説明

燃料遮断弁

【課題】燃料遮断弁は、簡単な構成で、満タン液位を設定することができるとともに、過給油を防止する。
【解決手段】燃料遮断弁10は、接続通路33aと排出通路42aとを有するケーシングと、弁室40Sに収納されたフロート機構60と、排出通路42aを開閉する排出弁70とを備えている。排出弁70は、排出通路42aを開閉する排出弁体74と、排出弁体74へ開閉するための力を加えるための転動体78と、転動体78を乗せかつ凹面で形成された支持面72aとを有し、転動体78を支持面72aの中心位置で支持することで排出弁体74を閉弁状態とし、転動体78が外力を受けて支持面72a上を径方向の外方へ移動することで排出弁体74を開弁状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの上部に装着され、燃料タンク内の燃料液位に応じて燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料遮断弁として、特許文献1などが知られている。すなわち、燃料遮断弁は、燃料タンク内の蒸発燃料を外部へ導く蒸発燃料排出管と該燃料タンクとの連通を規制する蒸発燃料排出規制装置を、燃料タンク内の液面が所定の満タン液面付近に達したときに、蒸発燃料排出管と燃料タンク内部との連通を遮断する第1のフロート弁と、燃料タンク内の圧力が所定値以上になった時に蒸発燃料排出管を燃料タンク内部に連通させるリリーフ弁と、燃料タンク内の液面が異常に上昇した時にリリーフ弁による前記連通を阻止する第2のフロート弁とにより構成し、給油時に第1のフロート弁を閉弁することにより燃料液位を設定するとともに、第2のフロートを閉じることにより過給油を防止している。
【0003】
しかし、従来の技術によると、複数のフロートを設ける必要があり、構成が複雑になるという課題があった。また、フロートを2段に構成する技術や、満タン規制弁と過給油防止弁とを別の箇所に配置する構成も知られているが、構成が複雑になったり、車両の組付性を損なったりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−297293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、簡単な構成で、満タン液位を設定することができるとともに、過給油を防止する燃料遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンクの上部に装着され、該燃料タンク内の燃料液位に応じて上記燃料タンク内と外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記燃料タンク内に連通する弁室と、該弁室と外部とを接続する接続通路と、上記弁室の下部に配置され該弁室と燃料タンク内とを接続する排出通路とを有するケーシングと、
上記弁室に収納され、該弁室の燃料液位に応じて上記接続通路を閉じるフロート機構と、
上記排出通路を開閉する排出弁と、
を備え、
上記排出弁は、上記排出通路を開閉する排出弁体と、該排出弁体へ開閉するための力を加えるための転動体と、該転動体を乗せかつ凹面で形成された支持面とを有し、
上記転動体を上記支持面の中心位置で支持することで上記排出弁体を閉弁状態とし、上記転動体が外力を受けて上記支持面上を径方向の外方へ移動することで上記排出弁体を開弁状態とするように構成したこと、を特徴とする。
【0008】
適用例1の燃料遮断弁によれば、給油時に、フロート機構が上昇して接続通路を閉じてタンク内圧を上昇させることにより、給油ガンによるオートストップを作動させることができる。
【0009】
また、適用例1にかかる排出弁は、車両の旋回などにより、燃料遮断弁の付近の燃料液位が上昇した場合において、排出弁の転動体が遠心力により支持面の凹面を移動し、つまり凹面上を中心から離れるように移動する。外方へ移動した転動体は、排出弁体に開弁方向の力を加えて、排出弁を開弁させ、排出通路を通じて燃料が流通可能になる。したがって、車両が旋回しているときなどに、排出弁は、燃料遮断弁の付近の燃料液位に迅速に対応して開閉することにより、燃料を弁室へ流入・流出させてフロート機構を開閉動作させ、外部への燃料の流出の防止や外部への通気を確保することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例2において、上記排出弁が所定角度以上の傾きにより、上記転動体が上記支持面を移動して、上記排出弁体を開弁させるように構成することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例3にかかる排出弁は、上記弁室内の所定以上の燃料液位にて上記フロート機構が閉弁している状態から所定時間経過したときに開弁状態に下降するように、上記弁室内の燃料を流出させる漏れ量に設定された構成をとることができる。この構成により、所定時間の間は、過給油の機能を損なわない状態を維持し、その後、速やかにフロート機構を閉弁状態から開弁状態へ移行させることができる。
