説明

物体検知装置

【課題】
主に鉛直方向の磁界を発生させる補助的な励磁コイルを追加して被検知物体の検知率を向上させる物体検知装置を提供する。
【解決手段】
検知ゲート100において、交番磁界を発生させる励磁コイル101と、励磁コイル101によって発生される交番磁界と異なる方向の交番磁界を発生させる励磁コイル103と、励磁コイル101と励磁コイル103とによって発生される交番磁界内を通過する記録紙に付与された磁性ワイヤから発生される信号を検知する検知回路104と信号処理回路105を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機密情報や個人情報等の漏洩防止、有価証券等の偽造防止、商品等の盗難防止等、セキュリティ強化を目的とする種々の方法や装置が提供されている。
【0003】
例えば、ゲートを通過することを禁止する記録紙等に磁性ワイヤを付与して、その記録紙がゲートに進入すると、ゲートに対向されて配設されている励磁コイルによって発生される交番磁界が印加されることによって、記録紙に付与された磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果に伴う急峻な磁気パルスが生じ、その磁気パルスがゲートの検知コイルによって検知されることでゲートに進入した記録紙が検知される検知ゲートの技術が知られている。
【0004】
このような、磁性ワイヤが付与された記録紙を検知する検知ゲートについて図9を参照して説明する。
【0005】
図9は、磁性ワイヤが付与された記録紙を検知する従来の検知ゲートである検知ゲート900について示す模式図であり、図9(a)は2つの励磁コイル901が対向されて配設される検知ゲート900を示す模式図であり、図9(b)は検知ゲート900の励磁コイル901に発生する磁界について示す模式図である。
【0006】
図9(a)に示すように、検知ゲート900には2つの励磁コイル901が対向して配設され、2つの励磁コイル901に励磁回路902によって交流電流が印加されて周辺に交番磁界が発生される。
【0007】
2つの励磁コイル901の間に進入する記録紙に付与された磁性ワイヤに交番磁界が印加されることによって、磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果に伴った急峻な磁気パルスが発生し、発生した磁気パルスを含む磁界の変化によって検知コイル903に発生する誘導電流を検知回路904が検知し、検知された信号が信号処理回路905に送られて、信号処理回路905において磁性ワイヤが発する磁気パルスに対応するパルス信号の検知が行なわれる。
【0008】
磁性ワイヤが発する磁気パルスに対応するパルス信号が検知されると、磁性ワイヤが付与された記録紙が検知されたとして、ブザー等による報知が行なわれ、磁性ワイヤが付与された記録紙が検知ゲート900を通過することを防ぐことができる。
【0009】
また、2つの励磁コイル901より発生される磁界の方向は、図9(b)に示すように、コイルの導線に流れる電流の向きと右ねじの進む向きとを同じにしたときの右ねじが回る方向である。
【0010】
そして、特許文献1には、励磁コイルに囲まれた空間部分に表示装置を設けることで、表示装置より商品情報等の情報を客に提供し、また、客に監視されているとの威圧感を与えず開放感を持たせることができ、検知ゲートの検知能力を低下させることなく、検知ゲートの空間を有効利用する物品監視システムが提案されている。
【特許文献1】特開2002−319077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来のように励磁コイルを対向して配設させた検知ゲートでは、鉛直方向(Z軸方向)の磁界成分が少なく、磁性ワイヤの磁化容易軸と印加される磁界の方向との関係で、磁性ワイヤの磁気パルスが発生しづらい位置と方向が存在してしまう。
【0012】
つまり、磁性ワイヤは長さ方向に磁化容易軸を備えている為、検知ゲートに侵入した磁性ワイヤの長さ方向が鉛直方向と平行に位置するように検知領域に侵入した場合には、鉛直方向の磁界成分が少ない検知領域では、磁性ワイヤに対する磁性ワイヤの磁化容易軸と同じ方向の磁界の印加が少ないので、大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスの検知が困難となる。
【0013】
次に、従来の検知ゲート900に発生する交番磁界の磁力線について図10を参照して説明を行なう。
【0014】
図10は、従来の検知ゲート900に発生される交番磁界の磁力線について示した模式図であり、図10(a)は検知ゲート900に発生される交番磁界の磁力線をX−Y平面に示した模式図であり、図10(b)は検知ゲート900に発生される交番磁界の磁力線をX−Z平面に示した模式図であり、図10(c)は検知ゲート900に発生される交番磁界の磁力線をY−Z平面に示した模式図である。
【0015】
なお、図10は、発生する磁界の方向を分かり易くする為に、2つある励磁コイル901のうち片側の励磁コイル901によって発生される磁界の磁力線についてだけ示している。
【0016】
