説明

燃料噴射ポンプの潤滑構造

【課題】燃料噴射ポンプの潤滑構造において、外部配管を行うことによる潤滑油の外部漏れ等の品質問題を未然に防止し、部品点数を削減して省コスト化を図るとともに、組立性を向上する。
【解決手段】エンジンのクランク軸の回転をシリンダブロック2に取り付けられるギヤケース11内に収納されるアイドル機構を介して燃料噴射ポンプ8のポンプ駆動軸28に伝達することにより燃料噴射ポンプ8を駆動する構成において、前記アイドル機構を軸支するアイドル軸26の軸心に潤滑油路40を形成し、この潤滑油路40の一端をシリンダブロック2に形成される潤滑油メインギャラリ31と連通するとともに他端に潤滑油供給パイプ41を接続し、この潤滑油供給パイプ41の他端をポンプ駆動軸28の近傍に延設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに備えられる燃料噴射ポンプへ潤滑油を供給するための潤滑構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンにおいては、燃焼室内に噴射される燃料を適当なタイミングで適当な量をシリンダ内に送り込むための燃料噴射ポンプが備えられている。この燃料噴射ポンプの潤滑は、従来はエンジン本体(シリンダブロック)から外部配管を通して潤滑油を供給し、この潤滑油によって潤滑を行うようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
すなわち、燃料噴射ポンプにおいて駆動軸(カム軸)やプランジャ等を収容するハウジング(ポンプケース)には外部配管であるオイル供給管がハウジング内と連通して接続され、このオイル供給管の上流側にエンジンに連動するオイルポンプ(潤滑油ポンプ)が接続される。そして、このオイルポンプによって潤滑油がエンジン本体から吸入されるとともに加圧され、この加圧された潤滑油がオイル供給管を通して燃料噴射ポンプのハウジング内に注油される構造であった。
【特許文献1】実開平5−6113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような従来構造においては、エンジン本体からの潤滑油を燃料噴射ポンプに供給するために外部配管を用いるため、次のような不具合がある。すなわち、外部配管を構成するためには、管路を構成する潤滑油パイプ、外部配管の出入口において取り付けられる管継手ボルト、外部配管の出入口や各接続部をシールするためのパッキン等の部品が必要であるため、部品点数が多くなりコスト高となる。また、外部配管を行うことによる潤滑油の外部漏れ等の品質問題が発生することも予想される。さらに、こうした外部配管は、構造上エンジンの完成間近で組み付けるため、他の装置との位置関係などから組付け作業に際し困難をともなうこととなる。
【0004】
そこで、本発明は、外部配管を行うことによる潤滑油の外部漏れ等の品質問題を未然に防止し、部品点数を削減して省コスト化を図るとともに、組立性を向上させた燃料噴射ポンプの潤滑構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、エンジンのクランク軸の回転をシリンダブロックに取り付けられるギヤケース内に収納されるアイドル機構を介して燃料噴射ポンプの駆動軸に伝達することにより燃料噴射ポンプを駆動する構成において、前記アイドル機構のアイドル軸の軸心に潤滑油路を形成し、この潤滑油路の一端をシリンダブロックに形成される潤滑油メインギャラリと連通するとともに他端に潤滑油供給パイプを接続し、この潤滑油供給パイプの他端を前記燃料噴射ポンプの駆動軸の近傍に延設したものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載の燃料噴射ポンプの潤滑構造において、前記潤滑油供給パイプを、前記ギヤケースを覆うギヤケースカバー内に収容したものである。
【0008】
請求項3においては、請求項1記載の燃料噴射ポンプの潤滑構造において、前記潤滑油供給パイプの一端に噴射機構を設けたものである。
【0009】
請求項4においては、エンジンに連動して駆動する潤滑油ポンプにより供給される潤滑油によって燃料噴射ポンプの潤滑を行う構成において、前記潤滑油ポンプに付設されるリリーフバルブに潤滑油供給パイプを接続し、この潤滑油供給パイプの他端部に絞り部を形成するとともに、この絞り部の先端を前記燃料噴射ポンプの駆動軸近傍に延設したものである。
