説明

燃料電池用改質装置

【課題】一酸化炭素低減部の触媒層を好適な温度に保つ。
【解決手段】
改質装置100は、改質ガスを生成する改質部120と、燃焼排ガスを生成する燃焼部130と、燃焼排ガスによって改質用水を加熱する気化部150と、改質用水と改質ガスとの間で熱交換する過熱蒸気発生部160と、改質ガス中の一酸化炭素の低減反応を促進可能な触媒を含む触媒層を有し、過熱蒸気発生部160で改質用水と熱交換した改質ガスが供給され、当該改質ガスとの熱交換によって触媒層の温度が調節されるCO低減部140と、燃焼用空気ブロア171と、制御装置180と、を備える。制御装置180は、気化部150よりも下流側の改質水または過熱蒸気発生部160よりも下流側の改質ガスの温度に基づいて燃焼用空気の供給量を調節することで、気化部150における燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料を改質して水素ガスを主成分とする改質ガスを生成する燃料電池用改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率が高く、かつ、発電反応により有害物質を発生しない燃料電池が注目を浴びている。こうした燃料電池として、固体高分子形燃料電池のように、電解質膜を燃料極と空気極との間に配した基本構造を有し、燃料極に水素を含む燃料ガス、空気極に酸素を含む酸化剤ガスを供給し、以下の電気化学反応により発電する燃料電池が知られている。
【0003】
燃料極:H→2H+2e (1)
空気極:1/2O+2H+2e→HO (2)
【0004】
燃料極では、供給された燃料ガス中に含まれる水素が上記式(1)に示されるように水素イオンと電子に分解される。このうち水素イオンは電解質膜の内部を空気極に向かって移動し、電子は外部回路を通って空気極に移動する。一方、空気極では、空気極に供給された酸化剤ガスに含まれる酸素が燃料極から移動してきた水素イオンおよび電子と反応し、上記式(2)に示されるように水が生成される。このように、外部回路では燃料極から空気極に向かって電子が移動するため、電力が取り出される。
【0005】
上述の構成を有する燃料電池は、水素が有する化学エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を発生する。水素を含む燃料ガスは、例えば灯油、天然ガス、LPG、ナフサ等の炭化水素系原燃料またはメタノール等のアルコール類原燃料と水蒸気とを混合して、改質装置で改質することで得ることができる。改質により得られた燃料ガス(改質ガス)は燃料電池の燃料極に供給され、発電に用いられる。
【0006】
こうした改質装置として、改質部と、燃焼部と、一酸化炭素低減部とを備えた改質装置が知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。このような改質装置では、次のような処理が行われる。
【0007】
すなわち、改質部は、供給された原燃料と水蒸気とを反応させて水蒸気改質し、水素と一酸化炭素を含む改質ガスを生成する。燃焼部は、原燃料あるいは燃料電池で未反応のまま排出された電池オフガスを燃焼用空気と混合して燃焼させ、燃焼排ガスを生成する。改質部は、この燃焼排ガスによって加熱され、これにより水蒸気改質反応に必要な熱が改質部に供給される。
【0008】
また、燃焼排ガス等によって改質用水が加熱されて水蒸気が生成され、当該水蒸気が改質部に供給される。改質部で生成された改質ガスは一酸化炭素低減部に送られ、一酸化炭素低減部において、燃料電池本体に含まれる触媒等の劣化の原因となる一酸化炭素が低減される。具体的には、改質ガス中の一酸化炭素は、触媒の存在下で水と反応して二酸化炭素に変換される。あるいは、さらに、改質ガス中の一酸化炭素は、触媒の存在下で選択的に酸化されて二酸化炭素に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−201638号公報
【特許文献2】特開2007−261871号公報
【特許文献3】特開2007−109590号公報
【特許文献4】特開2006−228654号公報
【特許文献5】特開2005−93345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の構成を備えた改質装置では、一酸化炭素低減部に設けられた触媒層の温度を、一酸化炭素の低減反応に適した温度に維持することが求められる。触媒層の温度を維持する方法としては、例えば、改質装置を、改質ガスが持つ熱により触媒層の温度を調節する、自己熱回収型の構造とすることが考えられる。この方法によれば、ヒータ等を用いて特段の温度制御をしなくても触媒層を低減反応に適した温度に維持することが可能である。
【0011】
しかしながら、このような自己熱回収型の構造を有する改質装置では、原燃料の温度や流量変化、改質装置の外部環境温度の変化等の外乱により、一酸化炭素低減部に供給される改質ガスの温度が変化してしまう可能性があった。そして、これにより触媒層の温度が、触媒が活性を維持できる温度、すなわち一酸化炭素の低減反応に適した温度から外れてしまうおそれがあった。触媒層の温度が適温範囲から外れると、規定量を超える一酸化炭素が燃料電池に到達して燃料電池の触媒が劣化してしまい、燃料電池の発電効率が低下する原因となる。
【0012】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、一酸化炭素低減部の触媒層を好適な温度に保つ技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、燃料電池用改質装置である。当該燃料電池用改質装置は、原燃料と水蒸気とを反応させて水素ガスを主成分とする改質ガスを生成する改質部と、原燃料または電池オフガスを燃焼用空気と混合して燃焼させ、改質部を加熱するための燃焼排ガスを生成する燃焼部と、燃焼排ガスによって水蒸気の元となる改質用水を加熱する加熱部と、加熱部を通過した改質用水と改質ガスとの間で熱交換する熱交換部と、改質ガスに含まれる一酸化炭素の低減反応を促進可能な触媒を含む触媒層を有し、熱交換部で改質用水と熱交換した改質ガスが供給され、当該改質ガスとの熱交換によって触媒層の温度が調節される一酸化炭素低減部と、燃焼用空気を燃焼部に供給する空気供給部と、空気供給部を制御して燃焼部への燃焼用空気の供給量を調節する制御部と、を備え、制御部は、加熱部より下流側の改質水または熱交換部よりも下流側の改質ガスの温度に基づいて燃焼用空気の供給量を調節することで、加熱部における燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を制御することを特徴とする。
【0014】
この態様によれば、改質ガスと熱交換される改質用水の温度が調節されて、これにより改質ガスの温度が調節されるため、一酸化炭素低減部の触媒層を好適な温度に保つことができる。
