説明

燃料噴射装置

【課題】 外部へ漏れる作動音および振動が低減される燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】 ニードル25と弁ボディ21との衝突、および可動コア35と固定コア34との衝突によって発生した作動音および振動は、燃料通路41を流れる燃料を介して燃料導入口15側へ伝播する。伝播する作動音および振動は、燃料通路41に設置されている振動吸収部材50を通過することにより、そのエネルギーが振動吸収部材50に吸収される。これにより、燃料通路41を流れる燃料を伝わる作動音および振動は減衰し、燃料から収容パイプ11を介して外部へ放出される騒音が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(以下、内燃機関を「エンジン」という。)に燃料を噴射する燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニードルを電磁的に駆動する燃料噴射装置が公知である。このような燃料噴射装置では、ニードルおよび可動コアは一体となって軸方向へ往復移動する。コイルへ通電すると、固定コアと可動コアとの間には磁気吸引力が発生する。これにより、一体の可動コアおよびニードルは、固定コア側へ移動する。一方、コイルへの通電を停止すると、一体の可動コアおよびニードルは、例えばスプリングなどの弾性部材によって固定コアとは反対側すなわち弁座側へ移動する(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−195084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コイルへの通電時、一体の可動コアおよびニードルは、固定コア側へ吸引される。そのため、ニードルまたは可動コアは移動を規制するストッパや固定コアと衝突する。また、コイルへの通電の停止時、一体の可動コアおよびニードルは、弁座側へ押し付けられる。そのため、ニードルのシール部は弁座に衝突する。これらの結果、コイルへの通電の断続によって、一体の可動コアおよびニードルはストッパまたは弁座との衝突を繰り返す。その結果、外部へ漏れる作動音および振動が大きくなる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、外部へ漏れる作動音および振動が低減される燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、ストッパの燃料流れ上流側に振動吸収部材が設置されている。可動コアまたはニードルとストッパまたは弁座との衝突によって発生する作動音および振動は、燃料通路を経由して燃料流れ上流側へ伝播する。伝播した作動音および振動は、燃料通路を形成するハウジングを介して燃料噴射装置の周囲の空気へ伝播する。これにより、作動音および振動は燃料噴射装置の外部に漏れる。請求項1記載の発明では、燃料通路に振動吸収部材を備えている。これにより、燃料通路を伝播する作動音および振動は、外部へ漏れる前に振動吸収部材によって減衰する。したがって、外部へ漏れる作動音および振動を低減することができる。
【0007】
また、従来、燃料噴射装置とこの燃料噴射装置を保持する例えばエンジン周辺機器との間には、外部へ漏れる作動音および振動の低減を図るための緩衝部材が設置されている。そのため、エンジンまたはエンジンの周辺に緩衝部材を設置するための空間を確保する必要がある。請求項1記載の発明では、振動吸収部材を備えることにより、燃料噴射装置は単体で外部へ漏れる作動音および振動を低減している。そのため、例えば燃料噴射装置とエンジン周辺機器との間に緩衝部材を設置する必要がない。したがって、空間の確保にともなう体格の増大および構造の複雑化を招くことなく、外部へ漏れる作動音および振動を低減することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、振動吸収部材は燃料通路を区画するハウジングの内部に設置されている。そのため、燃料通路を伝播する作動音および振動は、振動吸収部材によって減衰する。したがって、外部へ漏れる作動音および振動を低減することができる。
請求項3記載の発明では、フィルタに振動吸収部材が設けられている。従来、燃料噴射装置は、燃料導入口に燃料中の異物を捕集するフィルタを備えている。請求項3記載の発明では、このフィルタに振動吸収部材が設けられている。そのため、フィルタは、燃料に含まれる異物を捕集するフィルタとしてだけでなく、振動吸収部材としても機能する。したがって、部品点数の増加を招くことがなく、構造を簡単にすることができる。また、フィルタは、燃料が流入する燃料導入口に限らず、ハウジングのいずれかの部位に設置することができる。
【0009】
請求項4記載の発明では、振動吸収部材はハウジングの燃料導入口に燃料を供給するデリバリパイプに設置されている。振動吸収部材は、作動音および振動が外部へ漏れる前に減衰可能な位置であれば、作動音および振動の発生源よりも燃料流れ上流側のいずれの位置に設置してもよい。そのため、デリバリパイプに振動吸収部材を設置してもよい。これにより、燃料通路を伝播する作動音および振動は、振動吸収部材によって減衰する。したがって、デリバリパイプを介して外部へ漏れる作動音および振動を低減することができる。
