説明

燃料電池システム

【課題】液体燃料ラインを逆流する液体燃料に混入した異物により機器が損傷するのを防止する。
【解決手段】燃料電池システム1は、改質器8で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、PEFCスタックで改質ガスを用いて発電するものであって、改質器8に導入される液体燃料が流通する液体燃料ラインL1を備え、液体燃料ラインL1には、液体燃料に混入した異物が分離されるように液体燃料を一時貯留するチャンバ51が設けられている。よって、水ラインL2から導入され混合される水が液体燃料ラインL1に逆流した場合であっても、この逆流した水がチャンバ51で分離され、液体燃料のみがチャンバ51を通過することとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を用いて発電を行なう燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、改質器で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、燃料電池で改質ガスを用いて発電するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−240952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような燃料電池システムでは、例えば液体燃料を水蒸気改質して改質ガスを生成する場合、液体燃料と水とを混合する必要があるため、混合される水が液体燃料よりも圧力が高いと、この水が液体燃料ラインに逆流してしまうおそれがある。よって、逆流した水(異物)により、液体燃料ラインに設けられた機器が損傷してしまう問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、液体燃料ラインを逆流する液体燃料に混入した異物により機器が損傷するのを防止できる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムは、改質器で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、燃料電池で改質ガスを用いて発電する燃料電池システムであって、改質器に導入される液体燃料が流通する液体燃料ラインを備え、液体燃料ラインには、液体燃料に混入した異物が分離されるように液体燃料を一時貯留するチャンバが設けられていることを特徴とする。
【0006】
この燃料電池システムでは、液体燃料ラインに設けられているチャンバが、液体燃料に混入した異物が分離されるように液体燃料を一時貯留する。そのため、例えば水蒸気改質を行なうために液体燃料に混合される水等の異物が液体燃料ラインに逆流する場合であっても、その異物がチャンバで分離され、液体燃料のみがチャンバを通過されることとなる。従って、チャンバよりも上流側に異物が逆流するのを抑制でき、液体燃料ラインを逆流する液体燃料に混入した異物により機器が損傷するのを防止できる。なお、この「異物」とは、液体燃料以外のものをいい、例えば、水蒸気改質を行なうために液体燃料に混合される「水(水蒸気)」の他に、部分酸化改質等を行なうために液体燃料に混合される「空気(酸素)」、「金属粉」、「錆び」、「塵」及び「ゴミ」等が挙げられる。
【0007】
ここで、液体燃料ラインにおいて下流側には、オリフィスが設けられていることが好ましい。これにより、例えば液体燃料ラインを水が逆流する場合において、その圧力が高く流速が速い場合でも、オリフィスにより流速が低減され、よって、水がチャンバで確実且つ好適に分離されることとなる。従って、液体燃料ラインを逆流する液体燃料に混入した異物により機器が損傷するのを一層防止できる。
【0008】
また、液体燃料ラインには、遮断弁が設けられており、遮断弁は、流通する液体燃料の圧力が所定圧力以上のときに、液体燃料ラインを開放するように設定されていることが好ましい。この場合、流通する液体燃料の圧力が所定圧力(例えば、水蒸気改質を行なうために混合される水の圧力)以上のときに、遮断弁が液体燃料ラインを開放するため、液体燃料ラインに異物が逆流してしまうこと自体を抑制することができ、液体燃料ラインを逆流する液体燃料に混入した異物により機器が損傷するのを一層防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体燃料ラインを逆流する液体燃料に混入した異物により機器が損傷するのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。燃料電池システムは、液体燃料を用いて発電を行なうものであり、例えば家庭用の電力供給源として採用される。ここでは、液体燃料としては、入手が容易であり且つ独立して貯蔵可能であるという観点から灯油を用いている。
【0012】
図1に示すように、燃料電池システム1は、脱硫器2、燃料処理システム(FPS)3、固体高分子形燃料電池(PEFC)スタック(燃料電池)4、インバータ5、及びこれらを収容する筐体6を備えている。
【0013】
脱硫器2は、外部から導入された液体燃料を脱硫するものである。この脱硫器2には、ヒータ(不図示)が設けられており、これにより、脱硫器2は、液体燃料を例えば130℃〜180℃まで加熱する。FPS3は、液体燃料を改質して改質ガスを生成するためのものであり、改質器8及びバーナ9を有している。改質器8は、脱硫された液体燃料と水蒸気(水)とを改質触媒で水蒸気改質反応させて、水素を含有する改質ガスを生成する。バーナ9は、改質器8の改質触媒を加熱することで、水蒸気改質反応に必要な熱量を供給する。この改質器8には、導入される液体燃料及び水蒸気を気化するための気化器11が設けられている。
