説明

物品、積層体及び関連方法

【課題】広範囲の可能な暴露現場(venue)に対して有効であるばかりでなく、より耐久性が高く及び/又は積層するのが望ましいことがある他の膜からの層間剥離に対してより耐性でもあるePTFEに基づく保護物品を提供する。
【解決手段】物品10は、多孔質膜11、この膜に支持された第1の選択的透過性コーティング12及び多孔質膜11及び/又はそこに設けられた他のコーティングからの選択的透過性コーティング12の層間剥離から保護する成分である。第1の選択的透過性コーティング12は抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含んでおり、保護成分は単独で又は第1の選択的透過性コーティング12若しくは第2の選択的透過性コーティングの1つの成分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質膜を含む物品及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
高い気孔率、耐化学薬品性をもち、化学剤又は生物剤物質に対して選択的な透過性を有する膜は、化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対する保護を提供する保護カバー、テントを始めとするシェルター又は衣服の製造のような高性能用途に有用である。その保護特性に加えて、かかる保護装備はまた、輸送又は使用するのが容易であり及び/又は様々な環境で着装するのに快適で、その一方様々な活動を保証することも望ましい。
【0003】
耐化学薬品性及び/又は耐熱性又は膜を通しての高い気流が望ましいか又は必要とされる用途において選択的透過性膜として延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が使用されている。しかし、ePTFEに基づく現在のところ市販されている選択的透過性保護系は、通例、衣服にその保護特性を付与するためにある物質又は物質の層で処理されている。通例、これらの物質は親水性であり得、そのため(洗浄サイクル中又は湿った環境で利用されるときのように)液体の水に曝されたときには、湿気を吸収し、耐久性が低くなる可能性がある。さらに、かかる物質が様々な所望の性質を提供するために他の物質との積層体にされている場合、この水の吸収の結果層間剥離に至る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6969769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、極めて効果的な保護物品、またその多くの有利な特性故に、広範囲の可能な暴露現場(venue)に対して有効であるばかりでなく、より耐久性が高く及び/又は積層するのが望ましいことがある他の膜からの層間剥離に対してより耐性でもあるePTFEに基づく保護物品を提供することが望ましいであろう。かかる保護物品はその水蒸気輸送速度を実質的に維持することも望ましいであろう。また、現行の製造方法又は現在利用可能な方法より複雑でない方法によってかかる物品を製造することができれば、かかる物品を提供するのに役に立つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、物品が提供される。この物品は、多孔質膜、この膜により支持されており、かつ有効量の抗化学薬品剤(antichemical agent)、抗生物剤(antibiological agent)、抗放射線剤(antiradiological agent)及び/又は抗微生物剤物質を含む第1の選択的透過性コーティング、並びに多孔質膜及び/又はこれに設けられている他の1以上のコーティングからの選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分を含んでいる。
【0007】
別の実施形態では、積層体が提供される。この積層体は、多孔質膜、この膜により支持され有効量の抗微生物剤及び/又は抗化学生物剤(anti-chembio agent)を含む第1の選択的透過性コーティング、多孔質膜及び/又はこれに設けられている他の1以上のコーティングからの選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分を含む物品、並びに1以上の追加の膜を含んでいる。この積層体を含む衣料品も、同様に提供される。
【0008】
さらに別の実施形態では、方法が提供される。この方法は、多孔質膜に、(i)有効量の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含む第1の選択的透過性コーティング及び(ii)多孔質膜及び/又はこれに適用された他のコーティングからの第1の選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分を適用することを含んでなる。
【0009】
本発明の上記及びその他の特徴、局面及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばより良く理解されるであろう。図面全体を通して、類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る物品の断面を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る物品の断面を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る物品の断面を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面を示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面を示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面を示す。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面を示す。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の明細書及びその後の特許請求の範囲において、以下の意味を有する多くの用語を使用する。単数形態は、前後関係が明らかに他のことを指図しない限り複数の対象を包含する。本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用する場合、概略言語は、関連する基本的な機能に変化を生じることなく変動することが許され得るあらゆる量的な表現を修飾するために適用され得る。従って、「約」のような用語により修飾された値は明記された正確な値に限定されない。場合によって、概略言語は、その値を測定するための機器の精度に対応することがある。同様に、「〜のない」を、ある用語と組み合わせて使用してもよく、これは実体のない数又は微量を包含し得、それでもその修飾された用語がないものと考えられる。
【0012】
本明細書で使用する場合、用語「し得る」及び「可能性がある」とは、一組の状況内のある発生の可能性、規定された性質、特性若しくは機能の保有の可能性を意味し及び/又は修飾される動詞に関連する1以上の能力、才能、若しくは可能性を表現することによって別の動詞を修飾する。従って、「し得る」及び「可能性がある」の使用は、修飾された用語が示された能力、機能、若しくは用法に関して明らかに適当である、可能性がある、若しくは適切であることを意味するが、一方状況によっては修飾された用語が適当でない、可能性がない、若しくは適切でないこともあることを考慮している。例えば、状況によってはある事象又は可能性を期待することができるが、一方他の状況ではその事象又は可能性が起こることができない。この差が用語「し得る」及び「可能性がある」には含まれている。
【0013】
本発明は、少なくとも第1の選択的透過性コーティングを支持する多孔質膜と、多孔質膜及び/又はこれに設けられたその他のあらゆるコーティングからの選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分とを含む物品に関する実施形態を包含する。その物品を提供する方法と共に、その物品を含む積層体及び衣料品も提供される。
【0014】
一実施形態では、物品が提供される。物品は、多孔質膜、その膜に支持された第1の選択的透過性コーティング及び多孔質膜及び/又はこれに設けられた他のあらゆるコーティングからの選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分を含む。この第1の選択的透過性コーティングは、1種以上の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質を不活性化するか、若しくはその活性を低下させるか又は物品を通る化学剤、生物剤又は微生物剤物質の移行を遅くするのに充分な量で含む。成分は、第1の選択的透過性コーティングの1つの成分であることができるし又は第2の選択的透過性コーティングの1つの成分として提供するができる。保護成分は有機ポリマーからなるのが望ましい。
【0015】
物品若しくは積層体の多孔質膜又は他の層からの選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分(本明細書では単に「保護成分」ともいう)は、かかる作用効果を発揮できる任意の成分であることができる。第1の選択的透過性コーティングは望ましくは親水性であることができるので、保護成分も親水性であるのが有利であり得るが、好ましくは第1の選択的透過性コーティングより親水性が低い。
【0016】
本明細書に記載したもののような膜を調製する際にある種の処理を使用することにより、この膜を親水性にすることができるということが発見された。(洗浄サイクル中又は湿った環境で使用するときのように)液体の水に暴露されたとき、これらの処理は水分を吸収することができ、そのため膜と他の層又はそれに積層された膜との間の結合が層間剥離を起こし易くする可能性がある。より特定的には、かかる処理された膜を他の成分/膜と積層すると、積層接着剤が吸収した水に暴露され得、層間剥離が起こる可能性がある。層間剥離から保護する成分を使用すると、第1の選択的透過性層とその下にある膜がその水蒸気輸送速度を実質的に維持することが可能になり、液体の水又は水蒸気に暴露された際にその膜を含む積層体が層間剥離から保護される。その膜、第1の選択的透過性層及び層間剥離から保護する成分を含む本発明の物品では、その膜、物品又はそれを含む積層体中に利用される各々の個別の層がそれ自身の特定の性質を妥協することなく実質的に維持することが可能になる。
【0017】
保護成分は、第1の選択的透過性層より親水性が低い物質からなり得、従って、第1の選択的透過性層に到達する湿気の量を低減する可能性があり得る。そのため、より少ない水分が、第1の選択的透過性層による吸収に使用され得る。望ましくは、保護成分用に選択される物質により、膜と第1の選択的透過性層がそこを通る水蒸気の輸送速度を実質的に維持することが可能になり、一方、膜及び第1の選択的透過性層及び/又はそこに設けられたあらゆる他のコーティングを層間剥離に対して保護する。
【0018】
層間剥離から保護する成分は、幾つかの実施形態では第1の選択的透過性コーティングの成分であることができ、他の場合には第2の選択的透過性コーティングの成分であるか又はそのコーティングの全体からなり得る。すなわち、層間剥離に対して保護性の幾つかの成分は、化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対して活性を示すこともあり得、また多孔質膜に適用することができる可能性がある。これらの実施形態では、本明細書に記載した物品を提供するには、より少ない材料及び製造装備及び時間が必要とされるされ得る。
【0019】
例えば、1種以上のポリウレタン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール又はこれらのコポリマー若しくはブレンドを始めとする有機ポリマーは保護成分として使用するのに適していると考えられる。幾つかの実施形態では、第2の選択的透過性コーティングは1種以上のポリビニルアルコールと1種以上のポリビニルアミンのコポリマーからなる。
【0020】
実施形態では、保護成分はポリビニル親核性ポリマー及びブロックイソシアネート又はウレタンのいずれか1種又は両方を含み得る。ブロックイソシアネート又はウレタンはポリビニル親核性ポリマーに対する硬化剤として機能し得る。一実施形態では、ポリビニル親核性ポリマーはポリビニルアルコール又はポリビニルアミンのいずれか1種又は両方を含み得る。一実施形態では、ポリビニル親核性ポリマーは本質的にポリビニルアミンを含み得る。
【0021】
適切なポリビニル親核性ポリマーには、所定の範囲のモノマー単位の分子量を有するポリビニル親核性ポリマーが含まれ得る。一実施形態では、ポリビニル親核性ポリマーの分子量は2500未満であり得る。一実施形態では、ポリビニル親核性ポリマーの分子量は2500超であってもよい。一実施形態では、ポリビニル親核性ポリマーの分子量は約2500〜約31000、約31000〜約50000、約50000〜約100000、約100000〜約200000の範囲又は約200000超であってもよい。
【0022】
適切なブロックイソシアネートはブロッキング剤及び1種以上の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は環式脂肪族ポリイソシアネートを含み得る。一実施形態では、ポリイソシアネートには、1種以上のトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート又はジメチルメタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートが含まれ得る。
