説明

爪への適用を介した薬物送達

医薬組成物をヒト又は動物に送達する方法であって、適切な装置で爪に数個の部分オリフィスを形成すること、及びオリフィス内に前記組成物を適用することを含む方法。好ましくは、装置は部分オリフィスの配列を穿孔するように予め調整されたレーザーを備えてあり、そこでは各部分オリフィスは一回のレーザーショットによるか又は任意の複数回のレーザーショットによって穿孔され得る。好ましくは、部分オリフィスは爪を横切る同程度の深さを有する。本発明の方法は、高い効力と同時に患者の不快感を最小限にしながら、一定期間にわたる疾患の継続処置を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物に対して薬理学的又は生理学的作用を有する薬物又は他の作用物質を送達するための改良された方法であって、ヒト又は動物の爪に数個の部分オリフィスを形成することを含む方法に関する。
【0002】
爪板は、厚く、硬く、緻密であり、必要量の薬物又は他の作用物質の浸透の可能性に対する障壁となっている。爪材料は、表皮から誘導される皮膚の角質層と類似するが、主として、高度にジスルフィド結合した硬ケラチンから構成され、その厚さは角質層の厚さの約100倍である。
【0003】
PCT/EP0/108558出願によれば、レーザーにより爪板に一つ以上の小さいオリフィスを形成させて、爪に抗真菌剤、例えばテルビナフィン含有組成物を適用することにより、爪真菌症のような爪の疾病が首尾よく治療できることが見出されている。爪のより深い層及び爪床への薬物の十分な浸透をもたらすために、その特許出願に記載されたオリフィスは、爪板の80〜100%、好ましくは90〜99%貫入する小さな開口又は窪みを意味する。
【0004】
本発明によれば、爪板の10〜80%のオリフィスの使用により薬物が爪を介して十分に拡散し、その結果、予想外に高い効果が提供されることが見出された。この発見により、PCT/EP0/108558に記載されている方法が有意に改善される。
【0005】
例えば、オリフィスを爪床内へ、又は爪床に対して接近し過ぎる位置に穿孔する場合の痛み、例えば熱又は神経細胞の損傷による痛みなどの危険性が回避される。また、この改良された方法は、オリフィスを穿孔するための工程及び装置の構造を簡素化させ、穿孔が軟組織に到達する前に停止することをもたらすための手段、例えば光音響センサーのような手段を必要としない。
【0006】
本発明に従った部分オリフィスは、爪板の15〜80%、好ましくは40〜70%を貫入する任意の小さい開口又は窪みを意味する。
爪板の部分オリフィスは、短時間に爪に多数のオリフィスを形成するために使用されるレーザーを備えるレーザーベース装置により形成されることが好ましい。
【0007】
レーザー装置は、爪板の15〜80%を貫入するオリフィスが穿孔されるようにプログラミングされている。最も単純な代替例では、0.2〜0.8mm、好ましくは0.4〜0.7mmの深さに穿孔される。この方法では、個々の爪の厚さの測定、又は光音響センサー(PCT/EP0/108558)に基づくフィードバックシステムを必要としない。全オリフィスは同一の深さを有することが好ましい。
【0008】
個々のオリフィスの深さを制御するために、所定のパルスのレーザー出力を、そのレーザー出力供給の電圧、電流、及びパルス持続時間に関してあらかじめ調整して、光剥離の程度を決定する。オリフィスの深さを制御するための他の簡便な方法は、一回のショット(例えば、0.1mm/レーザーショット)の出力供給の固定電圧、電流、及びパルス持続時間に関して、オリフィスの深さを測定することである。この情報が分かると、使用者は所定の深さのオリフィスを穿孔するのに必要なショットの回数を決定する(例えば、所望の深さが0.5mmの場合、0.1mm深さ/レーザーショットで5回のショットが必要となる)。全オリフィスが同一条件で穿孔されて、通常のショット間のレーザー出力の揺らぎと爪の水分含有量及び組成の変動に応じて、全オリフィスがほぼ同一の深さを有することが好ましい。
【0009】
オリフィスの直径は、好ましくは1μm(マイクロメーター)〜1000μm(=1mm)、最も好ましくは50〜300μmである。オリフィスは、円筒形又は円錐形であることが好ましい。
典型的に、爪1cm2当たり100〜1000個、好ましくは約400個のオリフィスを形成してもよい。
【0010】
光剥離は、組織の融解及び露出を指し、人の手指又は足指の爪であり得る目下の爪の熱的、機械的、及びスペクトル特性にしたがって、選択された波長、出力及びパルス持続時間のパルスレーザー照射により達成される。積った電磁エネルギーは、ほぼ完全に機械的エネルギーに変換され、照射された領域は、オリフィスを逃れる破片の形態で、約1000m/sにて排出される。好ましい光剥離工程において、破片は積もったエネルギーを爪から素早く除去させるので、それゆえ照射された爪は加熱されず、かくして不快感を最小にする。
