説明

物体識別装置及び物体識別方法

【課題】歩行者等の人物が計測対象物であっても確実に計測対象物を検出して識別することができる物体識別装置を提供する。
【解決手段】物体識別装置は、電磁波発生器101及び送信器102を用いて送信されて計測対象物OBによって反射した電磁波を受信器103によって受信すると、その受信信号の波形に基づいて、計測対象物OBに電磁波の吸収物が含まれている旨を吸収物検出部107によって検出し、吸収物検出部107によって検出された吸収物を含む計測対象物OBの種類を皮膚判別部108によって判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物を検出して識別する物体識別装置及び物体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両周囲の物体を検出して識別することを目的として、レーダを用いて計測対象物に電波を照射し、計測対象物からの反射波強度に基づいて、計測対象物についてのレーダ反射断面積を換算し、時間的な反射波強度のばらつきを用いてレーダ反射断面積から歩行者と自動車、その他の物体を識別する技術が提案されている(特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2004−191131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術においては、計測対象物のレーダ反射断面積に依存する反射波強度を用いて計測対象物を識別していることから、例えば計測対象物としての歩行者が一部見えている場合やそのレーダ反射断面積が小さい場合には、歩行者を検出することができない。
【0004】
本発明は上述した実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、歩行者等の人物が計測対象物であっても確実に計測対象物を検出して識別可能な物体識別装置及び物体識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、送信した電磁波が計測対象物によって反射され、これを受信すると、受信信号の波形に基づいて、計測対象物に電磁波の吸収物が含まれている旨を検出し、検出した吸収物を含む計測対象物の種類を判別する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電磁波の吸収物を検出することができるため、車両や自転車等の鉄やプラスチックと歩行者等の人物とを適切に分離することができ、人物が計測対象物であっても確実に計測対象物を識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態としての物体識別装置について具体的に説明する。
【0008】
[第1実施形態]
[物体識別装置の構成]
本発明の第1の実施形態となる物体識別装置は、歩行者等の人物を確実に検出するために、その皮膚の構造上の特徴と、0.1THz〜3THz帯からなるテラヘルツ帯の電磁波(以下、テラヘルツ波という。)のパルス波とを利用する。皮膚は、角質から真皮まで4層の積層構造を有している。これら4層は、それぞれ、0.1mm〜1mm程度の厚さであるが、これら各層にも、複数の層が存在している。これら複数の層のうち、テラヘルツ波が浸透可能な領域は、30層以上存在し、各層の厚さは0.01mmオーダである。
【0009】
このように、皮膚は、波長0.1mm相当に対して厚さ0.01mm程度という非常に薄い層の重なりによって構成されていることから、皮膚にテラヘルツ波を照射して各層から反射した反射波を重ね合わせると、それぞれの波形は分離検出することができず、合成された波形となる。また、送信するテラヘルツ波の波形は、正の成分が強くなることから、波形合成された結果は、パルス幅が大きく延伸した波形形状となる。さらに、皮膚は水分を多く含むが、電波は水分を通さないことから、テラヘルツ波の反射波によっては、皮膚の背後の血管や臓器は勿論のこと、人物を越えた位置にある物体も検出することができない。
【0010】
物体識別装置は、このような“微細な皮膚構造の特徴”と“皮膚が水分を所定割合以上含む特徴”との2つの作用を組み合わせることにより、皮膚を効果的に検出することができるものである。テラヘルツ波の発生及び送受信系は、テラヘルツ波帯に相当する単パルスを送信する原理であるテラヘルツ波時間分光法(THz−TSD)を用いる。
【0011】
具体的には、物体識別装置は、図1に示すように、電磁波を発生する電磁波送信手段としての電磁波発生器101と、この電磁波発生器101によって発生された電磁波を計測対象物OBに対して送信する電磁波送信手段としての送信器102と、計測対象物OBによって反射した電磁波を受信する電磁波受信手段としての受信器103と、電磁波発生器101によって発生された電磁波を遅延させる遅延器104と、受信器103によって受信した受信信号の波形を観測する波形観測部105と、この波形観測部105によって観測された受信信号としての反射波形のパルス幅が延伸している旨を検出するパルス幅延伸検出部106と、計測対象物OBに電磁波の吸収物が含まれている旨を検出する吸収物検出手段としての吸収物検出部107と、この吸収物検出部107によって検出された吸収物が皮膚であるか否かを判別する物体判別手段としての皮膚判別部108とを備える。
【0012】
電磁波発生器101は、所定のフェムト秒パルス光源から、所定波長且つ所定パルス幅の電磁波パルス光を発生する。具体的には、電磁波発生器101は、波長が1050nm、パルス幅が300fsecのフェムト秒パルス光を一定周期で発生する。この電磁波発生器101によって発生されたパルス光は、図示しないハーフミラーによって2分割され、その一方が、送信用励起光として送信器102に供給され、他方が、受信用同期検波用光として、遅延器104を介して受信器103に供給される。
【0013】
送信器102は、電磁波発生器101によって発生された送信用励起光としてのフェムト秒パルス光をテラヘルツ波パルス光として計測対象物OBに対して送信する。具体的には、送信器102は、キャリア寿命が300fsec程度の低温成長GaAsからなる半導体基板を用いて構成され、電磁波発生器101から送信用励起光として供給されたフェムト秒パルス光が、キャリア寿命がテラヘルツ波帯の時間と同等の3psec程度となるように基板を設計し、送信用励起光の時間微分と、直流電圧又は10kHz程度の交流電圧からなる印加電圧とに基づいて、テラヘルツ波パルス光を発生させる。物体識別装置は、送信器102を介してテラヘルツ波モノパルス光を出力することができるため、テラヘルツ波の波長と同等の約100μmという非常に高精度な距離分解能で距離測定を行うことができる。この送信器102によって送信されたテラヘルツ波パルス光は、計測対象物OBへと到達する。
【0014】
受信器103は、送信器102から送信されて計測対象物OBによって反射した電磁波を、同期検波によって受信する。ここで、同期検波の原理について説明する。フェムト秒パルス光のパルス幅が例えば300fsecであるとき、タイムゲートは300fsecよりも短い時間(例えば30fsec程度の分解能)で同期検波をすることができる。テラヘルツ波パルス光は、1000fsecであることから、後述する遅延器104によってタイムゲートを少しずつ遅延させてサンプリングすることにより、テラヘルツ波パルス光の波形を観測することができる。このような同期検波を実現するために、受信器103は、具体的にはキャリア寿命が300fsec程度の低温成長GaAsからなる半導体基板を用いて構成され、電磁波発生器100から受信用同期検波用光として供給されたフェムト秒パルス光を用い、計測対象物OBによって反射したテラヘルツ波を検波する。このとき、受信器103は、1回の検波で1つの振幅値を検出する。ここで、フェムト秒パルス光のパルス幅は、テラヘルツ波のパルス幅よりも短いことから、一定周期で送出されるフェムト秒パルス光に対して、計測対象物OBの所定領域内で等速直線運動することによる反射テラヘルツ波パルス光の到達時間trvの微小時間遅延(光路変化)により、テラヘルツ波パルス光上の振幅値を複数検出し、テラヘルツ波パルス光のパルス形状を取得する。この受信器103によって受信されたテラヘルツ波パルス光からなる受信信号は、波形観測部105に供給される。
【0015】
遅延器104は、テラヘルツ波の伝播光路長と同期検波用の光路長とを同一にして上述した同期検波を行うために設けられる。すなわち、遅延器104は、電磁波発生器101によってフェムト秒パルス光を2分割させた地点から、テラヘルツ波が伝播するであろう光路長と同じ光路長を伝播させて受信器103に受信用同期検波光を誘導する同期検波用光路を構成するように、電磁波発生器101によって発生された受信用同期検波光としてのフェムト秒パルス光を遅延させる。具体的には、遅延器104は、微小位置決め機能付き光学遅延用スライダや反射板等から構成される。ここで、遅延器104は、パルス光の伝播時間を調整するために、2種類の光学遅延機構を有する。一方の光学遅延機構は、同期検波用光学遅延機能を実現するものであり、電磁波発生器101から計測対象物OBまでの距離dと同じ距離だけ光学遅延をかける。例えば、この光学遅延機構は、光学遅延用スライダを用いて遅延光路を距離dだけ変化させる。また、他方の光学遅延機構は、波形観測用光学遅延機能を実現するものであり、テラヘルツ波パルス光を観測するために、所定の光路遅延を生じさせるようにタイムゲートを走査する。例えば、この光学遅延機構は、上述した30fsec程度の分解能を出すために、1ステップあたり10μmの光路遅延を生じさせるようにタイムゲートを走査する。変位量の最大値は、必要なパルス波形の取得時間によって定まり、例えば100psec間の波形を観測したい場合には、光速に基づいて30mmと定める。
