説明

燃料噴射弁

【課題】摩耗による作動不良などの信頼性低下の抑制と、変位拡大機能の安定化が両立する燃料噴射弁を提供。
【解決手段】噴孔57を開閉する弁要素の開閉動作を制御する制御弁と、弁要素を間接的に制御するべく制御弁を駆動するアクチュエータ2を備え、変位をアクチュエータ2の外部に取り出すピストン状の変位取り出し部24を有し、変位取り出し部の変位を燃圧に変化する燃圧発生部36と、燃圧発生部の燃圧を駆動源とし、前記制御弁の弁座66に離座及び着座する制御弁部材62と、制御弁における弁座66の上流側に設けられ、制御弁部材62が弁座66から離座及び着座することにより、弁室の内部の燃圧を増減する弁室103と、弁座の上流側に設けられ、弁要素に背圧を付与する圧力制御室104とを備え、制御弁部材は、弁室、液圧発生部、及び低圧部109間に介設され、かつ弁室は、弁室と低圧部の間にオリフィス68を有する連絡流路67が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
噴孔を開閉する弁要素の駆動を制御するアクチュエータとして、ピエゾ素子を用いたピエゾアクチュエータを利用した燃料噴射弁が知られている(特許文献1参照)。この種の燃料噴射弁は、弁要素を直接的に駆動するものや、弁要素の背圧を制御する制御弁を駆動することにより弁要素を間接的に駆動するものがある。
【0003】
このような燃料噴射弁の一種として特許文献1に開示の装置では、弁要素の背圧を制御する制御弁を駆動することにより弁要素を間接的に駆動するものにおいて、ピエゾ素子の伸縮による微小な変位量を、「機械式のてこの原理」を利用して当該微小変位量を拡大させることで、制御弁を駆動するようにしている。この技術では、「機械式のてこの原理」を利用するレバー部材を設け、このレバー部材における力点―支点―作用点の各レバー間隔を変更することで、狙いの変位量の伝達比を容易に設定可能とし、ひいてはピエゾアクチュエータを小型化することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−138874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1による従来技術では、「機械式のてこの原理」であるレバー部材を使用するため、レバー部材が、その部材の力点、支点、及ぶ作用点の各部で摩耗を招く懸念がある。この摩耗が過度に大きくなると、作動不良などの信頼性低下を招くおそれがある。また、燃料噴射弁の製造時において、狙いの変位量の伝達比となるように、各点の位置合せをする組付け管理が難しいため、変位量の変位ロスが発生する可能性があり、ひいては変位量を拡大する変位拡大機能が不安定になるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、摩耗による作動不良などの信頼性低下を抑制することと、変位量の変位拡大機能の安定化が図れることが両立する燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を備える。
【0008】
即ち、請求項1に記載の発明では、燃料を噴射する燃料噴射弁において、噴孔が形成されているハウジングと、ハウジングに収容され、噴孔を開閉する弁要素と、弁要素の開閉動作を制御する制御弁と、弁要素を間接的に制御するように、制御弁を駆動するアクチュエータを備え、アクチュエータは、電圧を印加することにより伸縮するピエゾ素子、及びピエゾ素子の伸縮する際の変位をアクチュエータの外部に取り出すピストン状の変位取り出し部を有し、
変位取り出し部の変位を燃圧に変化する燃圧発生部と、燃圧発生部にて発生した燃圧を駆動源とし、制御弁の弁座に離座及び着座する制御弁部材であって、液圧発生部で発生する燃圧を受ける制御弁部材の受圧面が、変位取り出し部の受圧面より小さく形成されている制御弁部材と、制御弁部材における液圧発生部で挟み込まれる部位とは異なる部位を挟み込み、かつ弁座の上流側に設けられる弁室であって、制御弁部材が弁座から離座及び着座することにより、弁室の内部の燃圧を増減する弁室と、弁室に設けられる弁座の上流側に設けられ、弁座に連通する圧力制御室であって、燃料が導入されて弁要素に背圧を付与する圧力制御室と、を備え、
制御弁部材は、弁室、液圧発生部、及び燃料を低圧源に戻すための低圧部間に介設されるとともに、ハウジングに摺動可能に支持され、
弁室は、低圧部に接続する連絡流路であって、弁室と低圧部の間にオリフィスを有する連絡流路が設けられていることを特徴とする。
【0009】
これによると、変位取り出し部、燃圧発生部、及び制御弁の制御弁部材は、変位取り出し部の変位を燃圧に変化する液圧発生部で発生する燃圧を受ける制御弁部材の受圧面が、変位取り出し部の受圧面より小さく形成される構成とするので、ピエゾ素子の伸縮による変位が入力される変位取り出し部側の当該変位量を、制御弁部材で拡大して出力可能となる。
【0010】
言い換えると、変位取り出し部、燃圧発生部、及び制御弁部材は、ピエゾ素子の伸縮による変位を、油圧(燃圧)により変位拡大する作用を実現できる。それ故に、「機械式のてこの原理」を利用し変位拡大する作用を実現するもののように力点、支点、及ぶ作用点の各部で摩耗を招くことはなく、摩耗による作動不良などの信頼性低下を抑制することができる。
【0011】
ここで、かかる発明による変位取り出し部、燃圧発生部、及び制御弁の制御弁部材の如き、油圧により変位拡大する変位拡大要素では、燃圧発生部内の燃料の一部が、一方向の変位に対応した燃圧上昇に伴い燃圧発生部の外部へ漏れ出る可能性がある。外部へ漏れ出た燃料分があると、一方向とは逆方向の変位に対応して生じる燃圧低下時に補充されずに、燃圧発生部内の燃料が充填不足に陥るおそれがあるため、変位量を拡大する変位拡大機能が不安定になるという懸念がある。