【0014】
PEFCスタック4は、複数の電池セル(不図示)が積み重ねられて構成されており、FPS3で得られた改質ガスを用いて発電してDC電流を出力する。電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された固体高分子である電解質とを有しており、アノードに改質ガスを導入させると共に、カソードに空気を導入させることで、各電池セルにおいて電気化学的な発電反応が行われることになる。
【0015】
インバータ5は、出力されたDC電流をAC電流に変換する。筐体6は、その内部に脱硫器2、FPS3、PEFCスタック4及びインバータ5をモジュール化して収容する。
【0016】
また、燃料電池システム1は、改質器8及びバーナ9に導入される液体燃料が流通する液体燃料ラインL1を備えている。この液体燃料ラインL1は、金属性の配管からなり、改質器8に接続され液体燃料を改質器8に導入する改質器ラインL11と、バーナ9に接続され液体燃料をバーナ9に導入するバーナラインL12とに分岐点Tを介して分岐されている。
【0017】
改質器ラインL11の改質器8付近には、水を改質器8に導入するための水ラインL2が連結され、液体燃料と水とが混合されている。この水ラインL2には、PCFCスタック4で発生した水を回収する回収水ラインL4が接続されている。
【0018】
次に、液体燃料ラインL1について詳細に説明する。図2は図1の燃料電池システムにおける液体燃料ラインを示す概略構成図であり、図3は図1の燃料電池システムにおけるチャンバを示す断面図である。図2に示すように、液体燃料ラインL1において分岐点Tの上流側には、上流側から下流側に向かって、ポンプ13、圧力計52、流量計41、チャンバ51、オリフィス43がこの順に設けられている。
【0019】
ポンプ13は、液体燃料ラインL1の下流側に液体燃料を圧送するものであり、ここでは、定流量ポンプが用いられている。このように定流量ポンプを用いることで、改質器8及びバーナ9に導入される液体燃料の流量を安定化することができる。このポンプ13には、制御装置42が接続されている。
【0020】
圧力計52は、通過する液体燃料の圧力を検出し、その圧力信号を制御装置42に出力する。流量計41は、通過する液体燃料の流量を検出し、その流量信号を制御装置42に出力する。チャンバ51は、液体燃料に混入した異物が分離されるように液体燃料を一時貯留するものであり、ここでは、チャンバ51は、水ラインL2で混合され液体燃料ラインL1を逆流する水が主に分離されるように、液体燃料を一時貯留する(詳しくは、後述)。オリフィス43は、液体燃料ラインL1の流路面積を減少させ、これにより、流通する液体燃料を制限する。
【0021】
制御装置42は、例えばCPU、ROM、及びRAM等により構成されている。この制御装置42は、流量計41から出力された流量信号に基づいてポンプ13の駆動を制御し、ポンプ13で圧送される液体燃料の流量を制御する。また、制御装置42は、圧力計52から出力された圧力信号に基づいて、液体燃料ラインL1を流通する液体燃料の圧力が所定圧力以上(ここでは、水ラインL2における水の圧力以上)かどうかを判断し、液体燃料の圧力が所定圧力以上の圧力の場合に、後述の遮断弁53に開弁信号を出力する。また、制御装置42は、バーナ9により改質器8の改質触媒を加熱しない場合(例えばPEFCスタック4からのオフガスを利用して改質触媒を加熱する場合等)に、後述の遮断弁54を制御してバーナラインL11を遮断させる。
【0022】
液体燃料ラインL1において分岐点Tにより分岐された改質器ラインL11及びバーナラインL12には、遮断弁53,54がそれぞれ設けられている。遮断弁53は、制御装置42に接続されており、改質器ラインL11を遮断すると共に、制御装置42から開弁信号が入力されたときに、改質器ラインL11を開放する。つまり、流通する液体燃料の圧力が所定圧力以上のときに、改質器ラインL11を開放する。遮断弁54は、制御装置42に接続されており、バーナ9により改質器8の改質触媒を加熱しない場合に、バーナラインL11を遮断してバーナ9への液体燃料の供給を停止させる。
【0023】
ここで、燃料電池システムでは、上述したように、液体燃料に混入した水が分離されるように液体燃料を一時貯留するチャンバ51が液体燃料ラインL1に設けられている。このチャンバ51は、図3に示すように、その内部の空間に液体燃料を一時貯留し、液体燃料Kと液体燃料中に混入する水Wとの比重差で液体燃料Kを浮遊させると共に水Wを沈殿させ、これらを分離させる。そして、浮遊された液体燃料Kのみが液体燃料ラインL1の正流方向(図中の矢印方向)及び逆流方向に通過できるようになっている一方、底部に設けられた排出部54の水抜き栓55を外すことで、排出部54から沈殿した水が排出されるようになっている。
【0024】
このように構成された燃料電池システム1では、まず、外部から液体燃料がポンプ(不図示)により筐体6内導入される。続いて、導入された液体燃料がポンプ13で圧送されつつ、圧送される液体燃料の流量が流量計41から出力された流量信号に基づいて制御装置42で制御される。続いて、圧送された液体燃料が、圧力計52、流量計41、チャンバ51及びオリフィス43をこの順に通過し、分岐点Tで改質器ラインL11とバーナラインL12とに分岐される。
【0025】
そして、分岐された一方の液体燃料が、バーナ9に導入されると共に、分岐された他方の液体燃料が、遮断弁53に開弁信号が入力され改質器ラインL11が開放されたとき(液体燃料の圧力が水ラインL2における水の圧力以上のとき)に遮断弁53を通過し、水ラインL2から導入された水と混合され、気化器11で気化されて改質器8に導入される。