【0015】
上記態様において、制御部は、加熱部より下流側の改質水または熱交換部よりも下流側の改質ガスの温度が、所定の上限値以上であった場合には当該上限値を下回るように燃焼用空気の供給量を減らし、所定の下限値以下であった場合には当該下限値を上回るように燃焼用空気の供給量を増やしてもよい。
【0016】
上記態様において、改質部に供給される水蒸気の温度を検知する温度検知部を備え、制御部は、温度検知部の検知結果に応じて燃焼部への燃焼用空気の供給量を調節してもよい。
【0017】
上記態様において、改質用水を燃料電池用改質装置に供給する改質用水供給部を備え、制御部は、改質用水供給部を制御して燃料電池用改質装置への改質用水の供給量を調節可能であり、燃焼用空気および改質用水の供給量を調節することで改質ガスと熱交換される改質用水の温度を制御してもよい。
【0018】
上記態様において、触媒層と改質用水との間で熱交換可能な構成を有し、触媒層は、一酸化炭素低減部に供給された改質ガスとの間の熱交換に加えて、改質用水との間の熱交換によってその温度が制御されてもよい。
【0019】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一酸化炭素低減部の触媒層を好適な温度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係る燃料電池システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】実施形態1に係る改質装置における燃焼用空気供給量制御の制御フローチャートである。
【図3】実施形態2に係る改質装置における燃焼用空気および改質用水の供給量制御の制御フローチャートである。
【図4】実施形態2に係る改質装置における燃焼用空気および改質用水の供給量制御の制御フローチャートである。
【図5】実施形態2に係る改質装置における燃焼用空気および改質用水の供給量制御の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る燃料電池システムの全体構成を示す概略図である。なお、図1の概略図は、主に各構成の機能やつながりを模式的に示した図であり、各構成の位置関係または配置を限定するものではない。
【0024】
燃料電池システム10は、改質装置100(燃料電池用改質装置)と、燃料電池200と、貯湯ユニット300とを備える。以下、各構成について詳細に説明する。
【0025】
<改質装置>
改質装置100は、原燃料を水蒸気改質して水素ガスを主成分とする改質ガスを生成する燃料電池用改質装置である。改質装置100は、脱硫部110と、改質部120と、燃焼部130と、一酸化炭素低減部140(以下、適宜、一酸化炭素低減部をCO低減部と称する)と、を備える。
【0026】
(脱硫部)
脱硫部110は、例えば、ゼオライト等の吸着剤により硫黄成分を吸着させる吸着方式、または、触媒の存在下で硫黄成分を含む原燃料と水素とを反応させて硫黄成分を除去する、いわゆる水素化脱硫方式を採用した装置である。
【0027】
改質装置100には、水素を含む燃料ガスの原燃料として、例えば灯油、天然ガス、LPG、ナフサ等の炭化水素系原燃料が供給される。一般に、原燃料には不純物として、またはガス漏れを感知しやすくするための付臭剤として、硫黄化合物が含まれている。硫黄化合物を含んだ原燃料がそのまま改質部120に送られると、硫黄化合物が改質部120や、その下流にある燃料電池200等に含まれる触媒に対して触媒毒として作用し、硫黄被毒により改質装置100の改質性能や燃料電池200の発電性能が低下してしまう。そこで、脱硫部110において原燃料中に含まれる硫黄化合物を除去する。
【0028】
脱硫部110は、吸着剤として銀(Ag)を担持したゼオライト系の吸着剤を有する。そして、この吸着剤による吸着脱硫反応によって、原燃料に含まれる硫黄化合物が除去される。原燃料は、例えば、硫黄化合物濃度が約20〜50ppbとなるまで脱硫される。脱硫部110で硫黄化合物が除去された原燃料は改質部120または燃焼部130に送られる。なお、水添脱硫触媒として例えばCo−Mo系やNi−Mo系の触媒を有する触媒層を備え、この水添脱硫触媒による水添脱硫反応によって硫黄化合物を除去してもよい。
【0029】
(改質部)
改質部120は、例えば、アルミナ等の担体に金属粒子としてルテニウム(Ru)が担持されたRu系の改質触媒を有する改質触媒層(図示せず)を備える。改質部120には脱硫部110で処理された原燃料と、水蒸気とが供給され、改質触媒の存在下で原燃料の水蒸気改質が行われる。当該水蒸気改質では、以下の式(3)で示すように、例えば原燃料中のメタンと水蒸気が反応して水素と一酸化炭素が生じる改質反応が起こる。当該改質反応は、例えば、約650〜700℃の範囲で行われる。
CH+HO→3H+CO (3)
【0030】
改質部120における改質反応に必要な水蒸気は、改質装置100に供給された改質用水を気化させることで生成される。改質用水は、逆浸透膜とイオン交換樹脂等を備えた水処理装置(図示せず)により上水からの水が処理されて生成される。水処理装置により上水からの水の導電率が低下するとともに、有機物の混入が抑制される。改質用水の供給量は、改質用水ポンプ174(改質用水供給部)の出力を調整することで調節することができる。
【0031】
改質装置100に供給された改質用水は、CO低減部140に含まれる後述する熱交換部143において、改質ガスとの間で熱交換される。この熱交換により改質用水が加熱されるとともに、改質ガスの温度が低減される。また、改質用水は、CO低減部140に含まれる後述する一酸化炭素変成部142において、一酸化炭素変成部142が備える触媒層との間で熱交換される。この熱交換により改質用水が加熱されるとともに、触媒層の温度が調節される。触媒層における一酸化炭素の低減反応は、改質ガスが流出する側(出口部)よりも改質ガスが流入する側(入口部)で盛んに起こり、この反応は一般に発熱反応であるため、触媒層の出口部よりも入口部において改質用水との熱交換が行われるように構成することが好ましい。具体的には、例えばCO変成部142は略円筒状の構造を有し、CO変成部142の外周面に改質用水の流路(図示せず)が巻き付けられる。改質用水の流路は、触媒層の入口部側の外周面に3周だけ巻き付けられ、出口部側の外周面に2周だけ巻き付けられる。これにより、改質用水による入口部での熱回収量と出口部での熱回収量の比率が3:2となっている。
【0032】
そして、CO変成部142で熱交換された改質用水は、気化部150(加熱部)において、燃焼部130によって生成された燃料排ガスとの間で熱交換されてさらに加熱される。その後、改質用水は、改質部120の下流側であってCO低減部140の上流側に設けられた過熱蒸気発生部160(熱交換部)において、改質部120から排出された改質ガスとの間で熱交換されてさらに加熱される。これらの熱交換により改質用水は気化されて水蒸気となり、脱硫部110の下流側であって改質部120の上流側で原燃料と混合される。水蒸気の温度は、水蒸気温度センサ162(温度検知部)により検知される。水蒸気温度センサ162は、後述する制御装置180と信号ケーブルで接続されており、検知した水蒸気の温度を信号として制御装置180に送信することができる。
