説明

燃料供給システム

【課題】内燃機関に対して供給される高オクタン価燃料の選択肢の幅拡張を図りうるシステムを提供する。
【解決手段】第1貯蔵器10から供給される第1燃料が、改質器40により改質されることによって生成された第2燃料が第2貯蔵器20に貯蔵される。改質器40は、第1改質部41およびその下流側に連続的に配置されている第2改質部42を備えている。第1改質部41により単環の芳香族炭化水素から単環の芳香族カルボン酸が生成される。第2改質部42により単環の芳香族カルボン酸から単環フェノール類が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に対して燃料を供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン等の原料の改質により高オクタン価燃料を生成するさまざまな構成が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−329013号公報
【特許文献2】特開2001−050070号公報
【特許文献3】特開2007−231937号公報
【特許文献4】特開2008−240624号公報
【特許文献5】特開2008−267268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、資源の有効活用等の観点から、内燃機関の高オクタン価燃料の選択肢の幅のさらなる拡張が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、内燃機関に対して供給される高オクタン価燃料の選択肢の幅拡張を図りうるシステムを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料供給システムは、単環の芳香族炭化水素を含有する原料を貯蔵するように構成されている第1貯蔵器と、上流側から水および空気が供給され、前記第1貯蔵器から供給される前記原料を改質することにより単環のフェノール類を含有する、内燃機関に対して供給される燃料を生成するように構成されている改質器と、前記改質器において生成された前記燃料を貯蔵するように構成されている第2貯蔵器とを備え、前記改質器は、前記原料に含有されている単環の芳香族炭化水素と、前記空気中の酸素とを反応させることにより単環の芳香族カルボン酸を生成するように構成されている第1改質部と、前記第1改質部の下流側に連続し、前記第1改質部において生成された単環の芳香族カルボン酸と、前記空気中の酸素とを反応させることにより単環のフェノール類を生成するように構成されている第2改質部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
前記内燃機関からの排気を用いて前記改質器の温度を制御するように構成されている温度制御装置を備えていることが好ましい。
【0008】
前記第2貯蔵器から前記内燃機関に対して前記燃料が供給される燃料流出経路と、前記改質器から前記第2貯蔵器に対して前記燃料が供給される燃料流入経路とを備え、前記第2貯蔵器、前記燃料流出経路および前記燃料流入経路のうち少なくとも1つの温度が、前記内燃機関またはその排気の熱により制御されるように構成されていることが好ましい。
【0009】
前記第2貯蔵器が前記燃料に加えて、前記改質器に対してその上流側から供給される水を貯蔵するように構成されていてもよい。
【0010】
前記第1貯蔵器が前記原料を前記内燃機関に対して供給される第1燃料として貯蔵するように構成され、前記第2貯蔵器が前記燃料を前記第1燃料とは異なる第2燃料として貯蔵するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃料供給システムによれば、フェノール(融点40.5℃)、o−クレゾール(融点30℃)、m−クレゾール(融点11℃)またはp−クレゾール(融点35.5℃)等の単環のフェノール類を含有する第2燃料が改質器40において生成される。
【0012】
単環のフェノール類は融点が比較的高く、10〜20℃程度の常温では固体状態にあるものが含まれる。しかるに、第2貯蔵器20および第2燃料が流れる改質後燃料経路24が内燃機関1もしくはその排気の熱またはヒータによる加熱されるように配管される。その結果、第2燃料に含まれる単環のフェノール類がその融点よりも高温に維持されることにより、内燃機関1に対して高オクタン価燃料として供給されうる。
【0013】
また、第1改質部41において生成された単環の芳香族カルボン酸が、当該だ1改質部41の下流側からただちに第2改質部42に対して供給されるように第1改質部41および第2改質部42が連続的に設けられている。このため、改質器40、ひいては燃料供給システム全体としてのコンパクト化が図られ、車両等における搭載スペースが小さく済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の燃料供給システムの構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(燃料供給システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての燃料供給システムは、内燃機関1に対して燃料を供給するように構成されている。燃料供給システムは、内燃機関1を動力源として駆動される車両などに搭載されている。燃料供給システムは、第1貯蔵器10と、第2貯蔵器20と、第1燃料を第2燃料に改質するように構成されている改質器40とを備えている。
