説明

燃料ポンプ

【課題】 コイルの巻線数を増加することなく、アーマチュアの全長を短縮することができる燃料ポンプを提供する。
【解決手段】
燃料ポンプは、シャフト17と、そのシャフト17に固定されているコア21と、そのコア21に巻回されているコイル29とを有するアーマチュアと、そのシャフト17によって回転駆動されるポンプ部とを備える。コア21の少なくとも一方の端部には、シャフト17外周面より外側でコイル29を案内するガイド34が設けられている。コイル29が対向するスロット間に巻回される際に、ガイド34に案内されることでシャフト17の周囲近傍を迂回して巻回される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン等の燃料を吸込んで昇圧し、昇圧した燃料を吐出する燃料ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9に従来の燃料ポンプを示す。この燃料ポンプは、筒状のハウジング104内に、ポンプ部101と、ポンプ部101を回転駆動するモータ部102とを収容している。モータ部102は、アーマチュア106と、永久磁石で形成されたマグネット105等で構成されている。図10には、アーマチュア106の断面を示している。アーマチュア106は、シャフト107と、そのシャフト107に固定されているコア111と、そのコア111に巻回されているコイル119と、そのコイル119に電流を供給する整流子108とを有する。シャフト107の両端近傍には一対の軸受110,113が配設されており、シャフト107を回転可能に支持している。シャフト107の下端はポンプ部101に係合し、ポンプ部101を回転駆動する。
【0003】
図11は図10のXI−XI線断面図であり、コア111には複数(この場合8個)のスロット114が設けられており、1つのコイル119が4本のスロット114に跨って巻回されている。この明細書では、例えば第1スロットを通過したコイル119が第4スロットを通過するときに、1つのコイル119が4本のスロットに跨って巻回されているという。図11に示すようにコイル119は、シャフト107を挟んで対向するスロット間に巻回されている。これは、コイル119を通過するマグネット105の磁束量を多くし、マグネット105の磁気エネルギを有効利用するためである。コイル119が対向するスロット間に巻回されると、コイル119はシャフト107の近傍を通過し、シャフト107の近傍でコア111の軸方向に積層される。このため、コイル119は、コア111の両端部111a、111bから軸方向に突出し、また、両端部111a、111bから突出したコイル119はシャフト107に施された絶縁被膜を介してシャフト107に密着している。
【0004】
ところで、この種の燃料ポンプは燃料タンク内に設置されるため、燃料ポンプの軸方向長さは燃料タンクの形状(寸法)によって規制される。近年、燃料タンクは扁平化される傾向にあり、このため、燃料ポンプの軸方向長さも短縮化する必要性が生じている。
図10に示すように、従来の燃料ポンプの構成では、シャフト107には、上から順に、軸受113と、整流子108と、コア111よりも軸方向に長く伸びるコイル119と、軸受110が直列で配設されている。従って、シャフト107の両端の軸受113,110の間の長さである軸受間距離には、少なくとも、〔軸受113の長さ+整流子108の長さ+コイル119の上方への突出分の長さ+コア111の長さ+コイル119下方への突出分の長さ+軸受110の長さ〕が必要である。燃料ポンプの軸方向の長さは、アーマチュア長さによって左右され、アーマチュア長さは、シャフト107の軸受間距離によって決定される。仮に、軸受113,110や整流子108やコア111の軸方向長さを短縮することができない場合は、(コイル119の上方への突出分の長さ)及び/又は(コイル119の下方への突出分の長さ)を短縮する以外に燃料ポンプの軸方向長さを短縮する術はない。図11に示すように、コイル119の上方(又は下方)への突出分の長さは、コア111の端部において軸方向に積層されるコイル119の巻線数によって決まる。従って、コイル119の上方(又は下方)への突出分の長さを短縮するには、コイル119の巻線数を減少させなければならないが、コイル119の巻線数を少なくすると、巻線の占積率が低下しモータ効率も低下するという問題が生じる。
