説明

燃料電池システム

【課題】水蒸気改質のために供給される水の利用効率を向上させるのに有効な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】液体原料を改質して水素リッチの改質ガスを生成する水素製造装置3と、水素製造装置3によって生成された改質ガスを燃料電池スタック4に導入する改質ガス導入ラインL3と、水素製造装置3を反応せずに通過した水を改質ガスから分離して回収する水回収ユニット23とを備え、水回収ユニット23は、気液分離チャンバ25と静置タンク31とを有する。水素製造装置3から未反応の水が流出してしまった場合であっても、その水は水回収ユニット23によって改質ガスから分離回収される。その結果として、回収した水は、必要に応じて改質用水として再利用したり、燃料電池スタックの冷却水として利用したりできるため、利用効率の向上に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造用原料の改質によって生成された改質ガスを燃料電池スタックに供給する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、灯油やガソリンなどの液体原料を水蒸気改質して改質ガスを生成し、生成した改質ガスを燃料電池スタックに供給する燃料電池システムが開示されている。この種の燃料電池システムは、液体原料を水蒸気改質して改質ガスを生成する水素製造装置を備える。水素製造装置は、改質触媒を収容する改質器を備えている。改質器内の改質触媒は、バーナなどによって所定の温度まで加熱される。改質器内には、液体原料と水蒸気とが導入され、液体原料が気化した原料ガスと水蒸気とは、所定の温度まで加熱された改質触媒によって水蒸気改質が促進され、改質ガスが生成される。改質ガス中には、一酸化炭素が含まれている。そのため、水素製造装置は、改質ガスから一酸化炭素を除去するためのシフト部及び選択酸化部を備えている。水素製造装置で生成された改質ガスは、燃料電池スタックに供給される。
【特許文献1】特開2004−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の燃料電池システムでは、改質触媒の温度に偏りが生じて所定の温度より低い部分があると、改質の促進が不十分となって水蒸気の一部がそのまま流出してしまうため、水蒸気改質のために供給される水の効率的な利用が難しかった。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、水蒸気改質のために供給される水の利用効率を向上させるのに有効な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水素製造用原料を水蒸気改質して水素リッチの改質ガスを生成する水素製造装置と、水素製造装置によって生成された改質ガスを燃料電池スタックに導入する改質ガス導入ラインと、を備える燃料電池システムにおいて、水素製造装置を反応せずに通過した水を改質ガスから分離して回収する水回収手段を備え、水回収手段は、改質ガス導入ライン上に設けられると共に、改質ガスと液体とを分離する気液分離手段と、気液分離手段に接続されると共に、気液分離手段によって改質ガスから分離された液体を貯留し、液体を油分と水とに分離する静置手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
この燃料電池システムでは、水素製造装置から未反応の水が流出してしまった場合であっても、その水は水回収手段によって改質ガスから分離回収される。その結果として、回収した水は、必要に応じて改質用水として再利用したり、燃料電池スタックの冷却水として利用したりできるため、利用効率の向上に有効である。さらに、水回収手段は、気液分離手段と、静置手段とを有しており、水素製造装置から未改質の水素製造用原料からなる油分が水と一緒に流出した場合であっても、その油分を除去した後の水を回収できるため、回収した水を広い用途で利用し易くなり、水の利用効率を向上させるのに有効である。
【0007】
さらに、改質ガス導入ライン上に設けられると共に、気液分離手段よりも下流側に配置された炭化水素吸着部を更に備えると好適である。炭化水素吸着部により、未改質の炭化水素を除去できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、水蒸気改質のために供給される水の利用効率を向上させるのに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は本発明に係る燃料電池システムの概略を示す図である。燃料電池システム1は、水素製造用原料として液体原料を用いて発電を行なうものであり、例えば家庭用の電力供給源として採用される。ここでは、液体原料としては、入手が容易であり且つ独立して貯蔵可能であるという観点から灯油を用いている。
【0011】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫器2、水素製造装置(以下、「FPS」という)3、固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」という)スタック4、インバータ5、及びこれらを収容する筐体6を備えている。
【0012】
脱硫器2は、外部から導入された液体原料を脱硫するものである。この脱硫器2には、ヒータ(不図示)が設けられており、これにより、脱硫器2は、例えば130℃〜140℃まで加熱されるようになっている。
【0013】
