説明

燃料電池システム

【課題】本発明は燃料電池システムに接続される熱負荷が利用可能なエクセルギーを高めるとともに、燃料(原料)利用効率を向上させることができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】
本発明のSOFCシステム1は、供給された燃料と空気とを利用して発電反応により発電するSOFCセル13と、SOFCセル13で生じる発電発熱を利用して改質反応により原料から改質ガスを生成し、これを燃料としてSOFCセル13に供給する改質器14と、SOFCセル13から排出され、改質器14における改質反応に利用されて残った熱を保有する排ガスから、特定量の熱エネルギーを消費する熱負荷30と、その後段に設けられ、熱負荷30により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの熱を利用して、改質器14に供給する原料を加温および加湿するバブラータンク40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、および該SOFCを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池に関する研究および開発が盛んになっている。特にSOFC(固体酸化物型燃料電池)は、高い発電効率と高品位な排熱の二次利用とを可能とするので、産業用分散電源として期待されている。このSOFCについては、主に民間企業および公的研究機関の精力的な研究開発努力により信頼性支配要因の解析が進み、ようやく実用化への基盤的条件が整いつつある。
【0003】
ところで従来では、1MWまでの小規模発電領域における分散型電源用発電エンジンとしては、ディーゼルエンジン(以下DE)などが内燃機関の代表として、またマイクロガスタービン(以下MGT)が外燃機関の代表として利用されている。これらDEまたはMGTは、特にバックアップ発電設備あるいは公営電力の信頼性の低い新興国における常用発電設備として利用されている。しかしながらSOFCはこれら既存の発電設備に対して、理論上以下の2点で優位性がある。
【0004】
(1) 熱機関が動作原理上、小型化によって効率を損なうのに対して、SOFCは効率が大きさに依存しない点(なお、数KW〜1MWまでの領域では、MGTが30%前後、DEが40%程度の発電効率であるのに対して、SOFCは大規模発電所と同等以上の40%を超える発電効率が期待できる)。
【0005】
(2) SOFCはそれ自体に機械的可動部品を持たず、補機類もポンプやブロワー等の比較的静音化が可能な部品のみで構成されるため、きわめて静粛性に優れた発電設備を提供できる点(常用電源として、騒音のためDEやMGTが設置できない営業用店舗等への設置、あるいは夜間運転などを可能とする)。
【0006】
ところで、大型ガス火力発電分野では、ガスタービン(ブレイトンサイクル)と蒸気タービン(ランキンサイクル)とによるアドバンスドコンバインドサイクル(以下ACC)によって発電効率の向上を実現している。ACCの発電効率は60%に達し、今後は既存のガス火力発電に代わって普及が進むと見られる。
【0007】
一方、同じ天然ガス等を燃料(原料)とする分散型電源用発電エンジンに関しても、コンバインドシステムもしくはコージェネレーションを前提とした開発を行い発電効率の向上を図る必要性がある。そこで、上述したSOFCの特性を利用した家庭用SOFCコージェネシステムの開発が進められている。
【0008】
ここで上述した各種の分散型電源用発電エンジンのコージェネレーションの形態について検討してみる。上述した分散型電源用発電エンジンでの排熱利用形態は、コージェネレーション用動力として温水を利用するものが大半であって、産業上、非常に需要の大きい蒸気利用は稀であった。これは、産業用蒸気(通常、10気圧、180℃程度)を得るには概ね300℃に近い熱源を必要とするが、DEやMGTでは300℃に近い温度の排熱を得ることが困難であるからである。
【0009】
より具体的には、DE等のオットーサイクルエンジンはエンジンオイルにより燃焼室の冷却を行い、エンジン内部でエンジンオイルと冷却水の熱交換を行い排熱は温水として得られる。このため、DE等の構成では水の沸点を超える熱利用形態を実現することが困難となる。また、DE等の冷却系統の耐熱性および耐圧性は水の沸点までの温度を前提として設計されており、耐熱性および耐圧性の点からも構成上、問題があった。
【0010】
一方、MGTの排熱形態は燃焼排ガスであり、これを適切な方法で熱交換して蒸気を作ることが原理上、可能ではある。しかしながら、MGTでは、この燃焼排ガスで再生熱交換器を駆動して発電効率を高めるように構成されており、再生熱交換器の駆動後に得られる燃焼排ガスは250℃程度のものとなる。このため、MGTでは300℃に近い温度の排熱を得ることは困難で、排熱を蒸気利用に十分に用いることができない。
【0011】
SOFCについてもMGTと同様に、排熱形態は燃焼ガスである。歴史的にSOFCのセル材料開発は、構成材料の耐熱制約の緩和、起動停止に伴う熱膨張収縮による破壊の低減、シンタリングによる電極材料劣化の抑制等を目的として、低温動作化を志向してきた。これら開発努力の結果として、600℃以下で動作可能なSOFCセルも研究レベルでは存在する。しかしながら近年の主流である燃料極支持型のSOFCの電池動作温度は650℃近辺以上となっている。これは実用的な燃料電池システムを製作する場合、改質反応(反応温度約650℃)への排熱の有効利用がシステムの高効率化にとって必須となるからである。
【0012】
例えばSOFCにおける水蒸気改質の反応式は式(1)、(2)に示すとおりであり、SOFC燃料電池セルで行われる電池反応は式(3)に示すとおりである。
O(liq) → HO(vap) (吸熱)・・・(1)
CH + 2HO(vap) → 2CO + 4H (吸熱)・・・(2)
2H + O → 2HO (発熱)・・・(3)
ここでSOFCでは、水蒸気改質(式(1)および式(2))に必要な熱を、式(3)の発熱反応、および未利用燃料(以下オフガス)の燃焼熱により賄うことで、全体として燃料(原料)利用効率を高め、発電効率を向上するよう設計されている。なお、電池反応(式(3))に係る発熱および未利用燃料燃焼熱の合計を以降では発電発熱と称する。また、発電発熱によって改質反応熱を賄った残余の排熱を発電排熱と称することとする。
【0013】
なお、一般的にSOFCの発電排熱は、例えば近年主流となっている電池温度650℃程度のセルを用いた場合、これより大幅に低い250℃程度となり、上述したMGTの利用可能な排ガス温度と大差がないものとなる。
【0014】
ところで、燃料電池において燃料利用効率を高めた具体的な構成としては例えば、特許文献1から4の構成が挙げられる。
【0015】
特許文献1では、カソード入口にカソード出口ガスを戻すためのカソードリサイクルブロワを駆動させる蒸気タービンの駆動力として、MCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)の排熱を利用する溶融炭酸塩型燃料電池発電装置が開示されている。この溶融炭酸塩型燃料電池発電装置では、さらにまた蒸気タービンから排出された蒸気を改質用蒸気として利用するようにも構成されている。このように、蒸気タービンから排出された蒸気を改質器に分岐することによって、改質器内での気化を行う必要をなくし、効率を向上させることができる。
【0016】
特許文献2には、燃料電池発電部から排出される排燃料ガスを、改質装置に供給する原料ガスと合流させる排ガス路が設けられた、りん酸形燃料電池を用いた燃料電池発電装置が開示されている。この燃料電池発電装置は、排燃料ガス中に含まれる水素ガスを改質ガスとともに燃料電池発電部に供給することができるため、水素ガス供給量を増大させることができる。また、排燃料ガス中に含まれる水蒸気を改質装置の改質反応に利用することができるため、気水分離装置からの改質装置への水蒸気供給量を低減させることができる。
【0017】
特許文献3には、発電に伴って燃料電池スタックで発生する排熱を熱源とする水蒸気添加器により改質対象の燃料(原料)に水蒸気を混合する固体分子型燃料電池(PEFC)発電システムが開示されている。すなわち、特許文献3では、排熱で温度が上昇した循環冷却水で密閉状容器内の水を加熱し、この密閉状容器に燃料(原料)を通ずることによって燃料(原料)を加湿し、以って気化エネルギーの一部を賄うことができる。