【0023】
適切なブロックイソシアネートは市販されているか又は、例えば、イソシアネートとマロン酸エステルのようなブロッキング剤との反応により形成し得る。その他の適切なブロッキング剤としては、ジイソプロピルアミン(DIPA)又はt−ブチルベンジルアミン(BEBA)のような1種以上のアミンが挙げられる。さらに他の適切なブロッキング剤として、1種以上の3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトキシム、カプロラクタム又はアルキル化フェノールが挙げられる。
【0024】
幾つかのブロッキング剤は加熱に応答して脱ブロックし得る。例えば、3,5−ジメチルピラゾールは110℃で脱ブロックし得、メチルエチルケトキシムは150℃で脱ブロックし得、マロン酸エステルは90℃で脱ブロックし得、カプロラクタムは160℃で脱ブロックし得、アルキル化フェノールは約110℃より高温で脱ブロックし得る。任意の促進剤は、存在する場合、脱ブロック温度を室温程度まで低下し得る。
【0025】
一実施形態では、ブロックイソシアネートはヘキサメチレンジ−イソシアネート又はメチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)を含み得る。一実施形態では、ブロックイソシアネートはブロッキング剤とヘキサメチレンジ−イソシアネートからなり得る。一実施形態では、ブロックイソシアネートはブロッキング剤とメチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)からなり得る。もう1つ別の適切なイソシアネートとして、1以上のイソシアネート官能基を有する反応性トリアジンが挙げられる。
【0026】
適切なウレタンは、ウレタン物質又はブロックイソシアネートのいずれか1種又は両方を含み得る。一実施形態では、ウレタンには、1以上のウレタン官能基を有するトリアジンが含まれ得る。アンモニウム塩又はアミン(例えば、4−ジメチルアミノピリジン)を用いて、他の場合には例えば約100〜約110℃で行われ得るウレタン硬化を促進することができる。一実施形態では、約0.5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸を加えて加水分解安定性及び/又は硬度を改良することができる。
【0027】
ブロックイソシアネート又はウレタンの適切な量は親水性コーティングの約1重量%超であり得る。一実施形態では、存在するブロックイソシアネート又はウレタンの量は、親水性コーティングの総重量に基づいて、約1〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約15重量%、約15〜約20重量%、約20〜約25重量%又は約30重量%までの範囲であり得る。
【0028】
本明細書に記載されている物品に使用するのに適切な多孔質膜は1種以上のポリアルキレン、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアクリル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアリーレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリフェニレンオキシド、セルロース系ポリマー又はこれらの置換誘導体を含み得る。幾つかの実施形態では、膜は生体適合性物質又は生分解性物質、例えば脂肪族ポリエステル、ポリペプチド及びその他の天然のポリマーを含む。
【0029】
一実施形態では、多孔質膜はフッ素化ポリマーからなり得る。本明細書で使用する場合、用語「フッ素化ポリマー」とは、幾つか又は全ての水素原子がフッ素により置換されているポリマーをいう。一実施形態では、膜はフッ素化ポリオレフィンからなり得る。本明細書で使用する場合、用語「フッ素化ポリオレフィン」とは、エチレン性不飽和を含有する1種以上のフッ素化ポリマー前駆体から誘導されたフッ素化ポリマーをいう。適切なフッ素化ポリマー前駆体は、他の置換基、例えば塩素又は水素を含んでいてもよい部分的にフッ素化されたオレフィンであり得る。適切なフッ素化ポリマー前駆体は、末端のエチレン性二重結合を有する直鎖状又は枝分れ鎖の化合物であり得る。一実施形態では、適切なポリマー前駆体としては、1種以上のヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン又はペルフルオロアルキルビニルエーテル、例えば、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)又は(プロピルビニルエーテル)が挙げられる。
【0030】
一実施形態では、フッ素化ポリオレフィンは、本質的に、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレンのいずれか1種又は両方を含む。一実施形態では、フッ素化ポリオレフィンは本質的に、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む。適切なePTFE膜としては、General Electric Energy(米国ミズーリ州カンザスシティ)から商業的に取得できるものがある。
【0031】
一実施形態では、多孔質膜を作成するには、微細粉末粒子と滑剤の混合物を押し出すとよい。その後、押出物をカレンダー加工することができる。このカレンダー加工した押出物を1以上の方向に「延伸」して、ノード(節)を連結するフィブリルを形成して、三次元マトリックス又は格子型の構造体を定めることができる。「延伸」とは、材料の弾性限界を超えて延伸して、永久歪み又は伸びをフィブリルに導入することを意味する。膜を加熱するか又は「焼結して」、膜物質の一部分を結晶性状態から非晶質状態に変化させることにより、膜内の残留応力を低減して最小限にすることができる。一実施形態では、膜は、その考えられる最終用途に適当なように焼結しないか又は部分的に焼結してもよい。一実施形態では、膜は、その対面する主要な面に隣接する環境と流体連通する多くの相互に接続した気孔を規定し得る。
【0032】
他の物質及び方法を用いて、開放気孔構造を有する膜を形成することができる。この膜は、例えば、基材膜を穿孔する、延伸する、膨張させる、発泡させる、沈殿させる又は抽出するという1以上の方法により透過性にすることができる。膜を作成する適切な方法として、適切な材料を発泡させる、スカイビングする(薄く裂く)又はキャスト(鋳造)することがある。代わりの実施形態では、膜は製織繊維又は不織繊維から形成してもよい。
【0033】
幾つかの実施形態では、膜は比較的連続な気孔設けることができる。比較的に連続であろうと及び/又は実質的に不連続であろうと、膜の適切な気孔率は約10体積%超の範囲であり得る。一実施形態では、気孔率は約10〜約20%、約20〜約30%、約30〜約40%、約40〜約50%、約50%〜約60%、約60〜約70%、約70〜約80%、約80〜約90%又は約90体積%超の範囲であり得る。ここで、また本明細書及び特許請求の範囲を通じて、範囲の制限は組み合わせることができ及び/又は互換性であり得る。かかる範囲はその範囲の制限により特定され、その間に入るより狭い範囲を全て包含する。
【0034】
膜内の気孔の直径は気孔と気孔で均一であり得及び/又は気孔は所定のパターンを定め得る。或いは、気孔の直径は気孔毎に異なっていてもよく及び/又は気孔は不規則なパターンを定め得る。適切な気孔直径は約500μm未満であり得る。一実施形態では、平均気孔直径は約1〜約10μm、約10〜約50μm、約50〜約100μm、約100〜約250μm又は約250〜約500μmの範囲であり得る。一実施形態では、平均気孔直径は約1nm未満、約1〜約50nm、約50nm〜約0.1μm、約0.1〜約0.5μm又は約0.5〜約1μmの範囲であり得る。一実施形態では、平均気孔直径は約1nm未満であり得る。一実施形態では、気孔は本質的に約10nm〜約10μmの範囲の平均気孔直径を有し得る。
【0035】
膜内の気孔の平均有効孔径はマイクロメートルの範囲であり得る。他の実施形態では、膜内の気孔の平均有効孔径はナノメートルの範囲であり得る。膜内の気孔に適した平均有効孔径は約0.01〜約0.1μm、約0.1〜約5μm、約5〜約10μm又は約10μm超の範囲であり得る。
【0036】
一実施形態では、膜は、複数のフィブリルによって相互に接続された複数の節を含む三次元マトリックスであってもよいし又は格子型の構造を有していてもよい。節とフィブリルの表面が膜内の複数の気孔を画定し得る。フィブリルのサイズは、フィブリルの長手方向の縦軸に垂直の方向の直径として約0.05〜約0.5μmの範囲であり得る。膜の比表面積は膜物質1g当たり約9〜約110平方メートルの範囲であり得る。
【0037】
本発明の実施形態に従う膜は用途により特定の基準を参照して選択される異なる寸法を有し得る。一実施形態では、膜は流体の流れの方向で約10μm未満の範囲の厚さを有し得る。別の実施形態では、膜は流体の流れの方向で約10μm超の範囲、例えば約10〜約100μm、約100μm〜約1mm、約1〜約5mm又は約5mm超の範囲の厚さを有し得る。一実施形態では、膜は約0.0005インチ(12.7μm)〜約0.005インチ(127μm)の範囲の平均厚さを有し得る。一実施形態では、膜は同じ又は異なる厚さの複数の層から形成してもよい。
【0038】
流体の流れの方向に対して垂直な方向では、膜は約10mmより大きい幅を有し得る。一実施形態では、膜は約10〜約45mm、約45〜約50mm、約50mm〜約10cm、約10〜約100cm、約100〜約500cm、約500cm〜約1m又は約1m超の範囲の幅を有し得る。幅は円形の領域の直径であり得るか又は多角形の領域の最も近い周囲の辺までの距離であり得る。一実施形態では、膜はメートルの範囲の幅と不定の長さを有する長方形であり得る。すなわち、膜はロールに形成することができ、連続生成作業中に所定の間隔で膜を切断することにより決定される長さをもつ。
【0039】
一実施形態では、膜は約0.05oz/yd2未満の範囲の単位平均重量を有し得る。一実施形態では、膜は約0.05〜約0.1oz/yd2、約0.1〜約0.5oz/yd2、約0.5〜約1oz/yd2、約1〜約2oz/yd2又は約2〜約3oz/yd2の範囲の単位平均重量を有し得る。
【0040】
所望の膜は第1の選択的透過性コーティングを支持する。「選択的に透過性」とは、本明細書で使用する場合、所望でない浸透物質(例えば、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質)と比べて所望の化学的浸透物質(例えば、水蒸気)に対して著しく異なる透過性を保有するコーティングをいう。幾つかの実施形態では、選択的透過性コーティングは、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質に対する透過性と比べて、約5倍大きい又は約5〜約10、約10〜約50、約50〜約100、約100〜約500、若しくは約500〜約1000倍の範囲大きい水蒸気に対する透過性をその下にある膜に付与することができる。望ましくは、水蒸気に対する透過性は、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質に対する透過性(これ自体はゼロであるのが望ましい)よりずっと大きく、従ってこの倍率は無限大に近づくであろう。
【0041】
第1の選択的透過性コーティングは、1種以上の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質の有効量を含む。これらの物質は、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質の活性又は化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質が前記物質を含む物品中を移動する能力を低減又は排除するあらゆる物質又は物質の組合せであり得る。幾つかの実施形態では、これらの物質は化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質と反応又は相互作用して、それらの物質を不活性化することができる。本明細書で使用する場合、物質を「不活性化する」という用語には、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質の活性を低減するか又は有意な量の未反応の生物学的に活性な化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質がその物品を通過する時間の長さを増大することのいずれか1方又は両方が含まれ得る。また、ある物質を「不活性化する」には、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質と反応して、未反応の微生物剤物質の活性より低い活性を有し得る変性された物質を形成することも含まれ得る。一実施形態では、変性された物質は、未反応の化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質の活性の少なくとも80%未満の活性を有し得る。
【0042】
適切な抗微生物剤の例としては、限定されることはないが、ハラミン、第四アンモニア化合物、例えばアルキルベンジルジメチルベンザルコニウムクロリド、銀イオン含有化合物、スルホンアミド、例えばベンゼンスルホンアミド、N−クロロ−4−メチル−ナトリウム塩、亜鉛イオン含有化合物、例えば亜鉛ピリチオン、2−メルカプトベンゾチアゾール、亜鉛塩及び硫酸亜鉛、銅イオン含有化合物、例えば酸化銅、チオシアン酸銅及び硫酸銅、塩素放出性化合物、例えば次亜塩素酸塩、ナトリウムジクロロ−s−トリアジントリオン、トリクロロ−s−トリアジントリオン又はこれらの組合せがある。