【0012】
これに対し請求項1に記載の構成によれば、弁室には、制御弁の開弁時に、弁座の上流側に設けられた圧力制御室内の燃料が流入する。そして、弁室は、低圧部に接続する連絡流路であって、弁室と低圧部の間に、弁室から連絡流路に流出する燃料の流量を制限するオリフィスを有する連絡流路が設けられる構成とするので、ピエゾ素子の変位が逆方向の変位に転じて燃圧発生部が燃圧低下した後も、弁室内の燃圧が増加した状態を維持することが可能となる。それによって、ピエゾ素子の変位が逆方向の変位に転じて燃圧発生部の燃圧低下時に、弁室内の燃圧が燃圧発生部内の燃圧を上回るように、弁室内と燃圧発生部との差圧を形成し得るのである。
【0013】
制御弁部材は、弁室、液圧発生部、及び低圧源に排出した燃料を戻す低圧部間に介設されるとともに、ハウジングに摺動可能に支持されているため、弁室及び液圧発生部間は、弁室と液圧発生部の間の差圧に応じて摺動隙間をリーク燃料が流れる。したがって、燃圧発生部の燃圧低下時に、弁室内の燃圧が燃圧発生部内の燃圧を上回る差圧によって弁室から液圧発生部へのリーク燃料が形成され、よって燃圧発生部内の燃料の充填不足が解消する。それによって、上記変位拡大要素は、その変位量を拡大する変位拡大機能の安定化が図れる。
【0014】
以上の請求項1の記載の発明によれば、摩耗による作動不良などの信頼性低下を抑制することと、変位量の変位拡大機能の安定化が図れることが両立し得るのである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明では、連絡流路は、前記制御弁部材を貫通する連絡孔であることを特徴とする。
【0016】
これによると、連絡流路を制御弁部材を貫通する連絡孔で構成するため、例えばハウジングに制御弁部材を迂回し、弁室と低圧部とを接続する孔を形成する場合に比べて孔開け工数の低減が図れる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、制御弁部材は、制御弁部材の外壁面に連絡孔が開口する開口部であって、ハウジング内を制御弁部材が摺動することにより、開口部がハウジングの内壁面により閉塞または絞られる開口部を有していることを特徴とする。
【0018】
これによると、連絡流路を構成する連絡孔は、ハウジング内を制御弁部材が摺動することによってその開口部が閉塞または絞られるオリフィスとして機能する。それにより、燃圧発生部の燃圧低下時に、一時的に燃料不充填に陥る場合があったとしても、燃圧発生部内の燃料の充填状態となる圧力回復を更に促進可能となる。
【0019】
また、請求項4乃至5に記載の発明では、ハウジング内に摺動可能に支持される制御弁部材の摺動隙間は、液圧発生部及び低圧部間の第1摺動隙間部と、弁室及び液圧発生部間の第2摺動隙間部とを有し、第2摺動隙間部が第1摺動隙間部に比べてその流路断面積を大きくすること、及びその流路長さを短くすることのうち少なくともいずれかの特徴を有する。これにより、弁室及び液圧発生部間のリーク燃料が流れる第2摺動隙間部のリーク燃料量を増やすことができ、ひいては、燃圧発生部の燃圧低下時に、一時的に燃料不充填に陥る場合があったとしても、燃圧発生部内の燃料の充填状態となる圧力回復の促進が図れる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃料噴射弁において、変位取り出し部と、制御弁部材は、燃料噴射弁の中心軸線に対して平行に配置されていることを特徴とする。
【0021】
これによると、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明による燃料噴射弁は、油圧により変位拡大変位拡大機能を有し、かつその変位拡大機能の安定化が図れる変位拡大要素が実現できる。そのため、例えばピエゾ素子の積層数を減らし、駆動力の省力化と、ピエゾ素子を積層する軸方向(積層方向)のアクチュエータの小型化が図れる。
【0022】
さらに、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明による燃料噴射弁に、請求項6に記載の発明を適用することにより、アクチュエータの一部である変位取り出し部と、制御弁部材とを燃料噴射弁の中心軸線に沿って平行に配置でき、ひいては更に軸方向の燃料噴射弁の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁を適用した燃料噴射装置を示す断面図である。
【図2】図1中の燃料噴射弁の燃料流路に係る構成を示す模式図である。
【図3】図1の燃料噴射弁の作動を説明するタイムチャートである。
【図4】図3中の液圧発生部及び弁室の両者に発生する燃圧、両者の差圧、並びにその差圧による燃料リーク量の関係を示す模式的特性図である。
【図5】第2実施形態に係わる燃料噴射弁の特徴部分を示す図であって、図1に対応する断面図である。
【図6】第3実施形態に係わる燃料噴射弁の特徴部分を示す図であって、図1に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本実施形態による燃料噴射弁1を示している。図1は本実施形態による燃料噴射弁1を適用した燃料噴射装置の全体構成を模式的に示しており、また図2は図1中の燃料噴射弁1の燃料流路に係る構成を示すものである。
【0026】
