説明

燃料電池搭載車両

【課題】燃料電池搭載車両における熱効率の向上を図る。
【解決手段】反応ガスの供給を受けて電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタック16と、該燃料電池スタック16の発電電力を変換する電力変換器17とがそれぞれ別々のケース21,22に覆われて車体11のフロア12の下に搭載された燃料電池搭載車両10であって、車室30内の空気を車室30から電力変換器17を覆うケース22へと導入する導入路23と、電力変換器17を覆うケース22に導入された空気を車室30へと導出する導出路24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを搭載した燃料電池搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー効率を維持しながら車室暖房システムに効率のよい暖房を行わせる燃料電池搭載車両として、例えば走行用モータに電力を供給する第1の燃料電池と、第1の燃料電池よりも小さい電力を出力し、車室暖房装置にこの出力電力を供給する第2の燃料電池と、第2の燃料電池内の熱を回収するための冷却液を循環させる冷却液循環経路とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成を備えた燃料電池搭載車両によれば、車室暖房システムに依存することなく走行用モータの要求電力に応じて、第1の燃料電池の効率運転を独自に行うことができ、かつ、第2の燃料電池の排熱を車室暖房システムで利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池搭載車両には、例えば車室内空間の確保等を目的として、燃料電池スタック、DC−DCコンバータ等の電力変換器を車両のフロアパネルの下方に取り付けたものがある。このような構成の車両においても、車両の床下に搭載されている燃料電池の廃熱だけでなく、電力変換器の廃熱をも車室内の暖房に利用することが可能になれば、熱効率の更なる向上を図ることができる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、燃料電池搭載車両における熱効率の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池搭載車両は、反応ガスの供給を受けて電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、該燃料電池スタックの発電電力を変換する電力変換器とがそれぞれ別々のケースに覆われて車体のフロアの下に搭載された燃料電池搭載車両であって、車室内の空気を当該車室から前記電力変換器を覆うケースへと導入する導入路と、前記電力変換器を覆うケースに導入された空気を前記車室へと導出する導出路と、を備えるものである。
このような構成では、車室内の空気が導入路を介して電力変換器を覆うケース(以下、電力変換器ケース)に導入されると、この電力変換器ケースに導入された空気が熱源である電力変換器と熱交換して暖められ、この暖められた空気が導出路を介して車室内に温風となって供給される。つまり、車室内の空気が車室、導入路、電力変換器ケース、導出路、及び車室をこの順に循環することにより、電力変換器の廃熱が車室内の暖房に有効利用される。
【0008】
前記導出路はその途中で分岐し、複数個所に設けられた前記車室への吹き出し口のそれぞれに連通していてもよい。
このような構成によれば、電力変換器との熱交換によって暖められた空気を複数の吹き出し口から同時に車室内に温風として供給することが可能になり、暖房効率の向上ひいては熱効率の向上を図ることができる。
【0009】
前記導出路には、前記吹き出し口から前記車室内への送風量を個別に調整することが可能な切り替えドアが設けられていてもよい。
このような構成によれば、電力交換器との熱交換によって暖められた空気をどの吹き出し口から温風として車室内に送風させるかという選択と、選択された吹き出し口からどの程度の風量の温風を車室内に送風させるかという選択とが、切り替えドアの開度調整により可能になる。切り替えドアは、全閉から全開まで段階的あるいは無段階に調整される。
【0010】
前記電力変換器を覆うケースと前記導出路との接続口にファンが設けられている
このような構成によれば、ファンを駆動させることにより、強制的に車室内の空気を電力変換器ケース内に導入して暖め、温風として車室内に供給することが可能になる。また、車室内に戻す温風量の調整をファンの回転数制御によって実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力変換器の廃熱を車室内の暖房に利用することにより、燃料電池搭載車両における熱効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る燃料電池搭載車両の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る燃料電池搭載車両の一実施形態を説明する。