【0018】
特許文献4には、燃料電池ハウジング内に配された、余剰の燃料ガスの燃焼により加熱される第1気化器と、この燃料電池ハウジングから排出される排気ガスにより加熱される第2気化器とを備えた固体酸化物形燃料電池システムが開示されている。この固体酸化物形燃料電池システムでは、作動開始から第2気化器の温度が第1設定温度に達するまでは、第1気化器で水蒸気を生成させ、第1設定温度に達すると第2気化器において水蒸気が生成されるように構成されている。第2気化器にて水蒸気が生成されると、水の気化に燃料電池ハウジング内の熱を利用することがなく高温状態に保つことが可能となり、結果として燃焼室で燃焼させて燃焼熱として利用する燃料ガスの割合を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平5−326004号公報
【特許文献2】特開平7−114933号公報
【特許文献3】特開2002−289231号公報
【特許文献4】特開2010−251309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ここで、例えばSOFCの動作温度が1000℃であるとし、この発電排熱を用いて熱負荷(ガスタービン)を駆動させる場合を想定する。発電発熱を以って改質反応熱および水蒸気を生成するための気化熱を賄う場合、発電排熱の温度は例えば700℃となる。これに対して発電発熱で改質反応熱のみを賄う構成の場合は、発電排熱温度が850℃となる。この場合、後者の構成の方がこの温度差に見合う分だけガスタービンなどの熱負荷の動作効率が向上することとなる。また、ガスタービンで二次発電を行う構成である場合には、後者の構成の方が、二次発電効率が高まり、総合的な発電効率はより高まることとなる。
【0021】
このように発電発熱を利用するものを改質反応に必要な熱のみとするように構成した場合、SOFCと接続される熱負荷に提供できる発電排熱の温度を増大させることができ、熱負荷が利用可能なエクセルギーを高めることができる。
【0022】
しかしながら、上述した従来技術では、熱負荷が利用可能なエクセルギー(exergy)を高めつつ、燃料(原料)利用効率を向上させることができないという問題がある。つまり、従来技術では、燃料(原料)利用効率に係る議論はなされているが、熱負荷が利用可能なエクセルギーの向上に係る議論がなされていない。
【0023】
より具体的には、特許文献2および3については、そもそも排熱エクセルギーを議論する余地のないほど動作温度の低いPAFC、またはPEFCを対象としている。
【0024】
特許文献1には、利用可能な発電排熱をカスケード利用する点については開示されている。つまり、蒸気タービンの駆動力として、MCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)の排熱を利用し、蒸気タービンから排出された蒸気をさらに改質用蒸気として利用する構成が開示されている。
【0025】
しかしながら、発電排熱を利用する熱負荷としては、蒸気温度が一定に保たれ蒸気量で出力を制御する蒸気タービンのみを想定しており、例えば排熱エクセルギーを高めることにより蒸気圧力を高め、より多くの仕事をタービンから取り出すような視点が考慮されていない。言うまでもなく、蒸気タービンでは材料耐圧等の機械的制約から蒸気圧力を上げることは困難であり、このためエクセルギー向上を蒸気タービンの動作効率向上に直結させることが困難である。
【0026】
また、特許文献4に係る固体酸化物形燃料電池システムでは、以下のように排熱を利用する技術思想が開示されている。すなわち、第2気化器にて熱交換に利用した後の排気ガスの排熱を排熱回収用熱交換器により温水として回収する。しかしながら、排熱を第2気化器での水蒸気の生成に利用し、その後の排熱を温水として利用するという技術思想では、できるだけ高温の排熱を熱負荷に対して利用することができない。すなわち、排熱エクセルギーを有効に活用することができない。
【0027】
ところで、上述のように熱負荷にて利用可能なエクセルギーを向上させるために、発電発熱を、水蒸気を発生させるための気化熱に直接利用しない場合、この気化熱をなんらかの形で賄う必要がある。ここで、この気化熱を得るために、例えば、燃料(原料)を燃焼させる構成の場合、燃料利用効率が低下することとなる。このため、この気化熱を発電排熱により賄うことができるように構成されることが求められる。
【0028】
さらにまた、特に特許文献1、3、4では、燃料利用効率の向上を求め、排熱を用いて気化熱に充てる技術思想については触れられている。しかしながら、排熱を気化熱に利用するにあたり以下の技術的困難が生じるが、この技術的困難を解決するための具体的手段について示されていない。
【0029】
すなわち、表1に示すS/Cと燃料(原料)の露点との関係より明らかなように、改質器において例えばS/C=2.7±0.2という範囲での制御が求められている。この場合、蒸気分圧は72300〜75300Paの間に保たれねばならず、その露点は90.8〜91.9℃の約1℃の範囲に保たれねばならない。要するに、蒸気分圧と露点に関して非常に精密な制御が必要となるが、特許文献1〜4にはこの制御を具現化する手段が開示されていない。
【0030】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱負荷が利用可能なエクセルギーを高めつつ、燃料(原料)利用効率を向上させることができる燃料電池システムを実現することにある。
【0031】
【表1】

【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明に係る燃料電池システムは、上記した課題を解決するために、供給された燃料と空気とを利用して発電反応により発電する固体酸化物型燃料電池セルと、前記固体酸化物型燃料電池セルで生じる発電反応熱及び未利用の燃料の燃焼熱を利用して改質反応により原料ガスから改質ガスを生成し、これを前記燃料として該固体酸化物型燃料電池セルに供給する改質器と、前記固体酸化物型燃料電池セルから排出され、前記改質器における改質反応に利用されて残った熱を保有する排ガスから特定量の熱エネルギーを消費する熱負荷と接続するための熱負荷接続部と、前記熱負荷接続部の後段に設けられ、前記熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの熱を利用して、前記改質器に供給する前記原料ガスを加温および加湿する熱交換器と、を備える。
【0033】
上記した構成によると、熱負荷接続部に熱負荷が接続される。
【0034】
ここで、前記熱負荷に供給される排ガスは、当初、固体酸化物型燃料電池セルの動作温度に相当する熱が前記改質器の改質反応にのみ利用されて残った熱を保有するものである。したがって、例えば、当初の保有熱を、前記改質反応と原料ガスの加温および加湿とに利用する場合よりも高温の排ガスを熱負荷に供給することができる。このため、熱負荷が利用可能なエクセルギーを高めることができる。特に、固体酸化物型燃料電池の動作温度は約700℃から1000℃と高温であり、この高い温度を大きく低下させることなく排ガスを熱負荷に供給できるため、この熱負荷として適用可能な用途の範囲が広がる。
【0035】
また、前記熱負荷接続部の後段に前記熱交換器が備えられているため、前記熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの熱を利用して前記改質器に供給する原料ガスを加温および加湿することができる。このため、原料ガスを加湿および加温するために原料ガスの一部を燃焼する必要がなく、燃料利用効率を向上させることができる。なお、原料ガスに加湿および加温に必要な熱の温度は約200℃と低温でよく、前記熱負荷により特定の熱エネルギーが消費された後の排ガスで十分に賄える温度である。
【0036】
よって、本発明に係る燃料電池システムでは、該燃料電池システムに接続される熱負荷が利用可能なエクセルギーを高めるとともに、燃料(原料)利用効率を向上させることができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0037】