図1に示すように、燃料噴射装置は、燃料噴射ポンプ300、コモンレール400、及び燃料噴射弁1を備えている。燃料噴射ポンプ300は、燃料タンク500から吸入通路601を経由して燃料を吸入する。燃料噴射ポンプ300は、吸入した燃料を所定の圧力まで加圧しコモンレール400に供給する。燃料噴射ポンプ300は、供給配管602を経由して加圧した燃料をコモンレール400に供給する。コモンレール400は、燃料噴射ポンプ300で加圧された燃料を所定の圧力で維持したまま、いわゆる蓄圧状態で蓄える。
【0027】
コモンレール400は、燃料配管603を経由して蓄圧された燃料を、図示しないエンジンの各気筒に搭載される燃料噴射弁1に分配する。燃料噴射弁1は、コモンレール400内に蓄圧された燃料を、気筒の燃焼室に噴射供給するものである。コモンレール400内に蓄圧された燃料の燃圧は、50Mpaから300Mpaの範囲に設定されており、燃料噴射弁1は燃焼室へ当該範囲相当の燃料噴射圧の燃料を噴射する。
【0028】
また、この燃料噴射装置は、燃料噴射ポンプ300及び燃料噴射弁1を駆動制御する制御回路(図示せず)を備えており、制御回路によって燃料噴射ポンプ300及び燃料噴射弁1が制御される。燃料噴射弁1は、燃料の噴射時期および噴射量が制御回路によって制御される。また、燃料噴射弁1は、コモンレール400から供給された燃料のうち、噴射に寄与しない余剰燃料(燃料噴射弁1からの排出燃料)を、燃料配管604を経由して、燃料タンク500に戻す。
【0029】
この燃料配管604には、圧力調整弁700が設けられており、圧力調整弁700は例えば圧力が所定値以上になると開弁するチェック弁で構成されている。この圧力調整弁700は、燃料噴射弁1から排出される低圧燃料の圧力を、所定の圧力(例えば、1〜2Mpa)の範囲に調整するものである。
【0030】
ここで、燃料タンク500は、燃料噴射弁1から排出された燃料を戻す低圧源に相当する。なお、上記燃料配管604における燃料噴射弁1と燃料タンク500の間に圧力調整弁700が設けられるものでは、圧力調整弁700により圧力が所定の圧力(例えば、1〜2Mpa)に調整された低圧燃料を、低圧源と呼ぶ。
【0031】
以上、燃料噴射弁1を主たる構成とする燃料噴射装置の全体構成について説明した。以下、燃料噴射弁1の構成について説明する。
【0032】
(燃料噴射弁1の構成)
燃料噴射弁1は、アクチュエータ2、液圧発生部36、及び弁要素3を備えている。アクチュエータ2および弁要素3は、棒状のハウジング5内に軸方向に並んで収容されている。
【0033】
ハウジング5は、アクチュエータ2を収容するホルダボデー51と、液圧発生部36及び弁要素3の一部を収容するバルブボデー53と、弁要素3の一部を収容するノズルボデー55から構成されている。ホルダボデー51、バルブボデー53、及びノズルボデー55は、内部にアクチュエータ2、液圧発生部36、及び弁要素3を収容し、これらの構成要素51、53、55がリテーニグナット58などの締結手段により締付固定されている。
【0034】
ホルダボデー51は、内部に空洞を有する筒状に形成されている。ホルダボデー51には、アクチュエータ2を収容する有底孔状のアクチュエータ孔71と、スプリング49を収容する有底孔状の収容孔72とが形成されている。ホルダボデー51の上端部52(ノズルボデー55とは反対側の端部)では、アクチュエータ2の上端部を支持している。アクチュエータ2の下端部には、液圧発生部36を介して弁要素3が配置されている。ホルダボデー51の下端部は、上端部が開口するバルブボデー53が接続されている。ホルダボデー51の側壁部には、ホルダボデー51内部に燃料を供給する吸入口54が形成されている。
【0035】
バルブボデー53は、内部に空洞を有する筒状に形成されており、バルブボデー53の上端部には、下端部が開口するホルダボデー51が接続されると共に、バルブボデー53の下端部には、上端部が開口するノズルボデー55が接続されている。バルブボデー53の内部構造の詳細は後述する。
【0036】
ノズルボデー55は、内部に空洞を有する筒状に形成されており、下端部56(ホルダボデー51とは反対側)は塞がっている。ノズルボデー55の空洞は、バルブボデー53の空洞、並びにホルダボデー51の空洞と繋がっている。下端部56には、ノズルボデー55の内部とノズルボデー55の外部とを連通する噴孔57が形成されている。噴孔57は、図1に示すように複数設けられるものに限らず、一つ設けられるものであってもよい。
【0037】
ホルダボデー51の内部に流入した燃料は、ホルダボデー51及びバルブボデー53を貫通する燃料供給通路101を経由してノズルボデー55の内部に流入し、噴孔57を介して噴射される。噴孔57は、弁要素3により開閉が制御される。
【0038】
アクチュエータ2は、ピエゾスタック21、固定部材23、変位取り出し部24、及びケーシング26等から構成されている。ピエゾスタック21は、複数の板状のピエゾ素子22を板厚方向に積み重ねて形成されるものであり、筒状に形成されているケーシング26内に収容される。ピエゾスタック21は、図1に示すように燃料噴射弁1の外部より電圧が印加されると、印加された電圧の大きさに応じてピエゾ素子22の板厚方向に伸長し、電圧の印加が解除されるとピエゾ素子22は収縮し、電圧が印加される前の状態にまで戻る。
【0039】
固定部材23は、ケーシング26の一方の端部に固定されている。固定部材23は、ピエゾスタック21の弁要素3とは反対側の一方の端部を支持する。
【0040】
変位取り出し部24は、ケーシング26の下端部側に軸方向に摺動可能に支持されている。変位取り出し部24は、ピエゾスタック21の他方の端部に支持されている。変位取り出し部24の弁要素3側の端部は、ピストン状に形成され、ケーシング26の端部より下方に突き出ている。変位取り出し部24の下端部が、液圧発生部36に常に油密に接続している。
