説明

燃焼炉の急冷室構造

【課題】燃焼ガスを、急冷室で冷却した後に多量の飛沫を同伴させることなく、下流側に接続される諸設備に送り出すことのできる燃焼炉の急冷室構造を提供する。
【解決手段】可燃物を燃焼させる燃焼室13と、冷却水14が貯留される急冷室12とを含む高温ガス化炉(燃焼炉)11における、下降管15と上昇管16とが二重構造となるように配置された急冷室12の構造において、上昇管16の上端開口16aよりも上方に配置されて、下降管15の外周面から外側に張り出す冷却水14の飛沫遮断板17が取り付けられており、この飛沫遮断板17は、上方から視て下降管15と上昇管16との間の間隔sを覆う長さで外側に張り出した状態で、下降管15の全周に亘って設けられている。飛沫遮断板17には、これより上方の下降管15の外周面に沿って冷却水14の飛沫wの一部を上昇させる貫通切欠き穴(開口部)18a,18bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉の急冷室構造に関し、特に、可燃性気体を燃焼させる燃焼室と、冷却水が貯留される急冷室とを含む燃焼炉の急冷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミ、下水汚泥、廃プラスチック、バイオマス廃棄物、シュレッダダスト、廃油等に代表される可燃性廃棄物は、未処理のまま埋め立て処分されたり、焼却処理によって減容化と無害化がなされた後に最終処分場で処理されるのが一般的であった。近年、これらの可燃性廃棄物をガス化燃焼し、可燃性廃棄物中に含まれる金属や灰分をリサイクル利用可能な状態で排出するとともに、回収されるガスから得られる水素や一酸化炭素等を、例えばアンモニア合成用の原料として有効利用できるようにする技術が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
これらの可燃性廃棄物をガス化燃焼によって資源化する技術では、可燃性気体を燃焼させる燃焼室と、冷却水が貯留される急冷室とを含む燃焼炉として例えば高温ガス化炉が使用される。例えば、流動層ガス化炉やミキシング装置から送られてくる不燃性物質粒子と可燃性炭素質粒子とを浮遊状態で含有する可燃性気体を、旋回させながら高温ガス化炉の燃焼室の内部で部分燃焼させ、これによって生成される例えば1200〜1600℃程度のガスとスラグとを、急冷室において例えば150〜250℃程度に冷却して、生成ガスやスラグ粒子として取り出すようになっている。
【0004】
ここで、高温ガス化炉等の燃焼炉の急冷室は、当該燃焼炉の外周部分を形成する本体シェルの内部に冷却水が貯留されるようになっていると共に、貯留された冷却水に下部を没した状態で、上方の燃焼室と連通する下降管が中央部分に垂下されており、且つ下降管の外側にこれと同心状に配置されて、上昇管が、上部を除いて冷却水に没した状態で、下降管と間隔をおいて設けられている(図1参照)。そして、燃焼室から下降管を介して加圧状態でスラグと共に送られてくるガスは、下降管の下部で冷却水の内部に吹き込まれた後に、下降管の下端開口から外側に吹き出され、下降管と上昇管との間の間隔部分を介して上昇する間に冷却水によって冷却される。冷却された水素や一酸化炭素等のガスは、例えば急冷室の上部に設けられたガス流出口から、例えば高温ガス化炉の下流側に接続されたガス洗浄塔等の諸設備に送られて、例えばアンモニア合成用の原料として資源化されることになる。また、ガスと共に冷却水によって冷却されたスラグは、例えば急冷室の下部に設けられたスラグ排出口から排出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−308894号公報
【特許文献2】特開平10−236801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の燃焼炉では、下降管を介して急冷室の冷却水に吹き込まれたガスは、下降管の下端開口から吹き出された後、下降管と上昇管との間の間隔部分における冷却水の中で急速に上昇して、冷却水の表面から勢い良く上方に噴出することになるので、冷却する際の条件等によっては、噴出する冷却後のガスに、冷却水による多量の飛沫が同伴し易くなる。また、冷却後のガスが、冷却水の飛沫を多量に同伴したままガス流出口から下流側の設備に送られると、例えばガス洗浄塔における圧力変動を安定化させることが困難になったり、急冷室に貯留された冷却水の液面とガス洗浄塔の液面との液面制御が困難になる等、種々の不具合を生じる場合がある。