【0043】
また、化学剤及び/又は生物剤、並びに微生物剤に対して活性を示し得る他の特定の抗微生物剤としては、限定されることはないが、(1,1’−ビフェニル)−2−オール、カルバミン酸、1H−ベンズイミダゾール−2−イル、メチルエステル、2(1H)−ピリジンチオン、亜鉛塩、エチルジラム、チオシアン酸、(2−ベンゾチアゾイルチオ)メチルエステル、テトラヒドロ−3,5−ジメチル−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン、チオシアン酸(2−ベンゾチアゾイルチオ)メチルエステル、カルバモジチオ酸、カリウム塩、カルバモジチオ酸、ナトリウム塩、チオシアン酸、メチレンエステル、チオシアン酸、(2−ベンゾチアゾイルチオ)メチルエステル、N−ヒドロキシメチル−N−メチルジチオカーボネート、2(3H)−ベンゾチアゾールチオン、ナトリウム塩、カルバミン酸、[1−((ブチルアミノ)カルボニル)−1H−ベンズイミジアゾール−2−イル]−、メチルエステル、ベンゼン、1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチル−3(2H)−イソチアゾロン、ホルムアルデヒド、チオペルオキシジカルボニックジアミド、カルバモジチオン酸、ナトリウム塩、テトラメチルチウラミジスルフィド、チオペルオキシジカルボニックジアミド([(H2N)C(S)]22)、亜鉛、ビス(ジメチルカルバモジチオアト−S,S’、2−メルカプトベンゾチアゾール、2(3H)−ベンゾチアゾールチオン、酸化亜鉛、2(3H)−ベンゾチアゾールチオン、ホルムアルデヒド、チオペルオキシジオカルボニックジアミド、3(2H)−イソチアゾロン、2−メチル−、2(1H)−ピリジンチオン、1−ヒドロキシ−亜鉛塩、3(2H)−イソチアゾロン、ボラックス十水和物、硫酸ジアンモニウム塩、ホウ酸、ボロン酸、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム又はこれらの組合せがある。
【0044】
抗微生物剤を利用するのが望ましい一実施形態では、抗微生物剤は以下の構造(1)〜(10)のいずれかを有するハラミンからなり得る。
【0045】
【化1】


上記構造(1)〜(8)で、R1、R2及びR3は独立にC1〜C4アルキル、アリール、C1〜C4アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ又はC1〜C4エステル基から選択され、1以上のR1、R2又はR3はC1〜C4アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ又はC1〜C4エステル基であり、m=0、1又は2であり、構造(1)、(3)、(7)及び(8)の場合n=1、2又は3であり、p=1、2又は3であり、m+n+p=4であり、Rは以下で定義される。
【0046】
Lは、RをSi部分に結合するのに利用し得るリンカー基である。幾つかの実施形態では、Lは1〜13個の炭素、0〜3個の窒素又は酸素原子を含むアルキレン、アミン又はエーテル基であり、他の実施形態では、Lは1〜13個の炭素のアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基である。
【0047】
上記構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)に適したR基は以下の構造(11)〜(21)を有する。
【0048】
【化2】

ここで、R4及びR5は独立にC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基から選択され、Xは塩素又は臭素である。Xはまた、この化合物が構造(5)のシロキサン又は(9)の変性基体で表される場合、水素であることもできる。
【0049】
【化3】

ここで、R4及びR5は独立にC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基から選択され、Xは水素、塩素又は臭素である。
【0050】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(11)又は(12)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3が独立にメチル、エチル、フェニル、メトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基から選択され、R4及びR5が独立にメチル、エチル、ヒドロキシメチル又はフェニル基から選択されるものである。
【0051】
【化4】

ここで、R4、R5、R6及びR7は独立にC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基から選択され、Xは水素、塩素又は臭素である。
【0052】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(13)、(14)又は(15)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3が独立にメトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基から選択され、R4、R5、R6及びR7がメチル基であり、Lが1〜4個の炭素及び0〜1個の窒素又は酸素原子を含むアルキレン、アミン又はエーテル基であり、他の実施形態では、Lが1〜4個の炭素を含むアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基であるものである。
【0053】
【化5】

ここで、R4は1以上のC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基であり、Xは水素、塩素又は臭素である。
【0054】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(16)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3が独立にメトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基から選択され、R4がメチル エチル又はヒドロキシメチル基であり、Lが1〜3個の炭素を含むアルキレン基であるか又はLが1〜3個の炭素を含むアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基であるものである。
【0055】
【化6】

ここで、R4及びR5は独立にC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基から選択され、Xは独立に水素、塩素、臭素又はヒドロキシメチルから選択され、1以上のXが水素、塩素又は臭素である。
【0056】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(17)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基であり、R4がメチル、エチル又はヒドロキシメチル基であり、Lが1〜3個の炭素を含むアルキレン基であるか又はLが1〜3個の炭素を含むアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基であるものである。
【0057】
【化7】

ここで、Xは独立に水素、塩素、臭素又はヒドロキシメチルから選択され、1以上のXが水素、塩素又は臭素である。
【0058】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(18)又は(19)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基であり、Lが1〜4個の炭素及び0〜1個の窒素又は酸素原子を含むアルキレン、アミン又はエーテル基であるか又はLが1〜4個の炭素を含むアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基であるものである。
【0059】
【化8】

ここで、R4及びR5は独立にC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基から選択され、Xは独立に水素、塩素、臭素又はヒドロキシメチルから選択され、1以上のXは水素、塩素又は臭素である。
【0060】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(20)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3が独立にメトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基から選択され、R4及びR5がメチル基であり、Lが1〜4個の炭素及び0〜1個の窒素又は酸素原子を含むアルキレン、アミン又はエーテル基であるか又はLが1〜4個の炭素を含むアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基であるものがある。
【0061】
【化9】

ここで、R4、R5、R6及びR7は独立にC1〜C4アルキル、アリール又はヒドロキシメチル基から選択され、Xは構造(1)又は(2)の場合塩素又は臭素であるが、Xは構造(5)、(7)又は(9)の場合水素、塩素又は臭素である。
【0062】
構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)で、Rが基(21)からなる代表的な化合物は、R1、R2及びR3が独立にメトキシ、エトキシ又はヒドロキシ基から選択され、R4、R5、R6及びR7がメチル基であり、Lが1〜4個の炭素及び0〜1個の窒素又は酸素原子を含むアルキレン、アミン又はエーテル基であるか又はLが1〜4個の炭素を含むアルキレン基及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基であるものである。
【0063】
構造(3)、(4)、(6)、(8)及び(10)に適したR基は1以上のN−クロロ又はN−ブロモ基を含むアミノアルキレン又はポリアミノアルキレン基である。構造(3)、(4)、(6)、(8)及び(10)の1つの代表的なR基はアミノプロピル基である。
【0064】
基(5)、(6)、(9)及び(10)でnは繰返し単位の数であり、構造(1)、(3)、(6)及び(7)のnと混同すべきではない。後者の場合、nはSi上のR部分の数である。単位の反復数nは2以上であるが、nは500以上であることもできる。適切なハラミン及びその誘導体はVanson Halosource社(米国ワシントン州レッドモンド)から市販されている。
【0065】
抗微生物剤を第1の選択的透過性コーティング中に利用するのが望ましい本発明の他の実施形態では、抗微生物剤は1種以上の第四アンモニウム塩からなり得る。これらの多くは公知であるか及び/又は市販されており、抗微生物剤として作用することができるものはいずれも、本発明の選択的透過性コーティングに使用するのに適している。これらのうち、以下の式(22)を有するもののようなケイ素含有第四アンモニウム塩は、本発明の幾つかの実施形態では抗微生物剤として望ましく使用することができる。
(22) R3+0nSiX4-n-
ここで、各R及び各R0は独立に非加水分解性の有機基であり、各Xは独立に加水分解性の基であり、nは0〜3の整数であり、Y-は式Iの化合物の塩を形成するのに適したアニオン部分である。Y-は幾つかの実施形態ではハロゲン化物であり得る。幾つかの実施形態では、2つのRがメチルであり得、1つのRがオクタデシルであり得る。一実施形態では、R0はプロペニルであり、各Xはメトキシであり得、nは1であり得、Yは塩化物であり得る。式22の1つの代表的なケイ素含有第四アンモニウムモノマーは3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドである。
【0066】
かかるケイ素含有第四アンモニウム抗微生物剤は通例、例えばメタノールのような溶媒中で製造され供給され得る。かかる溶媒を使用すると、ケイ素含有第四アンモニウム塩が膜により吸着され、その結果その気孔内に相互貫入網状組織が形成され得る。
【0067】
本発明の別の実施形態では、式(22)のケイ素含有第四アンモニウム塩モノマーを用いて、式(23)の繰返し単位を含む抗微生物ポリマーを作製することができる。
(23) R3+0nSiX14-n-
ここで、各R及び各R0は独立に、限定されることはないが1〜約22個の炭素原子のアルキル基又はアリール基、例えばフェニルのような非加水分解性の有機基であり、各X1は−OR1、−OH又は−O−Siであり、ここでR1は1〜約22個の炭素原子のアルキル基又は6個の炭素原子のアリール基であり、nは0〜3の整数であり、Yは式(23)の繰返し単位の塩を形成するのに適したアニオン部分、例えばハロゲン化物、ヒドロキシル、アセテート、SO4-2、CO3-2及びPO4-2対イオンである。幾つかの実施形態では、Yはハロゲン化物である。幾つかの実施形態では、R基は各々独立にメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシル、テトラデシル又はオクタデシルであり、R0基は各々独立にメチレニル、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル、オクチレニル、ドデシレニル、テトラデシレニル又はオクタデシレニルであり、各X1は−OR1であり、ここでR1はメチル、エチル、プロピル又はブチルである。