FPS3は、液体原料を水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器8と、改質器8を加熱するバーナ9と、改質器8から流出する改質ガス中の一酸化炭素を除去する変成器17と選択酸化器19とを有する。変成器17及び選択酸化器19によってCO除去部15が構成される。
【0014】
改質器8には、水蒸気改質反応を促進する改質触媒が収容されている。バーナ9は、改質器8の改質触媒を加熱し、触媒反応を効果的に発揮させるために必要な熱量を供給する。改質器8には、液体原料と水蒸気(水)とが導入される。改質器8では、液体原料は気化して原料ガスとなり、改質触媒によって、原料ガスと水蒸気(水)との水蒸気改質反応が促進され、水素リッチな改質ガスが生成される。
【0015】
CO除去部15の変成器17は上流側に配置されており、選択酸化器19は下流側に配置されている。変成器17は、改質器8で生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素濃度を低減するため、一酸化炭素を水と反応させ、水素シフト反応により水素と二酸化炭素に転換するためのものである。また、選択酸化器19は、変成器17で処理された改質ガスの一酸化炭素濃度を更に低減させるため、改質ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化することにより二酸化炭素にするものである。
【0016】
PEFCスタック4は、複数の電池セル(不図示)が積み重ねられて構成されており、FPS3で得られた改質ガスを用いて発電してDC電流を出力する。電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された電解質である高分子のイオン交換膜とを有しており、アノードに改質ガスを導入させると共に、カソードに空気を導入させることで、各電池セルにおいて電気化学的な発電反応が行われることになる。
【0017】
インバータ5は、出力されたDC電流をAC電流に変換する。筐体6は、その内部に脱硫器2、FPS3、PEFCスタック4及びインバータ5をモジュール化して収容する。
【0018】
また、燃料電池システム1は、液体原料を筐体6の外部からFPS3に導入するための液体原料ラインL1を備えている。液体原料ラインL1上には、脱硫器2が設けられている。液体原料ラインL1の脱硫器2よりも下流側は分岐しており、一方は、液体原料を改質器8に導入する液体原料ラインL11となり、他方は、液体原料をバーナ9に供給する液体原料ラインL12となっている。
【0019】
また、燃料電池システム1は、水蒸気改質に用いられる改質用水を改質器8に導入する水導入ラインL2を備えている。水導入ラインL2上には、改質用水を貯留する水タンク(水貯留部)20と、水タンク20から改質器8に改質用水を供給するポンプ(不図示)とが設けられている。
【0020】
また、燃料電池システム1は、FPS3から流出する改質ガスをPEFCスタック4に導入する改質ガス導入ラインL3を備えている。さらに、燃料電池システム1は、FPS3を反応せずに通過して改質ガス導入ラインL3上に流出する未改質の液体原料及び水を改質ガスから分離し、さらに、液体原料からなる油分と水とを分離して水だけを回収する水回収ユニット23と、水回収ユニット23よりも改質ガス導入ラインL3上の下流側に設けられた活性炭フィルタ部(炭化水素吸着部)27とを備えている。
【0021】
改質器8の温度が改質触媒の触媒反応に不十分な温度であったり、温度に偏りが生じたりした場合には、未改質の液体原料や水が改質ガス導入ラインL3を流下する可能性がある。未改質の液体原料や水は、PEFCスタック4に流入すると、PEFCスタック4の発電効率を低下させる可能性がある。水回収ユニット23によって、水のみならず、液体原料を改質ガスから分離回収することで、発電効率の低下を軽減できる。
【0022】
図2に示されるように、水回収ユニット23は、改質ガス導入ラインL3上に設けられた気液分離チャンバ(気液分離手段)25と、液体移送管29を介して気液分離チャンバ25に接続されると共に、気液分離チャンバ25から流下してきた液体を静置して、水と油分とに分離する静置タンク(静置手段)31とを備えている。
【0023】
気液分離チャンバ25の上部には、改質ガス導入ラインL3を形成する上流側の管路に接続された入口部25aと、改質ガス導入ラインL3の下流側の管路に接続された出口部25bとが設けられている。気液分離チャンバ25内の上部領域には、改質ガスからなる気相が形成され、下部領域には、その他の液体からなる液相が形成される。気液分離チャンバ25内で液体から分離した改質ガスは、出口部25bから流出して改質ガス導入ラインL3を流下する。気液分離チャンバ25の下部には、底に貯まった液体を排出する排出部25cが形成されており、排出部25cには、液体移送管29が接続されている。
【0024】
静置タンク31の底部には、流出管33が接続されており、流出管33には、制御弁33aが設けられている。静置タンク31に蓄えられる液体の量が増加し、油分から分離した水が所定量以上になると制御弁33aが所定時間だけ開き、所定量の水を流出管33から流出させる。静置タンク31は、液体移送管29及び流出管33から取り外しできる。静置タンク31は、油分の量が増えてくると、液体移送管29や流出管33から取り外され、空の新たな静置タンク31に取り替えられる。なお、静置タンク31に蓄えられた水量や油分の量については、図示しないセンサなどによって検出する。
【0025】
