説明

物品保持具

【課題】取付基板への取付・取り外しが容易になされ、かつ横揺れを防止した保持具を提供する。
【解決手段】電線等の物品40を保持する結束バンド部2Bと、シャーシ等の取付板30に形成した貫通孔31に嵌合する固定部2Aとを有し、前記結束バンド部2Bは、頭部3とこの頭部3の後方に延長される帯状体4で形成され、前記固定部2Aは、前記頭部3の前方に延長された柱体6と、この柱体の先端部から前記頭部3近傍に延長される2本の腕片5,5を有し、この腕片5,5の接続端側に前記貫通孔31の周縁と嵌合して歯止めされる係合突起5aと自由端側にこの係合突起5aを縮小させる操作レバー5bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線等を結束した状態で電気機器の函体の壁面に固定したり、電線等を纏めたりする取り外し可能な物品保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、自動車、自動販売機やゲーム機などは、その各種制御装置やコンピュータの制御信号や電源供給等に多数(数百本)の絶縁電線が使用されている。この電線は、数本から数十本程度を一括りに纏めて配線されており、このように電線が纏められた所謂ワイヤーハーネスの両端に設けたコネクタにより基板同士が接続されている。
【0003】
前記ワイヤーハーネス、光ケーブル(光ファイバー)等は、中継されたり分岐されたり合流したりと複雑に配線されており、また、他の機器や電子部品を避けたり、可動部を避けたりして配線されているので、それらに部分に接触したり配線がズレたりしないように基板や筐体などに線材保持具によって所定の位置に保持・固定されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、地球環境や資源といった観点から前記複写機、自動車やゲーム機などは、回収・分解・分別され、筐体やワイヤーハーネス、基板等が再資源化がされるようになってきている。再資源化に当たり、ワイヤーハーネスや光ケーブル等の線材は筐体や基板から取り外されているが、特許文献1記載の保持具によって取り付けられた線材は、その保持具がシャーシ等に開孔した取付孔に嵌合して取り外せないようになっており、作業者が線材を引きちぎったり刃物で切断したりして除去されている。即ち、特許文献1記載の保持具は、結束バンド部の頭部に設けた鏃形状の突起体が、シャーシ等に開孔した取付孔の周縁に嵌合するが、嵌合状態の解除手段を備えていないので取り外し不可能となっているのである。
【0005】
そして、保持具が作業者によって引きちぎられ際には、鏃形状の突起体はシャーシ等の裏面側に残留していた。この突起体を取り出すためにシャーシ等をさらに分解したり破壊したりする作業が必要となり、また、小さくて取り扱い性の悪い突起体を回収して分別するのに非常に手間がかかっていた。
【0006】
また、保持具を引きちぎるには比較的大きな力が必要であるので、多数の保持具を引きちぎっている作業者への負担がかなり大きくなっており、手指や腕などを痛めてしまうこともあった。
【0007】
従って、線材を保持し、かつ板金(取付基板、シャーシ等)に取付・取り外しが可能なリユース型の保持具が望まれている。このようなリユース型の保持具として、先端部の突起体を縮小させるレバーを設けたものが提案されている。(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−51254号公報
【特許文献2】特開2004−278703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載の保持具は、図15及び図16に示すように電線が固定される基板(シャーシ)102に形成した取付孔103(貫通孔)と嵌合する略逆V字形状の嵌合部120が先端部に形成され、電線や光ファイバー等の線材を保持するベルト部110とから構成されている。
【0009】
前記嵌合部120は、前記保持部110の一側から下方に向けて突出された柱体121(柱体)と、前記柱体121の先端部に設けられ、外径方向に弾性変形して前記貫通孔103に嵌合される鏃形状の嵌合片122が形成されている。また、前記嵌合片122の先端部からそれぞれ前記ベルト部110の両側面に沿って延設され、手操作されたときに前記一対の嵌合片122を内径方向に弾性変形して前記貫通孔103との嵌合から離脱させるための一対の解除片124が形成されている。従って、この保持具100は、嵌合部120に設けた一体の解除片124を両外側から指で摘んで嵌合片122を内径方向に弾性変形させることでシャーシ102の貫通孔103から保持具を容易に取り外すことが可能となっている。
【0010】