【0010】
請求項5においては、請求項4記載の燃料噴射ポンプの潤滑構造において、前記燃料噴射ポンプの駆動軸に、軸端部に開口部を有する潤滑油路を形成し、前記開口部に前記潤滑油供給パイプの注油口が臨むように前記潤滑油供給パイプを配管したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、従来のように外部配管を行う場合と比較して、配管を短くすることができ、部品点数を削減して省コスト化を図ることができる。また、シリンダブロック内に形成される潤滑油メインギャラリからアイドル軸内の潤滑油路に潤滑油が導かれるという既存の構成を利用していることからも、部品点数の削減及び省コスト化を図ることができる。
【0013】
請求項2においては、外部配管が不要となり、潤滑油の外部漏れによってエンジンの周囲を汚す等の品質問題を未然に防止することができる。また、潤滑油供給パイプをギヤケースに仕組んだ状態での組付けが可能となり、外部配管を行う場合と比較して組立性を向上することができる。
【0014】
請求項3においては、潤滑油供給パイプによって潤滑油を噴射させて飛沫による注油を行うことができるので、燃料噴射ポンプ内を均一に潤滑することができる。
【0015】
請求項4においては、従来のように外部配管を行う場合と比較して、配管を短くすることができ、部品点数を削減して省コスト化を図ることができる。また、潤滑油ポンプに付設されるリリーフバルブという既存の構成を利用していることからも、部品点数の削減及び省コスト化を図ることができる。
また、外部配管が不要となり、潤滑油の外部漏れによってエンジンの周囲を汚す等の品質問題を未然に防止することができる。また、潤滑油供給パイプをギヤケースに仕組んだ状態での組付けが可能となるので、外部配管を行う場合と比較して組立性を向上することができる。
さらに、リリーフバルブにより所定の吐出圧を有する潤滑油が絞り部を介して噴射されて飛沫による注油を行うことができるので、潤滑油を勢いよく吐出できるとともに燃料噴射ポンプ内を均一に潤滑することができる。
【0016】
請求項5においては、潤滑油供給パイプを配管する際に継手などの部品を省略することができるとともに、燃料噴射ポンプにおいて摩擦が大きいポンプ駆動軸及びその近傍を効率的に潤滑することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るエンジンの前方斜視図、図2は同じく後方斜視図、図3はエンジンの内部構造を示す正面図、図4は燃料噴射ポンプの潤滑構造の一実施形態を示す正面図、図5は同じく平面一部断面図、図6は燃料噴射ポンプの潤滑構造の別実施形態を示す正面図、図7は潤滑油の注油部を示す図である。なお、以下においては、図1に示す矢印Aの方向を「前」、その反対側を「後」として説明する。
【0018】
まず、本発明を適用するエンジンの一例としての、作業機などに搭載されるディーゼルエンジン(以下「エンジン1」とする)の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
エンジン1のシリンダブロック2の上部にはシリンダヘッド3が取り付けられ、このシリンダヘッド3の上面はボンネット4で被装されている。また、シリンダブロック2の下部にはオイルパン5が取り付けられており、このオイルパン5内にはエンジンオイル(潤滑油)が貯溜されている。この潤滑油は、潤滑油ポンプ22(図3参照)により吸入され、潤滑油フィルタ20を介してエンジン1内の各潤滑箇所へ供給される。
【0019】
シリンダヘッド3の一側面には吸気マニホールド6が設けられており、その反対側面には排気マニホールド7が設けられている。また、吸気マニホールド6の下方におけるシリンダブロック2の一側には、シリンダブロック2内に形成される燃焼室内へ噴射される燃料を送り込むための燃料噴射ポンプ8が付設されている。この燃料噴射ポンプ8には、その燃料噴射量を調整するためのガバナが付設されており、このガバナにおける調整はガバナレバー9が回動されることにより行われる。また、燃料噴射ポンプ8の下部には、エンジン1内へと燃料を供給する燃料フィードポンプ10が設けられている。この燃料フィードポンプ10により、図示せぬ燃料タンク内の燃料が吸入されるとともに送出され、エンジン1の燃料供給路に設けられる燃料フィルタ19を介して燃料噴射ポンプ8へと導入される。
