説明

物体検出装置、物体検出方法および物体検出システム

【課題】歩行者のような弱反射物体であっても最初のレーダ探索で検出すること。
【解決手段】物体種別判定部が、車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて物体の種別を判定し、閾値選択部が、判定された種別に対応付けられた所定の閾値を選択し、画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が選択された閾値以上であることを条件として物体を検知するように、物体検出装置あるいは物体検出システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の近辺に存在する物体を検出する物体検出装置、物体検出方法および物体検出システムに関し、特に、歩行者のような弱反射物体であっても最初のレーダ探索で検出することができる物体検出装置、物体検出方法および物体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被害軽減自動ブレーキやブレーキアシストを行う車両では、レーザレーダやミリ波レーダ等の測距可能なレーダを搭載し、かかるレーダによって自車前方の車両や歩行者といった物体を捕捉することが行われている。なお、このようなレーダで物体を捕捉する場合、物体からの反射波の強度が所定の閾値以上であることを条件とすることが一般的である。
【0003】
また、車両に搭載されたカメラおよびカメラで撮像された画像を解析する解析部で構成される画像センサを用いて物体を捕捉する技術も知られている。このような画像センサの中には、パターンマッチングによる物体の認識や、ステレオカメラによる測距を行うものも存在する。
【0004】
そして、上記したレーダおよび画像センサを組み合わせた物体検出技術も提案されている。たとえば、特許文献1には、反射強度が強い強反射物体(車両)用の閾値を設定したうえでレーダ探索を実行し、反射強度が弱い弱反射物体(歩行者)を検出した場合には、強反射物体用の閾値よりも低い弱反射物体用の閾値に変更したうえでレーダ探索を再実行し、検出した弱反射物体を画像センサで追跡する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−284293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を用いて歩行者のような弱反射物体を検出するためには、少なくとも2回のレーダ探索が必要となるため、レーダ探索に要する時間がかさむという問題がある。また、最初のレーダ探索によって歩行者のような弱反射物体を捕捉することができなかった場合には、閾値の引き下げ自体を行うことができないという問題もある。
【0007】
これらのことから、歩行者のような弱反射物体であっても最初のレーダ探索で検出することができる物体検出装置、物体検出方法あるいは物体検出システムをいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、歩行者のような弱反射物体であっても最初のレーダ探索で検出することができる物体検出方法、物体検出装置および物体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車両の近辺に存在する物体を検出する物体検出装置であって、前記車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて前記物体の種別を判定する物体種別判定手段と、前記物体種別判定手段によって判定された前記種別に対応付けられた所定の閾値を選択する閾値選択手段と、前記画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が前記閾値決定手段によって選択された前記閾値以上であることを条件として前記物体を検知する物体検知判定手段と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、車両の近辺に存在する物体を検出する物体検出方法であって、前記車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて前記物体の種別を判定する物体種別判定工程と、前記物体種別判定工程によって判定された前記種別に対応付けられた所定の閾値を選択する閾値選択工程と、前記画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が前記閾値決定工程によって選択された前記閾値以上であることを条件として前記物体を検出する物体検知判定工程とを含んだことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、車両の近辺に存在する物体を前記車両に搭載された画像探索装置およびレーダ探索装置で検出する物体検出システムであって、前記画像探索装置は、カメラによって撮像された画像に基づいて前記物体の