燃料直噴エンジン
【課題】 ペントルーフ型ピストンを備えた燃料直噴エンジンにおいて、キャビティの円周方向全域で燃料および空気を均一に混合して燃焼状態を改善しながら、ピストンの円周方向全域を均一に冷却できるようにする。
【解決手段】 ピストン13の頂面の中央部に凹設したキャビティ25をN個の仮想的なキャビティ区分に区画したとき、各々の仮想的なキャビティ区分の容積を略等しくすることで、燃料および空気の混合状態を均一化することができる。しかもキャビティ25の裏部にオイルが供給されるクーリングチャネル26を円周方向に設け、キャビティ25とクーリングチャネル26との最短距離dが円周方向に略均一になるように、クーリングチャネル26の高さを円周方向に変化させたので、キャビティ25の冷却状態も各々の仮想的なキャビティ区分において略等しくなり、キャビティ25における混合気の燃焼状態を更に均一化することができる。
【解決手段】 ピストン13の頂面の中央部に凹設したキャビティ25をN個の仮想的なキャビティ区分に区画したとき、各々の仮想的なキャビティ区分の容積を略等しくすることで、燃料および空気の混合状態を均一化することができる。しかもキャビティ25の裏部にオイルが供給されるクーリングチャネル26を円周方向に設け、キャビティ25とクーリングチャネル26との最短距離dが円周方向に略均一になるように、クーリングチャネル26の高さを円周方向に変化させたので、キャビティ25の冷却状態も各々の仮想的なキャビティ区分において略等しくなり、キャビティ25における混合気の燃焼状態を更に均一化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂面のピストン中心軸方向の高さが円周方向に変化するピストンと、前記ピストンの頂面の中央部に凹設されたキャビティと、前記キャビティ内に燃料を噴射するフュエルインジェクタとを備えた燃料直噴エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料直噴エンジンのピストンの平坦な頂面に形成されるキャビティの形状を、フュエルインジェクタからの燃料噴射方向ではキャビティの径を増加させて深さを浅くし、燃料噴射方向以外の方向ではキャビティの径を減少させて深さを深くしたものにおいて、ピストンの内部に形成される環状のクーリングチャネルを波状にうねらせることで、クーリングチャネルとキャビティとの距離を円周方向に一定にし、ピストン全体の均一な冷却を図るものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また燃料直噴エンジンのペントルーフ型のピストンの内部に、キャビティの外周に沿う環状のクーリングチャネルと、ピストンボス部のピストンピン穴の吸気側および排気側をピストン中心軸方向に延びるオイル通路とを形成し、このオイル通路を前記クーリングチャネルに連通させて更にピストン頂面側まで延長することで、ピストン全体の均一な冷却を図るものが、下記特許文献2により公知である。
【特許文献1】実公平1−21168号公報
【特許文献1】特開2007−278251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペントルーフ型のピストンを有する上記特許文献2に記載された燃料直噴エンジンでは、クーリングチャネルからの距離が大きくなるピストン頂面の稜線部近傍を効率的に冷却すべく、ピストン中心軸方向に延びるオイル通路をクーリングチャネルを超えてピストン頂面側まで延長しているため、ピストンの内部構造が複雑になって加工コストが嵩むだけでなく、オイル通路の上端が袋小路になっているために充分な量のオイルを供給することができず、ピストンの全体の均一な冷却を図ることが困難となる可能性があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ペントルーフ型のピストンを備えた燃料直噴エンジンにおいて、キャビティの円周方向全域で燃料および空気を均一に混合して燃焼状態を改善しながら、ピストンの円周方向全域を均一に冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、頂面のピストン中心軸方向の高さが円周方向に変化するピストンと、前記ピストンの頂面の中央部に凹設されたキャビティと、前記キャビティ内に燃料を噴射するフュエルインジェクタとを備えた燃料直噴エンジンにおいて、Nを2以上の自然数とし、前記キャビティの内壁面と、ピストン中心軸から放射方向に延びて互いに均等な挟み角を有するN個の半平面とで、前記キャビティをN個の仮想的なキャビティ区分に区画したとき、前記各々の仮想的なキャビティ区分の容積が略等しくなるように、前記キャビティの内壁面の形状を設定するとともに、前記ピストンにおける前記キャビティの裏部にオイルが供給されるクーリングチャネルを円周方向に設けたものにおいて、前記キャビティと前記クーリングチャネルとの最短距離が円周方向に略均一になるように、前記クーリングチャネルのピストン中心軸方向の高さを円周方向に変化させたことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記クーリングチャネルの断面形状が円周方向に略同一であることを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記クーリングチャネルの下部のピストン中心軸方向の高さが円周方向に略同一であることを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記クーリングチャネルの上部のピストン中心軸方向の高さは、ピストンピン軸線の方向で最も高く、ピストンピン軸線に対して直交する方向で最も低く、かつ前記二つの方向の間で単調に変化しており、前記クーリングチャネルの高さが変化する傾斜部分から下向きに延びるオイル供給通路内に、ピストンの下方に設けたオイルジェットからオイルを噴射することを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0010】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記クーリングチャネルを中空パイプで構成し、その外周面にピストンリングを保持する耐摩環を一体に形成したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0011】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記クーリングチャネルはピストンピン軸線を挟んで二つのクーリングチャネルに分離されており、前記各々のクーリングチャネルの一端側からオイルを供給して他端側からオイルを排出することを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0012】
尚、実施の形態のプレッシャリング31は本発明のピストンリングに対応する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、ピストンの頂面の中央部に凹設したキャビティをN個の仮想的なキャビティ区分に区画したとき、各々の仮想的なキャビティ区分の容積が略等しくなるようにキャビティの内壁面の形状を設定したので、キャビティにおける燃料および空気の混合状態を均一化してエンジンの出力向上および排気有害物質の低減を図ることができる。しかもキャビティの裏部にオイルが供給されるクーリングチャネルを円周方向に設ける際に、キャビティとクーリングチャネルとの最短距離が円周方向に略均一になるように、クーリングチャネルのピストン中心軸方向の高さを円周方向に変化させたので、キャビティの冷却状態も各々の仮想的なキャビティ区分において略等しくなり、キャビティにおける混合気の燃焼状態を更に均一化することができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、クーリングチャネルの断面形状が円周方向に略同一であるので、クーリングチャネルの各部のオイルの流速が一定になり、ピストンを円周方向により一層均一に冷却することができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、クーリングチャネルの下部のピストン中心軸方向の高さが円周方向に略同一であるので、クーリングチャネルの波打ちを少なくして燃料の流動を促進することができるだけでなく、ピストンの鋳造時にクーリングチャネルを成形する中子の下部を平坦にして、中子の製造および金型内での中子の支持を容易化することができる。
【0016】
また請求項4の構成によれば、クーリングチャネルの上部のピストン中心軸方向の高さが、ピストンピン軸線の方向で最も高く、ピストンピン軸線に対して直交する方向で最も低く、かつ前記二つの方向の間で単調に変化しており、クーリングチャネルの高さが変化する傾斜部分から下向きに延びるオイル供給通路内に、ピストンの下方に設けたオイルジェットからオイルを噴射するので、オイルジェットからオイル供給通路内に噴射された燃料はクーリングチャネルの傾斜部に供給されるため、その燃料の多くはオイル供給通路に対して鈍角を成すクーリングチャネルの高い側に流入する。その結果、クーリングチャネルにおける燃料の流動方向を一定にし、ピストンの冷却を安定させることができる。
【0017】
また請求項5の構成によれば、中空パイプで構成したクーリングチャネルの外周面にピストンリングを保持する耐摩環を一体に形成したので、ピストンの鋳造時に中子を用いずに耐摩環を利用してクーリングチャネルを形成することができる。このとき、クーリングチャネルの下部のピストン中心軸方向の高さが円周方向に略同一であるため、耐摩環の形成に支障を来すことはない。
【0018】