【0007】
本発明は、燃焼炉で生成されたガスを、急冷室で冷却した後に多量の飛沫を同伴させることなく、燃焼炉の下流側に接続される諸設備に送り出すことのできる燃焼炉の急冷室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可燃物を燃焼させる燃焼室と、該燃焼室の下部にあり冷却水を貯留するための急冷室と、前記燃焼室と前記急冷室とを連通し、燃焼ガスを前記燃焼室から前記急冷室に送るための下降管と、前記急冷室を上方から視て前記急冷室の内壁と前記下降管との間の間隔部分に配置され、前記急冷室内で燃焼ガスの流れ方向を変える上昇管とを含む燃焼炉における、前記下降管と前記上昇管とが二重構造となるように配置された前記急冷室の構造において、前記上昇管の上端開口よりも上方に配置されて、前記下降管の外周面から外側に張り出す冷却水の飛沫遮断板が取り付けられており、該飛沫遮断板は、上方から視て前記下降管と前記上昇管との間の間隔を覆う長さで外側に張り出した状態で設けられている燃焼炉の急冷室構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の燃焼炉の急冷室構造は、前記飛沫遮断板には、当該飛沫遮断板よりも上方の前記下降管の外周面に沿って冷却水の飛沫の一部を上昇させる開口部が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の燃焼炉の急冷室構造は、前記開口部が、前記下降管の周方向に間隔をおいて複数設けられていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の燃焼炉の急冷室構造は、前記開口部が、前記飛沫遮断板における前記下降管の外周面への接合基端部分に近接して設けられていることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の燃焼炉の急冷室構造は、前記飛沫遮断板が、前記下降管の外周面への接合基端部分から水平方向に張り出すと共に、その張出し先端部分が下方に折れ曲がって傾斜する、略くの字断面形状を備えていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の燃焼炉の急冷室構造は、前記急冷室における前記下降管の上部外周面へ補助冷却水を散水するスプレー手段が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃焼炉の急冷室構造によれば、高温ガス化炉で生成されたガスを、急冷室で冷却した後に多量の飛沫を同伴させることなく、下流側に接続される諸設備に送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る急冷室構造を採用した燃焼炉(高温ガス化炉)を備える二段ガス化装置の略示断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る急冷室構造の構成を説明する略示断面図である。
【図3】飛沫遮断板の下降管への取付け状態を説明する図2のA−Aに沿った上面図である。
【図4】飛沫遮断板の下降管への取付け状態を説明する部分拡大上面図である。
【図5】飛沫遮断板の下降管への取付け状態を説明する図3のB−Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る燃焼炉の急冷室構造10は、例えば図1に示すような、燃焼炉として例えば高温ガス化炉11と、低温ガス化炉41とを備える二段ガス化装置40における、高温ガス化炉11を構成する急冷室12の構造として採用されたものである。
【0017】