【0011】
照射領域の温度を100℃より高く上昇させることにより剥離を誘導することが可能であるという条件で、任意のレーザーを使用することができる。レーザーは、エルビウム(Er):YAGレーザー、Nd:YAGレーザー、OPOレーザー、Ho:YAGレーザー、COレーザー、UVレーザー、又はエキシマーレーザーから選択され得る。適切なUVレーザーは、窒素レーザーである。適切なエキシマーレーザーとして、Krレーザー及びXEレーザーが挙げられる。最も好ましくは、レーザーは、水がそれらの波長の電磁放射を強力に吸収することから、Er:YAG(λ=2.94μm)レーザー、Ho:YAGレーザー(λ=2.1μm)、又はCOガスレーザー(λ=10.6μm)である。レーザーの組み合わせを使用することもできる。
【0012】
本発明の一実施態様において、小さいオリフィスは、持続時間約200μsで供給される、エネルギー約150mJの一回のレーザーショットによって形成される。本発明の第二の実施態様において、小さいオリフィスは、各々持続時間約100μsの、エネルギー約50mJの複数回のレーザーショットによって、繰り返し率20Hzにて形成される。第二の実施態様において、各オリフィスを穿孔する際に必要なレーザーショットの回数は、光剥離レーザーが、例えばフラッシュランプで供給されたもののように、低い繰り返し率(即ち、100Hz未満)で作動する場合、2〜30回、最も好ましくは2〜10回のレーザーショットであり得る。しかしながら、光剥離レーザーが、レーザー毎により低い出力を有するKHz範囲の繰り返し率で作動し得るレーザーダイオードで供給される新世代のものである場合、オリフィスは3000回迄のレーザーショットで穿孔され得る。
【0013】
レーザーベースの装置は、レーザー、その電源、及びその冷却システムに加えて、以下の要素の一つを備えてもよい。
(a)一旦レーザーベースの装置に取り付けられると、レーザー光が機器から自由空間へ漏れることを防止するよう構成された、別個の多機能足指又は手指ドッキング要素。ドッキング要素は、光剥離工程により生じたノイズを低減するために、良好な音響特性を有する材料で構成され得る。ドッキング要素は、レーザービームウエストに対する爪の相対的なZポジショニングにも使用されて、精巧な能動自動焦点系を回避する。一つの構造において、レーザービームウエストに対する爪の相対的なZポジショニングは、手指又は足指の形状多様性を補償するために、バネを負荷したクランプ又は類似の要素を使用して、爪を数個の位置決め要素の機械的止め具に押し付けることにより実現し得る。手指又は足指を機械的止め具に押圧する要素は、弾性若しくは粘弾性の発泡体からなるパッチ、蝶番で連結されるクランプ要素、又はその組み合わせであり得る。ドッキング要素はまた、レーザー処置中の手指/足指の人間工学及び心地よい位置決めを可能にするよう構成され得る。
【0014】
手指及び足指のドッキング要素は、監視映像要素(c)による爪の視覚化を可能にし、また爪の近傍に位置するレーザーベース装置の光学構成要素を清潔に保つための透明な光学窓も有し得る。このような装置の別例として、この窓をレーザーベースの装置それ自体に組み込んでもよい。ドッキング要素は、足指又は手指支持具を有して足指又は手指を(例えば、バネを負荷したクランプ又はバンドにより)固定し、レーザー露出のために爪板を覆われていない状態のままにしておく。
【0015】
加えて、レーザーベースの装置は、異なる寸法及び形状の手指及び足指の最適な定置を可能にし、また個々に患者を治療に適合させるために、異なる寸法及び形状の交換可能なドッキング要素を備えてもよい。
【0016】
ドッキング要素(a)がレーザーベース装置に取り付けられる場合、それは、
(b)光学的安全性を高めるための機械的シャッター又は光学的隔膜を開放し得る(さもなければ、例えば装置のウォーミングアップのときは、閉鎖され得る)。このような幾何学的構造により、光剥離レーザー光の光学経路は、爪にて終結する。このように、光剥離レーザー光は、装置の内部にて常に被覆されており、患者及び使用者に対する安全性を高めている。シャッターは、レーザーベース装置内の任意の場所に配置し得るが、ドッキング要素が取り付けられるレーザーベース装置の末端に配置することが最も好ましい。しかし、シャッターは、レーザーヘッドの出力カプラー鏡の直後に配置することもできる。
【0017】
更に、爪板を、
(c)レーザーベース装置の内部のビデオカメラ若しくは電荷結合素子(CCD)カメラ又は類似の装置により視覚化して、コンピュータのスクリーン上で爪板を監視し、処置されるべき爪の範囲を決定してもよい。
【0018】