【0016】
波形観測部105は、A/Dコンバータ、CPU(Central Processing Unit)、及びメモリ等から構成され、CPUによって所定のプログラムを実行することによって実現することができる。波形観測部105は、1ステップあたりの光路遅延量と光速とに基づいて、サンプリング点間間隔時間を定め、サンプリング点毎の受信信号のピーク振幅値に基づいて、計測対象物OBから反射して受信器103から供給されるテラヘルツ波パルス光の反射波時間波形を観測する。波形観測部105は、観測した結果を示す情報を、パルス幅延伸検出部106及び吸収物検出部107に供給する。
【0017】
パルス幅延伸検出部106は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現される。ここで、波形観測部105によって観測された受信信号としての反射波形は、上述したように、皮膚の積層構造に起因して、送信器102から送信されたテラヘルツ波パルス光の強い振幅側(例えば正側)にパルスが検出され、負側にはパルスが検出されない。そこで、パルス幅延伸検出部106は、波形観測部105によって観測された受信信号としての反射波形の振幅値が所定の閾値以上の値を連続して継続している時間を観測し、送信波形と比較して反射波形のパルス幅が、皮膚に関する所定倍率以上延伸している旨を検出する。パルス幅延伸検出部106は、パルス幅が延伸している旨を検出した場合には、その旨を示す情報を吸収物検出部107及び皮膚判別部108に供給する。
【0018】
吸収物検出部107は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、パルス幅延伸検出部106によって受信信号としての反射波形のパルス幅が延伸している旨が検出された後に、波形観測部105によって観測された受信信号としての反射波形の振幅値が雑音レベルに関する所定の閾値以下の値である時間が所定の検出領域を超えた場合に、水分を所定割合以上含んだ吸収物が計測対象物OBに含まれているものと検出する。吸収物検出部107は、吸収物を検出した場合には、その旨を示す情報を皮膚判別部108に供給する。
【0019】
皮膚判別部108は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、パルス幅延伸検出部106によって受信信号としての反射波形のパルス幅が延伸している旨が検出された後に、吸収物検出部107によって計測対象物OBに電磁波の吸収物が含まれている旨が検出された場合に、その吸収物が水分を所定割合以上含んだ皮膚であるものと判別する。皮膚判別部108は、判別した結果を示す情報を外部に出力する。
【0020】
[物体識別装置の動作]
このような各部を備える物体識別装置は、図2に示すような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを検出して識別する。
【0021】
まず、物体識別装置は、図2に示すように、ステップS1において、例えば遅延距離d_opt=計測対象物OBまでの距離d−1000mmとなるように、計測対象物OBまでの距離dに基づいて遅延器104の同期検波用光学遅延機構を設定し、所定時間毎にサンプリング時間Tsplに関する距離Δd=Tspl/c(c:光速)だけ変化させるように、図示しないモータを駆動する。続いて、物体識別装置は、ステップS2において、電磁波発生器101によって電磁波を発生させて送信器102に入射し、テラヘルツ波パルス光を計測対象物OBに照射する。
【0022】
続いて、物体識別装置は、ステップS3において、計測対象物OBによって反射されたテラヘルツ波パルス光を受信器103によって受信すると、その受信信号を波形観測部105に供給する。波形観測部105は、受信信号としての反射波形の振幅値を検出する。そして、物体識別装置は、ステップS4において、観測した振幅値を波形観測部105の図示しないメモリに所定のサンプリング回数まで保存したか否かを判定し、保存していない場合には、ステップS5において、ステップS3にて検出された振幅値を反射波振幅値としてメモリに保存し、ステップS2からの処理を繰り返す。
【0023】
一方、物体識別装置は、振幅値がメモリに所定のサンプリング回数まで保存されている場合には、ステップS6において、反射波形の計測を開始し、ステップS7において、パルス幅延伸検出部106により、例えば図3に示すように、反射波形を正規化した上で、送信器102から送信されたテラヘルツ波パルス光に対して位相反転を生じているパルスを検出し、その振幅値が、例えば雑音レベル×1.1程度の所定値を時間軸上で交差する2つの時刻を、パルス幅Pwとして算出する。そして、物体識別装置は、パルス幅延伸検出部106により、例えば送信器102から送信されたテラヘルツ波パルス光のパルス幅を基準のパルス幅Pw_refとしたとき、そのパルス幅Pw_refに対してパルス幅Pwが次式(1)に示すような所定倍率以上であった場合には、ステップS8へと処理を移行し、所定倍率以上でなかった場合には、ステップS11へと処理を移行する。なお、パルス幅延伸検出部106は、次式(1)による判別に代えて、分光分析等で一般的に用いられる全値半幅(FWHM)値を用いて判別するようにしてもよい。
【0024】
Pw/Pw_ref>2 …(1)
ここで、物体識別装置は、パルス幅Pw_refに対してパルス幅Pwが所定倍率以上でなかった場合には、ステップS11において、出力情報にしたがって、吸収物が皮膚以外の計測対象物OBであるものと皮膚判別部108によって判定し、一連の処理を終了する。一方、物体識別装置は、パルス幅Pw_refに対してパルス幅Pwが所定倍率以上であった場合には、ステップS8において、出力情報にしたがって、吸収物が皮膚である可能性ありと皮膚判別部108によって判定する。そして、物体識別装置は、ステップS9において、ステップS6及びステップS7におけるパルス幅延伸検出部106の処理にて、パルス幅が延伸している旨が検出された後、吸収物検出部107により、時間軸上で例えば雑音レベル×1.1程度の所定値以下の振幅値であってメモリに記憶されている振幅値が推移したか否かを判定する。
【0025】
物体識別装置は、振幅値が推移していない場合には、ステップS11において、出力情報にしたがって、吸収物が皮膚以外の計測対象物OBであるものと皮膚判別部108によって判定し、一連の処理を終了する。一方、物体識別装置は、振幅値が推移している場合には、吸収物を検出した旨を示す情報を吸収物検出部107から皮膚判別部108に出力し、ステップS10において、皮膚判別部108により、ステップS8にて判定したパルス幅延伸による皮膚可能性ありとの結果を示す情報と、吸収物検出部107による吸収物検出を示す情報とに基づいて、吸収物が皮膚である計測対象物OBであるものと判定し、一連の処理を終了する。
【0026】
物体識別装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを確実に検出し、その計測対象物OBが歩行者等の皮膚を含む人物であるか否かを高精度に識別することができる。
【0027】
以上詳細に説明したように、本発明の第1の実施形態となる物体識別装置においては、電磁波発生器101及び送信器102を用いて送信されて計測対象物OBによって反射した電磁波を受信器103によって受信すると、その受信信号の波形に基づいて、計測対象物OBに電磁波の吸収物が含まれている旨を吸収物検出部107によって検出し、検出した吸収物を含む計測対象物OBの種類を皮膚判別部108によって判別する。これにより、この物体識別装置においては、電磁波の吸収物を検出することができるため、車両や自転車等の鉄やプラスチックと、歩行者等の人物とを適切に分離することができ、人物が計測対象物OBであっても確実に当該計測対象物OBを識別することができる。
【0028】
また、この物体識別装置においては、受信器103によって受信した受信信号の波形に基づいて、計測対象物OBに水分を所定割合以上含んだ吸収物が含まれている旨を吸収物検出部107によって検出することにより、より高精度に計測対象物OBとしての人物を検出して識別することができる。
【0029】
さらに、この物体識別装置においては、電磁波発生器101及び送信器102を用いてパルス状の電磁波を送信し、受信器103によって受信した受信信号が、送信された電磁波の波形のピーク振幅値に基づいてパルス波形変化した旨を吸収物検出部107によって検出し、その検出結果に基づいて、計測対象物OBに吸収物が含まれている旨を皮膚判別部108によって検出することにより、送信された電磁波の強い振幅側にパルスが検出され、負側にはパルスが検出されなくなる。したがって、この物体識別装置においては、かかる受信信号の波形を観測することにより、高精度に計測対象物OBに含まれる吸収物を検出することができる。