【0012】
[他の適用例]
他の適用例として、上記排出弁体は、排出通路を開閉する弁部と、弁部に一体に形成され上記支持面を有する支持部とを有し、上記転動体の移動で上記排出弁体が傾くことにより排出通路を開くように構成することができる。
【0013】
さらに他の適用例として、排出弁は、支持面に載置された転動体と、該転動体の上面に接触する被支持面とを有する排出弁体とを備え、上記転動体が支持面を中心位置から径方向の外方へ移動することにより被支持面を上方へ押すことで開弁するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例にかかる自動車の燃料タンクに装着された燃料遮断弁を示す断面図である。
【図2】燃料遮断弁を分解した断面図である。
【図3】弁収納ケースおよびフロート機構を一部破断して分解した斜視図である。
【図4】弁収納ケースおよび排出弁を一部破断して示す斜視図である。
【図5】排出弁を分解した断面図である。
【図6】排出弁を示す断面図である。
【図7】排出弁の動作を説明する説明図である。
【図8】燃料遮断弁の動作を説明する説明図である。
【図9】燃料遮断弁の給油時における動作を説明する説明図である。
【図10】図9に続く動作を説明する説明図である。
【図11】燃料遮断弁の旋回時における動作を説明する説明図である。
【図12】従来の技術にかかるボール弁を説明する説明図である。
【図13】第2実施例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図14】排出弁の付近を拡大した断面図である。
【図15】排出弁を一部破断しかつ分解した斜視図である。
【図16】排出弁の動作を説明する説明図である。
【図17】第3実施例にかかる排出弁を示す断面図である。
【図18】排出弁の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0016】
A.第1実施例
(1) 燃料遮断弁10の概略構成
図1は本発明の第1実施例にかかる自動車の燃料タンクに装着された燃料遮断弁10を示す断面図である。燃料タンクFTは、その表面がポリエチレンを含む複合樹脂材料から形成されており、そのタンク上壁FTaに取付穴FTbが形成されている。タンク上壁FTaには、燃料遮断弁10がその下部を取付穴FTbに突入した状態にて取り付けられている。燃料遮断弁10は、ケーシング20と、フロート機構60と、排出弁70とを主要な構成として備えており、給油時にオートストップを機能させるとともに過給油を防止し、さらに、車両の走行時における旋回や傾斜により、キャニスタへの燃料の流出を防止するロールオーバー弁として機能する、いわゆるモジュール弁である。以下、燃料遮断弁10の構成を詳細に説明する。
【0017】
(2) 燃料遮断弁10の各部の構成
図2は燃料遮断弁10を分解した断面図である。ケーシング20は、ケーシング本体30と、弁収納ケース40と、蓋体50とを備えており、ケーシング本体30内のスペースが弁収納室20Sになっている。
【0018】
(2)−1 ケーシング20
ケーシング本体30は、ほぼ円筒形状の側壁部31と、側壁部31の上部に一体に形成された上壁部32とにより下向きのカップ形状に形成されている。側壁部31の上部には、蓋体50を溶着するための溶着部31bを有するフランジ31aが形成されている。また、側壁部31には、フランジ31aの下方に、弁収納室20Sと燃料タンク内とを連通する通気孔31cが形成されている。上壁部32の中央部には、上方から側方に向けて突出した通気壁33が形成されており、この通気壁33に弁収納室20Sに連通する接続通路33aが形成されている。接続通路33aの弁収納室20S側の開口周縁部は、シール部33bになっている。ケーシング本体30の下部の開口は、導入開口30aになっている。導入開口30aは、燃料タンクFTの満タン液位を定める所定液位FL1(図1参照)に設定されている。