(d)光剥離の全工程において、光剥離破片を除去及び濾過して、処置されている爪の近傍の光学構成要素を清潔な状態に保つための、ドッキング要素(a)に接続されている、フィルターを備えた真空システム。真空に結合されたフィルターは、通常の機械的フィルター要素に加えて、例えば活性炭粒子などの少なくとも一つの成分も有して、さもなくば医師の部屋を汚染する臭気発生粒子を、濾過する。交換可能なドッキング要素(a)を使用する際、真空システムもまたレーザーベース装置の連結部に接続されて、清浄機能を遂行してもよい。
【0019】
(e)ドッキング要素(a)によりレーザーベース機器に定置された爪の所望の範囲内にレーザー光を位置付けするための、コンピュータ制御によるxy移動ステージモジュール又はスキャナー。好ましくは、足指又は手指を定置してもよく、光剥離目的のために爪板表面の所望の部分上にレーザー光を位置付けする。このような実施態様において、xyモジュールは、電気光学的な位置決め要素であり得る。あるいは、ドッキング要素(a)をこの移動ステージ上に搭載して、レーザー光を定置させ、かつ処置される足指又は手指を移動させるようにしてもよい。別の可能性として、ドッキング要素(a)に定置させた処置される足指又は手指を所定の軸(例、x)に移動させる間、レーザー光はy軸上を移動する。
【0020】
(f)光剥離及びターゲティングレーザー又はLEDによって照射されるべき爪内の地点を予期するための、スペクトルの可視部にて放射する低出力のターゲティングレーザー、又は発光ダイオード(LED)。
【0021】
(g)光剥離レーザー光を、ターゲティングレーザー又はLED(f)からの光と共軸的に混合させるために、および爪の像をビデオ監視映像要素(c)上に逸らすために使用し得る鏡。最も好ましくは、それらの鏡は二色性鏡である。
【0022】
(h)レーザーを発射する前に、爪板背部面に対する距離を変更することができて、爪の非平面性にも関わらず集束したレーザービームウエストが爪に対して適切に位置付けられることをもたらす、少なくとも一つのレンズを備える光学焦点要素。
【0023】
ビデオカメラ又は電荷結合装置カメラ(c)を用いて爪板を監視して、処置すべき爪の感染の程度にしたがって、特定のレーザー処置を設計すること、オリフィスが形成されるべき場所への光剥離レーザービームウエストの位置決めを正確に制御すること、異なるレーザーパラメーター(例えば、xy移動ステージ(e)の所望の位置に到達した際のレーザーの発射、又はレーザー出力及びパルス持続時間)を制御すること、オリフィス毎のショット数を制御すること等を含む、多数の任務を果たすコンピュータ。レーザーベース装置内のレーザー光は空気中を、又はその一部はその経路の内部を伝播し得る。
【0024】
(j)光ファイバー、並びに
(k)同時に二つ以上のオリフィス(例、等間隔のオリフィスの配列)を形成し、それにより連続的方法でオリフィスを一つずつ形成することを回避する、レーザー光(一つ又は複数)を多重化する光学要素(例、例えばDammann格子のような回折光学素子)。
【0025】
付随する図面を特に参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本発明の一局面において、爪の部分オリフィスを使用する新しい治療方法は、例えば爪真菌症又は爪乾癬などの爪の感染症の処置に使用される。
【0027】
好ましい実施態様において、爪真菌症は、適切なレーザー装置により穿孔された部分オリフィス内に投与される抗真菌剤、例えばテルビナフィンの使用を介して処置される。別の一実施態様において、爪乾癬は、本発明の方法と、例えばコルチコステロイドの使用とにより処置される。
【0028】
本発明の処置方法は、副作用を低減する目的で同じ疾病の他の処置、例えば経口処置と併用されるか、又はその効果を増大させるために従来の局所治療と併用することができる。処置方法は、本発明の処置を健康な(即ち、感染していない)爪の部分のみに適用する前に、標準的な医療処置による爪の感染部分の切除と組み合わせることもできる。
【0029】
本発明の方法の更なる一局面では、医薬組成物の制御放出を提供する。医薬組成物の制御放出は、医薬組成物を全身に投与し、爪から遠隔の身体側で作用するよう使用することができる。
【0030】
本発明に従った薬理学的又は生理学的活性を有する作用物質は、少なくとも一種の活性成分を包含する。本発明の目的において、“活性成分”は、薬剤的、治療的、生理学的又は予防的効果を生じる全物質を意味する。活性成分には、抗真菌剤、光増感剤、アンドロゲン、エストロゲン、非ステロイド系抗炎症剤、降圧剤、鎮痛剤、抗うつ剤、抗生剤、抗癌剤、麻酔剤、制吐剤、抗感染剤、避妊剤、抗糖尿病剤、ステロイド、抗アレルギー剤、抗偏頭痛剤、禁煙のための薬剤、抗肥満剤、及びワクチンがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0031】