なお、特許文献1には、コアのスロットに巻線を施した後、コアから突出したコイルエンドを専用の治具で圧縮し、その軸方向への突出長さを短くする技術が開示されている。しかしながら、この方法は、コイルの巻線数が少ない場合や巻線の線径が小さい場合等にはその効果が小さく、上述した問題を抜本的に解決するものではない。また、コイルエンドを冶具によって圧縮するため、圧縮時にコイルの絶縁皮膜等を傷付ける恐れもある。
【特許文献1】特開2002−272047号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、コイルの巻線数を減少することなくコイルのコア端部突出長さを短縮することができ、これによって燃料ポンプの軸方向長さを短縮することができる燃料ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の燃料ポンプは、シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備える。コアの少なくとも一方の端部には、シャフト外周面より外側でコイルを案内するガイドが設けられている。コイルは、対向するスロット間に巻回されていると共に、ガイドが設けられた端部においてガイドに案内されることでシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されていることを特徴としている。
この燃料ポンプでは、コアの少なくとも一方の端部に、シャフト外周面より外側でコイルを案内するガイドが設けられる。従って、ガイドが設けられた端部においては、コイルはシャフト近傍を通過することなく、ガイドに案内されてシャフトを迂回するように巻回される。これにより、コイルの巻線はコアの半径方向に広く積層され、コイルのコア端部からの突出長さを短くすることができる。このため、コイルの巻線数(巻線の占積率)を減少することなく、燃料ポンプの軸方向長さを短くすることができる。また、コア端部から突出するコイル部分を治具によって圧縮する等の操作を行わないため、アーマチュアの各部を傷付ける恐れもない。
ここで、第1の燃料ポンプにおいて、上記「対向するスロット間」とは、一のスロットから他のスロットにコイルを巻回したときに、そのコイルの内縁がガイドに案内されるような位置関係となる場合をも含む意味で用いている。従って、「対向するスロット間」となるためには、一のスロットと他のスロットがシャフトを挟んで完全に対向する位置関係となることまでは要しない。
【0007】
本発明の第2の燃料ポンプは、シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備える。コイルは、対向するスロット間に巻回されている。そして、コアの少なくとも一方の端部には、コアからシャフト端部に向かって所定の距離だけ離れた位置でコイルのシャフト端部方向へのさらなる突出を制限するガイドが設けられていることを特徴とする。
この燃料ポンプでは、コアの少なくとも一方の端部において、コアからシャフト端部に向かって所定の距離だけ離れた位置でコイルのシャフト端部方向へのさらなる突出を制限するガイドが設けられている。従って、ガイドが設けられた端部においては、ガイドを越えてコアの軸方向にコイルを積層することができず、コイルはコアの半径方向に積層されることとなる。このため、コイルの巻線数(巻線の占積率)を減少することなく、コイルのコア端部からの突出長さを短くすることができ、これによって燃料ポンプの軸方向長さを短くすることができる。また、この燃料ポンプでも、コア端部から突出するコイル部分を治具によって圧縮する等の操作を行わないため、アーマチュアの各部を傷付ける恐れがない。
ここで、第2の燃料ポンプにおいて、上記「対向するスロット間」とは、複数の対向するスロット間にコイルを順に巻回していったときに、コイルがシャフトの軸方向に積層されるような位置関係となる場合をも含む意味で用いている。従って、「対向するスロット間」となるためには、一のスロットと他のスロットがシャフトを挟んで完全に対向する位置関係となることまでは要しない。
【0008】
本発明の第3の燃料ポンプは、シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備える。コアの少なくとも一方の端部にはガイドが設けられている。ガイドは、シャフト外周面より外側でコイルを案内する案内部と、コアからシャフト端部に向かって所定の距離だけ離れた位置でコイルのシャフト端部方向へのさらなる突出を制限する制限部とを有している。そして、コイルは、対向するスロット間に巻回されていると共に、ガイドが設けられた端部においてガイドに案内されることでシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されていることを特徴とする。
