説明

燃料電池酸素極のための多層触媒

複数の混合原子価ナノクラスター金属もしくは金属酸化物の触媒層もしくは領域および/または複数の有機金属触媒層を含む担持触媒材料である。担持触媒材料は、層または別個の領域として配置される、2つ以上の組成が異なる混合原子価ナノクラスター金属または金属酸化物層または領域を含む。混合原子価領域または層は、2つ以上の酸化状態にある2つ以上の金属を含む。担持触媒材料はまた、2つ以上の組成が異なる有機金属領域または層を含む。この層または領域は、金属および/またはその金属が配位するリガンドの化学的同一性が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本願は、2003年6月9日に出願された「燃料電池酸素極のための触媒」という名称の米国特許出願第10/457,624号明細書の一部継続出願である。その開示はここに参考として組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に触媒に関し、詳しくは酸素還元触媒に関する。詳しくは、本発明は燃料電池の酸素極に使用される触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
汚染問題および石油依存に取り組むべく代替エネルギー形態を開発する必要性が増しており、燃料電池がクリーンで静かな主要電力源として注目を集めている。しかし、かかる燃料電池は、その製造に費やされる材料に関連するコストに起因して、多くの用途での使用が経済的に実現可能なものとはなっていない。
【0004】
競合する燃料電池技術がいくつか存在する。かかる技術には、アルカリ燃料電池、固体高分子型(proton exchange membrane(PEM))燃料電池等がある。それぞれの技術には他と比べて所定の利点があるが、アルカリ燃料電池は、高出力容量、高動作効率、および低製造コストの可能性を与える。
【0005】
アルカリ燃料電池では、電解液中に存在する水素イオンとヒドロキシルイオン(OH)との以下の反応が水素極において生じ、水および放出電子が形成される。
【化1】

【0006】
典型的には、酸素還元反応は2ステップの反応を介して生じ、それぞれのステップは2電子の移動を与える。純白金を使用するような他の場合には、酸素還元は1つのステップで4電子の移動を介して行われることが報告されている。しかし、ひとたび白金が不純物にさらされると、直接の4電子の移動は実現されない。
【0007】
以下の2ステップの還元プロセスの結果、ペルオキシルイオンが形成される。
【化2】

【0008】
最終反応は究極的にはヒドロキシルイオンの形成であるが、中間種の形成は非常に問題である。ペルオキシルイオンは非常に反応性が高いので、多くの材料を酸化し得る。電気化学反応が表面上で生じる多孔質酸素拡散電極においては、ペルオキシルイオンの形成が燃料電池の性能にとって有害となる。電極表面の細孔は、電解液がアクセス可能な限りにおいて酸素還元のためのサイトを与える。ひとたび酸素還元が生じると、反応中間生成物としてペルオキシドが細孔内に形成される。細孔はスルーホールの細孔ではないので、ペルオキシドはバルク中への拡散による以外には逃げることができない。バルク拡散はかなり遅いプロセスである。この時間の間に、ペルオキシドは、(1)テフロン(登録商標)化されたカーボンを酸化し、(2)細孔をふさいで表面積の損失をもたらし得るガス気泡を分解および形成し、および(3)活性触媒材料と反応してその特性を破壊し得る。かかる因子の3つすべてが、酸素極内の漸次的なフラッディングおよび性能損失を引き起こし得る。したがって、ペルオキシドの形成/反応は、分極の漸次的な増加および突然の性能損失として認めることができる。
【0009】
触媒作用は主に、活性サイトと称する所定の好ましい場所において生じる。一般には、かかる活性サイトは触媒作用の性能を向上させるべく変更可能であると教示されている。例えば、特許文献1に記載されるように、新たな触媒を作り出すべく変更できるいくつかの因子としては、触媒のタイプ、状態、サイズ、近接性、多孔率、トポロジーがある。特許文献1およびその子出願は、酸化物担体内に、50から70オングストロームのような小さなサイズの触媒粒子を2から300オングストローム以内のように相互にごくわずかに近接させて形成できることを実証する。かかる触媒は、NiMH電池産業に革命をもたらした。
【0010】
触媒は、担持されるかまたは非担持とするかのいずれかにできる。担持触媒はキャリアマトリクスに触媒を固定するものであるが、非担持触媒にはキャリアマトリクスがない。担持触媒の例には、耐火性酸化物、カーボン、または二酸化ケイ素のようなキャリアマトリクス上に担持された金属がある。非担持触媒の例には、、ラネーニッケル、スピネル、または、他の白金、金、パラジウム、銀等のような金属微粉末のようなスポンジ状金属触媒がある。現在は、特定用途に設計された数多くの担持触媒が存在する。かかる触媒の例のいくつかを以下に示す。
【0011】
廃水処理のために開発されている触媒がある。例えば、「燃料電池」という名称のHabermannらの特許文献2を参照のこと。Habermannらは、酸素または酸素含有化合物を含む廃水の酸化処理に使用される、活性化された炭素含有陽極と、活性化された炭素含有陰極とを有する燃料電池を開示する。当該特許には、キャリア担体としてグラファイトおよび活性炭素を使用することが記載されている。
【0012】
電解工場における陰極水素発生のために開発されている触媒がある。例えば、「陰極水素発生のための触媒」という名称のBenczur−Urmossyの特許文献3を参照のこと。Benczar−Urmossyは、ニッケル、コバルト、または鉄のX線アモルファスホウ化物を担持構造物に堆積させることを記載する。当該ホウ化物は、60°Cよりも低い温度で錯化剤および水溶性ホウ酸塩またはボラザンを含むニッケルイオン、コバルトイオン、または鉄イオンのような金属イオンを有する水溶液から堆積される。
【0013】
軽油の水素化分解に使用するために開発されている触媒がある。例えば、「狭い細孔サイズ分布を有する触媒を用いたマイルドな水素化分解」という名称のWardの特許文献4を参照のこと。これは、焼成酸化物担体上に担持された金属酸化物触媒を開示する。かかる触媒は、ガンマアルミナ含有材料をダイを通して押し出し、当該アルミナを乾燥し、および当該アルミナを細かく破砕して担体を形成することによって作られる。かかる担体はその後、リン酸に溶解された硝酸ニッケル六水和物およびヘプタモリブデン酸アンモニウムを含浸され、乾燥され、および、か焼される。
【0014】
電気化学発電の空気陰極に使用するために開発されている触媒がある。例えば、「燃料電池のための電気化学電極」という名称のYaoらの特許文献5を参照のこと。Yaoらは、カーボン、CoTMPP、およびテフロン(登録商標)の混合物が含浸された多孔質金属発泡基材を含む電気化学陰極を開示する。