【0019】
図3は弁収納ケース40およびフロート機構60を一部破断して分解した斜視図である。図2および図3において、弁収納ケース40は、ケーシング本体30の弁収納室20S内に収納されており、円筒状の側壁部41と、側壁部41の下部を塞ぐ底壁部42と、底壁部42の下部から拡径した拡張部43とを備えている。側壁部41と底壁部42とにより囲まれたスペースは、弁室40Sを形成し、また、底壁部42と拡張部43とにより囲まれたスペースは、後述する排出弁70を収納する排出弁室43Sを形成している。側壁部41は、ケーシング本体30の側壁部31との間であって弁収納室20Sの外周部の一部を、上昇気流でフロート機構60を上昇させないための側連通路21Sを形成している。また、側壁部41には、側連通路21Sと弁室40Sとを連通する側連通孔41aが形成されている。さらに、底壁部42の中央部には、弁室40Sと排出弁室43Sとを連通する排出通路42aが形成されている。拡張部43は、側壁部31の内壁に嵌合される複数の脚であり、その外周部に係合爪43aが形成されており、ケーシング本体30の側壁部31の係合穴31dに係合することで、弁収納ケース40がケーシング本体30に装着される。
【0020】
図2において、蓋体50は、蓋本体51と、蓋本体51の中央から側方へ突出した管体部52と、蓋本体51の外周に形成されたフランジ53とを備え、これらを一体に形成している。管体部52内には、管通路52aが形成されており、この管通路52aの一端は、接続通路33aを通じて弁収納室20Sに接続され、他端はキャニスタ(図示省略)側に接続される。蓋本体51の下部の内周側には、ケーシング本体30の溶着部31bに溶着される内側溶着部51aが形成され、また、フランジ53の下端部には、燃料タンクFTのタンク上壁FTa(図1)に溶着される外側溶着部53aが形成されている。
【0021】
(2)−2 フロート機構60
図3において、フロート機構60は、弁室40S内に収納されており、フロート61と、上部弁機構65とを備えている。フロート61は、上壁62と、上壁62の外周部から円筒形状に突設された側壁63を備え、下方に開放したフロート室61Sを有している。上壁62の中央部には、円形台座の下部弁部61aが形成されている。側壁63には、ガイド突条63aが上下方向に沿いかつ周方向に等間隔に8箇所、その外周端が弁収納ケース40の内壁に倣うように弁室40Sの内径より僅かに小さい外径に形成されている。ガイド突条63aは、弁収納ケース40の内壁に摺動することでフロート61が昇降する際の傾きを防止するようにガイドする。側壁63には、ガイド突条63aの間にガイド溝63bが上下方向の全長にわたって形成されている。フロート61は、上壁62の下面と底壁部42との間に掛け渡されたスプリング64により支持されている。
【0022】
上部弁機構65は、再開弁特性を改善するための弁であり、フロート61の上部に昇降可能に支持されており、上部弁本体66と、上部弁本体66に装着されたゴム弁体69とを備えている。上部弁本体66は、円板部67と、円板部67の外周から周方向に所定間隙を隔てて突設された複数のガイド部材68とから形成されている。ガイド部材68は、フロート61のガイド溝63bに挿入されることで上下方向にガイドされる。ガイド部材68には、ガイド穴68aが形成され、フロート61の係合爪63cを突入させることで、上部弁本体66が所定距離の範囲内で昇降可能なように係合している。
【0023】
上部弁本体66の中央部には、弁保持穴67aが形成されている。弁保持穴67aにゴム弁体69が装着されている。ゴム弁体69は、弁保持穴67aに圧入支持される支持基部69aと、支持基部69aの外周部に形成された上部シート部69bと、支持基部69aを貫通する接続孔69cと、接続孔69cの下部に形成された下部シート部69dとを備え、上部シート部69bが図3に示す接続通路33aのシール部33bに接離するとともに、下部シート部69dが下部弁部61aに接離することで接続孔69cを開閉する。
【0024】
(2)−3 排出弁70
図4は弁収納ケース40および排出弁70を一部破断して示す斜視図、図5は排出弁70を分解した断面図である。排出弁70は、弁室40Sに燃料を流入流出させる弁であり、弁収納ケース40の下部に連結固定される弁支持部材72と、弁支持部材72に保持される排出弁体74および転動体78とを備えている。弁支持部材72は、円板状の部材であり、中央に向けて下方に凹面に形成された支持面72aを有しており、その外周部に上方に向けて係合爪72bが4箇所形成されている。係合爪72bは、弁収納ケース40の下部に円筒状に突設された支持壁44の係合穴44aに係合することにより、弁支持部材72が弁収納ケース40に取り付けられている。
