説明

燃料タンクの開口構造およびその製造方法

【課題】タンク容量が大きく、蓋体の取り付けが容易で、シール性に優れて、開口部から燃料の浸透の少ない燃料タンクの開口部構造とその燃料タンクの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも外層2、内層3及びその間の中間層4を有する熱可塑性合成樹脂製の燃料タンク本体1に、開口部10を一体的に形成する開口部構造とその製造法である。開口部10は、筒状部11と、ヘヤピン状に折れ曲がる折曲部12とから構成される。折曲部12の少なくとも一部は、開口面に垂直な方向から圧縮した他の部分よりも薄肉の圧縮部13を有する。筒状部11の外層に複数の係止孔32を有する金属製の環状の蓋係止部材30の一部を一体的に埋設し、蓋係止部材30の係止孔32に係合する係合爪部24を有する金属製の環状の取付部材20の係合爪部24を係止孔32に係合して、開口部10を塞ぐ蓋体40を開口部10と取付部材20で挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクの開口部構造およびその製造方法に関するものであり、特に、複数の層を有する合成樹脂部材をブロー成形することにより燃料タンク本体を形成するとともに、その燃料タンク本体に一体的に開口部を形成する熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクの開口部構造およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
この燃料タンクには、タンク内部に装着する部品の出し入れのために開口部が形成されている。この開口部の形成は、燃料タンク本体をブロー成形で形成すると同時に、開口部を一体的に形成することが行なわれている。
その構造は、例えば、図8に示すように、開口部110と、その開口を塞ぐ蓋体140が取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図8の構成では、開口部110の周辺に蓋体140を係止するカムロック部材120を埋設し、リング状の固定部材130と開口部110で蓋体140を挟み、カムロック部材120で固定部材130を押圧して、蓋体140を固定している。このとき、蓋体140と開口部110との間をシールするため、その間にシールリング150が取付けられている。そのシールリング150を取付けるために、開口部110の蓋体140と対向する面には溝部116が形成されている。
【0005】
この溝部116は、シール性を確保するため、平滑な面が必要とされるが、ブロー成形で、この溝部116を形成すると、ブローの内圧でブロー成形金型の内面に押圧することのみでは充分な平滑面が得られなかった。また、この開口部110の端面からガソリンが浸透することを防止するために、開口部110の溝部116の肉厚を薄くすることも必要とされている。
【0006】
しかしながら、溝部116の部分を薄く形成するため、溝部116を形成するときに、開口部110の直角方向から溝部116を形成するようにスライド金型を移動させて、圧縮しようとすると、カムロック部材120は、開口部110の部分に埋設されているのみであるため、溝部116の部分を保持するものがなく、圧縮する金型の圧力を受けることができず、圧縮することが困難であった。
また、カムロック部材120は、開口部110から外部方向に突出しているため、周辺部品との間に隙間を確保する必要があり、スペースを多く必要とし、燃料タンクの容量が減ってしまったり、ブロー成形金型の構造が複雑になってしまったりしていた。
【0007】
さらに、図9に示すように、燃料タンク本体201を多層構造の熱可塑性合成樹脂で形成するものある(例えば、特許文献2参照。)。この場合は、内層と外層を燃料タンクとして必要な強度を保持して、燃料にも強い高密度ポリエチレン(HDPE)で構成し、その間に燃料の浸透を防止するバリヤ層としての中間層から構成される熱可塑性合成樹脂部材で形成している。
【0008】
この場合に、開口部210において、蓋体240を開口部210に取付けるために、開口部210に外周にネジが形成された環状部材220が一体的に固着されている。この環状部材220の蓋体240と対抗する面に開口部210の折曲部212が一体的に固着され、その折曲部212の一部に圧縮部213が形成されている。この圧縮部213の中にシールリング250が設置されて、蓋体240と開口部210との間をシールしている。しかしながら、この環状部材220は合成樹脂で形成されているため強度が低く、外力に対して十分な剛性を確保することが困難であった。
【0009】
また、蓋体240を開口部210に固定するために、環状で内部にネジ溝が形成された固定部材230を環状部材220にねじ込むために、取付けに時間がかかり、ネジ部分に所定の長さが必要であり、開口部210の高さが高くなり、スペースが必要になる。また、ネジを強く締めすぎると合成樹脂製のため、環状部材220や固定部材230が塑性変形する恐れもあった。
【特許文献1】特開2002−187162号公報
【特許文献2】特開2003−220840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、本発明は、タンク容量が大きく、蓋体の取り付けが容易で、シール性に優れて、開口部から燃料の浸透の少ない燃料タンクの開口部構造とその燃料タンクの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、少なくとも外層、内層及びその間の中間層を有する熱可塑性合成樹脂製の燃料タンク本体に、開口部を一体的に形成してなる燃料タンクの開口部構造において、
開口部は、燃料タンク本体から外方に延出する筒状部と、筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折れ曲がるとともにさらに開口部の中心方向にヘヤピン状に折れ曲がり上下に熱可塑性合成樹脂の層が重ね合わされ開口部の開口面に平行な外面を有する折曲部とから構成され、折曲部の少なくとも一部は、開口面に垂直な方向から圧縮した他の部分よりも薄肉の圧縮部を有し、
筒状部の外層に複数の係止孔を有する金属製の環状の蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して、開口部を塞ぐ蓋体を開口部と取付部材で挟持した燃料タンクの開口部構造である。
【0012】
請求項1の本発明では、開口部は、燃料タンク本体から外方に延出する筒状部と、筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折れ曲がるとともにさらに開口部の中心方向にヘヤピン状に折れ曲がり上下に熱可塑性合成樹脂の層が重ね合わされ開口部の開口面に平行な外面を有する折曲部とから構成される。このため、開口部は、燃料タンク本体から一体的に形成され密閉性に優れるとともに、折曲部の肉厚を確保することができ、シール部材を保持することができる。折曲部は、外面が燃料タンク本体の外層で形成されるため、強度を確保することができ、内部に燃料透過防止性の材料からなる中間層を有するため、燃料の浸透を防止することができる。
【0013】
折曲部の少なくとも一部は、開口面に垂直な方向から圧縮した他の部分よりも薄肉の圧縮部を有するため、圧縮部で開口部の肉厚を薄くすることができ、開口部の先端から圧縮部を通過して燃料が浸透することを最小限にすることができる。また、薄肉部にシール部材を嵌め込むことができ、シール性を確保することができる。更に、圧縮部を圧縮することで、より平滑な面を形成することができ、シール性を一層向上させることができる。
【0014】
筒状部の外層に複数の係止孔を有する金属製の環状の蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して、開口部を塞ぐ蓋体を開口部と取付部材で挟持した。このため、取付部材に係合爪部を形成し、蓋係止部材に係合爪部がなく、金型に蓋係止部材を保持しやすく、開口部に蓋係止部材の一部を埋設することが容易であり、蓋係止部材の一部が開口部から突出することがなく、燃料タンクのためのスペースを小さくすることができる。また、蓋係止部材と取付部材で蓋体を確実に挟持して、開口部を確実にシールすることができる。
【0015】
請求項2の本発明は、取付部材は、蓋体の周囲を開口部に押圧し開口面と平行な平面を有する環状の上平板部と、上平板部の先端の複数個所から階段状に下方に折れ曲がり蓋係止部材の係止孔に係合する下縦壁部と、下縦壁部の先端から開口部の中心方向にL字形に曲がり蓋係止部材の下面に係合する係合爪部から形成された燃料タンクの開口部構造である。
【0016】
請求項2の本発明では、取付部材は、蓋体の周囲を開口部に押圧し開口面と平行な平面を有する環状の上平板部を有するため、取付部材を蓋係止部材に取付けたときに、開口部を塞ぐ蓋体の全周囲を上平板部で押圧して開口部に密着させることができ、開口部と蓋体との間のシール性を確保できる。
【0017】
取付部材は、上平板部の先端の複数個所から階段状に下方に折れ曲がり蓋係止部材の係止孔に係合する下縦壁部と、下縦壁部の先端から開口部の中心方向にL字形に曲がり蓋係止部材の下面に係合する係合爪部を有する。このため、蓋係止部材の係止孔に取付部材の下縦壁部を挿入し、取付部材を回動させると、係合爪部が蓋係止部材の下面に密着して、強固に取付部材を蓋係止部材に取付けることができる。
さらに、取付部材がカムロック構造をとるため、係止時に蓋体と取付部材をわずかに回転させるのみで、蓋体を係止することができ、組付けが容易となるとともに、開口部の高さを低くすることができる。
【0018】
請求項3の本発明は、蓋係止部材は、円周方向に幅広と幅狭の部分を有する複数の係止孔を有し開口面と平行な平面を有する環状の係止上面部と、係止上面部から階段状に下方に屈曲する係止段部と、係止段部から開口部の中心方向にL字形に曲がり開口面と平行な平面を有する係止平板部と、係止平板部から下方に屈曲して形成された係止縦壁部から形成された燃料タンクの開口部構造である。
【0019】
請求項3の本発明では、蓋係止部材は、円周方向に幅広と幅狭の部分を有する複数の係止孔を有し、開口面と平行な平面を有する環状の係止上面部を有する。このため、係止孔に取付部材の係合爪部を係止孔の幅広部分は、挿入し、係止孔の幅狭部分まで回動すると、取付部材を強固に取付けることができる。また、係止上面部は、開口部と平行なため、開口部から突出することがなく、燃料タンクの取付けスペースを小さくすることができる。
【0020】
蓋係止部材は、係止上面部から階段状に下方に屈曲する係止段部を有するため、開口部の折曲部の端部を保持することができるとともに、蓋係止部材の係止平板部を開口部の折曲部の下面に位置させることができる。
蓋係止部材は、係止段部から開口部の中心方向にL字形に曲がり開口面と平行な平面を有する係止平板部を有するため、開口部の下面を保持して、蓋体が取付部材で押圧されたときに、係止平板部と取付部材の上平板部で蓋体を挟持することができる。また、金型で圧縮部を形成するときに、折曲部を蓋係止部材で下から保持して、折曲部を圧縮することが容易であり、蓋体を開口部に取り付けるときも、蓋体と開口部の折曲部を強く密着させることができる。