【0068】
第四アンモニウム塩モノマーはまた、幾つかの実施形態では、式(24)及び(25)のものであり得る。
(24) (R13SiR2+(R3)(R4)(R5)Y-
(25) (R13SiR2N(R3)(R4
ここで、各R1は独立にハロゲン又はR6Oであり、R6はH、1〜約22個の炭素原子のアルキル、アセチル、アセトキシ、アシル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン及びプロピレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの1〜約22個の炭素原子のアルキルモノエーテルのブロックポリマー又はコポリマー、エチレン及びプロピレングリコール又は1〜約22個の炭素原子の炭酸のモノエステル及びプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのブロックポリマー又はコポリマー、エチレン及びプロピレングリコールのブロックポリマー又はコポリマー、オクチルフェノール、ノニルフェノール又はソルビタンエーテルであり、
2はベンジル、ビニル又は1〜約22個の炭素原子のアルキルであり、
3及びR4は、独立に、1〜約6個の炭素原子の低級アルキルアルコール、1〜約6個の炭素原子の低級アルコキシ、1〜約22個の炭素原子のアルキルであるか又はR3及びR4は一緒になってモルホリン又は式(26)の
can、togエーテル form a 環式又は複素環式で不飽和又は飽和の5〜7員環を形成することができ、
(26) −R3−(R7k−R4
ここで、kは0〜2の整数であり、
また、環が飽和である場合、R7はCH2、O、S、NH、NH2+、NCH2CH2NH2、NCH2CH2NH3+、NCH2CH2N(R8)(R9)、NCH2CH2+(R8)(R9)(R10)、N(アルキル)、N(アリール)、N(ベンジル)であり、各R8、R9及びR10は、独立に、ベンジル、ポリエーテル、1〜4個の炭素原子の低級アルキルアルコール、1〜4個の炭素原子の低級アルコキシ又は1〜約22個の炭素原子のアルキルであり、環が不飽和である場合、R7はCH、N、N+H、N+(アルキル)、N+(アリール)、N+(ベンジル)、NCH2N、N+HCH2N、N+(アルキル)CH2N、N+(アリール)CH2N又はN+(ベンジル)CH2Nであり、
環は置換されてないか又は1〜22個の炭素原子のアルキル、エステル、アルデヒド、カルボキシレート、アミド、チオ−アミド、ニトロ、アミン又はハロゲン化物で置換されており、
5は1〜6個の炭素原子の低級アルキルアルコール、CH265、ポリエーテル、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルスルホネート又はペルフルオロアルキルカルボキシレートであり、ここでアルキル アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルスルホネート又はペルフルオロアルキルカルボキシレートは1〜約22個の炭素原子であるか又は上記式Vの5〜7員環であり、
-は式(24)又は(25)の化合物の塩を形成するのに適したアニオン部分であり、好ましくは、塩化物、臭化物又はヨウ化物である。
【0069】
ケイ素含有第四アンモニウム塩繰返し単位の特定の例には、2つのRがメチルで1つのRがオクタデシルであり、R0がプロペニルであり、nが1であり、Yが塩化物であって、ポリマーがポリマー状3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドとなるようなモノがある。有用なポリマー状ケイ素含有第四アンモニウム塩のもう1つ別の例はオクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリドである。本発明の幾つかの実施形態では抗微生物剤として有用であるこれら及びその他の第四アンモニウム塩はBIOSAFE,Inc.,Pittsburgh,PAから市販されている。
【0070】
ケイ素含有第四アンモニウムポリマーを作成する1つの方法は、撹拌しながら、ケイ素含有モノマーを過剰の溶媒(例えば、水)に、重合過程を開始させる熱及び/又は触媒(例えば、無機又は有機の酸又は塩基)と共に加えることを含んでいる。得られた沈殿から又は溶媒除去によりポリマーを回収する。
【0071】
化学剤は有毒な性質を有する生きてない化学物質であり得る。化学剤はまた、生きている生物によって産生される生きてない毒性の産物、例えば毒素も包含し得る。生物剤は有毒な性質を有する生体又は準生体物質(例えば、プリオン)であり得る。放射線剤には、α、β及び/又はγ放射線、例えば、α、β及び/又はγ塵埃粒子が包含され得る。微生物剤としては、微生物、特に病原性微生物がある。主要な種類の微生物には、細菌、菌類、例えばかび、酵母及び藻類がある。
【0072】
第1の選択的透過性コーティング内に使用される物質は、この物質が活性を示す対象の化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質によって定義することもできる。一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は1種以上の化学戦争剤に対して活性を示し得る。化学戦争剤の例としては、限定されることはないが、1種以上の活動不能化剤、催涙剤、びらん剤又は発疱剤、神経剤、呼吸剤、血液剤又は臭気剤がある。
【0073】
活動不能化剤の例としては、神経系影響因子、催吐剤、窒息剤、幻覚剤、鎮静剤、麻酔剤、抑制剤など及びこれらの2種以上の組合せが挙げられる。一実施形態では、活動不能化剤として、例えばコリンを含むプローブと反応し得る抗コリン作用剤であり得る3−キヌクリジニルベンジレート(QNB,BZ)があり得る。代わりの神経系影響因子としては、市販されている店頭販売(OTC)又は処方医薬組成物があり得る。一実施形態では、活動不能化剤には、クラーレ又はクラーレ類似体若しくは誘導体が包含され得る。
【0074】
催涙剤の例として、1種以上のo−クロロベンジルマロニトリル、クロロメチルクロロホルメート、塩化第二スズ、sym−ジクロロメチルエーテル、臭化ベンジル、臭化キシリル、メチルクロロスルホネート、エチルヨードアセテート、ブロモアセトン、ブロモメチル−エチルケトン、アクロレイン(2−プロペナール)、カプサイシン、これらの類似体及び/又は誘導体などが挙げられる。
【0075】
びらん剤の例としては、1種以上のサルファマスタード、ナイトロジェンマスタード又はヒ素、例えばLewisiteが挙げられる。サルファマスタードとしては、1種以上の2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド又はジクロロエチルジスルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル又はビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテルが挙げられる。ナイトロジェンマスタードとしては、1種以上のビス(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス(2−クロロエチル)メチルアミン又はトリス(2−クロロエチル)アミンが挙げられる。Lewisiteとしては、1種以上の2−クロロビニルジクロロアルシン又はビス(2−クロロビニル)クロロアルシン、トリス(2−クロロビニル)アルシンが挙げられる。
【0076】
神経剤の例としては、コリンエステラーゼ阻害剤が挙げられる。一実施形態では、コリンエステラーゼ阻害剤には、1種以上のo−アルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)−ホスホノフルオリデート、例えばo−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート(サリン)又はo−ピナコリルメチルホスホノフルオリデート(ソマン)、o−アルキルN,N−ジアルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)ホスホラミドシアニデート、例えばo−エチルN,N−ジメチルホスホラミドシアニデート(タブン)又はo−アルキルS−2−ジアルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)−アミノエチルアルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)ホスホノチオレート及び対応するアルキル化又はプロトン化塩、例えばo−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレートが包含され得る。
【0077】
呼吸剤の例としては、ホスゲン(塩化カルボニル)及びペルフルオロイソブチレンの1種又は両方が挙げられる。代表的な化学毒素には、1種以上のパリトキシン、リシン、サキシトキシン又はボツリヌス毒素が包含され得る。
【0078】
血液剤の例としては、塩のような各種形態のシアン化物、並びにシアン化物塩の類似体及び誘導体が挙げられる。シアン化物の固体の塩にはナトリウム、カリウム及び/又はカルシウム塩が包含され得る。揮発性の液体形態のシアン化物としてはシアン化水素及び/又は塩化シアンが含まれ得る。
【0079】
他の実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は1種以上の毒性工業原料(TIM)に対して活性を示し得る。毒性工業原料としては、1種以上のアンモニア、アルシン、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、二硫化炭素、塩素、ジボラン、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、ホスゲン、三塩化リン、二酸化イオウ、硫酸、塩化シアン、臭化水素、塩化水素、フッ化水素、硫化水素又はシアン化水素が挙げられる。
【0080】
また、抗生物剤も第1の選択的透過性コーティングに使用することができ、これは病原体のような生物剤に対して活性を示し得る。病原体は、その宿主(動物又は植物)に病気又は疾病を引き起こし得る感染性の物質である。幾つかの実施形態では、抗生物剤は、例えば、1種以上の細菌、原生動物、菌類、寄生虫、胞子、ウイルス又はプリオンを始めとする病原体に対して活性を示す第1の選択的透過性コーティングに利用され得る。
【0081】
細菌性の生物剤(及びそれにより引き起こされる病気又は結果)の幾つかの例としては、1種以上の大腸菌(腹膜炎、食中毒)、結核菌(結核)、炭疽菌(炭疽病)、サルモネラ(食中毒)、黄色ブドウ球菌(毒素性ショック症候群)、肺炎連鎖球菌(肺炎)、化膿連鎖球菌(連鎖球菌性咽頭炎)、ピロリ菌(胃潰瘍)又は野兎病菌(野兎病)が挙げられる。
【0082】
ウイルス(及びそれにより引き起こされる病気又は結果)の幾つかの例としては、1種以上のA、B、C、D及びE型肝炎(肝疾患)、インフルエンザウイルス(インフルエンザ、鳥インフルエンザ)、SARSコロナウイルス(重篤な急性呼吸器症候群)、単純ヘルペスウイルス(疱疹)、伝染性軟属腫(発疹)又はヒト免疫不全ウイルス(AIDS)が挙げられる。
【0083】
原生動物(及びそれにより引き起こされる病気又は結果)の幾つかの例としては、1種以上のクリプトスポリジウム(クリプトスポリジウム症)、ランブル鞭毛虫(ランブル鞭毛虫症)、マラリア原虫(マラリア)又はトリパノソーマ・クルージ(シャーガス病)が挙げられる。菌類(及びそれにより引き起こされる病気又は結果)の幾つかの例としては、1種以上のニューモシスチス・ジロビチ(日和見肺炎)、白癬(タムシ)又はカンジダ(カンジダ症)が挙げられる。
【0084】
寄生虫の幾つかの例としては、1種以上の回虫、疥癬、サナダムシ又は渦虫が挙げられる。タンパク質系病原体の幾つかの例としては、プリオン(一般に狂牛病又は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)といわれるウシ海綿状脳症(BSE))が挙げられる。
【0085】
毒素は、体内組織に接触又は吸収されたとき生物巨大分子と相互作用することによって病気を引き起こすことができるタンパク質を含んでおり、生物兵器として使用され得る。毒素の例として、リシン、SEB、ボツリヌス毒素、サキシトキシン及び多くのマイコトキシンが挙げられる。
【0086】
生物剤によって引き起こされる病気の他の幾つかの例としては、炭疽病、エボラ熱、腺ペスト、コレラ、野兎病、ブルセラ病、Q熱、マクポ、コクシジオイデス症、鼻疽、類鼻疽、赤痢、ロッキー山紅班熱、チフス、オウム病、黄熱病、日本脳炎、リフトバレー熱又は天然痘が挙げられる。
【0087】
第1の選択的透過性コーティングに使用する抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤又は抗微生物剤物質が何であっても、その物質は有効量で存在するのが望ましい。抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤又は抗微生物剤物質の有効量とは、1種以上の化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤の活性を不活性化するか、若しくは低下させるか又は1種以上の化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質の物品中の移動を遅くするのに充分なその物質の量をいう。望ましくは、利用する抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質の量はまた、その下にある膜及び/又は物品が最終用途の性能要件を満たすことを可能にする。一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約0.1重量%未満の量で存在し得る。
