部側傾斜部71aに、燃料タンク23のタンク側傾斜部87が略平行に設けられている。また、レール収納部71の頂部99領域にタンク側傾斜部87に連続させてタンク幅を縮小した幅狭部92が設けられている。車体の側面からバリヤ101が矢印b1の如く侵入する。
【0040】
図10(b)に示されたように、バリヤ101が矢印b2の如くサイドシル13に当たると、サイドシル13の内側に形成されているレール収納部(凸部)71で一方の(右の)補強メンバ12を矢印b3の如く押圧する。図9(d)で説明したように、燃料タンク23は横移動可能に車体側に支持されているので、燃料タンク23は矢印b4の如く他方の(左の)補強メンバ12側に先ずは移動する。これにより、スライドドア18(図5参照)のアーム77が燃料タンク23に干渉することを防止でき、燃料タンク23を所定の側突荷重から保護することができる。
【0041】
図10(c)に示されたように、バリヤ101が、車体内部に侵入し、レール収納部(凸部)71で一方の(右の)補強メンバ12を矢印b6の如く変形させる。この場合にも、燃料タンクの配置構造20では、レール収納部71の頂部99領域にタンク側傾斜部87に連続させてタンク幅を縮小した幅狭部92が設けられているので、さらにスライドドア18(図5参照)のアーム77が燃料タンク23に干渉することを防止でき、さらに大きな側突荷重に対しても燃料タンク23を保護することができる。
【0042】
すなわち、図6〜図8に示されたように、燃料タンクの配置構造20では、車体前後方向に延ばされた左右のサイドシル13,13と、車幅方向の略中央に配置され、燃料を貯留する燃料タンク23と、この燃料タンク23の両側と左右のサイドシル13,13との間にそれぞれ配置され、車体前後方向に延ばした左右の補強メンバ12,12と、左右のサイドシル13,13から車体内側に突出させ、スライドドア18のレール19を収納するレール収納部71と、を備える。
【0043】
レール収納部71,71に、左右のサイドシル13,13から車体後方に且つ車幅方向内側に傾斜する収納部側傾斜部71a,71aを備え、燃料タンク23に、燃料タンク23の側方に車幅方向内側に傾斜するタンク側傾斜部87,87を備える。
【0044】
タンク側傾斜部87,87を、収納部側傾斜部71a,71aに沿わせて形成するとともに、平面視で収納部側傾斜部71a,71aが形成される範囲内に形成したので、燃料タンク23の体積の減少を最小限に止め、側突安全性能の向上を図ることができる。すなわち、側突の際にレール収納部71が燃料タンク23に当たることを防ぐことができる。
【0045】
燃料タンクの配置構造20では、燃料タンク23の両側と左右の補強メンバ12,12とが、車幅方向に関してのそれぞれ間隙部を有し、燃料タンク23に、左右の補強メンバ12,12の一方が燃料タンク23に当接した際に、左右の補強メンバ12,12の他方に移動可能に支持されたので、タンク体積を減少することなく、側突安全性能を向上することができる。すなわち、側突の際に燃料タンク23を逃がすことによって、レール収納部71が燃料タンク23に当たる距離を稼ぐことができる。
【0046】
燃料タンクの配置構造20では、燃料タンク23は、底81に断面視略台形の溝94,94が車体前後方向に形成され、溝94,94に燃料タンク23を保持するタンクバンド95,95を通し、タンクバンド95,95の両端を左右のサイドシル13,13若しくは左右の補強メンバ12,12に渡される前後のクロスメンバ82,14に固定することで支持した。
【0047】
タンクバンド95が、断面視で円弧状に形成され、円弧状の外周面98を断面視略台形の溝94に当接させたので、燃料タンク23に側突荷重が作用した場合には、燃料タンク23がタンクバンド95から外れ易くすることができる。
【0048】
燃料タンクの配置構造20では、左右のサイドシル13,13に車体フロア16が渡され、燃料タンク23の上面23bと車体フロア16との間に、燃料タンク23を保持するとともに燃料タンク23の横移動を可能にする弾性部材93が設けられたので、燃料タンク23に側突荷重が作用した場合には、燃料タンク23の横移動が可能になる。
【0049】
燃料タンクの配置構造20では、燃料タンク23に、タンク側傾斜部87,87に連続させてタンク幅を縮小した幅狭部92が設けられたので、レール収納部71に大きな側突荷重が作用する場合にも、レール収納部71から燃料タンク23を保護することができる。
【0050】
尚、本発明に係る燃料タンクの配置構造は、図8に示すように、タンクバンド95が断面視で円弧状に形成されたが、これに限るものではなく、断面視で略台形に形成されたものでもよい。また、燃料タンク23の底81に断面視略台形の溝94が形成されたが、これに限るものではなく、断面視で円弧状の溝が形成されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る燃料タンクの配置構造は、左右のサイドシルから車体内側に突出させ、スライドドアのレールを収納するレール収納部と、を備えたミニバンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0052】
12…左右の補強メンバ、13…左右のサイドシル、14…後のクロスメンバ、16…車体フロア、18…スライドドア、19…レール、20…燃料タンクの配置構造、23…燃料タンク、23b…上面、71…レール収納部、71a…収納部側傾斜部(前傾斜部)、81…底、82…前のクロスメンバ、91…間隙部(空間)、92…幅狭部、93…弾性部材、94…左右の溝、95…左右のタンクバンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延ばされた左右のサイドシルと、車幅方向の略中央に配置され、燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクの両側と前記左右のサイドシルとの間にそれぞれ配置され、車体前後方向に延ばした左右の補強メンバと、前記左右のサイドシルから車体内側に突出させ、スライドドアのレールを収納するレール収納部と、を備えた燃料タンクの配置構造において、
前記レール収納部は、前記左右のサイドシルから車体後方に且つ車幅方向内側に傾斜する収納部側傾斜部を備え、前記燃料タンクは、該燃料タンクの側方に車幅方向内側に傾斜するタンク側傾斜部を備え、
前記タンク側傾斜部を、前記収納部側傾斜部に沿わせて形成するとともに、平面視で前記収納部側傾斜部が形成される範囲内に形成したことを特徴とする燃料タンクの配置構造。
【請求項2】
前記燃料タンクの両側と前記左右の補強メンバとは、車幅方向に関してのそれぞれ間隙部を有し、
前記燃料タンクは、前記左右の補強メンバの一方が該燃料タンクに当接した際に、前記左右の補強メンバの他方に移動可能に支持されたことを特徴とする請求項1記載の燃料タンクの配置構造。
【請求項3】
前記燃料タンクは、該燃料タンクの底に断面視略台形の溝が車体前後方向に形成され、前記溝に該燃料タンクを保持するタンクバンドを通し、タンクバンドの両端を前記左右のサイドシル若しくは前記左右の補強メンバに渡される前後のクロスメンバに固定することで支持され、
前記タンクバンドは、断面視で円弧状に形成され、該円弧状の外周面を前記断面視略台形の溝に当接させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料タンクの配置構造。
【請求項4】
前記左右のサイドシルに車体フロアが渡され、前記燃料タンクの上面と前記車体フロアとの間に、該燃料タンクを保持するとともに該燃料タンクの横移動を可能にする弾性部材が設けられたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の燃料タンクの配置構造。
【請求項5】
前記燃料タンクは、前記タンク側傾斜部に連続させてタンク幅を縮小した幅狭部が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の燃料タンクの配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−1090(P2012−1090A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137384(P2010−137384)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】