請求項5記載の発明では、振動吸収部材は燃料孔を有している。振動吸収部材は、燃料通路に設置される。そのため、燃料通路を流れる燃料は、振動吸収部材の燃料孔を通過する。したがって、燃料通路に振動吸収部材を設置しても、燃料通路の燃料の流れを許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射装置を構成するインジェクタを図1および図2に示す。第1実施形態によるインジェクタ10は、例えばガソリンエンジンの燃焼室に吸入される吸気に燃料を噴射する。なお、インジェクタ10は、ガソリンエンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する直噴式のガソリンエンジン、またはディーゼルエンジンに適用してもよい。燃料噴射装置は、インジェクタ10、およびインジェクタ10に燃料を供給する図示しないデリバリパイプなどから構成されている。
【0011】
インジェクタ10の収容パイプ11は、薄肉の筒状に形成されている。収容パイプ11は、第一磁性部12、非磁性部13および第二磁性部14を有している。非磁性部13は、第一磁性部12と第二磁性部14との磁気的な短絡を防止している。収容パイプ11は、一方の端部に燃料導入口15を有している。燃料導入口15は、図示しない燃料ポンプから燃料が供給される。燃料導入口15に供給された燃料は、フィルタ16を経由して収容パイプ11の内周側の燃料通路41に流入する。フィルタ16は、収容パイプ11の端部に設置され、燃料に含まれる異物を除去する。
【0012】
収容パイプ11の燃料導入口15とは反対側、すなわち第一磁性部12の先端にはノズル20が設置されている。ノズル20は、弁ボディ21および噴孔プレート22を有している。弁ボディ21は、略円筒状に形成され、第一磁性部12の内周側に固定されている。弁ボディ21は、先端すなわち燃料導入口15とは反対側の端部に開口部21aを有している。弁ボディ21は、開口部21aに近づくにつれて内径が小さくなる円錐状の内壁に弁座23を有している。弁ボディ21は、収容パイプ11とは反対側の端部に噴孔プレート22を有している。噴孔プレート22は、弁座23側の内壁と弁座23とは反対側の外壁とを連通する噴孔24を有している。
【0013】
ニードル25は、第一磁性部12および弁ボディ21の内周側に軸方向へ往復移動可能に収容されている。ニードル25は、収容パイプ11および弁ボディ21と概ね同軸上に配置されている。ニードル25は、噴孔プレート22側の端部近傍にシール部26を有している。シール部26は、弁ボディ21に形成されている弁座23に着座可能である。ニードル25は、弁ボディ21との間に燃料が流れる燃料通路27を形成する。ニードル25のシール部26が弁座23から離座することにより、燃料通路27は噴孔24と連通する。本実施形態の場合、ニードル25は筒状に形成されている。ニードル25は、内周側に燃料通路42を形成している。ニードル25は、燃料通路42と燃料通路27とを接続する孔251および孔252を有している。なお、ニードル25は、筒状に限らず中実の柱状でもよい。
【0014】
インジェクタ10は、ニードル25を駆動する駆動部30を有している。駆動部30は、電磁駆動部である。駆動部30は、コイル31、プレートプレート32、ホルダ33、固定コア34および可動コア35を有している。プレート32およびホルダ33は、磁性材料から形成されている。プレート32は、コイル31の外周側を覆っている。ホルダ33は、収容パイプ11の外周側に配置され、噴孔24側からコイル31を保持している。プレート32およびホルダ33は、磁性材料から形成され、磁気的に接続している。コイル31、プレート32、ホルダ33および収容パイプ11の外周側は、樹脂モールド36によって覆われている。コイル31は、配線部材37を経由してコネクタ38に設置されているターミナル39と電気的に接続している。筒状の収容パイプ11、弁ボディ21、これらの外周側に設置される駆動部30、およびこれらを覆う樹脂モールド36などは、内部に燃料通路を区画するハウジングである。
【0015】
固定コア34は、収容パイプ11を挟んでコイル31の内周側に固定されている。固定コア34は、例えば鉄などの磁性材料により略円筒状に形成されている。固定コア34は、内周側に燃料通路43を形成している。固定コア34は、可動コア35との間に所定の隙間を形成して設置される。この固定コア34と可動コア35との間の隙間は、ニードル25のリフト量に対応する。
【0016】
可動コア35は、収容パイプ11の内周側に収容されている。可動コア35は、収容パイプ11の内周側を軸方向へ往復移動可能である。可動コア35は、噴孔24とは反対側の端部が固定コア34と対向している。可動コア35は、例えば鉄などの磁性材料から略円筒状に形成されている。可動コア35は、内周側に燃料通路44を形成している。ニードル25は、シール部26とは反対側の端部が可動コア35の内周側に固定されている。これにより、ニードル25および可動コア35は、一体となって軸方向へ往復移動する。