【0021】
蓋係止部材は、係止平板部から下方に屈曲して形成された係止縦壁部を有するため、蓋係止部材の係止縦壁部を開口部の筒状部に埋設するときに、係止縦壁部が開口部の筒状部の外層に埋設され、強固に蓋係止部材の全体を保持できるとともに、開口部の筒状部の径方向の強度を大きくすることができる。
【0022】
請求項4の本発明は、蓋係止部材は、係止平板部が圧縮部の重ね合わされた部分の下側の外層を保持し、係止縦壁部は複数の切欠部又は固定孔が形成され、開口部の外層に埋設されるとともに切欠部又は固定孔に外層の合成樹脂が侵入した燃料タンクの開口部構造である。
【0023】
請求項4の本発明では、蓋係止部材は、係止平板部が圧縮部の重ね合わされた部分の下側の外層を保持するため、圧縮部の中間層がそのまま維持されて、圧縮部において燃料の透過を防止することができ、取付部材を取付けたときに、圧縮部の変形を防止できる。
蓋係止部材の係止縦壁部は、複数の切欠部又は固定孔が形成され、開口部の外層に埋設されるとともに切欠部又は固定孔に外層の合成樹脂が侵入したため、蓋係止部材が開口部内でずれることがなく、係止縦壁部を強固に開口部の外層に固定することができる。
【0024】
請求項5の本発明は、圧縮部は、断面コ字形の溝状の溝部が形成され、溝部の底面は平滑面が形成され、溝部にはシール部材が取付けられた燃料タンクの開口部構造である。
【0025】
請求項5の本発明では、圧縮部は、断面コ字形の溝部に形成され、溝部の底部は平滑面が形成され、溝部にはシール部材が取付けられたため、シール部材を溝部内に確実に保持することができるとともにシール部材が平滑面に密着するため、シール性がよい。
【0026】
請求項6の本発明は、少なくとも外層、内層及びその間の中間層を有する熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形して燃料タンク本体を形成するとともに、開口部を一体的に形成する燃料タンクの製造方法において、
燃料タンク本体のブロー成形時に、燃料タンク本体から一部を外方に延出させて開口部の筒状部を形成し、筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折れ曲げるとともにさらに開口部の中心方向にヘヤピン状に折り曲げて熱可塑性合成樹脂部材が2層に重ね合わされ開口部の開口面に平行な外面を有するように折曲部を形成し、折曲部の少なくとも一部は、開口面に垂直な方向から圧縮して他の部分よりも薄肉の圧縮部を形成し、
筒状部の外層に複数の係止孔を有する金属製の環状の蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、開口部の開口する部分を塞ぐ熱可塑性合成樹脂部材を切除して開口部を形成し、開口部を蓋体で塞ぎ、蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して開口部を塞ぐ蓋体を開口部と取付部材で挟持した燃料タンクの製造方法である。
【0027】
請求項6の本発明では、燃料タンク本体のブロー成形時に、燃料タンク本体から一部を外方に延出させて開口部の筒状部を形成するため、ブロー成形時に同時に筒状部を含む開口部を成形することができ、成形が容易である。
筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折り曲げるとともにさらに開口部の中心方向にヘヤピン状に折り曲げて熱可塑性合成樹脂部材が2層に重ね合わされ開口部の開口面に平行な外面を有するように折曲部を形成する。このため、折曲部を含む開口部は、燃料タンク本体から一体的に形成することができ、開口部は、密閉性に優れるとともに、圧縮部以外の折曲部の肉厚を確保することができる。折曲部は、外面が燃料タンク本体の外層で形成するため、強度を確保することができ、内部に燃料透過防止性の中間層を有するため、燃料の浸透を防止することができる。
【0028】
折曲部の少なくとも一部は、開口面に垂直な方向から圧縮して他の部分よりも薄肉の圧縮部を形成したため、折曲部を圧縮するのみで、圧縮部で開口部の肉厚を薄く形成することができ、開口部の先端から圧縮部の外層を通過する燃料の浸透を最小限にすることができる。折曲部を金型で圧縮するため、圧縮部の表面は平滑に形成することができ、シール部材との密着性が向上して、シール性がよい。
【0029】
筒状部の外層に複数の係止孔を有する金属製の環状の蓋係止部材の一部を一体的に埋設したため、圧縮部を形成するときに折曲部を蓋係止部材で下から保持することができ、折曲部を圧縮することが容易であり、蓋体を開口部に取り付けるときも蓋体と開口部を強く密着させることができる。
【0030】
開口部の開口する部分を塞ぐ熱可塑性合成樹脂部材を切除して開口部を形成し、開口部を蓋体で塞ぎ、蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して、蓋体を開口部と取付部材で挟持した。このため、取付部材の係合爪部を蓋係止部材の係止孔に挿入して、取付部材をわずかに回動させることで、蓋体を開口部に強固に保持し、シールすることができる。
【0031】
請求項7の本発明は、少なくとも外層、内層及びその間の中間層を有する熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形して燃料タンク本体を形成するとともに、開口部を一体的に形成する燃料タンクの製造方法において、