【0015】
触媒を作るためのいくつかの技術も開発されている。こうした技術には、含浸すること、コーティングすること、または金属粉を担体に混ぜ込むことが含まれる。例えば、「担体またはキャリア材料への金属化合物の均一堆積方法」という名称のGeusの特許文献6を参照のこと。これは、キャリアマトリクス上に金属塩溶液を沈殿させることによって担持された触媒を作る方法を開示する。
【0016】
触媒を作る他の技術は、Ovshinskyらによって、1980年5月12日に出願された「触媒電解電極」という名称の特許文献7に教示される。これは、様々な堆積技術によってアモルファスの触媒体を作ることを記載する。
【0017】
触媒はまた、担体に有機金属触媒を堆積させた後に、比較的高温で加熱して有機材料を除去することによって作ることもできる。例えば、1990年12月25日に発行された「改良された酸素還元性能を示すガス拡散陰極、電気化学電池、および方法」という名称のHossainらの特許文献8を参照のこと。
【0018】
各触媒の設計はその究極的な最終用途に対する制限因子なので、新規で改良された触媒およびそれを作る方法が継続的に必要とされる。さらに、燃料電池が他の発電形態に対してコスト競争力を持つようになれば、かかる燃料電池に使用される高効率で低コストの触媒を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第5,536,591号明細書
【特許文献2】米国特許第4,670,360号明細書
【特許文献3】米国特許第3,926,844号明細書
【特許文献4】米国特許第4,686,030号明細書
【特許文献5】米国特許第6,368,751号明細書
【特許文献6】米国特許第4,113,658号明細書
【特許文献7】米国特許第4,544,473号明細書
【特許文献8】米国特許第4,980,037号明細書
【発明の概要】
【0020】
本発明は、特異な軌道相互作用および新たな化学的特性を作り出すOvshinskyの原子工学原理に基づいて原子的に改変された触媒を与えることにより、上記の欠点および/または他の欠点の1つ以上に対処する。触媒には、キャリアマトリクス上に担持された触媒活性材料が含まれる。触媒活性材料は、1つまたは複数の混合原子価ナノクラスター金属酸化物、1つの有機金属材料、またはこれらの組み合わせを含む。これらの触媒は、アルカリ燃料電池のような燃料電池の陰極における改良された酸素還元、分極、およびペルオキシド分解に対して特に有用である。
【0021】
本発明の一実施例において、キャリアマトリクスと、混合原子価ナノクラスター金属酸化物を含む触媒活性材料を含む担持された触媒とが与えられる。好ましくは、触媒活性材料は、キャリアマトリクスに実質的に均一に分散されてこれによって担持される。
【0022】
本発明の他の実施例において、キャリアマトリクスと、有機金属を含む触媒活性材料とを含む担持された触媒が与えられる。好ましくは、触媒活性材料は、キャリアマトリクスに実質的に均一に分散されてこれによって担持される。
【0023】
本発明の他の実施例において、キャリアマトリクスと、そのキャリアマトリクスに分散された触媒活性材料を含む担持された触媒が与えられる。触媒活性材料は、混合原子価ナノクラスター金属酸化物および有機金属を含む。好ましくは、触媒活性材料は、キャリアマトリクスに実質的に均一に分散されてこれによって担持される。
【0024】
本発明の他の実施例において、キャリアマトリクスと、混合原子価ナノクラスター金属酸化物の2つ以上の層または領域を含む触媒活性材料とを含む担持された触媒が与えられる。好ましくは、触媒活性層または領域は、キャリアマトリクスと当該構造の下側層および/または領域とに実質的に均一に分散してこれらによって担持される。混合原子価ナノクラスター金属酸化物層または領域は、別個の領域としてまたは一連の層として配置される。
【0025】
本発明の他の実施例において、キャリアマトリクスと、1つ以上の有機金属材料を含む2つ以上の触媒活性層または領域とを含む担持された触媒が与えられる。好ましくは、各触媒活性有機金属層または領域は、キャリアマトリクスと下側有機金属層および/または領域に実質的に均一に分散されてこれらによって担持される。有機金属層または領域は、1つ以上の金属とそれに配位される1つ以上のリガンドとを含む。リガンドは、大環状分子、二座配位子、三座配位子、または他の多座配位子である。有機金属層または領域は、別個の領域であるか、または一連の層として配置される。
【0026】
本発明の他の実施例において、キャリアマトリクスと、そのキャリアマトリクスに分散された触媒活性材料とを含む担持された触媒が与えられる。触媒活性材料は、一連の2つ以上の層または領域を含み、これらは各々、混合原子価ナノクラスター金属酸化物および/または有機金属を含む。好ましくは、各触媒活性材料は、キャリアマトリクスと下側の触媒層および/または領域とに実質的に均一に分散されてこれらによって担持される。この実施例では、担持された触媒材料はさらに、付加的な混合原子価ナノクラスター金属酸化物および/または有機金属層もしくは領域を含む。
【0027】
本発明の他の実施例において、キャリアマトリクスと、混合原子価ナノクラスター金属酸化物および有機金属を含む触媒活性材料とを含む担持された触媒が与えられる。混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、有機金属触媒上に担持される。または、有機金属が、混合原子価ナノクラスター金属酸化物上に担持されてもよい。好ましくは、触媒活性材料は、キャリアマトリクスに均一に分散されてこれによって担持される。
【0028】
本発明のさらに他の実施例においいて、複合触媒が与えられる。複合触媒は、第1キャリアマトリクス上の第1触媒活性材料と、第2キャリアマトリクス上の第2触媒活性材料とを含む。好ましくは、対応する触媒を有するキャリアマトリクスは共に混合またはブレンドされる。好ましくは、複合触媒は、第1炭素系キャリアマトリクスに実質的に均一に分散されてこれによって担持される混合原子価ナノクラスター金属酸化物と、第2炭素系キャリアマトリクスに実質的に均一に分散されてこれによって担持される有機金属とを含む。
【0029】
本発明のより完全な理解のために、以下の「図面の簡単な説明」および「好ましい実施例の詳細な説明」を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る触媒活性材料のSEMである。
【図2】本発明の一実施例に係る(Co2+,Co3+混合原子価ナノクラスター金属酸化物の制限視野電子回折パターンである。
【図3】本発明の一実施例に係る(Co2+,Co3+混合原子価ナノクラスター金属酸化物の結晶構造の3次元図である。