種別を判定する物体種別判定手段を備え、前記レーダ探索装置は、前記撮像装置の前記物体種別判定手段によって判定された前記種別に対応付けられた所定の閾値を選択する閾値選択手段と、前記画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が前記閾値決定手段によって選択された前記閾値以上であることを条件として前記物体を検出する物体検知判定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて物体の種別を判定し、判定された種別に対応付けられた所定の閾値を選択し、画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が選択された閾値以上であることを条件として物体を検知することとしたので、画像から得られた物体種別に対応する閾値に変更したうえでレーダ探索を行うことによって、歩行者のような弱反射物体であっても最初のレーダ探索で検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る物体検出装置、物体検出方法および物体検出システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、従来技術に係る物体検出手法の概要および本発明に係る物体検出手法の概要について説明した後に、本発明に係る物体検出手法を適用した物体検出装置および物体検出システムについての実施例を説明することとする。
【0014】
まず、従来技術に係る物体検出手法の概要について図6を用いて説明する。図6は、従来技術に係る物体検出手法の処理手順を示すフローチャートである。なお、同図では、ミリ波レーダ等を用いたレーダ探索を行う一般的な手法(従来技術)を示している。
【0015】
同図に示すように、レーダ探索用の閾値αを設定し(ステップS1001)、最初のレーダ探索を実行する(ステップS1002)、そして、歩行者などの低反射物体であるか否かを判定する(ステップS1003)。ここで、低反射物体であるか否かの判定は、たとえば、閾値αを1度でも上回ったか否かに基づいて行われる。
【0016】
そして、歩行者などの低反射物体である場合には(ステップS1003,Yes)、ステップS1001で設定された閾値αよりも小さい閾値βへ引き下げ(ステップS1004)、この閾値βを用いてレーダ探索を実行する(ステップS1005)。なお、ステップS1003の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS1003,No)、ステップS1002以降の処理を繰り返す。
【0017】
つづいて、歩行者などの低反射物体を追跡中であるか否かを判定し(ステップS1006)、歩行者などの低反射物体を追跡中である場合には(ステップS1006,Yes)、ステップS1005)以降の処理を繰り返す。一方、ステップS1006の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS1006,No)、ステップS1001以降の処理を繰り返す。
【0018】
このように、従来技術に係る物体検出手法では、大きい閾値βを用いた最初のレーダ探索(ステップS1002参照)において低反射物体であるか否かを判定し、低反射物体であると判定した場合には、小さい閾値αを用いたレーダ探索を再度実行する必要があった(ステップS1005)。したがって、レーダ探索に要する時間がかさむという問題があった。
【0019】
また、従来技術に係る物体検出手法では、最初のレーダ探索(ステップS1002参照)において、1度も閾値αを上回らなかった場合には、低反射物体を検知することができず、閾値の引き下げ(ステップS1004参照)自体を行うことができないという問題もあった。
【0020】
次に、本発明に係る物体検出手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る物体検出手法の概要を示す図である。同図に示すように、本発明に係る物体検出手法は、図6を用いて説明した物体検出手法における問題点を解消するために、レーダ探索とカメラを用いた画像探索とを併用することとした。
【0021】
具体的には、本発明に係る物体検出手法では、まず、カメラ画像に基づいて物体種別を判定する(図1の(1)参照)。ここで、物体種別とは、歩行者および非歩行者(たとえば、車両)のことを指す。なお、物体種別の判定は、たとえば、パターンマッチング手法を用いて行われる。
【0022】
つづいて、物体種別に対応付けたレーダ探索用閾値を選択する(同図の(2)参照)。たとえば、物体種別が歩行者である場合には閾値Aが、物体種別が車両(非歩行者)である場合には閾値Aよりも大きい閾値である閾値Bが、それぞれ選択される。つづいて、選択した閾値を用いてレーダ探索を実行する(同図の(3)参照)。
【0023】