【0030】
さらにまた、この物体識別装置においては、受信器103によって受信した受信信号の振幅値が、雑音レベルに関する所定の閾値以下の値である時間が所定の検出領域を超えた場合に、計測対象物OBに吸収物が含まれている旨を吸収物検出部107によって検出することにより、正側のパルスを検出した後に負側のパルスが検出されないことを利用して、高精度に水分による吸収がある旨を検出することができる。
【0031】
また、この物体識別装置においては、吸収物検出部107の検出結果に基づいて、計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると皮膚判別部108によって判別することにより、高精度に皮膚の存否を判別することができる。
【0032】
さらに、この物体識別装置においては、パルス幅延伸検出部106により、受信器103によって受信した受信信号の波形に基づいて、計測対象物OBが積層構造を有する旨を検出し、パルス幅延伸検出部106によって計測対象物OBが積層構造を有する旨が検出された場合に、吸収物検出部107の検出結果に基づいて、計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると皮膚判別部108によって判別することにより、皮膚の微細な積層構造とともに水分の存在を検出することができ、高精度に皮膚の存否を判別することができる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0034】
本実施形態は、第1実施形態として示した物体識別装置を改良し、被服を加味した計測対象物の識別を行うものである。したがって、本実施形態においては、第1実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0035】
[物体識別装置の構成]
通常の生活環境において、計測対象物OBとしての人物は、被服をまとっている。そのため、物体識別装置においては、被服を加味した計測対象物OBの識別を行うのが望ましい。具体的には、物体識別装置においては、被服と皮膚とをともに検出した場合には、その計測対象物OBが人物であるとの判定を高精度に行うことができる。なお、物体識別装置においては、皮膚のみを検出した場合であっても、他の動物や人工物の皮膚には微細な積層構造と水分とを含むものが存在しないことから、その計測対象物OBが人物であるものと判定すればよい。一方、物体識別装置においては、被服のみを検出した場合には、計測対象物OBが洗濯物や繊維素材を用いて作製された道路上の看板等である場合が存在するため、注意深く判定を行う必要がある。すなわち、被服等の繊維素材は、低い周波数帯域では電磁波を透過する特性を有することから、物体識別装置においては、高周波成分をカットオフし、より繊維素材を多く透過させることにより、皮膚を検出しやすくするようにする。また、物体識別装置においては、被服しか検出することができなかった場合には、計測対象物OBが人物であるか否かが疑わしいものとして判定不能とし、着衣部分を検出したものとして処理を行うようにする。
【0036】
本発明の第2の実施形態となる物体識別装置は、このような処理方針に基づいて、計測対象物OBを検出して識別する。具体的には、物体識別装置は、図4に示すように、上述した送信器102、受信器103、遅延器104、波形観測部105、パルス幅延伸検出部106、吸収物検出部107、及び皮膚判別部108の他に、電磁波を発生する電磁波送信手段としての電磁波発生器201と、計測対象物OBが被服をまとっているか否かを判定する被服判定部209と、計測対象物OBが被服をまとった人物である旨を検出する人物検出部210と、皮膚観測用に再送信する電磁波の周波数帯域と振幅値とを設定する皮膚観測用送信補正部211とを備える。すなわち、物体識別装置は、第1実施形態として示した物体識別装置における電磁波発生器101に代えて電磁波発生器201を備えるとともに、新たに被服判定部209、人物検出部210、及び皮膚観測用送信補正部211を追加した構成とされる。
【0037】
電磁波発生器201は、電磁波発生器101と同様に、所定のフェムト秒パルス光源から、所定波長且つ所定パルス幅のフェムト秒パルス光を発生し、送信器102及び遅延器104に供給する。また、電磁波発生器201は、被服を透過して皮膚を観測できるように皮膚観測用送信補正部211から指示された周波数帯域及び振幅値のフェムト秒パルス光を発生し、送信器102に供給する。
【0038】
被服判定部209は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、波形観測部105によって観測された受信信号としての反射波形に基づいて、計測対象物OBが被服をまとっているか否かを判定する。具体的には、被服判定部209は、パルス波の波形特徴が、第1のパルス波を観測した後に正負に大きく振動する波形を有している場合に、計測対象物OBが被服をまとっているものと判定する。被服判定部209は、判定した結果を示す情報を人物検出部210に供給する。
【0039】
人物検出部210は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、時系列上で、被服検出部209によって計測対象物OBが被服をまとっているものと判定した後に、皮膚判別部108によって計測対象物OBに皮膚が含まれる旨が検出された場合に、当該計測対象物OBが被服をまとった人物である旨を検出する。また、人物検出部210は、被服検出部209によって計測対象物OBが被服をまとっているものと判定され、且つ、皮膚判別部108によって計測対象物OBに皮膚が含まれる旨が検出されなかった場合には、皮膚に関する再計測を行うために、電磁波発生器101から電磁波を再送信させるための再送信指示信号を皮膚観測用送信補正部211に供給する。
【0040】
皮膚観測用送信補正部211は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、人物検出部210から供給された再送信指示信号に基づいて、被服を透過して皮膚を観測できる再送信用の電磁波の周波数帯域と振幅値とを設定し、送信制御信号を電磁波発生器101に供給する。
【0041】
[物体識別装置の動作]
このような各部を備える物体識別装置は、図5に示すような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを検出して識別する。
【0042】
まず、物体識別装置は、図5に示すように、ステップS21において、図2中ステップS1乃至ステップS5と同様の処理を行うと、ステップS22において、波形観測部105による反射波形の取得完了に基づいて、反射波形の計測を開始する。続いて、物体識別装置は、ステップS23において、被服判定部209により、反射波形の全領域について被服素材を検出したか否かを判定する。ここで、被服判定部209は、被服素材を検出した場合には、ステップS24において、被服を検出した旨を示す被服検出信号とアドレスとを人物検出部210に供給し、ステップS26へと処理を移行する。また、被服判定部209は、被服素材を検出していない場合には、ステップS25において、被服を検出しなかった旨を示す被服非検出信号を人物検出部210に供給し、ステップS26へと処理を移行する。
【0043】
続いて、物体識別装置は、ステップS26において、図2中ステップS7乃至ステップS11と同様の処理を行った結果、ステップS27において、皮膚判別部108によって計測対象物OBに皮膚が含まれる旨が検出されたか否かを人物検出部210によって判定する。物体識別装置は、計測対象物OBに皮膚が含まれる旨が検出された場合には、ステップS28において、被服判定部209によって計測対象物OBが被服をまとっている旨が検出されたか否かを人物検出部210によって判定する。ここで、物体識別装置は、計測対象物OBが被服をまとっている旨が検出された場合には、ステップS29において、人物検出部210により、計測対象物OBが被服をまとった人物である旨を示す人物着衣部分検出信号を出力し、一連の処理を終了する。一方、物体識別装置は、計測対象物OBが被服をまとっている旨が検出されなかった場合には、ステップS30において、人物検出部210により、着衣の有無は不明ではあるが計測対象物OBが人物である旨を示す人物検出信号を出力し、一連の処理を終了する。
【0044】
また物体識別装置は、ステップS27において、計測対象物OBに皮膚が含まれる旨が検出されなかった場合には、ステップS31において、被服判定部209によって計測対象物OBが被服をまとっている旨が検出されたか否かを人物検出部210によって判定する。ここで、物体識別装置は、計測対象物OBが被服をまとっている旨が検出された場合には、ステップS32において、再送信指示信号を人物検出部210から皮膚観測用送信補正部211に供給する。これに応じて、皮膚観測用送信補正部211は、例えば0.3THz〜10THz帯域といった既知の送信周波数帯域に基づいて、0.3THz〜10THz帯域といった被服を透過して皮膚を観測できる低周波数帯域を用いたパルス光を発生するように電磁波発生器101を制御し、ステップS11からの処理を繰り返す。なお、物体識別装置は、前回送信したパルス光が既に低周波数帯域を用いている場合には、計測対象物OBに着衣部分が検出された旨を示す着衣部分検出信号を人物検出部210によって出力し、一連の処理を終了する。一方、物体識別装置は、計測対象物OBが被服をまとっている旨が検出されなかった場合には、ステップS33において、人物検出部210により、計測対象物OBが人物ではない旨を示す人物非検出信号を出力し、一連の処理を終了する。