また請求項6の構成によれば、クーリングチャネルをピストンピン軸線を挟んで二つのクーリングチャネルに分離し、各々のクーリングチャネルの一端側からオイルを供給して他端側からオイルを排出するので、環状のクーリングチャネルと異なってオイルの入口から出口への流路が一通りしかなくなり、クーリングチャネル内のオイルの流れが安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図14は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1はディーゼルエンジンの要部縦断面図(図12の1−1線断面図)、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図1の3−3線矢視図、図4はピストンの上部斜視図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図3の6−6線断面図、図7は図3の7−7線断面図、図8は補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図5に対応する図、図9は補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図6に対応する図、図10は仮想的なキャビティ区分の説明図、図11はキャビティ区分の方向を円周方向に変化させたときの、該キャビティ区分の容積の変化率を示すグラフ、図12は図1の12方向矢視図、図13はピストンのクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図、図14は図13の14A−14A線断面図および14B−14B線断面図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、燃料直噴型のディーゼルエンジンは、シリンダブロック11に形成されたシリンダ12に摺動自在に嵌合するピストン13を備えており、ピストン13はピストンピン14およびコネクティングロッド15を介して図示せぬクランクシャフトに接続される。シリンダブロック11の上面に結合されるシリンダヘッド16の下面に、ピストン13の頂面に対向する2個の吸気バルブ孔17,17と、2個の排気バルブ孔18,18とが開口しており、吸気バルブ孔17,17に吸気ポ−ト19が連通し、排気バルブ孔18,18に排気ポート20が連通する。吸気バルブ孔17,17は吸気バルブ21,21で開閉され、排気バルブ孔18,18は排気バルブ22,22で開閉される。ピストン中心軸Lp上に位置するようにフュエルインジェクタ23が設けられるとともに、フュエルインジェクタ23に隣接するようにグロープラグ24が設けられる。
【0022】
図1および図4から明らかなように、ピストン13の頂面と、そこに対向するシリンダヘッド16の下面とは平坦ではなく断面三角形のペントルーフ状に傾斜しており、この形状により、吸気ポ−ト19および排気ポート20の湾曲度を小さくするとともに吸気バルブ孔17,17および排気バルブ孔18,18の直径を確保し、吸気効率および排気効率を高めることができる。
【0023】
ピストン13の頂面には、ピストン中心軸Lpを中心とするキャビティ25が凹設される。キャビティ25の径方向外側には、ピストンピン14と平行に直線状に延びる頂部13a,13aから吸気側および排気側に向かって下向きに傾斜する一対の傾斜面13b,13bと、傾斜面13b,13bの下端近傍に形成されてピストン中心軸Lpに直交する一対の平坦面13c,13cと、頂部13a,13aの両端を平坦に切り欠いた一対の切欠き部13d,13dとが形成される。
【0024】
ピストン中心軸Lpに沿って配置されたフュエルインジェクタ23は、ピストン中心軸Lp上の仮想的な点である燃料噴射点Oinjを中心として円周方向に60°間隔で離間する6つの方向に燃料を噴射する。6本の燃料噴射軸のうちの2本の第1燃料噴射軸Li1は、ピストン中心軸Lp方向に見てピストンピン14と重なっており、他の4本の第2燃料噴射軸Li2は、ピストンピン14の方向に対して60°の角度で交差している。またピストン中心軸Lpに直交する方向に見て、6本の第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2は斜め下向きに傾斜しており、その下向きの度合いは第1燃料噴射軸Li1については小さく、第2燃料噴射軸Li1については大きくなっている(図6および図7参照)。
【0025】
尚、フュエルインジェクタ23が実際に燃料を噴射する噴射点はピストン中心軸Lpから径方向外側に僅かにずれているが、前記燃料噴射点Oinjは前記第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2がピストン中心軸Lpと交差する点として定義される。
【0026】
次に、図5〜図7を参照して先願発明(特開2008−002443号公報参照)のキャビティ25の断面形状を詳述する。先願発明のキャビティ25の断面形状を説明する理由は、先願発明のキャビティ25の断面形状を補正して本願発明のキャビティ25の断面形状を得るからである。図5はピストンピン14に対して直交する方向の断面であり、図6はピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面(第2燃料噴射軸Li2を含む断面)であり、図7はピストンピン14に沿う方向の断面(第1燃料噴射軸Li1を含む断面)である。
【0027】
先願発明は、ピストン中心軸Lpを通る任意の断面において、キャビティ25の形状を可及的に一致させることを狙ったものである。キャビティ25の断面形状はピストン中心軸Lpを挟んで左右二つの部分に分かれており、その二つの部分は図7のピストンピン14方向の断面では概ね直線状に繋がっているが、図5のピストンピン14直交方向の断面と、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面とでは、ピストン13のペントルーフ形状に応じて山型に繋がっている。但し、キャビティ25の断面形状の主要部、つまり図5〜図7に網かけをして示す部分の形状は完全に一致している。
【0028】
図5〜図7から明らかなように、ピストン中心軸Lpを中心として形成されたキャビティ25は、ピストン13の頂面から下向きに直線状に延びる周壁部25aと、周壁部25aの下端からピストン中心軸Lpに向かってコンケーブ状に湾曲する曲壁部25bと、曲壁部25bの径方向内端からピストン中心軸Lpに向かって斜め上方に直線状に延びる底壁部25cと、ピストン中心軸Lp上で底壁部25cの径方向内端に連なる頂部25dとで構成される。
【0029】
キャビティ25に対向するシリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Haだけ離れて平行に延びるラインをピストン頂面基本線L−a1,L−a2とする。同様にシリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Hbcだけ離れて平行に延びる線をキャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2とし、シリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Hdだけ離れて平行に延びる線をキャビティ頂部基本線L−d1,L−d2とする。
【0030】
燃料噴射点Oinjを中心とする半径Raの円弧と前記ピストン頂面基本線L−a1,L−a2との交点をa1,a2とする。同様に燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rbの円弧と前記キャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2との交点をb1,b2とし、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rcの円弧と前記キャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2との交点をc1,c2とし、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rdの円弧と前記キャビティ頂部基本線L−d1,L−d2との交点をd1,d2とする。交点e1,e2は、前記交点d1,d2からピストン頂面基本線L−a1,L−a2に下ろした垂線が該ピストン頂面基本線L−a1,L−a2に交差する点である。
【0031】
キャビティ25の周壁部25aは直線a1b1,a2b2の上にあり、キャビティ25の底壁部25cは直線c1d1,c2d2に一致し、キャビティ25の曲壁部25bは直線a1b1,a2b2および直線c1d1,c2d2を滑らかに接続する。
【0032】
しかして、交点a1,c1,d1,e1あるいは交点a2,c2,d2,e2によって決まる網かけした断面形状が,ピストン中心軸Lpを通る任意の断面において等しくなるように、キャビティ25の形状が設定される。
【0033】
前記交点a1,a2は本発明の第1特定点Anに対応し、前記交点e1,e2は本発明の第2特定点Bnに対応し、前記交点d1,d2は本発明の第3特定点Cnに対応するものである。
【0034】
図6および図7に示す第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2を通る断面については、図7に示すピストンピン14方向の断面(燃料噴射断面S1)における網かけ部分と、図6に示すピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面(燃料噴射断面S2)における網かけ部分とは同形になる。
【0035】
図7に示すピストンピン14方向の断面において、第1燃料噴射軸Li1がキャビティ25と交差する点を燃料衝突点P1とし、図6に示すピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面において、第2燃料噴射軸Li2がキャビティ25と交差する点を燃料衝突点P2とする。二つの燃料衝突点P1,P2は、網かけした同一形状の断面上の同じ位置に存在している。従って、燃料衝突点P2の位置は燃料衝突点P1の位置よりも低くなり、燃料噴射点Oinjから延びる第2燃料噴射軸Li2は第1燃料噴射軸Li1よりも更に下向きに燃料を噴射することになる。
【0036】
燃料噴射点Oinjから燃料衝突点P1までの距離D1は、燃料噴射点Oinjから燃料衝突点P2までの距離D2に略一致する。また燃料衝突点P1におけるキャビティ25の接線と第1燃料噴射軸Li1とが成す燃料衝突角α1は、燃料衝突点P2におけるキャビティ25の接線と第2燃料噴射軸Li2とが成す燃料衝突角α2に略一致する。
【0037】
以上のように先願発明によれば、ピストン中心軸Lpを通る任意の断面において、燃料噴射点Oinjの近傍のごく一部(交点e1,d1,d2,e2で囲まれた領域)を除いて、キャビティ25の断面形状が同一に形成されている。特に、第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2を含む二つの断面(図6および図7参照)においてもキャビティ25の断面形状が同一に形成されており、しかも前記二つの断面において燃料噴射点Oinjから燃料衝突点P1,P2までの距離D1,D2が略等しく設定され、かつ燃料衝突点P1,P2における燃料衝突角α1,α2が略等しく設定されるので、キャビティ25の各部における空気および燃料の混合状態を円周方向に均一化し、混合気の燃焼状態を改善してエンジン出力の増加および排気有害物質の低減を図ることができる。