このように、本発明に係る物体検出手法では、カメラ画像に基づいて物体種別を判定し、判定した物体種別ごとに定められた閾値を用いてレーダ探索を実行する。したがって、歩行者のような低反射物体であっても、最初のレーダ探索で確実に検知することが可能となる。また、車両のような高反射物体の場合には、高反射物体用の閾値(低反射物体用の閾値よりも大きな閾値)を用いるので、ノイズ等の影響を排除することによって確実な検知が可能となる。
【0024】
以下では、図1に示した本発明に係る物体検知手法を適用した物体検知装置および物体検知システムに係る実施例を説明する。なお、物体検知装置については図2〜図4を用いて、物体検知システムについては図5を用いて、それぞれ説明することとする。
【実施例】
【0025】
図2は、本実施例に係る物体検知装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、物体検出装置10は、レーダ21と、カメラ22と、車両センサ31と、車両制御装置32とに接続されており、物体認識処理部11および衝突判定処理部14を備えている。なお、本実施例では、衝突判定処理部14を備えた物体検出装置10について説明するが、この衝突判定処理部14を含まない物体検出装置を構成することとしてもよい。
【0026】
また、物体認識処理部11は、レーダ21に接続されたレーダ探索部12と、カメラ22に接続された画像探索部13とをさらに備えている。そして、物体認識処理部12は、閾値選択部12aと、物体検知判定部12bと、物体運動算出部12cとをさらに備えており、画像探索部13は、物体検知部13aと、物体種別判定部13bとをさらに備えている。また、衝突判定処理部14は、物体運動取得部14aと、車両運動取得部14bと、衝突判定部14cと、衝突回避制御部14dとをさらに備えている。
【0027】
レーダ21は、ミリ波(レーザ)を対象物に照射するとともに、対象物からの反射波を取得する処理を行うデバイスである。また、このレーダ21は、照射波および反射波についてのレーダデータをレーダ探索部12の物体検知判定部12bに対して出力する処理を併せて行う。
【0028】
カメラ22は、たとえば、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ等のカメラである。また、このカメラ22は、撮像した画像データを画像探索部13の物体検知部13aに対して出力する処理を併せて行う。なお、カメラ22として複数のカメラを組み合わせたステレオカメラを用いることとしてもよい。
【0029】
車両センサ31は、車速センサ、舵角センサといった車両の運動状態を取得するセンサであり、物体検出装置10とともに、車両に搭載されている。また、この車両センサ31は、取得した運動状態を衝突判定処理部14の車両運動取得部14bに対して出力する処理を併せて行う。
【0030】
車両制御装置32は、ブレーキ制御、操舵制御、警告制御といった車両制御を、衝突判定処理部14の衝突回避制御部14dからの指示に従って行う装置である。ここで、ブレーキ制御とは、衝突回避のために自動ブレーキやブレーキアシストを行う制御のことを指す。また、操舵制御とは、衝突回避のために自動操舵や操舵アシストを行う制御のことを指し、警告制御とは、運転者に対して音声や振動、シートベルト作動による警告を行う制御のことを指す。
【0031】
物体認識処理部11は、カメラ22からの画像データに基づいて物体種別を判定するとともに、レーダ21からのレーダデータについて、先に判定された物体種別に対応した閾値を用いて物体検知を行い、検知された物体の運動を算出して衝突判定処理部14へ出力する処理を行う処理部である。
【0032】
レーダ探索部12は、レーダ21からのレーダデータおよび画像探索部13からの物体種別に基づいて物体検知を行い、検知した物体の運動を算出して衝突判定処理部14へ出力する処理を行う処理部である。
【0033】
閾値選択部12aは、画像探索部13の物体種別判定部13bから受け取った物体種別に応じた閾値を選択し、選択した閾値を物体検知判定部12bへ渡す処理を行う処理部である。具体的には、この閾値選択部12aは、物体種別が歩行者である場合には閾値Aを、物体種別が車両(非歩行者)である場合には閾値Aよりも大きい閾値である閾値Bを、それぞれ選択する。
【0034】
なお、本実施例では、物体種別が歩行者か非歩行者かに応じて2種類の閾値の中から該当する閾値を選択する場合について説明するが、物体種別が3種類以上である場合には、それぞれの物体種別に対応付けられた同数の閾値の中から該当する閾値を選択することとしてもよい。
【0035】
物体検知判定部12bは、閾値選択部12aによって選択された閾値を用いてレーダ21から受け取ったレーダデータに含まれる物体の検知判定を行う処理部である。また、この物体検知判定部12bは、検知した物体についてのレーダデータを物体運動算出部12cへ渡す処理を併せて行う。
【0036】