【0045】
物体識別装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを確実に検出し、その計測対象物OBが、被服をまとった人物である旨、着衣の有無は不明ではあるが人物である旨、人物であるか否かは不明ではあるが着衣部分を含む旨、及び、人物ではない旨の別を高精度に識別することができる。
【0046】
以上詳細に説明したように、本発明の第2の実施形態となる物体識別装置においては、計測対象物OBが繊維素材を含むか否かを被服判定部209によって判定し、計測対象物OBに繊維素材が含まれているものと判定され、且つ、皮膚判別部108によって計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、当該計測対象物OBが着衣人物である旨を人物検出部210によって検出する。このように、この物体識別装置においては、被服の存在の判定と皮膚の存在の判定とを同時に行うことから、着衣人物を高精度に検出することができる。
【0047】
また、この物体識別装置においては、被服判定部209によって計測対象物OBに繊維素材が含まれているものと判定され、且つ、皮膚判別部108によって計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると判別されなかった場合に、送信器102から送信される電磁波の周波数帯域と振幅値とを皮膚観測用送信補正部211によって設定し、皮膚に関する再計測を行うことにより、異なる条件で皮膚の存否を確実に判別することができる。
【0048】
さらに、この物体識別装置においては、送信器102から送信される電磁波の周波数帯域を低周波数帯域化するように、皮膚観測用送信補正部211によって電磁波発生器201を制御することにより、効率的に被服を電磁波に透過させることができ、高精度に皮膚の存否を判別することができる。
【0049】
さらにまた、この物体識別装置においては、時系列上で、被服判定部209によって計測対象物OBに繊維素材が含まれているものと判定された後に、皮膚判別部108によって計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、当該計測対象物OBが着衣人物である旨を人物検出部210によって検出することにより、確実に人物を検出することができる。
【0050】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0051】
本実施形態は、第2実施形態として示した物体識別装置を改良し、計測対象物としての人物の身長や歩行状態をも識別可能としたものである。したがって、本実施形態においては、第2実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0052】
[物体識別装置の構成]
本発明の第3の実施形態となる物体識別装置は、図6に示すように、第2実施形態として示した3つの物体識別装置301H,301M,301Lを、地上から計測対象物OBとしての人物の身長を含む領域にテラヘルツ波パルス光を送信可能とするように、異なる車高位置に配設して構成される。具体的には、物体識別装置は、図7に示すように、3つの物体識別装置301H,301M,301Lと、計測対象物OBとしての人物の歩行状態を検出する2つの歩行検出部302M,302Lと、計測対象物OBとしての人物の身体部位を検出する路上歩行者部位検出部303と、車両信号に基づいて物体識別装置301H,301M,301Lからのテラヘルツ波パルス光の送信指示内容を設定する送信指示設定部304とを備える。
【0053】
物体識別装置301Hは、身長1.6m以上の歩行者の頭部を検出可能とするように、例えば地上から1.6m程度の車両の上端部付近に配設され、車両進行方向と水平にテラヘルツ波パルス光の送信方向が設定される。物体識別装置301Hは、送信指示設定部304の指示に基づいて、第2実施形態にて説明したような計測対象物OBの人物検出を行い、人物を検出した旨を示す検出信号を路上歩行者部位検出部303に供給する。物体識別装置においては、この物体識別装置301Hによって身長1.6m以上の歩行者の頭部を検出することより、当該歩行者の身長を分類することができる。
【0054】
物体識別装置301Mは、例えば地上から1.0m程度の車両の高さ方向中央付近に配設され、車両進行方向と水平にテラヘルツ波パルス光の送信方向が設定される。物体識別装置301Mは、送信指示設定部304の指示に基づいて、第2実施形態にて説明したような計測対象物OBの人物検出を行い、人物を検出した旨を示す検出信号を歩行検出部302Mに供給する。
【0055】
物体識別装置301Lは、例えば地上から0.5m程度の車両のバンパー付近に配設され、車両進行方向と水平にテラヘルツ波パルス光の送信方向が設定される。物体識別装置301Lは、送信指示設定部304の指示に基づいて、第2実施形態にて説明したような計測対象物OBの人物検出を行い、人物を検出した旨を示す検出信号を歩行検出部302Lに供給する。
【0056】
なお、これら3つの物体識別装置301H,301M,301Lは、それぞれ、第2実施形態にて説明した構成に加え、送信指示設定部304の指示に基づいて、仰角方向に可変なモータや回転治具等からなる機構を用いて、車両の揺動による影響を防止する揺動防止機構を有する。また、物体識別装置301H,301M,301Lは、それぞれ、送信指示設定部304によって設定された探索領域情報に基づいて方位角方向に可変なモータや回転治具等からなる機構を用いて、テラヘルツ波パルス光を任意方向に送信するように当該装置全体を走査する走査機構を有する。
【0057】
歩行検出部302Mは、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、物体識別装置301Mによって計測対象物OBとしての人物が検出されると、歩行時の手の往復運動に関する所定時間内(例えば1秒)における皮膚及び被服の検出回数と周期性とに基づいて、当該人物の歩行状態を検出する。具体的には、歩行検出部302Mは、物体識別装置301Mから供給された情報を、腕振り動作等の歩行動作に関する所定時間だけ積分し、人物の歩行状態を検出する。歩行検出部302Mは、人物の動きの変化を含む歩行検出信号を、物体識別装置301Mの種別を示す種別判定信号とともに路上歩行者部位検出部303に供給する。
【0058】
歩行検出部302Lは、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、物体識別装置301Lによって計測対象物OBとしての人物が検出されると、歩行時の足の往復運動に関する所定時間内(例えば1秒)における皮膚及び被服の検出回数と周期性とに基づいて、当該人物の歩行状態を検出する。具体的には、歩行検出部302Lは、物体識別装置301Lから供給された情報を、足の繰り出し動作等の歩行動作に関する所定時間だけ積分し、人物の歩行状態を検出する。歩行検出部302Lは、人物の動きの変化を含む歩行検出信号を、物体識別装置301Lの種別を示す種別判定信号とともに路上歩行者部位検出部303に供給する。
【0059】
路上歩行者部位検出部303は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、物体識別装置301Hから供給された検出信号と、歩行検出部302M,302Lのそれぞれから供給された歩行検出信号及び種別判定信号とに基づいて、計測対象物OBとしての人物の身体部位を検出する。具体的には、路上歩行者部位検出部303は、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれによる皮膚及び被服の検出結果と、歩行検出部302M,302Lのそれぞれによる人物の動きの変化の検出結果とに基づいて、例えば図8に示すような状態遷移表を参照し、計測対象物OBとしての人物の身体部位を検出し、その身長及び歩行状態を判定する。例えば、路上歩行者部位検出部303は、物体識別装置301Hによって皮膚が検出された場合には、計測対象物OBとしての人物の胴体の上部や顔部が検出されたものと判定し、物体識別装置301Lによって皮膚が検出された場合には、足部が検出されたものと判定する。
【0060】