この燃料ポンプでは、コアの少なくとも一方の端部において、ガイドの案内部によってコイルがシャフトを迂回するように巻回され、かつ、ガイドの制限部によってコイルのシャフト端部方向へのさらなる突出が制限される。このため、コイルの巻線数を減少することなく、コイルのコア端部からの突出長さを短くすることができ、これによって燃料ポンプの軸方向長さを短くすることができる。
ここで、第3の燃料ポンプにおいて、上記「対向するスロット間」の意味は、第1の燃料ポンプにおける「対向するスロット間」の意味と同一である。
【0009】
上記の各燃料ポンプにおいては、ガイドが樹脂によって成形されていることが好ましい。ガイドを樹脂で成形することで、コイルとシャフトの絶縁を行うことができる。
また、ガイドを樹脂で成形する場合は、コアに形成された絶縁皮膜とガイドとが一体に成形されていることが好ましい。ガイドと絶縁皮膜をシャフト上に一体に成形することで、部品点数を削減することができ、また、燃料ポンプの組立てを簡略に行うことができる。
さらに、上記の各燃料ポンプにおいては、コアの両方の端部にガイドが設けられていることが好ましい。両方の端部にガイドを設けることで、より燃料ポンプの軸方向長さを短くすることができる。
【0010】
本発明の第4の燃料ポンプは、シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備える。そして、そのコイルは、対向するスロット間に巻回されていると共に、コアの軸方向の少なくとも一方の端部においてシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されていることを特徴としている。
この燃料ポンプでも、コアの軸方向の少なくとも一方の端部においてコイルがシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されるため、コイルの巻線がコアの半径方向に広く積層される。これにより、コイルの巻線数を減少することなく、燃料ポンプの軸方向長さを短くすることができる。
ここで、第4の燃料ポンプにおいて、上記「対向するスロット間」の意味は、第1の燃料ポンプにおける「対向するスロット間」の意味と同一である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。図1は本実施形態の燃料ポンプの一部断面図であり、図2はアーマチュアを断面視した略図であり、図3は図2のIII−III線断面図である。
本実施形態の燃料ポンプは、自動車用の燃料ポンプであり、燃料タンク内に設置され、自動車のエンジンヘ燃料を供給するために用いられる。図1に示すように、燃料ポンプは、ポンプ部10と、そのポンプ部10を駆動するモータ部12とから構成されている。
【0012】
ポンプ部10の構成を説明する。ポンプ部10は、ポンプカバー19とポンプボディ25とインペラ26等から構成されている。ポンプカバー19とポンプボディ25は、例えばアルミのダイカスト成形により形成されている。ポンプカバー19とポンプボディ25が組み合わされることによって、内部にインペラ26を収容するケーシング27が構成される。
【0013】
インペラ26は樹脂成形により略円板状に形成されている。インペラ26には、インペラ外周面26dから内側に所定距離を隔てた位置を周方向に伸びる領域において、凹所26aが形成されている。凹所26aは周方向に繰り返されて凹所26a群を形成している。凹所26a群は、インペラ26の表裏両面に形成されている。表裏の凹所26aの底部同士は連通口26cによって連通している。
インペラ26の中心に形成されている断面D字形の係合孔には、シャフト17の下端部に形成された断面D字形の係合軸部17aが係合している。これにより、インペラ26がシャフト17に対して追従回転可能で、かつ、軸方向に僅かに移動可能に連結されている。インペラ26の外周面26dは凹凸のない円周面となっている。
【0014】
図1に示すように、ポンプカバー19の下面には、インペラ26の上面に形成された凹所26a群に対向する領域において、インペラ回転方向に沿って上流端から下流端まで連続して伸びる溝31が形成されている。溝31の下流端には、ポンプカバー19の上面に至る吐出孔24が形成されている。吐出孔24は、ケーシング27の内部と外部(モータ部12の内部空間12a)を連通させている。
ポンプカバー19の溝31は、下流端近傍において、吐出孔24に近づくにつれて徐々に横断面積が大きくなっており、下流端に向かってインペラ外周面26dの範囲内で半径方向外側に変位している。吐出孔24の終端部は、インペラ26の凹所26a群に対向する領域の半径方向外側に形成されている。