しかしながら、この保持具の嵌合状態は図15及び図16に示す如く、嵌合片122と解除片124との間に位置する中間部123と、柱体121との間に空隙150、即ちガタを生じ、この柱体121が図面上の左右方向(矢印w)にぐらぐらと大きく振れてしまうという問題があった。
【0011】
従って、自動車等の振動によって線材140がぐらぐらと大きく揺れてしまい、振幅が大きくなって線材が破断する虞があった。また、線材140が確実に固定されていないので、その揺れが伝搬してしまい、コネクタが取り付けられている基板などにも負荷がかかっていた。また、線材140がぐらぐらと揺れるので近接しているワイヤーハーネス同士が接触したり、シャーシに接触したりしてノイズが発生したりしていた。
【0012】
また、前記嵌合片122が貫通孔130の周縁に確実に係合されるように拡開した状態で形成され硬くされているので、嵌合片122を挿入する際に、挿通する嵌合片122と貫通孔103の内周との摺動摩擦が大きくなり、スムーズに取付孔130に挿入・取り付けができないばかりか、完全に嵌合状態となるまで保持具が押し込まれない状態で取り付けられてしまい、振動によってシャーシ等から保持具が外れてしまうという問題もあった。
【0013】
本発明は、取付基板への取付が容易かつ確実になされ、また、取り外しも容易であり、更に横揺れを防止した保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明に係る保持具は、
【0015】
1) 電線等の物品を保持する結束バンド部(2B)と、電線等を固定する取付板に形成した貫通孔に嵌合する固定部(2A)とを有し、前記結束バンド部(2B)は、頭部(3)とこの頭部(3)の後方に延長される帯状体(4)で形成され、前記固定部(2A)は、前記頭部(3)の前方に延長された柱体(6)と、この柱体(6)の先端部から前記頭部(3)近傍に延長される2本の腕片(5)を有し、この腕片(5)の接続端側に前記貫通孔の周縁と嵌合して歯止めされる係合突起(5a)と自由端側にこの係合突起(5a)を縮小させる操作レバー(5b)を設けたことを特徴としている。
【0016】
2) 前記頭部(3)の上方に、前記係合突起(5a)が取付板の貫通孔の周縁と嵌合している状態で前記取付板を弾圧する突張り片(12)を設けたことを特徴としている。
【0017】
3) 前記突張り片(12)に、前記腕片(5)と当接してこの腕片(5)の位置を規制するストッパ突起(12a)を設けたことを特徴としている。
【0018】
4) 前記柱体(6)の後方に、前記固定部(2A)の首振りを防止する前記取付板の貫通孔の内壁近傍に膨出する安定支持体(6a)を形成したことを特徴としている。
【0019】
5) 前記結束バンド部(2B)の頭部(3)は、前記帯状体(4)を挿通させる挿通孔(3a)が形成されており、この挿通孔(3a)の内壁に前記帯状体(4)の表面に形成したラチェット歯(4a)と噛合する止め爪(15a)を形成すると共に、ラチェット歯(4a)との噛合を解除できる操作部(15b)を挿通孔(3a)近傍に突出形成したことを特徴としている。
【0020】
6) 前記結束バンド部(2B)の頭部(3)は、前記帯状体(4)を挿通させる挿通孔(3a)が形成されており、この挿通孔(3a)の内壁に前記帯状体(4)の表面に形成したラチェット歯(4a)と噛合する止め爪(15a)を形成すると共に、挿通孔(3a)の内壁に当接して揺動片(15)の揺動を規制する押圧体(15d)を形成したことを特徴としている。
【0021】
7) 前記帯状体(4)は、保持した電線等の物品に接触して緊縛する接触側を平坦面(24d)に形成し、非接触側に頭部(23)の挿通孔(23a)内に配置された止め爪(35a)と噛合するラチェット歯(24a)を形成したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の物品の保持具。
【発明の効果】
【0022】
柱体を膨出させた安定支持体を形成し、この安定支持体が取付板の貫通孔の内壁面に臨んで膨出しているので、横揺れ(首振り)現象が防止される。
【0023】
また、突張り片が板厚に応じて弾性変形するので、この突張り片のバネ力(付勢力)によって固定部の腕片と取付孔との嵌合が強力になされ、不用意に保持具が取付板から外れてしまうことが防止される。
【0024】
更に、前記止め爪に前記係合歯との係合を解除する係合解除部を挿通孔の出口部に臨ませて形成したので、結束器を使用して線材を緊縛した場合に余分な帯状体が自動的に切断されるが、止め爪は挿通孔の内部に位置しているので線材を緊縛している帯状体がゆるむことがない上に、ドライバ等で係合解除部にアクセスしてベルト部と止め爪との係合を解除できるので、帯状体をはさみで切断したり無理矢理引きちぎったりすることなく容易に線材と保持具とを分離することができ、分別・リサイクルを容易なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る保持具について図示し説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において実施できるものである。