【図4】本発明の一実施例に係るキャリアマトリクス上に担持された混合原子価触媒材料のTEMである。
【図5】本発明の一実施例に係るキャリアマトリクス上に担持された混合原子価触媒材料のTEMである。
【図6】本発明の一実施例に係るキャリアマトリクス上に担持された混合原子価触媒材料のTEMである。
【図7】本発明の一実施例に係る酸素極の断面図である。
【図8】本発明の一実施例および他実施例に係る触媒の性能を比較するグラフである。
【図9】本発明の一実施例に係る触媒の性能を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明により、酸素還元に使用できる触媒がここに記載される。触媒は、キャリアマトリクス上に担持された触媒活性材料を含む。触媒活性材料は、1つまたは複数の混合原子価ナノクラスター金属酸化物、1つの有機金属材料、またはこれらの組み合わせを含む。触媒活性材料は、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下の堆積量で与えられるのが好ましいが、1重量%から5重量%までの堆積量で与えられるのがより好ましい。当該触媒は、燃料電池の酸素極における酸素還元速度を高めるのに特に有用である。当該触媒はまた、水素化反応、水素化分解反応、水素酸化反応、還元アルキル化反応、アンモノリシス反応、および電気化学反応の触媒としても有用である。
【0032】
上述のように、触媒活性材料は、混合原子価ナノクラスター金属酸化物を含む。混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、多段反応の速度を高めるべく広範囲の活性サイトを与えることができる。混合原子価酸化物は、1つよりも多い原子価状態の酸化物の任意の混合物である。原子価状態は、+1、+2、+3、+4、+5、および+6の酸化状態のうち1つよりも多くを含むのが好ましい。混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の異なる原子価状態のような複数の原子価状態を有する酸化物を含む。いずれの特定ナノクラスターの平均原子価も、0から+5の間、0から+1の間、+1から+2の間、+2から+3の間、+3から+4の間、および+4から+5の間である。好ましい混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、+1から+3までである。ナノクラスターは、高い酸化状態の金属原子よりも、低い酸化状態の金属原子を高濃度に含む。低い酸化状態の原子に対する高い酸化状態の原子の割合は、1:4から3:4まで、好ましくは1:3から2:3まで、より好ましくは1:2から2:3までの範囲である。高い原子価状態を有する金属原子よりも低い原子価状態を有する金属原子を高濃度にナノクラスターに与えることによって、多段反応メカニズムにおいてより好ましい反応速度が得られる。
【0033】
混合原子価ナノクラスター金属酸化物は多機能性である。多機能性触媒は、第1反応ステップを好む反応の速度を与える一成分と、第1反応ステップよりも第2反応ステップを好む反応の速度を与える他成分とを有する。多機能性触媒活性材料を与えることにより、多ステップを有する複合反応をより効率的に促進することができる。
【0034】
混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、多成分である。多成分ナノクラスター金属酸化物は、1つよりも多くの元素を有する。好ましい多成分ナノクラスター金属酸化物は、2つ以上、3つ以上、さらには4つ以上の元素を有する。好ましい元素は、ニッケル、コバルト、マンガン等のような遷移金属から選択される元素を含む。好ましい元素は、水素化触媒作用を与える元素を含む。多成分ナノクラスターは、複合反応に対して改良された触媒活性を与えることができる。また、単一元素の均一なクラスターよりも優れた性能の相乗的相互作用が可能となる。多元素は、多成分酸化物を形成する固溶体で与えられる。好ましい多成分酸化物は、ほぼ酸化コバルト、ほぼ酸化ニッケル、またはほぼ酸化マンガンの酸化物を含む。好ましい多成分酸化物は、コバルトマンガン酸化物、コバルトニッケル、ニッケルマンガン酸化物、コバルトマンガンニッケル酸化物を含む。多成分酸化物は、Ag、Au、Pt等のような貴金属を1つ以上含んでよい。しかし、貴金属の使用に係るコストおよびそれなしで得られる性能ゆえに、多成分酸化物は、好ましくは10重量%よりも少ない、より好ましくは2重量%よりも少ない、およびさらに好ましくは1重量%よりも少ない貴金属を含む。好ましい多成分金属酸化物は、本質的には貴金属を含まない。
【0035】
ナノクラスターは、0nmから1000nmまでのナノメートルサイズ範囲の小さな領域である。ナノクラスターは、好ましくは0.5−50nmのサイズであり、より好ましくは50から300Åのサイズである。ナノクラスターは、部分的に結晶性、多結晶性、微結晶性、ナノ結晶性、本質的にアモルファス性、アモルファス性であってよい。ナノクラスターは、それ自体が10−1000Åのサイズ範囲の高次酸化物である小さな結晶または粒子から形成してよい。ナノクラスターは凝集して、例えば0nmから1000nmの厚さのようなナノメートルスケールの厚さを有する連続的または実質的に連続的なコーティングを形成してもよい。ナノクラスターは、クラスター中央に向かって厚くまたは高密度となるように厚さまたは密度が変化する領域であってよい。厚さが変化する領域によって、ナノクラスターのトポロジーを、表面積および触媒活性が増加するように変更することができる。ナノクラスターは、配向が異なる小さな粒子を含んでよい。ナノクラスターに配向が異なる小さな粒子を与えることにより、粒子を積層させて粒界の数および有効性を高め、触媒活性を改良することができる。複数のナノクラスターはそれぞれが、10から100の結晶または粒子を含んでよい。粒子は、150Å以下、好ましくは100Å以下の直径を有してよいが、0から20Åの間が好ましい。小さな粒子サイズを有するナノクラスターにより、反応物質の活性サイトへのアクセス性が大きくなる。粒子は、スピネル結晶構造を有してよい。ナノクラスターは、サイズが100Å−500Åのような高次酸化物であってよい。高次酸化物は、高い触媒活性を与える金属特性を有し得るが、ゼロの酸化状態にあるわけではない。ナノクラスター、またはナノクラスターの凝集体は高密度を有するのが好ましい。高密度は、ナノクラスター、またはナノクラスターの凝集体を互いに近接させることによって得られる。ナノクラスターの高密度は、改良された触媒活性のための付加的な活性サイトを与える。ナノクラスターおよび/または凝集体の近接性は、1から100Åの間隔を含むのが好ましく、2から40Åがより好ましい。ナノクラスターの形状、サイズ、形態、近接性、密度、および究極活性は、形成方法によって制御できる。ナノクラスターが形成される方法を変えることにより、クラスターのサイズ、形状、密度、粒子積層、およびトポロジーを原子的に改変できる。