【0038】
また図5および図6に示すピストン13の頂面が傾斜する断面においても、キャビティ25の開口のエッジ(交点a2の部分)が成す角度が、図7に示すピストン13の頂面が平坦な場合に比べて鋭角化することがないため、その部分の熱負荷を軽減して耐熱性を高めることができる。
【0039】
ところで先願発明は、図5〜図7におけるキャビティ25の断面形状が、網かけをして示す部分では完全に一致しているものの、燃料噴射点Oinjの近傍の交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域で不一致になっている。その理由は、キャビティ25の断面形状のピストン中心軸Lpを挟む二つの部分が、図7のピストンピン14方向の断面では概ね直線状に繋がっているが、図5のピストンピン14直交方向の断面と、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面とでは、ピストン13のペントルーフ形状に応じて山型に繋がっているため、交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積が、図7のピストンピン14方向の断面で最も大きく、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面で減少し、図5のピストンピン14直交方向の断面で更に減少するためである。
【0040】
本実施の形態は、交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積が最大になるピストンピン14方向のキャビティ25の断面形状(図7参照)を基準とし、その他の方向の断面形状を拡大する方向(つまり、キャビティ25の深さを増加させる方向)に補正することで、前記交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積の差異を補償し、キャビティ25の全ての方向の断面で空気および燃料の混合状態の一層の均一化を図るものである。
【0041】
図8は、図5のピストンピン14直交方向におけるキャビティ25の断面形状の補正手法を説明するものであり、鎖線の形状は先願発明のものを示し、実線の形状は本実施の形態のものを示している。
【0042】
本実施の形態によるキャビティ25の断面形状の補正は、交点b1および交点c1の位置を、それぞれ交点b1′および交点c1′となるように下方に移動させることで、網かけ部分の面積を増加させることにより行われる。
【0043】
先ずキャビティ底面基本線L−bc1と、直線e1d1の下方への延長線との交点をf1として決定する。続いて交点f1を通るキャビティ底面基本線L−bc1を、交点f1を中心として所定角度βだけ下方に回転させ、新たなキャビティ底面基本線L−bc1′を設定する。続いて燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rbの円弧と新たなキャビティ底面基本線L−bc1′との交点を前記b1′として決定し、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rcの円弧と新たなキャビティ底面基本線L−bc1′との交点を前記c1′として決定する。
【0044】
しかして、補正後のキャビティ25の断面形状では、キャビティ25の周壁部25aは直線a1b1′の上にあり、キャビティ25の底壁部25cは直線c1′d1に一致し、キャビティ25の曲壁部25bは直線a1b1′および直線c1′d1を滑らかに接続している。
【0045】
尚、キャビティ底面基本線L−bc1とピストン中心軸Lpとの交点をfとし、この交点fを中心としてキャビティ底面基本線L−bc1を所定角度βだけ下方に回転させることで、新たなキャビティ底面基本線L−bc1′を設定しても良い。
【0046】
このように、キャビティ25の内壁面における経路AnCnのうち、経路AnCnの最下部から第3特定点Cnまでの区間は第2燃料噴射軸Li2と近接するが、その区間の形状を変化させることでキャビティ25の内壁面への燃料の付着を抑制して燃焼悪化を防止することができる。
【0047】
本実施の形態では、正味平均有効圧力NMEPが、煤が発生しない状態で、先願発明に対して2%程度向上した。
【0048】
図9は、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向におけるキャビティ25の断面形状の補正手法を説明するものであり、鎖線の形状は先願発明のものを示し、実線の形状は本実施の形態のものを示している。
【0049】
図7(ピストンピン14方向)および図5(ピストンピン14直交方向)における交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積の差異に比べ、図7(ピストンピン14方向)および図6(ピストンピン14に対して60°で交差する方向)の前記面積の差異は小さいため、図9(ピストンピン14に対して60°で交差する方向)におけるキャビティ25の断面形状の拡大量は、図8(ピストンピン14直交方向)におけるキャビティ25の断面形状の拡大量よりも小さなものとなる。
【0050】
以上、ピストン中心軸Lpの一側のキャビティ25の断面形状の補正について説明したが、ピストン中心軸Lpの他側のキャビティ25の断面形状の補正も全く同様にして行われる。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、先願発明が有する問題点、つまり燃料噴射点Oinjの近傍の交点e1,d1,d2,e2で囲まれた領域におけるキャビティ25の各断面形状の不一致が補償されるので、キャビティ25の各部における空気および燃料の混合状態を円周方向に一層均一化し、混合気の燃焼状態を改善してエンジン出力の更なる増加および排気有害物質の更なる低減を図ることができる。
【0052】
図10は、本実施の形態によるキャビティ25の断面形状の補正を、別の視点で捕らえる説明図である。
【0053】
同図において、キャビティ25の中心を通るピストン中心軸Lpから、6個の半平面X1〜X6が放射状に延びている。隣接する2個の半平面X1〜X6が成す角度(挟み角)は全て60°であり、各半平面X1〜X6の間を2等分する6本の2等分線は、ピストン中心軸Lpの方向に見て第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2と重なっている。キャビティ25は6個の半平面X1〜X6によって6個の仮想的なキャビティ区分25A〜25Fに分割されており、本実施の形態によれば、上述したキャビティ25の断面形状の補正により、6個のキャビティ区分25A〜25Fの容積を理論的には同一に設定することが可能である。
【0054】
しかしながら、6個のキャビティ区分25A〜25Fの容積を完全に同一に設定する必要はなく、それを略同一に設定するだけでも、特許文献1の発明あるいは先願発明に比べて燃料の混合状態を円周方向により均一化することができる。具体的には、6個のキャビティ区分25A〜25Fの容積のばらつき、つまり最大容積のキャビティ区分と最小容積のキャビティ区分の容積との差分を特許文献1の発明あるいは先願発明に比べて小さくすれば、燃料の混合状態を円周方向により均一化することができる。
【0055】
図11は、キャビティ区分の方向(つまり、キャビティ区分の挟み角の2等分線の方向)をピストンピン14の方向を基準(0°)としてピストン中心軸Lpまわりに左右に各60°の範囲で移動させたとき、そのキャビティ区分の容積の変化率を示すものである。破線は従来例(特許文献1の発明)に対応し、実線は本実施の形態に対応する。
【0056】
何れのものも、キャビティ区分の挟み角の2等分線の方向がピストンピン14の方向に対して60°で交差するとき(図10のキャビティ区分25B,25C,25E,25F参照)を基準とし、そのときの変化率を0%としている。破線で示す従来例では、キャビティ区分の挟み角の2等分線の方向がピストンピン14の方向に一致するとき(図10のキャビティ区分25A,25D参照)、変化率は最大になって7%程度であるが、実線で示す実施の形態では、同じ位置で変化率は最大になるが、その値は大幅に減少して僅か0.5%に抑えられている。
【0057】
図1および図12〜図14に示すように、ピストン13の内部には、キャビティ25の裏部に近接するように環状のクーリングチャネル26が形成される。クーリングチャネル26はピストン中心軸Lp方向に見て該ピストン中心軸Lpを囲むように環状に形成されており、その断面形状は縦長の小判型あるいは楕円状で円周方向に一定である。そしてクーリングチャネル26はピストン13の頂面の形状に沿うように波打っており、クーリングチャネル26とキャビティ25との最短距離dは円周方向の何れの位置においても同一である。
【0058】
クーリングチャネル26は、ピストンピン軸線L2方向において最も高く、ピストンピン軸線L2に直交する方向において最も低くなるように波打っているが、その中間の傾斜部、つまりピストンピン軸線L2に対して傾斜する方向から、対角位置に配置された2本のオイル供給通路27,27と、他の対角位置に配置された2本のオイル排出通路28,28とが下向きに形成される。一方、シリンダブロック29の内部には、2個のオイルジェット30,30が上向きに設けられており、これらのオイルジェット30,30は前記2本のオイル供給通路27,27の下端開口部を指向する。
【0059】
しかして、オイルジェット30,30から噴出したオイルはピストン13のオイル供給通路27,27の下端から上向きに流れ、クーリングチャネル26に達して円周方向に流れを変える。このとき、オイル供給通路27,27はクーリングチャネル26の傾斜部に連なっているため、オイルの多くはオイル供給通路27,27との成す角度が鈍角であるピストンピン軸線L2方向に向かって斜め上向きに流れ、オイルの一部だけがピストンピン軸線L2に直交する方向に向かって斜め下向きに流れることになり、二股に分岐したオイルは2個のオイル排出通路28,28から排出される。そしてオイルがクーリングチャネル26を流れる間に、高温のピストン13を冷却する。
【0060】