そして、励磁コイル901によって発生される磁界の磁力線を示す線を細かい点線とそうでない点線との使い分けているが、それは磁界を発する励磁コイル901内の異なる辺より発生される磁界を示している。
【0017】
図10(a)、(b)、(c)に示すように、励磁コイル901によって発生される磁界は、鉛直方向であるZ軸方向の磁界は、励磁コイル901の上下の一部分(参照番号1000、参照番号1001)から発生するだけで少ない。
【0018】
このように、励磁コイルが対向して配設される従来の検知ゲートでは、鉛直方向の磁界が少なく、ゲート間に進入される被検知物体に付与された磁性ワイヤの方向によっては大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスの検知が困難となる。
【0019】
そこで、この発明は、主に鉛直方向の磁界を発生させる補助的な励磁コイルを追加して被検知物体の検知率を向上させる物体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する為に、請求項1の発明は、交番磁界を発生させる第1の励磁巻き線と、前記第1の励磁巻き線によって発生される交番磁界と異なる方向の交番磁界を発生させる第2の励磁巻き線と、前記第1の励磁巻き線と前記第2の励磁巻き線とによって発生される交番磁界内を通過する被検知物体に付与された磁性体から該交番磁界の印加により発生される信号を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力に基づき前記被検知物体を検知する物体検知装置とする。
【0021】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第2の励磁巻き線は、前記第1の励磁巻き線に螺旋状に巻かれた巻き線からなるように構成される。
【0022】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第2の励磁巻き線は、前記第1の励磁巻き線に所定の間隔を設けて螺旋状に巻かれた巻き線からなるように構成される。
【0023】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記第1の励磁巻き線は、互いに対向して配設された第1の巻き線と第2の巻き線からなり、前記第2の励磁巻き線は、前記第1の巻き線と前記第2の巻き線によって挟まれる検知領域の上部または下部の少なくとも一方に配設されるように構成される。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、主に鉛直方向の磁界を発生を増やして、被検知物体の検知率を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係わる物体検知装置の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明に係わる検知ゲート100について図1を参照して説明を行なう。
【0027】
図1は、本発明に係わる検知ゲート100について示した模式図である。
【0028】
本発明に係わる検知ゲート100は、励磁コイル101、励磁回路102、検知コイル103、検知回路104、信号処理回路105、巻き線110を備えて構成される。
【0029】
励磁コイル101は、励磁回路102によって交流電流が印加され、交番磁界を発生する。
【0030】
また、検知ゲート100において、2つの励磁コイル101は対向して配設される。
【0031】
励磁回路102は、励磁コイル101に交流電流を印加する。
【0032】
検知コイル103には、検知ゲート100に生じた磁界の変化に伴う誘導電流が流れる。
【0033】
検知回路104は、検知コイル103に流れた誘導電流の信号を信号処理回路105に送る。
【0034】
信号処理回路105は、検知回路104から送られた信号に基づいて、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスに対応するパルス信号を検知する。
【0035】
巻き線110は、励磁コイル101に導線をトロイダルトランス状に巻き付けたものである。
【0036】
巻き線110が形成される際の隣の線との間隔(巻き線ピッチ)は、密な状態とならずに、励磁コイル101に巻かれた巻き線の前後に所定の空間が確保できるように(参照番号111)疎な状態で巻かれる。
【0037】
巻き線ピッチを疎にする理由は、巻かれる励磁コイル101から発生する磁界を低減させないようにする為である。
【0038】
このように構成される検知ゲート100では、対向して配設された励磁コイル111と巻き線110から交番磁界が発生し、ゲート間に磁性ワイヤが付与された記録紙が進入すると、発生した交番磁界内を通過する磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果に伴う急峻な磁気パルスが発生する。
【0039】
発生した磁気パルスは、検知コイル103に流れた対応する誘導電流に基づいて信号処理回路105によって検知が行なわれ、その後、図示しない報知ブザーの作動により、禁止された記録紙の通過を防ぐことができる。