ここで、二段ガス化装置40は、可燃物として石炭、石油、石油コークス等の化石燃料や、都市ゴミ、下水汚泥、廃プラスチック、バイオマス廃棄物、シュレッダダスト、廃油等の可燃性廃棄物を燃焼処理すると共に、燃焼によって得られるガスや金属や灰分を、リサイクル利用可能な状態で排出して資源化できるようにするものであり、二段ガス化装置40の低温ガス化炉41は、例えば流動層ガス化炉からなっている。また低温ガス化炉41は、流動化ガスによって流動化した流動層42の内部で化石燃料や前記可燃性廃棄物等の可燃物を部分燃焼することでガス化し、不燃性物質粒子と可燃性炭素質粒子とを浮遊状態で含有する可燃性気体として、高温ガス化炉11の燃焼室13に送り込むようになっている。尚、高温ガス化炉11に流入する可燃物とは、上記可燃性炭素質粒子とを浮遊状態で含有する可燃性気体の他に、可燃性気体のみ、可燃性炭素質粒子のみの場合をも含む概念である。
【0018】
低温ガス化炉41から高温ガス化炉11に送り込まれた可燃性炭素質粒子を含む可燃性気体は、燃焼室13の内部で燃焼(部分燃焼又は完全燃焼)して、再利用可能な1200〜1600℃程度のガスとスラグが生成されると共に、生成された水素や一酸化炭素等のガスは、急冷室12に貯留された冷却水14を通過することで、例えば150〜250℃に冷却された後に、ガス流出口19を経てこれの下流側に接続されるガス洗浄塔等の諸設備に、例えばアンモニア合成用の原料として送り出される。本実施形態の燃焼炉の急冷室構造10は、燃焼室13で生成された後に急冷室12で冷却されたガスを、冷却水14の飛沫を多量に同伴させることなく、下流側の諸設備に送り出すことができるようにする機能を備えている。燃焼室の圧力は、常圧近傍または5〜90気圧、好ましくは5〜15気圧である。
【0019】
そして、本実施形態の燃焼炉の急冷室構造10は、燃焼室13の下部にあり冷却水14を貯留するための急冷室12と、燃焼室13と急冷室12とを連通し、燃焼ガスを燃焼室13から急冷室12に送るための下降管15と、急冷室12を上方から視て急冷室12の内壁と下降管15との間の間隔部分に配置され、急冷室12内で燃焼ガスの流れ方向を変える上昇管16とを含む。下降管15と上昇管(ドラフト管)16とが二重構造となるように配置された急冷室12の構造において、図2にも示すように、上昇管16の上端開口16aよりも上方に配置されて、下降管15の外周面から外側に張り出す冷却水14の飛沫遮断板17が取り付けられており、この飛沫遮断板17は、上方から視て下降管15と上昇管16との間の間隔sを覆う長さで外側に張り出した状態で設けられている。飛沫遮断板17は、下降管15の全周に亘って設けられていることが好ましいが、例えば一部が切り欠かれていて、略全周に亘って設けられていても良い。
【0020】
また、本実施形態では、飛沫遮断板17には、図3にも示すように、飛沫遮断板17よりも上方の下降管15の外周面に沿って冷却水14の飛沫wの一部を上昇させる、開口部としての貫通切欠き穴18a,18bが、好ましくは下降管15の周方向に間隔をおいて複数設けられている。なお、開口部の形状は、丸穴、細長い穴等、種々の形状に形成することができる。また、飛沫遮断板17の略全周に亘った細長い形状に開口形成することもできる。これにより、下降管15の上部が熱劣化するのを効果的に防止することが可能になる。
【0021】
本実施形態では、高温ガス化炉11は、図1に示すように、燃焼室13と急冷室12とを含んで構成される。燃焼室13では、例えば低温ガス化炉41から送り込まれた可燃性気体が、旋回しながら下降すると共に、側部や頂部に設けられた含酸素ガス導入口20から供給される含酸素ガスと混合されて燃焼され、ガス化されることで、一酸化炭素ガス、水素ガス等のガスGが、例えば1300〜1500℃程度の高温ガスとして生成される。また、可燃性気体に含まれていた不燃性物質粒子は、燃焼室13で溶融スラグとなる。燃焼室13で生成された一酸化炭素ガス、水素ガス等のガスGや溶融スラグは、燃焼室13の下方に配置された急冷室12で急冷されることになる。
【0022】
急冷室12は、高温ガス化炉11の外周部分を構成する本体シェル21によって周囲を囲まれる、有底円筒形状を有する部分あって、燃焼室13の下部のスロート部13aを介して上方の燃焼室13と接続されている。急冷室12の内部には、冷却水14が、略半分程度の高さまで貯留されていると共に、図2に示すように、本体シェル21と同心状に配置されて、下降管15と上昇管16とが設置されている。
【0023】
下降管15は、本実施形態では、倒立した切頭円錐形状を備えており、例えば燃焼室13の下面中央部分に支持されて、当該下面から垂下した状態で設けられている(図1参照)。また、下降管15は、その下部が急冷室12に貯留された冷却水に没した状態で、急冷室12の内部に設置されている。
