説明

燃料電池用改質装置

【課題】脱硫部を有する燃料電池用改質装置の構成を簡易にすることができる。
【解決手段】原燃料を水素リッチな改質ガスに改質する燃料電池用改質装置において、改質部12は、原燃料から改質ガスを生成する。改質反応筒18は、改質部12とシフト変成部と選択酸化部16とをこの順番に直線状に収納するとともに、更に脱硫部160を収納する。燃焼手段は、原燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する。水蒸気供給路42は、改質部12に水蒸気を供給するために燃焼排ガスによる加熱により水が気化される。原燃料供給路40は、改質反応筒18の内部を通過するとともに脱硫部160が途中に接続されており、改質部12に昇温された原燃料を供給するために燃焼排ガスによる加熱により原燃料が昇温される。脱硫部160は、水素との反応で原燃料から硫黄を除去する水添脱硫触媒を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料を、燃料電池システムにおいて使用される改質ガスに改質する燃料電池用改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、水素が有する化学エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を発生する。実用的には、固体高分子形燃料電池の燃料となる水素は、比較的容易かつ安価に入手可能な天然ガス、ナフサ等の炭化水素系ガスまたはメタノール等のアルコール類の原燃料ガスと水蒸気とを混合して、改質器で改質することで得ている。改質により得られた水素ガスは燃料電池の燃料極に供給され、発電に用いられる。
【0003】
一般に、改質器は、水蒸気による原燃料ガスの改質反応に必要な熱を供給するためのバーナを備える。バーナで燃料を燃焼させて生じた燃焼ガスを、燃焼筒から改質反応部の近傍に設けられた経路に導くことにより、燃焼ガスの熱エネルギーが改質反応に利用される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、原燃料ガスとして用いられる都市ガスやプロパンガスは、ガス漏れを感知しやすいように付臭剤として有機硫黄成分が添加されている。有機硫黄成分を含んだ都市ガスやプロパンガス等がそのまま改質器に供給されると、改質器の触媒に有機硫黄成分が付着し、硫黄被毒により改質器の改質性能が低下することになる。そのため、脱硫器を備えた改質装置が考案されている(例えば、特許文献3、4参照)
【特許文献1】特開2007−15911号公報
【特許文献2】特表2003−78311号公報
【特許文献3】特開2003−12302号公報
【特許文献4】特開2002−356308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2記載の改質器は、バーナで燃料を燃焼して発生した燃焼排ガスを改質部の内側に流すことで、燃焼排ガスの熱エネルギーを高温の水蒸気の生成や改質部の昇温に用いているため、改質部を燃焼排ガス流路の外側に配置しなければならない。また、改質部により生成された改質ガスに含まれている一酸化炭素を低減するための一酸化炭素変成部や一酸化炭素除去部が、改質部を備えている流路の更に外側に配置されているため、流路が複雑となっている。その結果、改質部の径が大径化してしまうとともに、改質装置全体の複雑化、大型化を招く一因となっている。
【0006】
また、特許文献3、4記載の改質器は、硫黄などの不純物を含む原燃料を触媒の存在下で水素と反応させて硫黄成分を除去する、いわゆる水素化脱硫方式(水添脱硫方式ともいう)の脱硫装置である。そのため、何らかの方法によって脱硫装置に水素を供給する必要がある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脱硫部を有する簡易な構成の燃料電池用改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の燃料電池用改質装置は、原燃料を水素リッチな改質ガスに改質する燃料電池用改質装置であって、原燃料から改質ガスを生成する改質部と、改質ガスに含まれる一酸化炭素をシフト反応により低減するシフト変成部と、シフト変成部を通過した改質ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化して低減する選択酸化部と、改質部とシフト変成部と選択酸化部とをこの順番に直線状に収納するとともに、更に脱硫部を収納する改質反応筒と、原燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する燃焼手段と、改質反応筒の外周に配置され、該改質反応筒より径が大きい外筒と、改質反応筒と外筒との間に形成され、改質反応筒を加熱するために燃焼排ガスが通過する加熱流路と、改質部に水蒸気を供給するために燃焼排ガスによる加熱により水が気化される水蒸気供給路と、改質反応筒の内部を通過するとともに脱硫部が途中に接続されており、改質部に昇温された原燃料を供給するために燃焼排ガスによる加熱により原燃料が昇温される原燃料供給路と、原燃料供給路の途中に接続されている脱硫部より上流側に接続され、改質部で生成された改質ガスの一部を脱硫部に戻す改質ガス戻り流路と、を備える。脱硫部は、水素との反応で原燃料から硫黄を除去する水添脱硫触媒を有する。
