説明

物体検出装置

【課題】レーダを用いた物体検出において物体を高精度に検出する物体検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】物体検出装置1であって、物体の位置を検出するレーダ検出手段2と、レーダ検出手段2で今回検出された検出点をグルーピングするグルーピング手段3と、前回の複数のグループに基づいてグルーピング手段3で今回グルーピングされたグループを複数のグループに分割する分割手段3と、各グループの検出点を用いて物体を検出する物体検出手段3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダによる検出点を用いて物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衝突防止装置、車間制御装置などの運転支援装置が開発されている。これら運転支援装置では、自車両の前方を走行する車両を検出することが重要となる。物体検出装置には、レーザレーダなどのレーダで検出した多数の検出点のうち所定の条件を満たす検出点同士をグルーピングし、そのグルーピングした各グループの検出点群から物体の情報を求める(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−57339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザレーダの検出領域内に存在する複数の物体が接近した場合(例えば、離れていた2人の歩行者が接近し、レーザレーダ側から見て重なるような場合)、その接近したときに検出された検出点だけでグルーピングを行うと、その複数の物体に対する各検出点群を1つのグループにグルーピングする場合がある。このような場合、複数の物体を1つの物体として検出してしまう。
【0004】
そこで、本発明は、レーダを用いた物体検出において物体を高精度に検出する物体検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る物体検出装置は、物体の位置を検出するレーダ検出手段と、レーダ検出手段で今回検出された検出点をグルーピングするグルーピング手段と、前回の複数のグループに基づいてグルーピング手段で今回グルーピングされたグループを複数のグループに分割する分割手段と、各グループの検出点を用いて物体を検出する物体検出手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
この物体検出装置では、レーダ検出手段により電磁波を送信するとともにその反射してきた電磁波を受信し、その電磁波の送受信情報に基づいて物体に対する検出点を取得する。そして、物体検出装置では、グルーピング手段により今回取得した検出点を所定の条件に従ってグルーピングする。この際、2つ以上の物体が接近したために、その各物体に対する検出点群が1つのグループとしてグルーピングされている場合がある。しかし、接近する前、その2つ以上の物体は離れていたので、その各物体に対する検出点群は別々のグループとしてグルーピングされているはずである。そこで、前回のグルーピング結果を利用し、物体検出装置では、分割手段により前回の複数のグループ(前回検出された複数の物体に相当)に基づいて今回グルーピングされたグループを複数のグループに分割する。そして、物体検出装置では、物体検出手段によりグルーピングした各グループの検出点を用いて物体を検出する。このように、この物体検出装置では、前回のグルーピング結果(前回の物体検出結果に相当)を考慮してグループを再分割することができるので、物体を高精度に検出することができる。なお、前回のグルーピング結果(前回のグループ)として、直近の前時刻でのグルーピング結果だけでなく、前々時刻でのグルーピング結果などの前時刻以前の過去のグルーピング結果を用いてもよい。
【0007】
本発明の上記物体検出装置では、前回のグループの情報に基づいて該前回のグループの今回の位置を推定する位置推定手段を備え、分割手段は、位置推定手段で推定した前回のグループの今回の推定位置とグルーピング手段で今回グルーピングされたグループの各検出点の位置との位置関係に基づいて分割する構成としてもよい。
【0008】