【0088】
一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は、膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約0.1〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%の範囲で存在し得る。一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は、膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲の量で存在し得る。一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は、膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約50重量%より多い量で存在し得る。一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は、膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約0.1〜約20重量%の範囲の量で存在する。
【0089】
一実施形態では、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質は、約0.1〜約0.5mg/cm2、約0.5〜約1mg/cm2、約1〜約2mg/cm2、約2〜約5mg/cm2、約5〜約10mg/cm2、約10〜約25mg/cm2又は約25〜約50mg/cm2、50〜約100mg/cm2の範囲の量で物品中に存在し得る。
【0090】
幾つかの実施形態では、第1及び/又は第2の選択的透過性コーティングは、1種以上の酵素的に活性な物質、触媒的に活性な物質又は化学剤を吸収する物質を含み得る。幾つかの実施形態では、積層体は、物品並びに、例えば、1種以上の酵素活性物質、触媒活性物質又は化学剤吸収性物質を含み得る内側及び/又は外側布(ファブリック)層又はその他の追加の層を含む。
【0091】
酵素活性物質としては、化学剤又は微生物剤物質の化学反応を触媒することができる酵素が挙げられる。酵素活性物質には、1種以上の有機リンヒドロラーゼ(加水分解酵素)、ジイソプロピルフルオロホスファターゼ、有機リン酸アンヒドロラーゼ、ホスホトリエステラーゼ、ハロアミン又は第四アンモニウム塩が包含され得る。一実施形態では、酵素活性物質には、Lybradyn−OPH,BioCatalytics DFPase又はGenencor Defenzが含まれ得る。
【0092】
触媒的に活性なナノ粒子は、本明細書で使用する場合、活性種を有する粒子又は刺激(例えば、UV放射線)に応答して活性種を生成することができる粒子を含む。活性種は、化学剤又は微生物剤物質と反応又は相互作用してその活性を低下させるか、その物質が膜を通る浸透時間を増大するか又はその物質を無害の副生成物又は最終生成物に変換することができる可能性がある。本明細書で使用する場合、ナノ粒子とはナノスケールの平均粒径を有する粒子をいう。
【0093】
ナノ粒子は約1〜1000nmの範囲の最大寸法(例えば、直径又は長さ)を有し得る。ナノ粒子とは、本明細書で使用する場合、単一のナノ粒子、複数のナノ粒子又は相互に結合した複数のナノ粒子を指すことができる。結合したとは、金属ナノ粒子が1以上の他の金属ナノ粒子と接触していることをいう。一実施形態では、結合したとは、1つより多くの他の粒子と接触している金属ナノ粒子をいう。
【0094】
触媒活性物質は、銀、銅、酸化マグネシウム、酸化チタン及び酸化アルミニウムからなる群から選択される複数のナノ粒子を含み得る。化学剤吸収性物質には活性炭が包含され得る。
【0095】
第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング又は保護成分はさらにポリマー成分を含んでいる結果、物品の膜その他の層に設けられ、必要に応じて硬化されたとき、相互貫入網状組織又は膜その他の層の気孔と連結することによりコーティングを膜その他の層と機械的に結合し得る架橋したポリマー構造体を形成し得る。かかる実施形態では、選択的透過性コーティングは不可逆な架橋又は重合過程により膜に対して機械的に固定され得る。他の実施形態では、第1の選択的透過性コーティングの抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質又はその他の成分は、膜に対する化学親和力又は膜と相互作用することができることによって第1の選択的透過性コーティングを膜と接着させることができる官能基を有し得る。
【0096】
一実施形態では、第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング又は保護成分は、例えば、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミン又はポリビニルアルコール−コアミンのようなアミン又はイミンを含有するポリマーを含み得る。有利なことに、このヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは、ポリマー成分として、また抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質としても機能し得る。かかる実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは式(I)を有する構造単位を含み得る。
【0097】
【化10】

式中、「m」は1〜100の整数であり、「n」は0〜100の整数であり、「p」は1〜100の整数であり、「q」は0〜100の整数であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は各々独立に脂肪族基であり、R9は水素、脂肪族基又は式(II)を有する基である。
【0098】
【化11】

式中、R10、R11及びR12は各々独立に脂肪族基である。脂肪族基は以下に定義する通りである。
【0099】
脂肪族基は、1個以上の炭素原子を有し、1以上の原子価を有する有機基であり、線状又は枝分れした配列の複数の原子であり得る。脂肪族基は、窒素、イオウ、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし又は専ら炭素と水素のみで構成されていてもよい。脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基が包含され得る。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、このメチル基はアルキル基の1つである官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、このニトロ基は官能基である。脂肪族基は同じでも異なっていてもよい1個以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1個以上のハロゲン原子を有する脂肪族基としては、ハロゲン化アルキル、すなわちトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基の別の例としては、アリル、アミノカルボニル(−CONH2)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(−CH3)、メチレン(−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(−CH2OH)、メルカプトメチル(−CH2SH)、メチルチオ(−SCH3)、メチルチオメチル(−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(CH3OCO−)、ニトロメチル(−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル((CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、トリメトキシシリルプロピル((CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらなる例として、「C1〜C30脂肪族基」は1個以上だが30個以下の炭素原子を含有する。メチル基(CH3−)はC1脂肪族基の一例である。デシル基(CH3(CH29−)はC10脂肪族基の一例である。
【0100】
一実施形態では、1以上のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はエチル基を含み得る。一実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がエチル基を含み得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンはヒドロキシエチルで置換されたポリエチレンイミンを含み得る。
【0101】
ポリアルキレンイミンはヒドロキシル価で特徴付けることができる。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンの繰返し単位当たりの平均ヒドロキシル価は約0.5〜約3の範囲であり得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンの繰返し単位当たりの平均ヒドロキシル価は約1〜約3の範囲であり得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンの繰返し単位当たりの平均ヒドロキシル価は3超であり得る。
【0102】
ポリアルキレンイミンは重量平均分子量で特徴付けることができる。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは約1000g/モル超の重量平均分子量を有し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは約1000〜約2000g/モル、約2000〜約4000g/モル、約4000〜約8000g/モル、約8000〜約10000g/モル又は約10000〜約25000g/モルの範囲の重量平均分子量を有し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは約25000〜約50000g/モル、約50000〜約75000g/モル、約75000〜約100000g/モル、約100000〜約200000g/モル又は約200000〜約250000g/モルの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0103】
ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンが化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対して活性を示すのが望ましい実施形態では、このヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは有効量で存在し得る。ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンの有効量とは、最終用途の性能要件を満たすのに充分な官能基を提供するのに必要とされるヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンの量をいう。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約0.1重量%未満である量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約0.1〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%の範囲で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲の量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは膜と選択的透過性コーティングを合わせた重量の約50重量%より多い量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは膜と第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング又は保護成分を合わせた重量の約0.1〜約20重量%の範囲の量で存在する。
【0104】
一実施形態では、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンは約0.5〜約1mg/cm2、約1〜約2mg/cm2、約2〜約5mg/cm2、約5〜約10mg/cm2、約10〜約25mg/cm2又は約25〜約50mg/cm2の範囲の量で物品中に存在し得る。
【0105】
他の実施形態では、ポリマー成分はポリビニルアルコール−コアミンからなるのが有利であり得る。ポリビニルアルコール−コアミンポリマーは、例えば、Celaneseから商品名Erkol(登録商標)として市販されている。
【0106】