【0026】
[実施例1]
本発明に係る物品の保持具1は、図1に示すように、先端部8に取付板30の貫通孔31の周縁33と係合する腕片5を設けた固定部2と、電線等の物品を緊縛する帯状体4と、前記固定部2Aと帯状体4との間にこの帯状体4を挿通しかつ保持する挿通孔3aを設けた頭部3とから構成されている。
【0027】
前記頭部3の挿通孔3aの内壁3bに前記帯状体4の表面に列設した鋸歯状の係合歯4aと係合する止め爪15aが支持片15を介して揺動可能に設けられている。また、前記止め爪15aに前記係合歯4aとの係合を解除する係合解除部15bを挿通孔3aの出口部に臨ませて形成されている。また、揺動片15は、帯状体4の先端部4cの挿入口側に、挿通孔3aの内壁に当接して揺動片15の揺動を規制する押圧体15dが形成されている。また、頭部3には、この頭部3の前端より前方に延長する少なくとも一対の突張り片12が設けられている。
【0028】
更に、前記固定部2Aは、前記頭部3より突設した柱体6の先端部より頭部3側に後退する片持ち状の腕片5を有しており、この腕片5の固定端側に鏃形状の係合突起5aが形成されている。この鏃形状の係合突起5aは、取付板30の貫通孔31の周縁に係合する肩部5cが円弧状に形成されている。
【0029】
前記係合突起5aは、この係合突起5aの自由端側に操作レバー5bが一体に形成され、前記柱体6の頭部3側の一端に前記取付板30の貫通孔31の内壁34に臨む安定支持体6aが膨出形成されている。
【0030】
また、前記突張り片12に前記操作レバー5bの拡開を規制するストッパ突起12aが設けられており、一対の係合突起5aの拡開を規制するようになっているので、係合突起5aと挿通孔31との摺接摩擦を低減することができ、取付操作が容易に行われるようになる。更に、他方の一対の突張り片12の先端側には、保持具1を取り付ける際に取付板30上を該突張り片12の先端部がスムーズに移動するように円柱部12bが形成されている。前記ストッパ突起12aもこの円柱部12bと同様の形状に形成されている。
【0031】
前記腕片5の一対の係合突起5aは、柱体6の先端部に略逆V字形状に形成されており、取付板30の貫通孔31に差し込みしやすいようになっている。
【0032】
更に、頭部3の後方に延長された帯状体4の先端側には、曲がり部9を介して先端部8が形成されている。曲がり部9は、図2では先端部8が下方に向かって下降する角度αに形成され、作業者が先端部8を手に取ったときに、自然に矢印Sの方向に先端部8が挿通孔3aに挿入されるようになっているのである。先端部8には作業者が手袋等をしていても操作しやすいように滑り止め8bが設けられている。
【0033】
また、帯状体4を緊縛させるのとは逆方向に引っ張ると、帯状体4のラチェット歯4aと噛合している揺動片15の押圧体15dが挿通孔3aの内壁に当接してその押圧体15dの揺動が規制され、ラチェット歯4aと止め歯15aとの噛合力が向上して結束力が増強されている。
【0034】
そして、図5に示すように、前記係合突起5aが取付板30の貫通孔31の周縁に嵌合して保持具1が取り外せないようになっている。また、頭部3の前方両端から延長された4本の突張り片12が取付板30を弾圧すると共に、腕片5も後方の操作レバー5b部分によって取付板30を弾圧するようになっており、さらには柱体6と安定支持体6aが取付孔31の内壁近傍に位置するようになっているので、保持具1は全方向に対して首振りが防止されている。
【0035】
(保持具の取付操作)
このように構成された保持具1によるケーブル(線材40)の取付は、線材40を保持具1の後方に延長されている帯状体4で軽く緊縛しておき、シャーシ30(例えば、板厚0.8乃至2.4mm)に形成された取付孔31(例えば、孔径3.0乃至4.8mm)に、固定部2の係合突起5aを差し込むだけで行われる。即ち、先端部8より貫通孔31に挿入すると、係合突起5aが縮径して貫通孔31を挿通し、この係合突起5aの肩部5cが貫通孔31の周縁に係合するのである。
【0036】
次いで、手動結束器を用いて所定の緊縛力で帯状体4を締め上げると、所定の緊縛力に達したときに前記帯状体4の余長が自動的に切断され、取付操作が完了する(図5)。なお、ニッパ等の工具により切断することも勿論可能である。
【0037】
(保持具の取り外し操作(リユース))