【0041】
変位取り出し部24は、図1に示すように、ピストン部24aと、ピストン部24aの上端部に設けられ、ピストン部24aの径方向外側に延びる平板状の支持部24bとを備えている。ピストン部24aと支持部24bは、図1に示すように一体に形成されているものに限らず、ピストン部24aと支持部24bとを圧入などの接合手段により一体的に固定しているものであってもよい。
【0042】
支持部24bは、弁要素3側の端部に、「付勢部材」としてのスプリング44が設けられている。このスプリング44は支持部24bと、ホルダボデー51の内壁とに挟み込まれるように配置されている。変位取り出し部24の支持部24bの上端部が、ピエゾスタック21の下端部に常に当接している。スプリング44は、支持部24bを介してピエゾスタック21に予備荷重を付与する。予備荷重は、ピエゾスタック21が伸長する際の妨げとならない程度に設定されている。
【0043】
ピストン部24aは、バルブボデー53のシリンダ孔61内に摺動可能に支持されている。ピストン部24aは、シリンダ孔61の内壁面との間に、第1摺動隙間aを形成している。
【0044】
アクチュエータ2のピエゾスタック21に所定の電圧が印加されると、印加された電圧の大きさに応じてピエゾスタック21が所定の長さ伸長する。ピエゾスタック21の上方は、固定部材23にて移動が規制されているため、ピエゾスタック21が伸長すると、ピエゾスタック21の変位取り出し部24が当接されている他方の端部が下方に伸長量に応じた分だけ移動する。それに伴い、ピエゾスタック21の伸長量に応じた分だけ、変位取り出し部24も下方に移動する。
【0045】
その後、電圧の印加を解除するとピエゾスタック21は収縮し、電圧が印加される前の状態まで戻る。それに伴い、変位取り出し部24も元の位置に移動する。
【0046】
アクチュエータ2の下方に配置されている弁要素3は、後述の液圧発生部36、及び制御弁部材62を含む制御弁を介して制御される、弁部材31などから構成されている。
【0047】
バルブボデー53は、シリンダ孔61と、制御弁部材62を摺動可能に支持する支持孔63、64と、第2支持孔64とシリンダ孔61を接続する燃料連絡通路65とが形成されている。
【0048】
支持孔63、64とシリンダ孔61とは、燃料噴射弁1の中心軸線に対し平行に配置されている。言い換えると、変位取り出し部24のピストン部24aと制御弁部材62が、燃料噴射弁1の中心軸線に対し平行に配置されている。
【0049】
支持孔63、64は、第1支持孔63及び第2支持孔64が異なる内径を有し、制御弁部材62の中心軸に対して同軸に配置されている。第1支持孔63及び第2支持孔64は、制御弁部材62の外壁面との間で、それぞれ、第2摺動隙間b、及び第3摺動隙間cを形成している。
【0050】
また、バルブボデー53は、第1支持孔63が有底孔状に形成されている。第1支持孔63の第2支持孔64とは反対側に底部には、弁座66が設けられている。この弁座66は、制御弁部材62が着座及び離座可能である。
【0051】
また、バルブボデー53は、外周部側を軸方向(図示上下方向)に貫通する燃料供給通路101と、低圧燃料通路102とが形成されている。この低圧燃料通路102はボデー51、53を貫通しており、低圧燃料通路102に連通する排出口73がホルダボデー51の側壁部に形成されている。
【0052】
また、バルブボデー53には、低圧燃料通路102に接続する弁室通路67が形成されている。弁室通路67は、第1支持孔63の弁座66の下流側に接続しており、弁座66の下流側と低圧燃料通路102とを連通している。この弁室通路67には、オリフィス68が設けられており、オリフィス68は、弁室通路67を流れる燃料の流量を制限している。
【0053】
また、バルブボデー53の下端部には、燃料供給通路101及び低圧燃料通路102の内側に、背圧孔69が形成されている。この背圧孔69には、燃料供給通路101に連通する第1連通路74と、弁座66に連通する第2連通路75とがそれぞれ接続している。
【0054】
制御弁部材62は、弁座66に着座及び離座する制御弁を構成している。制御弁部材62は、段付き円柱状に形成され、小径部62aと、小径部62aより外径が大きい大径部62bを有している。小径部62aの先端部は弁座66に着座及び離座する。小径部62aの先端部は、図1に示すように半球状の弁体が介装され、半球状の弁体の端面で弁座66に当接するものに限らず、先端部が平坦面で形成され、平坦面で弁座66に当接するものであってもよい。
【0055】
制御弁部材62は、小径部62aが第1支持孔63に摺動可能に支持されるとともに、大径部62bが第2支持孔64に摺動可能に支持されている。
【0056】
制御弁部材62の大径部62bの上端部に、スプリング48が設けられている。このスプリング48は、制御弁部材62の大径部62bとホルダボデー51の内壁(詳しくは、収容孔72)とに挟み込まれるように配置されている。スプリング48は、制御弁部材62を弁座66方向(図中下方)に付勢している。
【0057】
ここで、図1に示すように、液圧発生部36は、制御弁部材62の外壁面(詳しくは、大径部62bの下端面、小径部62aの外壁面)と第2支持孔64とで区画される燃料空間、変位取り出し部24のピストン部24aの外壁面とシリンダ孔61とで区画される燃料空間、及び燃料連絡通路65で形成されている。液圧発生部36内に発生する燃圧(圧力)に対し、制御弁部材62の受圧面がピストン部24aの受圧面の面積より小さい。液圧発生部36は、アクチュエータ2の変位取り出し部24の変位量を、油圧(燃圧)により拡大する要素である。ピストン部24aとシリンダ孔61との間の第1摺動隙間a、並びに制御弁部材62と支持孔63、64との間の第2摺動隙間b及び第3摺動隙間cは、液圧発生部36を液密にするように、僅かな隙間に設定されている。