本発明は以上に説明したように構成され、燃料電池システムに接続される熱負荷が利用可能なエクセルギーを高めるとともに、燃料(原料)利用効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態に係るSOFCシステムの概略構成の一例を示す図である。
【図2】比較例に係るSOFCシステムの概略構成の一例を示す図である。
【図3】図1のSOFCシステムの変形例1として示すSOFCシステムの概略構成の一例を示す図である。
【図4】図1のSOFCシステム1の変形例2として示すSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。
【図5】図5(a)は、本実施の形態に係る中空糸膜型全熱交換器の一例を示す正面図であり、図5(b)は図5(a)に示す中空糸膜型全熱交換器のA−A断面図である。
【図6】図6(a)は、本実施の形態に係る中空糸膜モジュールの一例を示す正面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す中空糸膜モジュールのB−B断面図であり、図6(c)は、図6(a)に示す中空糸膜モジュールの側面図である。
【図7】図1のSOFCシステム1の変形例3として示すSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るSOFCシステムの概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
【0040】
まず、図1を参照して本実施の形態に係るSOFCシステム(燃料電池システム)1の構成について説明する。図1は本実施の形態に係るSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。
【0041】
本発明に係るSOFCシステム1は、燃料電池としてSOFCを利用した発電システムである。SOFCシステム1は、図1に示すように、ホットモジュール10内に、カソード11およびアノード12を有するSOFCセル(固体酸化物型燃料電池セル)13、ならびに都市ガスなどの原料(原料ガス)を水蒸気改質するための改質器14を備える。SOFCセル13と改質器14との間には、改質器14で必要となる改質反応熱を賄うために燃焼部15が設けられている。なお、図示しないが、SOFCセル13にはさらに集電部材が設けられており、SOFCセル13はこの集電部材を介して不図示の電力負荷と電気的に接続されている。また、SOFCシステム1では、ホットモジュール10の後段でかつ、バブラータンク(貯留器)40の前段の位置に、接続部38a、38bを介してガスタービンなどの熱負荷30が取り付けられている。
【0042】
このような構成を有するSOFCシステム1では、カソード11から排出される排空気とアノード12から排出される排水素とが燃焼部15内で燃焼され、改質器14の改質反応のエネルギーとして利用される。またSOFCの起動時には未改質の原料も燃焼部15内で燃焼し、ホットモジュール10内を予備加熱する。なお、改質反応で必要な熱の温度は650℃程度であり、この改質反応で利用する熱は、燃焼部15で発生させる熱により賄われる。SOFCシステム1では、SOFCの起動以降、改質器14およびSOFCセル13の状況を監視しながら、原料に改質水を添加して水素リッチな改質ガスを生成する。そして、この生成した改質ガスを利用してSOFCセル13で発電を行う。この発電は、改質ガスの生成量が増加するにつれて本格化し、最終的に定常発電状態へ移行する。
【0043】
また、SOFCシステム1では、概して次の経路で原料の供給を行なっている。すなわち、原料は、再生熱交換器として機能するバブラータンク40を通じて気化器20に供給され、さらに気化器20から改質器14に供給されるようになっている。なお、詳細は後述するが、ホットモジュール10から排出された排ガスの熱(発電排熱)を熱負荷30が利用した後の残余の熱によりバブラータンク40内の水を加温している。また、バブラータンク40内の水温に応じて、改質器14への改質水の供給形態が以下に示す二つの形態に分けられている。
【0044】
まず、SOFCシステム1の起動時であって、バブラータンク40内の水が所定の温度に達していないとき、ドレインタンク37より水ポンプ24を用いて気化器20に水を供給する。そして、気化器20では気化器バーナー21によって水が温められ蒸発し、改質器14に供給される。このときの気化器バーナー21に供給する原料の流量コントロールは、制御器3が気化器燃料バルブ22の開閉を制御して行う。その後、熱負荷30で特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの熱によりバブラータンク40内の水を加温し始める。この加温によりバブラータンク40内の水温が所定の温度に達したとき、制御器3は気化器燃料バルブ22を閉じて、気化器バーナー21の燃焼を停止するように制御する。そして、バブラータンク40内における水のみによって原料を所定の湿度状態に保つように加温および加湿する。バブラータンク40内の水により加温および加湿された原料は、気化器20を素通りし、改質器14に送出される。
【0045】
なお、SOFCシステム1の起動時からバブラータンク40内の水が所定の温度に達するまでの間における過渡状態では、気化器20およびバブラータンク40の両者を併用して原料の加温および加湿を行なう。
【0046】
ここで、熱負荷30からの排ガスの熱によりバブラータンク40を加温および加湿する処理について詳細に説明する。
【0047】
まず、ホットモジュール10の燃焼部15でカソード11から排出される排空気とアノード12から排出される排水素とを混合して排水素を燃焼し、その燃焼熱を、改質反応に利用するエネルギーとして改質器14に供給する。そして、この改質反応のために熱エネルギーの一部が消費された後の排ガスがホットモジュール10から排出される。この排出された排ガスの熱(発電排熱)は、例えば、ガスタービンなどの熱負荷30によって二次利用される。熱負荷30によって二次利用され、さらに熱エネルギーを失った排ガスはバブラータンク40に供給される。なお、一般的にはSOFCの運転温度は700℃〜1000℃である。ここで、例えば、運転温度が1000℃であるとすると、ホットモジュール10から排出される排ガスの温度は850℃、熱負荷30によってさらに熱エネルギーが消費された排ガスの温度は300℃程度となる。このため、熱負荷30によって二次利用された排ガスであっても水を気化するために必要な温度を十分有している。
【0048】
熱負荷30により特定量の熱エネルギーが消費された排ガスがバブラータンク40に供給されると、例えばコイル熱交換器等を用いてこの排ガスとバブラータンク40内の水との間で熱交換が行なわれる。そして、バブラータンク40内の水は、この排ガスにより所定の温度に加温される。なお、この所定の温度とは既に表1に示した所定のS/C(水蒸気改質における水蒸気と一酸化炭素との量論比)に対応した原料の露点近傍の露点を実現できる温度である。
【0049】
なお、上記では熱負荷30としてガスタービン(ブレイトンサイクル)を例に挙げて説明したがSOFCシステム1で利用できる熱負荷はこれに限定されるものではない。例えば、ランキンサイクル(例えば蒸気タービン等)、またはスターリングサイクルなどの膨張サイクル、あるいは排熱を利用した吸着式冷凍庫等の駆動であってもよい。もしくは熱負荷3は単純な蒸気利用による駆動であってもよい。
【0050】
さらには、ガスタービンと蒸気タービンまたはスターリングサイクルとを組み合わせたコンバインドサイクルであってもよい。
【0051】
バブラータンク40内の水と熱交換が行なわれ排出される排ガスは、露点が60〜70℃程度である。このため、このバブラータンク40内では排ガスの凝縮は起こらない。そこで、本実施の形態に係るSOFCシステム1では、バブラータンク40から排出された排ガスを、凝縮熱交換器(凝縮器)35によってホットモジュール供給空気と熱交換して冷却する。そして、この冷却により、排ガスに含まれる水分が液体の水(凝縮水)となる。このように排ガスを凝縮させることにより生じた凝縮水をバブラータンク40に供給して原料の加湿に利用し、余剰分は凝縮水バルブ25を通じてドレインタンク37に戻す。