本発明に係る保持具を使用された家電製品等を廃棄処分する際には、図6に示すように操作レバー5bを摘んで(矢印イ)、係合突起5aの縮小方向(矢印ロ)に操作する。前記係合突起5aが取付孔31の孔径よりも縮小され、取付孔31の周縁との嵌合が解除されるので、操作レバー5bを摘んだ状態で保持具を取外し方向(矢印ハ)に軽く引張るだけで、取付板30から保持具1が容易に取り外される。即ち、保持具を取付板に取付けた方向から取り外すことができるのである。
【0038】
更に、頭部3の操作部15bを作業者の手指の爪などで操作して帯状体4の緊縛を解除し、線材40と保持具1とを容易に分別される。この分別された保持具1は、同様の保持具の材料や他の合成樹脂成型品等の原料としてリサイクルされる。
【0039】
(作用効果)
本発明により、柱体を膨出させた安定支持体を形成し、この安定支持体が取付板の貫通孔の内壁面に臨んで膨出しているので、横揺れ(首振り)現象が防止される。
【0040】
また、突張り片が板厚に応じて弾性変形するので、この突張り片のバネ力(付勢力)によって嵌合部の腕片と取付孔との嵌合が強力になされ、不用意に保持具が取付板から外れてしまうことが防止される。
【0041】
更に、前記止め爪に前記係合歯との係合を解除する係合解除部を挿通孔の出口部に臨ませて形成したので、結束器を使用して線材を緊縛した場合に余分なベルト部が自動的に切断されるが、止め爪は挿通孔の内部に位置しているので線材を緊縛しているベルト部がゆるむことがない上に、ドライバ等で係合解除部にアクセスしてベルト部と止め爪との係合を解除できるので、ベルト部をはさみで切断したり無理矢理引きちぎったりすることなく容易に線材と保持具とを分離することができ、分別・リサイクルを容易なものとすることができる。
【0042】
なお、本実施例に係る保持具はポリプロピレン製であるが、これに限定されるものではない。例えば、ナイロン又はABS等の合成樹脂を用途(耐熱性や耐オゾン性など)に応じて使用することができる。
【0043】
[実施例2]
従来の通常の絶縁電線は、その絶縁被覆としてポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)が用いられていた。このPVC樹脂の絶縁被覆は、通常の結束具により緊縛されたときの巻締力に対する耐圧力が強く、耐久性が高いことから広く用いられてきた。ところが、PVC樹脂の絶縁被覆の電線は、焼却時にハロゲン元素が放出されてしまうので、環境保護の観点から好ましくないものであった。
【0044】
よって、PVC樹脂のようにハロゲン元素を含まないハロゲンフリーの絶縁被覆が使用されるようになってきており、そのような絶縁被覆としてポリオレフィン樹脂を用いた「エコ電線」が普及してきている。ポリオレフィン樹脂としては、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA樹脂)が使用されている。このEVA樹脂被覆は、PVC樹脂被覆よりも柔軟性を有していることから、取り回しの追従性に優れているので、コピー機やコンピュータのような内部空間が小間隙である箇所の配線によく使用されている。また、光ファイバーは、通信速度の向上や大容量化に伴って頻繁に使用されるようになっている。
【0045】
ところで、PVC樹脂を使用していないEVA樹脂製被覆のエコ電線は、通常の電線のように巻締力に対する耐圧力が強くはなく、通常の電線用結束具を使用して強い結束力(2〜5kgf)で緊縛すると被覆が白化したり、内部配線に結束力が作用して変形したりすることがあった。
【0046】
また、光ファイバーは、50〜100μm径の石英ガラス製コアの周囲に、125μm径のクラッドを設けた構造となっており、通常の電線用結束具で緊縛すると、その巻締力によりコアに亀裂が生じたり破断してしまうことがあった。
【0047】
本実施例は、図12に示すように、帯状体24が線材40に接触する接触面側を平坦面24dとし、エコ電線や光ファイバーなどもシャーシ等に固定して配線できる保持具に関するものである。
【0048】
図8は保持具21の概略構成図(平面図)、図9は側断面図、図10は底面図、図11は正面図である。図8〜図10に示すように、保持具21は、突張り片32の中間部に、腕片25と当接してこの腕片25の拡開を規制するストッパ突起が設けてある。
【0049】
帯状体24は、保持した電線等の物品40に接触する接触面に平坦面24dを形成し、その平坦面24dの反対側にラチェット歯24aが設けられている。また、ラチェット歯24aの両側部には、帯状体24の両側部に沿って突条体27が形成され、ラチェット歯24aに他の保持具や工具が接触しないようにしている。
【0050】