【0040】
また、記録紙に付与される磁性ワイヤは、Fe−Co系アモルファス材の大バルクハウゼン効果を有する強磁性体で構成され、記録紙に漉き込まれる形で付与される。
【0041】
次に、検知ゲート100の励磁コイル101に巻かれた巻き線110によって発生される磁界の磁力線について図2を参照して説明を行なう。
【0042】
図2は、検知ゲート100の励磁コイル101に巻かれた巻き線110によって発生される磁界の磁力線について示した模式図であり、図2(a)は巻き線110によって発生される交番磁界の磁力線をX−Y平面に示した模式図であり、図2(b)は巻き線110によって発生される交番磁界の磁力線をX−Z平面に示した模式図であり、図2(c)は巻き線110によって発生される交番磁界の磁力線をY−Z平面に示した模式図である。
【0043】
図2(a)、(b)、(c)に示すように、巻き線110によって鉛直方向であるZ軸方向の磁界が多数確認される(参照番号201、参照番号202、参照番号203、参照番号204、参照番号205の枠で囲まれる内部)。
【0044】
このように、励磁コイル101にトロイダルトランス状に導線を巻いた巻き線110によって、鉛直方向(Z軸方向)の磁界が発生される。
【0045】
なお、本発明に係わる検知ゲート100に備えられる巻き線110は、必ずしもZ軸方向の磁界だけを発生させるものではなくX軸、Y軸方向の磁界をも発生させ、より精度よく磁性ワイヤを検知することができる。
【0046】
なお、本実施例においては、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスを検知する検知ゲートにこの発明を適用した例を示したが、磁性体の磁歪振動を検知する検知ゲートにおいても同様に適用可能である。
【実施例2】
【0047】
本発明に係わる検知ゲート300について図3を参照して説明する。
【0048】
図3は、本発明に係わる検知ゲート300について示した模式図である。
【0049】
本発明に係わる検知ゲート300は、励磁コイル301、励磁回路302、検知コイル303、検知回路304、信号処理回路305、励磁コイルA310、検知コイルA311、励磁コイルB320、検知コイルB321を備えて構成される。
【0050】
励磁コイル301は、励磁回路302によって交流電流が印加され、交番磁界を発生する。
【0051】
また、検知ゲート300において、2つの励磁コイル301は対向して配設される。
【0052】
励磁回路302は、励磁コイル301、励磁コイルA310、励磁コイルB320に交流電流を印加する。
【0053】
検知コイル303には、検知ゲート300に生じた磁界の変化に伴う誘導電流が流れる。
【0054】
検知回路304は、検知コイル303、検知コイルA311、検知コイルB321に流れた誘導電流の信号を信号処理回路305に送る。
【0055】
信号処理回路305は、検知回路304から送られた信号に基づいて、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスに対応するパルス信号を検知する。
【0056】
励磁コイルA310は、対向して配設された励磁コイル301で挟まれる検知領域の上部に配設され、励磁回路302と接続される。
【0057】
そして、励磁コイルA310は、励磁回路302によって交流電流が印加され、交番磁界を発生する。
【0058】
検知コイルA311は、励磁コイルA310と同じように、対向して配設された励磁コイル301で挟まれる検知領域の上部に配設され、検知回路304と接続される。
【0059】
そして、検知コイルA311には、検知ゲート300に生じた磁化の変化に伴う誘導電流が流れる。
【0060】
励磁コイルB320は、対向して設置される励磁コイル301によって挟まれる空間の下部である床下部分に配設され、励磁コイルB320の上の床は歩行可能な状態であり、励磁回路302と接続される。
【0061】
そして、励磁コイルB320は、励磁回路302によって交流電流が印加され、磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果を発生させるための交番磁界を発生する。
【0062】
検知コイルB321は、励磁ファイルB320と同じように、検知ゲートの床下部分に配設され、検知コイルB321の上の床は歩行可能な状態であり、検知回路304と接続される。
【0063】
そして、検知コイルB321には、検知ゲート300に生じた磁化の変化に伴う誘導電流が流れる。
【0064】
このように構成される検知ゲート300では、対向して配設された励磁コイル301と検知領域の上部分に配設された励磁コイルA310と床下部分に配設された励磁コイルB320とから交番磁界が発生し、ゲート間に磁性ワイヤが付与された記録紙が進入すると、発生した交番磁界内を通過する磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果に伴う急峻な磁気パルスが発生する。
【0065】