【0009】
この態様によると、脱硫に必要な水素を改質ガスから得ることができるので、簡易な構成で脱硫部を有する燃料電池用改質装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱硫部を有する燃料電池用改質装置の構成を簡易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の都合上、図の上下左右と対応させて各部材間の位置関係を説明するが、あくまでも相対的な位置関係でありこれに限定されるものではない。例えば、上下を反転した態様にすることも可能である。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る燃料電池用改質装置10の構成を示す断面図である。燃料電池用改質装置10は、原燃料であるメタンやプロパン、ブタン等を水蒸気改質により水素リッチな改質ガスを生成する。
【0013】
燃料電池用改質装置10は、原燃料から改質ガスを生成する改質部12と、改質ガスに含まれる一酸化炭素をシフト反応により低減するシフト変成部14と、シフト変成部14を通過した改質ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化反応により選択酸化し低減する選択酸化部16と、改質部12とシフト変成部14と選択酸化部16とをこの順番に直線状に収納するとともに、更に脱硫部160を収納する改質反応筒18と、原燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する燃焼手段としてのバーナ20と、改質反応筒18の外周に同軸に配置され、改質反応筒18より径が大きい外筒22と、を備える。外筒22の周囲は、複数の配管が外部と連通している箇所を除いて断熱材24で覆われている。
【0014】
バーナ20は、空気取入口26から取り入れた空気と燃料取入口28から取り入れた原燃料オフガスとを混合して燃焼させる。バーナ20で原燃料ガスが燃焼することによって、1200〜1300℃の高温の燃焼排ガスが発生する。バーナ20は、改質反応筒18の改質部12側の端部に形成された燃焼室30に配置されているとともに、外筒22の下部に固定されている。これにより、バーナ20で生成された燃焼排ガスの熱をすぐに改質部12における改質反応に用いることができるので、熱効率を向上することができる。
【0015】
改質反応筒18と外筒22との間には、改質反応筒18を加熱するために前述の燃焼排ガスが通過する加熱流路32が形成されている。
【0016】
改質部12は、改質反応筒18の底部に設けられている改質反応筒18より外径の小さいケース34と、ケース34の下方に収納された、ニッケルやルテニウム等の金属粒子をアルミナに担持した改質触媒を含む触媒層36とを有する。ケース34の上面には、原燃料と水蒸気とが混合された状態で流入する開口部38が形成されている。また、ケース34は、触媒層36の側面から改質ガスが通過できるように、側面に通気口が設けられている。
【0017】
原燃料は、改質反応筒18、外筒22、断熱材24とを貫通する原燃料供給路40を経由して燃料電池用改質装置10の外部から改質部12の触媒層36に供給される。この際、原燃料は、加熱流路32を流れる燃料排ガスや改質反応筒18の内部の改質ガスにより昇温させられるとともに、改質ガスの温度を低下させる。
【0018】
また、原燃料供給路40は、改質反応筒18の内部を通過するとともに脱硫部160が途中に接続されている。脱硫部160は、硫黄などの不純物を含む原燃料を触媒の存在下で水素と反応させて硫黄成分を除去する、いわゆる水素化脱硫方式(水添脱硫方式ともいう)の装置である。原燃料供給路40には、燃料電池で使用されなかった水素リッチなガスや改質ガスの一部を脱硫部160に戻すための不図示の改質ガス戻り流路(後述)が脱硫部160の上流側に接続されている。
【0019】
脱硫部160は、供給される原燃料ガスと、通常その原燃料ガスの10vol%の量のHガスを含むリサイクルガスとの合流ガスを脱硫する。水添脱硫触媒としてはCo−Mo系やNi−Mo系が用いられ、吸着剤としては酸化亜鉛系触媒が用いられる。この水添・吸着脱硫反応(RCHSH+H→RCH+HS ZnO+HS→ZnS+HO)によって、原燃料ガスは、含まれる硫黄成分の濃度が20〜50ppb程度まで脱硫される。
【0020】