ブロー成形金型の開口部を形成する部分に金属製の環状の蓋係止部材を保持させて、
ブロー成形金型の蓋係止部材を保持する部分の外側に、スライド金型を設け、スライド金型の内面の周端に凸条部を形成し、
燃料タンク本体のブロー成形時に、スライド金型を後方に後退させて、燃料タンク本体の熱可塑性合成樹脂部材の一部から外方に延出させて開口部の筒状部を形成し、
蓋係止部材とスライド金型の凸条部の間に、筒状部の熱可塑性合成樹脂部材を進入させ、拡径させるともに、開口部の熱可塑性合成樹脂部材をスライド金型の内面に当接させ、筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折れ曲げるとともにさらに、開口部の中心方向にヘヤピン状に折り曲げて熱可塑性合成樹脂部材を2層に重ね合わせ折曲部を形成し、スライド金型を蓋係止部材方向に前進させ、折曲部の少なくとも一部を開口面に垂直な方向から圧縮して他の部分よりも薄肉の圧縮部を形成し、
筒状部の外層に蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、開口部の開口する部分を塞ぐ熱可塑性合成樹脂部材を切除して開口部を形成し、開口部を蓋体で塞ぎ、蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して蓋体を開口部と取付部材で挟持した燃料タンクの製造方法である。
【0032】
請求項7の本発明では、ブロー成形金型の開口部を形成する部分に金属製の環状の蓋係止部材を保持させて、ブロー成形金型の蓋係止部材を保持する部分の外側に、スライド金型を設け、スライド金型の内面の周端に凸条部を形成した。このため、蓋係止部材とスライド金型の部分で折曲部を形成することができるとともに、ブロー成形時に蓋係止部材を開口部に埋設することができる。
【0033】
燃料タンク本体のブロー成形時に、スライド金型を外方に後退させて、燃料タンク本体の熱可塑性合成樹脂部材の一部を外方に延出させて上記開口部の筒状部を形成したため、スライド金型が後退した部分に燃料タンク本体を形成する熱可塑性合成樹脂部材を膨らませて、燃料タンク本体の成形と同時に筒状部を形成することができ、成形作業が容易である。
【0034】
蓋係止部材とスライド金型の凸条部の間に、筒状部の熱可塑性合成樹脂部材を進入させ、拡径させるともに、開口部の熱可塑性合成樹脂部材をスライド金型の内面に当接させ、筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折れ曲げるとともに、さらに開口部の中心方向にヘヤピン状に折り曲げて熱可塑性合成樹脂部材を2層に重ね合わせ折曲部を形成した。このため、蓋係止部材とスライド金型の凸条部の間に燃料タンク本体の合成樹脂部材を侵入させることで容易に折曲部を形成することができ、開口部の肉厚を増加し、強度を増加させることができる。
【0035】
スライド金型を蓋係止部材方向に前進させ、折曲部の少なくとも一部を開口面に垂直な方向から圧縮して他の部分よりも薄肉の圧縮部を形成したため、スライド金型を蓋係止部材方向に前進させるのみで、ブロー成形時に折曲部に圧縮部を形成することができる。また、圧縮部を形成するときに折曲部を蓋係止部材で下から保持することができ、折曲部を圧縮することが容易である。
【0036】
筒状部の外層に蓋係止部材を一体的に埋設し、開口部の開口する部分を塞ぐ熱可塑性合成樹脂部材を切除して開口部を形成したため、燃料タンクを成形するときに同時に蓋係止部材を筒状部に埋設することができ、容易に筒状部の強度を増加させることができる。また、燃料タンクを成形すると同時に、開口部と開口部の開口する部分を塞ぐ熱可塑性合成樹脂部材を形成し、開口部の開口する部分を塞ぐ熱可塑性合成樹脂部材をその後切除するのみで、開口する部分を形成することができる。
【0037】
開口部を蓋体で塞ぎ、蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して蓋体を開口部と取付部材で挟持したため、取付部材をわずかに回転させるのみで、カムロック機構により、蓋体を係止することができ、蓋体と開口部を強く密着させることができ、組付けが容易となるとともに、開口部の高さを低くすることができる。
【0038】
請求項8の本発明は、圧縮部の形成は、スライド金型の凸条部により断面コ字形の溝部を形成し、溝部の底部を平滑面で形成し、溝部にはシール部材を取付けた燃料タンクの製造方法である。
【0039】
請求項8の本発明では、圧縮部の形成は、スライド金型の凸条部により断面コ字形の溝部を形成し、溝部の底部を平滑面で形成し、溝部にはシール部材を取付けたため、シール部材を所定位置に確実に保持することができ、シール部材が平滑面に密着するため、シール性がよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明では、開口部は、燃料タンク本体から外方に延出する筒状部と、筒状部の先端から筒状部を拡径する方向に折れ曲がり、開口部の開口面に平行な外面を有する折曲部とから構成されるため、開口部は、燃料タンク本体から一体的に形成され密閉性に優れるとともに、シール部材を保持することができる。折曲部は、内部に中間層を有するため、燃料の浸透を防止することができる。折曲部の少なくとも一部は、薄肉の圧縮部を有するため、燃料の浸透を最小限にすることができる。
【0041】