【0033】
(燃焼部)
改質部120の下部には、例えばバーナ等を含む燃焼部130が設けられている。燃焼部130は、原燃料または電池オフガス(以下、適宜、原燃料および電池オフガスをまとめて燃焼用燃料と称する)を燃焼用空気と混合して燃焼させ、改質部120を加熱するための燃焼排ガスを生成する。燃焼部130で生成された燃焼排ガスによって改質部120が加熱され、これにより吸熱反応である改質反応に必要な熱が得られる。
【0034】
具体的には、燃料電池システム10もしくは改質装置100の起動時には、改質装置100に供給された原燃料の一部と、燃料電池システム10の外部から取り込まれた燃焼用空気とが燃焼部130に供給される。そして、燃焼部130は、原燃料と燃焼用空気とを混合して燃焼させる。また、燃料電池システム10が安定的に運転できるようになると、燃焼部130への原燃料の供給が停止し、燃料電池200で未反応のまま排出された改質ガスである電池オフガスが燃焼部130に供給される。そして、燃焼部130は、電池オフガスと燃焼用空気とを混合して燃焼させる。脱硫部110および燃焼部130への原燃料の供給は、原燃料を供給する原燃料ポンプ(図示せず)の駆動や、改質部120に延びる原燃料流路と燃焼部130に延びる原燃料流路とを切り替える切替弁(図示せず)の切り替えにより調節される。原燃料ポンプの駆動および切替弁の切り替えは、制御装置180によって制御される。
【0035】
燃焼部130に供給される空気には、外部から燃焼用空気ブロア171(空気供給部)等を用いて燃料電池システム10に取り込まれた空気が用いられる。燃料電池システム10に取り込まれた空気は、フィルタ(図示せず)により塵や浮遊物が除去された後、燃焼部130に送られる。燃焼部130に供給される燃焼用空気の量は、燃焼用空気ブロア171の出力を調整することにより調節することができる。
【0036】
電池オフガスは、気液分離装置(図示せず)を経由して燃焼部130に送られる。気液分離装置において電池オフガスの気体成分のみが取り出されて、当該気体成分が燃焼部130に送られる。
【0037】
燃焼部130で燃焼用燃料が燃焼されることによって、約1200〜1300℃の高温の燃焼排ガスが発生する。この燃焼排ガスは、改質部120の昇温に用いられた後、気化部150に到達する。そして、燃焼排ガスは、気化部150において改質用水との間で熱交換した後、燃料電池システム10の外部へ排出される。
【0038】
改質部120での改質反応によって、原燃料から水素(燃料)を約80%、一酸化炭素を約10%含有する改質ガスが生成される。生成された改質ガスは下流側に送られ、過熱蒸気発生部160において改質用水との間で熱交換した後、CO低減部140に到達する。
【0039】
(一酸化炭素低減部)
CO低減部140は、一酸化炭素変成部142(以下、適宜、一酸化炭素変成部をCO変成部と称する)と、一酸化炭素除去部144(以下、適宜、一酸化炭素除去部をCO除去部と称する)とを備える。CO変成部142およびCO除去部144は、改質ガスの流れに対してCO変成部142が上流側、CO除去部144が下流側に配置されている。また、CO低減部140は熱交換部143を備え、熱交換部143は改質ガスの流路上のCO変成部142とCO除去部144との間に配置されている。なお、一酸化炭素低減部は、CO変成部142あるいはCO除去部144のみを含んでいてもよい。
【0040】
CO変成部142は、いわゆる自己熱回収型の構造を有し、例えば、酸化銅や酸化亜鉛のペレットからなるCu−Zn系の触媒を有する触媒層142aと、改質ガスと触媒層142aとの間の熱交換を行う熱交換部142bとを備える。改質部120から過熱蒸気発生部160を経由して送られてきた改質ガスは、まず熱交換部142bに送られ、熱交換部142bにおいて改質ガスと触媒層142aとの間の熱交換が行われる。改質ガスとの熱交換によって、触媒層142aは後述するシフト反応に適した温度に調整される。
【0041】
そして、熱交換部142bを通過した改質ガスが触媒層142aに到達し、触媒層142aにおいて、改質ガスに含まれる水蒸気を利用した以下の式4で示すシフト反応により、改質ガスに含まれる一酸化炭素が低減される。シフト反応は、例えば、約200〜300℃の範囲で行われる。
CO+HO→CO+H (式4)
【0042】
CO変成部142でのシフト反応によって、改質部120で生成された改質ガスの一酸化炭素濃度は約0.5%以下まで低減される。CO変成部142で一酸化炭素が低減された改質ガスはさらに下流側に送られ、熱交換部143において改質用水との間で熱交換が行われた後、CO除去部144に到達する。
【0043】
(一酸化炭素除去部)
CO除去部144は、CO変成部142と同様に自己熱回収型の構造を有し、例えば、アルミナ等の担体に金属粒子としてルテニウム(Ru)が担持されたRu系の選択酸化触媒を有する選択酸化触媒層144aと、改質ガスと選択酸化触媒層144aとの間の熱交換を行う熱交換部144bとを備える。CO変成部142から送られてきた改質ガスは、まず熱交換部144bに送られ、熱交換部144bにおいて改質ガスと選択酸化触媒層144aとの間の熱交換が行われる。改質ガスとの熱交換によって、選択酸化触媒層144aは後述する選択酸化反応に適した温度に調整される。
【0044】
そして、熱交換部144bを通過した改質ガスが選択酸化触媒層144aに到達し、選択酸化触媒層144aにおいて、改質ガスと外部から取り込んだ空気とが選択酸化触媒の存在下で接触して、改質ガス中に残る一酸化炭素が選択的に酸化される。CO除去部144において起こる選択酸化反応は以下の式5で示される。当該選択酸化反応は、例えば、約70〜180℃の範囲で行われる。
CO+1/2O→CO (式5)
【0045】
CO除去部144に供給される空気(以下、適宜、選択酸化空気と称する)には、外部から選択酸化空気ブロア170等を用いて燃料電池システム10に取り込まれた空気が用いられる。燃料電池システム10に取り込まれた空気は、フィルタにより塵や浮遊物が除去され、加湿および加温されてCO除去部144に供給される。CO除去部144に供給される選択酸化空気の量は、選択酸化空気ブロア170の出力を調整することにより調節することができる。なお、外部から改質装置100までの空気の流路上には、改質装置100から原燃料や改質ガスが外部に流出するのを防ぐために、逆止弁(図示せず)が設けられていてもよい。
【0046】
CO除去部144での選択酸化反応によって改質ガスの一酸化炭素濃度は約10ppm以下まで低減される。CO除去部144で一酸化炭素が選択的に除去された改質ガスは、加温および加湿等された後、燃料電池200のアノード(図示せず)に供給される。