【0036】
混合原子価ナノクラスター触媒材料は、沈殿、電着、含浸、無電解めっき、スパッタリング等のような任意の適切な手段によってキャリアマトリクスに形成される。好ましくは、触媒材料は、80°Cより低い温度、または触媒材料もしくはキャリアマトリクスを変えずに触媒を形成するのに適切な温度での低温蒸着で形成される。ナノクラスターは、キャリアマトリクスに形成、吸収、固着、分散、静電気的に支持、または単に接触されてよい。キャリアマトリクスの方は、触媒活性材料を直接または間接に担持する。混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、無電解めっきを介してキャリアマトリクス上に形成されるのが好ましい。より好ましくは、金属錯体を形成してこの錯体を制御された態様で分解してナノクラスターを形成することを含む、制御された沈殿プロセスが使用される。触媒活性材料が形成される態様および速度を制御することによって、同じ化学組成を有する材料に対して異なる特性を与えることができる。
【0037】
制御された沈殿プロセスは、金属塩を溶液に溶解させて金属塩溶液を形成し、その金属塩溶液に錯化剤を混合して金属錯体を形成することによって与えてもよい。次に、金属錯体はキャリアマトリクスの懸濁液と組み合わされる。その錯体は、錯体の強度を低下させることによって制御された態様で分解され、キャリアマトリクスに酸化物を無電解めっきする。例えば、カーボンブラックのようなキャリアマトリクスが、例えばアセトンといった極性有機溶媒のような有機溶剤で濡らされて懸濁液を形成する。次に金属錯体は濡れたカーボンと組み合わされてアグレッシブに混合される。次に当該組み合わせに酸や塩基のような添加剤が加えられて金属錯体が分解され、触媒が当該カーボン上に形成される。触媒の形成は、超音波処理を使用する超音波浴において行われる。次に触媒は任意の過剰溶液から分離され、乾燥され、および/または所望の加熱処理がされる。
【0038】
制御された沈殿は、高速または低速で行われる。速い堆積速度が触媒活性材料をキャリアマトリクスに24時間以下で堆積させる一方、遅い堆積速度は触媒活性材料をキャリアマトリクスに24時間以上で堆積させる。ナノクラスターが形成される速度を変更することによって触媒の活性が変わり得ることがわかっている。堆積は低速で行われるのが好ましい。堆積速度は、温度、濃度、pH、存在する錯体の量等を変更するといったいくつかの方法で調整することができる。堆積速度はまた、金属錯体が弱まる速度を上げるかまたは下げることによっても制御できる。例えば、金属塩を過剰水酸化アンモニウムに添加し、次にその過剰アンモニウムイオンを減らすことによって錯体を調製することができる。さらに、ヘッドスペース中のアンモニウム濃度を調整することによって反応を制御することができる。ヘッドスペース中のアンモニウム量を上下させることにより、触媒の堆積速度および/または結晶サイズを制御することができる。
【0039】
触媒活性材料は、有機金属を含んでよい。有機金属は、コバルトテトラメトキシフェニルポルフィリン(CoTMPP)、マンガンテトラメトキシフェニルポルフィリン(MnTMPP)、またはコバルト/マンガンテトラメトキシフェニルポルフィリン(CoMnTMPP)のような1つ以上の遷移金属を含む大環状分子が好ましい。有機金属は、キャリアマトリクス上に原子的に積層される。有機金属を原子的に積層することにより、下側の材料を隔離せずに触媒活性のための活性サイトが得られる。原子的に積層することはまた、ナノクラスターまたは他の触媒活性材料の隣に有機金属を原子的に積層するというようにして、隣接材料に対する有機金属の近接性を調整して活性サイトの全体的な化学的性質を変更するために使用することもできる。
【0040】
有機金属は、キャリアマトリクス上に直接、または混合原子価ナノクラスター金属酸化物上のようなキャリアマトリクスに担持された材料上に、というようにして任意の適切な方法でキャリアマトリクスに形成してよい。有機金属は、まず有機金属材料の溶液を調製して次にその溶液をキャリアマトリクスと組み合わせることによって、キャリアマトリクスに形成してもよい。溶液は、有機溶媒を含むのが好ましい。好ましい溶媒は、アセトンのような極性有機溶媒であるが、有機金属の溶解度およびキャリアマトリクスに応じて他の有機溶媒が代用されてもよい。
【0041】
有機金属触媒を作る方法の好ましい実施例は、キャリアマトリクスの懸濁液を作り、その懸濁液に有機金属の溶液を添加することを含む。その結果得られる懸濁液は、少なくとも24時間のような相当の時間攪拌されるのが好ましい。次に触媒が(例えばデカンテーションまたはフィルタリングされて)任意の過剰溶液から分離され、乾燥され、および/または所望の加熱処理がされる。加熱処理を使用して、有機担持構造を変更することができる。加熱処理を使用して、有機金属の有機部分を除去することによって触媒活性材料を変更してもよい。加熱処理は、触媒活性材料の所望の原子価状態および残留周囲有機構造に応じて、不活性ガスまたは還元雰囲気中で触媒を加熱することによって行われてよい。
【0042】
キャリアマトリクスは、究極的な最終用途の反応媒体に基づく任意の適切な担持材料であってよい。キャリアマトリクスは、炭素系であることが好ましい。炭素系キャリアマトリクスは、分子酸素の原子酸素への解離を促す能力があるので、燃料電池酸素極において触媒活性材料を担持するのに特に有用である。好ましくは、キャリアマトリクスは、凝集されたフィラメント状炭素系材料である。キャリアマトリクスは、20μm以下の直径を有する複数のストランドを含んでよい。好ましくは、キャリアマトリクスは、低密度および/または高表面積を有する。キャリアマトリクスは、綿毛状炭素のような、境界が明確でない縞状直線構造であってよい。または、1つ以上の方向に層をなしてよい。キャリアマトリクスは、質量中心に向かって埋め込まれた稠密なマトリクスを有するキャリア領域の中央に入り込む垂直範囲を有する不明確な周縁と絡み合ってよい。キャリアマトリクスは併せて/その代わりに、明確な上下波状パターンを有してよい。明確な周縁に対して均一、拡散、またはうっすらとした束(wispy)であってもよい。分散したカーボンマトリクスを有することによって、触媒活性材料の十分な担持およびアクセス性を維持しつつ拡大した表面積を与えることができる。
【0043】
本発明の好ましい実施例において、触媒は、キャリアマトリクスに分散されて担持される混合原子価ナノクラスター金属酸化物と、その混合原子価ナノクラスター金属酸化物にわたって分散された有機金属材料とを含む。ナノクラスターにわたって分散された有機金属を有する触媒は、キャリアマトリクスにナノクラスターを堆積させてから、上記手順の1つ以上を用いてそのナノクラスターに有機金属を与えることによって作られる。同じキャリアマトリクスに、互いに近接する2つ以上の異なる触媒活性材料を使用することによって、新たな異なる化学的性質を達成することができる。