【0058】
上記第1摺動隙間a〜第3摺動隙間cのうち、第2摺動隙間bが少なくとも第3摺動隙間cより大きく設定されていることが好ましい。
【0059】
また、図1に示すように、弁室103は、第1支持孔63の弁座66側の内壁面と小径部62aの外壁面とで区画される燃料空間で形成され、この弁室103には、弁室通路67が接続している。弁室103は、制御弁の開弁時、つまり制御弁部材62が弁座66から離座時に、後述の背圧孔69とで区画される圧力制御室104からの燃料が流入する。圧力制御室104から弁室103への流入した燃料は、弁室通路67のオリフィス68を通って低圧燃料通路102に排出される。ここで、弁室通路67は請求範囲に記載の連絡流路に相当する。
【0060】
また、図1に示すように、アクチュエータ孔71及び収容孔72は低圧燃料通路102に接続しており、燃料を低圧源に戻す低圧部109を構成している。
【0061】
弁部材31は、先端32がノズルボデー55の下端部56の内壁のシート部55aに離座及び着座することにより、噴孔57からの燃料の噴射、及び非噴射を制御する。弁部材31は、略棒状に形成されている。弁部材31の先端32の反対側の端部には、弁部材31の軸方向に摺動可能に支持する略円筒状のシリンダ47が設けられている。
【0062】
弁部材31の先端32と上記反対側の端部との間には、段差が形成されており、その段差には、スプリング49の下端部を支持する支持リング46が設けられている。スプリング49の上端部は、シリンダ47に支持される。スプリング49は、支持リング46とシリンダ47との間に、ある程度軸方向に圧縮された状態で配置される。このスプリング49の圧縮荷重(付勢力)により、シリンダ47はバルブボデー53の下端面に押し付けられ、弁部材31は下方(閉弁方向)に押し付けられる。
【0063】
図1に示すように、圧力制御室104は、バルブボデー53の下端面の背圧孔69と、シリンダ47の内壁面と、弁部材31の上端面と区画されることで形成される。圧力制御室104内の燃圧は、噴孔57を開閉動作する弁部材31に背圧を付与するものである。
【0064】
圧力制御室104は、第1連通路74及び第2連通路75が接続している。第1連通路74及び第2連通路75には、それぞれ、インオリフィス74a、アウトオリフィス75aが設けられている。第1連通路74の上流側、即ち燃料供給通路101から流入した燃料は、第1連通路74のインオリフィス74aを通って、圧力制御室104に供給される。制御弁部材62の閉弁時には、圧力制御室104内の燃圧は、燃料供給通路101に供給される燃料の圧力と同じである。制御弁部材62が開弁されると、燃料供給通路101によって圧力制御室104に供給される燃料は、第2連通路75のアウトオリフィス75aを通って、弁室103に排出される。
【0065】
シリンダ47と弁部材31の間に形成される第4摺動隙間dは、圧力制御室104を液密にするように、僅かな隙間に設定されている。
【0066】
ノズルボデー55は、弁部材31の上端部との間に、弁部材31の上端部を取り囲むような上部燃料溜り室105を形成している。また、ノズルボデー55は、弁部材31の下端部との間に、弁部材31の下端部を取り囲むような下部燃料溜り室106を形成している。上部燃料溜り室105と下部燃料溜り室106は、弁部材31の外壁面に二面幅状に形成される段差部を介して常に連通している。燃料溜り室105、106は、燃料供給通路101に供給される燃料を、弁部材31の開弁時に、噴孔57の上流のサック部59に導く。また、弁部材31の閉弁時には、燃料溜り室105、106とサック部59は閉塞し、燃料供給通路101に供給される燃料は、燃料溜り室105、106に溜められたままとなる。
【0067】
次に、弁部材31の開閉動作の仕組みについて説明する。
【0068】
弁部材31の開閉動作は、吸入口54から燃料供給通路101を通じて燃料噴射弁1内に供給される上記燃料の圧力、圧力制御室104内で生じた背圧を受けることによる発生する力や、スプリング49の付勢力の釣り合いによって決定される。
【0069】
弁部材31には、先端32に上記燃料の圧力が作用することによって上方に向かう力(以下、「上方の力」という)が発生する。上方の力は、上記燃料の圧力が作用する先端32の受圧面積、並びに上記燃料の圧力の大きさによって定まる。
【0070】
そして、弁部材31には、圧力制御室104内の背圧が作用すること、及びスプリング49の付勢力によって下方に向かう力(以下、「下方の力」という)が発生する。下方の力は、圧力制御室104内の背圧が作用する弁部材31の受圧面積並びに背圧の大きさ、及びスプリング49の付勢力によって定まる。
【0071】
上方の力が下方の力よりも勝ったとき、弁部材31は開弁方向に移動を開始し、下方の力が上方の力よりも勝ったとき、弁部材31は閉弁方向に移動を開始する。ここで、弁部材31が開弁方向に移動を開始すると、弁部材31の先端32がノズルボデー55のシート部55aから離座するので、先端32の全体にわたって上方の力が作用する。弁部材31は速やかにリフトし、開弁状態となる。
【0072】
次に、燃料噴射弁1の動作について図1〜図4に基づき説明する。図3は燃料噴射弁1の動作を説明するためのタイムチャートである。図中の破線で示す特性は比較例の特性を示している。また図中の実線及び二点鎖線で示す特性は本実施形態の特性を示しており、二点鎖線で示す特性は次回噴射時の特性を示すものである。