【0047】
<燃料電池>
本実施形態の燃料電池200は、例えば、固体高分子形燃料電池である。燃料電池200は、アノードとカソードとの間に電解質膜として固体高分子電解質膜が設けられたセル(単電池)が複数積層されて構成される積層体(図示せず)を有する。燃料電池200は、燃料として水素を用いるとともに、酸化剤として空気を用いて発電を行う。
【0048】
燃料としての水素は、改質装置100から供給される。すなわち、改質装置100のCO低減部140から送られてきた改質ガスがアノードに供給され、改質ガスに含まれる水素が燃料として用いられる。また、酸化剤としての空気には、燃料電池システム10の外部から酸化剤ブロア172等を用いて燃料電池システム10に取り込まれた空気が用いられる。燃料電池システム10に取り込まれた空気は、フィルタにより塵や浮遊物が除去され、加湿および加温されて燃料電池200のカソードに供給される。燃料電池200に供給される酸化剤としての空気の量は、酸化剤ブロア172の出力を調整することにより調節することができる。なお、外部から燃料電池200までの空気の流路上には、燃料電池200から改質ガスが外部に流出するのを防ぐために、逆止弁(図示せず)が設けられていてもよい。
【0049】
燃料および空気が供給されると、燃料電池200の各セルにおいて、固体高分子電解質膜の一方の面に接するアノードで以下の式(1)で示す電極反応が起きる。一方、固体高分子電解質膜の他方の面に接するカソードで以下の式(2)で示す電極反応が起きる。各セルは、冷却水プレート(図示せず)を流通する冷却水によって冷却され、約70〜80℃の適温に調節される。
→2H+2e (1)
1/2O+2H+2e→HO (2)
【0050】
燃料電池200で発生した直流電力は、コンバータ(図示せず)により所定電圧(たとえば24V)の直流電力に変換された後、インバータ(図示せず)によって交流電力(たとえば100V)に変換される。インバータで変換された交流電力は系統(図示せず)へ出力される。また、コンバータで変換された所定電圧の直流電力は、制御装置180等の電源として利用される。
【0051】
燃料電池システム10は、循環ポンプ(図示せず)によって、冷却水プレートを流通する冷却水が燃料電池200と熱交換部210との間を循環するように構成されている。燃料電池200の発電で発生した熱エネルギーは、冷却水によって燃料電池200の外部に取り出される。燃料電池200を通過した冷却水は、熱交換部210で貯湯ユニット300から送られた熱回収水と熱交換した後、再度、燃料電池200の冷却に用いられる。
【0052】
<貯湯ユニット>
貯湯ユニット300は、貯湯タンク310を有する。貯湯タンク310には上水からの水が供給される。貯湯タンク310に供給された水は、熱回収水ポンプ176によって熱回収水として熱交換部210に送り出され、熱交換部210において、熱回収水と燃料電池200から排出された冷却水との間で熱交換が行われる。その結果、燃料電池200で生じた熱エネルギーによって熱回収水が加熱され、貯湯タンク310に湯水が貯留される。このように、燃料電池200で発生した熱エネルギーを湯水として貯湯タンク310に貯留することができるので、燃料電池システム10の熱効率が向上する。
【0053】
<制御装置>
改質装置100、燃料電池200、および貯湯ユニット300のそれぞれの運転は、制御装置180(制御部)によって制御される。また、制御装置180は、上述のように水蒸気温度センサ162と信号ケーブルで接続されており、水蒸気温度センサ162の検知結果信号を受信することができる。また、制御装置180は、選択酸化空気ブロア170、燃焼用空気ブロア171、および酸化剤ブロア172のそれぞれと信号ケーブルで接続されており、選択酸化空気ブロア170、燃焼用空気ブロア171、および酸化剤ブロア172のそれぞれに、各空気の流量を調節する流量調節信号を送信する。また、制御装置180は、改質用水ポンプ174および熱回収水ポンプ176のそれぞれと信号ケーブルで接続されており、改質用水ポンプ174、熱回収水ポンプ176のそれぞれに、改質用水あるいは熱回収水の流量を調節する流量調節信号を送信する。
【0054】
さらに、制御装置180は、原燃料を供給する原燃料ポンプ、原燃料の流路上の切替弁、燃料電池200を冷却する冷却水を循環させるための循環ポンプ、コンバータおよびインバータ等との間で電気信号を送受信して、これらの各種機器を制御する。制御装置180はリモートコントローラ(図示せず)と赤外線通信が可能であってもよく、この場合には、ユーザがリモートコントローラを用いて、燃料電池システム10の動作を操作したり、貯湯タンク310の湯温等を設定したりすることができる。
【0055】
次に、上述の構成を備えた改質装置100の動作について説明する。
CO低減部140の触媒層の温度は、一酸化炭素の低減反応に適した温度に維持することが好ましい。触媒層の温度が所定の温度範囲から外れた場合には、規定量を超える一酸化炭素が燃料電池に到達して燃料電池の触媒が劣化してしまい、燃料電池の発電効率が低下する原因となる。
【0056】
そこで、本実施形態に係る改質装置100では、CO低減部140を、CO低減部140に供給された改質ガスが持つ熱によって触媒層を加熱する自己熱回収型の構造とするとともに、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を調節することで触媒層の温度を制御することとした。なお、本実施形態では、CO低減部140のうちCO変成部142の触媒層142aの温度を制御する場合を例に説明するが、CO除去部144の選択酸化触媒層144aについても同様の構成および制御により同様の効果を得ることができる。
【0057】
すなわち、本実施形態の改質装置100では、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を調節することで、気化部150に到達する燃焼排ガスが有する熱量、言い換えれば燃焼排ガスの温度を調節する。これにより、気化部150における燃焼排ガスによる改質用水の加熱量、すなわち、気化部150において燃焼排ガスと熱交換される改質用水の温度を調節することができる。そして、この改質用水の温度調節によって、過熱蒸気発生部160において当該改質用水と熱交換される改質ガスの温度を調節する。その結果、当該改質ガスの持つ熱によって加熱される触媒層142aの温度を調節することができる。
【0058】