図1に示すように、燃料電池搭載車両10は、車体11に設けられたシート13の下部のフロア12の下に収容部14を有しており、この収容部14内に、燃料電池スタック16とコンバータ(電力変換器)17とを収容している。
【0014】
燃料電池スタック16は、燃料ガスである水素ガス(反応ガス)と酸化ガスである空気(反応ガス)との電気化学反応により電力を発生するもので、例えば高分子電解質形燃料電池であり、多数の単セルを積層したスタック構造となっている。
単セルは、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極および燃料極を両側から挟み込むように配置された一対のセパレータを有する構造となっている。
そして、一方のセパレータの水素ガス流路に水素ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス流路に空気が供給され、これらの反応ガスが電気化学反応することで電力が発生する。
【0015】
コンバータ17は、燃料電池スタック16の発電電力を変換する装置であり、例えば、燃料電池スタック16からの出力電圧を所定電圧まで昇圧して後述の駆動モータ25に電力を供給する。
【0016】
これら燃料電池スタック16とコンバータ17とは、電力ケーブル19によって接続されている。そして、電力ケーブル19の一端側と後述のスタックケース21との接続部、および、電力ケーブル19の他端側と後述のコンバータケース22との接続部は、所定のシール構造にてシールされている。
【0017】
燃料電池スタック16は、スタックケース21によって覆われており、また、コンバータ17は、コンバータケース22によって覆われている。これら燃料電池スタック16を収納するスタックケース21及びコンバータ17を収納するコンバータケース22は、例えば樹脂や金属等からなる複数の分割体をボルト等により相互に結合した構成となっており、分割体同士の接合箇所はOリング等によってシールされている。
【0018】
コンバータケース22には、その車両搭載状態での上部に、例えば樹脂や金属からなるエア導入ダクト(導入路)23の一端が接続されている。エア導入ダクト23の他端は、フロア12の例えばシート13よりも車両進行方向前側に形成された吸い込み口5に接続されている。つまり、車室30内とコンバータケース22内とは、エア導入ダクト23を介して相互に連通している。
【0019】
エア導入ダクト23は、車室30からコンバータケース22への異物混入を抑制するために、ダクト自体が重力(上下)方向に蛇行するように形成されていたり、ダクト内にラビリンス構造を備えた構成とされている。
【0020】
コンバータケース22には更に、例えば樹脂や金属からなるエア導出ダクト(導出路)24の一端が接続されている。このエア導出ダクト24の他端側は複数に分岐しており、分岐したそれぞれのダクトは、センターレジスタ、サイドレジスタ及びリヤレジスタ(以下、これらをレジスタ6と総称する場合がある。)、フロントデフロスタ及びサイドデフロスタ(以下、これらをデフロスタ7と総称する場合がある。)、並びに足元吹き出し口等の各吹き出し口に接続されている。
【0021】
エア導出ダクト24の各分岐部には、切り替えドア9が設けられている。この切り替えドア9の開度を、例えばエアコンユニットを制御する制御部からの制御信号によって段階的あるいは無段階に開閉制御することにより、センターレジスタ、サイドレジスタ及びリヤレジスタ、フロントデフロスタ及びサイドデフロスタ、並びに足元吹き出し口等の吹き出し口の中からユーザーが任意に選択した吹き出し口から任意量の温風を送風させることが可能となる。
【0022】
コンバータケース22とエア導入ダクト23との接続口には、ファン8が設けられている。ファン8が例えば補機バッテリ等から電力の供給を受けて駆動すると、車室30内の空気がコンバータケース22内に強制的に導入され、導入された空気は熱源であるコンバータ17と熱交換として暖められ、これが温風となってエア導出ダクト24を介して所定の吹き出し口から車室30内に送風される。
【0023】
さらに、車体11の前方に設けられたコンパートメント内には、駆動モータ25及びインバータユニット28が搭載されている。インバータユニット28は、インバータケース26内にインバータ27及び該インバータ27等を制御する電子制御ユニット(ECU)が収納されてなる。インバータ27とコンバータ17とは送電ケーブル31によって接続され、駆動モータ25とインバータ27とは給電ケーブル32によって接続されている。
【0024】
送電ケーブル31の一端側とコンバータケース22との接続部、送電ケーブル31の他端側とインバータケース26との接続部、および、給電ケーブル32の一端側とインバータケース26との接続部は、所定のシール構造にてシールされている。
【0025】