【0073】
ここで、比較例は、本実施形態による燃料噴射弁1の構成に対し、弁室通路67にオリフィス68を有しないものである。
【0074】
図3(a)は、図示しない制御回路からアクチュエータ2に送信される駆動信号(パルス)の状態を示している。図中、ONの状態のときに、アクチュエータ2に所定の電圧が印加され、OFFの状態のときに、アクチュエータ2への所定の電圧の印加が終了する。図3(b)は、アクチュエータ2の出力取り出し部24の変位を示している。図中、ゼロの状態は、出力取り出し部24のピストン部24aが上方に位置している状態を示している。図3(c)は、液圧発生部36内の燃圧(圧力)状態を示している。
【0075】
図3(d)は制御弁の制御弁部材62の変位を示している。図中、OFFの状態のときに、制御弁部材62が弁座66に着座状態にあることを示し、またONの状態のときに、制御弁部材62が弁座66から離座状態にあることを示している。図3(e)は、弁室103内の燃圧(圧力)状態を示している。図3(f)は、圧力制御室104内の燃圧(圧力)状態を示している。図3(g)は、弁部材31のリフト量を示しており、図中、リフトがゼロの状態は、閉弁状態にあることを示している。
【0076】
時刻t1、つまり駆動信号がOFFからONに切替わるまでは、出力取り出し部24のピストン部24aの位置は、上方にある(図3(b)参照)。このため、圧力制御室104の燃圧(圧力)は、燃料供給通路101及び燃料溜り室105、106とほぼ同じ圧力P1となっている(図3(f)参照)。この状態では、弁部材31に発生する上方の力は、下方の力よりも低いため、弁部材31の先端32は、ノズルボデー55のシート部55aに着座した状態を維持し、噴孔57から燃料は噴射されない。また、液圧発生部36の燃圧(圧力)は、低圧部109とほぼ同じ圧力P0となっている(図3(c)参照)。
【0077】
時刻t1となり駆動信号がONとなると、出力取り出し部24のピストン部24aは、ピエゾスタック21に発生した変位によって下方に移動させられる。そして、ピストン部24aが下方に押されるとともに、液圧発生部36内の燃圧(圧力)が上昇し始める。
【0078】
液圧発生部36内の燃圧(圧力)がある程度上昇し、時刻t2となると、ピストン部24aが受ける液圧発生部36内の燃圧(圧力)による力が、制御弁部材62を閉弁方向に付勢するスプリング49の付勢力よりも勝る。これにより、制御弁部材62が弁座66から離座し、開弁方向にリフトし始める。制御弁部材62が開弁方向にリフトすると、圧力制御室104内の燃料が、第2連通路75を経由して弁座66の下流側の弁室103に流入する。
【0079】
時刻t2から時刻t5までは、制御弁部材62が開弁しているので、圧力制御室104内の燃圧(圧力)が低下する。圧力制御室104内の燃圧(圧力)がある程度低下し、時刻t3となると、弁部材31に発生する下方の力が更に低められるため、弁部材31に発生する上方の力が下方の力よりも勝る。これにより、弁部材31が開弁方向にリフトし始める(図3(g)参照)。弁部材31が開弁方向にリフトすると、燃料供給通路101及び燃料溜り室105、106内の燃料が噴孔57より噴射される。
【0080】
時刻t4となり駆動信号がONからOFFに切替わると、ピストン部24aはスプリング44によって上方移動させられるので、液圧発生部36内の燃圧(圧力)が減圧される(図3(c)参照)。時刻t4から時刻t5までは、ピストン部24aの上方移動に従い、液圧発生部36内の燃圧(圧力)が更に低下する。
【0081】
ここで、本実施形態による燃料噴射弁1の構成に対し、弁室通路67にオリフィス68を有しない比較例の場合を説明する。比較例の図3(c)の破線の特性に示すように、液圧発生部36内の燃料の一部は、ピストン部24aの下方移動時の燃圧(圧力)上昇により第1〜第3摺動隙間a、b、cを通じてリーク燃料として低圧部109または弁室103に排出される。続いてピストン部24aの上方移動時に、ピストン部24aが元の位置に戻っても、上記排出燃料分が充分に補充されずに、液圧発生部36内の燃圧(圧力)が元に圧力P0に戻らない。次回噴射時までに元の圧力P0に回復しないと、制御弁部材62の開弁時期が遅れ、よって弁部材31の開弁時期の遅れを招くのである。
【0082】
万が一、液圧発生部36の排出分の燃料(リーク燃料)が充分に補充されないまま、噴射が繰返されると、噴孔57から噴射される燃料の噴射量が徐々に少なくなり、無噴射となる可能性がある。
【0083】
これに対し本実施形態では、弁室通路67に、弁室103から流出する燃料の流量を制限するオリフィス68を設けているため、図3(e)に示すように、弁室103に生じる燃圧を高められるので、比較例に比べて弁室103の燃圧(圧力)が増加した状態を維持することが可能となる。これにより、ピストン部24aの上方移動時、図4(a)に示すように、弁室103内の燃圧を液圧発生部36内の燃圧に対し高くでき、その差圧ΔPを利用して弁室103から液圧発生部36へ流入する流入量を増加することができる(図4(b)参照)。
【0084】
それによって、ピストン部24aの上方移動時に、液圧発生部36内の燃料の充填不足が解消し得るので、制御弁部材62の開閉動作が安定した、液圧発生部36の変位拡大作用を実現できる。
【0085】
以上説明した本実施形態では、変位取り出し部24のピストン部24a、制御弁部材62、及び液圧発生部36の構成は、液圧発生部36内に発生する燃圧(圧力)に対し、制御弁部材62の受圧面がピストン部24aの受圧面の面積より小さく形成される構成としている。これにより、ピエゾスタック21の伸縮による変位が入力される変位取り出し部24側の当該変位量を、制御弁部材62で拡大して出力可能となるため、ピエゾスタック21の伸縮による変位を、油圧(燃圧)により変位拡大する作用を実現できる。