ポンプカバー19の周壁19bの内周面19cは、全周に亘って、インペラ外周面26dに微小なクリアランスを隔てて向い合う。図示の明瞭化のために、このクリアランスは拡大されて表示されている。
【0015】
図1に示すようにポンプボディ25の上面には、インペラ26の下面に形成された凹所26a群に対向する領域内において、インペラ回転方向に沿って、上流端から下流端まで連続して伸びる溝30が形成されている。溝30の上流端には、ポンプボディ25の下面に至る吸入孔32が形成されている。吸入孔32は、ケーシング27の内部と外部を連通させている。
ポンプボディ25は、ポンプカバー19に重ねた状態でハウジング14の下端部にかしめ付け等により固定されている。ポンプボディ25の中心部にスラストベアリング28が固定されている。スラストベアリング28によって、シャフト17のスラスト荷重が受けられる。
【0016】
図1では、図示の明瞭化のために、各所のクリアランスが拡大されて表示されている。ポンプボディ25の溝30は、直接的には吐出孔24に連通していない。ポンプカバー19の周壁19bは、吐出孔24の位置においてもインペラ外周面26dに近接しており、インペラ外周面26dの外側では、溝30と吐出孔24は実質的には連通していない。溝30と吐出孔24はインペラ26の連通口26cによって連通されている。
【0017】
ポンプカバー19の周方向に伸びる溝31と、ポンプボディ25の周方向に伸びる溝30は、インペラ26の回転方向に沿って、吸入孔32から吐出孔24に至るまで伸びている。インペラ26が回転すると、燃料タンク内の燃料は吸入孔32からケーシング27内に吸入される。吸入孔32から吸入された燃料の一部は、溝30に沿って流れる。吸入孔32から吸入された燃料の残部は、インペラ26の凹所26aに入り、凹所26a内で旋回流を発生させながら連通口26cを通過して溝31に入り、溝31に沿って流れる。溝30,31に沿って燃料が流れるうちに燃料は昇圧される。溝31を流れて昇圧された燃料は、吐出孔24からモータ部12に送り出される。溝30を流れて昇圧された燃料は、インペラ26の連通口26cを通過して溝31で昇圧された燃料と合流する。合流後に、吐出孔24からモータ部12に送り出される。モータ部12に送り出された高圧燃料は吐出孔38からポンプ外に送り出される。
【0018】
モータ部12は、ブラシ13付きの直流モータであり、ほぼ円筒形状のハウジング14内に永久磁石で形成されたマグネット15と、マグネット15と同心状に配設されたアーマチュア16を備えている。ブラシ13は整流子18に当接するように設置されている。ブラシ13は、ばねにより常時、整流子18に押付けられている。
シャフト17の下端は、ハウジング14の下端部に取付けられたポンプカバー19に軸受20を介して回転可能に支持されている。シャフト17の上端は、ハウジング14の上端部に取付けられたモータカバー22に軸受23を介して回転可能に支持されている。
上記の構成において、外部電源に接続されたブラシ13に電圧が印加されると、ブラシ13から整流子18を介してコイル29に電流が流れ、アーマチュア16が回転する。アーマチュア16の回転によりインペラ26が回転して、吸入孔32から燃料が吸引される。吸引された燃料は、先述のようにポンプ部10で昇圧され、吐出口38から外部へ吐出される。
【0019】
図2はアーマチュア16の断面を示した図である。アーマチュア16は、磁性板を積層したコア21と、コア21の両端に配設されたガイド34と、コア21のスロット24に巻回されたコイル29と、コイル29に電流を供給する整流子18と、コア21、ガイド34及び整流子18を支持しているシャフト17により構成されている。コア21はマグネット15と対向するように配設されている。
【0020】
図3は図2のIII−III線断面図である。図3に示すように、ガイド34は、シャフト17と別体で成形された略円筒状の部材であり、シャフト17より大きな外径を有する。ガイド34の中心には貫通孔34aが形成され、その貫通孔34aにシャフト17が挿し込まれている。なお、ガイド34は、シャフト17に絶縁被膜を施す際に、絶縁被膜と一体として成形するようにしてもよい。
コイル29は、シャフト17を挟んで対向するスロット24間に巻回されている(すなわち、4スロットに跨って巻回されている。)。図から明らかなように、コイル29は、シャフト17の周囲近傍ではガイド34の外周面に当接する。このため、コイル29は、ガイド34に案内されて、シャフト17の周囲近傍(ガイド34によって設定される領域)を迂回して巻回されている。