【0020】
シリンダブロック2内にはクランク軸23(図3参照)が回転自在に支持されており、シリンダブロック2の前面には、このクランク軸23の動力を前記燃料噴射ポンプ8等へ伝達するためのギヤ類が収納されるギヤケース11が取り付けられており、ギヤケースカバー12により覆われている。このギヤケース11の前側には冷却ファン13が取り付けられており、この冷却ファン13は、前記クランク軸23の動力がギヤケース11の前面に設けられ前記クランク軸23によって駆動されるVプーリ14及びVベルト15を介して伝達されて回転する。このクランク軸23の動力は、シリンダブロック2の前側に設けられるオルタネータ16にも同じくVプーリ14及びVベルト15を介して伝達される。また、シリンダブロック2の前面には、エンジン冷却水を循環させるための冷却水ポンプ21が冷却ファン13と同軸に設けられている。
一方、シリンダブロック2の後面には、前記クランクシャフトの後端部に取り付けられるフライホイール17を覆うフライホイールハウジング18が固設されている。
【0021】
ところで、前述したように、燃料噴射ポンプ8はクランク軸23の回転が伝達されて駆動されるが、クランク軸23の回転は、図3に示すように、ギヤケース11内に収納されるアイドル機構となるアイドルギヤ24を介して燃料噴射ポンプ8の駆動軸(以下、単に「ポンプ駆動軸」とする)28に伝達される。具体的には、クランク軸23の前端部にはクランクギヤ25が固設されており、このクランクギヤ25は前記アイドルギヤ24に噛合している。アイドルギヤ24は、ギヤケース11にて支承されるアイドル軸26に軸支されている。そして、このアイドルギヤ24は、前記ポンプ駆動軸28に固設されている燃料噴射ポンプ駆動ギヤ27に噛合しており、クランク軸23の動力を燃料噴射ポンプ8へと伝達する。なお、本実施例では動力伝達を歯車機構により伝達しているが、チェーンやベルト等により伝達することも可能である。よって、チェーンにより伝達する場合にはアイドルギヤはアイドルスプロケットとなり、ベルトにより伝達する場合にはアイドルギヤはアイドルプーリとなる。
【0022】
また、前述したように、潤滑油ポンプ22により吸入される潤滑油は、具体的には次のようにして供給される。すなわち、図3に示すように、潤滑油ポンプ22の駆動軸には潤滑油ポンプ駆動ギヤ22aが固設されており、この潤滑油ポンプ駆動ギヤ22aが前記クランクギヤ25に噛合している。そして、エンジン1の始動にともない駆動するクランク軸23の動力がクランクギヤ25及び潤滑油ポンプ駆動ギヤ22aを介して潤滑油ポンプ22に伝達され、潤滑油ポンプ22が駆動する。これにより、オイルパン5内に貯溜されている潤滑油が、ストレーナ29を介して潤滑油供給管30を通じて潤滑油ポンプ22により吸入される。潤滑油ポンプ22により吸入された潤滑油は、図示せぬ潤滑油経路を介してシリンダブロック2内に形成される潤滑油メインギャラリ(以下、単に「メインギャラリ」とする)31に送出されてエンジン1内の各潤滑箇所へ導かれる。
以上のような構成のエンジン1における燃料噴射ポンプ8の潤滑構造について、以下において説明する。
【0023】
まず、燃料噴射ポンプ8の潤滑構造の一実施形態について図4及び図5を用いて説明する。
本実施形態においては、前述したアイドルギヤ24を軸支するアイドル軸26の軸心に潤滑油路40を形成し、この潤滑油路40の一端をシリンダブロック2に形成されるメインギャラリ31と連通するとともに他端に潤滑油供給パイプ41を接続し、この潤滑油供給パイプ41の他端を燃料噴射ポンプ8のポンプ駆動軸28の近傍に延設している。
【0024】
すなわち、前記アイドルギヤ24への潤滑油の注油を行うためにアイドル軸26内にて軸心に対して放射方向に形成されている注油孔26aにメインギャラリ31からの潤滑油を導く潤滑油路を、アイドル軸26の軸心方向に貫通することによって潤滑油路40とする。そして、一端(後端)が潤滑油メインギャラリ31と連通しているこの潤滑油路40の他端(前端)に潤滑油供給パイプ41を接続する。
【0025】