【0086】
それ故に、「機械式のてこの原理」を利用し変位拡大する作用を実現するもののように力点、支点、及ぶ作用点の各部で摩耗を招くことはなく、摩耗による作動不良などの信頼性低下を抑制することができる。
【0087】
また、以上説明した本実施形態では、弁室通路67に、弁室103から流出する燃料の流量を制限するオリフィス68を設けているので、ピエゾスタック21が収縮に転じ、液圧発生部36内の燃圧(圧力)が低下後も、弁室103の燃圧(圧力)が増加した状態を維持することが可能となる。それによって、弁室103内の燃圧が液圧発生部36内の燃圧を上回るように、弁室103内の燃圧と液圧発生部36内の燃圧との差圧を形成し得る。これにより、その差圧ΔPを利用して弁室103から液圧発生部36へ流入する流入量を増加することができる。それによって、ピストン部24aの上方移動時に、液圧発生部36内の燃料の充填不足が解消し得るので、制御弁部材62の開閉動作が安定した、液圧発生部36の変位拡大作用を実現できる。
【0088】
以上の本実施形態による燃料噴射弁1によれば、摩耗による作動不良などの信頼性低下を抑制することと、変位量の変位拡大機能の安定化が図れることが両立することができる。
【0089】
また、以上説明した本実施形態では、ピストン部24aとシリンダ孔61との間の第1摺動隙間a、並びに制御弁部材62と支持孔63、64との間の第2摺動隙間b及び第3摺動隙間cを、液圧発生部36を液密にするように、僅かな隙間に設定する構成としている。さらに、上記第1摺動隙間a〜第3摺動隙間cのうち、第2摺動隙間bを少なくとも第3摺動隙間cより大きく設定することが好ましい。これにより、弁室103及び液圧発生部36間のリーク燃料が流れる第2摺動隙間b部のリーク燃料量を増やすことができ、ひいては、燃圧発生部36の燃圧低下時に、一時的に燃料不充填に陥る場合があったとしても、燃圧発生部36内の燃料の充填状態となる圧力回復の促進が図れる。
【0090】
なお、上記第2摺動隙間部bが第3摺動隙間部cに比べてその流路断面積を大きくするものことに限らず、その流路長さを短くするものであってもよい。
【0091】
また、変位取り出し部24のピストン部24aの移動方向とは反対方向に、制御弁部材62の移動方向を設定している。そして、変位取り出し部24のピストン部24aと制御弁部材62を、燃料噴射弁1の中心軸線に対し平行に配置する構成としている。
【0092】
これにより、例えばピエゾ素子22の積層数を減らし、駆動力の省力化と、ピエゾ素子22を積層する軸方向(積層方向)のアクチュエータ2の小型化が図れる。さらに、アクチュエータ2の一部である変位取り出し部24と、制御弁部材62とを燃料噴射弁1の中心軸線に沿って平行に配置でき、ひいては更に軸方向の燃料噴射弁1の小型化が図れる。
【0093】
(第2実施形態)
第2実施形態を図5に示す。第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態は、弁室通路167を制御弁部材62に設ける一例を示すものである。図5は、燃料噴射弁1の一部を示し、燃料噴射弁1の特徴部分に係る構造を示している。
【0094】
図5に示しように、弁室通路167は、制御弁部材62を貫通するように形成されており、低圧部109と弁室103を連通している。弁室通路167の途中には、オリフィス68が設けられている。
【0095】
このような構成であっても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0096】
また、上記構成により、弁室通路167を、制御弁部材62に貫通する連絡孔で構成することになるため、例えばハウジング5に制御弁部材62を迂回し、弁室103と低圧部109とを接続する孔を形成する場合に比べて、孔開け工数の低減が図れる。
【0097】
(第3実施形態)
第2実施形態を図6に示す。第2実施形態は第2実施形態の変形例である。図6は、燃料噴射弁1の一部を示し、燃料噴射弁1の特徴部分に係る構造を示している。
【0098】
図6に示すように、弁室通路167において制御弁部材62の外壁面に開口する開口部167aが、制御弁部材62の摺動移動によりバルブボデー53の内壁面によって閉塞または絞られる構成としている。これにより、弁室通路167の開口部167aは、第1実施形態及び第2実施形態に説明したオリフィス68と同様に、通路67、167内を流れる燃料の流量を制限する流量制限手段として機能する。
【0099】
さらに、制御弁部材62の摺動移動により開口部167aが閉塞または絞られるため、燃圧発生部36の燃圧低下時に、一時的に燃料不充填に陥る場合があったとしても、燃圧発生部36内の燃料の充填状態となる圧力回復の促進が更に一層図れる。
【0100】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0101】
(1)以上説明した本実施形態では、弁要素としての弁部材31を制御する制御弁を構成する「制御弁部材62、弁座66、及び弁室103」に関し、その弁室103に、オリフィス68を有する弁室通路67を接続する構成とした。この構成により、弁室103に生じる燃圧を高める作用を実現し得ると説明した。
【0102】
それによって、制御弁部材62の閉弁時に、制御弁部材62が弁座66に向けて下方移動する際に、弁室103内の燃圧によって生じる制御弁部材62の上方に向かう力を、上記作用により増やす相乗効果がある。これにより、制御弁部材62が弁座66に向けて下方移動する運動エネルギーが過度な大きさになるのを抑制し、ひいては制御弁部材62が弁座66に着座時の衝突力を緩和することが可能となる。