【0052】
場合によっては、バブラータンク40内の水位調節のために、不図示のドレインバルブを通じてバブラータンク40から凝縮水がドレインタンク37に戻されるように構成されていてもよい。
【0053】
また、SOFCシステム1では、上述したように、バブラータンク40内で加温および加湿された原料の露点が所定の温度範囲内となるように、熱負荷30により消費される排ガスが保有する熱エネルギーの量を制御するように構成されている。なお、これ以降ではこの制御を原料の露点制御と称することとする。ここで、原料の露点制御に係る処理の詳細について説明する。
【0054】
SOFCシステム1では、排ガスの排出経路において熱負荷30とバブラータンク40との間に排ガス温度センサ31を備えている。そして、この排ガス温度センサ31によって熱負荷30からバブラータンク40に向かって排出される排ガスの温度(排ガス温度T1)を計測できるように構成されている。さらにまた、原料の供給経路においてバブラータンク40と気化器20との間に原料の温度を測定するための原料温度センサ23を備えている。そして、この原料温度センサ(第一計測器)23によってホットモジュール10の改質器14に供給する原料の温度(原料温度T2)を計測できるように構成されている。なお、ここでの原料温度T2は、原料の露点に略等しい値であり、この原料温度T2を露点とみなすことができる。このため、原料温度センサ23によって原料の露点を計測しているともいえる。
【0055】
排ガス温度センサ31により計測される排ガス温度T1と原料温度センサ23により計測される原料温度T2は制御器3に入力される。制御器3は、熱負荷30と空気量バルブ34とにそれぞれ制御信号を出力してそれらを制御する。制御器3は、制御機能を有するものであれば特に限定されない。制御器3は、例えば、マイクロコントローラ、MPU、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等で実現できる。また、制御器3は集中制御を行う単独の制御器によって構成されてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。制御器3は、以下のように露点制御を行う。
【0056】
まず、制御器3は、排ガス温度センサ(第二計測器)31による計測結果(排ガス温度T1)を監視しながら、熱負荷30で消費される熱エネルギーを調整して、バブラータンク40に供給する熱エネルギーを調整する。具体的には、制御器3は、供給された排ガスによりバブラータンク40内の水温が所定の温度(所望される原料温度T2)よりもわずかに上回る温度となるようにバブラータンク40に供給する熱エネルギーを調整する。
【0057】
この熱負荷30で消費される熱エネルギーの調整は、例えば以下のようにして実現することができる。すなわち、熱負荷30が蒸気タービンであり、その蒸気タービンに発電機が接続され、さらに、この発電機に電力負荷が接続されている構成とする。このような構成の場合、制御器3は、電力負荷によって消費される電力量を制御することで、結果的に蒸気タービンで消費される熱エネルギーの消費量を調整することができる。
【0058】
そして、バブラータンク40においてわずかに上回った温度を、冷却部41において空気により冷却し、原料温度T2を所望の値に維持するという制御様式を取る。
【0059】
すなわち、バブラータンク40は、冷却部41において空気量バルブ34を介して分岐されたホットモジュール供給空気の一部により冷却できるように構成されている。そして、具体的には以下のようにバブラータンク40内の水温の微調整をして原料の露点の精密な制御を行う。SOFCシステム1では、制御器3が、原料温度センサ23によって計測した原料温度T2と所定温度との誤差に基づき、バブラータンク40の冷却量を決定する。そして、制御器3が決定した冷却量に応じて空気量バルブ34の開閉を制御し冷却部41へのホットモジュール供給空気の供給量を調整してバブラータンク40内の水温を微調整する。このように原料温度T2をフィードバック制御することで、SOFCシステム1では、表1に示した露点となるように、原料に対する厳密な加温および加湿の制御を可能とする。
【0060】
ここで本実施の形態に係るSOFCシステム1の優位性をより明確とするために以下の比較例と比較する。
【0061】
(比較例)
本実施の形態に係るSOFCシステム1の比較例としてSOFCシステム100の系統図を図2に示す。図2は、比較例に係るSOFCシステム100の概略構成の一例を示す図である。
【0062】
比較例に係るSOFCシステム100は、SOFCシステム1と比較して、以下の点で構成上の相違を有する。
【0063】
SOFCシステム100では、気化器20がホットモジュール10内に備えられ、気化器バーナー21が不要となっている点で異なる。また、気化器燃料バルブ22、原料温度センサ23、凝縮水バルブ25、排ガス温度センサ31、空気量バルブ34、凝縮熱交換器35、およびバブラータンク40を備えていない点でも異なる。
【0064】
つまりSOFCシステム100では、ドレインタンク37から液体水がホットモジュール10内の気化器20に直接に供給されるように構成されている。また、発電発熱(電池反応に係る発熱(発電反応熱)および未利用燃料燃焼熱)により、改質器14内で行われる改質反応のエネルギーと気化器20内で行われる水の気化のエネルギー(気化エネルギー)とを賄うように構成されている。
【0065】
このため、SOFCシステム1と比べて、比較例に係るSOFCシステム100の方が、ホットモジュール10において気化エネルギーの分だけ、発電発熱の熱エネルギーを余分に利用することとなる。このため、比較例に係るSOFCシステム100の方が、未利用燃料燃焼熱の消費が大きくなり、結果として原料の消費が増大する。さらに、気化器20の吸熱反応により発電発熱の一部が奪われるため、ホットモジュール10から熱負荷30に排出される排ガスの温度(発電排熱の温度)が大幅に低下する。
【0066】
したがって、比較例のSOFCシステム100と本実施の形態に係るSOFCシステム1とを比較すると、SOFCシステム1の方が発電効率と排熱エクセルギーとが向上する。また、このように排熱エクセルギーが向上するため、例えば、上述した熱負荷30の動作効率の向上に資するものとなる。例えば比較例に係るSOFCシステム100では、SOFCセル13として動作温度が700℃程度の比較的低温で動作するセルを用いたとき、ホットモジュール10から排出される排ガス温度は250℃程度となる。このように排ガス温度が250℃の場合、常用産業用蒸気(10気圧、180℃程度)を生成するには温度不足となる。
【0067】
このため、比較例に示すSOFCシステム100では、ホットモジュール10から排出された排ガスの利用形態は発電排熱の温度に見合った利用、例えば給湯などに限定されることとなる。これに対して、本実施の形態に係るSOFCシステム1によれば排ガス温度が100℃程度以上向上し、産業用蒸気の生成が可能となる。その結果、利用用途の拡大を図ることができる。
【0068】
次に、本実施の形態に係るSOFCシステム1の変形例を以下に示す。
【0069】
(変形例1)
まず図3を参照して、本実施の形態に係るSOFCシステム1の変形例1について説明する。図3は図1のSOFCシステム1の変形例1として示すSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。変形例1に係るSOFCシステム1は、図1に示すSOFCシステム1と比較して、再生熱交換器としてバブラータンク40の代わりに、隔壁式熱交換器である熱交換器50を備える点で異なる。また、貯水用水バルブ26および気化器用水バルブ27を備えている点でも異なる。これ以外の点については、変形例1に係るSOFCシステム1は、図1に示すSOFCシステム1と同様であり、動作様式も同様である。このため、同一部材についての説明は省略するものとする。
【0070】
熱交換器50は、ドレインタンク37からの液体水を貯水するための貯留器52と、熱負荷30により特定量の熱エネルギーが消費された排ガスを導入する加熱部53と、ホットモジュール供給空気により熱交換器50を冷却するための冷却部54を備える。また、貯留器52と加熱部53とは熱伝導性が高い伝熱壁51により隔たれている。