【0016】
第1貯蔵器10は、第1燃料(原料)を貯蔵するように構成されている。第1燃料は、たとえばガソリンスタンドから供給されたガソリンであって、トルエン(C65CH3)、キシレン(C64(CH32)またはエチルベンゼン(C6525)等、一または複数種類の単環の芳香族炭化水素を含有する。
【0017】
第2貯蔵器20は、第2燃料(燃料)および水を貯蔵するように構成されている。第2燃料は、フェノール(C65OH)またはクレゾール(C78O)等、一または複数種類の単環のフェノール類を含有する。
【0018】
改質器40は、第1改質部41と、第1改質部41の下流側に連続する第2改質部42とを備えている。
【0019】
第1改質部41は、たとえば酸化バナジウムまたは酸化チタン等の遷移金属の酸化物等、第1の触媒により構成され、単環の芳香族炭化水素と、改質器40に対してその上流側から供給される空気中の酸素とを反応させることにより単環の芳香族カルボン酸を生成するように構成されている。
【0020】
第2改質部42は、たとえば酸化ニッケルまたは酸化鉄等の遷移金属の酸化物等、第2の触媒により構成され、第1改質部41において生成された単環の芳香族カルボン酸と、空気中の酸素とを反応させることにより単環のフェノール類を生成するように構成されている。
【0021】
第1貯蔵器10の第1燃料を内燃機関1に対して供給するための第1燃料経路12が設けられている。第2貯蔵器20の第2燃料を内燃機関1に対して供給するための第2燃料経路22が設けられている。第1燃料および第2燃料が、その混合比が調節されながら、あるいは、選択的に切り替えられた上で内燃機関1に対して供給されるほか、第2燃料のみが燃料として内燃機関1に供給されてもよい。
【0022】
内燃機関1に対してシステム外部の空気を供給するための給気経路31が設けられている。給気経路31にはバルブ312が設けられている。内燃機関1の排気をシステム外部に排出するための排気経路32が設けられている。排気経路32には排気浄化用触媒324が設けられている。
【0023】
改質器40に対してシステム外部の空気を供給するための第1改質用空気経路33が設けられている。第1改質用空気経路33にはポンプ331と、流量調節バルブ332とが上流側から順に設けられている。排気経路32から触媒324の下流側において分岐し、改質器40に対して排気の一部(空気)を供給するための第2改質用空気経路34が設けられている。第2改質用空気経路34には流量調節バルブ342が設けられている。
【0024】
排気経路32から触媒324の下流側において分岐し、さらに下流側において排気経路32に合流するとともに、途中で排気の熱を改質器40に対して伝達するための排気バイパス経路35が設けられている。
【0025】
第1貯蔵器10に貯蔵されている第1燃料を改質器40の上流側に供給するための改質前燃料経路14が設けられている。改質前燃料経路14にはポンプ141およびバルブ142が設けられている。改質前燃料経路14は熱交換器146を通るように構成されている。
【0026】
第2貯蔵器20に貯蔵されている水を改質器40の上流側に対して供給するための水経路23が設けられている。水経路にはポンプ231が設けられている。
【0027】
改質器40により生成された第2燃料を第2貯蔵器20に供給するための改質後燃料経路24が設けられている。改質後燃料経路24は熱交換器146を通るように構成されている。改質後燃料経路24には熱交換器146の下流側において、第2燃料と、二酸化炭素等を含む空気とを分離するための気液分離器246が設けられている。気液分離機246により分離された空気を給気経路31に流入させるための改質後排気経路36が設けられている。
【0028】
単環のフェノール類は腐食性があるため、第2貯蔵器20、第2燃料経路22および改質後燃料経路24のそれぞれは耐腐食性部材(たとえばフッ素系樹脂がコーティングされた部材)により構成されている。
【0029】
また、単環のフェノール類は、10〜20℃程度の常温では固体状態にあるものも含まれるため、第2貯蔵器20、第2燃料経路22および改質後燃料経路24のそれぞれが、その少なくとも一部において内燃機関1もしくはその排気、またはヒータ(図示略)の熱によって当該フェノール類の融点よりも高温に維持されるように構成されている。
【0030】
(燃料供給システムの機能)
前記構成の燃料供給システムによれば、内燃機関1の要求負荷が比較的低い場合、内燃機関1に対して第1貯蔵器10から第1燃料経路12を通じて第1燃料が供給されるとともに、給気経路31を通じて燃焼用空気が供給される。その一方、内燃機関1の要求負荷が比較的高い場合、内燃機関1に対して第2貯蔵器20から第2燃料経路22を通じて第2燃料が供給されるとともに、給気経路31を通じて燃焼用空気が供給される。
【0031】
内燃機関1の排気は排気経路32を通じてシステム外部に排出される。排気の一部が排気バイパス経路35を通ることにより、当該排気によって改質器40の温度が制御され(加熱され)、改質器40を構成する触媒の活性化が図られている。その結果、改質器40から水および空気とともに改質後燃料経路24を流れる第2燃料の温度も、当該第2燃料に含まれる単環フェノール類の融点より高温に制御される。