【0103】
(2)また、以上説明した本実施形態では、弁要素として、弁部材31を有する構成で説明した。弁要素は、これに限らず、例えば上記制御弁の制御弁部材62と、弁部材31との間に、例えば、圧力制御室を制御する別の制御弁を設け、当該別の制御弁の弁動作を、上記制御弁の制御弁部材62の開閉動作によって駆動制御する構成とするものであってもよい。
【0104】
(3)また、以上説明した本実施形態では、ピストン状に形成される変位取り出し部24のピストン部24aを、ピエゾスタック21を含むアクチュエータ2の構成要素の一部として説明した。これに限らず、変位取り出し部24のうちの支持部24bと、ピストン部24aとを別部材とし、ピエゾスタック21の伸縮による変位発生時に、支持部24bがピストン部24aに常に当接する構成とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 燃料噴射弁
2 アクチュエータ
3 弁要素
5 ハウジング
21 ピエゾスタック
22 ピエゾ素子
24 変位取り出し部
24a ピストン部
24b 支持部
31 弁部材(弁要素)
36 液圧発生部
44 スプリング
48 スプリング
51 ホルダボデー(ハウジング)
53 バルブボデー(ハウジング)
55 ノズルボデー(ハウジング)
55a シート部
57 噴孔
61 シリンダ孔
62 制御弁部材
62a 小径部
62b 大径部
63 第1支持孔
64 第2支持孔
65 燃料連絡通路
66 弁座
67 弁室通路(連絡流路)
68 オリフィス
71 アクチュエータ孔
72 収容孔
101 燃料供給通路
102 低圧燃料通路(低圧部)
103 弁室
104 圧力制御室
109 低圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する燃料噴射弁において、
噴孔が形成されているハウジングと、前記ハウジングに収容され、前記噴孔を開閉する弁要素と、前記弁要素の開閉動作を制御する制御弁と、前記弁要素を間接的に制御するように、前記制御弁を駆動するアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは、電圧を印加することにより伸縮するピエゾ素子、及び前記ピエゾ素子の伸縮する際の変位を前記アクチュエータの外部に取り出すピストン状の変位取り出し部を有し、
前記変位取り出し部の変位を燃圧に変化する燃圧発生部と、
前記燃圧発生部にて発生した燃圧を駆動源とし、前記制御弁の弁座に離座及び着座する制御弁部材であって、前記液圧発生部で発生する燃圧を受ける前記制御弁部材の受圧面が、前記変位取り出し部の受圧面より小さく形成されている制御弁部材と、
前記制御弁部材における前記液圧発生部で挟み込まれる部位とは異なる部位を挟み込み、かつ前記弁座の下流側に設けられる弁室であって、前記制御弁部材が前記弁座から離座及び着座することにより、前記弁室の内部の燃圧を増減する弁室と、
前記弁室に設けられる前記弁座の上流側に設けられ、前記弁座に連通する圧力制御室であって、燃料が導入されて前記弁要素に背圧を付与する圧力制御室と、
を備え、
前記制御弁部材は、前記弁室、前記液圧発生部、及び燃料を低圧源に戻すための低圧部間に介設されるとともに、前記ハウジングに摺動可能に支持され、
前記弁室は、前記低圧部に接続する連絡流路であって、前記弁室と前記低圧部の間にオリフィスを有する連絡流路が設けられていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記連絡流路は、前記制御弁部材を貫通する連絡孔であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記制御弁部材は、前記制御弁部材の外壁面に前記連絡孔が開口する開口部であって、前記ハウジング内を前記制御弁部材が摺動することにより、前記開口部が前記ハウジングの内壁面により閉塞または絞られる開口部を有していることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記ハウジング内に摺動可能に支持される前記制御弁部材の摺動隙間は、前記液圧発生部及び前記低圧部間の第1摺動隙間部と、前記弁室及び前記液圧発生部間の第2摺動隙間部とを有し、
前記第2摺動隙間部の流路断面積が前記第1摺動隙間部の流路断面積より大きく設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記ハウジング内に摺動可能に支持される前記制御弁部材の摺動隙間は、前記液圧発生部及び前記低圧部間の第1摺動隙間部と、前記弁室及び前記液圧発生部間の第2摺動隙間部とを有し、
前記第2摺動隙間部の流路長さが前記第1摺動隙間部の流路長さより短く設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃料噴射弁において、
前記変位取り出し部と、前記制御弁部材は、前記燃料噴射弁の中心軸線に対して平行に配置されていることを特徴とする燃料噴射弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236375(P2010−236375A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82674(P2009−82674)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】