【0071】
変形例1に係るSOFCシステム1では、ドレインタンク37より水ポンプ24によって汲み上げられた液体水を、気化器用水バルブ27を通じて気化器20に、貯水用水バルブ26を通じて熱交換器50にそれぞれ供給できるように構成されている。そして、ドレインタンク37から貯水用水バルブ26を介して供給された液体水は、熱交換器50の貯留器52に貯留される。
【0072】
変形例1に係るSOFCシステム1では、図1に示すSOFCシステム1と同様に起動時では気化器20により原料を加温および加湿してホットモジュール10に供給する。しかしながら、所定の温度の排ガスが熱交換器50に供給される段階では、以下のようにして熱交換器50により原料の加温および加湿を行なう。
【0073】
すなわち、貯留器52に貯留された液体水を、伝熱壁51を介して、加熱部53に供給した排ガスの熱により加熱する。液体水が加熱され気化した水(水蒸気)に貯留器52に供給した原料を接触させ、原料の加温および加湿を行なう。加温および加湿された原料は、気化器20を素通りしてホットモジュール10に供給される。
【0074】
以上のように、再生熱交換器としてバブラータンク40の代わりに熱交換器50を備えた構成であっても原料を加温および加湿してホットモジュール10に供給することができる。
【0075】
なお、変形例1に係るSOFCシステム1における原料の露点制御の制御形態は、図1に示すSOFCシステム1の制御形態とほぼ同様となる。すなわち、制御器3は、排ガス温度センサ31から得られるT1値(排ガス温度)に基づき、熱負荷30で消費される熱エネルギーを調整する。そして、貯留器52に貯留された液体水(凝縮水を含む)を所定の温度よりもわずかに上回るようにする。そして、制御器3は、そのわずかに上回った温度を、空気量バルブ34の開閉を制御することで低下させる。つまり、制御器3は、空気量バルブ34にて分岐されたホットモジュール供給空気の量を調節することによって冷却部54に流す空気の量を調整し、熱交換器50を適切に冷却する。これにより貯留器52に貯留した液体水の温度を微調整することができる。その結果、熱交換器50において原料温度T2を所望の値に維持することができる。つまり、ホットモジュール10での発電負荷、熱負荷により消費される熱エネルギー量の変動に左右されることなく、表1に示した露点となるように、原料に対する厳密な加温および加湿の制御を可能とする。
【0076】
このように、変形例1に係るSOFCシステム1は、気化器20をホットモジュール10の前段に設けるとともに、ホットモジュール10から排出された排ガスの熱を利要して原料を加湿および加温できる熱交換器を備えた簡易な構成とすることができる。
【0077】
また、SOFCシステム1の起動時には、ホットモジュール10の前段に設けられた気化器20により原料を加温および加湿するが、起動後は、排ガスが保有する熱を利用して原料を加温および加湿する構成である。
【0078】
このため、SOFCシステム1の起動から一定の期間だけ気化器20での気化反応に原料の一部を利用するだけで、その後は原料を利用する必要ないため原料利用効率を高めることができる。
【0079】
さらに、ホットモジュール10から排出される排ガスは、発電発熱から改質器14の改質反応にのみ利用されて残った熱を保有するものである。
【0080】
したがって、例えば、当初の発電発熱を、前記改質反応と気化反応とに利用する場合よりも高温の排ガスを熱負荷30に供給することができる。このため、熱負荷30が利用可能なエクセルギーを高めることができる。
【0081】
(変形例2)
次に図4を参照して本実施の形態に係るSOFCシステム1の変形例2について説明する。図4は図1のSOFCシステム1の変形例2として示すSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。変形例2に係るSOFCシステム1は、図1に示すSOFCシステム1と比較して、再生熱交換器としてバブラータンク40の代わりに、全熱交換器60を備える点で異なる。これ以外の点については、変形例に係るSOFCシステム1は、図1に示すSOFCシステム1と同様であり、動作様式も同様である。このため、同一部材についての説明は省略するものとする。
【0082】
変形例2に係る全熱交換器60は、原料を通過させる原料通路部(第2導入部)61と排ガスを通過させる加熱部(第1導入部)62とホットモジュール供給空気を通過させる冷却部57とを備える。また、全熱交換器60では、原料通路部55と加熱部56との間は、水分を選択的に透過する選択透過膜(水分選択透過膜)63により隔たれている。
【0083】
変形例2に係るSOFCシステム1では、図1に示すSOFCシステム1と同様に起動時では気化器20により原料を加温および加湿してホットモジュール10に供給する。しかしながら、所定の温度の排ガスが熱交換器50に供給される段階では、以下のようにして全熱交換器60により原料の加温および加湿を行なう。
【0084】
すなわち、全熱交換器60では、選択透過膜58の片側、すなわち加熱部56において、凝縮水と排ガスとを直接接触させて熱交換(すなわち混合)して水蒸気を作る。そして、この水蒸気と原料通路部55を通過する原料とにおいて、選択透過膜58を介して全熱交換(物質移動を伴う熱交換)する。これにより、原料を加温および加湿することができる。このような直接接触式熱交換と全熱交換とによる熱交換形態は、変形例1に示す隔壁式熱交換器に比して熱交換の効率が高く、また機器の簡素化や小型化が容易であるという利点がある。
【0085】
さらに、上述した原料の露点制御に関して、精密な制御を行うために、加温された原料の温度を下げるため全熱交換器60を冷却する必要が生じる場合がある。このような場合、全熱交換器60では、ホットモジュール供給空気の一部を、空気量バルブ34を通じて冷却部57に流し、このホットモジュール供給空気により全熱交換器60を冷却することができる。
【0086】
ここで、上述した全熱交換器60のもっとも好適な一例として、選択透過膜に中空糸膜を利用した中空糸膜型全熱交換器60aを例に挙げてより詳細に説明する。
【0087】
中空糸膜型全熱交換器60aは、図5(a)、(b)、および図6(a)〜(c)に示すように、排ガス、凝縮水、ホットモジュール供給空気が中空糸膜モジュール80内を出入りし、原料を加温および加湿する三流体型の全熱交換器60である。そして、図7に示すように、全熱交換器60として、この中空糸膜型全熱交換器60aを変形例2に係るSOFCシステム1に設けることが好適である。
【0088】
図5は、本実施の形態に係る中空糸膜型全熱交換器60aの構成例を示す図である。図5(a)は、本実施の形態に係る中空糸膜型全熱交換器60aの一例を示す正面図であり、図5(b)は、(a)に示す中空糸膜型全熱交換器60aのA−A断面図である。
【0089】
図6は、図5(a)に示す中空糸膜型全熱交換器60aが備える中空糸膜モジュール80の構成を示す図である。図6(a)は本実施の形態に係る中空糸膜モジュール80の一例を示す正面図であり、図6(b)は、中空糸膜モジュール80のB−B断面図である。また、図6(c)は、中空糸膜モジュール80の側面図である。
【0090】
以下に、図5(a)〜(b)、ならびに図6(a)〜(c)を参照して上述した中空糸膜型全熱交換器60aの構成についてより詳細に説明する。
【0091】
中空糸型全熱交換器は、原料供給ヘッダー61、原料排出ヘッダー65、および空冷ヘッダー(冷却部)69から構成されており、その内部に中空糸膜モジュール80が備えられている。また、中空糸膜型全熱交換器60aの内部は、複数のOリング72・・・によって各部が気密にシールされて各々の流体が混合しないように組み立てられている。
【0092】
まず、中空糸膜モジュール80の構成について説明する。中空糸膜モジュール80は、図6(a)〜(c)に示すように、原料供給部81、排ガス供給部82、ドレイン排出部83、原料排出部84、排ガス排出部85、凝縮水リターン部86、空冷フィン87、中空糸束88、ポッティング部89、およびOリングみぞ90を備えてなる構成である。
【0093】