【0044】
本発明の好ましい他の実施例において、触媒は、キャリアマトリクスに分散されて担持される有機金属材料と、その有機金属材料にわたって分散された混合原子価ナノクラスター金属酸化物とを含む。有機金属にわたって分散されたナノクラスターを有する触媒は、キャリアマトリクスにわたって有機金属材料を分散させてから、上記手順の1つ以上を用いてその有機金属材料にわたってナノクラスターを与えることによって作られる。同じキャリアマトリクスに、互いに近接する2つ以上の異なる触媒活性材料を使用することによって、新たな異なる化学的性質を達成することができる。
【0045】
本発明の好ましい他の実施例において、触媒材料は、キャリアマトリクスに分散されて担持される第1混合原子価ナノクラスター触媒と、第1混合原子価ナノクラスター触媒にわたって実質的に分散される第2混合原子価ナノクラスター触媒とを含む。好ましい実施例において、第1および第2混合原子価ナノクラスター触媒は組成が異なる。例えば、第1ナノクラスター触媒がキャリアマトリクス状の層または領域として形成され、引き続いて第2ナノクラスター触媒がその上に形成される。第1ナノクラスター触媒は、第2ナノクラスター触媒とキャリアマトリクスとの間に挿入されてもよい。他の実施例では、第1および第2ナノクラスター触媒領域は、キャリアマトリクスの異なる部分に間隔をあけて置き、互いに積層されたまたはされない別個の領域として配列してよい。
【0046】
第1混合原子価ナノクラスター触媒層または領域は、沈殿プロセスまたは他の上述の方法によってキャリアマトリクス状に形成してよい。その後の沈殿プロセスまたは上述の他の方法を完了して、第1混合原子価ナノクラスター触媒の部分または全体に第2混合原子価ナノクラスター触媒層または領域を堆積または形成してもよい。手順を繰り返して、基材またはキャリアマトリクス上に担持された一連の3つ以上のナノクラスター層または領域を含む触媒材料を作ることができる。この実施例において、異なるナノクラスター触媒領域または層は、1つ以上の酸化状態にあって組成が異なる1つ以上の材料を含んでよい。ここで、異なる金属および/または酸化状態は、異なる層または領域に存在してよい。各層は、1つ以上の酸化状態の1つの金属または複数の金属を含んでよい。一実施例において、ナノクラスター触媒は、混合原子価金属酸化物の形態の金属を含む。例えば、異なるナノクラスター層が、異なる反応プロセスの触媒となって多機能触媒材料を与えてもよい。
【0047】
本発明の好ましい他の実施例において、触媒材料は、キャリアマトリクスに分散して担持される第1有機金属と、実質的に第1有機金属にわたって分散された第2有機金属とを含む。好ましい実施例において、第1および第2有機金属は組成が異なる。例えば、第1有機金属はキャリアマトリクス状の層または領域として形成され、引き続き第2有機金属がその上に形成されてよい。上述のように、第1有機金属層または領域は、有機金属を含む溶液と、キャリアマトリクスを含む懸濁液とを組み合わせることによって形成されてよい。そして、第2有機金属が、第2有機金属を含む溶液を使用するプロセスを引き続き適用して形成されてよい。手順が繰り返されて、基材またはキャリアマトリクス上に担持される一連の3つ以上の有機金属層または領域触媒材料を作ることができる。この実施例において、異なる有機金属領域または層が、1つ以上の酸化状態にある1つ以上の金属を含んでよい。ここで、異なる層または領域に、組成的に異なる金属および/または酸化状態が存在してよい。有機金属は一般に、大環状またはキレートのリガンド内に含まれるかまたはそれに配位する1つ以上の金属を含む。大環状リガンドは、配位された金属を取り囲む環状配位領域または内部キャビティを含む。大環状リガンドの例には、ポルフィリン類、クリプタンド類、およびスフェランド類が含まれる。キレートリガンドは、1つ以上の金属とキレート錯体を形成する二座配位子、三座配位子、および高次多座配位子を含む。実施例には、キレートアミン類(例えば、エチレンジアミン、エチレントリアミン、EDTA等)および酸化物(例えばアセトナート類)が含まれる。例えば、異なる有機金属層または領域が、異なる反応プロセスの触媒となって多機能触媒材料を与えてもよい。
【0048】
本発明の好ましい他の実施例において、触媒材料は、1つ以上の混合原子価ナノクラスター触媒の層または領域と、キャリアマトリクスによって担持される1つ以上の有機金属との組み合わせを含む。例えば、ナノクラスター触媒は、沈殿プロセスまたはキャリアマトリクスに関する上述の他の方法によってキャリアマトリクス状に層または領域として形成される。ひとたび形成されると、有機金属を含む溶液と組み合わされて、混合原子価ナノクラスター触媒層または領域上に有機金属層または領域を形成する。有機金属または混合原子価ナノクラスター触媒を含む一連の3つ以上の組成が異なる領域または層を有する触媒を与えるべく、他の混合原子価ナノクラスター触媒および/または他の有機金属の層または領域の後続層または領域が形成されてもよい。例えば、新規な触媒材料を与えるべく、有機金属と混合原子価ナノクラスター層または領域とが交互に連続して形成されてもよい。有機金属を含む2つ以上の層の間に散在または挿入された混合原子価ナノクラスター触媒を含む2つ以上の層を含む連続もまた本発明の範囲内にある。
【0049】
本発明の他の実施例において、触媒材料は、キャリアマトリクス上に担持された有機金属層または領域を含む。ここで、有機金属層または領域は、2つ以上の有機金属を含む。この実施例に係る触媒は、上述のように、2つ以上の有機金属を溶液に含ませて、その溶液をキャリアマトリクスまたはその懸濁液と組み合わせることによって調製される。有機金属は、組成が異なる金属および/またはリガンドもしくは大環状分子を含んでよい。
【0050】
本発明の好ましい他の実施例において、第1キャリアマトリクスに分散して担持される混合原子価ナノクラスター金属酸化物を含む触媒材料と、他のキャリアマトリクスにわたって実質的に均一に分散して担持される有機金属材料との複合混合物が与えられる。複合触媒は、上述のように混合原子価ナノクラスター金属酸化物触媒を作り、上述のように有機金属触媒を作り、その2つをブレンドすることによって作ってよい。複合触媒は、改良された触媒活性を複合反応に対して与えることができる。
【0051】