このように、アイドル軸26内の潤滑油路40に接続されて潤滑油路40内と連通した潤滑油供給パイプ41の他端側は、ギヤケース11内を介して燃料噴射ポンプ8をギヤケース11に取り付ける際に用いる取付板32をポンプ駆動軸28方向(図4における紙面奥側)に向けて貫通し、燃料噴射ポンプ8のポンプケース8a内に臨んで開口する。この際、潤滑油供給パイプ41の先端の注油口41aはポンプ駆動軸28の近傍に延設される。つまり、潤滑油ポンプ22からの潤滑油を導くメインギャラリ31からアイドル軸26内の潤滑油路40へと潤滑油が流入し、この潤滑油路40内を通過する潤滑油は、その一部を注油孔26aから分岐されアイドルギヤ24の潤滑を行うとともに、潤滑油路40に接続される潤滑油供給パイプ41内へと導入される。そして、潤滑油供給パイプ41内に流入した潤滑油は、所定の配管経路を通ってポンプケース8a内へと導かれ、ポンプケース8a内にてポンプ駆動軸28近傍に開口する注油口41aから吐出され、ポンプ駆動軸28やカム等の燃料噴射ポンプ8における各潤滑個所を潤滑する。
【0026】
このような構成とすることにより、従来のように外部配管を行う場合と比較して、配管を短くすることができ、部品点数を削減して省コスト化を図ることができる。また、シリンダブロック2内に形成されるメインギャラリ31からアイドル軸26内の潤滑油路に潤滑油が導かれるという既存の構成を利用していることからも、部品点数の削減及び省コスト化を図ることができる。
【0027】
また、前述した潤滑油供給パイプ41は、ギヤケース11を覆うギヤケースカバー12内に収容している。つまり、ギヤケース11にて支承されるアイドル軸26の潤滑油路40に接続される潤滑油供給パイプ41は、ギヤケースカバー12から外部に露出することなく燃料噴射ポンプ8のポンプケース8a内へと配管することが可能なため、ギヤケースカバー12内に収容された状態となる。
【0028】
このように、潤滑油供給パイプ41がギヤケースカバー12内に収容されることにより、外部配管が不要となり、潤滑油の外部漏れによってエンジン1の周囲を汚す等の品質問題を未然に防止することができる。つまり、仮に潤滑油供給パイプ41において潤滑油漏れが発生した場合でも、漏れた潤滑油はギヤケース11内に収められることになるため問題はない。また、潤滑油供給パイプ41をギヤケース11に仕組んだ状態での組付けが可能となり、外部配管を行う場合と比較して組立性を向上することができる。
【0029】
また、本構成においては、前記潤滑油供給パイプ41の一端に噴射機構(ジェット機構)45を設けている。本実施形態においては、潤滑油供給パイプ41の潤滑油路40との接続部、即ちアイドル軸26の前端側に設けている。
【0030】
噴射機構45は、アイドル軸26内の潤滑油路40の前端側開口部に固設される取付座46により構成される。この取付座46は、潤滑油路40と略同径の内径を有する略筒状の形状に構成され、その内部を潤滑油路40に連通するとともに潤滑油供給パイプ41と接続されており、その前端面には管継手ボルト47が取り付けられている。つまり、略筒状の取付座46の一側(後側)の開口部は潤滑油路40に連通しており、他側(前側)の開口部は管継手ボルト47にて塞がれている。そして、この取付座46内と潤滑油供給パイプ41が連通することにより、潤滑油供給パイプ41が取付座46を介して潤滑油路40と接続される。
【0031】
このような構成においては、潤滑油供給パイプ41の潤滑油通路面積を潤滑油路40の潤滑油通路面積よりも狭く形成することにより、潤滑油供給パイプ41の注油口41aから噴射させて飛沫による注油を行うことができる。つまり、潤滑油路40から取付座46を介して潤滑油供給パイプ41内に流入する潤滑油は、その通路面積が狭くなることにより油圧が高められ、通路面積の狭い潤滑油供給パイプ41がジェットノズルの役割を果たし、潤滑油が注油口41aから噴射され霧状の飛沫となって燃料噴射ポンプ8のポンプケース8a内に注油される。ここで、潤滑油路40内における油圧については、アイドル軸26がメインギャラリ31付近に配置されている(メインギャラリ31がアイドル軸26付近まで延設されている)ことから、前述したような噴射を行うに十分な圧力が確保できる。
【0032】
このように、潤滑油供給パイプ41の一端に噴射機構45を設けることにより、潤滑油供給パイプ41によって潤滑油を噴射させて飛沫による注油を行うことができるので、燃料噴射ポンプ8内を均一に潤滑することができる。