この物体検出装置では、位置推定手段により前回のグループの情報(位置、速度、移動方向など)に基づいて前回のグループが今回の検出時までに移動した位置を推定する。そして、物体検出装置では、分割手段によりその前回のグループの推定位置と今回グルーピングされたグループの各検出点の位置との位置関係に基づいて前回検出されている物体に対する検出点であるか否かを判断し、今回グルーピングされたグループを複数のグループに分割する。このように、この物体検出装置では、前回のグループの今回推定位置に基づいてグループを再分割することにより、高精度に再分割を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、前回の結果を考慮してグループを再分割することにより、物体を高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る物体検出装置の実施の形態を説明する。
【0011】
本実施の形態では、本発明に係る物体検出装置を、車両に搭載される障害物検出装置に適用する。本実施の形態に係る障害物検出装置は、車両周辺の障害物(例えば、他車両、自転車、歩行者)を検出し、検出した障害物情報を車間制御装置、衝突防止装置などの運転支援装置に提供する。検出方向としては、車両の全周方向でもよいし、あるいは、前方、側方、後方などの目的に応じた方向だけでもよい。
【0012】
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係る障害物検出装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る障害物検出装置の構成図である。図2は、図1のECUにおけるグループ再分割手法の説明図である。図3は、グループ再分割の一例である。
【0013】
障害物検出装置1は、レーザ光を利用したレーダによって検出点を取得し、その検出点をグルーピングし、グルーピングした各グループの検出点から障害物情報を求める。特に、障害物検出装置1では、グルーピング精度を向上させるために、現時刻でグルーピングしたグループを前時刻のグルーピング結果(障害物検出結果)を考慮して再分割する。そのために、障害物検出装置1は、レーザレーダ2及びECU[Electronic Control Unit]3を備えている。
【0014】
なお、本実施の形態では、レーザレーダ2が特許請求の範囲に記載するレーザ検出手段に相当し、ECU3における各処理が特許請求の範囲に記載するグルーピング手段、分割手段、物体検出手段及び位置推定手段に相当する。
【0015】
レーザレーダ2は、レーザ光を利用して物体を検出するレーダである。レーザレーダ2は、障害物の検出方向(検出領域)に応じて1個又は複数個設けられ、障害物の検出方向に応じて車両の所定の箇所(例えば、前端の中央)に取り付けられる。レーザレーダ2では、一定時間毎に、レーザ光を左右方向の所定角度毎に出射し、反射してきたレーザ光を受光する。レーザ光を受光する毎に、レーザレーダ2では、少なくとも、出射から受光までの時間に基づいて検出点(反射点)との相対距離を算出するとともにレーザ光の出射角度から検出点(反射点)との相対方向を算出する。そして、レーザレーダ2では、一定時間毎に、1回のスキャンで検出できた全ての検出点についての情報(相対距離、相対方向など)をレーダ信号としてECU3に送信する。
【0016】
ECU3は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、障害物検出装置1を統括制御する。ECU3では、一定時間毎に、レーザレーダ2からレーダ信号を受信する。そして、ECU3では、一定時間毎に、レーダ信号に含まれる検出点の情報を用いて障害物検出処理を行い、障害物を検出できた場合にはその障害物の情報を障害物情報信号として運転支援装置に送信する。
【0017】
障害物検出処理について説明する。ECU3では、検出点の情報を取得すると、通常のグルーピングを行う。このグルーピング手法としては、従来の手法を適用し、例えば、2個の検出点間の距離が閾値未満の場合にはその2個の検出点を同じグループとする。図2に示す例の場合、現時刻では、検出点P1,・・・,P12からなるグループG1と検出点P13,・・・,P19からなるグループG2がグルーピングされる。
【0018】
ECU3では、RAMの所定の領域から前時刻での障害物検出結果(グルーピング結果に相当)を読み出す。前時刻での障害物検出結果で2つ以上の障害物の情報がある場合、ECU3では、前時刻での障害物(前時刻でのグループに相当)毎に、前時刻の障害物の位置、速度、移動方向に基づいて現時刻までに移動した位置を推定する。図2に示す例の場合、前時刻の障害物検出結果として、3つの障害物O1,O2,O3がある。障害物O1は前時刻の位置Op1から現時刻ではOp1’まで移動したと推定され、障害物O2は前時刻の位置Op2から現時刻ではOp2’まで移動したと推定され、障害物O3は前時刻の位置Op3から現時刻ではOp3’まで移動したと推定される。このとき、推定現在位置Op1’と推定現在位置Op2’とはかなり接近しており、前時刻で離れた存在していた障害物O1と障害物O2とは現時刻で接近している。