上述の触媒は、酸素極に使用してもよい。酸素極は、電流コレクタによって担持されたカーボンマトリクスを含んでよい。カーボンマトリクスは、1)酸素極の電解液接触側まで酸素が移動する経路を有する多孔質マトリクスを与えること、および2)分子酸素の原子酸素への解離を高めることができる。電流コレクタは、電流が移動する導電経路を与える。電流コレクタは、酸素極全体にわたって延びるのが好ましい。電流コレクタは、触媒活性材料と電気的に接続することが好ましく、それと直接接触してもよい。電流コレクタは、導電性のメッシュ、グリッド、発泡体、エキスパンドメタル、またはこれらの組み合わせを含んでよい。例えば、好ましい電流コレクタは、水平方向に1インチ(2.54センチメートル)当たり約40ワイヤ、垂直方向に1インチ当たり約20ワイヤを有する導電性メッシュを含む。メッシュをなすワイヤは、0.005インチ(0.127ミリメートル)から0.01インチ(0.254ミリメートル)までの間、好ましくは0.005インチから0.008インチ(0.203ミリメートル)までの間の直径を有してよい。この設計により、オーム抵抗を低減できるので電流分散を高めることができる。
【0052】
酸素極は、従来の酸素極と同じ方法で形成されてよい。ここで、上述の活性金属材料が従来の触媒の少なくとも一部と置換される。この場合、上述の1つ以上の触媒は、従来の電極の多孔質カーボン材料内に形成される。
【0053】
ここで図7を参照すると、本発明の好ましい実施例に係る燃料電池酸素極は10として示される。そこに示されるように、電極10は積層構造を有する。積層構造により、酸素極内での酸素解離と、フラッディングへの耐性とが促進される。酸素極10は、ガス拡散層11、活性材料層12、および少なくとも1つの電流コレクタ13を含む。活性材料層は触媒を含む。ガス拡散層および活性材料層は互いに近接して配置され、電流コレクタ13は活性材料層と接触して配置される。その代わりに、電流コレクタは、ガス拡散層11および活性材料層12の外側に配置されてサンドイッチ構造を形成してよい。燃料電池内で使用されると、活性材料層12は電解液溶液と接触して配置されるが、ガス拡散層11は空気または酸素流と接触して配置される。
【0054】
酸素極は、疎水性成分を有するのが好ましい。疎水性成分は、酸素極の電解液側または湿った側と、酸素極のガス側または乾いた側とを隔離するための障壁を与える。疎水性成分には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような、ハロゲン化有機高分子化合物が含まれる。疎水性成分は、障壁を与えるべくガス拡散層11内のカーボン粒子と組み合わせられてよい。障壁はまた、PTFEコーティングカーボン粒子のような高分子化合物でコーティングされたカーボン粒子で形成されてよい。カーボン粒子は、Vulcan XC−72カーボン(Cabot社の商標)、アセチレンブラック等のようなカーボンブラックでよい。ガス拡散層は、約30−60重量パーセントのポリマーと、カーボン粒子からなる残りとを含んでよい。
【0055】
活性材料層12は、電流コレクタによって担持され、上述のコーティングされたカーボン粒子と触媒活性材料とからなってもよい。コーティングされたカーボン粒子は、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされるのが好ましい。これは、約0−20重量%よりも多くのポリテトラフルオロエチレンを含むのが好ましい。触媒活性材料は、コーティングされたカーボン粒子とブレンドされて、コーティングされたカーボン粒子上に堆積または電極に直接堆積されて活性触媒材料の層を活性材料層の表面に形成してよい。この積層の厚さは、選択された材料の活性、および最終用途(すなわち燃料電池のような)の要求に応じて、任意の場所で30オングストローム以下から2ミクロン以上でよい。
【実施例1】
【0056】
例1.カーボン上に堆積された5重量%CoOx(○)
I.超音波攪拌下において250ccのNHOH(アンモニア)が25gのカーボンに添加された。
II.3.75gのCoSOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.最終材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【0057】
手順により、担持された混合原子価ナノクラスターCo酸化物触媒が生成された。上記例1によって生成された触媒はSEM試験にかけられた。その結果を図1に示す。材料はまた、結晶構造を決定するべくX線解析にかけられた。図2は、制限視野電子回折パターンを示す。図3は、混合原子価金属酸化物の結晶構造モデルを示す。試料はTEM解析にかけられた。その画像を図4、5、6に様々な倍率で示す。
【実施例2】
【0058】
例2.カーボン上に堆積された5重量%MnOx(■)
I.超音波攪拌下において250ccのNHOH(アンモニア)が25gのカーボンに添加された。
II.2.49gのMnSOxHOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【0059】
手順により、担持された5重量%の混合原子価ナノクラスターMn酸化物触媒が生成された。
【0060】
上記担持された触媒は、発電アルカリ燃料電池で使用する酸素極の中に形成され、図8に示すように電流密度(mA/cm)対電位(V)が比較実験で対比された。図示のように、貴金属または白金の触媒なしで形成されているにもかかわらず電極の性能は良好であった。
【実施例3】
【0061】
例3.カーボン上に堆積された10重量%MnOx(▲)
I.超音波攪拌下において250ccのNHOH(アンモニア)が25gのカーボンに添加された。
II.5.28gのMnSOxHOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【実施例4】
【0062】
例4.カーボン上に堆積された5重量%MnOx+5重量%CoOx(◆)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのカーボンに添加された。
II.6.3gのMnSOxHO+10.2gのCoSOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【実施例5】
【0063】
例5.カーボン上に堆積された2.5重量%MnOx+7.5重量%CoOx(●)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOHが60gのカーボンに添加された。
II.3.15gのMnSOxHO+15.46gのCoSOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【実施例6】
【0064】
例6.カーボン上に堆積された7.5重量%MnOx+2.5重量%CoOx(■)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのカーボンに添加された。
II.9.5gのMnSOxHO+5.13gのCoSOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【0065】