ここで、物体検知判定部12bが行う物体検知判定の概要について図3を用いて説明しておく。図3は、物体検知判定の概要を示す図である。同図の「(1)物体種別が歩行者の場合」に示したように、画像(同図の103a)内に歩行者(同図の103b参照)が存在し、閾値選択部12aから物体種別が歩行者である旨の通知を受けた場合には、物体検知判定部12bは、同図の103cに示すように、閾値Aを選択する。この場合、同図に示す103dが物体からの反射波強度であるとすると、歩行者のような低反射物体を検出することが可能となる。
【0037】
また、同図の「(2)物体種別が車両の場合」に示したように、画像(同図の103e参照)内に車両(同図の103f参照)が存在し、閾値選択部12aから物体種別が車両(非歩行者)である旨の通知を受けた場合には、物体検知判定部12bは、同図の103gに示すように、閾値Bを選択する。この場合、同図に示す103hが物体からの反射波強度であるとすると、ノイズの影響を受けることなく車両のような高反射物体を確実に検出することが可能となる。
【0038】
また、同図においては、画像内に歩行者のみ、車両のみが存在する場合について示しているが、歩行者および車両が混在している場合には、閾値選択部12aは、閾値Aを選択することとなる。なお、歩行者が存在する領域と車両(非歩行者)が存在する領域とを区別し、歩行者が存在する領域については閾値Aを用いて物体検出判定を行うとともに、車両(非歩行者)が存在する領域については閾値Bを用いて物体検出判定を行うこととしてもよい。
【0039】
図2の説明に戻り、物体運動算出部12cについて説明する。物体運動算出部12cは、物体検知判定部12bが検出した物体に係るレーダデータから、物体の位置、方位、相対速度といった物体運動データを算出する処理を行う処理部である。また、この物体運動算出部12cは、算出した物体運動データを衝突判定処理部14の物体運動取得部14aへ出力する処理を併せて行う。
【0040】
画像探索部13は、カメラ22から受け取った画像データを画像解析することによって物体種別を判定するとともに、判定した物体種別をレーダ探索部12の閾値選択部12aへ出力する処理を行う処理部である。
【0041】
物体検知部13aは、カメラ22から受け取った画像データを画像解析することによって、物体の検知を行う処理部である。なお、物体の検知には、顕著性アルゴリズム等の手法が用いられる。また、物体種別判定部13bは、物体検知部13aが物体を検知した場合に、パターンマッチングやニューラルネットワークを用いた手法を用いることによって、検知物体の種別を判定する処理を行う処理部である。たとえば、この物体種別判定部13bは、歩行者および非歩行者(車両等)の2つの物体種別を判定し、判定した物体種別をレーダ探索部12の閾値選択部12aへ出力する。
【0042】
衝突判定処理部14は、レーダ探索部12の物体運動算出部12cから受け取った物体運動データと、車両センサ31から受け取った車両運動データとに基づき、自車両と物体とが衝突する可能性があるか否かを判定するとともに、衝突することが予測された場合には、衝突回避指示を車両制御装置32へ出力する処理を行う処理部である。
【0043】
物体運動取得部14aは、レーダ探索部12の物体運動算出部12cから物体の位置、方位、相対速度といった物体運動データを受け取り、受け取った物体運動データを衝突判定部14cへ出力する処理を行う処理部である。また、車両運動取得部14bは、車両センサ31から自車両に係る車速、舵角といった車両運動データを受け取り、受け取った車両運動データを衝突判定部14cへ出力する処理を行う処理部である。
【0044】
衝突判定部14cは、レーダ探索部12の物体運動算出部12cから受け取った物体運動データと、車両運動取得部14bから受け取った車両運動データとに基づき、検出された物体が自車両に衝突するか否かを判定する処理を行う処理部である。また、この衝突判定部14cは、判定結果を衝突回避制御部14dに対して出力する処理を併せて行う。
【0045】
衝突回避制御部14dは、衝突判定部14cから検出物体が自車両に衝突する旨の通知を受け取った場合に、車両制御装置32に対して衝突を回避するための指示を出力する処理を行う処理部である。たとえば、この衝突判定部14cは、衝突を回避するために、車両制御装置32に対してアシストブレーキを作動させるように指示する。
【0046】
次に、物体検出装置10が実行する処理手順について図4を用いて説明する。図4は、物体検出装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、画像探索部13が画像探索処理を実行する(ステップS101)。そして、画像探索部13の物体種別判定部13bは、物体種別が歩行者であるか非歩行者(車両等)であるかをレーダ探索部12bの閾値選択部12aへ出力する。
【0047】
つづいて、閾値選択部12aは、物体種別が歩行者であるか否かを判定し(ステップS102)、物体種別が歩行者である場合には(ステップS102,Yes)、歩行者などの低反射物体用の閾値である閾値A(図3参照)を選択する(ステップS103)。一方、物体種別が歩行者ではない場合には(ステップS102,No)、車両などの高反射物体用の閾値である閾値B(図3参照)を選択する(ステップS104)。なお、閾値Bは、閾値Aよりも大きい値をとる。