【0025】
排出弁体74は、上弁体75および下弁体76を組み付けることにより構成され、底壁部42の排出通路42aを開閉する弁体であり、排出通路42aより大径の部材を組み付けることにより構成されている。すなわち、上弁体75は、円板状の上面部75aと、上面部75aの下部外周部に沿って形成されたシール部75bと、上面部75aの外周下面から突設された係合部75cとを備えている。シール部75bは、シール部42bに着座したときに、僅かに漏れることを許容するように、さほど高いシール性を有しておらず、これにより、弁室40Sの燃料液位が所定時間(約1分)にわたって維持されないようにしている。一方、下弁体76は、台座となる下本体76aと、下本体76aの中央から突出し、係合爪76cを有する連結脚76bとを備えており、係合爪76cが係合部75cに係合することで、下弁体76の上部に上弁体75を組み付けている。下弁体76には、連結脚76bから下本体76aにかけて凹溝が形成されており、通気路76Pを形成している。また、下弁体76は、中央に向けて上方に凹んで傾斜した被支持面76dが形成されている。被支持面76dは、支持面72aに対向して配置されており、転動体78を介在させることで、弁支持部材72が下弁体76を支持している。
【0026】
図6に示す排出弁70の構成において、図7に示すように、燃料遮断弁10が約5゜以上の傾きを生じたときに、転動体78が弁支持部材72の支持面72aの傾斜面を移動し、つまり傾斜面上を中心から離れるように移動する。支持面72aと下弁体76の被支持面76dとの間隔は径方向の外方へ向かうにつれて狭くなっているから、転動体78は、排出弁体74を上方へ押し上げ、上面部75aのシール部75bが排出通路42aのシール部42bから離れ、排出通路42aを通じて燃料が流通可能になっている。
【0027】
(3) 燃料遮断弁10の動作
図8に示すように、給油により燃料タンクFT内に燃料が供給されると、燃料タンクFT内の燃料液位の上昇につれて燃料タンクFT内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、排出弁室43S、側連通路21S、側連通孔41aなどを通じて、および通気孔31c、側連通孔41aを通じて弁室40Sに入り、弁室40Sから接続通路33a、管通路52aを通じて、キャニスタ側へ逃がされる。そして、図9に示すように、燃料タンクFT内の燃料液位が所定液位FL1に達すると、燃料は導入開口30aを塞ぐことにより、燃料タンクFT内のタンク内圧が上昇する。この状態では、タンク内圧と弁収納室20Sの圧力との差圧が大きくなり、燃料が弁収納室20Sに流入する。そして、燃料が側連通路21Sを通じて上昇して、側連通孔41aから弁室40S内に流入する。このとき、弁室40Sの下部の排出通路42aは、排出弁70により閉じられているので、弁室40S内の燃料液位は上昇する。弁室40Sの燃料液位が所定の高さに達すると、フロート61の浮力およびスプリング64の荷重による上方への力と、フロート61および上部弁機構65の自重による下方への力との釣り合いによって、前者が後者を上回ったときにフロート61と上部弁機構65とが一体になって上昇して、ゴム弁体69がシール部33bに着座して接続通路33aを閉じる。これにより、燃料タンクFT内のタンク内圧が上昇する。タンク内圧の上昇によりインレットパイプ内の液面が上昇して、給油ガンの給油を停止するオートストップを働かせる。
【0028】
この状態において、排出弁70の排出弁体74が排出通路42aを閉じている状態にて高いシール性を有していないことから、弁室40Sの燃料が排出通路42aを通じて僅かずつ漏れ、弁室40Sの燃料液位が低下する。しかし、その漏れ量は、僅かな量であるから、弁室40S内の燃料が急激に低下せず、フロート機構60が接続通路33aを閉じたままでタンク内圧を維持し、給油ガンによる過給油を防止する。
【0029】