【0019】
続いて、ECU3では、上記の通常のグルーピングでグルーピングされたグループを順次抽出し、全てのグループについて以下の処理を行う。ECU3では、グループに含まれる検出点毎に、検出点と前時刻の各障害物の推定現在位置との間の距離をそれぞれ算出する。そして、ECU3では、グループに含まれる全ての検出点を、最も近い前時刻のグループの推定現在位置に応じて分ける。この際、ECU3では、検出点と推定現在位置との間の距離が閾値以上の場合、前時刻の障害物とは関連がないと判断し、推定現在位置に応じて分けない。この閾値は、現時刻で検出された検出点が前時刻で検出された障害物に対する検出点であるか否かを判別するための閾値であり、実験などで予め設定される。図2に示す例では、現時刻でのグループG1の場合、検出点P1,・・・,P7は推定現在位置Op1’に最も近く、検出点P8,・・・,P12は推定現在位置Op2’に最も近いので、検出点P1,・・・,P7と検出点P8,・・・,P12とに分けられる。現時刻でのグループG2の場合、検出点P13,・・・,P19は推定現在位置Op3’に最も近いが、各検出点13,・・・,P19と推定現在位置Op3’との間の距離は閾値以上なので、障害物O3と関連がなく、分けられない。
【0020】
現時刻でのグループの検出点が分けられた場合、ECU3では、分けられた各検出点群を新たなグループとしてそれぞれ生成し、元のグループと置き換える。図2に示す例では、現時刻でのグループG1が検出点P1,・・・,P7と検出点P8,・・・,P12との2つの検出点群に分けられたので、検出点P1,・・・,P7でグループG11が生成され、検出点P8,・・・,P12でグループG12が生成され、グループG1が消去される。また、現時刻でのグループG2は、そのまま残る。したがって、現時刻での最終的なグルーピング結果としては、グループG11(検出点P1,・・・,P7)、グループG12(検出点P8,・・・,P12)、グループG2(検出点P13,・・・,P19)の3つのグループである。
【0021】
現時刻での全てのグループについての処理が終了すると、ECU3では、最終的に分けられたグループ毎に、グループに含まれる全ての検出点の相対位置、相対方向などからグループ(すなわち、障害物)の位置、大きさ、速度、移動方向などを算出し、これらの障害物検出結果をRAMの所定の領域に一時記憶する。速度や移動方向については、前時刻の障害物情報を利用し(前々時刻などの更に過去の障害物情報も利用してもよい)、前時刻の位置からの変化に基づいて算出される。なお、グループの検出点の数が所定数未満のグループについては、障害物とは認定せず、障害物の情報を算出しない。
【0022】
なお、前時刻で障害物が検出されていない場合又は1つしか障害物が検出されていない場合、前時刻での障害物検出結果に基づいてグループ再分割の処理を行わないので、通常のグルーピングの結果がそのまま用いられる。
【0023】
図3に示す例は、前時刻での障害物検出で別々の障害物として検出されていた2人の歩行者W1,W2が現時刻で接近したために、現時刻での通常のグルーピングにおいて、2人の歩行者W1,W2に対する検出点P1,・・・,P15が1つのグループG1としてグルーピングされた場合である。歩行者W1は、前時刻の位置Wp1から現時刻では位置Wp1’まで移動したと推定される。歩行者W2は、前時刻の位置Wp2から現時刻では位置Wp2’まで移動したと推定される。グループ再分割処理により、検出点P1,・・・,P7は推定現在位置Wp1’に最も近く、検出点P8,・・・,P15は推定現在位置Wp2’に最も近いので、検出点P1,・・・,P7からなるグループG11と検出点P8,・・・,P12からなるグループG12とに分けられる。その結果、現時刻でも、グループG11とグループG12によって、2つの障害物(歩行者W1,W2)として検出できる。
【0024】
図1を参照して、障害物検出装置1における動作について説明する。特に、ECU3における処理については図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0025】
レーザレーダ2では、一定時間毎に、左右方向の所定角度毎にレーザ光を出射するとともにその反射光を受光する。そして、レーザレーダ2では、各検出点についての情報を算出し、レーダ信号をECU3に送信する。
【0026】
レーダ信号を受信する毎(一定時間毎)に、ECU3では、検出点の情報を取得する(S1)。そして、ECU3では、通常のグルーピングによって検出点をグルーピングする(S2)。
【0027】