【0017】
一体のニードル25および可動コア35は、シール部26が弁座23に着座することにより、噴孔24側への移動が規制される。また、一体のニードル25および可動コア35は、噴孔24とは反対側へ移動すると可動コア35が固定コア34に接する。これにより、一体のニードル25および可動コア35は、固定コア34側への移動が規制される。そのため、固定コア34は、一体のニードル25および可動コア35の固定コア34側への移動を規制するストッパである。
【0018】
可動コア35は、弾性部材としてのスプリング17と接している。弾性部材は、スプリング17に限らず、例えば板ばね、オイルダンパあるいはエアダンパなど、弾性を有していれば適用することができる。スプリング17は、軸方向の一方の端部が可動コア35と接し、他方の端部がアジャスティングパイプ18と接している。アジャスティングパイプ18は、固定コア34の内周側に固定されている。スプリング17は、軸方向へ伸長する力を有している。そのため、一端が固定されているスプリング17は、他端側において一体のニードル25および可動コア35を弁座23側へ押し付ける。スプリング17の荷重は、アジャスティングパイプ18の固定コア34への圧入量により調整される。コイル31に通電していないとき、一体のニードル25および可動コア35は弁座23側へ押し付けられる。これにより、シール部26は弁座23に着座する。アジャスティングパイプ18は、略円筒状に形成されている。アジャスティングパイプ18は、内周側に燃料通路45を形成する。
【0019】
燃料導入口15からフィルタ16へ流入した燃料は、収容パイプ11が形成する燃料通路41、アジャスティングパイプ18が形成する燃料通路45、固定コア34が形成する燃料通路43、可動コア35が形成する燃料通路44、ニードル25の燃料通路42、孔251および孔252を経由して燃料通路27へ流入する。
【0020】
インジェクタ10は、振動吸収部材50を備えている。振動吸収部材50は、円板状に形成されている。振動吸収部材50は、例えばステンレス、アルミニウムあるいは鉄などの金属、ポリアミド樹脂あるいはポリアセタール樹脂などの合成樹脂、またはゴムなどから形成されている。振動吸収部材50は、燃料に晒されるため、耐油性を有する材料が適している。また、振動吸収部材50は、耐熱性が高いことが望ましい。振動吸収部材50は、燃料通路41を形成する収容パイプ11の内周側に設置されている。これにより、振動吸収部材50は、ストッパである固定コア34の噴孔24とは反対側に設置される。振動吸収部材50は、外周壁51が収容パイプ11の内周壁11aと接している。これにより、振動吸収部材50は、収容パイプ11の内部に保持される。なお、振動吸収部材50は、例えば溶接や接着などにより収容パイプ11の内部に固定してもよい。
【0021】
振動吸収部材50は、図3に示すように内周側に燃料が通過可能な燃料孔52を有している。振動吸収部材50の燃料孔52は、図3(A)に示すように中心付近に一つ設置してもよい。また、燃料孔52は、図3(B)、図3(C)または図3(D)に示すように、複数設置してもよい。燃料孔52は、燃料の流量に応じて、所望の開口面積となるように形状および数量を任意に選択可能である。
【0022】
コイル31への通電を停止しているとき、固定コア34と可動コア35との間には磁気吸引力が発生しない。そのため、一体のニードル25および可動コア35は、スプリング17によって弁ボディ21側へ押し付けられる。これにより、一体のニードル25および可動コア35は、弁ボディ21側へ移動し、シール部26が弁座23に着座している。その結果、燃料通路27と噴孔24との間は遮断され、噴孔24から燃料は噴射されない。
【0023】
コイル31へ通電すると、発生した磁界により、第二磁性部14、固定コア34、可動コア35、第一磁性部12、ホルダ33およびプレート32には磁気回路が形成される。これにより、固定コア34と可動コア35との間には、磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力によって、可動コア35は固定コア34側へ吸引される。磁気吸引力がスプリング17の押し付け力よりも大きくなると、一体のニードル25および可動コア35は固定コア34側へ移動する。一体のニードル25および可動コア35は、可動コア35が固定コア34に接するまで固定コア34側へ移動する。一体のニードル25および可動コア35が固定コア34側へ移動すると、シール部26は弁座23から離座する。これにより、燃料通路27と噴孔24とは開口部21aを介して連通し、噴孔24から燃料が噴射される。
【0024】
コイル31への通電を停止すると、固定コア34と可動コア35との間の磁気吸引力は消滅する。そのため、一体にニードル25および可動コア35は、再びスプリング17によって弁ボディ21側へ押し付けられる。これにより、一体のニードル25および可動コア35は、弁ボディ21側へ移動する。一体のニードル25および弁ボディ21は、シール部26が弁座23に着座するまで弁ボディ21側へ移動する。シール部26が弁座23に着座すると、燃料通路27と噴孔24との間は遮断され、噴孔24から燃料は噴射されない。