開口部の筒状部の外層に、金属製の環状の蓋係止部材を一体的に埋設し、係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の係合爪部を係止孔に係合して、開口部を塞ぐ蓋体を開口部と取付部材で挟持したため、取付部材に係合爪部を形成し、蓋係止部材に係合爪部がなく、金型に蓋係止部材を保持しやすく、開口部に蓋係止部材を埋設することが容易であり、蓋係止部材の一部が開口部から突出することがなく、燃料タンクのためのスペースを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施の形態である燃料タンクについて、自動車用燃料タンクを例にとり、図1〜図7に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態の燃料タンクの開口部10の断面図である。図2は第1図の蓋体40を係止する部分の拡大断面図である。図3は、本発明の実施の形態において、蓋体40を取付ける取付部材(ロックプレート)20の斜視図である。図4は、本発明の実施の形態において開口部10に埋設される蓋係止部材(係止リング)30の斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態の燃料タンクの開口部10において、ロックプレート20を係止リング30に嵌め込む構造を示す分解斜視図である。
図6と図7は、本発明の燃料タンク本体1の開口部10の製造方法を示すブロー成形金型60の開口部10を形成する金型部分の断面図である。
【0043】
本発明の第1の実施の形態では、燃料タンクは、図1と図2に示すように、燃料タンク本体1とその本体に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするために開口部10が形成されている。
燃料タンク本体1は、ブロー成形で形成され、その外壁は、外層2、内層3及び外層2と内層3との間に形成される中間層4の3層から構成されている。ブロー成形においては、上記の3層から構成されるパリソンが使用される。
外層2と内層3は、強度が高く燃料油に対しても強度が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、中間層4は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。
【0044】
外層2と内層3を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリオキシメチレン(POM)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイドのうち少なくとも1種類の材料を使用することができる。
【0045】
また、中間層4を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用することができる。
なお、上記エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の中間層4の両面に高密度ポリエチレン(HDPE)等と接着性のよい層、例えば、変性ポリエチレン(m−PE)等の接着層を介在させた多層パリソンを使用すると、3層間の接着性が向上して好ましい。
【0046】
図1に示すように、開口部10は、燃料タンク本体1の上面に形成され、開口部10は蓋体40が取付けられ、係止されている。
開口部10における蓋体40の係止構造は、図2に示すように、蓋体40を開口部10に埋設された蓋係止部材(係止リング)30と取付部材(ロックプレート)20で挟持している。
蓋体40は、略円盤状に形成され、下面に開口部10の内周に沿って突出するフランジ部41が形成され、蓋体40のずれを防止している。
【0047】
蓋体40を挟持するロックプレート20は、図3に示すように、リング状で断面形状が平板状の上平板部22から係合爪部24が延設されている。開口部10に埋設される係止リング30には、図4に示すように、係合爪部24に対応する部分に係止孔32が形成されている。後述するように、この係止孔32に係合爪部24が挿入され、蓋体40を係止することができる。
【0048】
燃料タンク本体1の開口部10は、その製造方法で後述するように、燃料タンク本体1から同じ材料で一体的に連続して、外方に延出して形成されている。開口部10には、係止リング30が埋設されている。
係止リング30は、図2及び図4に示すように金属板で構成され、屈曲した略円筒状に形成されている。
【0049】
ロックプレート20は、燃料タンク本体1の開口部10を塞ぐ蓋体40の周囲を開口部10に押圧し、開口面と平行な平面を有する環状の上平板部22が形成され、ロックプレート20を係止リング30に取付けたときに、蓋体40の全周囲を上平板部22で押圧することができ、蓋体40を開口部10に密着させることができ、シール性を確保できる。
上平板部22の開口部10の中心側の先端から屈曲して上縦壁部21が延設され、ロックプレート20の先端が蓋体40に引っかかることなく円滑に蓋体40を押圧している。
【0050】
図2と図3に示すように、ロックプレート20の上平板部22の外側の先端の複数個所から階段状に所定幅で、下方に折れ曲がった下縦壁部23が延設されている。さらに、下縦壁部23の先端から開口部10の中心方向にL字形に曲がった係合爪部24が形成されている。図5に示すように、ロックプレート20を係止リング30に取り付けたときに、係止リング30の係止孔32に下縦壁部23が挿入され、ロックプレート20を少し回転させると、後述するように、ロックプレート20がカムロック構造をとるため、係合爪部24が係止リング30の下面に係合してロックプレート20が固定され、蓋体40を挟持することができる。下縦壁部23が、下方に延設されているため、開口部10の全体の高さを低くすることができる。