具体的には、例えば、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を増大させると、燃焼部130で生成された燃焼排ガスの流速が上がるため、改質部120に到達した燃焼排ガスと改質部120との間の熱交換量が減少する。したがって、改質部120を通過して気化部150に到達した燃焼排ガスの熱量は大きくなる。そのため、気化部150において改質用水が燃焼排ガスから受け取る熱量は大きくなる。この改質用水は、過熱蒸気発生部160において改質部120から排出された改質ガスと熱交換されるが、当該改質用水の熱量が大きく、したがって改質ガスと改質用水の温度差が小さいため、改質ガスと改質用水との間の熱交換量が減少する。その結果、改質ガスは、燃焼用空気の供給量を増大させなかった場合よりも温度が高い状態でCO変成部142に供給される。これにより、CO変成部142の触媒層142aの温度を上昇させることができる。なお、燃焼用空気の供給量とともに燃焼用燃料の供給量を増大させることで、改質部120の改質触媒層の温度を一定に保つことができる。
【0059】
一方、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を低減すると、燃焼部130で生成された燃焼排ガスの流速が下がるため、改質部120に到達した燃焼排ガスと改質部120との間の熱交換量が増大する。したがって、改質部120を通過して気化部150に到達した燃焼排ガスの熱量は小さくなる。そのため、気化部150において改質用水が燃焼排ガスから受け取る熱量は小さくなる。この改質用水は、過熱蒸気発生部160において改質部120から排出された改質ガスと熱交換されるが、当該改質用水の熱量が小さく、したがって改質ガスと改質用水との温度差が大きいため、改質ガスと改質用水との間の熱交換量が増大する。その結果、改質ガスは、燃焼用空気の供給量を低減しなかった場合よりも温度が低い状態でCO変成部142に供給される。これにより、CO変成部142の触媒層142aの温度を低下させることができる。なお、燃焼用空気の供給量とともに燃焼用燃料の供給量を低減することで、改質部120の改質触媒層の温度を一定に保つことができる。
【0060】
制御装置180は、気化部150より下流側の改質水または過熱蒸気発生部160よりも下流側の改質ガスの温度に基づいて燃焼用空気の供給量を調節することで、気化部150における燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を制御する。本実施形態では、制御装置180は、水蒸気温度センサ162で検知された水蒸気(改質用水)の温度と触媒層142aの温度とを対応付けた変換テーブルを記憶部(図示せず)に保存している。この変換テーブルは、設計者による実験やシミュレーションに基づいて予め作成されたものである。また、制御装置180は、触媒層142aの好適温度範囲に対応する水蒸気の温度範囲(以下、適宜、好適水蒸気温度範囲と称する)を変換テーブルを用いて算出し、算出された好適水蒸気温度範囲情報を記憶部に保存している。そして、制御装置180は、水蒸気温度センサ162の検知結果から、過熱蒸気発生部160で改質ガスと熱交換されて水蒸気となった改質用水の温度を取得し、得られた温度が好適水蒸気温度範囲に含まれるように燃焼用空気の供給量を調節する。これにより、触媒層142aの温度を好適温度範囲に保つことができる。ここで、前記「触媒層142aの好適温度範囲」とは、触媒層142aに含まれる触媒の活性が維持される温度範囲である。
【0061】
具体的には、制御装置180は、水蒸気温度センサ162で検知された水蒸気温度が好適水蒸気温度範囲の上限値以上となった場合に、当該温度が上限値を下回るように燃焼用空気の供給量を減らす。また、制御装置180は、水蒸気温度センサ162で検知された水蒸気温度が好適水蒸気温度範囲の下限値以下となった場合に、当該温度が下限値を上回るように燃焼用空気の供給量を増やす。
【0062】
ここで、制御装置180は、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を、空気比で規定している。空気比とは、燃焼部130に供給される燃焼用燃料を完全燃焼させるのに必要な空気量に対する実際に供給する空気量の比であり、(実際の燃焼用空気の供給量/燃焼用燃料を完全燃焼させるのに必要な理論空気量)で表される。燃焼用燃料を完全燃焼させるための理論空気比は1となるが、実際には、燃焼用燃料を安定的に完全燃焼させるために、発電中に供給する空気量として理論空気比よりも高い空気比が設定される。つまり、発電中は過剰ぎみの空気が供給されて運転される。また、空気比は、燃焼部130において燃焼用燃料を安定的に燃焼させるために、所定の範囲内にあることが好ましい。空気比が所定範囲の下限値を下回ると燃焼用燃料の不完全燃焼が起こる可能性があり、所定範囲の上限値を上回ると失火が起こる可能性がある。
【0063】
そのため、制御装置180は、水蒸気温度を調節するために空気比の設定値を変更し、変更された空気比となるように燃焼用空気ブロア171の出力を段階的あるいは無段階に変化させて燃焼用空気の供給量を調節する。このとき、制御装置180は、空気比が上述の所定範囲内に収まるように燃焼用空気供給量を調節する。制御装置180は、空気比の上限値および下限値と、予め定められた初期値とを記憶部に記憶している。
【0064】
以下に、改質装置100の動作の制御フローを詳細に説明する。図2は、実施形態1に係る改質装置における燃焼用空気供給量制御の制御フローチャートである。このフローは、制御装置180により実行され、例えば、燃料電池システム10の起動とともに開始される。
【0065】
まず、空気比が初期値に設定され、初期値に対応する量の燃焼用空気が燃焼部130に供給される。そして、燃焼部130で燃焼排ガスが生成されて、燃焼部130で生じた熱により改質部120およびCO低減部140の触媒層が昇温される。あるいは、図示しないヒータによって各触媒層が昇温されてもよい。各触媒層の温度が所定の温度以上となったことが検知されたら、燃料電池システム10による発電が開始される(ステップ101:以下S101と略記する。他のステップも同様)。制御装置180は、例えば、燃料電池システム10の起動から所定時間が経過したときに、各触媒層の温度が所定温度以上になったと判断することができる。
【0066】
発電が開始されると、水蒸気温度センサ162の検知結果から水蒸気の温度が175℃を超えたか否か判断される(S102)。ここで、「175℃」という温度は、上述の好適水蒸気温度範囲の下限温度である。水蒸気の温度が175℃以下であった場合(S102_No)、発電開始後所定時間、例えば1時間を経過していないか否か判断される(S103)。発電開始後1時間を経過していない場合(S103_Yes)、繰り返し水蒸気温度が175℃を超えたか否か判断される(S102)。水蒸気温度が175℃を超えた場合(S102_Yes)、本実施形態に係る燃焼用空気供給量制御が開始される(S104)。また、発電開始後1時間を経過した場合(S103_No)、すなわち、発電開始後1時間を経過しても水蒸気温度が175℃を超えない場合も、水蒸気温度を上げるために本実施形態に係る燃焼用空気供給量制御が開始される(S104)。
【0067】