中空糸膜モジュール80は、その側面が図6(c)に示すように縦長の楕円形状をしており、図6(a)、(b)に示すように水平方向に延設された筒形状をしている。
【0094】
中空糸膜モジュール80内には中空糸束88が装填されており、中空糸膜モジュール80の端部には中空糸束88を中空糸膜モジュール80内に封止固定するポッティング部89が設けられている。中空糸束88は、例えば、水蒸気透過係数が1.0×10−4cm/cm・s・cmHg(1333Pa)以上であり、毛管凝縮作用を呈する多孔構造を有し、かつ、140℃以上の耐熱性がある選択透過膜である。この中空糸束88は、例えば、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等のイミド系素材を適用して製造できる。
【0095】
また、図6(a)、(b)に示すように中空糸膜モジュール80の外周には空冷フィン87が形成されている。この空冷フィン87は、SOFCセル13に供給するための空気(ホットモジュール供給空気)との熱交換面をヒレ状に形成した冷却フィンである。
【0096】
さらに、中空糸膜モジュール80の外周において、一方の側面近傍(原料供給ヘッダー61側)には、排ガスを内部に導くための開口である排ガス供給部82が設けられている。また、他方の側面近傍(原料排出ヘッダー65側)には、凝縮水を内部に導くための開口である凝縮水リターン部86が設けられている。
【0097】
さらに中空糸膜モジュール80の外周において排ガス供給部82と対向する位置には、中空糸膜モジュール80内の排水を排出するための開口であるドレイン排出部83が設けられている。中空糸膜モジュール80の外周において凝縮水リターン部86と対向する位置には、排ガス供給部82から入った排ガスを排出するための開口である排ガス排出部85が設けられている。
【0098】
また、中空糸膜モジュール80の一方の側面(原料供給ヘッダー61側の側面)には原料を内部に導入するための原料供給部81が設けられている。他方の側面(原料排出ヘッダー65側)には原料供給部81から内部に入ってきた原料を排出するための原料排出部84が設けられている。
【0099】
次に、原料供給ヘッダー61、原料排出ヘッダー65、および空冷ヘッダー69それぞれの構成について説明する。
【0100】
原料供給ヘッダー61は、図5(a)、(b)に示すように、原料供給ポート62、排ガス供給ポート63、およびドレインポート64を備えてなる構成である。原料供給ポート62は、中空糸膜モジュール80の原料供給部81と連通しており、供給された原料を中空糸膜モジュール80に導入する。また、排ガス供給ポート63は、中空糸膜モジュール80の排ガス供給部82と連通しており、排ガスを中空糸膜モジュール80に導入する。ドレインポート64は、中空糸膜モジュール80のドレイン排出部83と連通しており、中空糸膜モジュール80内の水をドレインタンク37に向けて排出する。
【0101】
原料排出ヘッダー65は、図5(a)、(b)に示すように、原料排出ポート66、排ガス排出ポート67、および凝縮水リターンポート68を備えてなる構成である。原料排出ポート66は、中空糸膜モジュール80の原料排出部84と連通しており、中空糸膜モジュール80内から原料を外部に排出する。排ガス排出ポート67は、中空糸膜モジュール80の排ガス排出部85と連通しており、中空糸膜モジュール80内から排出ガスを外部に排出する。凝縮水リターンポート68は、中空糸膜モジュール80の凝縮水リターン部86と連通しており、凝縮熱交換器35からの凝縮水を中空糸膜モジュール80に導入する。
【0102】
また、空冷ヘッダー69は、空気供給ポート70および空気排出ポート71を備えてなる構成である。空気供給ポート70は、ホットモジュール供給空気を中空糸型全熱交換器の内部に導入するためのものである。この空気供給ポート70を介して導入されたホットモジュール供給空気は中空糸膜モジュール80の外周に設けられた空冷フィン87と接触し、中空糸膜モジュール80を冷却する。そして、空気排出ポート71から外部に排出される。
【0103】
より具体的には、上記した構成を有する中空糸型全熱交換器では、以下にように排ガス、凝縮水、およびホットモジュール供給空気を中空糸膜モジュール80内に出入りさせ、原料を加温および加湿する。
【0104】
すなわち、熱負荷30により特定量の熱エネルギーが消費された排ガスは、中空糸型全熱交換器に供給される。つまり。排ガスは、原料供給ヘッダー61の排ガス供給ポート63に供給され、中空糸膜モジュール80の排ガス供給部82より中空糸膜モジュール80内に入る。そして、中空糸束88の中空糸外周側を通過して排ガス排出部85から排出される。そして、この排ガスは原料排出ヘッダー65の排ガス排出ポート67を介して外部に排出される。外部に排出された排ガスは、凝縮熱交換器35に供給される。凝縮熱交換器35ではホットモジュール供給空気と排ガスとで熱交換して排ガスを冷却し、凝縮により排ガスに含まれる水分から液体水を生成する。そして、凝縮熱交換器35の下部から、この凝縮により生成された凝縮水が回収される。
【0105】
また、原料排出ヘッダー65の凝縮水リターンポート68には、凝縮熱交換器35により生成された凝縮水が供給される。凝縮水リターンポート68に供給された凝縮水は、凝縮水リターン部86より中空糸膜モジュール80内に入り、中空糸束88の中空糸外側(外周)を通過してドレイン排出部83から排出される。そして、この凝縮水は原料供給ヘッダー61のドレインポート64を介してドレインタンク37に向かって排出される。なお、このとき中空糸外側(外周)では凝縮水と排ガスとの間で直接熱交換が起こり、水蒸気が生成される。
【0106】
一方、原料供給ヘッダー61の原料供給ポート62に供給された原料は、中空糸膜モジュール80の原料供給部81を介して中空糸膜モジュール80内に入る。そして、原料が中空糸束88の内部を通過する間に、中空糸束88の周囲を流れる水蒸気が中空糸束88を透過してこの原料と混合される。すなわち、原料は中空糸束88を透過した水蒸気により加温および加湿されて中空糸膜モジュール80の原料排出部84から排出される。そして、排出された原料は、原料排出ヘッダー65の原料排出ポート66を介して気化器20に向かって排出される。
【0107】
また、加温および加湿された原料の温度を低下させる必要がある場合、中空糸型全熱交換器では、中空糸膜モジュール80を空気で冷却して原料の温度制御を行うことができるように構成されている。すなわち、SOFCセル13のカソード11にはホットモジュール供給空気が供給されるが、このホットモジュール供給空気を、カソード11に供給する前に中空糸型全熱交換器の冷却に利用する。具体的には、ホットモジュール供給空気は、空冷ヘッダー69の空気供給ポート70に供給され、中空糸膜モジュール80の外周に設けられている空冷フィン87と接触する。これにより、空冷フィン87を通じて中空糸膜モジュール80を冷却させる。そして、空冷フィン87と接触した空気は空気排出ポート71から排出され、ホットモジュール10に供給される。
【0108】
凝縮熱交換器35で生成した凝縮水は、上記したように中空糸型全熱交換器において原料の加温および加湿に利用され、余剰の凝縮水がドレインポート64よりドレインタンク37に戻される。
【0109】
また、ドレインポート64から排出する凝縮水の水量を調整することにより中空糸膜モジュール80内の水位を調整することができる。ここで、加熱部56において直接接触式熱交換を行なう排ガスと凝縮水との間での熱交換面積を最大化するためには、排ガスの排出の妨げにならない限りにおいて凝縮水は極力高い水位を保つ方が望ましい。従って、ドレイン回収量はここでは図示されない水位計系等の計測結果に基づき、不図示のバルブなどの制御機構を用いて、好ましい水位となるように調節される。
【0110】