【0024】
上昇管(ドラフト管)16は、本実施形態では、円筒形状を備えており、例えば本体シェル21の内周面から支持ロッド(図示せず)等を介して支持されて、下降管15の少なくとも下部を外側から覆った状態で設けられている。上昇管16は、下降管15及び本体シェル21と同心状に配置されて、下降管15の外周面との間に例えば150〜350mm程度の間隔s(図2参照)を保持した状態で設けられている。また、上昇管16は、その上部を除いて急冷室12に貯留された冷却水に没した状態で、急冷室12の内部に設置されている。
【0025】
そして、本実施形態では、下降管15の外周面から外側に張り出して、冷却水の飛沫wを遮断する飛沫遮断板17が取り付けられている。飛沫遮断板17は、図3〜図5にも示すように、例えば厚さが5〜10mm程度のステンレス製のプレート部材に折り曲げ加工等を施して形成され、本実施形態では、下降管15の外周面への接合基端部分から水平方向に張り出す水平板部17aと、張出し先端部分を下方に折り曲げて傾斜させた傾斜板部17bとからなる、略くの字断面形状を備えている。飛沫遮断板17が略くの字断面形状を備えていることにより、燃焼ガスに同伴する飛沫wを冷却水14の水面にスムーズに落下させて、燃焼ガスに同伴する飛沫wの量をより効果的に低減させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、例えば、燃焼炉の内径が2000〜3000mmの場合は、飛沫遮断板17は、水平板部17aの張出し方向(水平方向)の長さが例えば100〜300mm程度、傾斜板部17bの張出し方向(水平方向)の長さが例えば50〜100mm程度となっていて、全体として下降管15の外周面から例えば150〜400mm程度の水平張出し長さで外側に張り出していることにより、上昇管16と下降管15との間の間隔sを上方から覆うのに十分な長さを備えることになる。さらに、本実施形態では、飛沫遮断板17は、傾斜板部17bの先端(下端)と上昇管16の上端との間に例えば200〜400mm程度の高さ方向の間隔h(図2参照)を保持した状態で、下降管15の外周面に取り付けられている。上昇管、下降管、飛沫遮断板などの急冷室の各部材の大きさは、燃焼炉の温度と圧力により適宜変更される。例えば、燃焼室の圧力が高い場合は、燃焼ガス密度が高くなるためガスボリュームは小さくなり各部の寸法は小さくて済む。一方、燃焼室圧力が低い場合はこの逆に、燃焼室ガス密度が小さくなるため、ガスボリュームは大きくなるので、各部の寸法は大きくする必要がある。
【0027】
ここで、飛沫遮断板17の傾斜板部17bは、水平板部17aに対して50〜70度の傾斜角度θ(図5参照)で傾斜していることが好ましい。50〜70度の傾斜角度θで傾斜板部17bが水平板部17aに対して傾斜していることにより、下降管15と上昇管16との間を上方向に上昇する燃焼ガス中の飛沫wの流れ方向を、効率良く下向きに変えることで、急冷ガスGに同伴する飛沫wの量を効果的に低減できるという利点が得られる。また、飛沫遮断板17は、上昇管16の上端との間に200〜400mmの高さ方向の間隔hを保持した状態で取り付けられていることが好ましい。200〜400mmの高さ方向の間隔hを保持した状態で飛沫遮断板17が取り付けられていることにより、下降管15と上昇管16との間を上昇する飛沫wを効率良く衝突させ、飛沫wの過度な上昇エネルギーを効果的に低減できるという利点が得られる。
【0028】
さらに、本実施形態では、飛沫遮断板17は、周方向に4分割された単位遮断板22を、例えば連接フランジ22a(図4参照)を介してボルト接合によって接合一体化することで、下降管15の外周面に沿った円環形状に形成される(図3参照)。また飛沫遮断板17は、下降管15の外周面の所定の高さ位置に溶接等によって予め接合固定されている、周方向に延設する接合リブ23に、ボルト接合等によって水平板部17aの接合基端部分を接合固定することで(図3参照)、下降管15の外周面にこれの全周に亘って取り付けられることになる。
【0029】