このとき、オイル供給通路27,27がクーリングチャネル26の傾斜部に連なる位置が、その傾斜部の中間高さ位置よりも低い側に偏っているので、オイル供給通路27,27の上端からクーリングチャネル26の傾斜部の高い方に向かって分岐する比較的に大量のオイルが、オイル排出通路28,28の上端に連なる位置までクーリングチャネル26の内部を比較的に長い距離に亘って流れることになり、オイルによるピストン13の冷却効果を高めることができる。またピストン13の頂面が波打っていても、クーリングチャネル26もキャビティ25との距離が円周方向に一定の最短距離dになるように波打っているので、ピストン13の全体を均等に冷却することができる。しかもクーリングチャネル26の断面形状が円周方向に一定であるため、そこを流れるオイルの流速が一定になり、ピストン13の全体を一層均等に冷却することができる。
【0061】
またオイル供給通路27,27をクーリングチャネル26の傾斜部に接続したので、オイルはクーリングチャネル26の内部を予め定まった比率で予め定まった方向に流れ、ピストン13の冷却を一層均一に行うことができる。仮に、オイル供給通路27,27をクーリングチャネル26の最も高い位置、あるいは最も低い位置に設けた場合、オイルがオイル供給通路27,27からクーリングチャネル26に達して円周方向に二股に分岐する際に、どの方向にどのような比率で流れるのかが不安定になり、ピストン13の冷却が不均一になる可能性がある。
【0062】
次に、図15および図16に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0063】
第1の実施の形態ではクーリングチャネル26の断面形状が円周方向に一定であるのに対し、第2の実施の形態のクーリングチャネル26は、その上部とキャビティ25との最短距離dを円周方向の一定にしながら、その下部を一定の高さにしている。即ち、クーリングチャネル26の上部の高さはピストンピン軸線L2方向で最も高くなり、ピストンピン軸線L2に直交する方向で最も低くなる。
【0064】
本実施の形態によっても、クーリングチャネル26の上部とキャビティ25との最短距離dが円周方向に一定であるため、ピストン13を円周方向に均一に冷却することができる。しかもクーリングチャネル26の下部が平坦であるため、オイルの流れがスムーズになってピストン13の冷却性能が向上するだけでなく、ピストン13の鋳造時に中子でクーリングチャネル26を成形する際に、その中子の下端の保持が容易になるという利点がある。
【0065】
次に、図17および図18に基づいて本発明の第3および第4の実施の形態を説明する。
【0066】
第1、第2の実施の形態では、クーリングチャネル26が環状に形成されているが、第3、第4の実施の形態では、クーリングチャネル26,26が略180°の中心角を有する二つの円弧状部分に分離されている。そして各円弧状のクーリングチャネル26の一端側および他端側にそれぞれオイル供給通路27およびオイル排出通路28が接続される。
【0067】
第3の実施の形態では、二つのクーリングチャネル26,26の一方の対向部側にオイル供給通路27,27が接続され、二つのクーリングチャネル26,26の他方の対向部側にオイル排出通路28,28が接続されている。
【0068】
また第4の実施の形態では、二つのクーリングチャネル26,26のオイル供給通路27,27およびオイル排出通路28,28が対角位置に配置されている。
【0069】
これら第3、第4の実施の形態によれば、環状のクーリングチャネル26に比べてオイル供給通路27からオイル排出通路28への流路が一通りしかないので、クーリングチャネル26,26内のオイルの流れが安定する。
【0070】
次に、図19および図20に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0071】
第5の実施の形態は、上述した第2の実施の形態と同一形状のクーリングチャネル26(下部が平坦であるもの)を備えているが、そのクーリングチャネル26は環状の中空パイプ33の内部に区画されており、ピストン13に装着される1本のプレッシャリング31および2本のオイルリング32,32のうち、プレッシャリング31を支持する耐摩環33aが前記中空パイプ33の外周面に一体に形成される。耐摩環33aを一体に備えた中空パイプ33は、ピストン13を鋳造する際にその内部に鋳ぐるまれる。
【0072】
この第5の実施の形態によれば、プレッシャリング31を保持する耐摩環を33a一体に備えた中空パイプ33を用いてクーリングチャネル26を区画するので、ピストン13の鋳造時に中子が不要になって製造工数の削減が可能になるだけでなく、耐摩環33aと一体化することで部品点数の削減にも寄与することができる。しかもクーリングチャネル26の下部が平坦に形成されていて上部だけが波打っているので、プレッシャリング31を支持するために平坦であることが要求される耐摩環33aを、クーリングチャネル26の平坦な下部に沿って支障なく支持することができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0074】
例えば、オイルジェット30,30の数は実施の形態の2個に限定されず、1個あるいは3個以上であっても良い。
【0075】
また実施の形態では、仮想的なキャビティ区分25A〜25Fの数を6個に設定しているが(N=6)、前記キャビティ区分25A〜25Fの数は2個以上であれば良い(Nは2以上の自然数)。
【0076】
このとき、キャビティ区分25A〜25Fの数と燃料噴射軸の数とは、必ずしも一致させる必要はないが、それを一致させることで、一つのキャビティ区分25A〜25Fに一つの燃料噴射軸が対応することになり、燃料の混合状態を円周方向により均一化することができる。尚、キャビティ区分25A〜25Fの挟み角の2等分線を燃料噴射軸に一致させれば、一つのキャビティ区分25A〜25Fの中心に燃料噴射軸が位置することになり、燃料の混合状態を更に均一化することができる。
【0077】
また実施の形態では、仮想的なキャビティ区分25A〜25Fの容積には、上死点にあるピストン13の頂面とシリンダヘッド16の下面とに挟まれた部分の容積を含めず、キャビティ25の開口端縁までの容積(即ち、ピストン頂面基本線L−a1,L−a2より下の容積)としたが、それを含めたものを仮想的なキャビティ区分25A〜25Fの容積として定義しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
また実施の形態ではディーゼルエンジンについて説明したが、本願発明はディーゼルエンジンに限定されず、燃焼室内に燃料を直接噴射する任意の形式のエンジンに対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1の実施の形態に係るディーゼルエンジンの要部縦断面図(図12の1−1線断面図)
【図2】図1の2−2線矢視図
【図3】図1の3−3線矢視図
【図4】ピストンの上部斜視図
【図5】図3の5−5線断面図
【図6】図3の6−6線断面図
【図7】図3の7−7線断面図
【図8】補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図5に対応する図
【図9】補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図6に対応する図
【図10】仮想的なキャビティ区分の説明図
【図11】キャビティ区分の方向を円周方向に変化させたときの、該キャビティ区分の容積の変化率を示すグラフ
【図12】図1の12方向矢視図
【図13】ピストンのクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図
【図14】図13の14A−14A線断面図および14B−14B線断面図
【図15】第2の実施の形態に係る、前記図13に対応する図
【図16】図15の16A−16A線断面図および16B−16B線断面図
【図17】第3の実施の形態に係るクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図
【図18】第4の実施の形態に係るクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図
【図19】第5の実施の形態に係るピストンの縦断面図
【図20】耐摩環を一体に備えた中空パイプの斜視図
【符号の説明】
【0080】
13 ピストン
23 フュエルインジェクタ
25 キャビティ
25A〜25F キャビティ区分
26 クーリングチャネル
27 オイル供給通路
30 オイルジェット
31 プレッシャリング(ピストンリング)
33 中空パイプ
33a 耐摩環
d 最短距離
L2 ピストンピン軸線
Lp ピストン中心軸
X1〜X6 半平面
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂面のピストン中心軸方向の高さが円周方向に変化するピストンと、前記ピストンの頂面の中央部に凹設されたキャビティと、前記キャビティ内に燃料を噴射するフュエルインジェクタとを備えた燃料直噴エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料直噴エンジンのピストンの平坦な頂面に形成されるキャビティの形状を、フュエルインジェクタからの燃料噴射方向ではキャビティの径を増加させて深さを浅くし、燃料噴射方向以外の方向ではキャビティの径を減少させて深さを深くしたものにおいて、ピストンの内部に形成される環状のクーリングチャネルを波状にうねらせることで、クーリングチャネルとキャビティとの距離を円周方向に一定にし、ピストン全体の均一な冷却を図るものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また燃料直噴エンジンのペントルーフ型のピストンの内部に、キャビティの外周に沿う環状のクーリングチャネルと、ピストンボス部のピストンピン穴の吸気側および排気側をピストン中心軸方向に延びるオイル通路とを形成し、このオイル通路を前記クーリングチャネルに連通させて更にピストン頂面側まで延長することで、ピストン全体の均一な冷却を図るものが、下記特許文献2により公知である。
【特許文献1】実公平1−21168号公報