【0048】
そして、レーダ探索部12は、ステップS103またはステップS104において選択された閾値を用いて画像範囲についてのレーダ探索処理を実行し(ステップS105)、物体検知判定部12bは、反射波強度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS106)。そして、反射波強度が閾値以上である場合には(ステップS106)、物体運動算出部12cは、物体の距離、角度(方位)、相対速度を算出する(ステップS107)。
【0049】
つづいて、衝突判定処理部14は、物体運動および車両運動を取得し(ステップS108)、物体が自車両に衝突するか否かを判定する(ステップS109)。そして、物体が自車両に衝突すると判定された場合には(ステップS109,Yes)、車両制御装置32に対して衝突回避指示を行い(ステップS110)、処理を終了する。
【0050】
なお、ステップS106の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS106,No)、ステップS107〜ステップS110の処理を行うことなく処理を終了する。また、ステップS109の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS109,No)、ステップS110の処理を行うことなく処理を終了する。
【0051】
ところで、これまでは、本発明に係る物体検出手法を適用した物体検出装置10について説明してきたが、レーダ探索装置、画像探索装置および衝突判定装置からなる物体検出システムを構成することとしてもよい。図5は、物体検出システム100の構成を示す図である。なお、以下では、図2に示した物体検出装置10の各構成要素と同等の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略するか簡単な説明にとどめることとする。
【0052】
図5に示すように、物体検出システム100は、レーダ探索装置200と、画像探索装置300と、衝突判定装置400とを備えている。なお、レーダ探索装置200は、図2に示したレーダ21および物体認識処理部12に対応しており、画像探索装置300は、同じくカメラ22および画像探索部13に対応している。また、衝突判定装置14は、同じく衝突判定処理部14に対応している。
【0053】
このように、レーダ探索を行うレーダ探索装置200と、画像探索を行う画像探索装置300とを独立した装置として構成することで、たとえば、各装置を別々のメーカで開発することが可能となる。なお、図5においては、衝突判定装置400を備えた物体検出システム100を示したが、レーダ探索装置200および画像探索装置300からなる物体検出システムを構成することとしてもよい。
【0054】
上述してきたように、本実施例によれば、物体種別判定部が、車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて物体の種別を判定し、閾値選択部が、判定された種別に対応付けられた所定の閾値を選択し、画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が選択された閾値以上であることを条件として物体を検知するように、物体検出装置あるいは物体検出システムを構成した。
【0055】
したがって、画像から得られた物体種別に対応する閾値に変更したうえでレーダ探索を行うことによって、歩行者のような弱反射物体であっても最初のレーダ探索で検出することができる。
【0056】
なお、上述した実施例では、各物体種別にそれぞれ対応する閾値を用意しておき、選択された閾値をそのまま(静的に)使用する場合について示したが、画像検索結果を用いてこれらの閾値を補正することとしてもよい。たとえば、画像検索結果から降雨や降雪などのレーダ探索を阻害する要因が検出された場合には、閾値をそれぞれ低い値に動的に補正することとすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る物体検出装置、物体検出方法および物体検出システムは、走行車両の障害となる物体の検出に有用であり、特に、歩行者などの低反射物体の検出および車両などの高反射物体の検出を高速かつ確実に行いたい場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る物体検出手法の概要を示す図である。
【図2】本実施例に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】物体検知判定の概要を示す図である。
【図4】物体検出装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図5】物体検出システムの構成を示すブロック図である。