燃焼用空気供給量制御が開始されると、所定時間、例えば10分間、燃焼用空気の供給量が現行の供給量に維持される(S105)。次いで、水蒸気の温度が175℃を超えているか否か判断される(S106)。水蒸気温度が175℃を超えている場合(S106_Yes)、再度所定時間、例えば10分間、燃焼用空気の供給量が現行の供給量に維持される(S107)。水蒸気の温度が175℃以下であった場合(S106_No)、空気比が1.6未満であるか否か判断される(S108)。ここで、「1.6」という数値は、上述の空気比の上限値である。空気比が1.6未満であった場合(S108_Yes)、空気比の設定値が0.05だけ大きくされて、変更後の空気比に対応する量の燃焼用空気が供給される(S109)。そして、10分間だけ燃焼用空気の供給量が維持されて(S105)、水蒸気の温度が175℃を超えたか否か判断される(S106)。空気比が1.6以上であった場合(S108_No)、空気比は変更されずに10分間だけ燃焼用空気の供給量が維持される(S107)。
【0068】
次いで、水蒸気の温度が225℃未満であるか否か判断される(S110)。ここで、「225℃」という温度は、上述の好適水蒸気温度範囲の上限温度である。水蒸気の温度が225℃未満であった場合(S110_Yes)、発電が終了したか否か判断される(S111)。水蒸気の温度が225℃以上であった場合(S110_No)、空気比が1.4を超えているか否か判断される(S112)。ここで、「1.4」という数値は、上述の空気比の下限値である。空気比が1.4を超えていた場合(S112_Yes)、空気比の設定値が0.05だけ小さくされて、変更後の空気比に対応する量の燃焼用空気が供給される(S113)。そして、10分間だけ燃焼用空気の供給量が維持されて(S107)、水蒸気の温度が225℃未満となったか否か判断される(S110)。空気比が1.4以下であった場合(S112_No)、空気比は変更されずに発電が終了したか否か判断される(S111)。
【0069】
発電が終了していない場合(S111_No)、ステップ105に戻って上述の制御が繰り返される。一方、発電が終了した場合(S111_Yes)、空気比の値が初期化されて(S114)、本フローが終了する。
【0070】
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係る改質装置100では、改質用水が燃焼排ガスによる加熱と、その後の改質ガスとの熱交換とにより水蒸気に変換されて改質部120に供給され、改質用水と熱交換した後の改質ガスがCO低減部140に供給される。そして、CO低減部140に供給された改質ガスとの熱交換によって触媒層142aの温度が調節される。このような構成において、制御装置180は、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を調節することで燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を制御し、これにより改質用水の温度を制御している。そして、これにより、過熱蒸気発生部160で改質用水と熱交換される改質ガスの温度が調節され、その結果、CO低減部140の触媒層の温度が調節される。したがって、本実施形態に係る改質装置100によれば、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を調節することでCO低減部140の触媒層を好適な温度に保つことができる。
【0071】
また、改質装置100は、改質部120に供給される水蒸気の温度を検知する水蒸気温度センサ162を備え、水蒸気温度センサ162の検知結果に応じて燃焼用空気の供給量を調節して、触媒層の温度を制御している。ここで、水蒸気の流路に水蒸気温度センサ162を取り付ける場合、触媒層温度を検知する温度センサを触媒層に取り付ける場合と比べて取付構造をより簡単にすることが可能である。また、水蒸気温度を計測する場合は、触媒層温度を直接計測する場合と比べて計測点数を少なくすることができる。そのため、本実施形態に係る改質装置100によれば、改質装置100の製造コストを低減することができ、その結果、燃料電池システム10の製造コストを低減することができる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る改質装置100では、CO変成部142の触媒層142aと改質用水との間で熱交換可能となっている。そして、触媒層142aの温度は、改質ガスとの間の熱交換に加えて、改質用水との間の熱交換によって制御可能である。そのため、本実施形態に係る改質装置100によれば、より精度の高い触媒層温度の制御が可能となる。また、触媒層142aの熱で改質用水を昇温させることができるため、装置全体の熱効率が向上する。
【0073】
(実施形態2)
実施形態2に係る燃料電池用改質装置は、燃焼用空気供給量および改質用水供給量の調節により、改質ガスと熱交換される改質用水の温度を制御する点が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る燃料電池用改質装置を含む燃料電池システムの構成は実施形態1と同一であり、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0074】
本実施形態の改質装置100は、燃焼用空気の供給量を調節することで、気化部150に到達する燃焼排ガスが有する熱量を調節し、気化部150における燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を調整する。また、それとともに改質装置100への改質用水の供給量を調節する。そして、これらの組み合わせにより過熱蒸気発生部160に送られる改質用水の温度を調節し、これにより、過熱蒸気発生部160において当該改質用水と熱交換される改質ガスの温度を調節する。その結果、当該改質ガスの持つ熱によって加熱される触媒層142aの温度を調節することができる。
【0075】
具体的には、例えば、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を増大させると、実施形態1で説明したように、気化部150において燃焼排ガスが改質用水に与える熱量は大きくなる。一方、改質用水の供給量を低減すると、気化部150で燃焼排ガスから熱を受け取る改質用水の量は少なくなる。したがって、気化部150を経て過熱蒸気発生部160に到達する改質用水の温度は高くなる。その結果、改質ガスと改質用水との温度差が小さくなって改質ガスと改質用水との間の熱交換量が減少し、改質ガスの温度が高い状態でCO変成部142に供給される。これにより、CO変成部142の触媒層142aの温度を上昇させることができる。
【0076】