本実施例では図11に示すように、突張り片32が頭部23の両側に1本ずつ設け、操作レバー25bをその突張り片32の反対方向に延長して形成し、作業者が把持操作し易くなっている。また、突張り片32の中間部に設けたストッパ突起32aには断面略三角形状の爪32dが形成され、腕片25がストッパ突起32aを乗り越えないようになっている。
【0051】
また、安定支持体26aの根本部分に突起部26cが形成されている。この突起部26cは、取付板の板厚が薄くなると突張り片32が取付板を押圧する押圧力が低下したときに、保持具のガタツキを防止するものである。
【0052】
このように構成された第2実施例に係る保持具21は、図12に示すように線材等の物品40を緊縛した使用状態において、その物品40の表面に当接しているのは帯状体24の平坦面24dである。
【0053】
(ストッパ突起の役目)
取付板(例えば板金など)の取付孔は、その孔の周縁と係合突起との噛み合いが確実になされるように面取り処理を行わず、孔の周縁にエッジ部が形成された状態となっている。ところが、エッジ部が保持具の係合突起に引っ掛かってしまい保持具を取付板に取り付ける際の押し込み力が高くなっていた。
【0054】
小型の保持具(例えば、孔径3.0mm用)は、その構成部品が小さいので、係合突起とエッジ部との接触箇所が小さくなる上に、保持具の弾力性が小さくなって柔軟性が向上するので、作業者が保持具を取付孔に押し込むだけで自然に係合突起が窄まって取り付けられる。
【0055】
一方、大型の保持具(例えば、孔径4.8mm用)は、その構成部品も大きく、係合突起とエッジ部との接触箇所が大きくなる上に、保持具の弾力性が大きくなって柔軟性が低下するので、保持具を取付孔に押し込んで係合突起が自然に窄まるには大きな力が必要であった。
【0056】
そこで、取付板の貫通孔の孔径に応じて係合突起(5a,25a)を窄めた状態に保持することができるストッパ突起(12a,32a)を腕片(5,25)に設けたのである。このストッパ突起(12a,32a)により、任意の位置に腕片(5,25)を保持することができ、取付孔のエッジに引っ掛かりにくくて軽い力で取り付けられる保持具が得られる。
【0057】
(保持具の製造方法)
図1、図8及び図10に示すように、保持具1,21の腕片5,25と突張り片12,32とが平面視で重なり合っているので、金型のキャビティが重なって形成されるために一体化して成形されることになる。そこで、腕片5,25を上方にバンザイさせて突張り片12,32と重ならない形状のキャビティを金型に形成し、射出成形により一体的に製作されている。そして、保持具を成型した後に操作レバー5b,25bを操作し、腕片5,25をストッパ突起12a,32aに引っ掛けて製品となっている。
【0058】
(作用効果)
本実施例により、ハロゲンフリーのエコ電線や光ファイバー等を束ねて結束する際に、その被覆を保持具で傷つけてしまったり、コア材が破断してしまったりすることが防止される。
【0059】
また、シャーシ等に形成された保持具の取付孔の径に応じて係合突起の開き具合が調節されるので、取付孔の内周面と保持具の先端部との摺動摩擦が減少し、スムーズかつ小さい力で簡単に保持具をシャーシ等に取り付けることができる。
【0060】
また、ラチェット歯と噛合する止め歯を有する揺動片に、挿通孔の内壁に当接してその揺動片の揺動を規制するようにしたので、ラチェット歯と止め歯との噛合力が向上し結束力が向上する。
【0061】
更にまた、帯状体の先端側に曲がり部を介して先端部を形成したので、作業者が先端部を手に取ったときに、自然に操作したときにその先端部の挿入方向を間違えないようになり、挿入方向を一々確認しながら作業することがなくなるので、操作性と作業性が向上する。
【0062】
[実施例3]
第1実施例においては、突張り片が4本のものについて説明をしたが、第2実施例のように操作レバーを大型化したり、図14に示すように突張り片を2本(一対)としたりできる。図14に示した保持具1aは、頭部3の先端の両側に1本ずつ突張り片12を設けたものである。使用方法は前述の実施例と同様であるので省略する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る保持具の概略構成図(平面図)である。
【図2】本発明に係る保持具の一部断面側面図である。
【図3】本発明に係る保持具の底面図である。
【図4】本発明に係る保持具の正面図である。
【図5】本発明に係る保持具の使用状態を示す図である。
【図6】本発明に係る保持具のリユース操作の概要を示す図である。
【図7】図5のX−X要部拡大断面図である。
【図8】第2実施形態に係る保持具の概略構成図(平面図)である。
【図9】第2実施形態に係る保持具の側断面図である。
【図10】第2実施形態に係る保持具の底面図である。
【図11】第2実施形態に係る保持具の正面図である。