そして、図10に示すように、排出弁70を通じて、弁室40Sの燃料が僅かずつ漏れ、弁室40Sの燃料液位が低下すると、フロート61は、その浮力を減少して下降するから、下部弁部61aが下部シート部69dから離座して接続孔69cを開ける。接続孔69cの連通により上部弁機構65の下方の圧力は、接続通路33aの付近とほぼ同じ圧力になることで、上部弁機構65の閉弁する力が小さくなり、係合爪63cがガイド穴68aの下端に係合することで、上部弁機構65を引き下げ、ゴム弁体69がシール部33bから離れて、接続通路33aが開かれる。このように、接続孔69cの通路面積を接続通路33aの通路面積より小さく設定することで、上部弁機構65は、小さな力で開弁する。こうした上部弁機構65による2段の弁構造により、再開弁特性の向上を促進するように機能する。
【0030】
図11に示すように、車両の旋回により、燃料タンクFT内における燃料遮断弁10の付近の燃料液位が上昇して、弁収納室20S、弁室40S内に燃料が入ると、フロート機構60が上昇して、接続通路33aを閉じる。このとき、排出弁70は、転動体78が弁支持部材72の支持面72aの凹面を移動し、つまり凹面の中心から離れるように移動する。このとき、支持面72aと下弁体76の被支持面76dとの間隔は、中心から外方へ向かうにつれて狭くなっているから、転動体78は、排出弁体74を押し上げ、上面部75aのシール部75bが排出通路42aのシール部42bから離れ、排出通路42aを通じて燃料が流通可能になる。このように、車両が旋回しているときなどに、排出弁70が開くから、燃料液位の変動に迅速に対応して、排出弁70が弁室40Sへの燃料の流入流出に支障となることなく、フロート機構60が昇降する。
【0031】
(4) 燃料遮断弁10の作用効果
上記実施例にかかる燃料遮断弁10により、以下の作用・効果を奏する。
(4)−1 図9に示すように、燃料遮断弁10は、給油時に、閉弁してタンク内圧を上昇させることにより、給油ガンによるオートストップを作動させることができる。
【0032】
(4)−2 燃料遮断弁10の排出弁70は、排出弁体74が排出通路42aを閉じている状態にて高いシール性を有していないことから、満タンによる閉弁状態において、弁室40Sの燃料が排出通路42aを通じて僅かずつ漏れ、弁室40Sの燃料液位が低下する。しかし、その漏れ量は、僅かな量であるから、弁室40S内の燃料液位が急激に低下せず、フロート機構60が接続通路33aを閉じたままでタンク内圧を維持し、給油ガンによる過給油を確実に防止することができる。
【0033】
(4)−3 図11に示すように、車両の旋回により、燃料遮断弁10の付近の燃料液位が上昇した場合において、排出弁70の転動体78が遠心力により弁支持部材72の支持面72aの凹面を移動し、つまり凹面上を中心から離れるように移動する。支持面72aと下弁体76の被支持面76dとの間隔は、中心から径方向の外方へ向かうにつれて狭くなっているから、外方へ移動した転動体78が排出弁体74を押し上げ、上面部75aのシール部75bが排出通路42aのシール部42bから離れ、排出通路42aを通じて燃料が流通可能になる。したがって、車両が旋回しているときなどに、排出弁70は、燃料遮断弁10の付近の燃料液位が弁室40Sの燃料液位の変動に迅速に対応して、燃料を弁室40Sへ流入させてフロート機構60を閉弁動作させるから、外部への燃料の流出を防止することができる。
【0034】
(4)−4 図12は従来の技術にかかるボール弁100を説明する説明図である。従来のボール弁100は、ケーシング102と、球体104とを備え、球体104の移動によりケーシング102の流路孔102aを開閉する。こうしたボール弁100では、図12(A)(B)に示すように、流路孔102aを大きくして大流量を確保したい場合には、ボール弁100の傾きを大きくしないと、球体104が流路孔102aから移動せず、開弁しない。こうした課題を解決するのに、図12(C)(D)に示すボール弁110のように、ケーシング112の流路孔112aの通路面積が同じであっても小さい傾斜角度で、球体114を移動させて開弁させるには、球体114を大きくすればよいが、ボール弁110自体が大型化する課題を生じる。しかし、図6および図7に示すように、本実施例にかかる排出弁70は、転動体78が直接、排出通路42aを開閉するのではなく、転動体78の移動に伴って、排出弁体74を連動させて、排出通路42aの開度を増幅して開閉しているから、転動体78を大きくすることなく、大きな通路面積の排出通路42aを開閉することができる。
【0035】
B.第2実施例