係合爪部24は、波型に屈曲して形成されることができる。これによって、係合爪部24と後述する係止上面部31がバネ作用をして蓋体40を係止することができる。
【0051】
係止リング30は、図4に示すように、開口面と平行な平面を有する環状の係止上面部31を有する。係止上面部31には、円周方向に複数の係止孔32が形成されている。係止孔32は、円周方向に幅広部分32aと幅狭部分32bが連続して形成されている。ロックプレート20を係止リング30に取付けるときに、図2と図5に示すように、係止孔32の幅広部分32aにロックプレート20の下縦壁部23と係合爪部24を挿入し、係止孔32の幅狭部分32bに下縦壁部23が入るように回動すると、係合爪部24が、係止上面部31の下面に密着し、ロックプレート20を強固に取付けることができる。また、係止上面部31は、開口部10と平行なため、開口部10から下縦壁部23等が突出することがなく、燃料タンク本体1の取り付けスペースを小さくすることができる。
【0052】
係止上面部31のうちがわの端面から下方に階段状に係止段部33が形成されている。開口部10の折曲部12の車外側の端部が、係止段部33に当接し、保持することができるため、開口部10の強度を増加できる。また、係止段部33により、係止平板部34を係止上面部31の位置から下げて、係止リング30の係止平板部34を開口部10の折曲部12の下面に位置させることができる。
【0053】
係止段部33から開口部10の中心方向にL字形に曲がり開口面と平行な平面を有する係止平板部34が形成されている。係止平板部34は、開口部10の圧縮部13の下面を保持して、蓋体40がロックプレート20の上平板部22で押圧されたときに、係止平板部34とロックプレート20の上平板部22で蓋体40を挟持することができる。また、圧縮部13を形成するときに、折曲部12を係止リング30で下から保持して、折曲部12を圧縮することが容易であり、蓋体40を開口部10に取り付けるときも、蓋体40を開口部10の折曲部12に強く押圧することができる。
【0054】
係止縦壁部35が係止平板部34から下方に屈曲して円筒状に形成されている。係止縦壁部35は、係止リング30を開口部10に埋設するときに、係止縦壁部35が開口部10の筒状部11の外層2に埋設される。このため、強固に係止リング30の全体を係止縦壁部35で保持できるとともに、係止縦壁部35が、開口部10の筒状部11の径方向の強度を大きくすることができる。
【0055】
係止縦壁部35には、図4に示すように、複数の固定孔36が形成されている。この固定孔36には後述するように、ブロー成形時に開口部10の筒状部11の熱可塑性合成樹脂部材が進入して係止リング30を筒状部11内でずれることなく、開口部10に固着することができる。
なお、固定孔の代わりに、係止縦壁部35の下端に波形の切欠部を複数個形成することができる。この場合には、同じくブロー成形時に切欠部に筒状部11の熱可塑性合成樹脂部材が進入して係止リング30を開口部10に固着することができる。
【0056】
開口部10は、図2に示すように、筒状部11と折曲部12から形成される。
筒状部11は、燃料タンク本体1の外壁を構成する外層2、内層3及び中間層4の3層からなる熱可塑性合成樹脂壁が、燃料タンク本体1から外方に筒状に延出されて形成される。筒状部11の外層2には係止リング30の係止縦壁部35が埋設されている。上述のとおり、係止リング30の固定孔36または切欠部に外層2の熱可塑性合成樹脂壁を構成する材料が進入している。このため、係止リング30が開口部10に強固に固定されることができる。
【0057】
折曲部12は、開口部10の筒状部11の先端から一体的、連続的に形成され、筒状部11を拡径する方向、即ち、筒状部11の先端から直角に外方に折れ曲がるとともに、さらにその中央付近で、折り畳まれるように開口部10の中心方向にヘヤピン状に折れ曲がり、上下に熱可塑性合成樹脂の層が重ね合わされ開口部10の開口面に平行な外面を有するように形成される。
【0058】
このため、折曲部12は、燃料タンク本体1の壁を構成する外層2、内層3及び中間層4が上下に重なり合って、2層ずつ構成されている。従って、開口部10は、燃料タンク本体1から同一材料で連続的に一体的に形成されて、密閉性に優れるとともに、折曲部12の圧縮部13以外の部分は、肉厚を確保することができ強度を確保できる。また、中間層4が存在するため、燃料の透過も防止できる。
【0059】
折曲部12は、略中央部には、開口部10の面から垂直な方向から圧縮して形成されて、他の部分よりも薄肉の圧縮部13が形成され、圧縮部13には、断面が凹状の溝部17が開口部10の全周に亘り形成されている。この圧縮部13の溝部17には、ゴム製の断面が円形のシールリング50が装着され、蓋体40が開口部10に取付けられたときは、蓋体40の裏面に当接して、蓋体40と開口部10の間をシールすることができる。溝部17にシールリング50を装着するため、蓋体40に対してシールに必要な所定位置にシールリング50を確実に保持することができる。
【0060】
溝部17の表面は、後述するように、スライド型61により平滑に形成されるためシールリング50が密着して、シール性に優れている。