発生した磁気パルスは、検知コイル303、検知コイルA311、検知コイルB321に流れる誘導電流の信号として検知回路304から信号処理回路305に送られ、信号処理回路305によって磁気パルスに対応するパルス信号が検知される。
【0066】
パルス信号が検知された後には、図示しない報知ブザーの作動により、禁止された記録紙の通過を防ぐことができる。
【0067】
また、記録紙に付与される磁性ワイヤは、Fe−Co系アモルファス材の大バルクハウゼン効果を有する強磁性体で構成され、記録紙に漉き込まれる形で付与される。
【0068】
次に、検知ゲート300の検知領域の上部分に配設された励磁コイルA310と床下部分に配設された励磁コイルB320とによって発生される磁界の磁力線について図4を参照して説明を行なう。
【0069】
図4は、検知ゲート300の検知領域の上部分に配設された励磁コイルA310と床下部分に配設された励磁コイルB320とによって発生される磁界の磁力線について示した模式図であり、図4(a)は励磁コイルA310、320によって発生される交番磁界の磁力線をX−Y平面に示した模式図であり、図4(b)は励磁コイルA310、320によって発生される交番磁界の磁力線をX−Z平面に示した模式図であり、図4(c)は励磁コイルA310、320によって発生される交番磁界の磁力線をY−Z平面に示した模式図である。
【0070】
励磁コイルA310と励磁コイルB320とによって発生される磁界の磁力線を示す線を細かい点線とそうでない点線との使い分けているが、それは磁界を発する励磁コイルA310、励磁コイルB320の辺の位置の違いを示している。
【0071】
図4(a)、(b)、(c)に示すように、検知ゲート300の検知領域の上部分に配設された励磁コイルA310と床下部分に配設された励磁コイルB320とによって、鉛直方向であるZ軸方向の磁界が多数確認される(参照番号401、参照番号402、参照番号403、参照番号404の枠で囲まれる内部)。
【0072】
このように、検知領域の上部分に配設した励磁コイルA310と床下部分に配設した励磁コイルB320とによって、鉛直方向(Z軸方向)の磁界が発生される。
【0073】
なお、本実施例では、検知ゲート300は、励磁コイルA310と励磁コイルB320とを両方備えているが、検知領域の上部分に配設される励磁コイルA310だけ配設してもよいし、検知領域の下部分に配設される励磁コイルB320だけ配設してもよい。
【0074】
なお、本発明に係わる検知ゲート300に備えられる励磁コイルA310、励磁コイルB320は、必ずしもZ軸方向の磁界だけを発生させるものではなくX軸、Y軸方向の磁界をも発生させ、より精度よく磁性ワイヤを検知することができる。
【0075】
なお、本実施例においては、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスを検知する検知ゲートにこの発明を適用した例を示したが、磁性体の磁歪振動を検知する検知ゲートにおいても同様に適用可能である。
【実施例3】
【0076】
本発明に係わる検知ゲート500について図5を参照して説明を行なう。
【0077】
図5は、本発明に係わる検知ゲート500について示した模式図である。
【0078】
本発明に係わる検知ゲート500は、励磁コイル501、励磁回路502、検知コイル503、検知回路504、信号処理回路505、励磁コイル510を備えて構成される。
【0079】
励磁コイル501は、励磁回路502によって交流電流が印加され、交番磁界を発生する。
【0080】
また、検知ゲート500において、2つの励磁コイル501は対向して配設される。
【0081】
励磁回路502は、励磁コイル501、励磁コイル510に交流電流を印加する。
【0082】
検知コイル503には、検知ゲート500に生じた磁界の変化に伴う誘導電流が流れる。
【0083】
検知回路504は、検知コイル503に流れた誘導電流の信号を信号処理回路505に送る。
【0084】
信号処理回路505は、検知回路504から送られた信号に基づいて、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスに対応するパルス信号を検知する。
【0085】
励磁コイル510は、励磁コイル501の上部と下部とを取り巻くように導線が上下に巻かれて形成され、励磁回路502と接続される。
【0086】
また、励磁コイル510は、図5に示すように、導線が何度も巻かれることによって形成される帯状の導線部分が鉛直方向に位置するように配設される。
【0087】
このように構成される検知ゲート500では、対向して配設された励磁コイル501と励磁コイル510とから交番磁界が発生し、ゲート間に磁性ワイヤが付与された記録紙が進入すると、発生した交番磁界内を通過する磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果に伴う急峻な磁気パルスが発生する。
【0088】
発生した磁気パルスは、検知コイル503に流れる誘導電流の信号として検知回路504から信号処理回路505に送られ、信号処理回路505で磁気パルスに対応するパルス信号として検知される。
【0089】