なお、図2に示すように、コア21の下端部にもガイド34が配されている。このため、コア21の下端部にコイル29を巻回すときにも、コイル29はガイド34に案内され、シャフト17の周囲近傍を迂回するように巻回されている。
【0021】
図4には、コア21に巻回されたコイル29(詳細には、コイル29を構成する巻線29a)の通過経路Sと、その巻線29aに作用する張力Tとが図示されている。図12には、従来技術に係る燃料ポンプのコア111に巻回されたコイル119(巻線119a)の通過経路S’と、その巻線119aに作用する張力T’とが図示されている。
図4に示すように、巻線29aは、ガイド34に案内されるため、シャフト17近傍を通過することなく、シャフト17から外側に膨らんだ通過経路Sを有する。このため、巻線29aに作用する張力Tは、コア21の周方向の成分が大きくなる。これにより、巻線29aは、スロット24の中心24aから壁面24bに沿ってコア21の半径方向に積層される。巻線29aがコア21の半径方向に積層されると、巻線29aはコア21の端面の広範囲にわたって巻回される。このため、コイル29の巻線数の増加に対するコイル29の突出長さ(コイル29のコア端面からの突出長さ)の増加率が低く抑えられる。
【0022】
一方、図12に示すように、シャフト107にガイドが設けられていないと、巻線119aはシャフト107の近傍を通過する(すなわち、巻線119aの通過経路は図中のS’となる)。このため、巻線119aに作用する張力T’は、コア21の中心方向の成分が大きくなる。これにより、巻線119aはスロット114の中心114aよりに積層される。巻線119aがスロット114の中心114aよりに積層されると、巻線119aがシャフト107の周囲近傍に集中して巻回される(すなわち、巻線119aがシャフト107の軸方向に積層される)。このため、コイル119の巻線数の増加に対するコイル119の突出長さの増加率が大きくなる。
【0023】
上述した説明から明らかなように、本実施形態の燃料ポンプでは、シャフト17に配したガイド34を利用してコイル29を巻回することで、コイル29の巻線数の増加に対するコア端面からのコイル突出長さの増加が低く抑えられる。このため、コイル29の巻線数(巻線の占積率)を下げることなく、アーマチュア16の軸方向長さを短縮することができる。これによって、燃料ポンプの軸方向長さを短縮することができ、燃料ポンプの小型化・軽量化を図ることができる。
また、コイル29の巻線数を少なくしなくてもよいため、燃料ポンプのモータ効率も高いままで維持することができる。すなわち、シャフト17に発生する回転トルクは、コイル29に流れる電流(アンペア)×巻線数で決まる。このため、コイル29の巻線数を同一巻線数とできれば、モータ部12で発生する回転トルクを同一とすることができる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、シャフト17にリング状のガイド34を外嵌して、そのガイド34によってコイル29を案内するようにしたが、本発明はこのような形態に限られない。例えば、図5に示すように、コア21の両端面(21a,21b)においてシャフト17の周囲に壁36を立設し、この壁36によってコイル29を案内するようにしてもよい。コイル29の案内を壁36で行うことで、アーマチュア46の軽量化を図ることができる。また、壁36は、シャフト17の全周(すなわちシャフト17の外側に円筒状)に形成してもよいし、シャフト17の周方向の適宜の位置に部分的に形成するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、シャフトに固定されたガイドや壁等によってコイルを案内するようにしたが、シャフトにガイド等を設けることなく本発明を実施することもできる。すなわち、アーマチュアのコアにコイルを巻回すときに冶具を用い、コイルを巻回した後に冶具を取外すような形態で実施することができる。冶具には円筒形状の部材を用いることができ、その内径はシャフトの外径より大きく、その外径は所望の径とすることができる。コイル巻回時は、この冶具の貫通孔内にシャフトを通し、冶具60の一端をコア端面に当接させ、この状態でコイルを巻回す。そして、コイルの巻回しが終了した後、冶具を取外せばよい。なお、冶具を取外した後は、コイルが変形しないように、コイルとコアを樹脂等で一体化することが好ましい。
【0025】