活性成分の例として、以下が挙げられる:アセブトール、アセチルシステイン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アシクロビル、アルプラゾラム、アルファカルシドール、アライントイン、アロプリノール、アンブロキソール、アミカシン、アミロライド、アミノ酢酸、アミオダロン、アミトリプチリン、アムロジピン、アモキシシリン、アンピシリン、アスコルビン酸、アステミゾール、アテノロール、ベクロメタゾン、ベンセラジド、塩酸ベンザルコニウム、ベンゾカイン、ベタメサゾン、ベザフィブレート、ビオチン、ビペリデン、ビソプロロール、ブロマゼパム、ブロムヘキシン、ブロモクリプチン、ブデソニド、ブフェキサマク、ブフロメジル、ブピバカイン、ブスピロン、ブテナフィン、カフェイン、樟脳、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビドバ、カルボプラチン、セファクラー(cefachlor)、セファレキシン、セファトロキシル(cefatroxil)、セファゾリン、セフィキシム、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフロキシム、セレギリン、クロラムフェニコール、クロルヘキシジン、クロルフェニラミン、クロルタリドン、コリン、シクロスポリン、シラスタチン(cilastatin)、シメチジン、シプロフルキサシン、シサプリド、シスプラチン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クロミジン、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロトリマゾール、コデイン、コレスチラミン、クロモグリク酸、シアノコバラミン、シプロテロン、デソゲストレル、デキサメサゾン、デクスパンテノール、デキサメサゾン、デキストロメトルファン、デキストロプロポキシフェン、ジアゼパム、ジクロフェナク、ジゴキシン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロエルゴトキシン、ジルチアゼム、ジフェンヒドラミン、ジピリダモール、ジピロン、ジソピラミド、ドンペリドン、ドーパミン、ドキシサイクリン、エナラプリル、エフェドリン、エピネフリン、エルゴカルシフェロール、エルゴタミン、エリスロマイシン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エトポシド、ユーカリプタス・グローバラス、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブレート、フェノテロール、フェンタニル、フラビンモノヌクレオチド、フルコナゾール、フルナリジン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、葉酸、フォリン酸、フロセミド、ガロパミル、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシン、イチョウ、グリベンクラミド、グリピジド、クロザピン、甘草(Glycyrrhiza glabra)、グリセオフルビン、ハロペリドール、ヘパリン、ヒアルロン酸、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコドン、ヒドロコルチゾン、ヒドロモルホン、水酸化イプラトロピウム、イブプロフェン、イミペネム、インドメタシン、インスリン、イオヘキソール、イオパミドール、イソソルビドジニトラート、硝酸イソソルビド、イソトレチノイン、ケトチフェン、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトロラック、ラベタロール、ラクツロース、レボカルニチン、レボドパ、レボグルタミド、レボノルゲストレル、レボチロキシン、リドカイン、リパーゼ、イミプラミン、リシノプリル、ロペラミド、ロラゼパム、ロバスタチン、メドロキシプロゲステロン、メントール、メトトレキサート、メチルドパ、メチルプレドニゾロン、メトクロプラミド、メトプロロール、ミコナゾール、ミダゾラム、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、モルヒネ、マルチビタミン混合物及び併用薬並びに無機塩類、N−メチルエフェドリン、ナフチドロフリル、ナフチフィン、ナプロキセン、ネオマイシン、ニカルジピン、ニセルゴリン、ニコチンアミド、ニコチン、ニコチン酸、ニフェジピン、ニモジピン、ニトラゼパム、ニトレンジピン、ニトログリセリン、ニザチジン、ノルエチステロン、ノルフロキサシン、ノルゲストレル、ノルトリプチリン、ニスタチン、オフロキサシン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パンクレアチン、パンテノール、パントテン酸、パラセタモール、ペニシリンG、ペニシリンV、フェノバルビタール、ペントキシフィリン、フェノキシメチルペニシリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、フェニトイン、ピロキシカム、ポリミキシンB、ポビドンヨード、プラバスタチン、プラゼパム、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プリロカイン、プロゲステロン、プロパフェノン、プロプラノロール、プロキシフィリン、プソイドエフェドリン、ピリドキシン、キニジン、ラミプリル、ラニチジン、レセルピン、レチノール、リボフラビン、リファンピシン、ルトシド、サルブタモール、サルカトニン(salcatonin)、サリチル酸、スコポラミン、シンバスタチン、ソマトトロピン、ソタロール、スピロノラクトン、スクラルファート、スフェンタニル、スルバクタム、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルピリド、スマトリプタン、タモキシフェン、テガフール、テプレノン、テルビナフィン、テラゾシン、テルブタリン、テルフェナジン、テストステロン、テトラカイン、テトラサイクリン、テオフィリン、チアミン、チクロピジン、チモロール、トラネキサム酸、トレチノイン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムテレン、トリメトプリム、トロキセルチン、ウラシル、バルプロ酸、バンコマイシン、ベラパミル、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、並びにジドブジン。活性成分の組み合わせも使用し得る。好ましくは、活性成分は、光増感剤から選択される。最も好ましくは、活性成分はテルビナフィンである。
【0032】
ワクチンとして、天然痘、狂犬病、プラーク、ジフテリア、Dertussis、結核、破傷風、黄熱病、ポリオワクチン、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、B型肝炎、C型肝炎、B型インフルエンザ菌、日本脳炎、Biomanguinhos、B型ヒトインフルエンザ(Hib)、癌を挙げてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0033】
ワクチンは、B型肝炎及びC型肝炎のように、保護力価を達成するために複数回の接種を必要とするワクチンが好ましい。
ワクチンは、例えばB型肝炎、HIV、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)及び癌のように、細胞障害性のT細胞応答を達成するために樹状細胞との長期の接触を必要とするワクチンがより好ましい。爪床は、免疫応答を刺激するランゲルハウス細胞を高濃度で含む。本発明の方法によるワクチンの遅延放出により、強い免疫応答を得ることができる。
【0034】
癌ワクチンは、全癌細胞、又は腫瘍に含まれる物質から作られてもよい。好ましくは、癌ワクチンは、全癌細胞、ペプチド、タンパク質、樹状細胞、ガングリオシド、熱ショックタンパク質、ウイルス及び細菌ベクター、並びに核酸からなる群から選択される。
本発明に従った医薬組成物中の活性成分の量は、医薬組成物の全重量の0.1〜100重量%にて変動し得る。活性成分は、0.1〜99%、好ましくは0.5〜40%、より好ましくは1〜20重量%の量で存在することが好ましい。活性成分の投与量、及び曝露時間は、オリフィスの数、直径及び形状、並びに処置すべき疾病の性質及び重症度に依存する。最も好ましい実施態様において、医薬組成物は、1〜30%のテルビナフィンを含有し、爪真菌症の処置に使用される。
【0035】
追加の成分を医薬組成物中に使用してもよく、又は医薬組成物を部分オリフィスに加える前若しくは後に、該オリフィスに直接適用してもよい。そのような追加の成分として、通常、医薬組成物を調製する際に使用される天然及び/又は人工成分が挙げられる。追加の成分の例として、界面活性剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、固化防止剤、ビタミン、植物成分、栄養補助剤、薬草、ミネラル、微量元素、アミノ酸(例、L−トリプトファン)、繊維、酵素、充填剤、緩衝剤、着色剤、色素、酸化防止剤、保存剤、電解質、流動促進剤、分解剤、滑沢剤、及び担体材料(例、アロエベラ)が挙げられる。追加の成分の組み合わせを使用してもよい。そのような成分は、当業者に既知である。
【0036】
より一般的には、皮膚又は毛髪に適用されている製剤の全種類が特定の活性成分に適合し、本発明の方法に使用され得る。
本発明の方法と共に使用するべき経爪の処方からなる医薬組成物は、ワニス、ラッカー、液体、半固体、固体、溶液、ゲル、乳液、又は粉末の形態であり得る。
【0037】
経爪製剤中に使用される最も好ましいビヒクルは、表1に挙げた組成を有する、USP4957730に記載されているラッカーである。