【0026】
ここで、燃料電池システム1においては、上述したように、液体燃料ラインL1にチャンバ51が設けられているため、水ラインL2から導入され混合される水が液体燃料ラインL1に逆流した場合であっても、この逆流した水がチャンバ51で分離され、液体燃料のみがチャンバ51を通過することとなる。従って、チャンバ51よりも上流側に水が逆流するのを抑制でき、液体燃料ラインL1を逆流する液体燃料に混入した水により機器(ここでは、流量計41、圧力計52及びポンプ13)が損傷するのを防止できる。
【0027】
なお、上述したように、排出部54から沈殿した水が排出されるようになっているため、チャンバ51では、液体燃料と当該液体燃料に混入する水とを分離するだけでなく、分離した水を容易に除去することもできる。ちなみに、チャンバ51では、逆流方向だけでなく正流方向に流通する水を分離し除去することも勿論でき、よって、液体燃料ラインL1においてチャンバ51よりも下流側に水が流通するのを抑制することができる。また、液体燃料に当該液体燃料よりも比重が大きい、金属粉、錆、塵若しくはゴミが混入した場合にも、これらをチャンバ51で分離し除去することも可能である。
【0028】
また、上述したように、液体燃料ラインL1においてチャンバ51の下流側にオリフィス43が設けられているため、液体燃料ラインを逆流する水の圧力が高く流速が速い場合でも、このオリフィス43により流速が低減(トラップ)され、よって、水がチャンバ51で確実且つ好適に分離されることとなる。従って、液体燃料ラインL1を逆流する液体燃料に混入した水により機器が損傷するのを一層防止できる。
【0029】
また、上述したように、液体燃料ラインL1における改質器ラインL11には、遮断弁53が設けられており、この遮断弁53にあっては、流通する液体燃料の圧力が水ラインL2における水の圧力以上のときに、改質器ラインL11を開放するように設定されている。そのため、水ラインL2から導入された水が液体燃料ラインL1に逆流してしまうこと自体を抑制することができ、液体燃料ラインL1を逆流する液体燃料に混入した水により機器が損傷するのを一層防止できる。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、上記実施形態では、液体燃料として灯油を用いたが、ガソリン、ナフサ、軽油、メタノール、エタノール、DME(ジメチルエーテル)、バイオマスを利用したバイオ燃料を用いてもよい。なお、この場合には、脱硫器(脱硫方法)及び改質器(改質方法)は、用いる液体燃料の特性に応じたものとされる。
【0032】
また、上記実施形態では、チャンバ51が、異物として液体燃料ラインL1を逆流する水が主に分離されるように液体燃料を一時貯留したが、液体燃料を部分酸化改質やオートサーマル改質(ATR)する際には、例えばチャンバの上端部に空気が流通する空気孔を設けることで、異物として液体燃料ラインを逆流する空気(酸素)が主に分離されるように液体燃料を一時貯留する場合もある。この場合、遮断弁が液体燃料ラインL1を開放する際の液体燃料の圧力(上記の所定圧力)は、異物の種類に応じて適宜設定される。
【0033】
また、上記実施形態では、PEFCスタック4を備えた燃料電池システム1としたが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタックを備えた燃料電池システムとしてもよい。また、上記実施形態では、ポンプ13に定流量ポンプを用いたが、例えば電磁ポンプ等の定流量ポンプ以外の種々のポンプを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【図2】図1の燃料電池システムにおける液体燃料ラインを示す概略構成図である。
【図3】図1の燃料電池システムにおけるチャンバを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1…燃料電池システム、4…PEFCスタック(燃料電池)、8…改質器、43…オリフィス、51…チャンバ、53…遮断弁、L1…液体燃料ライン、K…液体燃料、W…水(異物)。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質器で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、燃料電池で前記改質ガスを用いて発電する燃料電池システムであって、
前記改質器に導入される前記液体燃料が流通する液体燃料ラインを備え、
前記液体燃料ラインには、前記液体燃料に混入した異物が分離されるように前記液体燃料を一時貯留するチャンバが設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記液体燃料ラインにおいて前記チャンバの下流側には、オリフィスが設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記液体燃料ラインには、遮断弁が設けられており、
前記遮断弁は、流通する前記液体燃料の圧力が所定圧力以上のときに、前記液体燃料ラインを開放するように設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−70625(P2009−70625A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235853(P2007−235853)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(500561595)荏原バラード株式会社 (68)
【Fターム(参考)】