【特許文献1】特開2007−278251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペントルーフ型のピストンを有する上記特許文献2に記載された燃料直噴エンジンでは、クーリングチャネルからの距離が大きくなるピストン頂面の稜線部近傍を効率的に冷却すべく、ピストン中心軸方向に延びるオイル通路をクーリングチャネルを超えてピストン頂面側まで延長しているため、ピストンの内部構造が複雑になって加工コストが嵩むだけでなく、オイル通路の上端が袋小路になっているために充分な量のオイルを供給することができず、ピストンの全体の均一な冷却を図ることが困難となる可能性があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ペントルーフ型のピストンを備えた燃料直噴エンジンにおいて、キャビティの円周方向全域で燃料および空気を均一に混合して燃焼状態を改善しながら、ピストンの円周方向全域を均一に冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、頂面のピストン中心軸方向の高さが円周方向に変化するピストンと、前記ピストンの頂面の中央部に凹設されたキャビティと、前記キャビティ内に燃料を噴射するフュエルインジェクタとを備えた燃料直噴エンジンにおいて、Nを2以上の自然数とし、前記キャビティの内壁面と、ピストン中心軸から放射方向に延びて互いに均等な挟み角を有するN個の半平面とで、前記キャビティをN個の仮想的なキャビティ区分に区画したとき、前記各々の仮想的なキャビティ区分の容積が略等しくなるように、前記キャビティの内壁面の形状を設定するとともに、前記ピストンにおける前記キャビティの裏部にオイルが供給されるクーリングチャネルを円周方向に設けたものにおいて、前記キャビティと前記クーリングチャネルとの最短距離が円周方向に略均一になるように、前記クーリングチャネルのピストン中心軸方向の高さを円周方向に変化させたことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記クーリングチャネルの断面形状が円周方向に略同一であることを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記クーリングチャネルの下部のピストン中心軸方向の高さが円周方向に略同一であることを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記クーリングチャネルの上部のピストン中心軸方向の高さは、ピストンピン軸線の方向で最も高く、ピストンピン軸線に対して直交する方向で最も低く、かつ前記二つの方向の間で単調に変化しており、前記クーリングチャネルの高さが変化する傾斜部分から下向きに延びるオイル供給通路内に、ピストンの下方に設けたオイルジェットからオイルを噴射することを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0010】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記クーリングチャネルを中空パイプで構成し、その外周面にピストンリングを保持する耐摩環を一体に形成したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0011】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記クーリングチャネルはピストンピン軸線を挟んで二つのクーリングチャネルに分離されており、前記各々のクーリングチャネルの一端側からオイルを供給して他端側からオイルを排出することを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
【0012】
尚、実施の形態のプレッシャリング31は本発明のピストンリングに対応する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、ピストンの頂面の中央部に凹設したキャビティをN個の仮想的なキャビティ区分に区画したとき、各々の仮想的なキャビティ区分の容積が略等しくなるようにキャビティの内壁面の形状を設定したので、キャビティにおける燃料および空気の混合状態を均一化してエンジンの出力向上および排気有害物質の低減を図ることができる。しかもキャビティの裏部にオイルが供給されるクーリングチャネルを円周方向に設ける際に、キャビティとクーリングチャネルとの最短距離が円周方向に略均一になるように、クーリングチャネルのピストン中心軸方向の高さを円周方向に変化させたので、キャビティの冷却状態も各々の仮想的なキャビティ区分において略等しくなり、キャビティにおける混合気の燃焼状態を更に均一化することができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、クーリングチャネルの断面形状が円周方向に略同一であるので、クーリングチャネルの各部のオイルの流速が一定になり、ピストンを円周方向により一層均一に冷却することができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、クーリングチャネルの下部のピストン中心軸方向の高さが円周方向に略同一であるので、クーリングチャネルの波打ちを少なくして燃料の流動を促進することができるだけでなく、ピストンの鋳造時にクーリングチャネルを成形する中子の下部を平坦にして、中子の製造および金型内での中子の支持を容易化することができる。
【0016】
また請求項4の構成によれば、クーリングチャネルの上部のピストン中心軸方向の高さが、ピストンピン軸線の方向で最も高く、ピストンピン軸線に対して直交する方向で最も低く、かつ前記二つの方向の間で単調に変化しており、クーリングチャネルの高さが変化する傾斜部分から下向きに延びるオイル供給通路内に、ピストンの下方に設けたオイルジェットからオイルを噴射するので、オイルジェットからオイル供給通路内に噴射された燃料はクーリングチャネルの傾斜部に供給されるため、その燃料の多くはオイル供給通路に対して鈍角を成すクーリングチャネルの高い側に流入する。その結果、クーリングチャネルにおける燃料の流動方向を一定にし、ピストンの冷却を安定させることができる。
【0017】
また請求項5の構成によれば、中空パイプで構成したクーリングチャネルの外周面にピストンリングを保持する耐摩環を一体に形成したので、ピストンの鋳造時に中子を用いずに耐摩環を利用してクーリングチャネルを形成することができる。このとき、クーリングチャネルの下部のピストン中心軸方向の高さが円周方向に略同一であるため、耐摩環の形成に支障を来すことはない。
【0018】
また請求項6の構成によれば、クーリングチャネルをピストンピン軸線を挟んで二つのクーリングチャネルに分離し、各々のクーリングチャネルの一端側からオイルを供給して他端側からオイルを排出するので、環状のクーリングチャネルと異なってオイルの入口から出口への流路が一通りしかなくなり、クーリングチャネル内のオイルの流れが安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図14は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1はディーゼルエンジンの要部縦断面図(図12の1−1線断面図)、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図1の3−3線矢視図、図4はピストンの上部斜視図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図3の6−6線断面図、図7は図3の7−7線断面図、図8は補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図5に対応する図、図9は補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図6に対応する図、図10は仮想的なキャビティ区分の説明図、図11はキャビティ区分の方向を円周方向に変化させたときの、該キャビティ区分の容積の変化率を示すグラフ、図12は図1の12方向矢視図、図13はピストンのクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図、図14は図13の14A−14A線断面図および14B−14B線断面図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、燃料直噴型のディーゼルエンジンは、シリンダブロック11に形成されたシリンダ12に摺動自在に嵌合するピストン13を備えており、ピストン13はピストンピン14およびコネクティングロッド15を介して図示せぬクランクシャフトに接続される。シリンダブロック11の上面に結合されるシリンダヘッド16の下面に、ピストン13の頂面に対向する2個の吸気バルブ孔17,17と、2個の排気バルブ孔18,18とが開口しており、吸気バルブ孔17,17に吸気ポ−ト19が連通し、排気バルブ孔18,18に排気ポート20が連通する。吸気バルブ孔17,17は吸気バルブ21,21で開閉され、排気バルブ孔18,18は排気バルブ22,22で開閉される。ピストン中心軸Lp上に位置するようにフュエルインジェクタ23が設けられるとともに、フュエルインジェクタ23に隣接するようにグロープラグ24が設けられる。
【0022】
図1および図4から明らかなように、ピストン13の頂面と、そこに対向するシリンダヘッド16の下面とは平坦ではなく断面三角形のペントルーフ状に傾斜しており、この形状により、吸気ポ−ト19および排気ポート20の湾曲度を小さくするとともに吸気バルブ孔17,17および排気バルブ孔18,18の直径を確保し、吸気効率および排気効率を高めることができる。
【0023】
ピストン13の頂面には、ピストン中心軸Lpを中心とするキャビティ25が凹設される。キャビティ25の径方向外側には、ピストンピン14と平行に直線状に延びる頂部13a,13aから吸気側および排気側に向かって下向きに傾斜する一対の傾斜面13b,13bと、傾斜面13b,13bの下端近傍に形成されてピストン中心軸Lpに直交する一対の平坦面13c,13cと、頂部13a,13aの両端を平坦に切り欠いた一対の切欠き部13d,13dとが形成される。
【0024】
ピストン中心軸Lpに沿って配置されたフュエルインジェクタ23は、ピストン中心軸Lp上の仮想的な点である燃料噴射点Oinjを中心として円周方向に60°間隔で離間する6つの方向に燃料を噴射する。6本の燃料噴射軸のうちの2本の第1燃料噴射軸Li1は、ピストン中心軸Lp方向に見てピストンピン14と重なっており、他の4本の第2燃料噴射軸Li2は、ピストンピン14の方向に対して60°の角度で交差している。またピストン中心軸Lpに直交する方向に見て、6本の第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2は斜め下向きに傾斜しており、その下向きの度合いは第1燃料噴射軸Li1については小さく、第2燃料噴射軸Li1については大きくなっている(図6および図7参照)。
【0025】
尚、フュエルインジェクタ23が実際に燃料を噴射する噴射点はピストン中心軸Lpから径方向外側に僅かにずれているが、前記燃料噴射点Oinjは前記第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2がピストン中心軸Lpと交差する点として定義される。