上記担持された触媒は、発電アルカリ燃料電池で使用する酸素極の中に形成され、図8にプロットされるように電流密度(mA/cm)対電位(V)が比較実験で対比された。図示のように、貴金属または白金の触媒なしで形成されているにもかかわらず電極の性能は良好であった。
【実施例7】
【0066】
例7.カーボン上の20重量%Co−TMPP(プロットしない)
I.超音波攪拌下において300ccのNHOH(アンモニア)が20gのカーボンに添加された。
II.5gのCo−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
III.超音波攪拌下において数時間にわたりIIがIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、乾燥された。
【実施例8】
【0067】
例8.カーボン上に堆積された15重量%CoOx+5重量%MnOx(プロットせず)
I.超音波攪拌下において400ccのNHOH(アンモニア)が30gのカーボンに添加された。
II.3.56gのMnSOxHO+17.39gのCoSOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【0068】
触媒の多機能活性を向上させるべく、例9からの材料は、例7および8により生成された材料から生成された。
【実施例9】
【0069】
例9.20重量%Co−TMPP/15重量%CoOx+5重量%のMnOxの50/50ブレンド(□)
カーボン上の5.0gの20重量%Co−TMPPを、カーボン上の5.0gの15重量%CoOx+5重量%MnOxとブレンドすることにより電極が調製された。
【実施例10】
【0070】
例10.カーボン上に堆積された2.5重量%MnOx+7.5重量%CoOx(◆)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOHが60gのカーボンに添加された。
II.3.15gのMnSOxHO+15.46gのCoSOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【0071】
例9および10の上記担持された触媒は、発電アルカリ燃料電池で使用する酸素極の中に形成され、図9にプロットされるように電流密度(mA/cm)対電位(V)が比較実験で対比された。図示のように、貴金属または白金の触媒なしで形成されているにもかかわらず電極の性能は良好であり、触媒の多機能性が向上したときさらに良好であった。
【実施例11】
【0072】
例11.カーボン上の10重量%Co−TMPPおよび10重量%Mn−TMPP(プロットせず)
I.超音波攪拌下において300ccのNHOH(アンモニア)が20gのカーボンに添加された。
II.5gのCo−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
III.5gのMn−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
IV.IIがIIIに添加された。
V.超音波攪拌下において数時間にわたりIVがIに添加された。
VI.得られた材料が濾過された後、乾燥された。
【実施例12】
【0073】
例12.カーボン上の10重量%Co−TMPPおよび10重量%Mn−TMPP(プロットせず)
I.超音波攪拌下において300ccのNHOH(アンモニア)が20gのカーボンに添加された。
II.5gのCo−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
III.超音波攪拌下において数時間にわたりIIがIに添加された。
IV.得られた材料が濾過された後、乾燥された。
V.超音波攪拌下において300ccのNHOH(アンモニア)が20gのIVに添加された。
VI.5gのMn−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
VII.超音波攪拌下において数時間にわたりVIがVに添加された。
VIII.得られた材料が濾過された後、乾燥された。
【実施例13】
【0074】
例13.カーボン上に堆積された5重量%MnOx+5重量%CoOx(プロットせず)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのカーボンに添加された。
II.6.3gのMnSOxHOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
VII.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのカーボンに添加された。
VIII.10.2gのCoSOが100mlの水に溶解された。
IX.VIIが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてVIIIがVIIに添加された。
X.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIXに添加された。
XI.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
XII.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【実施例14】
【0075】
例14.カーボン上に堆積された5重量%MnOx+20重量%Co−TMPP(プロットせず)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのカーボンに添加された。
II.6.3gのMnSOxHOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
VII.超音波攪拌下において300ccのNHOH(アンモニア)が20gのVIに添加された。
VIII.5gのCo−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
IX.超音波攪拌下において数時間にわたりVIIIがVIIに添加された。
X.得られた材料が濾過された後、乾燥された。
【実施例15】
【0076】
例15.カーボン上に堆積された5重量%CoOx+5重量%MnOx+20重量%Co−TMPP(プロットせず)
I.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのカーボンに添加された。
II.6.3gのMnSOxHOが100mlの水に溶解された。
III.カーボンが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてIIがIに添加された。