駆動モータ25は、例えば三相交流モータであり、燃料電池搭載車両10の主動力源を構成する。つまり、この駆動モータ25の駆動力によって車体11の車輪33が回転駆動され、燃料電池搭載車両10が走行する。インバータは、直流電流を三相交流に変換して駆動モータ25に供給し、駆動モータ25を駆動させる。
【0026】
上記構成からなる燃料電池搭載車両10では、ファン8を駆動させると、車室30内の空気が、フロア12に形成された吸い込み口5からエア導入ダクト23を介してコンバータケース22に導入される。すると、このコンバータケース22に導入された空気が熱源であるコンバータ17と熱交換して暖められ、この暖められた空気がエア導出ダクト24を介して所定の吹き出し口(レジスタ6、デフロスタ7、足元吹き出し口)から車室30内に温風となって供給される。
【0027】
つまり、車室30内の空気が車室30、エア導入ダクト23、コンバータケース22、エア導出ダクト24、及び車室30をこの順に循環することにより、コンバータ17の廃熱が車室30内の暖房に有効利用される。このように、本実施形態によれば、コンバータ17の廃熱を車室30内の暖房に利用することにより、燃料電池搭載車両10における熱効率の向上を図ることができる。
【0028】
また、コンバータ17との熱交換によって暖められた空気を複数の吹き出し口から同時に車室30内に温風として供給することが可能になるので、暖房効率の向上ひいては熱効率の向上を図ることができる。
【0029】
エア導出ダクト24の分岐部には、各吹き出し口から車室30内への送風量を個別に調整することが可能な切り替えドア9が設けられているので、コンバータ17との熱交換によって暖められた空気をどの吹き出し口から車室30内に送風させるかという選択と、選択された吹き出し口からどの程度の風量の温風を車室30内に送風させるかという選択とが、切り替えドア9の開度調整により可能になり、使い勝手も向上する。
【0030】
また、コンバータケース22とエア導出ダクト24との接続口にファン8が設けられているので、ファン8の回転数を制御することにより、車室30内の空気を強制的かつ任意流量の車室内空気をコンバータケース22内に導入して暖めることが可能になり、ユーザーの要望に応じた風量の温風を車室30内に供給することが可能になる。
【0031】
なお、上記実施形態では、車両が通常備えるエアコンユニットとは別個にエア導出ダクト24、切り替えドア9、レジスタ6、デフロスタ7を設けた場合を例にとって説明したが、例えばエア導出ダクト24を車両が通常備えるエアコンユニットに接続し、その接続部よりも下流側部分を当該エアコンユニットと共用化してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
6…レジスタ(吹き出し口)、7…デフロスタ(吹き出し口)、8…ファン、9…切り替えドア、10…燃料電池搭載車両、12…フロア、16…燃料電池スタック、17…コンバータ(電力変換器)、21…スタックケース(ケース)、22…コンバータケース(ケース)、23…エア導入ダクト(導入路)、24…エア導出ダクト(導出路)、30…車室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスの供給を受けて電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、該燃料電池スタックの発電電力を変換する電力変換器とがそれぞれ別々のケースに覆われて車体のフロアの下に搭載された燃料電池搭載車両であって、
車室内の空気を当該車室から前記電力変換器を覆うケースへと導入する導入路と、前記 電力変換器を覆うケースに導入された空気を前記車室へと導出する導出路と、を備える 燃料電池搭載車両。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池搭載車両であって、
前記導出路はその途中で分岐し、複数個所に設けられた前記車室への吹き出し口のそれぞれに連通している燃料電池搭載車両。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池搭載車両であって、
前記導出路には、前記吹き出し口から前記車室内への送風量を個別に調整することが可能な切り替えドアが設けられている燃料電池搭載車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃料電池搭載車両であって、
前記電力変換器を覆うケースと前記導出路との接続口にファンが設けられている燃料電池搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−254196(P2010−254196A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108371(P2009−108371)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】