なお、変形例2に係るSOFCシステム1における原料の露点制御の制御形態は、図1に示すSOFCシステム1の制御形態とほぼ同様となる。すなわち、制御器3は、排ガス温度センサ31から得られるT1値(排ガス温度)に基づき、熱負荷30で消費される熱エネルギーを調整する。そして、中空糸型全熱交換器内の凝縮水を所定の温度よりもわずかに上回るようにする。そして、制御器3は、そのわずかに上回った温度を、空気量バルブ34の開閉を制御することで低下させる。つまり、制御器3は、空気量バルブ34にて分岐されたホットモジュール供給空気の量を調節することによって中空糸型全熱交換器内に流す空気の量を調整して適切に冷却する。これにより中空糸型全熱交換器内の凝縮水の温度を微調整することができる。その結果、中空糸型全熱交換器における原料の温度(原料温度T2)を所望の値に維持することができる。つまり、ホットモジュール10での発電負荷、熱負荷30により消費される熱エネルギー量の変動に左右されることなく、表1に示した露点となるように、原料に対する厳密な加温および加湿の制御を可能とする。
【0111】
このように、変形例2に係るSOFCシステム1は、気化器20をホットモジュール10の前段に設けるとともに、ホットモジュール10から排出された排ガスの熱を利要して原料を加湿および加温できる全熱交換器(中空糸膜型全熱交換機)60を備えた簡易な構成とすることができる。
【0112】
また、SOFCシステム1の起動時には、ホットモジュール10の前段に設けられた気化器20により原料を加温および加湿するが、起動後は、排ガスが保有する熱を利用して原料を加温および加湿する構成である。
【0113】
このため、SOFCシステム1の起動から一定の期間だけ気化器20での気化反応に原料の一部を利用するだけで、その後は原料を利用する必要ないため原料利用効率を高めることができる。
【0114】
なお、上記では全熱交換器60のもっとも好適な一例として、選択透過膜58に中空糸膜を利用した中空糸膜型全熱交換器60aを例に挙げて説明した。しかしながら全熱交換器60は、この中空糸膜型全熱交換器60aに限定されるものではない。例えば、中空糸膜型全熱交換器60aではなく、選択透過膜58で隔たれた原料ガスが通過する通路である原料通路部55と、排ガスが通過する通路である加熱部56とが交互に積層された構造を有する積層型全熱交換器であってもよい。この積層型全熱交換器が備える選択透過膜58は、例えば、伝熱性と透湿性のある多孔質材からなるプレートなどにより形成される。
【0115】
(変形例3)
次に図7を参照して本実施の形態に係るSOFCシステム1の変形例3について説明する。図7は図1のSOFCシステム1の変形例3として示すSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。変形例3に係るSOFCシステム1は、図1に示すSOFCシステム1と比較して、再生熱交換器としてバブラータンク40の代わりに、全熱交換器60を備える点で異なる。また、凝縮熱交換器35の後段にさらに放熱凝縮器36を備える点でも異なる。つまり、変形例3に係るSOFCシステム1は、必要に応じて凝縮水の回収量を増やすために、図4の変形例2に係るSOFCシステム1の構成において、さらに放熱凝縮器36を備える。また、図7に示す変形例3に係るSOFCシステム1では、全熱交換器60として中空糸型全熱交換器を備えている。
【0116】
これ以外の点については、変形例3に係るSOFCシステム1は、図1に示すSOFCシステム1、図4に示す変形例2に係るSOFCシステム1と同様であり、動作様式も同様である。このため、同一部材についての説明は省略するものとする。
【0117】
変形例3に係るSOFCシステム1では、変形例2と同様に凝縮熱交換器35がホットモジュール供給空気と排ガスとの熱交換により排ガスを冷却して凝縮させ、水分を含む排ガスから液体水(凝縮水)を生成する。放熱凝縮器36がさらに凝縮熱交換器35から排出された排ガスを放冷凝縮し、排ガスから凝縮水を生成させる。このため、必要に応じて凝縮水の回収量を増やすことができる。
【0118】
なお、凝縮熱交換器35および放熱凝縮器36で生成した凝縮水は、上記したように中空糸型全熱交換器において原料の加温および加湿に利用され、余剰の凝縮水がドレインポート64よりドレインタンク37に戻される。
【0119】
また、図7に示す変形例3のSOFCシステム1における原料の露点制御の制御形態は、図3に示すSOFCシステム1の制御形態とほぼ同様であり、図4に示す変形例2と同じである。このため、ここでは、この露点制御の制御形態についての説明は省略する。
【0120】
(効果)
以上のように本実施の形態およびその変形例1〜3に係るSOFCシステム1は、気化器20をホットモジュール10の前段に設けるとともに、ホットモジュール10からの排ガスの熱を利要して原料を加湿および加温できる熱交換器を備えた簡易な構成とすることができる。
【0121】
また、SOFCシステム1の起動から一定の期間だけ気化器20での気化反応に原料の一部を利用するだけで、その後は原料を利用する必要ないため原料利用効率を高めることができる構成である。
【0122】
さらに、ホットモジュール10から排出される排ガスは、発電発熱から改質器14の改質反応にのみ利用されて残った熱を保有するものである。
【0123】
したがって、例えば、当初の発電発熱を、前記改質反応と気化反応とに利用する場合よりも高温の排ガスを熱負荷30に供給することができる。このため、熱負荷30が利用可能なエクセルギーを高めることができる。特に、SOFCの動作温度は約700℃から1000℃と高温であり、この高い温度を大きく低下させることなく排ガスを熱負荷30に供給できるため、この熱負荷として適用可能な用途の範囲が広がる。
【0124】
このようなSOFCシステム1が有する利点は、SOFCシステム1をコージェネ用動力、またはコンバインドサイクル用動力とみたとき、SOFCシステム1の商品化および市場取引の実現性を向上させる上で非常に有用である。
【0125】
なお、上記した本実施の形態およびその変形例1〜3に係るSOFCシステム1は、気化器20をホットモジュール10の前段に設けた構成であった。しかしながら、この気化器20を、例えば、図8に示すようにホットモジュール10内に設けた構成としてもよい。
【0126】
図8は本発明の他の実施形態に係るSOFCシステム1の概略構成の一例を示す図である。
【0127】
このように構成された場合、気化器20で行う気化反応は、ホットモジュール10において、改質器14による改質反応に利用された後の発電発熱によって賄われることとなる。つまり、この構成では、再生熱交換器(図8の例ではバブラータンク40)に蓄えられている液体水(凝縮水)が排ガスにより加熱され所定の温度となるまでは、気化器20により水蒸気を生成して原料の加温および加湿が行なわれる。
【0128】
このため、SOFCシステム1の起動からある一定の期間は、ホットモジュール10から熱負荷30に排出される排ガスの熱(発電排熱)は低い温度となり、熱負荷30で消費が所望される熱エネルギー(特定量の熱エネルギー)を十分に賄うことができない。しかしながら、再生熱交換器(バブラータンク40)内の液体水(凝縮水)の温度が排ガスにより加熱され所定の温度に達すると、原料の加温および加湿はこの再生熱交換器にて行なうことができるようになる。
【0129】
このため、ホットモジュール10からは、改質器14による改質反応にのみ発電発熱が利用されることとなる。したがって、ホットモジュール10から排出された排ガスの熱(発電排熱)は、高い温度を維持したまま熱負荷30に供給されることとなり、熱負荷にてこの排ガスの熱エネルギーを利用することができるようになる。
【0130】
このように構成した場合、本実施の形態およびその変形例1〜3に係るSOFCシステム1と比較して、気化器20を加熱する気化器バーナー21が不要となるため、SOFCシステムの構成をより簡易なものとするとともに、製造コストを低減させることができるという利点がある。しかしながら、再生熱交換器の液体水(凝縮水)の温度が所定の温度に達するまでは、ホットモジュール10から排出される排ガスが保有する熱は低いものとなり、熱負荷30を十分に稼動させることができない。このため、SOFCシステム1をコージェネ用動力、またはコンバインドサイクル用動力とみたとき、本実施の形態およびその変形例1〜3に係るSOFCシステム1の構成の方がより早い段階で熱負荷30を稼動させることができるため有利である。
【0131】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の燃料電池システムは、SOFCセルを有したホットモジュール10からの発電排熱を有効に利用する燃料電池システムとして有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 SOFCシステム