ECU3では、前時刻での全ての障害物(グループ)に対して、前時刻での位置、速度、移動方向から現時刻での位置をそれぞれ推定する(S3)。
【0028】
ECU3では、S2でグルーピングした現時刻でのグループを順次抽出する。そして、ECU3では、抽出したグループに含まれる全ての検出点を、最も近い前時刻の障害物の推定現在位置に応じて分ける(S4)。この際、近い推定現在位置がない場合には分けない。抽出したグループに含まれる検出点が幾つかに分けられた場合、ECU3では、分けられた検出点毎に新たにグループを生成し、その生成した複数のグループを元となったグループ(抽出されたグループ)と置き換える(S5)。
【0029】
ECU3では、S2でグルーピングした現時刻での全てのグループについての処理が終了したか否かを判定する(S6)。S6にて全てのグループについての処理が終了していないと判定した場合、ECU3では、S4に戻って、次のグループを抽出し、このグループについての処理を行う。
【0030】
S6にて全てのグループについての処理が終了したと判定した場合、ECU3では、最終的に分けられたグループ毎に、各グループに含まれる検出点の情報に基づいて障害物の情報を算出する(S7)。そして、ECU3では、その障害物の情報を障害物情報信号として運転支援装置に送信する。
【0031】
この障害物検出装置1によれば、現時刻で通常のグルーピングの後にそのグルーピングしたグループを前時刻の障害物検出結果(前時刻の最終的なグルーピング結果)を考慮して再分割することにより、複数の障害物が1つのグループとしてグルーピングされた場合でも障害物個々に対応したグループに再分割することができる。その結果、適切なグルーピングを行うことができ、障害物を高精度に検出することができる。特に、障害物検出装置1では、前時刻の障害物の推定現在位置を算出し、現時刻で検出された検出点をその推定現在位置に応じて分けるので、高精度に再分割を行うことができる。
【0032】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0033】
例えば、本実施の形態では車両に搭載される障害物検出装置に適用したが、衝突防止装置、車間制御装置などの運転支援装置や周辺監視装置などの他の装置にも適用可能である。また、検出対象としては、車両周辺の障害物以外にも、物体検出装置の使用用途に応じて様々な物体を検出することも可能である。また、搭載対象としては、車両以外にも、ロボットなどの他のものに搭載することも可能である。
【0034】
また、本実施の形態ではレーダ検出手段としてレーザレーダを用いる構成としたが、ミリ波レーダなどの他のレーダを用いてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では前時刻での障害物検出結果だけを用いる構成としたが、前々時刻での障害物検出結果やそれ以前の障害物検出結果も用いる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態に係る障害物検出装置の構成図である。
【図2】図1のECUにおけるグループ再分割手法の説明図である
【図3】グループ再分割の一例である。
【図4】図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1…障害物検出装置、2…レーザレーダ、3…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を検出するレーダ検出手段と、
前記レーダ検出手段で今回検出された検出点をグルーピングするグルーピング手段と、
前回の複数のグループに基づいて前記グルーピング手段で今回グルーピングされたグループを複数のグループに分割する分割手段と、
各グループの検出点を用いて物体を検出する物体検出手段と
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前回のグループの情報に基づいて該前回のグループの今回の位置を推定する位置推定手段を備え、
前記分割手段は、前記位置推定手段で推定した前回のグループの今回の推定位置と前記グルーピング手段で今回グルーピングされたグループの各検出点の位置との位置関係に基づいて分割することを特徴とする請求項1に記載する物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−145121(P2009−145121A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321096(P2007−321096)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】