また、有機硫黄のうちRSHやCOSは、条件(例えば、250〜400℃)によっては酸化亜鉛系触媒でも吸着されるが、一般にはCo−MoまたはNi−Mo系の水添脱硫触媒上で一度HSに変化した後にZnOで吸着されるのが普通である。触媒としては、例えば、Cu−Zn系の触媒、Ni−Zn系の触媒等を、その動作温度やコスト等を考慮して適宜選択してもよい。本実施の形態に係る脱硫部160における脱硫反応温度は350℃〜400℃である。
【0021】
また、改質部12における改質反応に必要な水蒸気は、水蒸気供給路42を経由して燃料電池用改質装置10の外部から供給された改質水から生成される。外部から供給された液体である改質水は、燃焼排ガスや改質反応筒18の内部で昇温されている改質ガスにより気化され、水蒸気として触媒層36に供給されるとともに、シフト変成部14や選択酸化部16の温度を低下させる。
【0022】
本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10において、原燃料供給路40は、水蒸気供給路42と、水蒸気供給路42において通過する水が気化される箇所より下流側の合流部44で合流している。換言すると、原燃料供給路40と水蒸気供給路42とは、脱硫部160の下流側で合流している。これにより、水蒸気供給路42を通過する水や水蒸気が脱硫部160に混入することが防止され、脱硫部160の脱硫性能の低下が抑制される。水蒸気供給路42は、外筒22および改質反応筒18の内部において、その一部が螺旋状に巻かれたコイル形状を有しており、表面積が増すことで水が気化し易くなっているため、合流部44より上流側の少なくともコイルの下端では水蒸気が生成されている。
【0023】
本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10のように、燃焼排ガスの加熱による原燃料の昇温と水の気化とが別々の原燃料供給路40および水蒸気供給路42で行われた後に原燃料と水蒸気とが合流することで、各供給路における原燃料の昇温や水の気化による水蒸気の供給の制御が容易となる。
【0024】
シフト変成部14は、例えば、酸化銅や酸化亜鉛のペレットからなる触媒層46と、触媒層46を担持するとともに下方から上方へ改質ガスが透過するように孔が形成されている仕切り板48とを有する。シフト変成部14は、触媒層46の働きにより改質ガスに含まれる水蒸気を用いたシフト反応により一酸化炭素を低減することができる。
【0025】
選択酸化部16は、例えば、アルミナで担持した一酸化炭素選択酸化触媒からなる触媒層50と、触媒層50を担持するとともに下方から上方へ改質ガスが透過するように孔が形成されている仕切り板52とを有する。選択酸化部16では、触媒層50の働きにより酸素で一酸化炭素を酸化し二酸化炭素にすることで、一酸化炭素の濃度が更に低減される。
【0026】
シフト変成部14の下流側、かつ、選択酸化部16の上流側の領域には、選択酸化部16で消費される酸素を供給するために、燃料電池用改質装置10の外部と連通している空気供給路54の先端部56が配置されている。これにより、先端部56から流入する空気は、シフト変成部14で一酸化炭素が低減された改質ガスとともに上昇し、選択酸化部16における反応に寄与する。
【0027】
選択酸化部16の上方の、改質反応筒18の上面には、開口部58が形成されている。開口部58には、一酸化炭素が十分低減された改質ガスを不図示の燃料電池の燃料極へ送出する改質ガス送出管60が接続されている。
【0028】
次に、本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10の動作について説明する。バーナ20で生成された燃焼排ガスは、改質反応筒18の下面を加熱した後に加熱流路32を上昇しながら改質反応筒18を側面から加熱する。この際、触媒層36は、改質反応筒18を介して改質反応に必要な温度、例えば、600〜700℃の範囲に加熱される。また、水蒸気供給路42は、直接的または改質反応筒18を介して間接的に燃料排ガスにより加熱され、内部を通る改質水が気化される。一方、燃料排ガスは、加熱流路32を上昇するに従い水蒸気供給路42により冷却され徐々に温度が低下する。なお、加熱流路32を通過した燃焼排ガスは、外筒22の上部に形成された排出口62から外部へ排出される。
【0029】
水蒸気供給路42で気化された水蒸気と原燃料供給路40で昇温された原燃料とは合流部44で混合され、ケース34の内部を下方に送り出される。水蒸気を含む原燃料ガスは、触媒層36の内部を通過する際に燃焼排ガスの熱により徐々に加熱され、改質反応により水素リッチな改質ガスに変化する。
【0030】
原燃料ガスを改質することにより得られた改質ガスは、供給される原燃料ガスの流れによって改質反応筒18の内部を上昇し、シフト変成部14に到達する。ここで、改質部12における改質反応は吸熱反応であるため、水蒸気供給路42の熱回収により温度が低下した改質ガスがシフト変成部14に到達することになる。シフト変成部14におけるシフト反応は、例えば、200〜300℃の範囲で行われ、水蒸気供給路42の熱回収で熱バランスをとっているので、特段の温度制御をしなくても適度な温度を維持することが可能である。これにより、改質ガスはシフト変成部14において一酸化炭素が低減される。