3 制御器
10 ホットモジュール
11 カソード
12 アノード
13 SOFCセル
14 改質器
15 燃焼部
20 気化器
21 気化器バーナー
22 気化器燃料バルブ
23 原料温度センサ
24 水ポンプ
25 凝縮水バルブ
26 貯水用水バルブ
27 気化器用水バルブ
30 熱負荷
31 排ガス温度センサ
34 空気量バルブ
35 凝縮熱交換器
36 放熱凝縮器
37 ドレインタンク
38a 接続部
40 バブラータンク
41 冷却部
50 熱交換器
51 伝熱壁
52 貯留器
53 加熱部
54 冷却部
55 原料通路部
56 加熱部
57 冷却部
58 選択透過膜
60 全熱交換器
60a 中空糸膜型全熱交換器
61 原料供給ヘッダー
62 原料供給ポート
63 排ガス供給ポート
64 ドレインポート
65 原料排出ヘッダー
66 原料排出ポート
67 排ガス排出ポート
68 凝縮水リターンポート
69 空冷ヘッダー
70 空気供給ポート
71 空気排出ポート
80 中空糸膜モジュール
81 原料供給部
82 排ガス供給部
83 ドレイン排出部
84 原料排出部
85 排ガス排出部
86 凝縮水リターン部
87 空冷フィン
88 中空糸束
100 SOFCシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された燃料と空気とを利用して発電反応により発電する固体酸化物型燃料電池セルと、
前記固体酸化物型燃料電池セルで生じる発電反応熱及び未利用の燃料の燃焼熱を利用して改質反応により原料ガスから改質ガスを生成し、これを前記燃料として該固体酸化物型燃料電池セルに供給する改質器と、
前記固体酸化物型燃料電池セルから排出され、前記改質器における改質反応に利用されて残った熱を保有する排ガスから、特定量の熱エネルギーを消費する熱負荷と接続するための熱負荷接続部と、
前記熱負荷接続部の後段に設けられ、前記熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの熱を利用して、前記改質器に供給する前記原料ガスを加温および加湿する熱交換器と、を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記熱交換器の後段に設けられ、原料ガスを加温および加湿するために該熱交換器により利用された排ガスからその水分を凝縮させて水を分離し、該熱交換器に供給する凝縮器を備え、
前記熱交換器は、前記凝縮器から供給された水によって前記原料ガスを加温および加湿する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記固体酸化物型燃料電池セルから排出され、前記改質器における改質反応に利用されて残った熱を保有する排ガスから特定量の熱エネルギーを消費する熱負荷と、
前記熱交換器から前記改質器に供給される原料ガスの温度または露点を計測する第一計測器と、
前記第一計測器の計測結果に基づき、前記温度または露点が所定の値の範囲となるように前記熱負荷により消費される熱エネルギーの消費量を制御する制御器と、を備える、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
固体酸化物型燃料電池セルの起動時において、原料ガスに添加する水蒸気を生成するための気化器を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記固体酸化物型燃料電池セルと、前記改質器とが、ホットモジュールとして一体として構成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記固体酸化物型燃料電池セルと、前記改質器と、前記気化器とが、ホットモジュールとして一体として構成されている請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記凝縮器は、前記固体酸化物型燃料電池セルに供給するための空気を利用して前記排ガスを冷却し、排ガスからその水分を凝縮させて水を分離する請求項5または6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記熱交換器に供給される、前記熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの温度を計測する第二計測器と、
前記固体酸化物型燃料電池セルに供給するための空気を利用して前記熱交換器で加温および加湿された排ガスを冷却する冷却部と、をさらに備え、
前記制御器は、前記第二計測器による計測結果が、前記熱交換器において原料ガスの加温および加湿を行なうために必要な熱エネルギーを得られる範囲の温度となるように、前記熱負荷で消費される熱エネルギーの量を制御するとともに、前記第一計測器による計測結果に基づき、前記露点または温度が所定の値の範囲となるように前記冷却部で利用する空気の量を制御する請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記熱交換器は、
水を貯留するための貯留器を備え、
前記貯留器に貯留した水を、前記熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスから得た熱エネルギーにより加熱して気化させ、該気化した水に原料ガスを接触させることで当該原料ガスを加温および加湿する請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記熱交換器は、
水分を含む、前記熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスを導入する第1導入部と、
原料ガスを導入する第2導入部と、
前記第1導入部と前記第2導入部とを隔てるとともに、該第1導入部から該第2導入部に前記排ガスに含まれる水分を透過させる水分選択透過膜と、を備え
前記水分選択透過膜を透過した水分により前記第2導入部に導入された原料ガスを加温および加湿する請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記熱交換器は、前記水分選択透過膜として中空糸膜を用いた中空糸型全熱交換器である請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記中空糸型全熱交換器は、
前記冷却部を有しており、
前記冷却部が、前記固体酸化物型燃料電池セルに供給するための空気との熱交換面をヒレ状に形成した冷却フィンを備える請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記熱交換器は、前記第1導入部と前記第2導入部とが交互に積層された構造を有する積層型全熱交換器である請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記熱負荷が膨張サイクルである、請求項1から13のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項15】
供給された燃料と空気とを利用して発電反応により発電する固体酸化物型燃料電池セルと、
前記固体酸化物型燃料電池セルで生じる発電反応熱及び未利用の燃料の燃焼熱を利用して改質反応により原料ガスから改質ガスを生成し、これを前記燃料として該固体酸化物型燃料電池セルに供給する改質器と、
前記固体酸化物型燃料電池セルから排出され、前記改質器における改質反応に利用されて残った熱を保有する排ガスから、特定量の熱エネルギーを消費する熱負荷と、
前記熱負荷の後段に設けられ、該熱負荷により特定量の熱エネルギーが消費された後の排ガスの熱を利用して、前記改質器に供給する前記原料ガスを加温および加湿する熱交換器と、を備える燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−221562(P2012−221562A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82562(P2011−82562)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】