さらにまた、本実施形態では、飛沫遮断板17の各単位遮断板22の周方向の中間部分には、図5に示すように、上昇管16の外周面から外側に突出して設けられた支持リブ24と、飛沫遮断板17の傾斜板部17bとの間に介在する、帯板形状の支持プレート25が取り付けられている。支持プレート25及び支持リブ24を介して、飛沫遮断板17の各単位遮断板22の中間先端部分が上昇管16によって下方から支持されることにより、飛沫遮断板17は、下降管15の外周面にさらに安定した状態で取り付けられることになる。
【0030】
そして、本実施形態では、飛沫遮断板17に、円形と長円形の2種類の形態の貫通切欠き穴18a,18bが、周方向に所定の間隔をおいて開口部として複数設けられている。貫通切欠き穴18a,18bは、冷却水14の飛沫wの一部を上方に向けて通過させると共に、飛沫遮断板17よりも上方の下降管15の外周面に沿って、通過させた飛沫wの一部を上昇させる機能を備えている。
【0031】
本実施形態では、飛沫遮断板17を構成する各単位遮断板22には、下降管15の接合リブ23と重ね合わされる部分を避けた水平板部17aの接合基端部分と近接する領域において、周方向の中央部分に例えば直径が40〜60mm程度の大きさの1箇所の円形の貫通切欠き穴18aが開口形成されていると共に、円形の貫通切欠き穴18aを挟んだ両側に、例えば幅が40〜60mm、長さが100〜150mm程度の大きさの一対の長円形の貫通切欠き穴18bが開口形成されている。これらによって、4体の単位遮断板22が円環状に接合一体化されて下降管15の外周面に取り付けられた状態の飛沫遮断板17には、周方向に略均等に分散配置されて、合計4箇所の円形の貫通切欠き穴18aと、合計8箇所の長円形の貫通切欠き穴18bとが所定の間隔をおいて設けられることになる。
【0032】
ここで、水平板部17aの接合基端部分と近接する領域とは、水平板部17aの接合基端部分に近い部分をいう。この中で、近接する領域はリング状の水平板部17aの半径方向の中心から内側の領域であることが好ましく、この領域に開口部を設けることが好ましい。これにより、下降管15の上部が熱劣化することをより効果的に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態では、急冷室12には、下降管15の上部外周面へ補助冷却水を散水する、スプレー手段26が設けられている。スプレー手段26は、例えば急冷室本体の円周方向に複数個取り付けられたノズルに接続された冷却水供給管27を介して圧送されてくる補助冷却水を、下降管15の上部外周面へ向けて適宜散水することができるようになっている。
【0034】
そして、上述の構成を有する本実施形態の高温ガス化炉の急冷室構造10によれば、高温ガス化炉13で生成されたガスGを、急冷室12で冷却した後に多量の冷却水14の飛沫wを同伴させることなく、下流側に接続される諸設備に送り出すことが可能になる。
【0035】
すなわち、本実施形態の急冷室構造10によれば、上昇管16の上端開口16aよりも上方に配置されて、下降管15の外周面から外側に張り出す冷却水14の飛沫遮断板17が、下降管15と上昇管16との間の間隔sを覆うようにして取り付けられているので、下降管15から高温ガスとして吹き込まれた後に、冷却水14によって冷却されて、冷却ガスとして飛沫wを同伴しながら冷却水14の表面から勢い良く上方に噴出するガスGは、その大部分が飛沫遮断板17に衝突した後に、さらに上方のガス流出口19を介して下流側の諸設備に送り出されることになる。したがって、冷却されたガスGに同伴する冷却水14の飛沫wは、飛沫遮断板17に衝突することでガスGから分離されて、その大部分が下方に落下して急冷室12に回収されることになるので、生成されたガスGが多量の飛沫wを同伴したまま下流側の諸設備に送り出されることによる不具合を、効果的に解消することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態によれば、飛沫遮断板17に複数の貫通切欠き穴18a,18bが設けられているので、冷却水14の表面から勢い良く上方に噴出するガスGに同伴する飛沫wの一部を通過させることで、これよりも上方の下降管15の外周面に沿って通過させた飛沫wの一部を上昇させることが可能なり、これによって、下降管15の内側を下降する高温ガスGによる下降管15の温度の上昇を抑制する冷却効果を発揮して、下降管15が損傷するのを効果的に防止することが可能になる。このような、飛沫wの上昇による下降管15の冷却効果は、貫通切欠き穴18a,18bを飛沫遮断板17における下降管15の外周面への接合基端部分に近接して設けることで、より効果的に発揮させることが可能になる。