【0038】
【表1】

【0039】
ここでGantrezは、ポリ[メチルビニルエーテル/マレイン酸]のブチルモノエステルの商標名である。
【0040】
経爪製剤中に使用される他の適切なビヒクルは、表2に挙げる組成を有する、USP6319509及びEP515312に記載されている爪ワニスである。
【0041】
【表2】

【0042】
表3に挙げる組成を有する、US6211250/EP944398に記載されているゲルも、経爪製剤に適切なビヒクルである。
【0043】
【表3】

【0044】
Cetamacrogol 1000、エタノール、プロピレングリコール、及び水を含有するビヒクルに溶解した1%塩酸テルビナフィンを含有する(店頭で)商業的に入手可能なLamisil(登録商標)溶液もまた、穴がリザーバとして作用し、後の用途のために爪及び穴を清掃する必要がないため、非常に良好な製剤である。この理由により、この液体製剤は、おそらく毎日、又は毎日2回のように頻繁に使用することができる。同様に、その目的のために、任意の液体製剤を、提案されるレーザー予備処置のレーザーと組み合わせて使用することができる。
【0045】
実施例1
爪真菌症のための本発明の利点を証明する概念の実証は、元々、経皮的研究を目的とした、ヒト死体足指爪に使用できるよう変更した標準的なフランツ型拡散セル(J.T.Franz、Dermatology、184、p−18、1992に記載)を使用して、ヒト死体足指爪を用いたインビトロでの一連の爪浸透アッセイに基づく。フランツセルは、爪板で分けられる二つのチャンバを備える。放射標識した[14C]テルビナフィンを含有する経爪製剤をドナー上部チャンバ内に適用し、レセプターチャンバを緩衝液で満たしてヒト生理学的条件をシミュレートした。爪は硬く湾曲しているから、湿潤した爪を、可撓性を有する平らな二つのシリコーンポリマー円盤間に固定した。循環水浴を使用してセルの温度を30℃に維持した。マグネットスターラーバーを使用して、実験全体を通してレセプターの均一性を確実にした。
【0046】
爪浸透アッセイは、爪板の背側を試験製剤に曝露させる一方で、腹側上に出現する放射標識[14C]テルビナフィンの量を、フランツセルのレセプター流体チャンバ内のLC−MSで監視することから構成された。全ての場合において、爪の背側に100μlの一回投与量を適用した。LSC測定の各時間点にて、緩衝液100μlを取り出し、これを緩衝液と交換し、緩衝液の全容積を一定に維持した。試料採取の時間点は、0、1、3、5、7、24、32、48、52、55及び72時間であった。
【0047】
爪真菌症の発生率がより高い患者の年齢グループの爪の厚さ及び堅さを一致させるために、浸透アッセイに使用したヒト死体足親指爪を、疾病した成人(年齢>50歳)から回収した。浸透アッセイのために爪を無作為に選択し、室温で少なくとも1時間解凍し、脱イオン水に2〜3時間浸してから、付着した皮膚及び軟組織を鋏及びメスで腹側から除去した。清掃した後、爪を穿孔して直径13〜15mmの円盤にし、フランツ型拡散セルに装着した。
【0048】
図3に報告したアッセイで使用した、レーザーで予備処置した爪内の部分オリフィスの密度は、400オリフィス/cm2である。全オリフィスは各々0.5±0.1mmの同様の深さを有し、領域に応じて爪板の全厚の50%〜70%に達する。オリフィスの直径は、全ての場合、各々80±10μs持続するレーザーパルスあたり50±10mJのエネルギーの5回のショットにより、250±50μm穿孔された。
【0049】
所定の実施態様を特に参照して本発明を説明してきたが、請求項の範囲及び趣旨内で当業者は変更及び修正を為し得ることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ドッキング要素(a)が取り付けられた、レーザーベースの装置の一般的な概略図である。
【図2a】足指又は手指ドッキング要素(a)の一般的な概略図である。
【図2b】同じレーザーベース装置の同一の連結要素を備えた、異なる寸法を有する2個の交換可能な足指又は手指ドッキング要素(a)の概略図である。レーザーベースの装置の光学要素を汚染から保護する光学窓は、ここではドッキング要素にではなく、レーザーベースの装置それ自体に組み込まれている。
【図3】各々0.5mmの類似の深さ(領域に応じて爪板の全厚の50〜70%に達する)をもったオリフィスを1cm2に400個有する爪と未処置の爪のインビトロでのテルビナフィン含有製剤の浸透流量[ng/cm2]を表す。製剤のテルビナフィン濃度は、表3に記載したビヒクル中、5%及び10%(w/w)であった。レーザー予備処置した爪へのテルビナフィン浸透流量は、未処置の爪の浸透流量の3〜4倍高いことが容易に明らかである。報告した結果を得るために用いたアッセイ、及びレーザー予備処置した爪の詳細は、実施例1に説明されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬又は生理学的組成物をヒト又は動物に送達する方法であって、ヒト又は動物の爪に数個の部分オリフィスを形成すること、及びオリフィス内に前記組成物を適用することを含む方法。