第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング及び/又は保護成分に含まれるポリマー成分は硬化することができる反応性の基を含み得る。反応性の基は、1以上の熱的エネルギー、電磁放射線、湿気硬化、UV硬化又は化学試薬に暴露されたとき化学反応に関与し得る。硬化とは、結果として選択的透過性コーティング又は保護成分の重合、架橋又は重合と架橋の両方を生じる反応を指し得る。
【0107】
第1若しくは第2の選択的透過性コーティング又は保護成分が硬化することができる反応性の基を含むポリマー成分を含んでいる実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは硬化剤を含み得る。この硬化剤はポリマー成分の硬化反応を触媒する(促進する)ことができる。一実施形態では、硬化剤には、1種以上のエポキシド、酸塩化物又はクロロホルメートが包含され得る。一実施形態では、硬化剤は反応性のトリアジンを含み得る。反応性のトリアジンは、選択的透過性コーティング及び/又は保護成分のポリマー成分中の少なくとも反応性の基と反応することができる1以上の反応性の基を含み得る。一実施形態では、硬化剤は選択的透過性コーティングのポリマー成分と積層体の膜又は他の層との化学反応を開始することができる可能性がある。
【0108】
一実施形態では、反応性のトリアジンは式(III)を有する構造単位を含み得る。
【0109】
【化12】

ここで、R13、R14及びR15はヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンと反応することができる少なくとも反応性の基を含んでいる。一実施形態では、反応性のトリアジンは1以上のカルバメート官能基を含み得る。一実施形態では、反応性のトリアジンにはトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンが含まれ得る。
【0110】
一実施形態では、硬化剤は選択的透過性コーティングの約0.1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約15重量%、約15〜約20重量%、約20〜約25重量%又は選択的透過性コーティングの約25〜約30重量%の範囲の量で存在し得る。
【0111】
一実施形態では、第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング又は保護成分は硬化することができる。硬化したとは、ポリマー成分の反応性の基の約5%より多くが反応した、すなわち変換率が約5%より大きいの範囲である、ポリマー成分を含む選択的透過性コーティング又は保護成分をいうことができる。変換率とは、反応性の基の総数に対する反応した基の総数の百分率とみることができる。一実施形態では、第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング及び/又は保護成分は、この選択的透過性コーティング及び/又は保護成分が物品又は積層体の膜又は他の層と化学的又は機械的に結合したと考えられるように硬化し得る。第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング及び/又は保護成分は、ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンを利用する本発明の実施形態では、このヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミン中にかなりの割合のヒドロキシル基が実質的に影響を受けないで残存するように硬化することができる。
【0112】
ヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンを含む本発明の実施形態では、第1及び/又は第2の選択的透過性コーティング及び/又は保護成分はさらにポリアルキルアミンを含んでいてもよい。ポリアルキルアミンとは、複数のアミン基及びアルキル系ポリマー骨格を含むポリマーをいう。適切なポリアルキルアミンはホモポリマー、コポリマー又はコレラの誘導体であり得る。適切な誘導体は、第一アミンではなく1個以上の第二アミン基を含み得る。一実施形態では、ポリアルキルアミンは、追加の機能的特性、例えば、MVTR、通気性、化学剤又は微生物剤物質の吸収などを選択的透過性コーティングに付与し得る。
【0113】
かかる実施形態では、ポリアルキルアミンは選択的透過性コーティング及び/又は保護成分の約0.5〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲の量で存在し得る。
【0114】
一実施形態では、選択的透過性コーティング及び/又は保護成分はヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミン及びポリビニルアミンを含み得る。ポリビニルアミンとは、ビニルアミン系ポリマー前駆体から誘導されたポリマーということができる。一実施形態では、選択的透過性コーティング及び/又は保護成分はポリビニルアルコール−ビニルアミンコポリマー及びヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンを含み得る。適切なポリビニルアミン及びその誘導体はBASF社(米国ニュージャージー州マウントオリーブ)から商業的に入手できる。
【0115】
かかる実施形態では、ポリビニルアミンは選択的透過性膜及び/又は保護成分の約0.5〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲の量で存在し得る。
【0116】
一実施形態では、ポリアルキレンイミン用の硬化剤はポリアルキルアミン及び/又はポリビニルアミンも硬化することができる。代わりの実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは、ポリアルキルアミン及び/又はポリビニルアミンの硬化反応を開始することができる反応性トリアジンとは異なる硬化剤を含み得る。一実施形態では、硬化した第1の選択的透過性コーティングはポリアルキレンイミンとポリアルキルアミン及び/又はポリビニルアミンの硬化した反応生成物を含み得る。
【0117】
第1の選択的透過性コーティングは膜の表面、気孔内部又は膜の表面と気孔内部の両方の上に存在し得る。一実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは気孔の内面を実質的に被覆し得る。一実施形態では、コーティングは、膜内で気孔を画定する節とフィブリルを取り囲み、これに接着し得る。一実施形態では、第1の選択的透過性コーティングはまた、膜内で気孔を画定する節とフィブリルの表面に合致し得る。かかる実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは本質的にほぼゼロの厚さを有し得、すなわち、第1の選択的透過性コーティングは膜の気孔の内面のみを被覆し得る。
【0118】
他の実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは膜の気孔を封鎖することなく膜上に設けることができる。又は、第1の選択的透過性コーティングは空隙及び/又は「ピンホール」なしに連続なコーティングを形成し得る。さらに他の実施形態では、コーティングは不連続部分を有していてもよい。コーティング層は厚さが均一であってもよいし又は領域毎に異なる厚さをもっていてもよい。
【0119】
一実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは約20〜約40μm、約40〜約60μm、約60〜約120μm、約120〜約160μm、約160〜約200μm、約200〜約240μm、約240〜約280μm、約280〜約320μm、約320〜約360μm又は約360〜約400μmの範囲の厚さを有し得る。一実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは約400〜約600μm、約600〜約800μm又は約800〜約1000μmの範囲の厚さを有し得る。
【0120】
同様に、保護成分は、単独であっても又は第2の選択的透過性コーティングの成分としてであっても、第1の選択的透過性コーティングに対して作動可能なように配置され得る。望ましくは、保護成分は第1の選択的透過性コーティングより親水性が低く、従って、他の場合には第1の選択的透過性コーティングに到達し得る湿気の量を低減し、これを促進する第1の選択的透過性膜と共同して提供される。従って、保護成分は、第1の選択的透過性コーティングの成分であってもよいし、第1の選択的透過性コーティングとは別に提供されてもよいし、第2の選択的透過性コーティングの第2の選択的透過性コーティングの成分として提供されてもよいし又は第2の選択的透過性コーティングの実質的に全体からなってもよい。
【0121】
保護成分/第2の選択的透過性コーティングは第1の選択的透過性コーティングの実質的に全て又は一部分のみを覆い得る。望ましくは、保護成分/第2の選択的透過性コーティングは第1の選択的透過性コーティングの実質的に全てを覆う。第1の選択的透過性コーティングが膜の表面上に存在する限り、保護成分/第2の選択的透過性コーティングもそうである。又は、第1の選択的透過性コーティングが膜の気孔の内面を被覆し、従って本質的にほぼゼロの厚さを有するのであれば、保護成分/第2の選択的透過性コーティングも同様であり得る。また、保護成分/第2の選択的透過性コーティングも第1の選択的透過性コーティングと同様に空隙及び/又は「ピンホール」がなく連続なコーティングを形成し得る。さらに他の実施形態では、保護成分/第2の選択的透過性コーティングは不連続部分を有していてもよい。保護成分/第2の選択的透過性コーティングは厚さが均一であってもよいし又は領域毎に異なる厚さを有していてもよい。
【0122】
一実施形態では、保護成分/第2の選択的透過性コーティングは、約20〜約40μm、約40〜約60μm、約60〜約120μm、約120〜約160μm、約160〜約200μm、約200〜約240μm、約240〜約280μm、約280〜約320μm、約320〜約360μm又は約360〜約400μmの範囲の厚さを有し得る。一実施形態では、保護成分/第2の選択的透過性コーティングは約400〜約600μm、約600〜約800μm又は約800〜約1000μmの範囲の厚さを有し得る。
【0123】
本明細書に記載されている物品は快適さと保護バリヤー特性の組合せで特徴付けることができる。快適さと保護バリヤー特性は物品の厚さ、単位平均重量、通気性、水蒸気透過速度(MVTR)又は化学剤若しくは微生物剤物質の透過性の1以上により特徴付けることができる。一実施形態では、物品は約300〜約400μm、約400〜約500μm、約500〜約600μm、約600〜約700μm、約700〜約800μm、約800〜約900μm、約900〜約1000μm、約1000〜約10000μmの範囲の厚さを有し得る。
【0124】
一実施形態では、物品は約5〜約30mg/cm2、約30〜約40mg/cm2、約40〜約50mg/cm2、約50〜約60mg/cm2、約60〜約70mg/cm2、約70〜約80mg/cm2、約80〜約90mg/cm2、約90〜約200mg/cm2の範囲の単位平均重量を有し得る。
【0125】
一実施形態では、物品は0.5インチH2Oで約6cfm未満の通気性を有し得る。一実施形態では、物品は約0.01〜約0.1cfm、約0.1〜約0.5cfm、約0.5〜約1cfm、約1〜約2cfm、約2〜約3cfm、約3〜約4cfm、約4〜約5cfm又は約5〜約6cfmの範囲の通気性を有し得る。本明細書に記載されている通気性は本明細書に記載されている試験条件を用いて測定することができる。本明細書で使用する場合、cfm/ftは立方フィート/分である。
【0126】
一実施形態では、物品は約500g/m2/日より大きい水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。一実施形態では、物品は約500〜約600g/m2/日、約600〜約800g/m2/日、約800〜約1000g/m2/日、約1000〜約1500g/m2/日又は約1500〜約2000g/m2/日の範囲の水蒸気透過速度を有し得る。一実施形態では、物品は約2000g/m2/日より大きい水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。
【0127】
一実施形態では、物品は約4000g/m2/日より大きい水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。一実施形態では、物品は約4000〜約5000g/m2/日、約5000〜約6000g/m2/日、約6000〜約7000g/m2/日、約7000〜約8000g/m2/日又は約8000〜約10000g/m2/日の範囲の水蒸気透過速度を有し得る。一実施形態では、物品は約10000〜約15000g/m2/日、約15000〜約20000g/m2/日、約20000〜約25000g/m2/日、約25000〜約30000g/m2/日又は約30000〜約40000g/m2/日の範囲の水蒸気透過速度を有し得る。一実施形態では、物品は約40000g/m2/日より大きい水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。
【0128】
一実施形態では、物品はDFP(サリン模擬物)に対する透過性が約50μg/24時間未満であり得る。一実施形態では、物品はDFP(サリン模擬物)に対する透過性が約1〜約5μg/24時間、約5〜約10μg/24時間、約10〜約20μg/24時間、約20〜約30μg/24時間又は約30〜約40μg/24時間又は約40〜約50μg/24時間の範囲であり得る。一実施形態では、物品はDFP(サリン模擬物)に対する透過性が約1μg/24時間未満であり得る。一実施形態では、物品は化学剤又は微生物剤物質に対する透過性が特定の化学剤又は微生物剤物質に対する毒性レベルより低い。