【0031】
なお、シフト変成部14における温度が適温とならない装置の場合、バーナ20での原燃料の燃料量を調整したり、シフト変成部14近傍の水蒸気供給路42のコイルの巻き数を増減させたりすることで調整可能である。
【0032】
シフト変成部14で一酸化炭素が低減された改質ガスは更に、供給される原燃料ガスの流れによって改質反応筒18の内部を整流板64に流れを規制されながら上昇し、選択酸化部16に到達する。その際、空気供給路54から供給された空気も改質反応筒18内を上昇し、選択酸化部16に到達する。
【0033】
選択酸化部16は、水蒸気供給路42の流入口66近傍に配置されているため、改質ガスの温度は改質水による冷却によりシフト変成部14における改質ガスの温度より低温となっている。選択酸化部16における選択酸化反応は、シフト変成部14におけるシフト反応より低温な、例えば、70〜200℃の範囲で行われ、水蒸気供給路42の熱回収で熱バランスをとっているので、特段の温度制御をしなくても改質ガスを適度な温度に維持することが可能である。これにより、改質ガスは選択酸化部16において更に一酸化炭素が低減される。
【0034】
上述のように、燃料電池用改質装置10は、改質部12とシフト変成部14と選択酸化部16とがこの順番に一つの改質反応筒18に収納されているとともに、更に脱硫部160も収納されているため、複雑な形状の流路を形成することなく、改質ガスに含まれる一酸化炭素を低減するとともに、硫黄成分も除去することができる。しかも、脱硫部を装置の外部に設ける場合と比較して、改質反応筒の内部に脱硫器を備えることで装置全体をコンパクトにすることができる。また、改質反応筒18と外筒22との間の加熱流路32を燃焼排ガスが通過するので、改質反応筒18の内部の改質部12における改質反応に必要な熱を供給することができ、ヒータ等の加熱手段が不要となる。また、改質反応筒18と外筒22との間を加熱流路32とすることで、折り返しや多くの筒を要する流路を必要とせずに簡素な構成で燃料電池用改質装置10を実現することができる。
【0035】
換言すると、本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10においては、折り返しや多くの筒を要する流路が設けられていないため、部品点数の低減や製造工程の簡素化によりコストが低減される。また、外筒22の外周部を断熱材24で覆うことで装置全体の断熱性を容易に確保することができるので、断熱材24を装着する際の工程を簡素化することができる。
【0036】
また、加熱流路32は、燃焼排ガスが改質部12側から選択酸化部16側に向かって通過するように形成されているので、燃焼排ガスは、改質反応筒18や水蒸気供給路42と熱交換をしながら徐々に温度が低下する。そのため、燃焼排ガスは、反応温度が高い改質部から反応温度の低い選択酸化部へと適度に温度が低下しながら加熱流路32の内部を通過することになる。そのため、流路の折り返しや新たな加熱手段を設けずに加熱流路32を直線的に形成することが可能となる。
【0037】
また、燃料電池用改質装置10は、改質反応筒18と外筒22との間の加熱流路32を燃焼排ガスが通過することで脱硫部160における脱硫反応に必要な熱が供給されるので、脱硫部160を装置の外部に設けた場合と比較してヒータ等の加熱手段が不要となり、装置全体の熱効率が向上する。また、脱硫部160を装置の外部に設ける場合と比較して、原燃料供給路40の流路を短くすることができる。
【0038】
また、図1に示すように、脱硫部160は、改質部12とシフト変成部14との間に設けられている。これにより、改質部12を加熱した燃焼排ガスや、改質ガスにより脱硫反応に必要な熱が供給される。そのため、本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10は、装置の動作時における定常温度まで脱硫部を効率よく昇温することができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態に係る燃料電池用改質装置110の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る燃料電池用改質装置110は、脱硫部162が、改質反応筒18の軸方向の位置がシフト変成部164と重なる位置に配置されている。これにより、改質反応筒18の縦方向がコンパクトになり、燃料電池用改質装置110を小型化することができる。また、シフト変成部164は、環状に形成されており、脱硫部162は、シフト変成部164の内周部に設けられている。これにより、燃料電池用改質装置110は、起動時にシフト変成部164の温度を効率よく昇温することができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る脱硫部162は、脱硫反応温度が200℃〜300℃程度になるように設定されているとよい。一般的に、シフト変成部164におけるシフト反応温度は200℃〜300℃程度となっている。また、脱硫部162における硫黄成分は数ppm程度であるため、脱硫反応による発熱も僅かである。そのため、シフト反応により発熱する触媒層46を水で冷却しながら熱バランスをとっているシフト変成部164と脱硫部162とが接するよう構成することで、脱硫部162をシフト反応温度と同程度の200℃〜300℃の温度に維持することが容易となる。