(第2実施形態) 次に、本発明の第2実施形態について説明する。図6,7は第2実施形態に係るアーマチュアの側面図であって、図6はコイル巻回前のアーマチュアを示し、図7はコイル巻回後のアーマチュアを示している。
図6,7に示すように、第2実施形態に係るアーマチュア50も、第1実施形態に係るアーマチュア16と同様に、磁性板を積層したコア56と、コア56のスロットに巻回されたコイル60と、コイル60に電流を供給する整流子54と、コア56及び整流子54を支持するシャフト52を備えている。ただし、第2実施形態のアーマチュア50は、シャフト52の反整流子側の端部52bにおいて、コア56の端面56bから所定の距離だけ離れた位置に円盤状のガイド58が設けられている点で、第1実施形態のアーマチュア16と異なる。
図6に示すように、ガイド58は、樹脂によって成形された円盤状の部材であり、シャフト52に取付けられている。ガイド58を樹脂によって成形することで、ガイド58はコイル60とシャフト52を絶縁する絶縁被膜としても機能する。ガイド58の肉厚は、その内周58a側(すなわち、シャフト52の近傍)で厚肉となっており、その外周58b側で薄肉となっている。ガイド58がシャフト52に取付けられると、コア56の端面56bとガイド58のガイド面(コイル60が当接する面)が対向する。コア56の端面56bからガイド58のガイド面までの距離は、コイル60の巻線数に応じて適宜設定することができる。なお、ガイド58は、コア56の絶縁被膜と一体に成形することができる。ガイド58とコア56の絶縁被膜を一体に成形すると、部品点数を削減することができる。
上記構成において、コア56の対向するスロット間にコイル60を巻回すると、ガイド58が設けられた端面56b側においても、まず、コイル60はシャフト52の近傍を巻回されて、コア56の軸方向に積層される。コイル60がコア56の軸方向に積層され、ガイド58に当接すると、それ以上はコイル60をコア56の軸方向に積層できなくなる。このため、コイル60がガイド58に当接した後は、コイル60はコア56の径方向に積層されることとなる。なお、本実施形態では、ガイド58の内周58a側を厚肉化することで、コイル60が径方向に多く積層され、これによって、コイル60をコア56にバランスよく巻回している。
上述した説明から明らかなように、第2実施形態においても、コイル60はコア56の径方向に広く積層されることとなるため、コイル60の巻線数を減少することなく、コイル60のコア端面56bから突出する突出長さを短縮することができる。これにより、モータ効率を低下させることなく、燃料ポンプの軸方向長さを短縮することができる。
【0026】
なお、上述した第2実施形態では、シャフト56の反整流子側の端部にのみガイド58を設けたが、このようなガイドをシャフトの整流子側の端部に設けるようにしてもよい。また、ガイドの形状は円盤状に限らず、コイルの軸方向への突出を制限できる形状であれば、どのような形状であってもよい。例えば、複数の棒状の部材をシャフトから放射状に配したガイドを用いて、周方向の適宜の位置でコイルの軸方向への突出を制限するようにしてもよい。また、上述した第2実施形態において、ガイド58を利用してコア56にコイル60を巻回した後、ガイド58を除去するようにしてもよい。この場合、ガイド58の除去後にコイル60が変形しないように、コイル60とコア56を樹脂で一体化することが好ましい。
さらに、上述した第1実施形態のガイド34の機能と第2実施形態のガイド58の機能の両者を奏するガイドを用いることもできる。すなわち、図8に示すように、コア80の端部に配されるガイド72は、シャフト70に嵌合するリング状部76と、リング状部76の下端に形成された円板部74で構成される。リング状部76によって、コイル78はシャフト70の近傍を迂回して巻回され、一方、円板部74によって、コイル78は円板部74を超えて軸方向に積層されることが制限される。このような形態によると、コイル78のコア80の端面から突出する長さをより短くすることができる。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の燃料ポンプの一部断面図である。
【図2】アーマチュアを断面視した略図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】コイルの巻線の通過経路と、その巻線に作用する張力とを示す図である。
【図5】図1に示す実施形態の変形例を示す図である。
【図6】第2実施形態に係るアーマチュアの側面図(コイルの巻回前)
【図7】第2実施形態に係るアーマチュアの側面図(コイルの巻回後)