【0129】
物品の性能特性はまた1種以上の化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質の失活率によっても特徴付けることができる。一実施形態では、物品は化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対して約2g/hr/m2の範囲の失活率を示し得る。一実施形態では、物品は化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対して約2〜約3g/hr/m2、約3〜約4g/hr/m2又は約4〜約5g/hr/m2の範囲の失活率を示し得る。一実施形態では、物品は化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対して約5g/hr/m2超の失活率を示し得る。
【0130】
一実施形態では、10g/m2の用量レベル(dosing level)で、物品は24時間後に約5%より大きい失活を示し得る。一実施形態では、10g/m2の用量レベルで、物品は24時間後に約5〜約10%、約10〜約20%、約20〜約30%、約30〜約40%、約40〜約50%、約50〜約60%、約60〜約70%、約70〜約80%、約80〜約90%又は約90〜約95%の範囲の失活を示し得る。一実施形態では、10g/m2の用量レベルで、物品は24時間後に約100%の失活を示し得る。
【0131】
一実施形態では、物品は約30分超の未反応化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対する漏洩(breach)時間を示し得る。一実施形態では、物品は約30分〜約1時間、約1〜約2時間、約2〜約3時間、約3〜約4時間、約4〜約6時間、約6〜約7時間、約7〜約8時間、約8〜約9時間又は約9〜約10時間の範囲の未反応の化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対する漏洩時間を示し得る。一実施形態では、物品は約10時間超の未反応化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に対する漏洩時間を示し得る。
【0132】
図1に示すように、一実施形態では、第1の選択的透過性コーティング12は多孔質膜11上に支持された単一の層を有していて物品10を形成することができる。ここで、また本明細書及び特許請求の範囲を通じて、物品及び/又は積層構造体の様々な表現は単なる代表であり、本発明の可能な実施形態の全てを示すものではない。図1に示す実施形態では、層間剥離から保護する成分は第1の選択的透過性コーティング12の1つの成分である。第1の選択的透過性コーティングは本明細書に上記した範囲の厚さ及び/又は重量を有することができる。代わりの実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは本明細書に上記したような範囲の合わせた厚さ及び/又は重量を有する2以上の層を含んでいてもよい。第1の選択的透過性コーティング内の1以上の層は抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含んでいることができる。この実施形態では、前記成分は第1の選択的透過性コーティング12を多孔質膜11からの層間剥離から保護する。
【0133】
別の実施形態では、成分は、図2に示す第2の選択的透過性層23の1つの成分であってもよいし又は実質的にその全体からなっていてもよい。この実施形態では、第2の選択的透過性層23は第1の選択的透過性層22を実質的に覆っている。第1の選択的透過性層22は1種以上の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を有している。
【0134】
一実施形態では、第1の選択的透過性コーティングは単一の厚い層の代わりに複数の薄い層を有していることができ、これら複数の層のうちの各々の層が抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含んでいることができる。図3に、膜31上に支持された選択的透過性コーティング32を有する物品30を示す。ここで、第1の選択的透過性コーティングは2つの層34及び35を有しており、各々が1種以上の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を有している。一実施形態では、選択的透過性コーティングは同じ厚さを有する複数の薄い層を含んでいることができる。代わりの実施形態では、選択的透過性コーティングは、最終用途及びこの選択的透過性コーティングを膜上に設けるために使用する方法に応じてある範囲の厚さ及び/又は重量を有する複数の薄い層を有することができる。この実施形態では、保護成分は第2の選択的透過性層33の1つの成分又は実質的に全体として示されているが、保護成分はまた層34又は35のいずれか一方又は両方に含まれていてもよい。
【0135】
一実施形態では、積層体が提供される。この積層体は本明細書で上記したような物品及び疎油性の膜を含み得る。この物品は疎油性の膜上に支持され得る。一実施形態では、疎油性の膜とは、油、グリース又は体液、例えば汗及びその他ある種の汚染性物質を吸収又は吸着することによって汚染に対して抵抗性を示す膜ということができる。一実施形態では、疎油性の膜はガス透過性、液体浸透抵抗性で、70000g/m2/日以上の速度で水蒸気を透過させることができ得る。
【0136】
一実施形態では、疎油性の膜は、油及びある種の汚染性界面活性剤、例えばePTFEを吸収する傾向がある材料から作成され膜を通って伸延している複数の相互に連絡する気孔を含み得る。膜内で相互に連絡する通路を画定する節とフィブリルの表面上にコーティングを配置し得る。このコーティングは、節とフィブリルの表面上で合体した疎油性のフルオロポリマー固体を含んでいて、得られる疎油性の膜に、膜内の気孔を完全に封鎖することなく油及び界面活性剤耐性を付与し得る。
【0137】
適切な疎油性のフルオロポリマー固体としては、フルオロカーボン側鎖並びに比較的小量の水、水溶性共溶媒及びグリコールを有するアクリル系ポリマーが挙げられる。一実施形態では、適切な疎油性のフルオロポリマー固体には、Zonyl系のフッ素含有ポリマー(CIBA Specialty Chemicalsから入手可能)が包含され得る。代わりの実施形態では、適切な疎油性のフルオロポリマー固体には、商品名TLF−8868、TLF−9312、TLF−9373、TLF−9404A及びTLF−9494Bで市販されているフルオロポリマー(DuPontから入手可能)が含まれ得る。
【0138】
一実施形態では、疎油性の膜を形成するには、疎油性のフルオロポリマー固体の希釈され安定化された分散液で気孔の表面を濡らし、その後その分散液の疎油性のフルオロポリマー固体を、膜内の気孔を画定する表面上で合体させるとよい。一実施形態では、疎油性の膜は商品名eVENT(BHA Technologies社,MO)で市販されているものであり得る。
【0139】
一実施形態では、第1の選択的透過性コーティング42は膜41上に支持されており、この膜41自体は図4に示すように疎油性の膜46上に支持されて積層体40を形成することができる。この実施形態では、保護成分は第1の選択的透過性コーティング42の1つの成分、例えば、ヒドロキシアルキルで置換されたポリエチレンイミンである。図4には選択的透過性コーティング42を1つだけ示してあるが、選択的透過性コーティングの複数の層が積層構造体40内にあることができる。例えば、保護成分は、図5に示すように、第2の選択的透過性コーティングの1つの成分として提供されてもよいし又は実質的にその全体からなってもよい。
【0140】
より具体的には、図5に、膜51上に支持された第1の選択的透過性コーティング52を含む積層体50を示す。膜51は疎油性の膜56上に支持されている。保護成分を含む第2の選択的透過性コーティング53は第1の選択的透過性コーティング52を実質的に覆っている。図には1つの層として示されているが、第1の選択的透過性コーティング52は複数の層を有していてもよく、その複数の層のうちの1つ以上の層が抗微生物剤物質を含んでいることができる。
【0141】
一実施形態では、積層体は1以上の布、膜又はフィルムから選択されるシェル層を含んでいてもよい。図6に、膜61上に支持された第1の選択的透過性コーティング62を含有し、この膜61が疎油性の膜66の第1の表面上に支持されている積層体60を示す。図6に示した実施形態では、保護成分は第1の選択的透過性コーティング62の1つの成分である。シェル層67が疎油性の膜66の第2の表面上に支持されている。
【0142】
一実施形態では、シェル層としては、1以上の布層が挙げられる。一実施形態では、布層は、衣服、テント、寝袋、災害バッグなどの衣料又は囲い(enclosure)の物品に使用するのに充分なように可撓性、柔軟で、かつ耐久性であり得る。
【0143】
一実施形態では、1以上の布層として、ポリ(脂肪族アミド)、ポリ(芳香族アミド)、ポリエステル、ポリオレフィン、ウール、セルロース系繊維、例えば綿、レーヨン、リネン、酢酸セルロースその他の変性セルロース、ポリウレタン、アクリル、メタクリル又はこれらの1種を含むブレンドから選択されるポリマーが挙げられる。一実施形態では、1以上の布層には、綿、ポリ(脂肪族アミド)、ポリ(芳香族アミド)、ポリエステル、ポリウレタン又はこれらのブレンドが包含され得る。
【0144】
幾つかの実施形態では、1以上の布層は製織布から作成されてもよい。代わりの実施形態では、1以上の布層は不織布から作成されてもよい。不織布はニット、編組、タフト又はフェルトであり得る。
【0145】
一実施形態では、積層体は、本明細書に記載されている物品、疎油性の膜及び2以上の布物質を含んでいてもよい。これら2つの布層は同じ布材料を含んでいてもよいし又は異なる布層を有していてもよい。一実施形態では、積層体70は、図7に示すように外側の布層78と内側の布層77を有していてもよい。第1の選択的透過性コーティング72は膜71上に支持されており、この膜71は疎油性の膜76上に支持されている。層間剥離から保護する成分を含む第2の選択的透過性コーティング73は第1の選択的透過性コーティング74を実質的に覆っており、得られた構造体は外側布層78と内側布層77との間に挟まれている。図7には選択的透過性膜が1つだけ示されているが、選択的透過性膜の複数の層が積層構造体80内に存在することができる。
【0146】
外側布層は成分(elements)に暴露される積層体の最外層である。一実施形態では、外側布層はポリ(脂肪族アミド)、ポリ(芳香族アミド)、ポリエステル、アクリル、綿、ウールなどから作成された製織布であってもよい。一実施形態では、外側布層は疎水性又は疎油性になるように処理することができる。一実施形態では、内側布は編んだ、製織又は不織布であってもよく、水分を吸い上げる性質を高めるか又は疎水性若しくは疎油性の性質を付与するように処理することができる。
【0147】
幾つかの実施形態では、布層は、難燃性、帯電防止性、紫外線耐性、調節された赤外(IR)反射率、カモフラージュなどの性質を付与するように適切な物質で処理してもよい。
【0148】
一実施形態では、積層体は1以上の追加の層、例えば、1以上の親水性膜の層、疎油性膜の層又は多孔質膜の層を含んでいてもよい。図8に、本発明の一実施形態に係る積層体80を示す。第1の選択的透過性コーティング82は膜81上に支持されており、この膜81は疎油性の膜86上に支持されている。保護成分は、第1の選択的透過性コーティング82を実質的に覆う第2の選択的透過性コーティング83の1つの成分であるか又は実質的にその全体からなる。第1の追加の層89が疎油性の膜86と内側布層87との間に存在している。この第1の追加の層89は親水性の膜、疎油性の膜又はミクロ多孔質膜であることができる。かかる追加の層が1つだけ示されているが、複数の追加の層が積層構造体80中に存在している可能性がある。得られる構造体は外側布層88と内側布層87との間に挟まれている。
【0149】
一実施形態では、積層体内の1以上の層が1種以上の酵素活性物質、触媒活性物質又は化学剤吸収性物質を含み得る。酵素活性物質、触媒活性物質又は化学剤吸収性物質は積層構造体のいずれの層内に存在していてもよい。例えば、酵素活性物質、触媒活性物質又は化学剤吸収性物質は1以上の選択的透過性コーティング、親水性の膜、疎油性の膜、外側布層、内側布層又はその他適切な層内に存在し得る。幾つかの実施形態では、積層体内の異なる層が酵素活性物質、触媒活性物質又は化学剤吸収性物質を独立に含んでいてもよい。例えば、外側布層が酵素活性物質を含み、内側布層が化学剤吸収性物質を含み、そして選択的透過性コーティングが触媒的に活性な粒子を含んでいてもよい。
【0150】
一実施形態では、積層体は保護性の衣料からなり得る。一実施形態では、物品は本明細書で上記したように1以上の布層上に支持されて保護性の衣料を形成し得る。一実施形態では、保護性の衣料は水蒸気を透過することができ、人が有害な化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に暴露されるのを低減し得る。一実施形態では、保護性の衣料は、化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質の活性を低下させるか又は有意な量の化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質がこれらの物質に対して保護性の衣料を通過する時間を延長することによって、人が有害な化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に暴露されるのを低減し得る。