【0025】
上述のように、一体のニードル25および可動コア35は、コイル31への通電によって可動コア35が固定コア34に衝突する。また、一体のニードル25および可動コア35は、コイル31への通電の停止によってニードル25が弁ボディ21に衝突する。そのため、コイル31への通電の断続によって、一体のニードル25および可動コア35は弁ボディ21または固定コア34への衝突を繰り返す。
【0026】
ニードル25と弁ボディ21との衝突、および可動コア35と固定コア34との衝突によって発生した作動音および振動は、ニードル25、弁ボディ21、可動コア35または固定コア34に接して存在する燃料を振動させる。これにより、作動音および振動は、各部の燃料通路を流れる燃料を介して上流側すなわち燃料導入口15側へ伝播する。燃料通路の燃料を介して燃料導入口15側へ伝播した作動音および振動は、燃料通路41を形成し燃料と接している収容パイプ11を振動させる。この収容パイプ11の振動は、収容パイプ11の外周側すなわちインジェクタ10の外側に存在する空気を振動させる。このインジェクタ10の外側の空気の振動によって、作動音および振動の発生源よりも燃料流れ上流側においてインジェクタ10の外部へ騒音が放出される。
【0027】
燃料通路41に振動吸収部材50を設置すると、燃料通路41を流れる燃料を伝わる作動音および振動は、振動吸収部材50に伝播する。伝播する作動音および振動が振動吸収部材50を通過することにより、作動音および振動のエネルギーは振動吸収部材50によって吸収される。これにより、燃料通路41を流れる燃料を伝わる作動音および振動は減衰する。その結果、収容パイプ11の振動および収容パイプ11の振動にともなう外部への騒音の放出が低減される。したがって、インジェクタ10の外部へ漏れる作動音および振動を低減することができる。
【0028】
また、インジェクタ10は、振動吸収部材50を設置することにより、単体で外部へ漏れる作動音および振動を低減する。そのため、インジェクタ10を搭載するエンジンまたはエンジン周辺機器との間に、例えば緩衝部材などの設置が不要となる。その結果、エンジンまたはエンジン周辺機器に、インジェクタ10を搭載するために確保すべき空間が低減する。したがって、エンジン周辺の体格の小型化が図られるとともに、構造の複雑化および部品点数の増大を招くことなく、インジェクタ10の外部への作動音および振動の漏れを低減することができる。
【0029】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるインジェクタの振動吸収部材を図4に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
図4に示すように、振動吸収部材60は微細な燃料孔61を有している。燃料孔61は、燃料通路を流れる燃料に含まれる異物よりも小さい。そのため、燃料に含まれる異物は、振動吸収部材60によって捕集される。すなわち、振動吸収部材60は、振動吸収機能だけでなく、フィルタとしての機能を有している。
第2実施形態では、振動吸収部材60によって燃料に含まれる異物を捕集している。これにより、燃料導入口15に設置されるフィルタ16を廃止することができる。したがって、部品点数を低減することができ、構造を簡単にすることができる。
【0030】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるインジェクタを図5に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一に構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
図5に示すように、収容パイプ11の燃料導入口15に設置されるフィルタ70はカラー71、メッシュ72およびステム73を有している。カラー71は、収容パイプ11の内周側に圧入される。そのため、カラー71は、金属によって形成されている。これに対し、メッシュ72およびステム73は、振動を吸収可能な材料から形成されている。すなわち、フィルタ70は、振動吸収部材であるメッシュ72およびステム73を有している。メッシュ72およびステム73は、例えばゴムや合成樹脂などにより形成されている。第3実施形態では、第2実施形態とは反対にインジェクタ10が備えているフィルタ70に振動吸収機能を付加している。第3実施形態では、別体の振動吸収部材を追加する必要がない。したがって、部品点数を低減することができる。
【0031】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による燃料噴射装置を図6に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