【0037】
さらに、本実施形態によれば、下降管15の上部外周面へ補助冷却水を散水するスプレー手段26が設けられており、このスプレー手段26から下降管15の上部外周面へ向けて適宜散水することで、下降管15の冷却効果をより確実に発揮させることが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、飛沫遮断板は、水平板部と傾斜板部とからなる略くの字断面形状を備えている必要は必ずしも無く、下降管の外周面から水平方向に張り出していたり、斜め下方に傾斜して張り出しているものであっても良い。また、飛沫遮断板に設けられる開口部の形状や数等は、下降管の外周面に沿って冷却水の飛沫の一部を上昇させ易い形態を、適宜選択して採用することができる。さらに、本発明の急冷室構造を備える燃焼炉としての高温ガス化炉は、低温ガス化炉と組み合わせた二段ガス化装置の一部である必要は必ずしも無く、一段ガス化装置の一部として用いることもできる。さらにまた、本発明の急冷室構造を備える燃焼炉は、高温ガス化炉以外の、その他の種々の燃焼炉あっても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 急冷室構造
11 高温ガス化炉(燃焼炉)
12 急冷室
13 燃焼室
14 冷却水
15 下降管
16 上昇管
17 飛沫遮断板
17a 水平板部
17b 傾斜板部
18a,18b 貫通切欠き穴(開口部)
19 ガス流出口
21 本体シェル
22 単位遮断板
23 接合リブ
26 スプレー手段(散水パイプ)
40 二段ガス化装置
41 低温ガス化炉
s 下降管と上昇管との間の間隔
w 冷却水の飛沫
G ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃物を燃焼させる燃焼室と、
該燃焼室の下部にあり冷却水を貯留するための急冷室と、
前記燃焼室と前記急冷室とを連通し、燃焼ガスを前記燃焼室から前記急冷室に送るための下降管と、
前記急冷室を上方から視て前記急冷室の内壁と前記下降管との間の間隔部分に配置され、前記急冷室内で燃焼ガスの流れ方向を変える上昇管とを含む燃焼炉における、前記下降管と前記上昇管とが二重構造となるように配置された前記急冷室の構造において、
前記上昇管の上端開口よりも上方に配置されて、前記下降管の外周面から外側に張り出す冷却水の飛沫遮断板が取り付けられており、該飛沫遮断板は、上方から視て前記下降管と前記上昇管との間の間隔を覆う長さで外側に張り出した状態で設けられている燃焼炉の急冷室構造。
【請求項2】
前記飛沫遮断板には、当該飛沫遮断板よりも上方の前記下降管の外周面に沿って冷却水の飛沫の一部を上昇させる開口部が設けられている請求項1に記載の燃焼炉の急冷室構造。
【請求項3】
前記開口部は、前記下降管の周方向に間隔をおいて複数設けられている請求項2に記載の燃焼炉の急冷室構造。
【請求項4】
前記開口部は、前記飛沫遮断板における前記下降管の外周面への接合基端部分に近接して設けられている請求項2又は3に記載の燃焼炉の急冷室構造。
【請求項5】
前記飛沫遮断板は、前記下降管の外周面への接合基端部分から水平方向に張り出すと共に、その張出し先端部分が下方に折れ曲がって傾斜する、略くの字断面形状を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の燃焼炉の急冷室構造。
【請求項6】
前記急冷室における前記下降管の上部外周面へ補助冷却水を散水するスプレー手段が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の燃焼炉の急冷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163579(P2011−163579A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23756(P2010−23756)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】