【0026】
次に、図5〜図7を参照して先願発明(特開2008−002443号公報参照)のキャビティ25の断面形状を詳述する。先願発明のキャビティ25の断面形状を説明する理由は、先願発明のキャビティ25の断面形状を補正して本願発明のキャビティ25の断面形状を得るからである。図5はピストンピン14に対して直交する方向の断面であり、図6はピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面(第2燃料噴射軸Li2を含む断面)であり、図7はピストンピン14に沿う方向の断面(第1燃料噴射軸Li1を含む断面)である。
【0027】
先願発明は、ピストン中心軸Lpを通る任意の断面において、キャビティ25の形状を可及的に一致させることを狙ったものである。キャビティ25の断面形状はピストン中心軸Lpを挟んで左右二つの部分に分かれており、その二つの部分は図7のピストンピン14方向の断面では概ね直線状に繋がっているが、図5のピストンピン14直交方向の断面と、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面とでは、ピストン13のペントルーフ形状に応じて山型に繋がっている。但し、キャビティ25の断面形状の主要部、つまり図5〜図7に網かけをして示す部分の形状は完全に一致している。
【0028】
図5〜図7から明らかなように、ピストン中心軸Lpを中心として形成されたキャビティ25は、ピストン13の頂面から下向きに直線状に延びる周壁部25aと、周壁部25aの下端からピストン中心軸Lpに向かってコンケーブ状に湾曲する曲壁部25bと、曲壁部25bの径方向内端からピストン中心軸Lpに向かって斜め上方に直線状に延びる底壁部25cと、ピストン中心軸Lp上で底壁部25cの径方向内端に連なる頂部25dとで構成される。
【0029】
キャビティ25に対向するシリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Haだけ離れて平行に延びるラインをピストン頂面基本線L−a1,L−a2とする。同様にシリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Hbcだけ離れて平行に延びる線をキャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2とし、シリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Hdだけ離れて平行に延びる線をキャビティ頂部基本線L−d1,L−d2とする。
【0030】
燃料噴射点Oinjを中心とする半径Raの円弧と前記ピストン頂面基本線L−a1,L−a2との交点をa1,a2とする。同様に燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rbの円弧と前記キャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2との交点をb1,b2とし、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rcの円弧と前記キャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2との交点をc1,c2とし、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rdの円弧と前記キャビティ頂部基本線L−d1,L−d2との交点をd1,d2とする。交点e1,e2は、前記交点d1,d2からピストン頂面基本線L−a1,L−a2に下ろした垂線が該ピストン頂面基本線L−a1,L−a2に交差する点である。
【0031】
キャビティ25の周壁部25aは直線a1b1,a2b2の上にあり、キャビティ25の底壁部25cは直線c1d1,c2d2に一致し、キャビティ25の曲壁部25bは直線a1b1,a2b2および直線c1d1,c2d2を滑らかに接続する。
【0032】
しかして、交点a1,c1,d1,e1あるいは交点a2,c2,d2,e2によって決まる網かけした断面形状が,ピストン中心軸Lpを通る任意の断面において等しくなるように、キャビティ25の形状が設定される。
【0033】
前記交点a1,a2は本発明の第1特定点Anに対応し、前記交点e1,e2は本発明の第2特定点Bnに対応し、前記交点d1,d2は本発明の第3特定点Cnに対応するものである。
【0034】
図6および図7に示す第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2を通る断面については、図7に示すピストンピン14方向の断面(燃料噴射断面S1)における網かけ部分と、図6に示すピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面(燃料噴射断面S2)における網かけ部分とは同形になる。
【0035】
図7に示すピストンピン14方向の断面において、第1燃料噴射軸Li1がキャビティ25と交差する点を燃料衝突点P1とし、図6に示すピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面において、第2燃料噴射軸Li2がキャビティ25と交差する点を燃料衝突点P2とする。二つの燃料衝突点P1,P2は、網かけした同一形状の断面上の同じ位置に存在している。従って、燃料衝突点P2の位置は燃料衝突点P1の位置よりも低くなり、燃料噴射点Oinjから延びる第2燃料噴射軸Li2は第1燃料噴射軸Li1よりも更に下向きに燃料を噴射することになる。
【0036】
燃料噴射点Oinjから燃料衝突点P1までの距離D1は、燃料噴射点Oinjから燃料衝突点P2までの距離D2に略一致する。また燃料衝突点P1におけるキャビティ25の接線と第1燃料噴射軸Li1とが成す燃料衝突角α1は、燃料衝突点P2におけるキャビティ25の接線と第2燃料噴射軸Li2とが成す燃料衝突角α2に略一致する。
【0037】
以上のように先願発明によれば、ピストン中心軸Lpを通る任意の断面において、燃料噴射点Oinjの近傍のごく一部(交点e1,d1,d2,e2で囲まれた領域)を除いて、キャビティ25の断面形状が同一に形成されている。特に、第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2を含む二つの断面(図6および図7参照)においてもキャビティ25の断面形状が同一に形成されており、しかも前記二つの断面において燃料噴射点Oinjから燃料衝突点P1,P2までの距離D1,D2が略等しく設定され、かつ燃料衝突点P1,P2における燃料衝突角α1,α2が略等しく設定されるので、キャビティ25の各部における空気および燃料の混合状態を円周方向に均一化し、混合気の燃焼状態を改善してエンジン出力の増加および排気有害物質の低減を図ることができる。
【0038】
また図5および図6に示すピストン13の頂面が傾斜する断面においても、キャビティ25の開口のエッジ(交点a2の部分)が成す角度が、図7に示すピストン13の頂面が平坦な場合に比べて鋭角化することがないため、その部分の熱負荷を軽減して耐熱性を高めることができる。
【0039】
ところで先願発明は、図5〜図7におけるキャビティ25の断面形状が、網かけをして示す部分では完全に一致しているものの、燃料噴射点Oinjの近傍の交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域で不一致になっている。その理由は、キャビティ25の断面形状のピストン中心軸Lpを挟む二つの部分が、図7のピストンピン14方向の断面では概ね直線状に繋がっているが、図5のピストンピン14直交方向の断面と、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面とでは、ピストン13のペントルーフ形状に応じて山型に繋がっているため、交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積が、図7のピストンピン14方向の断面で最も大きく、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面で減少し、図5のピストンピン14直交方向の断面で更に減少するためである。
【0040】
本実施の形態は、交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積が最大になるピストンピン14方向のキャビティ25の断面形状(図7参照)を基準とし、その他の方向の断面形状を拡大する方向(つまり、キャビティ25の深さを増加させる方向)に補正することで、前記交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積の差異を補償し、キャビティ25の全ての方向の断面で空気および燃料の混合状態の一層の均一化を図るものである。
【0041】
図8は、図5のピストンピン14直交方向におけるキャビティ25の断面形状の補正手法を説明するものであり、鎖線の形状は先願発明のものを示し、実線の形状は本実施の形態のものを示している。
【0042】
本実施の形態によるキャビティ25の断面形状の補正は、交点b1および交点c1の位置を、それぞれ交点b1′および交点c1′となるように下方に移動させることで、網かけ部分の面積を増加させることにより行われる。
【0043】
先ずキャビティ底面基本線L−bc1と、直線e1d1の下方への延長線との交点をf1として決定する。続いて交点f1を通るキャビティ底面基本線L−bc1を、交点f1を中心として所定角度βだけ下方に回転させ、新たなキャビティ底面基本線L−bc1′を設定する。続いて燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rbの円弧と新たなキャビティ底面基本線L−bc1′との交点を前記b1′として決定し、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rcの円弧と新たなキャビティ底面基本線L−bc1′との交点を前記c1′として決定する。
【0044】
しかして、補正後のキャビティ25の断面形状では、キャビティ25の周壁部25aは直線a1b1′の上にあり、キャビティ25の底壁部25cは直線c1′d1に一致し、キャビティ25の曲壁部25bは直線a1b1′および直線c1′d1を滑らかに接続している。
【0045】