送信指示設定部304は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、車両信号に基づいて、物体識別装置301H,301M,301Lからのテラヘルツ波パルス光の送信指示内容を設定する。具体的には、送信指示設定部304は、車両信号から、車両の揺動に関する揺動情報と、例えば運転者の注視方向以外の領域や交差点の進行方向等の車両の外界及び内界認識結果等を含む注意領域情報とを取得する。そして、送信指示設定部304は、車両のピッチングやヨーイング等の揺動の影響を防止するために、取得した揺動情報に基づいて、ピッチング成分やヨーイング成分を補正するための揺動補正信号を生成し、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれの揺動防止機構を制御する。また、送信指示設定部304は、取得した注意領域情報に基づいて、物体識別装置301H,301M,301Lが混信しないようなタイミング制御信号を生成し、当該物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれの走査機構を制御する。さらに、送信指示設定部304は、車速に応じて、所定距離や所定角度の領域内の計測対象物OBを探索するための探索領域情報を設定し、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれの走査機構を制御する。
【0061】
[物体識別装置の動作]
このような各部を備える物体識別装置は、図9に示すような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを検出して識別する。
【0062】
まず、物体識別装置は、図9に示すように、ステップS41において、送信指示設定部304により、車両信号から取得した揺動情報に基づいて揺動補正値を算出し、揺動補正信号を生成する。また、物体識別装置は、ステップS42において、送信指示設定部304により、車両信号から取得した注意領域情報に基づいて、距離や方位に関する探索領域情報を算出する。
【0063】
続いて、物体識別装置は、ステップS43において、送信指示設定部304から物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれに制御信号を供給すると、ステップS44において、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれによってテラヘルツ波パルス光を送信してその反射波形を観測し、歩行検出部302M,302Lにより、物体識別装置301M,301Lから供給された情報に基づいて計測対象物OBとしての人物の歩行状態を検出し、歩行検出信号と種別判定信号とを路上歩行者部位検出部303に供給する。また、物体識別装置301Hは、検出信号を路上歩行者部位検出部303に供給する。そして、物体識別装置は、ステップS45において、路上歩行者部位検出部303により、先に図8に示したような状態遷移表に基づいて、計測対象物OBとしての人物の身長と歩行状態とを判定し、一連の処理を終了する。
【0064】
物体識別装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象物OBとしての人物を確実に検出し、その人物の身長や歩行状態を高精度に判定することができる。特に、物体識別装置は、人物の身体部位を判定することにより、例えば物陰から人物の一部分のみが見えている状態であっても、その人物の身長を高精度に判定することができる。したがって、物体識別装置は、衝突が不可避とされた時点で人物を発見した場合には、当該人物の顔部さえ計測できれば、その人物の身長を判定することができる。さらに、物体識別装置は、いわゆるTime of Flight方式による測距を行うことも可能であることから、高精度に衝突時刻を推定することができる。そのため、物体識別装置は、歩行者用跳ね上げフードの開閉量や開閉タイミングを精度よく制御することが可能となり、死亡事故の原因になりやすい頭部の損傷度合いの大幅な低減化を期待することができる。
【0065】
なお、物体識別装置においては、設置位置を異ならせた複数の物体識別装置301H,301M,301Lを設ける代わりに、1つの物体識別装置301から送信されるテラヘルツ波パルス光を仰角及び方位角方向に走査させるようにしてもよく、これにより、省スペース化を図ることができる。また、物体識別装置においては、車両のみならず屋外のセキュリティ装置等に設置することにより、設置場所の向きや動きに依存することがなくなり、高速且つ高精度な検出率を必要とする用途に適用するようにしてもよい。
【0066】
以上詳細に説明したように、本発明の第3の実施形態となる物体識別装置においては、物体識別装置301H,301M,301Lを異なる位置に配設する等により、地上から計測対象物OBとしての人物の身長を含む領域に電磁波を送信可能とするように送信器102を配設し、受信器103によって受信した受信信号の波形に基づいて、計測対象物OBとしての人物の身体部位を路上歩行者部位検出部303によって検出する。これにより、この物体識別装置においては、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれによって皮膚を検出するのに応じて、計測対象物OBとしての人物の身長を高精度に分類することができる。
【0067】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0068】
本実施形態は、第3実施形態として示した物体識別装置を改良し、頭部の検出精度を高めたものである。したがって本実施形態においては、第3実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0069】
[物体識別装置の構成]
本発明の第4の実施形態となる物体識別装置は、顔部の皮膚厚さが胴体部等の皮膚厚さの平均値の半分程度であることを利用し、送信するテラヘルツ波パルス光のパルス幅をより狭めることによって奥行き測距精度を高め、身体部位による皮膚の積層厚さの差異を検出する。具体的には、物体識別装置は、図10に示すように、上述した物体識別装置301H,301M,301L、及び歩行検出部302M,302Lの他に、計測対象物OBとしての人物の身体部位を検出する路上歩行者部位検出部403と、車両信号に基づいて物体識別装置301H,301M,301Lからのテラヘルツ波パルス光の送信指示内容を設定する送信指示設定部404と、計測対象物OBとしての人物の顔部を判定する2つの顔部判定部405H,405Mとを備える。すなわち、物体識別装置は、第3実施形態として示した物体識別装置における路上歩行者部位検出部303に代えて路上歩行者部位検出部403を備え、送信指示設定部304に代えて送信指示設定部404を備えるとともに、新たに顔部判定部405H,405Mを追加した構成とされる。
【0070】
顔部判定部405Hは、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、物体識別装置301Hによって計測対象物OBとしての人物の皮膚が検出された場合に、皮膚の厚さを計測するために、顔部指示信号を送信指示設定部404に供給する。また、皮膚厚さが厚い腹部等の胴体部によって反射した受信信号としての反射波形のパルス幅Pwは、例えば図11に示すように、皮膚厚さが半分程度と薄い顔部によって反射した反射波形のパルス幅よりも延伸したものとなる。そこで、顔部判定部405Hは、送信指示設定部404によって指示された所定のパルス幅条件でテラヘルツ波パルス光を送信して計測された反射波形のパルス幅の差異に基づいて、物体識別装置301Hにおける波形観測部105によって観測されたパルス幅の比較を行い、皮膚厚さ分類に基づく顔部判定を行う。具体的には、顔部判定部405Hは、パルス幅が1.5倍以上の差異を有する旨を検出したときに、顔部であるか胴体部であるかを判定する。顔部判定部405Hは、顔部であるものと判定した場合には、顔部検出信号を路上歩行者部位検出部403に供給する。
【0071】
顔部判定部405Mは、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、物体識別装置301Mによって計測対象物OBとしての人物の皮膚が検出された場合に、皮膚の厚さを計測するために、顔部指示信号を送信指示設定部404に供給する。また、顔部判定部405Mは、送信指示設定部404によって指示された所定のパルス幅条件でテラヘルツ波パルス光を送信して計測された反射波形のパルス幅の差異に基づいて、物体識別装置301Mにおける波形観測部105によって観測されたパルス幅の比較を行い、皮膚厚さ分類に基づく顔部判定を行う。顔部判定部405Mは、顔部であるものと判定した場合には、顔部検出信号を路上歩行者部位検出部403に供給する。
【0072】
路上歩行者部位検出部403は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれによる皮膚及び被服の検出結果と、顔部判定部405H,405Mによる顔部の判定結果と、歩行検出部302M,302Lのそれぞれによる人物の動きの変化の検出結果とに基づいて、例えば図12に示すような状態遷移表を参照し、計測対象物OBとしての人物の身体部位を検出し、その身長及び歩行状態を判定する。
【0073】