【図12】第2実施形態に係る保持具の使用状態を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る保持具のストッパ突起の形成箇所を変更したものを示す図である。
【図14】第3実施形態に係る保持具の正面図である。
【図15】従来の保持具の使用状態を示す図である。
【図16】図15のY−Y矢視要部拡大断面図である。
【図17】従来の保持具の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1,21 保持具
2A,22A 固定部
2B,22B 結束バンド部
3,23 頭部
3a,23a 挿通孔
4,24 帯状体
4a,24a ラチェット歯
5,25 腕片
5a,25a 係合突起
5b,25b 操作レバー
6,26 柱体
6a,26a 安定支持体
8,24c 先端部
9,29 曲がり部
12,32 突張り片
12a,32a ストッパ突起
12b,32b 円柱部
15,35 揺動片
15a,35a 止め爪
15b 操作部
15d,35d 押圧体
30 取付板
31 取付孔
40 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線等の物品を保持する結束バンド部(2B)と、電線等を固定する取付板に形成した貫通孔に嵌合する固定部(2A)とを有し、
前記結束バンド部(2B)は、頭部(3)とこの頭部(3)の後方に延長される帯状体(4)で形成され、
前記固定部(2A)は、前記頭部(3)の前方に延長された柱体(6)と、この柱体(6)の先端部から前記頭部(3)近傍に延長される2本の腕片(5)を有し、この腕片(5)の接続端側に前記貫通孔の周縁と嵌合して歯止めされる係合突起(5a)と自由端側にこの係合突起(5a)を縮小させる操作レバー(5b)を設けたことを特徴とする物品の保持具(1)。
【請求項2】
前記頭部(3)の上方に、前記係合突起(5a)が取付板の貫通孔の周縁と嵌合している状態で前記取付板を弾圧する突張り片(12)を設けたことを特徴とする請求項1記載の物品の保持具(1)。
【請求項3】
前記突張り片(12)に、前記腕片(5)と当接してこの腕片(5)の位置を規制するストッパ突起(12a)を設けたことを特徴とする請求項2記載の物品の保持具(1)。
【請求項4】
前記柱体(6)の後方に、前記固定部(2A)の首振りを防止する前記取付板の貫通孔の内壁近傍に膨出する安定支持体(6a)を形成したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の物品の保持具。
【請求項5】
前記結束バンド部(2B)の頭部(3)は、前記帯状体(4)を挿通させる挿通孔(3a)が形成されており、この挿通孔(3a)の内壁に前記帯状体(4)の表面に形成したラチェット歯(4a)と噛合する止め爪(15a)を形成すると共に、ラチェット歯(4a)との噛合を解除できる操作部(15b)を挿通孔(3a)近傍に突出形成したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の物品の保持具(1)。
【請求項6】
前記結束バンド部(2B)の頭部(3)は、前記帯状体(4)を挿通させる挿通孔(3a)が形成されており、この挿通孔(3a)の内壁に前記帯状体(4)の表面に形成したラチェット歯(4a)と噛合する止め爪(15a)を形成すると共に、挿通孔(3a)の内壁に当接して揺動片(15)の揺動を規制する押圧体(15d)を形成したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の物品の保持具。
【請求項7】
前記帯状体(4)は、保持した電線等の物品に接触して緊縛する接触側を平坦面(24d)に形成し、非接触側に頭部(23)の挿通孔(23a)内に配置された止め爪(35a)と噛合するラチェット歯(24a)を形成したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の物品の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−95218(P2009−95218A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330828(P2007−330828)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【特許番号】特許第4169776号(P4169776)
【特許公報発行日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000127938)株式会社エスケイ工機 (20)
【Fターム(参考)】