図6に示すように、燃料噴射装置は、インジェクタ10と、インジェクタ10に接続されているデリバリパイプ80とを備えている。デリバリパイプ80は、燃料ポンプからインジェクタ10へ分配される燃料が流れる。デリバリパイプ80は、インジェクタ10の燃料導入口15へ燃料を供給する。デリバリパイプ80は、メイン通路81とメイン通路81から分岐するサブ通路82とを形成している。サブ通路82は、インジェクタ10の収容パイプ11が形成する燃料通路41に連通している。第4実施形態では、燃料通路には、デリバリパイプ80のメイン通路81およびサブ通路82が含まれる。
【0032】
振動吸収部材50は、デリバリパイプ80のサブ通路82に設置されている。振動吸収部材50は、第2実施形態と同様に燃料通路を流れる燃料に含まれる異物よりも小さい燃料孔を有している。すなわち、振動吸収部材50は、フィルタとしての機能を有している。これにより、インジェクタ10の燃料導入口15にはフィルタが設置されていない。
【0033】
振動吸収部材50は、ストッパの上流側であれば収容パイプ11の内部に限らず設置することができる。発生した作動音および振動は、燃料通路の燃料を伝播して収容パイプ11だけでなくデリバリパイプ80も振動させる。そのため、燃料通路のいずれかの部分で燃料を伝播する作動音および振動を吸収することにより、外部へ放出される作動音および振動が低減される。したがって、振動吸収部材50をデリバリパイプ80に設置しても、外部へ漏れる作動音および振動を低減することができる。
【0034】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるインジェクタを図7に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第5実施形態は、構造が第1実施形態と異なっている。第5実施形態によるインジェクタ110は、筒状の固定コア134を備えている。固定コア134は、軸方向の一方の端部に燃料導入口15を形成している。固定コア134は、他方の端部がニードル125と一体の可動コア135と接している。ニードル125は、可動コア135側の端部において一部が面取りされている。これにより、可動コア135とニードル125との間には、燃料通路46が形成される。ニードル125は、柱部1251および頭部1252を有している。頭部1252は、柱部1251の可動コア135とは反対側の端部に設置されている。シール部126は、頭部1252の外周面に形成されている。
【0035】
ノズル20は、ホルダ133の内周側に設置されている。ホルダ133は、ノズル20と反対側の端部が非磁性パイプ111を介して固定コア134と接続している。可動コア135は、非磁性パイプ111およびホルダ133の内周側を軸方向へ往復移動する。ホルダ133は、コイル31の外周側を覆うハウジング132を介して固定コア134と磁気的に接続されている。弁ボディ21とニードル125とは、燃料通路27を形成している。
【0036】
ノズル20とホルダ133との間には、ストッパ90が挟み込まれている。ストッパ90は、ニードル125の柱部1251と頭部1252との接続部分に形成される段差と接する。ストッパ90は、可動コア135側と弁ボディ21側とを連通する燃料通路91を形成している。一体のニードル125および可動コア135は、ニードル125とストッパ90とが接することにより、固定コア134側への移動が規制される。すなわち、コイル31へ通電すると、一体のニードル125および可動コア135はニードル125がストッパ90と接するまで固定コア134側へ移動する。また、コイル31への通電を停止すると、一体のニードル125および可動コア135はシール部126が弁座23に接するまで弁ボディ21側へ移動する。これにより、コイル31への通電を断続すると、ニードル125はストッパ90または弁ボディ21との衝突を繰り返す。
【0037】
燃料導入口15からフィルタ16へ流入した燃料は、固定コア134が形成する燃料通路143、アジャスティングパイプ118が形成する燃料通路145、可動コア135が形成する燃料通路144、可動コア135とニードル125とが形成する燃料通路46、ニードル125とホルダ133とが形成する燃料通路47、およびストッパ90が形成する燃料通路91を経由して燃料通路27へ流入する。
【0038】
インジェクタ110は、振動吸収部材150を備えている。振動吸収部材150は、第1実施形態と同様に略円板状に形成されている。振動吸収部材150は、ニードル125とホルダ133との間の燃料通路47に設置されている。これにより、振動吸収部材150は、ストッパ90の噴孔24とは反対側に設置される。振動吸収部材150は、図8に示すように円弧環形状に形成されている。振動吸収部材150は、中心部にニードル125の柱部1251が貫く孔部151を有している。また、振動吸収部材150は、孔部151の外周側に燃料が通過する複数の燃料孔152を有している。
【0039】
第5実施形態では、ニードル125とストッパ90とが接することにより一体のニードル125および可動コア135の固定コア134側への移動を規制するインジェクタ110に振動吸収部材150を適用している。コイル31への通電の断続によって、ニードル125は弁ボディ21またはストッパ90との衝突を繰り返す。ニードル125と弁ボディ21またはストッパ90との衝突によって発生した作動音および振動は、燃料通路の燃料を経由して伝播する。燃料通路を構成する燃料通路47に振動吸収部材150を設置することによって、作動音および振動の伝播は減衰する。したがって、インジェクタ110の外部への作動音および振動の放出を低減することができる。