尚、キャビティ底面基本線L−bc1とピストン中心軸Lpとの交点をfとし、この交点fを中心としてキャビティ底面基本線L−bc1を所定角度βだけ下方に回転させることで、新たなキャビティ底面基本線L−bc1′を設定しても良い。
【0046】
このように、キャビティ25の内壁面における経路AnCnのうち、経路AnCnの最下部から第3特定点Cnまでの区間は第2燃料噴射軸Li2と近接するが、その区間の形状を変化させることでキャビティ25の内壁面への燃料の付着を抑制して燃焼悪化を防止することができる。
【0047】
本実施の形態では、正味平均有効圧力NMEPが、煤が発生しない状態で、先願発明に対して2%程度向上した。
【0048】
図9は、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向におけるキャビティ25の断面形状の補正手法を説明するものであり、鎖線の形状は先願発明のものを示し、実線の形状は本実施の形態のものを示している。
【0049】
図7(ピストンピン14方向)および図5(ピストンピン14直交方向)における交点e1,d1,d2,e2で囲まれた白抜きの領域の面積の差異に比べ、図7(ピストンピン14方向)および図6(ピストンピン14に対して60°で交差する方向)の前記面積の差異は小さいため、図9(ピストンピン14に対して60°で交差する方向)におけるキャビティ25の断面形状の拡大量は、図8(ピストンピン14直交方向)におけるキャビティ25の断面形状の拡大量よりも小さなものとなる。
【0050】
以上、ピストン中心軸Lpの一側のキャビティ25の断面形状の補正について説明したが、ピストン中心軸Lpの他側のキャビティ25の断面形状の補正も全く同様にして行われる。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、先願発明が有する問題点、つまり燃料噴射点Oinjの近傍の交点e1,d1,d2,e2で囲まれた領域におけるキャビティ25の各断面形状の不一致が補償されるので、キャビティ25の各部における空気および燃料の混合状態を円周方向に一層均一化し、混合気の燃焼状態を改善してエンジン出力の更なる増加および排気有害物質の更なる低減を図ることができる。
【0052】
図10は、本実施の形態によるキャビティ25の断面形状の補正を、別の視点で捕らえる説明図である。
【0053】
同図において、キャビティ25の中心を通るピストン中心軸Lpから、6個の半平面X1〜X6が放射状に延びている。隣接する2個の半平面X1〜X6が成す角度(挟み角)は全て60°であり、各半平面X1〜X6の間を2等分する6本の2等分線は、ピストン中心軸Lpの方向に見て第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2と重なっている。キャビティ25は6個の半平面X1〜X6によって6個の仮想的なキャビティ区分25A〜25Fに分割されており、本実施の形態によれば、上述したキャビティ25の断面形状の補正により、6個のキャビティ区分25A〜25Fの容積を理論的には同一に設定することが可能である。
【0054】
しかしながら、6個のキャビティ区分25A〜25Fの容積を完全に同一に設定する必要はなく、それを略同一に設定するだけでも、特許文献1の発明あるいは先願発明に比べて燃料の混合状態を円周方向により均一化することができる。具体的には、6個のキャビティ区分25A〜25Fの容積のばらつき、つまり最大容積のキャビティ区分と最小容積のキャビティ区分の容積との差分を特許文献1の発明あるいは先願発明に比べて小さくすれば、燃料の混合状態を円周方向により均一化することができる。
【0055】
図11は、キャビティ区分の方向(つまり、キャビティ区分の挟み角の2等分線の方向)をピストンピン14の方向を基準(0°)としてピストン中心軸Lpまわりに左右に各60°の範囲で移動させたとき、そのキャビティ区分の容積の変化率を示すものである。破線は従来例(特許文献1の発明)に対応し、実線は本実施の形態に対応する。
【0056】
何れのものも、キャビティ区分の挟み角の2等分線の方向がピストンピン14の方向に対して60°で交差するとき(図10のキャビティ区分25B,25C,25E,25F参照)を基準とし、そのときの変化率を0%としている。破線で示す従来例では、キャビティ区分の挟み角の2等分線の方向がピストンピン14の方向に一致するとき(図10のキャビティ区分25A,25D参照)、変化率は最大になって7%程度であるが、実線で示す実施の形態では、同じ位置で変化率は最大になるが、その値は大幅に減少して僅か0.5%に抑えられている。
【0057】
図1および図12〜図14に示すように、ピストン13の内部には、キャビティ25の裏部に近接するように環状のクーリングチャネル26が形成される。クーリングチャネル26はピストン中心軸Lp方向に見て該ピストン中心軸Lpを囲むように環状に形成されており、その断面形状は縦長の小判型あるいは楕円状で円周方向に一定である。そしてクーリングチャネル26はピストン13の頂面の形状に沿うように波打っており、クーリングチャネル26とキャビティ25との最短距離dは円周方向の何れの位置においても同一である。
【0058】
クーリングチャネル26は、ピストンピン軸線L2方向において最も高く、ピストンピン軸線L2に直交する方向において最も低くなるように波打っているが、その中間の傾斜部、つまりピストンピン軸線L2に対して傾斜する方向から、対角位置に配置された2本のオイル供給通路27,27と、他の対角位置に配置された2本のオイル排出通路28,28とが下向きに形成される。一方、シリンダブロック29の内部には、2個のオイルジェット30,30が上向きに設けられており、これらのオイルジェット30,30は前記2本のオイル供給通路27,27の下端開口部を指向する。
【0059】
しかして、オイルジェット30,30から噴出したオイルはピストン13のオイル供給通路27,27の下端から上向きに流れ、クーリングチャネル26に達して円周方向に流れを変える。このとき、オイル供給通路27,27はクーリングチャネル26の傾斜部に連なっているため、オイルの多くはオイル供給通路27,27との成す角度が鈍角であるピストンピン軸線L2方向に向かって斜め上向きに流れ、オイルの一部だけがピストンピン軸線L2に直交する方向に向かって斜め下向きに流れることになり、二股に分岐したオイルは2個のオイル排出通路28,28から排出される。そしてオイルがクーリングチャネル26を流れる間に、高温のピストン13を冷却する。
【0060】
このとき、オイル供給通路27,27がクーリングチャネル26の傾斜部に連なる位置が、その傾斜部の中間高さ位置よりも低い側に偏っているので、オイル供給通路27,27の上端からクーリングチャネル26の傾斜部の高い方に向かって分岐する比較的に大量のオイルが、オイル排出通路28,28の上端に連なる位置までクーリングチャネル26の内部を比較的に長い距離に亘って流れることになり、オイルによるピストン13の冷却効果を高めることができる。またピストン13の頂面が波打っていても、クーリングチャネル26もキャビティ25との距離が円周方向に一定の最短距離dになるように波打っているので、ピストン13の全体を均等に冷却することができる。しかもクーリングチャネル26の断面形状が円周方向に一定であるため、そこを流れるオイルの流速が一定になり、ピストン13の全体を一層均等に冷却することができる。
【0061】
またオイル供給通路27,27をクーリングチャネル26の傾斜部に接続したので、オイルはクーリングチャネル26の内部を予め定まった比率で予め定まった方向に流れ、ピストン13の冷却を一層均一に行うことができる。仮に、オイル供給通路27,27をクーリングチャネル26の最も高い位置、あるいは最も低い位置に設けた場合、オイルがオイル供給通路27,27からクーリングチャネル26に達して円周方向に二股に分岐する際に、どの方向にどのような比率で流れるのかが不安定になり、ピストン13の冷却が不均一になる可能性がある。
【0062】
次に、図15および図16に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0063】
第1の実施の形態ではクーリングチャネル26の断面形状が円周方向に一定であるのに対し、第2の実施の形態のクーリングチャネル26は、その上部とキャビティ25との最短距離dを円周方向の一定にしながら、その下部を一定の高さにしている。即ち、クーリングチャネル26の上部の高さはピストンピン軸線L2方向で最も高くなり、ピストンピン軸線L2に直交する方向で最も低くなる。
【0064】
本実施の形態によっても、クーリングチャネル26の上部とキャビティ25との最短距離dが円周方向に一定であるため、ピストン13を円周方向に均一に冷却することができる。しかもクーリングチャネル26の下部が平坦であるため、オイルの流れがスムーズになってピストン13の冷却性能が向上するだけでなく、ピストン13の鋳造時に中子でクーリングチャネル26を成形する際に、その中子の下端の保持が容易になるという利点がある。
【0065】
次に、図17および図18に基づいて本発明の第3および第4の実施の形態を説明する。
【0066】
第1、第2の実施の形態では、クーリングチャネル26が環状に形成されているが、第3、第4の実施の形態では、クーリングチャネル26,26が略180°の中心角を有する二つの円弧状部分に分離されている。そして各円弧状のクーリングチャネル26の一端側および他端側にそれぞれオイル供給通路27およびオイル排出通路28が接続される。
【0067】
第3の実施の形態では、二つのクーリングチャネル26,26の一方の対向部側にオイル供給通路27,27が接続され、二つのクーリングチャネル26,26の他方の対向部側にオイル排出通路28,28が接続されている。
【0068】
また第4の実施の形態では、二つのクーリングチャネル26,26のオイル供給通路27,27およびオイル排出通路28,28が対角位置に配置されている。
【0069】
これら第3、第4の実施の形態によれば、環状のクーリングチャネル26に比べてオイル供給通路27からオイル排出通路28への流路が一通りしかないので、クーリングチャネル26,26内のオイルの流れが安定する。
【0070】
次に、図19および図20に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0071】
第5の実施の形態は、上述した第2の実施の形態と同一形状のクーリングチャネル26(下部が平坦であるもの)を備えているが、そのクーリングチャネル26は環状の中空パイプ33の内部に区画されており、ピストン13に装着される1本のプレッシャリング31および2本のオイルリング32,32のうち、プレッシャリング31を支持する耐摩環33aが前記中空パイプ33の外周面に一体に形成される。耐摩環33aを一体に備えた中空パイプ33は、ピストン13を鋳造する際にその内部に鋳ぐるまれる。