パルス信号が検知された後には、図示しない報知ブザーの作動により、禁止された記録紙の通過を防ぐことができる。
【0090】
また、記録紙に付与される磁性ワイヤは、Fe−Co系アモルファス材の大バルクハウゼン効果を有する強磁性体で構成され、記録紙に漉き込まれる形で付与される。
【0091】
次に、検知ゲート500の励磁コイル501に導線が巻かれて形成された励磁コイル510によって発生される磁界の磁力線について図6を参照して説明を行なう。
【0092】
図6は、励磁コイル501に導線が巻かれて形成された励磁コイル510によって発生される磁界の磁力線について示した模式図であり、図6(a)は励磁コイル510によって発生される交番磁界の磁力線をX−Y平面に示した模式図であり、図6(b)は励磁コイル510によって発生される交番磁界の磁力線をX−Z平面に示した模式図であり、図6(c)は励磁コイル510によって発生される交番磁界の磁力線をY−Z平面に示した模式図である。
【0093】
励磁コイル510よって発生される磁界の磁力線を示す線を細かい点線とそうでない点線との使い分けているが、それは磁界を発する励磁コイル510の辺の位置の違いを示している。
【0094】
図6(a)、(b)、(c)に示すように、検知ゲート500の励磁コイル510によって、鉛直方向であるZ軸方向の磁界が確認される(参照番号601、参照番号602の枠で囲まれる内部)。
【0095】
また、図6(a)、(c)に示すように、励磁コイル510によって、Z軸方向だけではなく、Y軸方向の磁界が確認される(参照番号603、参照番号604)。
【0096】
このように、励磁コイル510によって、鉛直方向(Z軸方向)やY軸方向の磁界が発生される。
【0097】
なお、本発明に係わる検知ゲート500に備えられる励磁コイル510は、必ずしもZ軸、Y軸方向の磁界だけを発生させるものではなくX軸方向の磁界をも発生させ、より精度よく磁性ワイヤを検知することができる。
【0098】
なお、本実施例においては、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスを検知する検知ゲートにこの発明を適用した例を示したが、磁性体の磁歪振動を検知する検知ゲートにおいても同様に適用可能である。
【実施例4】
【0099】
本発明に係わる検知ゲート700について図7を参照して説明を行なう。
【0100】
図7は、本発明に係わる検知ゲート700について示した模式図である。
【0101】
本発明に係わる検知ゲート700は、励磁コイル701、励磁回路702、検知コイル703、検知回路704、信号処理回路705、励磁コイル710を備えて構成される。
【0102】
励磁コイル701は、励磁回路702によって交流電流が印加され、交番磁界を発生する。
【0103】
また、検知ゲート700において、2つの励磁コイル701は対向して配設される。
【0104】
励磁回路702は、励磁コイル701、励磁コイル710に交流電流を印加する。
【0105】
検知コイル703には、検知ゲート700に生じた磁界の変化に伴う誘導電流が流れる。
【0106】
検知回路704は、検知コイル703に流れた誘導電流の信号を信号処理回路705に送る。
【0107】
信号処理回路705は、検知回路704から送られた信号に基づいて、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスに対応するパルス信号を検知する。
【0108】
励磁コイル710は、図7に示すように、励磁コイル701の左右の導線を取り巻くように導線が巻かれて形成され、励磁回路702と接続される。
【0109】
また、励磁コイル710は、対向して配設される2つの励磁コイル701に形成される。
【0110】
そして導線が巻かれて形成される励磁コイル710は、図7に示すように、導線が何度も巻かれることによって形成される帯状の導線部分が水平方向に位置するように配設される。
【0111】
このように構成される検知ゲート700では、対向して配設された2つの励磁コイル701と励磁コイル710とから交番磁界が発生し、ゲート間に磁性ワイヤが付与された記録紙が進入すると、発生した交番磁界内を通過する磁性ワイヤに大バルクハウゼン効果に伴う急峻な磁気パルスが発生する。
【0112】
発生した磁気パルスは、検知コイル703に流れる誘導電流の信号として検知回路704から信号処理回路705で送られ、信号処理回路705によって磁気パルスに対応するパルス信号として検知される。
【0113】
パルス信号が検知された後には、図示しない報知ブザーの作動により、禁止された記録紙の通過を防ぐことができる。
【0114】
また、記録紙に付与される磁性ワイヤは、Fe−Co系アモルファス材の大バルクハウゼン効果を有する強磁性体で構成され、記録紙に漉き込まれる形で付与される。
【0115】
次に、検知ゲート700の励磁コイル701に導線が巻かれて形成された励磁コイル710によって発生される磁界の磁力線について図8を参照して説明を行なう。
【0116】