【0151】
一実施形態では、保護性の衣料としては上着が挙げられる。一実施形態では、保護性の衣料には、耐磨耗性であることができる外部に面する表面を有する上着が包含され得る。上着には、1種以上のジャケット、トップ(上半身の服)、シャツ、パンツ、フード、手袋、つなぎの服などが含まれ得る。一実施形態では、化学剤又は微生物剤物質に対して保護性の衣料として、除染スーツがあり得る。
【0152】
一実施形態では、保護性の衣料として、皮膚に接触して着用する可能性があるインナーウェアが包含され得る。一実施形態では、化学剤又は微生物剤物質に対して保護性の衣料品には、皮膚と流体接触して着用する可能性があるインナーウェアが含まれ得る。一実施形態では、化学剤又は微生物剤物質に対して保護性の衣料として、ソックス、靴、ブーツなどを始めとする履き物が挙げられる。他の実施形態では、本明細書で上記した物品はテント、寝袋、災害バッグ、シェルターなどの保護性の囲いに使用することができる。
【0153】
一実施形態では、方法が提供される。方法は第1の選択的透過性コーティングを多孔質膜に付けることを含む。この第1の選択的透過性コーティングは抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含んでいる。これらの物質は、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質と反応して、その化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質の活性を低下させるか又は有意な量の化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質が物品を通過する時間を延ばすのに充分な量で存在する。また、多孔質膜からの第1の選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分が、単独で又は第1又は第2の選択的透過性コーティングの1つの成分として設けられる。
【0154】
一実施形態では、第1及び/又は第2(存在する場合)の選択的透過性コーティングは、塗装技術、例えば、浸漬塗装、スロットダイ塗装、ロッド塗装、グラビア塗装などによって膜に設けることができる。一実施形態では、選択的透過性コーティングは、抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質の溶液及び/又は保護成分を膜製造工程に加えることによって多孔質膜中に組み込むことができる。組み合わせて選択的透過性コーティングを形成する複数の層を含む実施形態では、異なる層を連続して膜に設けてもよいし又は選択的透過性コーティングを予め製造しておいて後に多孔質膜に積層してもよい。
【0155】
幾つかの実施形態では、選択的透過性コーティングは、本明細書中に開示した方法を用いて、多孔質膜を被覆するか又は覆い、本質的に表面上に存在するようにすることができる。代わりの実施形態では、選択的透過性コーティングは、さらに、非常に少ない程度か又は選択的透過性コーティングが実質的に膜の厚さ全体にわたって膜内の気孔を被覆する程度に、膜の厚さを通って膜内に吸収されるようにしてもよい。幾つかの実施形態では、選択的透過性コーティングは完全にかかる膜の気孔内に存在するようにしてもよいし又は選択的透過性コーティングの一部分のみが気孔内に存在するようにしてもよい。
【0156】
一実施形態では、選択的透過性コーティングの溶液を膜に塗布してもよい。適切な溶媒は特定の溶媒に対する抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質の溶解度に応じて水性であっても非水性であってもよい。適切な溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及び水素結合を受け入れる能力のある化合物又は水と混和性の溶媒が挙げられる。適切な脂肪族及び芳香族炭化水素化合物としては、1〜4個の炭素原子を含有する1以上のアルキル基で置換されていてもよい1種以上のヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼンが包含され得る。水素結合を受け入れる能力がある適切な化合物は、1個以上の以下の官能基、すなわちヒドロキシル基、アミノ基、エーテル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、ウレイド基、スルホキシド基、スルホニル基、チオエーテル基及びニトリル基を含み得る。適切な溶媒として、1種以上のアルコール、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、尿素、ウレタン、スルホキシド、スルホン、スルホンアミド、硫酸エステル、チオエーテル、ホスフィン、亜リン酸エステル又はリン酸エステルが包含され得る。適切な非水性溶媒の他の幾つかの例としては、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、グリセロール、シクロヘキサノール、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アニソール、酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸エチル、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、1,1,3,3−テトラメチル尿素、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、メタンスルホンアミド、硫酸ジエチル、トリエチルホスファイト、トリエチルホスフェート、2,2’−チオジエタノール、アセトニトリル又はベンゾニトリルがある。一実施形態では、方法は空気乾燥、真空乾燥、加熱乾燥又はこれらの組合せにより膜から残留溶媒を除去することを含み得る。
【0157】
一実施形態では、方法は、例えば保護性の装備及び/又は衣料に使用できる積層体を製造することを含み得る。一実施形態では、選択的透過性膜は1以上の膜、フィルム又は衣料用布の層に積層することができる。一実施形態では、選択的透過性膜は親水性の膜、疎油性の膜、外側布層又は内側布層の1以上の層に積層してもよい。一実施形態では、積層は、熱的結合、ホットロール積層、超音波積層、接着剤積層、強制熱風積層により又はステッチのような機械的取付によって達成することができる。
【0158】
一実施形態では、積層体は縫合技術を用いて製造し得る。縫合技術では、接合しようとする縁を縫合するか又はヒートシールし、その後縫い目を積層体の内部にヒートシールし得る。一実施形態では、積層体は接着剤又はステッチを用いて製造し得る。ステッチを使用する場合これは、キルティング又は点結合した不織材料の場合のように層全体に存在してもよいし又は例えば衣服、手袋及びその他の衣料品の場合のように縫い目又はカフのみに存在していてもよい。
【0159】
一実施形態では、方法は、物品、積層体、保護性の装備又は保護性の衣料を化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質と接触させることを含み得る。一実施形態では、人が1種以上の化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質に暴露されるのを低減する方法が提供される。この方法は、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質を、気孔を有する膜及び第1の選択的透過性コーティングに暴露することを含み得る。この方法は、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質を気孔中に浸透させ、その化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質を抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質と反応させることを含み得る。
【0160】
一実施形態では、この方法は、化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質の生物活性を低下させるか又は有意な量の化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質が物品、積層体又は衣料を通過する時間を延ばすことのいずれか一方又は両方を含み得る。一実施形態では、方法は、化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質の生物活性を少なくとも80%低下させることを含み得る。一実施形態では、方法は、有意な量の化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質が物品を通過するのにかかる時間の長さを1時間増大することを含み得る。
【0161】
一実施形態では、方法は、人と化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質との間に、化学剤、生物剤、放射線剤及び/又は微生物剤物質と比べて水蒸気に対して優先的な透過性を有する膜を含む化学剤、生物剤、放射線剤又は微生物剤物質に対して保護性の衣料を介入させることを含み得る。
【実施例1】
【0162】
2−プロパノール中で、エトキシル化ポリエチレンイミンの25重量%ストック溶液を、Cytec Industries社から入手可能な20重量%のCylink(登録商標)2000架橋剤溶液と共に調製する。この溶液を用いて、ePTFE膜基材上に20g/m2のコーティングレベルでコーティングを設け、10分間180℃で硬化させる。次に、最初の処理を覆ってミクロ多孔質ポリウレタンの第2の層を約3g/m2のレベルで設け、充分に硬化させる。その後、得られた構造体を織物基材に積層し、層間剥離を起こすことなく長時間洗濯する。
【0163】
以上の実施例は本発明の幾つかの特徴を例証する。添付の特許請求の範囲は考えられる限り広く本発明を記載しており、ここに示した実施例は全ての多様で可能な実施形態から選択された実施形態を例証している。従って、添付の特許請求の範囲は、選択し記載した実施例により例示された本発明の特徴に制限されるものではない。特許請求の範囲で使用する場合、用語「含む」及びその変形語は、例えば、限定されることはないが、「本質的にからなる」及び「からなる」のような様々に異なる用語を内在的に包含する。必要に応じて範囲が記載されているが、これらの範囲はその間に入るあらゆるより狭い範囲を包含する。これらの範囲の変形は当業者には明らかであり、開示されていなくてもそのような変形は特許請求の範囲に含まれる。科学及び技術の進歩により、言語の不正確さのために現在は考えられていない等価物及び置換物が可能になるであろうし、それらの変形は全て特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質膜、
前記膜に支持されており、有効量の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含む第1の選択的透過性コーティング、並びに
多孔質膜及び/又はそこに設けられている他のあらゆるコーティングからの前記選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分
を含んでなる物品。
【請求項2】
前記成分が前記第1の選択的透過性コーティングの1つの成分からなる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記成分が第2の選択的透過性コーティングの1つの成分からなる、請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記第1の選択的透過性コーティングがさらに、化学剤、生物剤、放射線剤又は抗微生物剤物質に対して活性なポリマー成分を含んでいる、請求項1記載の物品。
【請求項5】
前記ポリマー成分がヒドロキシアルキルで置換されたポリアルキレンイミンからなる、請求項4記載の物品。
【請求項6】
請求項1記載の物品及び1以上の追加の膜を含んでなる積層体。
【請求項7】
請求項6記載の積層体を含んでなる衣料品であって、前記衣料品が上着からなる、前記衣料品。
【請求項8】
多孔質膜に、(i)有効量の抗化学薬品剤、抗生物剤、抗放射線剤及び/又は抗微生物剤物質を含む第1の選択的透過性コーティング及び(ii)前記多孔質膜及び/又はそこに設けられている他のあらゆるコーティングからの前記選択的透過性コーティングの層間剥離から保護する成分を適用することを含んでなる方法。
【請求項9】
前記成分が前記選択的透過性コーティングの1つの成分でもある、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第1の選択的透過性コーティングがさらにポリマー成分を含んでおり、前記方法がさらに前記ポリマー成分を硬化させることを含む、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247524(P2010−247524A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27072(P2010−27072)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】