【0041】
(第3の実施の形態)
以下では、第1の実施の形態に係る燃料電池用改質装置10を用いた燃料電池システムにおける改質ガスや水、空気等の流れについて説明する。図3は、第3の実施の形態に係る燃料電池システム300の概略構成を模式的に示した構成図である。なお、以下の説明では、主として、改質部で生成された改質ガスの一部を脱硫部に戻す改質ガス戻り流路について説明し、図3に記載の要素のうち第1の実施の形態で説明した各要素については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0042】
燃料電池システム300は、燃料電池用改質装置10と燃料電池200とを備える。燃料電池200は、燃料極202と空気極204とを備えており、燃料極202には改質ガス送出管60を経由して改質ガスが供給され、空気極204にはエアポンプにより空気が供給される。改質ガス中の水素ガスと空気中の酸素ガスとがイオン交換膜(例えば、固体高分子電解質膜)を介して化学反応し、起電力が生じるとともに水が生成される。燃料極202で消費されなかった改質ガスは、オフガスとしてオフガス供給路170を経由して燃料取入口28からバーナ20に供給され燃焼される。なお、バーナ20には、原燃料供給路40の途中に設けられた弁171から分岐された配管から適宜原燃料が供給される。
【0043】
燃料電池用改質装置10は、改質部12に水蒸気を供給するために燃焼排ガスによる加熱により熱交換部172,174等で水が気化される水蒸気供給路42と、改質反応筒18の内部を通過するとともに脱硫部160が途中に接続されており、改質部12に昇温された原燃料を供給するために燃焼排ガスによる加熱により熱交換部172,174等で原燃料が昇温される原燃料供給路40と、原燃料供給路40の途中に接続されている脱硫部160より上流側に接続され、改質部12で生成された改質ガスの一部を脱硫部160に戻す改質ガス戻り流路176と、を備える。
【0044】
改質ガス戻り流路176は、空気供給路54より上流側から改質ガスの一部が流入するように構成されている。これにより、改質ガス戻り流路176には、酸素を含む空気が混入しにくくなるため、脱硫部160の触媒が酸化されることが抑制される。
【0045】
本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10は、原燃料供給路40に接続され、原燃料を該原燃料供給路40に向けて送出するポンプ178と、改質ガス戻り流路176の途中に設けられ、改質ガスに含まれる水分を除去する気水分離部180と、を更に備える。また、改質ガス戻り流路176は、ポンプ178の吸入側に接続されている。
【0046】
気水分離部180である熱交換器は、冷媒として改質用水が用いられる。改質ガス戻り流路176を通過する高温の改質ガスは、気水分離部180において冷却され、含有する水分が液化されるため、トラップ182から水として回収することで、水分が除去される。これにより、改質戻り流路176の改質ガスは、気水分離部180の働きにより水分が除去された後にポンプ178により原燃料供給路40に向けて送出される。そのため、凝縮した水が原燃料供給路40に滞留して原燃料の通過を妨げたり、原燃料とともに水分が脱硫部160に到達して触媒の劣化を引き起こしたりすることが抑制される。
【0047】
(第4の実施の形態)
図4は、第4の実施の形態に係る燃料電池システム400の概略構成を模式的に示した構成図である。なお、以下の説明では、主として、改質部で生成された改質ガスの一部を脱硫部に戻す改質ガス戻り流路184について説明し、図3と同様な点については説明を適宜省略する。
【0048】
燃料電池システム400は、燃料電池用改質装置10と燃料電池200とを備える。燃料電池用改質装置10は、改質部12に水蒸気を供給するために燃焼排ガスによる加熱により熱交換部172,174等で水が気化される水蒸気供給路42と、改質反応筒18の内部を通過するとともに脱硫部160が途中に接続されており、改質部12に昇温された原燃料を供給するために燃焼排ガスによる加熱により熱交換部172,174等で原燃料が昇温される原燃料供給路40と、原燃料供給路40の途中に接続されている脱硫部160より上流側に接続され、改質部12で生成された改質ガスの一部を脱硫部160に戻す改質ガス戻り流路184と、を備える。
【0049】