【0040】
以上説明した複数の実施形態では、ノズル20の噴孔プレート22に噴孔24を設置する例について説明した。しかし、ノズル20の弁ボディ21に噴孔24を形成してもよい。また、振動吸収部材50、150は、設置される収容パイプ11、デリバリパイプ80およびホルダ133の形状に応じて任意の外形に変更することができる。さらに、複数の実施形態では、振動吸収部材を収容パイプ11またはデリバリパイプ80の内周側に設置する例について説明した。しかし、振動吸収部材は、作動音および振動の発生源よりも燃料流れ上流側であれば、固定コア、可動コアあるいはアジャスティングパイプの内周側などに設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態によるインジェクタを示す断面図である。
【図2】図1に示すインジェクタのノズルを拡大した断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるインジェクタの振動吸収部材の平面形状を示す概略図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるインジェクタの振動吸収部材の平面形状を示す概略図である。
【図5】本発明の第3実施形態によるインジェクタを示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態によるインジェクタを示す断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態によるインジェクタを示す断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態によるインジェクタの振動吸収部材の平面形状を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
10、110 インジェクタ(燃料噴射装置)、11 収容パイプ、15 燃料導入口、20 ノズル、23 弁座、24 噴孔、25、125 ニードル、26、126 シール部、27 燃料通路、31 コイル、34、134 固定コア(ストッパ)、35、135 可動コア、41、42、43、44、45、46、47、143、144、145 燃料通路、50、60、150 振動吸収部材、52、61、152 燃料孔、70 フィルタ、72 メッシュ(振動吸収部材)、73 ステム(振動吸収部材)、80 デリバリパイプ(燃料噴射装置)、81 メイン通路(燃料通路)、82 サブ通路(燃料通路)、90 ストッパ、91 燃料通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、内部に前記開口部へ連通する燃料通路を区画するハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ハウジングの弁座に着座または離座することにより、前記開口部への燃料流れを断続するニードルと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ニードルとともに軸方向へ往復移動する可動コアと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ニードルまたは前記可動コアの開弁方向への移動を規制するストッパと、
前記ストッパよりも燃料流れ上流側に設置されている振動吸収部材と、
を備えることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
前記振動吸収部材は、前記ハウジングの内部に設置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記ハウジングに設けられ、燃料に含まれる異物を捕集するフィルタを備え、
前記フィルタに前記振動吸収部材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記ハウジングの燃料導入口に燃料を供給するデリバリパイプを備え、
前記振動吸収部材は、前記デリバリパイプの内部に設置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記振動吸収部材は、燃料が通過可能な燃料孔を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の燃料噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−83802(P2006−83802A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271145(P2004−271145)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】