圧縮部13の溝部17の底の部分は、折曲部12が圧縮されて、薄肉状になっている。そして、その中心部には、中間層4が折り畳まれて存在し、中間層4の上下には外層2が薄肉状に存在している。
【0061】
折曲部12は、外面が燃料タンク本体1の外層2で形成されるため、強度を確保することができ、内部に中間層4を有するため、燃料の浸透を防止することができる。
さらに、折曲部12は、薄肉の圧縮部13を有するため、圧縮部13で開口部10の肉厚を薄くすることができ、特に最上層の外層2の肉厚を薄くすることができ、タンク内の燃料が開口部10の端面から圧縮部13の外層2を浸透していくことを最小限にすることができる。
【0062】
次に、燃料タンクの開口部10の製造方法を、図6と図7に基づき説明する。
燃料タンク本体1は、ブロー成形で成形するが、そのブロー成形と同時に開口部10も成形する。
まず、ブロー成形金型60の本体は、内側型62と外側型63から構成される。ブロー成形金型60の開口部10を形成する部分に開口を形成し、その開口にスライド型61を内外方向にスライド可能に嵌め込む。スライド型61の内面の周囲には、凸条部64が形成されている。
【0063】
図6に示すように、ブロー成形金型60の開口の内側型62と外側型63の間に係止リング30を挟み、ブロー成形を行う。ブロー成形において、まず、スライド型61は、外方に、図6においては上方にスライドしている。燃料タンク本体1を形成する外層2、内層3及び中間層4からなる熱可塑性合成樹脂部材のパリソンの内部に空気が吹き込まれて、合成樹脂部材は外方に膨らみ、外方にスライドしているスライド型61に当接する。その後、パリソンの内圧を維持しつつ、スライド型61は、内方に、図6においては下方にスライドして、図7に示すようになる。
【0064】
スライド型61がスライドすると、合成樹脂部材のパリソンはブロー成形金型60の内面に当接しつつ、燃料タンク本体1と開口部10が形成される。このとき、係止リング30は合成樹脂部材のパリソンの内部に埋設される。
即ち、係止リング30の係止縦壁部35は、開口部10の筒状部11の外層2の部分に埋設され、係止リング30の係止平板部34の上面に折曲部12の下面が当接し、折曲部12は、スライド型61の下降につれて、折曲部12を圧縮して、折曲部12をヘヤピン状に潰して形成する。
【0065】
折曲部12を圧縮すると同時に、折曲部12の一部は、凸条部64に圧縮されて、圧縮部13を形成する。
圧縮部13は、係止リング30の係止平板部34と凸条部64に挟まれて圧縮されるので、均一に薄肉に形成されるとともに、圧縮部13の上面に凹溝状の溝部17が形成される。溝部17には、前述のようにゴム製のシールリング50が装着される。溝部17の底面は、スライド型61の凸条部64の圧縮により形成されるため、平滑に形成され、シールリング50が平滑面に密着するため、シール性がよい。
折曲部12を形成した後は、ブロー成形金型60から、燃料タンク本体1を取り出し、蓋部16が嵌め込まれる開口の部分を切除して、開口部10を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンク本体の開口部の断面図である。
【図2】図1の開口部の蓋体を係止する部分の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に使用するロックプレートの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に使用する係止リングの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態であるロックプレートを係止リングに嵌め込む構造を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の実施に使用するブロー成形金型の燃料タンク本体の開口部部分において、スライド型が上方にスライドした状態の断面図である。
【図7】本発明の実施に使用するブロー成形金型の燃料タンク本体の開口部部分において、スライド型が下方にスライドした状態の断面図である。
【図8】従来の燃料タンク本体の開口部の断面図である。
【図9】従来の他の燃料タンク本体の開口部の断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 燃料タンク本体
2 外層
3 内層
4 中間層
10 開口部
11 筒状部
12 折曲部
13 圧縮部
20 取付部材(ロックプレート)
22 上平板部
23 下縦壁部
24 係合爪部
30 蓋係止部材(係止リング)
32 係止孔
40 蓋体
60 ブロー成形金型
61 スライド型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外層、内層及びその間の中間層を有する熱可塑性合成樹脂製の燃料タンク本体に、開口部を一体的に形成してなる燃料タンクの開口部構造において、
上記開口部は、上記燃料タンク本体から外方に延出する筒状部と、該筒状部の先端から上記筒状部を拡径する方向に折れ曲がるとともにさらに上記開口部の中心方向にヘヤピン状に折れ曲がり上下に熱可塑性合成樹脂の層が重ね合わされ上記開口部の開口面に平行な外面を有する折曲部とから構成され、該折曲部の少なくとも一部は、上記開口面に垂直な方向から圧縮した他の部分よりも薄肉の圧縮部を有し、
上記筒状部の上記外層に複数の係止孔を有する金属製の環状の蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、該蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の上記係合爪部を上記係止孔に係合して、上記開口部を塞ぐ蓋体を上記開口部と上記取付部材で挟持したことを特徴とする燃料タンクの開口部構造。