【0032】
バルブ142が開かれ、かつ、ポンプ141が動作することにより、第1貯蔵器10の第1燃料が改質前燃料経路14を通じて改質器14の上流側に供給される。第1燃料は熱交換器146において、改質後燃料経路24を流れる第2燃料の熱により加熱される。また、ポンプ231が動作することにより、第2貯蔵器20の底部に貯蔵されている水が水経路23を通じて改質器14の上流側に供給される。
【0033】
さらに、改質器40に第1燃料の改質に必要な酸素を含む空気が供給される。具体的には、内燃機関1のストイキ燃焼時には、バルブ332が開かれる一方、バルブ342が閉じられ、ポンプ331により第1改質用空気経路33を通じてシステム外部の空気が改質器40に供給される。これに対して、内燃機関1のリーン燃焼時には、バルブ342が開かれる一方、バルブ332が閉じられ、第2改質用空気経路34を通じて排気経路32を流れる排気の一部が改質器40に供給される。
【0034】
第1改質部41において、たとえば、第1燃料に含まれるトルエンまたはエチルベンゼンと、空気中の酸素とが反応し、安息香酸および水が生成される。そのほか、第1燃料に含まれるキシレンと、空気中の酸素とが反応し、トルイル酸および水が生成されてもよい。
【0035】
第2改質部42において、たとえば、第1改質部41において生成された安息香酸および酸素が反応してフェノールおよび二酸化炭素が生成される。そのほか、第1改質部41において生成されたトルイル酸および酸素が反応してクレゾール(o−,m−およびp−クレゾールのうち少なくとも1つ)が生成されてもよい。
【0036】
改質器40により生成された第2燃料、水、二酸化炭素および窒素等の混合気は、改質後燃料経路24を流れる過程で、熱交換器146において冷却される。これにより、第2燃料および水は凝縮する。その後、気液分離器246により、凝縮した第2燃料および水と、二酸化炭素、窒素および余剰の酸素等の空気とが分離される。分離された空気は改質後排気経路36を通じて給気経路31に導入される。また、第2燃料および水は気液分離器246の下流側の改質後燃料経路24を通じて、第2貯蔵器20に導入され、貯蔵される。
【符号の説明】
【0037】
1‥内燃機関、10‥第1貯蔵器、20‥第2貯蔵器、40‥改質器、41‥第1改質部、42‥第2改質部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単環の芳香族炭化水素を含有する原料を貯蔵するように構成されている第1貯蔵器と、
上流側から水および空気が供給され、前記第1貯蔵器から供給される前記原料を改質することにより単環のフェノール類を含有する、内燃機関に対して供給される燃料を生成するように構成されている改質器と、
前記改質器において生成された前記燃料を貯蔵するように構成されている第2貯蔵器とを備え、
前記改質器は、前記原料に含有されている単環の芳香族炭化水素と、前記空気中の酸素とを反応させることにより単環の芳香族カルボン酸を生成するように構成されている第1改質部と、前記第1改質部の下流側に連続し、前記第1改質部において生成された単環の芳香族カルボン酸と、前記空気中の酸素とを反応させることにより単環のフェノール類を生成するように構成されている第2改質部とを備えていることを特徴とする燃料供給システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料供給システムにおいて、
前記内燃機関からの排気を用いて前記改質器の温度を制御するように構成されている温度制御装置を備えていることを特徴とする燃料供給システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料供給システムにおいて、
前記第2貯蔵器から前記内燃機関に対して前記燃料が供給される燃料流出経路と、前記改質器から前記第2貯蔵器に対して前記燃料が供給される燃料流入経路とを備え、前記第2貯蔵器、前記燃料流出経路および前記燃料流入経路のうち少なくとも1つの温度が、前記内燃機関またはその排気の熱により制御されるように構成されていることを特徴とする燃料供給システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の燃料供給システムにおいて、
前記第2貯蔵器が前記燃料に加えて、前記改質器に対してその上流側から供給される水を貯蔵するように構成されていることを特徴とする燃料供給システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の燃料供給システムにおいて、
前記第1貯蔵器が前記原料を前記内燃機関に対して供給される第1燃料として貯蔵するように構成され、前記第2貯蔵器が前記燃料を前記第1燃料とは異なる第2燃料として貯蔵するように構成されていることを特徴とする燃料供給システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−184749(P2012−184749A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49879(P2011−49879)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】