IV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がIIIに添加された。
V.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
VI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
VII.超音波攪拌下において300ccのNHOH(アンモニア)が20gのVIに添加された。
VIII.5gのCo−TMPPが300ccのアセトンと組み合わせられた。
IX.超音波攪拌下において数時間にわたりVIIIがVIIに添加された。
X.得られた材料が濾過された後、乾燥された。
XI.超音波攪拌下において600ccのNHOH(アンモニア)が60gのXに添加された。
XII.10.2gのCoSOが100mlの水に溶解された。
XIII.Xが完全に濡れたときに、超音波攪拌下においてXIIがXIに添加された。
XIV.超音波攪拌下において数時間にわたり希NaOH溶液がXIIIに添加された。
XV.得られた材料が濾過された後、水で洗浄された。
XVI.洗浄された材料が〜80°Cで一晩乾燥された。
【0077】
本発明が図面および上述の記載において詳細に説明されたが、これは説明として考慮されるべきであり、特徴を限定するものではない。おわかりのように、これらの触媒は、他のタイプの用途においても上述の用途のように有用である。さらに、おわかりのように、好ましい実施例のみが示され詳細に記載されており、本発明の要旨におさまる変更および修正はすべて保護されることが望まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアマトリクスと、
前記キャリアマトリクスに担持される活性触媒材料と
を含む担持触媒材料であって、
前記活性触媒材料は、
第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域と、
第2混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域と
を備え、
前記第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域と第2混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域とは組成が異なる担持触媒材料。
【請求項2】
前記第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、2つ以上の組成が異なる金属を含む、請求項1に記載の担持触媒材料。
【請求項3】
前記第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、3つ以上の酸化状態を有する複数の金属を含む、請求項2に記載の担持触媒材料。
【請求項4】
前記第2混合原子価ナノクラスター金属酸化物は、3つ以上の酸化状態を有する複数の金属を含む、請求項3に記載の担持触媒材料。
【請求項5】
前記第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域は、前記キャリアマトリクスにわたって層を形成し、前記第2混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域は、前記第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域にわたって層を形成する、請求項1に記載の担持触媒材料。
【請求項6】
前記第1混合原子価ナノクラスター酸化物領域はコバルトを含む、請求項1に記載の担持触媒材料。
【請求項7】
前記第1混合原子価ナノクラスター酸化物領域はマンガンをさらに含む、請求項6に記載の担持触媒材料。
【請求項8】
前記第2混合原子価ナノクラスター酸化物領域はマンガンを含む、請求項6に記載の担持触媒材料。
【請求項9】
前記キャリアマトリクスに担持される有機金属領域をさらに含む、請求項1に記載の担持触媒材料。
【請求項10】
前記有機金属領域は、前記第1混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域と前記第2混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域との間に挿入される、請求項9に記載の担持触媒材料。
【請求項11】
キャリアマトリクスと、
前記キャリアマトリクスに担持される活性触媒材料と
を含む担持触媒材料であって、
前記活性触媒材料は、第1有機金属領域と第2有機金属領域とを備え、
前記第1有機金属領域は第1リガンドに配位する第1金属を含み、前記第2有機金属領域は第2リガンドに配位する第2金属を含み、前記第1有機金属領域と第2有機金属領域とは組成が異なる担持触媒材料。
【請求項12】
前記第1金属と第2金属とは組成が異なる、請求項11に記載の担持触媒材料。
【請求項13】
前記第1有機金属領域は前記キャリアマトリクスにわたって層を形成し、前記第2有機金属領域は前記第1有機金属領域にわたって層を形成する、請求項11に記載の担持触媒材料。
【請求項14】
前記第1金属はコバルトである、請求項11に記載の担持触媒材料。
【請求項15】
前記第2金属はマンガンである、請求項14に記載の担持触媒材料。
【請求項16】
前記第1リガンドは大環状分子である、請求項11に記載の担持触媒材料。
【請求項17】
前記第2リガンドは大環状分子である、請求項16に記載の担持触媒材料。
【請求項18】
前記第1リガンドは二座配位子または三座配位子である、請求項11に記載の担持触媒材料。
【請求項19】
前記キャリアマトリクス上に担持される混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域をさらに含む、請求項11に記載の担持触媒材料。
【請求項20】
前記混合原子価ナノクラスター金属酸化物領域は、前記第1有機金属領域と前記第2有機金属領域との間に挿入される、請求項19に記載の担持触媒材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−514542(P2010−514542A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519517(P2009−519517)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/015840
【国際公開番号】WO2008/008405
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(599163621)オヴォニック バッテリー カンパニー インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】