【請求項2】
上記取付部材は、上記蓋体の周囲を上記開口部に押圧し上記開口面と平行な平面を有する環状の上平板部と、該上平板部の先端の複数個所から階段状に下方に折れ曲がり上記蓋係止部材の係止孔に係合する下縦壁部と、該下縦壁部の先端から上記開口部の中心方向にL字形に曲がり上記蓋係止部材の下面に係合する係合爪部から形成された請求項1に記載の燃料タンクの開口部構造。
【請求項3】
上記蓋係止部材は、円周方向に幅広と幅狭の部分を有する複数の上記係止孔を有し上記開口面と平行な平面を有する環状の係止上面部と、該係止上面部から階段状に下方に屈曲する係止段部と、該係止段部から上記開口部の中心方向にL字形に曲がり上記開口面と平行な平面を有する係止平板部と、該係止平板部から下方に屈曲して形成された係止縦壁部から形成された請求項1又は請求項2に記載の燃料タンクの開口部構造。
【請求項4】
上記記蓋係止部材は、上記係止平板部が上記圧縮部の重ね合わされた部分の下側の上記外層を保持し、上記係止縦壁部は複数の切欠部又は固定孔が形成され、上記開口部の外層に埋設されるとともに該切欠部又は固定孔に上記外層の合成樹脂が侵入した請求項3に記載の燃料タンクの開口部構造。
【請求項5】
上記圧縮部は、断面コ字形の溝状の溝部が形成され、該溝部の底面は平滑面が形成され、該溝部にはシール部材が取付けられた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンクの開口部構造。
【請求項6】
少なくとも外層、内層及びその間の中間層を有する熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形して燃料タンク本体を形成するとともに、開口部を一体的に形成する燃料タンクの製造方法において、
上記燃料タンク本体のブロー成形時に、上記燃料タンク本体から一部を外方に延出させて上記開口部の筒状部を形成し、該筒状部の先端から上記筒状部を拡径する方向に折れ曲げるとともにさらに上記開口部の中心方向にヘヤピン状に折り曲げて上記熱可塑性合成樹脂部材が2層に重ね合わされ上記開口部の開口面に平行な外面を有するように折曲部を形成し、該折曲部の少なくとも一部は、上記開口面に垂直な方向から圧縮して他の部分よりも薄肉の圧縮部を形成し、
上記筒状部の上記外層に複数の係止孔を有する金属製の環状の蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、上記開口部の開口する部分を塞ぐ上記熱可塑性合成樹脂部材を切除して開口部を形成し、該開口部を蓋体で塞ぎ、上記蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の上記係合爪部を上記係止孔に係合して上記蓋体を上記開口部と上記取付部材で挟持したことを特徴とする燃料タンクの製造方法。
【請求項7】
少なくとも外層、内層及びその間の中間層を有する熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形して燃料タンク本体を形成するとともに、開口部を一体的に形成する燃料タンクの製造方法において、
上記ブロー成形金型の上記開口部を形成する部分に金属製の環状の蓋係止部材を保持させて、
ブロー成形金型の上記蓋係止部材を保持する部分の外側に、スライド金型を設け、該スライド金型の内面の周端に凸条部を形成し、
上記燃料タンク本体のブロー成形時に、上記スライド金型を後方に後退させて、上記燃料タンク本体の熱可塑性合成樹脂部材の一部から外方に延出させて上記開口部の筒状部を形成し、
上記蓋係止部材と上記スライド金型の凸条部の間に、上記筒状部の上記熱可塑性合成樹脂部材を進入させ、拡径させるともに、上記開口部の上記熱可塑性合成樹脂部材を上記スライド金型の内面に当接させ、上記筒状部の先端から上記筒状部を拡径する方向に折れ曲げるとともにさらに、上記開口部の中心方向にヘヤピン状に折り曲げて上記熱可塑性合成樹脂部材を2層に重ね合わせ折曲部を形成し、上記スライド金型を上記蓋係止部材方向に前進させ、上記折曲部の少なくとも一部を上記開口面に垂直な方向から圧縮して他の部分よりも薄肉の圧縮部を形成し、
上記筒状部の上記外層に上記蓋係止部材の一部を一体的に埋設し、上記開口部の開口する部分を塞ぐ上記熱可塑性合成樹脂部材を切除して上記開口部を形成し、該開口部を蓋体で塞ぎ、上記蓋係止部材の係止孔に係合する係合爪部を有する金属製の環状の取付部材の上記係合爪部を上記係止孔に係合して上記蓋体を上記開口部と上記取付部材で挟持したことを特徴とする燃料タンクの製造方法。
【請求項8】
上記圧縮部を形成は、上記スライド金型の凸条部により断面コ字形の溝部を形成し、上記溝部の底面を平滑面に形成し、上記溝部にはシール部材を取付けた請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載の燃料タンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−207717(P2008−207717A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47316(P2007−47316)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【Fターム(参考)】