図8は、励磁コイル701に導線が巻かれて形成された励磁コイル710によって発生される磁界の磁力線について示した模式図であり、図8(a)は励磁コイル710によって発生される交番磁界の磁力線をX−Y平面に示した模式図であり、図8(b)は励磁コイル710によって発生される交番磁界の磁力線をX−Z平面に示した模式図であり、図8(c)は励磁コイル710によって発生される交番磁界の磁力線をY−Z平面に示した模式図である。
【0117】
励磁コイル710によって発生される磁界の磁力線を示す線を細かい点線とそうでない点線との使い分けているが、それは磁界を発する励磁コイル710の辺の位置の違いを示している。
【0118】
図8(a)、(b)、(c)に示すように、検知ゲート700の励磁コイル710によって、鉛直方向であるZ軸方向の磁界が確認される(参照番号801、参照番号802、参照番号803、参照番号804の枠で囲まれる内部)。
【0119】
このように、励磁コイル710によって、鉛直方向(Z軸方向)の磁界が発生される。
【0120】
なお、本発明に係わる検知ゲート700に備えられる励磁コイル710は、必ずしもZ軸方向の磁界だけを発生させるものではなくX軸、Y軸方向の磁界をも発生させ、より精度よく磁性ワイヤを検知することができる。
【0121】
なお、本実施例においては、磁性ワイヤの大バルクハウゼン効果に伴う磁気パルスを検知する検知ゲートにこの発明を適用した例を示したが、磁性体の磁歪振動を検知する検知ゲートにおいても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
この発明は、被検知物体を検知する検知ゲートにおいて利用可能である。
【0123】
この発明によれば、対向して配設される励磁コイルに補助的な励磁コイルを追加で配設することによって、鉛直方向の磁界をより多く発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】検知ゲート100について示した模式図である。
【図2】巻き線110によって発生される磁界の磁力線について示した模式図。
【図3】検知ゲート300について示した模式図である。
【図4】励磁コイルA310、励磁コイルB320によって発生される磁界の磁力線について示した模式図。
【図5】検知ゲート500について示した模式図。
【図6】励磁コイル510によって発生される磁界の磁力線について示した模式図。
【図7】検知ゲート700について示した模式図。
【図8】励磁コイル710によって発生される磁界の磁力線について示した模式図。
【図9】従来の検知ゲート900について示した模式図。
【図10】検知ゲート900に発生される交番磁界の磁力線について示した模式図。
【符号の説明】
【0125】
100 検知ゲート
101 励磁コイル
102 励磁回路
103 検知コイル
104 検知回路
105 信号処理回路
110 巻き線
300 検知ゲート
301 励磁コイル
302 励磁回路
303 検知コイル
304 検知回路
305 信号処理回路
310 励磁コイルA
311 検知コイルA
320 励磁コイルB
321 検知コイルB
500 検知ゲート
501 励磁コイル
502 励磁回路
503 検知コイル
504 検知回路
505 信号処理回路
510 励磁コイル
700 検知ゲート
701 励磁コイル
702 励磁回路
703 検知コイル
704 検知回路
705 信号処理回路
710 励磁コイル
900 検知ゲート
901 励磁コイル
902 励磁回路
903 検知コイル
904 検知回路
905 信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番磁界を発生する第1の励磁巻き線と、
前記第1の励磁巻き線から発生する交番磁界と異なる方向の交番磁界を発生する第2の励磁巻き線と、
前記第1の励磁巻き線と前記第2の励磁巻き線とによって発生される交番磁界の印加により被検知物体に付与された磁性体から発生される信号を検知する検知手段と
を具備し、
前記検知手段の検知出力に基づき前記被検知物体を検知する物体検知装置。
【請求項2】
前記第2の励磁巻き線は、前記第1の励磁巻き線に螺旋状に巻かれた巻き線からなる請求項1記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記第2の励磁巻き線は、前記第1の励磁巻き線に所定の間隔を設けて螺旋状に巻かれた巻き線からなる請求項2記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記第1の励磁巻き線は、互いに対向して配設された第1の巻き線と第2の巻き線からなり、
前記第2の励磁巻き線は、前記第1の巻き線と前記第2の巻き線によって挟まれる検知領域の上部または下部の少なくとも一方に配設される
請求項1に記載の物体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−134085(P2008−134085A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318723(P2006−318723)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】