【0033】
次に、燃料噴射ポンプ8の潤滑構造の別実施形態について図6及び図7を用いて説明する。
本実施形態においては、潤滑油ポンプ22に付設されるリリーフバルブ50に潤滑油供給パイプ51を接続し、この潤滑油供給パイプ51の他端部に絞り部51bを形成するとともに、この絞り部51bの先端を燃料噴射ポンプ8のポンプ駆動軸28の近傍に延設している。
【0034】
すなわち、前述したようにクランク軸23に連動して駆動する潤滑油ポンプ22においては、クランク軸23の回転数の上昇にともない吐出側の圧力が所定値を超えたときに過剰な潤滑油を図示せぬリリーフポートへ流出させて圧力を略一定に保つためにリリーフバルブ50が付設されているが、このリリーフバルブ50から流出(リリーフ)される潤滑油を、潤滑油供給パイプ51を用いて燃料噴射ポンプ8へと供給する。
【0035】
具体的には、リリーフバルブ50において過剰な潤滑油を流出するためのリリーフ部(二次側)50aに潤滑油供給パイプ51を接続する。そして、この潤滑油供給パイプ51の他端部、即ち潤滑油を供給する側の端部に絞り部51bを形成して潤滑油通路面積を狭くすることにより、潤滑油供給パイプ51の注油口51a(図7参照)から噴射させて飛沫により注油を行うことができる構成としている。つまり、リリーフバルブ50により所定の吐出圧を有する潤滑油は、潤滑油供給パイプ51内へと流入し、通路面積が狭くなる絞り部51bにおいて油圧が高められ、通路面積を狭くした絞り部51bがジェットノズルの役割を果たし、潤滑油が注油口51aから噴射され霧状の飛沫となって燃料噴射ポンプ8のポンプケース8a(図5参照)内に注油される。
【0036】
そして、この絞り部51bが形成される潤滑油供給パイプ51の他端側は、ギヤケース11内を介して燃料噴射ポンプ8をギヤケース11に取り付ける際に用いる取付板32(図5参照)をポンプ駆動軸28方向(図6における紙面奥側)に向けて貫通させ、燃料噴射ポンプ8のポンプケース8a内に臨んで開口する。この際、潤滑油供給パイプ51の先端の注油口51aはポンプ駆動軸28の近傍に延設される。つまり、潤滑油ポンプ22の吐出側において過剰な潤滑油を流出するリリーフバルブ50のリリーフ部50aから潤滑油供給パイプ51へと潤滑油が流入し、この潤滑油供給パイプ51内に流入した潤滑油は、絞り部51bにて油圧が高められてポンプケース8a内へと導かれ、ポンプケース8a内にてポンプ駆動軸28近傍に開口する注油口51aから吐出され、ポンプ駆動軸28やカム等の各潤滑個所を潤滑する。
【0037】
このような構成とすることにより、従来のように外部配管を行う場合と比較して、配管を短くすることができ、部品点数を削減して省コスト化を図ることができる。また、潤滑油ポンプ22に付設されるリリーフバルブ50という既存の構成を利用していることからも、部品点数の削減及び省コスト化を図ることができる。
また、潤滑油供給パイプ51がギヤケースカバー12から外部に露出することがないため、外部配管が不要となり、潤滑油の外部漏れによってエンジン1の周囲を汚す等の品質問題を未然に防止することができる。つまり、仮に潤滑油供給パイプ51において潤滑油漏れが発生した場合でも、漏れた潤滑油はギヤケース11内に収められることになるため問題はない。また、潤滑油供給パイプ51をギヤケース11に仕組んだ状態での組付けが可能となるので、外部配管を行う場合と比較して組立性を向上することができる。
さらに、リリーフバルブ50により所定の吐出圧を有する潤滑油が絞り部51bを介して噴射されて飛沫による注油を行うことができるので、潤滑油を勢いよく吐出できるとともに燃料噴射ポンプ8内を均一に潤滑することができる。
【0038】
このようにして潤滑油供給パイプ51をポンプ駆動軸28の近傍に延設して燃料噴射ポンプ8へ潤滑油を供給するのであるが、本実施形態においては、次のような構成とすることが好ましい。すなわち、図7に示すように、ポンプ駆動軸28に、軸端部に開口部52aを有する潤滑油路52を形成し、この潤滑油路52の開口部52aに潤滑油供給パイプ51の注油口51aが臨むように潤滑油供給パイプ51を配管する。
【0039】