改質ガス戻り流路184は、選択酸化部16より下流側の改質ガス送出管60の途中から改質ガスの一部が流入するように構成されている。これにより、改質ガス戻り流路184を改質反応筒18の内部に設けなくてもよく、配管が容易となる。
【0050】
本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10は、原燃料供給路40に接続され、原燃料を該原燃料供給路40に向けて送出するポンプ178と、改質ガス戻り流路184の途中に設けられ、改質ガスに含まれる水分を除去する気水分離部180と、を更に備える。また、改質ガス戻り流路184は、ポンプ178の吸入側に接続されている。
【0051】
気水分離部180である熱交換器は、冷媒として改質用水が用いられる。改質ガス戻り流路184を通過する高温の改質ガスは、気水分離部180において冷却され、含有する水分が液化されるため、トラップ182から水として回収することで、水分が除去される。これにより、改質戻り流路184の改質ガスは、気水分離部180の働きにより水分が除去された後にポンプ178により原燃料供給路40に向けて送出される。そのため、凝縮した水が原燃料供給路40に滞留して原燃料の通過を妨げたり、原燃料とともに水分が脱硫部160に到達して触媒の劣化を引き起こしたりすることが抑制される。
【0052】
(第5の実施の形態)
図5は、第5の実施の形態に係る燃料電池システム500の概略構成を模式的に示した構成図である。なお、以下の説明では、主として、改質部で生成された改質ガスの一部を脱硫部に戻す改質ガス戻り流路186について説明し、図3と同様な点については説明を適宜省略する。
【0053】
燃料電池システム500は、燃料電池用改質装置10と燃料電池200とを備える。燃料電池用改質装置10は、改質部12に水蒸気を供給するために燃焼排ガスによる加熱により熱交換部172,174等で水が気化される水蒸気供給路42と、改質反応筒18の内部を通過するとともに脱硫部160が途中に接続されており、改質部12に昇温された原燃料を供給するために燃焼排ガスによる加熱により熱交換部172,174等で原燃料が昇温される原燃料供給路40と、原燃料供給路40の途中に接続されている脱硫部160より上流側に接続され、改質部12で生成された改質ガスの一部を脱硫部160に戻す改質ガス戻り流路186と、を備える。
【0054】
改質ガス戻り流路186は、オフガス供給路170から改質ガスの一部が流入するように構成されている。これにより、水素を含むオフガスをより有効に利用することができるとともに、配管が容易となる。
【0055】
本実施の形態に係る燃料電池用改質装置10は、原燃料供給路40に接続され、原燃料を該原燃料供給路40に向けて送出するポンプ178と、改質ガス戻り流路184の途中に設けられ、改質ガスに含まれる水分を除去する気水分離部180と、を更に備える。また、改質ガス戻り流路186は、ポンプ178の吸入側に接続されている。
【0056】
気水分離部180である熱交換器は、冷媒として改質用水が用いられる。改質ガス戻り流路186を通過する高温の改質ガスは、気水分離部180において冷却され、含有する水分が液化されるため、トラップ182から水として回収することで、水分が除去される。これにより、改質戻り流路186の改質ガスは、気水分離部180の働きにより水分が除去された後にポンプ178により原燃料供給路40に向けて送出される。そのため、凝縮した水が原燃料供給路40に滞留して原燃料の通過を妨げたり、原燃料とともに水分が脱硫部160に到達して触媒の劣化を引き起こしたりすることが抑制される。
【0057】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、これは例示であり、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0058】
上述の燃料電池用改質装置は、ガスと水との熱交換部において、ガス側の伝熱を促進させるために、ガス側通路にアルミナボールやマクマホンパッキン等の拡散により伝熱性を上げる物を充填してもよい。例えば、改質部12とシフト変成部14との間、シフト変成部14と選択酸化部16との間、選択酸化部16の上部、水蒸気供給路42の入口側における燃焼排ガスとの熱交換部、等に伝熱促進物が充填されていてもよい。
【0059】
上述の燃料電池用改質装置110は、脱硫部162がシフト変成部164の内周部に設けられているが、シフト変成部164が脱硫部162の内周部に設けられていてもよい。これにより、燃料電池用改質装置110は、起動時に脱硫部162の温度を効率よく昇温することができる。
【0060】
また、上述の燃料電池用改質装置に用いられる原燃料としては、例示されているメタンやプロパン、ブタン等に限られるものではない。例えば、天然ガス、プロパン・ブタンを主成分とするLPG、ナフサ、灯油等の炭化水素や、メタノール、エタノール等のアルコール類や、ジメチルエーテル等のエーテル類、等を、原燃料として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施の形態に係る燃料電池用改質装置の構成を示す断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係る燃料電池用改質装置の構成を示す断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を模式的に示した構成図である。