【0072】
この第5の実施の形態によれば、プレッシャリング31を保持する耐摩環を33a一体に備えた中空パイプ33を用いてクーリングチャネル26を区画するので、ピストン13の鋳造時に中子が不要になって製造工数の削減が可能になるだけでなく、耐摩環33aと一体化することで部品点数の削減にも寄与することができる。しかもクーリングチャネル26の下部が平坦に形成されていて上部だけが波打っているので、プレッシャリング31を支持するために平坦であることが要求される耐摩環33aを、クーリングチャネル26の平坦な下部に沿って支障なく支持することができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0074】
例えば、オイルジェット30,30の数は実施の形態の2個に限定されず、1個あるいは3個以上であっても良い。
【0075】
また実施の形態では、仮想的なキャビティ区分25A〜25Fの数を6個に設定しているが(N=6)、前記キャビティ区分25A〜25Fの数は2個以上であれば良い(Nは2以上の自然数)。
【0076】
このとき、キャビティ区分25A〜25Fの数と燃料噴射軸の数とは、必ずしも一致させる必要はないが、それを一致させることで、一つのキャビティ区分25A〜25Fに一つの燃料噴射軸が対応することになり、燃料の混合状態を円周方向により均一化することができる。尚、キャビティ区分25A〜25Fの挟み角の2等分線を燃料噴射軸に一致させれば、一つのキャビティ区分25A〜25Fの中心に燃料噴射軸が位置することになり、燃料の混合状態を更に均一化することができる。
【0077】
また実施の形態では、仮想的なキャビティ区分25A〜25Fの容積には、上死点にあるピストン13の頂面とシリンダヘッド16の下面とに挟まれた部分の容積を含めず、キャビティ25の開口端縁までの容積(即ち、ピストン頂面基本線L−a1,L−a2より下の容積)としたが、それを含めたものを仮想的なキャビティ区分25A〜25Fの容積として定義しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
また実施の形態ではディーゼルエンジンについて説明したが、本願発明はディーゼルエンジンに限定されず、燃焼室内に燃料を直接噴射する任意の形式のエンジンに対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1の実施の形態に係るディーゼルエンジンの要部縦断面図(図12の1−1線断面図)
【図2】図1の2−2線矢視図
【図3】図1の3−3線矢視図
【図4】ピストンの上部斜視図
【図5】図3の5−5線断面図
【図6】図3の6−6線断面図
【図7】図3の7−7線断面図
【図8】補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図5に対応する図
【図9】補正後のキャビティの断面形状を示す、前記図6に対応する図
【図10】仮想的なキャビティ区分の説明図
【図11】キャビティ区分の方向を円周方向に変化させたときの、該キャビティ区分の容積の変化率を示すグラフ
【図12】図1の12方向矢視図
【図13】ピストンのクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図
【図14】図13の14A−14A線断面図および14B−14B線断面図
【図15】第2の実施の形態に係る、前記図13に対応する図
【図16】図15の16A−16A線断面図および16B−16B線断面図
【図17】第3の実施の形態に係るクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図
【図18】第4の実施の形態に係るクーリングチャネル、オイル供給通路およびオイル排出通路を示す図
【図19】第5の実施の形態に係るピストンの縦断面図
【図20】耐摩環を一体に備えた中空パイプの斜視図
【符号の説明】
【0080】
13 ピストン
23 フュエルインジェクタ
25 キャビティ
25A〜25F キャビティ区分
26 クーリングチャネル
27 オイル供給通路
30 オイルジェット
31 プレッシャリング(ピストンリング)
33 中空パイプ
33a 耐摩環
d 最短距離
L2 ピストンピン軸線
Lp ピストン中心軸
X1〜X6 半平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面のピストン中心軸(Lp)方向の高さが円周方向に変化するピストン(13)と、前記ピストン(13)の頂面の中央部に凹設されたキャビティ(25)と、前記キャビティ(25)内に燃料を噴射するフュエルインジェクタ(23)とを備えた燃料直噴エンジンであって、
Nを2以上の自然数とし、前記キャビティ(25)の内壁面と、ピストン中心軸(Lp)から放射方向に延びて互いに均等な挟み角を有するN個の半平面(X1〜X6)とで、前記キャビティ(25)をN個の仮想的なキャビティ区分(25A〜25F)に区画したとき、前記各々の仮想的なキャビティ区分(25A〜25F)の容積が略等しくなるように、前記キャビティ(25)の内壁面の形状を設定するとともに、前記ピストン(13)における前記キャビティ(25)の裏部にオイルが供給されるクーリングチャネル(26)を円周方向に設けたものにおいて、
前記キャビティ(25)と前記クーリングチャネル(26)との最短距離(d)が円周方向に略均一になるように、前記クーリングチャネル(26)のピストン中心軸(Lp)方向の高さを円周方向に変化させたことを特徴とする燃料直噴エンジン。
【請求項2】
前記クーリングチャネル(26)の断面形状が円周方向に略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項3】
前記クーリングチャネル(26)の下部のピストン中心軸(Lp)方向の高さが円周方向に略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項4】
前記クーリングチャネル(26)の上部のピストン中心軸(Lp)方向の高さは、ピストンピン軸線(L2)の方向で最も高く、ピストンピン軸線(L2)に対して直交する方向で最も低く、かつ前記二つの方向の間で単調に変化しており、前記クーリングチャネル(26)の高さが変化する傾斜部分から下向きに延びるオイル供給通路(27)内に、ピストン(13)の下方に設けたオイルジェット(30)からオイルを噴射することを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項5】
前記クーリングチャネル(26)を中空パイプ(33)で構成し、その外周面にピストンリング(31)を保持する耐摩環(33a)を一体に形成したことを特徴とする、請求項3に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項6】
前記クーリングチャネルはピストンピン軸線(L2)を挟んで二つのクーリングチャネル(26)に分離されており、前記各々のクーリングチャネル(26)の一端側からオイルを供給して他端側からオイルを排出することを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項1】
頂面のピストン中心軸(Lp)方向の高さが円周方向に変化するピストン(13)と、前記ピストン(13)の頂面の中央部に凹設されたキャビティ(25)と、前記キャビティ(25)内に燃料を噴射するフュエルインジェクタ(23)とを備えた燃料直噴エンジンであって、
Nを2以上の自然数とし、前記キャビティ(25)の内壁面と、ピストン中心軸(Lp)から放射方向に延びて互いに均等な挟み角を有するN個の半平面(X1〜X6)とで、前記キャビティ(25)をN個の仮想的なキャビティ区分(25A〜25F)に区画したとき、前記各々の仮想的なキャビティ区分(25A〜25F)の容積が略等しくなるように、前記キャビティ(25)の内壁面の形状を設定するとともに、前記ピストン(13)における前記キャビティ(25)の裏部にオイルが供給されるクーリングチャネル(26)を円周方向に設けたものにおいて、
前記キャビティ(25)と前記クーリングチャネル(26)との最短距離(d)が円周方向に略均一になるように、前記クーリングチャネル(26)のピストン中心軸(Lp)方向の高さを円周方向に変化させたことを特徴とする燃料直噴エンジン。
【請求項2】
前記クーリングチャネル(26)の断面形状が円周方向に略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項3】
前記クーリングチャネル(26)の下部のピストン中心軸(Lp)方向の高さが円周方向に略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項4】
前記クーリングチャネル(26)の上部のピストン中心軸(Lp)方向の高さは、ピストンピン軸線(L2)の方向で最も高く、ピストンピン軸線(L2)に対して直交する方向で最も低く、かつ前記二つの方向の間で単調に変化しており、前記クーリングチャネル(26)の高さが変化する傾斜部分から下向きに延びるオイル供給通路(27)内に、ピストン(13)の下方に設けたオイルジェット(30)からオイルを噴射することを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項5】
前記クーリングチャネル(26)を中空パイプ(33)で構成し、その外周面にピストンリング(31)を保持する耐摩環(33a)を一体に形成したことを特徴とする、請求項3に記載の燃料直噴エンジン。
【請求項6】
前記クーリングチャネルはピストンピン軸線(L2)を挟んで二つのクーリングチャネル(26)に分離されており、前記各々のクーリングチャネル(26)の一端側からオイルを供給して他端側からオイルを排出することを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の燃料直噴エンジン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−215978(P2009−215978A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60556(P2008−60556)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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