【図6】従来技術に係る物体検出手法の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10 物体検出装置
11 物体認識処理部
12 レーダ探索部
12a 閾値選択部
12b 物体検知判定部
12c 物体運動算出部
13 画像探索部
13a 物体検知部
13b 物体種別判定部
14 衝突判定処理部
14a 物体運動取得部
14b 車両運動取得部
14c 衝突判定部
14d 衝突回避制御部
21 レーダ
22 カメラ
31 車両センサ
32 車両制御装置
100 物体検出システム
200 レーダ探索装置
300 画像探索装置
400 衝突判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の近辺に存在する物体を検出する物体検出装置であって、
前記車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて前記物体の種別を判定する物体種別判定手段と、
前記物体種別判定手段によって判定された前記種別に対応付けられた所定の閾値を選択する閾値選択手段と、
前記画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が前記閾値決定手段によって選択された前記閾値以上であることを条件として前記物体を検知する物体検知判定手段と
を備えたことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記物体種別判定手段は、
前記種別が車両であるか歩行者であるかを判定するものであって、
前記閾値決定手段は、
前記歩行者に対応する閾値を前記車両に対応する閾値よりも小さい値として決定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体検知判定手段は、
前記閾値選択手段によってそれぞれ異なる複数の前記閾値が選択された場合に、最も小さい閾値のみを用いて前記物体を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記物体種別判定手段は、
前記種別を判定した物体の位置情報を当該種別に対応付けて取得するものであって、
前記物体検知判定手段は、
前記閾値選択手段によってそれぞれ異なる複数の前記閾値が選択された場合に、前記位置情報に基づいて前記種別に対応する閾値をそれぞれ用いて前記物体を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記閾値選択手段によって選択された前記閾値を前記画像に基づいて補正する閾値補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記物体検知判定手段によって検出された前記物体に係る前記反射波に基づいて当該物体までの距離、当該物体が位置する方向および当該物体/前記車両間の相対速度を算出する物体運動取得手段と、
前記車両の速度および進行方向を取得する車両運動取得手段と、
前記物体運動取得手段によって取得された情報および前記車両運動取手段によって取得された情報に基づいて前記物体が前記車両に衝突するか否かを判定する衝突判定手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項7】
車両の近辺に存在する物体を検出する物体検出方法であって、
前記車両に搭載されたカメラによって撮像された画像に基づいて前記物体の種別を判定する物体種別判定工程と、
前記物体種別判定工程によって判定された前記種別に対応付けられた所定の閾値を選択する閾値選択工程と、
前記画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が前記閾値決定工程によって選択された前記閾値以上であることを条件として前記物体を検出する物体検知判定工程と
を含んだことを特徴とする物体検出方法。
【請求項8】
車両の近辺に存在する物体を前記車両に搭載された画像探索装置およびレーダ探索装置で検出する物体検出システムであって、
前記画像探索装置は、
カメラによって撮像された画像に基づいて前記物体の種別を判定する物体種別判定手段
を備え、
前記レーダ探索装置は、
前記撮像装置の前記物体種別判定手段によって判定された前記種別に対応付けられた所定の閾値を選択する閾値選択手段と、
前記画像に対応する範囲について照射した照射波に係る反射波の強度が前記閾値決定手段によって選択された前記閾値以上であることを条件として前記物体を検出する物体検知判定手段と
を備えたことを特徴とする物体検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−174900(P2009−174900A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11435(P2008−11435)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】