送信指示設定部404は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、送信指示設定部304と同様に、車両信号に基づいて、物体識別装置301H,301M,301Lからのテラヘルツ波パルス光の送信指示内容を設定する。このとき、送信指示設定部404は、皮膚厚さを計測するために、物体識別装置301H,301Mから送信されるテラヘルツ波パルス光のスポット径と周波数帯域とを送信指示内容に含める。すなわち、物体識別装置301H,301Mにおける送信器102は、それぞれ、所定のズーム可変機構を用いて、送信するテラヘルツ波パルス光のスポット径と計測対象物OBまでの距離とに応じてレンズ位置を調節し、計測対象物OBに集光する機能を有する。そして、送信指示設定部404は、顔部判定部405H,405Mのそれぞれから供給された顔部指示信号に基づいて、例えば0.1mm径程度の小スポット径としたり、3THz〜10THz帯程度に高周波数化したりしてテラヘルツ波パルス光を送信するように、物体識別装置301H,301Mのそれぞれのビーム可変機構を制御する。
【0074】
[物体識別装置の動作]
このような各部を備える物体識別装置は、図13に示すような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを検出して識別する。
【0075】
まず、物体識別装置は、図13に示すように、ステップS51において、送信指示設定部404により、車両信号から取得した揺動情報に基づいて揺動補正値を算出し、揺動補正信号を生成するとともに、ステップS52において、車両信号から取得した注意領域情報に基づいて、距離や方位に関する探索領域情報を算出する。続いて、物体識別装置は、ステップS53において、送信指示設定部404から物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれに制御信号を供給すると、ステップS54において、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれによってテラヘルツ波パルス光を送信してその反射波形を観測し、歩行検出部302M,302Lにより、物体識別装置301M,301Lから供給された情報に基づいて計測対象物OBとしての人物の歩行状態を検出し、歩行検出信号と種別判定信号とを路上歩行者部位検出部403に供給する。また、物体識別装置301Hは、検出信号を路上歩行者部位検出部403に供給する。
【0076】
そして、物体識別装置は、ステップS55において、顔部判定部405H,405Mにより、物体識別装置301H,301Mの出力について皮膚を検出しなかった場合には、ステップS58へと処理を移行し、路上歩行者部位検出部403により、先に図12に示したような状態遷移表に基づいて、計測対象物OBとしての人物の身長と歩行状態とを判定し、一連の処理を終了する。また、物体識別装置は、顔部判定部405H,405Mにより、物体識別装置301H,301Mの出力について皮膚を検出した場合には、ステップS56において、送信指示設定部404により、物体識別装置301H,301Mから送信されるテラヘルツ波パルス光について、顔部の皮膚厚さに関するスポット径及び/又は周波数帯域を送信指示内容に含めるように変更した制御信号を生成し、その制御信号を物体識別装置301H,301Mのそれぞれに供給する。これに応じて、物体識別装置は、物体識別装置301H,301M,301Lのそれぞれによってテラヘルツ波パルス光を再送信してその反射波形を観測し、ステップS54と同様に、歩行検出部302M,302Lにより、物体識別装置301M,301Lから供給された情報に基づいて計測対象物OBとしての人物の歩行状態を検出し、歩行検出信号と種別判定信号とを路上歩行者部位検出部403に供給するとともに、物体識別装置301Hから検出信号を路上歩行者部位検出部403に供給する。
【0077】
続いて、物体識別装置は、ステップS57において、物体識別装置301H,301Mによって反射波形を取得した後、顔部判定部405H,405Mによって顔部判定を行い、顔部検出信号を路上歩行者部位検出部403に供給する。そして、物体識別装置は、ステップS58において、路上歩行者部位検出部403により、先に図12に示したような状態遷移表に基づいて、計測対象物OBとしての人物の身長と歩行状態とを判定し、一連の処理を終了する。
【0078】
物体識別装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象物OBとしての人物を確実に検出し、その人物の身長や歩行状態を高精度に判定することができる。特に、物体識別装置は、人物の顔部を判定することにより、より高精度に頭部を検出することができる。また、物体識別装置は、物体識別装置301H,301Mを複数の位置に設置して計測対象物OBとしての人物の頭部を検出することができるため、センサ数を増加させることなく、その人物の身長のカテゴリー分けすることができる。
【0079】
以上詳細に説明したように、本発明の第4の実施形態となる物体識別装置においては、物体識別装置301H,301Mにおける皮膚判別部108によって計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、送信器102から送信される電磁波の送信内容を送信指示設定部404によって設定し、皮膚の厚さの判定に関する再計測を行う。このように、この物体識別装置においては、電磁波の送信方法を変更して皮膚厚さの差異を検出することから、高精度に皮膚を検出することができる。
【0080】
またこの物体識別装置においては、送信器102から送信される電磁波の周波数帯域を高周波数帯域化するように、及び/又は、送信器102から送信される電磁波のスポット径を小さくするように、送信指示設定部404によって物体識別装置301H,301Mにおける電磁波発生器201を制御することにより、皮膚厚さの差異による人物の身体部位の分類を高精度に行うことができる。
【0081】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0082】
本実施形態は、第2実施形態及び第4実施形態として示した物体識別装置を改良し、天候の影響を加味して計測対象物を識別するようにしたものである。したがって、本実施形態においては、第2実施形態及び第4実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0083】
[物体識別装置の構成及び動作]
テラヘルツ波は、他の波長域と比べ、水蒸気に対する影響を強く受ける。そこで、物体識別装置においては、周波数帯域のうち、水蒸気に強く吸収される帯域については、雨量等に応じて比較的影響の少ない周波数帯域に狭め、反射波形の強度を高めるのが望ましい。また、テラヘルツ波の水蒸気スペクトラムは、狭帯域な吸収線がみられる。そのため、物体識別装置においては、周波数解析を行ってスペクトラム線を埋めることより、水蒸気によってパルス波が乱れる現象を抑制することができる。さらに、物体識別装置においては、皮膚検出において正パルスのみを効率よく検出することが求められることから、S/Nを高める工夫を行うことにより、悪天候時でも効率よく計測対象物OBを検出することが可能となる。
【0084】
本発明の第5の実施形態となる物体識別装置は、このような処理方針に基づいて、計測対象物OBを検出して識別する。なお、この物体識別装置は、第4実施形態にて説明した物体識別装置301H,301M,301Lに適用されるものである。具体的には、物体識別装置は、図14に示すように、上述した送信器102、受信器103、遅延器104、波形観測部105、パルス幅延伸検出部106、吸収物検出部107、皮膚判別部108、電磁波発生器201、被服判定部209、人物検出部210、及び皮膚観測用送信補正部211の他に、車両信号に基づいて雨天時又は霧時における送信器102からのテラヘルツ波パルス光の送信指示内容を補正する雨天用送信補正部501と、湿度に応じて反射波形を補正する高湿用波形補正部502とを備える。すなわち、物体識別装置は、第2実施形態として示した物体識別装置に対して、新たに雨天用送信補正部501及び高湿用波形補正部502を追加した構成とされる。
【0085】
雨天用送信補正部501は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、車両信号に基づいて、送信器102から送信されるテラヘルツ波パルス光の雨天時又は霧時における送信指示内容を補正する。具体的には、雨天用送信補正部501は、車両信号から、例えば、ワイパー稼動状態、雨量センサの情報、フォグランプの稼動状態等を取得し、天候が雨天又は霧である旨を検出すると、図示しないメモリ等に格納されている既知の雨天時又は霧時におけるテラヘルツ波パルス光の減衰特性データに基づいて、送信器102から送信するテラヘルツ波パルス光の周波数帯域を設定する。ここで、テラヘルツ波は、降雨減衰によって大きく減衰を受ける。そこで、雨天用送信補正部501は、例えば図15に示すように、0.3THz〜1THz帯に周波数帯域を限定し、電磁波発生器201及び送信器102によって送信される送信用励起光としてのテラヘルツ波パルス光を低周波数帯域で高出力となるように、皮膚観測用送信補正部211によって生成された送信制御信号を補正し、補正後の送信制御信号を電磁波発生器201に供給する。
【0086】