流出管33の下流端は、水タンク20に接続されている。静置タンク31に貯まった水は、制御弁33aを開くことで水タンク20内に回収される。なお、静置タンク31に貯まった水の回収は、ポンプなどの液体移送手段で回収したり、静置タンク31よりも水タンク20を下方に配置して高低差をつけ、自然流下で回収したりすることができる。水タンク20内に回収された水は水蒸気改質のための改質用水として再利用されるため、回収した水を有効活用できる。流出管33、制御弁33a及び水タンク20は、水回収ユニット23で回収された水をFPS3で利用する再利用ユニット(再利用手段)24である。なお、水タンク20に蓄えられた水はPEFCスタック4の冷却水として利用することもできる。
【0026】
活性炭フィルタ部27は、気液分離チャンバ25の気体流出側に設けられている。活性炭フィルタ部27には、気液分離チャンバ25で気液分離された後の改質ガスが流入し、改質ガス中に含まれる未改質の炭化水素は、活性炭に吸着されて改質ガスから取り除かれる。活性炭フィルタ部27を透過した後の改質ガスは、改質ガス導入ラインL3を流下してPEFCスタック4に導入される。
【0027】
上記の燃料電池システム1では、FPS3から未反応の水が流出してしまった場合であっても、その水は水回収ユニット23によって改質ガスから分離回収されるため、その水は、必要に応じて改質用水として再利用したり、PEFCスタック4の冷却水として利用したりできるため、利用効率の向上に有効であり、水自立を図る上で有利となる。
【0028】
さらに、水回収ユニット23で回収された水を再利用ユニット24で移送して改質用水として再利用できるため、所望の改質ガスを生成するために必要となる新たな水の供給量を抑えることが可能になり、水蒸気改質のために供給される水の利用効率を向上させるのに有効である。特に、新たに供給される水は、水蒸気改質に適した状態にするためにフィルタに通しているが、水回収ユニット23で回収された水を改質用水として再利用することで、フィルタに通す水の量が減り、フィルタの目詰まりに起因した交換頻度が減って効率的である。
【0029】
さらに、水回収ユニット23では、改質ガスから分離された液体から油分を除去した後の水を回収できるため、回収した水を広い用途で利用し易くなり、水の利用効率を向上させるのに有効である。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、上記実施形態では、液体原料として灯油を用いたが、ガソリン、ナフサ、軽油、メタノール、エタノール、DME(ジメチルエーテル)、バイオマスを利用したバイオ燃料を用いてもよい。なお、この場合には、脱硫器(脱硫方法)及び改質器(改質方法)は、用いる液体原料の特性に応じたものとされる。
【0032】
また、上記実施形態では、バーナ9により改質器8の改質触媒を加熱したが、電気ヒータやPEFCスタックからの排熱(例えばオフガス)を利用して改質触媒を加熱してもよい。なお、バーナ9を設けない場合には、液体原料ラインL12が不要となる。
【0033】
また、上記実施形態では、PEFCスタック4を備えた燃料電池システム1としたが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタックを備えた燃料電池システムとしてもよい。
【0034】
また、炭化水素吸着部は、活性炭フィルタ部27に限定されず、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナなどを用いたフィルタであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの概略を示す図である。
【図2】水回収ユニット及び活性炭フィルタ部の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…燃料電池システム、3…水素製造装置、4…固体高分子形燃料電池スタック、23…水回収ユニット(水回収手段)、25…気液分離チャンバ(気液分離手段)、27…活性炭フィルタ部(炭化水素吸着部)、31…静置タンク(静置手段)、L3…改質ガス導入ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造用原料を水蒸気改質して水素リッチの改質ガスを生成する水素製造装置と、前記水素製造装置によって生成された前記改質ガスを燃料電池スタックに導入する改質ガス導入ラインと、を備える燃料電池システムにおいて、
前記水素製造装置を反応せずに通過した水を前記改質ガスから分離して回収する水回収手段を備え、
前記水回収手段は、前記改質ガス導入ライン上に設けられると共に、前記改質ガスと液体とを分離する気液分離手段と、前記気液分離手段に接続されると共に、前記気液分離手段によって前記改質ガスから分離された液体を貯留し、前記液体を油分と水とに分離する静置手段と、を有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記改質ガス導入ライン上に設けられると共に、前記気液分離手段よりも下流側に配置された炭化水素吸着部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−93893(P2009−93893A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262501(P2007−262501)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(500561595)荏原バラード株式会社 (68)
【Fターム(参考)】