ポンプ駆動軸28に形成する潤滑油路52は、前端の軸端部に開口部52aを有することによりポンプ駆動軸28の前端面から注油を行えるようにしており、また、この開口部52aから注油される潤滑油を、潤滑油路52から分岐してポンプ駆動軸28の外部に開口する注油孔52bなどを介して燃料噴射ポンプ8内の各潤滑箇所に導く構成としている。そして、ポンプ駆動軸28の軸端部における開口部52aに潤滑油供給パイプ51の注油口51aを臨ませ、絞り部51bを通って油圧が高められた潤滑油を潤滑油路52内へと注油する。つまり、リリーフバルブ50を介して所定の吐出圧を得て潤滑油供給パイプ51内に流入した潤滑油は、絞り部51bにて油圧が高められて開口部52aから潤滑油路52内へ向けて噴射により注油され、潤滑油路52を通って注油孔52bなどを介して燃料噴射ポンプ8内に導かれて各潤滑個所を潤滑する。ここで、潤滑油供給パイプ51の絞り部51bの先端は潤滑油路52の開口部52aに挿入する等して潤滑油路52と接続する構成としてもよい。
【0040】
このように、潤滑油供給パイプ51の注油口51aをポンプ駆動軸28内に形成した潤滑油路52に臨ませる構成とすることにより、潤滑油供給パイプ51を配管する際に継手などの部品を省略することができるとともに、燃料噴射ポンプ8において摩擦が大きいポンプ駆動軸28及びその近傍を効率的に潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るエンジンの前方斜視図。
【図2】同じく後方斜視図。
【図3】エンジンの内部構造を示す正面図。
【図4】燃料噴射ポンプの潤滑構造の一実施形態を示す正面図。
【図5】同じく平面一部断面図。
【図6】燃料噴射ポンプの潤滑構造の別実施形態を示す正面図。
【図7】潤滑油の注油部を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン
2 シリンダブロック
8 燃料噴射ポンプ
11 ギヤケース
12 ギヤケースカバー
22 潤滑油ポンプ
24 アイドルギヤ
26 アイドル軸
28 ポンプ駆動軸
31 メインギャラリ
40 潤滑油路
41 潤滑油供給パイプ
45 噴射機構
50 リリーフバルブ
51 潤滑油供給パイプ
51a 注油口
51b 絞り部
52 潤滑油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランク軸の回転をシリンダブロックに取り付けられるギヤケース内に収納されるアイドル機構を介して燃料噴射ポンプの駆動軸に伝達することにより燃料噴射ポンプを駆動する構成において、
前記アイドル機構のアイドル軸の軸心に潤滑油路を形成し、この潤滑油路の一端をシリンダブロックに形成される潤滑油メインギャラリと連通するとともに他端に潤滑油供給パイプを接続し、この潤滑油供給パイプの他端を前記燃料噴射ポンプの駆動軸の近傍に延設したことを特徴とする燃料噴射ポンプの潤滑構造。
【請求項2】
請求項1記載の燃料噴射ポンプの潤滑構造において、
前記潤滑油供給パイプを、前記ギヤケースを覆うギヤケースカバー内に収容したことを特徴とする燃料噴射ポンプの潤滑構造。
【請求項3】
請求項1記載の燃料噴射ポンプの潤滑構造において、
前記潤滑油供給パイプの一端に噴射機構を設けたことを特徴とする燃料噴射ポンプの潤滑構造。
【請求項4】
エンジンに連動して駆動する潤滑油ポンプにより供給される潤滑油によって燃料噴射ポンプの潤滑を行う構成において、
前記潤滑油ポンプに付設されるリリーフバルブに潤滑油供給パイプを接続し、この潤滑油供給パイプの他端部に絞り部を形成するとともに、この絞り部の先端を前記燃料噴射ポンプの駆動軸近傍に延設したことを特徴とする燃料噴射ポンプの潤滑構造。
【請求項5】
請求項4記載の燃料噴射ポンプの潤滑構造において、
前記燃料噴射ポンプの駆動軸に、軸端部に開口部を有する潤滑油路を形成し、前記開口部に前記潤滑油供給パイプの注油口が臨むように前記潤滑油供給パイプを配管したことを特徴とする燃料噴射ポンプの潤滑構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−9653(P2006−9653A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186512(P2004−186512)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】