高湿用波形補正部502は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、波形観測部105によって観測された反射波形について、例えば図16(a)に示すような水蒸気等の湿気による波形の雑音レベル悪化を補正する。すなわち、テラヘルツ波は、複数の鋭い水蒸気スペクトラムが存在し、屋内外の環境において湿気によってテラヘルツ波パルス光の反射波形が乱れる。これを補正するため、高湿用波形補正部502は、以下の処理を行う。まず、高湿用波形補正部502は、波形観測部105によって観測されたテラヘルツ波パルス光を周波数解析し、図16(b)に示すように、図示しないメモリ等に格納されている既知の水蒸気減衰特性を示す情報との照合を行う。高湿用波形補正部502は、水蒸気減衰特性と合致する反射波形のピークについては、図16(c)に示すように、例えば線形近似等、前後の周波数帯域の値の関係を利用して、振幅特性のピークを埋める処理を行う。また、高湿用波形補正部502は、これと同時に、反射波形の位相特性についても、前後の周波数帯域の値の関係を利用して補完する。そして、高湿用波形補正部502は、全てのピークについて同様の処理を行った後、逆フーリエ変換を行うことにより、図16(d)に示すように、時間軸上の特性へと変換する。高湿用波形補正部502は、このようにして補正したテラヘルツ波パルス光の反射波形を後段のパルス幅延伸検出部106、吸収物検出部107、及び被服判定部209に供給する。
【0087】
このような各部を備える物体識別装置は、先に図5に示したような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを検出して識別する。特に、物体識別装置は、天候が雨天又は霧である場合には、雨天用送信補正部501によって補正された送信指示内容に基づいて、送信器102からテラヘルツ波パルス光を送信し、波形観測部105によって観測された反射波形の湿気による雑音レベル悪化を高湿用波形補正部502によって補正する。これにより、物体識別装置は、天候が雨天又は霧であっても、計測対象物OBを確実に検出し、その計測対象物OBが、被服をまとった人物である旨、着衣の有無は不明ではあるが人物である旨、人物であるか否かは不明ではあるが着衣部分を含む旨、及び、人物ではない旨の別を高精度に識別することができる。
【0088】
以上詳細に説明したように、本発明の第5の実施形態となる物体識別装置においては、天候が雨天又は霧である場合に、既知の雨天時又は霧時における電磁波の減衰特性に基づいて、送信器102から送信される電磁波の送信内容を雨天用送信補正部501によって設定する。このように、この物体識別装置においては、悪天候時に送信する電磁波の周波数帯域を変更することから、天候条件に応じた高精度な皮膚の存否の判別を行うことができる。
【0089】
また、この物体識別装置においては、天候が雨天又は霧である場合に、受信器103によって受信した受信信号について、湿気による波形の雑音レベル悪化を高湿用波形補正部502によって補正することにより、悪天候時であっても、計測対象物OBを確実に検出して識別することができる。
【0090】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
【0091】
本実施形態は、第5実施形態として示した物体識別装置を改良し、反射波形の検出領域の終端に基づいて電磁波発生器の動作を終了させるようにしたものである。したがって本実施形態においては、第5実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0092】
[物体識別装置の構成及び動作]
皮膚は水分を含んだ構造であることから、電磁波は皮膚及び人体を透過することができない。そのため、皮膚判別部108によって皮膚が検出された後においてもテラヘルツ波パルス光を送信し続けることは無意味である。本発明の第6実施形態として示す物体識別装置は、かかる場合に、電磁波発生器201による電磁波の発生を停止させる。具体的には、物体識別装置は、図17に示すように、上述した送信器102、受信器103、遅延器104、波形観測部105、パルス幅延伸検出部106、吸収物検出部107、皮膚判別部108、電磁波発生器201、被服判定部209、人物検出部210、皮膚観測用送信補正部211、雨天用送信補正部501、及び高湿用波形補正部502の他に、反射波形の検出領域の終端を判定する検出終端判定部601を備える。すなわち、物体識別装置は、第5実施形態として示した物体識別装置に対して、新たに検出終端判定部601を追加した構成とされる。
【0093】
検出終端判定部601は、CPUやメモリ等を用いて実行される所定のプログラムによって実現され、皮膚判別部108によって皮膚の存在が検出されると、受信信号としての反射波形の検出領域の終端を判定し、その終端に基づいて、電磁波発生器201の動作を終了させる。
【0094】
このような各部を備える物体識別装置は、先に図5に示したような一連の手順にしたがって、計測対象物OBを検出して識別する。このとき、物体識別装置は、皮膚検出後に、反射波形の検出領域の終端が検出終端判定部601によって判定された場合には、電磁波発生器201の動作を終了させ、テラヘルツ波パルス光の送信を終了させる。これにより、物体識別装置は、不要なテラヘルツ波パルス光を送信する必要がなくなり、省電力化を図ることができる。また、物体識別装置は、第4実施形態にて説明した物体識別装置301H,301M,301Lに適用した場合のように、複数のテラヘルツ波パルス光を混信させないようにする必要がある場合に、皮膚検出後はテラヘルツ波パルス光を送信する必要がないことから、他の検出領域について計測対象物OBを探索することも可能となり、効率よく処理を行うことができる。
【0095】
以上詳細に説明したように、本発明の第6の実施形態となる物体識別装置においては、皮膚判別部108によって計測対象物OBが吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、受信器103によって受信した受信信号の検出領域の終端を検出終端判定部601によって判定し、その終端に基づいて、電磁波発生器201の動作を終了させることにより、不要な電磁波を送信する必要がなくなり、省電力化を図ることができる。
【0096】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはなく、この実施の形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施形態となる物体識別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となる物体識別装置において、計測対象物を検出して識別する際の一連の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態となる物体識別装置の動作を説明するための図であり、(a)は皮膚によって反射された受信信号の波形を示し、(b)は送信したテラヘルツ波パルス光の波形を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態となる物体識別装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態となる物体識別装置において、計測対象物を検出して識別する際の一連の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態となる物体識別装置の車両に対する設置位置を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態となる物体識別装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態となる物体識別装置が備える路上歩行者部位検出部によって参照される状態遷移表の具体例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態となる物体識別装置において、計測対象物を検出して識別する際の一連の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第4の実施形態となる物体識別装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4の実施形態となる物体識別装置の動作を説明するための図であり、(a)は皮膚によって反射された受信信号の波形を示し、(b)は顔部と胴体部とによって反射された受信信号の波形を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施形態となる物体識別装置が備える路上歩行者部位検出部によって参照される状態遷移表の具体例を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態となる物体識別装置において、計測対象物を検出して識別する際の一連の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第5の実施形態となる物体識別装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第5の実施形態となる物体識別装置が備える雨天用送信補正部によるテラヘルツ波パルス光の周波数帯域の補正内容を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施形態となる物体識別装置が備える高湿用波形補正部の動作を説明するための図であり、(a)は皮膚によって反射された雑音レベルが高い受信信号の波形を示し、(b)は受信信号の周波数特性と既知の水蒸気減衰特性とを示し、(c)は補正後の受信信号の周波数特性を示し、(d)は補正後の受信信号の波形を示す図である。