【請求項2】
オリフィスが、爪板の15〜80%の深さのオリフィスの貫入をもたらす装置によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
装置が爪板の40〜70%の貫入をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
装置が爪板内への0.1〜0.8mmの貫入をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
装置がレーザーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
組成物が、医薬組成物の全重量に基づいて0.1〜99%で存在する、少なくとも一種の医薬又は生理学的に活性な成分を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
活性成分が、医薬組成物の全重量に基づいて10〜30%で存在するテルビナフィンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オリフィスの直径が1〜1000μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
オリフィスの直径が50〜300μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
オリフィスの密度が50〜1000オリフィス/cm2である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
所定の深さの各部分オリフィスが、一回のレーザーショットで形成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
所定の深さの各部分オリフィスが、複数回のレーザーショットで形成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
所定の深さの各部分オリフィスが、2〜15回のレーザーショットで形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
所定の爪内に穿孔されるべき部分オリフィスの全部が、ほぼ同一の所定の深さを有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
爪板内への所定の深さの部分オリフィスの穿孔をもたらす所定の出力及び/又はパルス持続時間の電磁放射を提供するレーザーを備える、請求項1〜14に記載の方法の遂行に適した装置。
【請求項16】
医薬又は生理学的組成物をヒト又は動物に送達するための装置であって、爪板内への所定の深さの部分オリフィスの穿孔をもたらす所定の出力及び/又はパルス持続時間の電磁放射を提供するレーザーと、処置されるべき足指又は手指を固定する足指又は手指ドッキング要素とを備える装置。
【請求項17】
処置されるべき足指又は手指をレーザー光に関して安定した位置に固定する足指又は手指ドッキング要素を備える請求項16に記載の装置であって、該ドッキング要素が処置されるべき足指又は手指を位置決め要素に対して押圧する定置要素を有する、装置。
【請求項18】
処置されるべき個々の患者の足指又は手指の形状及び寸法に応じて、異なる寸法及び形状の交換可能なドッキング要素の使用に適合された、請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
爪真菌症の処置のための、請求項1〜14に記載の方法の使用。
【請求項20】
爪乾癬の処置のための、請求項1〜14に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−510537(P2008−510537A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528662(P2007−528662)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008452
【国際公開番号】WO2006/021312
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(507056841)テーエルテー・メディカル・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TLT MEDICAL LTD.
【Fターム(参考)】