図13は第2実施例にかかる燃料遮断弁10Bを示す断面図、図14は排出弁70Bの付近を拡大した断面図、図15は排出弁70Bを一部破断しかつ分解した斜視図である。本実施例は、排出弁70Bの構成に特徴を有する。排出弁70Bは、弁収納ケース40Bの下部に一体形成された弁支持部材72Bと、弁支持部材72Bに保持される排出弁体74Bおよび転動体78Bとを備えている。弁支持部材72Bは、弁収納ケース40Bの下面から突設された有底の円筒体であり、その底部の中央部に、排出通路72Baが形成されている。排出通路72Baの開口周縁部には、段部で形成されたシール部72Bbが形成されている。
【0036】
排出弁体74Bは、円板状の弁部75Bを備えている。弁部75Bは、段部のシール部72Bbに載置されることで、排出通路72Baを閉じている。弁部75Bの上部には、弁部75Bより大径の円板状の支持部76Bが形成されている。支持部76Bは、弁支持部材72Bの底部との間に、間隙Gpを確保しており、シール部72Bbの段部に弁部75Bの下部の外周端が支持されたときに、外周端を支点にシーソーとして揺動するように構成されている。また、支持部76Bには、凹面の支持面76Baが形成されている。支持面76Baは、中央に向けて下方へ凹面に形成されており、この支持面76Baに転動体78Bが載置されている。なお、弁部75Bは、シール部72Bbに着座したときに、僅かに漏れることを許容するように、さほど高いシール性を有していない。
【0037】
排出弁70Bの構成において、図16に示すように、燃料遮断弁10Bが約5゜以上の傾きを生じたときに、転動体78Bが支持面76Ba上を移動し、つまり凹面上を中心から離れるように移動する。弁部75Bは、シール部72Bbの段部に支持され、しかも、弁部75Bと弁支持部材72Bの底部間には、間隙Gpが確保されているから、転動体78Bが支持面76Baの外周側へ移動したときに、弁部75Bがシール部72Bbとの接触箇所を支点として、排出弁体74Bが傾く。これにより、支点と反対側の弁部75Bが排出通路72Baのシール部72Bbから離れ、排出通路72Baを通じて燃料が流通可能になる。したがって、排出弁体74Bは、弁部75Bの外周端部を支点に傾いて開いたときには、シーソーの原理により、シール部72Bbとの開度が大きくなり、大きな流量を流すことができる。
【0038】
C.第3実施例
図17および図18は第3実施例にかかる排出弁70Cを示す断面図である。本実施例は、排出弁70Cの排出弁体74Cを1物品とした構成に特徴を有する。排出弁体74Cは、円板状の弁部75Cと、弁部75Cの下部に拡径して形成され中心から径方向の外方に向けて凸面の被支持面76Caを有する支持部76Cとを備え、これらを一体に形成している。被支持面76Caの中央部には、転動体78Cを中央位置で位置決め支持する支持凹所76Cbが形成されている。すなわち、支持凹所76Cbは、僅かな傾きによって転動体78Cが移動して弁部75Cが開弁動作しないように円弧面で転動体78Cを位置決めするように形成されている。排出弁体74Cは、弁支持部材72Cの支持面72Caに載置された転動体78Cを介して支持されることで、排出通路42Caを開閉可能に配置されている。
【0039】
上記排出弁70Cの構成において、図18に示すように、燃料遮断弁が約5゜以上の傾きを生じたときに、転動体78Cが支持面72Ca上を移動し、つまり凹面上を中心から離れるように移動する。これにより、排出弁体74Cが自重で下降し、弁部75Cのシート部75Caがシール部42Cbから離れ、排出通路42Caを通じて燃料が流通可能になる。この排出弁70Cによれば、弁部75Cのシート部75Caの外径に応じた通路面積を設定することで、大きな流量を流すことができる。
【0040】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0041】
上記実施例にかかる燃料遮断弁では、満タン規制弁とロールオーバー弁とを兼用したモジュール弁について説明したが、これに限らず、満タン規制弁またはロールオーバー弁の単独の機能を有する弁に用いてもよく、この場合には、弁収納ケースをなくし、弁収納室を弁室とすることで適用することができる。
【0042】
上記実施例における転動体78として、球体を用いたが、これに限らず、凹面からなる支持面を転動する部材であれば、コロなどの棒体であってもよい。
【0043】
さらに、上記実施例にかかる排出弁は、弁室から燃料が漏れる箇所を、排出弁体とシール部との間としたが、これに限らず、排出通路の付近に底部に形成された細孔であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…燃料遮断弁