一方、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を低減すると、実施形態1で説明したように、気化部150において燃焼排ガスが改質用水に与える熱量は小さくなる。一方、改質用水の供給量を増大させると、気化部150で燃焼排ガスから熱を受け取る改質用水の量は多くなる。したがって、気化部150を経て過熱蒸気発生部160に到達する改質用水の温度は低くなる。その結果、改質ガスと改質用水との温度差が大きくなって過熱蒸気発生部160における改質ガスと改質用水との間の熱交換量が増大し、改質ガスの温度が低い状態でCO変成部142に供給される。これにより、CO変成部142の触媒層142aの温度を低下させることができる。
【0077】
本実施形態では、燃焼用空気供給量の調節と改質用水供給量の調節とを組み合わせて改質ガスと熱交換される改質用水の温度を制御しているため、より高精度に触媒層の温度を調節することが可能である。
【0078】
制御装置180は、水蒸気温度センサ162で検知された水蒸気(改質用水)の温度と触媒層142aの温度とを対応付けた変換テーブルを記憶部に保存している。また、制御装置180は、好適水蒸気温度範囲情報を記憶部に保存している。そして、制御装置180は、水蒸気温度センサ162の検知結果から水蒸気となった改質用水の温度を取得し、得られた温度が好適水蒸気温度範囲に含まれるように燃焼用空気の供給量と改質用水の供給量を調節する。
【0079】
ここで、制御装置180は、燃焼部130への燃焼用空気の供給量を、空気比で規定している。そのため、制御装置180は、水蒸気温度を調節するために空気比の設定値を変更し、変更された空気比となるように燃焼用空気ブロア171の出力を段階的あるいは無段階に変化させて燃焼用空気の供給量を調節する。
【0080】
また、制御装置180は、改質装置100への改質用水の供給量をS/C(改質反応における原燃料中の炭素原子と理論水量とのモル比に対する炭素原子と実際の改質用水の供給量とのモル比の割合)で規定している。そのため、制御装置180は、水蒸気温度を調節するためにS/Cの設定値を変更し、変更されたS/Cとなるように改質用水ポンプ174の出力を段階的あるいは無段階に変化させて改質用水の供給量を調節する。
【0081】
プロパン(C)の改質反応を例にS/Cについて説明すると、プロパンの改質反応は以下の式(6)で示され、プロパンの改質反応ではプロパン1モルに対して理論上は3モルの水が必要である。
+3HO→7H+3CO (6)
これに対し、実際に供給した改質用水が例えば9モルであった場合には、S/C=9/3=3となる。
【0082】
通常、改質反応では、反応を確実に行うために理論水量よりも多い量の改質用水を供給している。また、改質反応を安定的に行うために、S/Cは所定の範囲内であることが好ましい。S/Cが所定範囲の下限値を下回ると改質反応時に改質触媒の表面に炭素が析出するコーキングが起こりやすく、所定範囲の上限値を上回ると改質反応にともなうエネルギー消費量が増大してしまう。そのため、制御装置180は、S/Cが所定範囲内に収まるように改質用水の供給量を調節する。制御装置180は、S/Cの上限値および下限値と、予め定められた初期値とを記憶部に記憶している。
【0083】
以下に、改質装置100の動作の制御フローを詳細に説明する。図3〜図5は、実施形態2に係る改質装置における燃焼用空気および改質用水の供給量制御の制御フローチャートである。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0084】
図3に示すように、まず空気比およびS/Cが初期値に設定され、各触媒層の温度が所定の温度以上となったことが検知されると、燃料電池システム10による発電が開始される(S201)。
【0085】
発電が開始されると、初期値のS/Cに対応する量の改質用水が供給され、水蒸気の温度が175℃を超えたか否か判断される(S202)。水蒸気の温度が175℃以下であった場合(S202_No)、発電開始後1時間を経過していないか否か判断される(S203)。発電開始後1時間を経過していない場合(S203_Yes)、繰り返し、水蒸気温度が175℃を超えたか否か判断される(S202)。水蒸気温度が175℃を超えた場合(S202_Yes)、あるいは、発電開始後1時間を経過した場合(S203_No)、本実施形態に係る燃焼用空気および改質用水の供給量制御が開始される(S204)。
【0086】
本実施形態の制御が開始されると、10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持された後(S205)、水蒸気の温度が175℃を超えたか否か判断され(S206)、水蒸気温度が175℃を超えている場合(S206_Yes)、さらに10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持される(S207)。水蒸気の温度が175℃以下であった場合(S206_No)、図4に示すように、S/Cが初期値以上であるか否か判断される(S301)。S/Cが初期値以上であった場合(S301_Yes)、S/Cの設定値が0.1だけ小さくされて、変更後のS/Cに対応する量の改質用水が供給される(S302)。そして、図3に戻って、10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持されて(S205)、水蒸気の温度が175℃を超えたか否か判断される(S206)。ここで、S/Cの初期値は、少なくとも下限値よりも0.1大きい値となるように設定されている。
【0087】
図4に示すように、S/Cが初期値未満であった場合(S301_No)、図3に戻って、空気比が1.6未満であるか否か判断される(S208)。空気比が1.6未満であった場合(S208_Yes)、空気比の設定値が0.05だけ大きくされて、変更後の空気比に対応する量の燃焼用空気が供給される(S209)。そして、10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持されて(S205)、水蒸気の温度が175℃を超えたか否か判断される(S206)。空気比が1.6以上であった場合(S208_No)、空気比は変更されずに10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持される(S207)。
【0088】
次いで、水蒸気の温度が225℃未満であるか否か判断され(S210)、水蒸気の温度が225℃未満であった場合(S210_Yes)、発電が終了したか否か判断される(S211)。水蒸気の温度が225℃以上であった場合(S210_No)、空気比が1.4を超えているか否か判断される(S212)。空気比が1.4を超えていた場合(S212_Yes)、空気比の設定値が0.05だけ小さくされて、変更後の空気比に対応する量の燃焼用空気が供給される(S213)。そして、10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持されて(S207)、水蒸気の温度が225℃未満となったか否か判断される(S210)。