【図17】本発明の第6の実施形態となる物体識別装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0098】
101,201:電磁波発生器
102:送信器
103:受信器
104:遅延器
105:波形観測部
106:パルス幅延伸検出部
107:呼吸物検出部
108:皮膚判別部
209:被服判定部
210:人物検出部
211:皮膚観測用送信補正部
301H,301M,301L:物体識別装置
302M,302L:歩行検出部
303,403:路上歩行者部位検出部
304,404:送信指示設定部
405H,405M:顔部判定部
501:雨天用送信補正部
502:高湿用波形補正部
601:検出終端判定部
OB:計測対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を計測対象物に対し送信する電磁波送信手段と、
前記電磁波送信手段から送信されて前記計測対象物によって反射された電磁波を受信する電磁波受信手段と、
前記電磁波受信手段によって受信された受信信号の波形に基づいて、前記計測対象物に電磁波の吸収物が含まれている旨を検出する吸収物検出手段と、
前記電磁波受信手段によって受信された受信信号の波形に基づいて、前記吸収物検出手段によって検出された吸収物を含む前記計測対象物の種類を判別する物体判別手段と
を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体識別装置において、
前記吸収物検出手段は、前記電磁波受信手段によって受信された受信信号の波形に基づいて、前記計測対象物に水分を所定割合以上含んだ前記吸収物が含まれている旨を検出することを特徴とする物体識別装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物体識別装置において、
前記電磁波送信手段は、パルス状の電磁波を送信し、前記吸収物検出手段は、前記電磁波受信手段によって受信された受信信号が、前記電磁波送信手段によって送信された電磁波の波形のピーク振幅値に基づいてパルス波形変化した旨を検出し、その検出結果に基づいて、前記計測対象物に前記吸収物が含まれている旨を検出することを特徴とする物体識別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物体識別装置において、
前記吸収物検出手段は、前記電磁波受信手段によって受信された受信信号の振幅値が、雑音レベルに関する所定の閾値以下の値である時間が所定の検出領域を超えた場合に、前記計測対象物に前記吸収物が含まれている旨を検出することを特徴とする物体識別装置。
【請求項5】
請求項4に記載の物体識別装置において、
前記物体判別手段は、前記吸収物検出手段の検出結果に基づいて、前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別することを特徴とする物体識別装置。
【請求項6】
請求項5に記載の物体識別装置において、
前記電磁波受信手段によって受信された受信信号の波形に基づいて、前記計測対象物が積層構造を有する旨を検出する積層構造検出手段を備え、前記物体判別手段は、前記積層構造検出手段によって前記計測対象物が積層構造を有する旨が検出された場合に、前記吸収物検出手段の検出結果に基づいて、前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別することを特徴とする物体識別装置。
【請求項7】
請求項6に記載の物体識別装置において、
前記計測対象物が繊維素材を含むか否かを判定する繊維判定手段と、前記繊維判定手段によって前記計測対象物に繊維素材が含まれているものと判定され、且つ、前記物体判別手段によって前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、当該計測対象物が着衣人物である旨を検出する人物検出手段とを備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項8】
請求項7に記載の物体識別装置において、
前記繊維判定手段によって前記計測対象物に繊維素材が含まれているものと判定され、且つ、前記物体判別手段によって前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別されなかった場合に、前記電磁波送信手段から送信される電磁波の周波数帯域と振幅値とを設定し、前記皮膚に関する再計測を行わせる再計測手段を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物体識別装置において、
前記再計測手段は、前記電磁波送信手段から送信される電磁波の周波数帯域を低周波数帯域化するように前記電磁波送信手段を制御することを特徴とする物体識別装置。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の物体識別装置において、
前記人物検出手段は、時系列上で、前記繊維判定手段によって前記計測対象物に繊維素材が含まれているものと判定された後に、前記物体判別手段によって前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、当該計測対象物が着衣人物である旨を検出することを特徴とする物体識別装置。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のうち、いずれか1項に記載の物体識別装置において、
前記物体判別手段によって前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、前記電磁波送信手段から送信される電磁波の送信内容を設定し、前記皮膚の厚さの判定に関する再計測を行わせる第2の再計測手段を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項12】
請求項11に記載の物体識別装置において、
前記第2の再計測手段は、前記電磁波送信手段から送信される電磁波の周波数帯域を高周波数帯域化するように、及び/又は、前記電磁波送信手段から送信される電磁波のスポット径を小さくするように、前記電磁波送信手段を制御することを特徴とする物体識別装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のうち、いずれか1項に記載の物体識別装置において、
前記物体判別手段によって前記計測対象物が前記吸収物として皮膚を含むものであると判別された場合に、前記電磁波受信手段によって受信した受信信号の検出領域の終端を判定し、その終端に基づいて、前記電磁波送信手段の動作を終了させる終端判定手段を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のうち、いずれか1項に記載の物体識別装置において、
天候が雨天又は霧である場合に、既知の雨天時又は霧時における電磁波の減衰特性に基づいて、前記電磁波送信手段から送信される電磁波の送信内容を設定する送信内容設定手段を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項15】
請求項14に記載の物体識別装置において、
天候が雨天又は霧である場合に、前記電磁波受信手段によって受信した受信信号について、湿気による波形の雑音レベル悪化を補正する波形補正手段を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のうち、いずれか1項に記載の物体識別装置において、
前記電磁波送信手段は、地上から前記計測対象物としての人物の身長を含む領域に電磁波を送信可能とするように配設され、当該物体識別装置は、前記電磁波受信手段によって受信された受信信号の波形に基づいて、前記人物の身体部位を検出する身体部位検出手段を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項17】
電磁波を計測対象物に対し送信する電磁波送信工程と、
前記電磁波送信工程にて送信されて前記計測対象物によって反射された電磁波を受信する電磁波受信工程と、
前記電磁波受信工程にて受信された受信信号の波形に基づいて、前記計測対象物に電磁波の吸収物が含まれている旨を検出する吸収物検出工程と、
前記電磁波受信工程にて受信した受信信号の波形に基づいて、前記吸収物検出工程にて検出された吸収物を含む前記計測対象物の種類を判別する物体判別工程と
を有することを特徴とする物体識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−14588(P2010−14588A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175683(P2008−175683)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】