10B…燃料遮断弁
20…ケーシング
20S…弁収納室
21S…側連通路
30…ケーシング本体
30a…導入開口
31…側壁部
31a…フランジ
31b…溶着部
31c…通気孔
31d…係合穴
32…上壁部
33…通気壁
33a…接続通路
33b…シール部
40…弁収納ケース
40B…弁収納ケース
40S…弁室
41…側壁部
41a…側連通孔
42…底壁部
42a…排出通路
42b…シール部
42Ba…排出通路
42Ca…排出通路
42Bb…シール部
42Cb…シール部
43…拡張部
43S…排出弁室
43a…係合爪
44…支持壁
44a…係合穴
50…蓋体
51…蓋本体
51a…内側溶着部
52…管体部
52a…管通路
53…フランジ
53a…外側溶着部
60…フロート機構
61…フロート
61S…フロート室
61a…下部弁部
62…上壁
63…側壁
63a…ガイド突条
63b…ガイド溝
63c…係合爪
64…スプリング
65…上部弁機構
66…上部弁本体
67…円板部
67a…弁保持穴
68…ガイド部材
68a…ガイド穴
69…ゴム弁体
69a…支持基部
69b…上部シート部
69c…接続孔
69d…下部シート部
70…排出弁
70B…排出弁
70C…排出弁
72…弁支持部材
72B…弁支持部材
72C…弁支持部材
72a…支持面
72b…係合爪
72Ba…排出通路
72Bb…シール部
72Ca…支持面
74…排出弁体
74B…排出弁体
74C…排出弁体
75…上弁体
75B…弁部
75C…弁部
75a…上面部
75b…シール部
75c…係合部
75Ca…シート部
76…下弁体
76B…支持部
76C…支持部
76P…通気路
76a…下本体
76b…連結脚
76c…係合爪
76d…被支持面
76Ba…支持面
76Ca…被支持面
76Cb…支持凹所
78…転動体
78B…転動体
78C…転動体
FT…燃料タンク
FTa…タンク上壁
FTb…取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの上部に装着され、該燃料タンク内の燃料液位に応じて上記燃料タンク内と外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記燃料タンク内に連通する弁室(40S)と、該弁室(40S)と外部とを接続する接続通路(33a)と、上記弁室(40S)の下部に配置され該弁室(40S)と燃料タンク内とを接続する排出通路(42a)とを有するケーシング(20)と、
上記弁室(40S)に収納され、該弁室(40S)の燃料液位に応じて上記接続通路(33a)を閉じるフロート機構(60)と、
上記排出通路(42a)を開閉する排出弁(70)と、
を備え、
上記排出弁(70)は、上記排出通路(42a)を開閉する排出弁体(74)と、該排出弁体(74)を開閉動作させるための力を加えるための転動体(78)と、該転動体(78)を乗せかつ凹面で形成された支持面(72a)とを有し、
上記転動体(78)を上記支持面(72a)の中心位置で支持することで上記排出弁体(74)を閉弁状態とし、上記転動体(78)が外力を受けて上記支持面(72a)上を径方向の外方へ移動することで上記排出弁体(74)を開弁状態とするように構成したこと、を特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記排出弁(70)が所定角度以上の傾きにより、上記転動体(78)が上記支持面(72a)を移動して、上記排出弁体(74)を開弁させるように構成した燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁において、
上記排出弁(70)は、上記弁室(40S)内の所定以上の燃料液位にて上記フロート機構(60)が閉弁している状態から所定時間経過したときに開弁状態に下降するように、上記弁室(40S)内の燃料を流出させる漏れ量に設定された燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−71639(P2012−71639A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216413(P2010−216413)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】