【0089】
空気比が1.4以下であった場合(S212_No)、図5に示すように、S/Cが4.0未満であるか否か判断される(S401)。ここで、「4.0」という数値は、上述のS/Cの上限値である。S/Cが4.0未満であった場合(S401_Yes)、S/Cの設定値が0.1だけ大きくされて、変更後のS/Cに対応する量の改質用水が供給される(S402)。そして、図3に戻って、10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持されて(S207)、水蒸気の温度が225℃未満となったか判断される(S210)。図4に示すように、S/Cが4.0以上であった場合(S401_No)、S/Cは変更されずに、図3に戻って、10分間だけ燃焼用空気および改質用水の供給量が維持される(S207)。このように、燃焼用空気の供給量を改質用水の供給量よりも先に調節した場合には、改質部120における発生水素量の変化をともなう改質用水の供給量の調節を回避できる可能性が高まるため好ましい。
【0090】
発電が終了していない場合(S211_No)、ステップ205に戻って上述の制御が繰り返される。一方、発電が終了した場合(S211_Yes)、S/Cおよび空気比の値が初期化され(S214)、本フローが終了する。
【0091】
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係る改質装置100では、燃焼用空気供給量を調節することで燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を調節するとともに、改質用水供給量を調節することで過熱蒸気発生部160において改質ガスと熱交換される改質用水の温度を制御している。これにより、過熱蒸気発生部160において改質用水と熱交換される改質ガスの温度を調節することができ、その結果、CO低減部140の触媒層の温度を調節することができる。そのため、実施形態1の効果に加えて、より高精度に、かつ迅速に触媒層の温度を調節することが可能となる、という効果が得られる。
【0092】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0093】
例えば、上述の実施形態では、電解質膜として固体高分子電解質膜が用いられているが、電解質膜はこれに限られず、無機/有機複合高分子電解質膜を用いてもよい。また、改質部120、CO変成部142、およびCO除去部144に設けられた触媒は上述のものに限定されず、従来公知の他の触媒を用いてもよい。
【0094】
また、上述の各実施形態では、水蒸気温度センサ162によって過熱蒸気発生部160を通過した後の水蒸気の温度を検知し、これにより燃焼用空気および改質用水の供給量を調節しているが、特にこれに限定されない。例えば、改質部120の上流側における水蒸気と原燃料との混合ガスの温度を検知し、これにより燃焼用空気および改質用水の供給量を調節してもよい。あるいは、CO低減部140の上流側あるいは下流側の改質ガスの温度を検知し、これにより燃焼用空気および改質用水の供給量を調節してもよい。
【符号の説明】
【0095】
100 改質装置、 120 改質部、 130 燃焼部、 140 一酸化炭素低減部、CO低減部、 142 一酸化炭素変成部、CO変成部、 144 一酸化炭素除去部、CO除去部、 150 気化部、 160 過熱蒸気発生部、 162 水蒸気温度センサ、 180 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料と水蒸気とを反応させて水素ガスを主成分とする改質ガスを生成する改質部と、
原燃料または電池オフガスを燃焼用空気と混合して燃焼させ、前記改質部を加熱するための燃焼排ガスを生成する燃焼部と、
燃焼排ガスによって水蒸気の元となる改質用水を加熱する加熱部と、
前記加熱部を通過した改質用水と改質ガスとの間で熱交換する熱交換部と、
前記改質ガスに含まれる一酸化炭素の低減反応を促進可能な触媒を含む触媒層を有し、前記熱交換部で改質用水と熱交換した改質ガスが供給され、当該改質ガスとの熱交換によって前記触媒層の温度が調節される一酸化炭素低減部と、
燃焼用空気を前記燃焼部に供給する空気供給部と、
前記空気供給部を制御して前記燃焼部への燃焼用空気の供給量を調節する制御部と、
を備え、前記制御部は、前記加熱部より下流側の改質水または前記熱交換部よりも下流側の改質ガスの温度に基づいて燃焼用空気の供給量を調節することで、前記加熱部における燃焼排ガスによる改質用水の加熱量を制御することを特徴とする燃料電池用改質装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加熱部より下流側の改質水または前記熱交換部よりも下流側の改質ガスの温度が、所定の上限値以上であった場合には当該上限値を下回るように燃焼用空気の供給量を減らし、所定の下限値以下であった場合には当該下限値を上回るように燃焼用空気の供給量を増やすことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用改質装置。
【請求項3】
前記改質部に供給される水蒸気の温度を検知する温度検知部を備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果に応じて前記燃焼部への燃焼用空気の供給量を調節することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用改質装置。
【請求項4】
改質用水を燃料電池用改質装置に供給する改質用水供給部を備え、
前記制御部は、前記改質用水供給部を制御して燃料電池用改質装置への改質用水の供給量を調節可能であり、燃焼用空気および改質用水の供給量を調節することで改質ガスと熱交換される改質用水の温度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池用改質装置。
【請求項5】
前記触媒層と改質用水との間で熱交換可能な構成を有し、
前記触媒層は、前記一酸化炭素低減部に供給された改質ガスとの間の熱交換に加えて、改質用水との間の熱交換によってその温度が制御されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池用改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−257915(P2010−257915A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110058(P2009−110058)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(308013252)株式会社ENEOSセルテック (67)
【Fターム(参考)】