【図8】本発明の他の実施形態に係るアーマチュアの構造を説明するための図。
【図9】従来例の燃料ポンプの一部断面図である。
【図10】図9に示す燃料ポンプのアーマチュアを断面視した略図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】従来例の燃料ポンプにおけるコイルの巻線の通過経路と、その巻線に作用する張力とを示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10:ポンプ部
12:モータ部
15:マグネット
16:アーマチュア
17:シャフト
18:整流子
19:ポンプカバー
20:軸受け(ベアリング)
21:コア
23:軸受け(ベアリング)
24:スロット
29:コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、
そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備えた燃料ポンプであり、
そのコアの少なくとも一方の端部には、シャフト外周面より外側でコイルを案内するガイドが設けられており、
そのコイルは、対向するスロット間に巻回されていると共に、ガイドが設けられた端部においてガイドに案内されることでシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されていることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項2】
シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、
そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備えた燃料ポンプであり、
そのコイルは、対向するスロット間に巻回されており、
そのコアの少なくとも一方の端部には、コアからシャフト端部に向かって所定の距離だけ離れた位置でコイルのシャフト端部方向へのさらなる突出を制限するガイドが設けられていることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項3】
シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、
そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備えた燃料ポンプであり、
そのコアの少なくとも一方の端部にはガイドが設けられており、
そのガイドは、シャフト外周面より外側でコイルを案内する案内部と、コアからシャフト端部に向かって所定の距離だけ離れた位置でコイルのシャフト端部方向へのさらなる突出を制限する制限部とを有しており、
そのコイルは、対向するスロット間に巻回されていると共に、ガイドが設けられた端部においてガイドに案内されることでシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されていることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項4】
前記ガイドが樹脂によって成形されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
前記コアには絶縁皮膜が形成されており、その絶縁皮膜とガイドとが一体に成形されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料ポンプ。
【請求項6】
コアの両方の端部にガイドが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料ポンプ。
【請求項7】
シャフトと、そのシャフトに固定されているコアと、そのコアに巻回されているコイルとを有するアーマチュアと、
そのシャフトによって回転駆動されるポンプ部と、を備えた燃料ポンプであり、
そのコイルは、対向するスロット間に巻回されていると共に、コアの軸方向の少なくとも一方の端部においてシャフトの周囲近傍を迂回して巻回されていることを特徴とする燃料ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−54993(P2006−54993A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41863(P2005−41863)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】