【図4】第4の実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を模式的に示した構成図である。
【図5】第5の実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を模式的に示した構成図である。
【符号の説明】
【0062】
10 燃料電池用改質装置、 12 改質部、 14 シフト変成部、 16 選択酸化部、 18 改質反応筒、 20 バーナ、 22 外筒、 32 加熱流路、 40 原燃料供給路、 42 水蒸気供給路、 54 空気供給路、 60 改質ガス送出管、 110 燃料電池用改質装置、 160 脱硫部、 164 シフト変成部、 170 オフガス供給路、 172 熱交換部、 176 改質ガス戻り流路、 178 ポンプ、 180 気水分離部、 182 トラップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料を水素リッチな改質ガスに改質する燃料電池用改質装置であって、
原燃料から改質ガスを生成する改質部と、
前記改質ガスに含まれる一酸化炭素をシフト反応により低減するシフト変成部と、
前記シフト変成部を通過した改質ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化して低減する選択酸化部と、
前記改質部と前記シフト変成部と前記選択酸化部とをこの順番に直線状に収納するとともに、更に脱硫部を収納する改質反応筒と、
原燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する燃焼手段と、
前記改質反応筒の外周に配置され、該改質反応筒より径が大きい外筒と、
前記改質反応筒と前記外筒との間に形成され、前記改質反応筒を加熱するために前記燃焼排ガスが通過する加熱流路と、
前記改質部に水蒸気を供給するために前記燃焼排ガスによる加熱により水が気化される水蒸気供給路と、
前記改質反応筒の内部を通過するとともに前記脱硫部が途中に接続されており、前記改質部に昇温された原燃料を供給するために前記燃焼排ガスによる加熱により原燃料が昇温される原燃料供給路と、
前記原燃料供給路の途中に接続されている前記脱硫部より上流側に接続され、前記改質部で生成された改質ガスの一部を前記脱硫部に戻す改質ガス戻り流路と、
を備え、
前記脱硫部は、水素との反応で原燃料から硫黄を除去する水添脱硫触媒を有することを特徴とする燃料電池用改質装置。
【請求項2】
前記シフト変成部の下流側、かつ、前記選択酸化部の上流側の領域に該選択酸化部における反応に用いられる酸素を含むガスを供給する酸素供給路を更に備え、
前記改質ガス戻り流路は、前記酸素供給路より上流側から改質ガスの一部が流入することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用改質装置。
【請求項3】
前記改質ガス戻り流路は、前記選択酸化部より下流側から改質ガスの一部が流入することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用改質装置。
【請求項4】
燃料電池の燃料極で消費されなかった改質ガスを前記燃焼手段へ供給するオフガス供給路を更に備え、
前記改質ガス戻り流路は、前記オフガス供給路から改質ガスの一部が流入するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用改質装置。
【請求項5】
前記原燃料供給路に接続され、前記原燃料を該原燃料供給路に向けて送出するポンプと、
前記改質ガス戻り流路の途中に設けられ、改質ガスに含まれる水分を除去する気水分離部と、を更に備え、
前記改質ガス戻り流路は、前記ポンプの吸入側に接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池用改質装置。
【請求項6】
前記原燃料供給路は、前記脱硫部の下流側で前記水蒸気供給路と合流していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池用改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−87586(P2009−87586A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252658(P2007−252658)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】