説明

物品収納装置

【課題】利用者に煩雑な手続を強いることなく、収納した物品の取出個数を確実に管理することができる物品収容装置を提供すること。
【解決手段】収容本体21と、収容本体21の前面開口22を通じて前後方向に沿って移動可能となる態様で配設された引出し23とを備えた物品収容装置1であって、前面開口22近傍にそれぞれの検知個所が互いに前後に変位する態様で配設され、基準位置に位置する引出し23が一旦前方に向けて移動した後に後方に向けて移動して再度基準位置に位置するまでの間におけるそれぞれの検知個所を通過する物品の有無を検知する第1センサ35および第2センサ36と、該センサ35,36の検知順序により引出し23の移動方向を判定し、かつセンサ35,36の検知結果により基準位置にある引出し23が前方に移動して再度基準位置に位置するまでに収納部25から取り出された物品の個数を算出する端末制御部31を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属の切削加工等に用いられる切削工具等の物品を収容し、必要に応じて該物品を取り出し可能な状態にする物品収容装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属の切削加工等に用いられる切削工具等の物品のうち汎用的なものは、工具商社が預託というかたちで一定量をユーザ企業側に保管しておき、ユーザ企業側が必要に応じて保管場所から物品を取り出してその旨を記帳し、予め決められた期限に取り出した物品の代金を工具商社に支払うということが行われていた。また、これとは別に、通常の商取引のように、ユーザ企業側が工具商社に必要量をその都度発注し、工具商社が物品を納入するということも行われていた。
【0003】
しかしながら、前者では、物品を取り出す際にその旨を記帳しなければならず、記載漏れ等で取り出した物品(使用した物品)の数が不明確となる虞れがあり、物品の取出個数の管理が十分とは言えない。また、後者では、発注に応じて物品を納入しなければならないので、結果的に物品の使用個数の管理が煩雑なものになってしまう虞れがある。
【0004】
ところで、上述したような切削工具等の物品における取出個数(使用個数)の管理に関するものではないが、いわゆる棒金硬貨(同一金種の硬貨を一定枚数だけ棒状にまとめて包装したもの)の取出個数(使用個数)を管理する装置が知られている。
【0005】
かかる装置は、筐体である収容本体に前後方向に移動可能となる態様で配設された引出しが備えられたものである。この引出しには、棒金硬貨を一つずつ収納する収納部が前後方向に沿って並設されている。また、かかる装置には、棒金硬貨の有無を検知する検知手段が設けられている。検知手段は、引出しの移動変位量を検出するエンコーダ、棒金径を検出するセンサおよび棒金孔を検出するセンサ等で構成されている。
【0006】
当該装置では、引出しを前方に移動させてその上限位置に位置させ、すなわち引出しを前方に引き出して引出限界位置に位置させ、そこから引出しを後方に向けて移動させる。つまり、引出限界位置にある引出しを手動で押し込む。このように引出しを移動させることにより、エンコーダで引出しの移動変位量を検知し、各センサで棒金硬貨の有無、あるいは棒金硬貨の直径および中心孔の有無を検知し、これにより収容してある棒金硬貨の取出個数(使用個数)を算出している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−85332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したような特許文献1に記載の装置を例えば切削工具等の物品の収容に適用した場合、引出しを引き出して一旦引出限界位置に位置させ、かかる位置から後方に向けて移動させて、エンコーダにより移動変位量を検知しながら物品の有無を各センサにて検知して、取り出した物品の個数を算出することになる。
【0009】
ここで、引出しに収納された商品を取り出す場合には、利用者は、引出しを引出限界位置まで引き出すことなく(引出限界位置まで前方に向けて移動させることなく)、必要量だけ引き出して収納された商品を取り出した後、再び引出しを押し込むことにより前方に移動させるのが一般的である。
【0010】
従って、特許文献1に記載の装置を物品の収容に適用して、物品の取出個数を算出する場合、利用者が引出しを引出限界位置まで移動させてから後方に移動させなければならず、物品の取出個数を管理することはできるものの、利用者にとってはわざわざ引出しを引出限界位置まで移動させなければならず、依然として利用者に煩雑な手続を強いることになる。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、利用者に煩雑な手続を強いることなく、収納した物品の取出個数を確実に管理することができる物品収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る物品収容装置は、筐体である収容本体と、前記収容本体に該収容本体の前面開口を通じて前後方向に沿って移動可能となる態様で配設され、物品を一つずつ収納する収納部が前後方向に沿って並設された引出しとを備え、常態においては、前記引出しが前記収容本体の内部にあって、かつ前記前面開口を閉成する基準位置に位置することにより前記収納部に収納される物品が該収容本体の内部に収容されている一方、前記引出しが前記基準位置から前面開口を通じて前方に向けて移動した場合には、前記収納部に収納された物品を取り出し可能な状態にする物品収容装置であって、前記収容本体の前面開口近傍にそれぞれの検知個所が互いに前後に変位する態様で配設され、基準位置に位置する引出しが一旦前方に向けて移動して物品が取り出し可能な状態になった後に後方に向けて移動して再度基準位置に位置するまでの間におけるそれぞれの検知個所を通過する前記収納部の物品の有無を検知する複数の検知手段と、前記検知手段の検知の順序により前記引出しの移動方向を判定するとともに、前記検知手段の検知結果により基準位置にある引出しが前方に移動して再度基準位置に位置するまでに前記収納部から取り出された物品の個数を算出する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る物品収容装置は、上述した請求項1において、前記収納部は、前後方向に等間隔に設けられているとともに、物品の収納および物品の未収納に応じて姿勢を変形させるレバー部材を有してなり、前記検知手段は、物品が収納されている場合の姿勢にあるレバー部材を検知することにより物品の有無を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る物品収納装置によれば、収容本体の前面開口近傍にそれぞれの検知個所が互いに前後に変位する態様で配設された複数の検知手段が、基準位置に位置する引出しが一旦前方に向けて移動して物品が取り出し可能な状態になった後に後方に向けて移動して再度基準位置に位置するまでの間におけるそれぞれの検知個所を通過する収納部の物品の有無を検知し、制御手段が、検知手段の検知の順序により引出しの移動方向を判定するとともに、検知手段の検知結果により基準位置にある引出しが前方に移動して再度基準位置に位置するまでに収納部から取り出された物品の個数を算出するので、利用者が引出しを必要量だけ引き出し、その後に押し込んで基準位置に位置させた場合にも、物品の取出個数を容易に算出することができる。これにより、従来のように引出しを引出限界位置から押し込むことにより後方に向けて移動させる必要はない。従って、利用者に煩雑な手続を強いることなく、収納した物品の取出個数を確実に管理することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る物品収容装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。尚、本実施の形態では、収容対象となる物品は、直方状のプラスチック製容器に収納されたものとして説明する。
【0016】
図1および図2は、それぞれ本発明の実施の形態における物品収容装置を模式的に示すものであり、図1は、物品収容装置の構成を示す斜視図であり、図2は、物品収容装置の制御系を示すブロック図である。ここに例示する物品収容装置1は、主制御ユニット10と、複数の収容ユニット20とを備えて構成してある。
【0017】
主制御ユニット10は、一の収容ユニット20に載置された態様で配設してあり、主制御部11、液晶パネル12、プリンタ13およびリーダ14を備えて構成してある。
【0018】
主制御部11は、主メモリ15に格納されたデータやプログラムにしたがって、物品収容装置1の動作を統括的に制御するものである。液晶パネル12は、前方を臨む態様で配置されたものであり、本実施の形態では各種情報を表示するとともに、利用者が入力操作を行うことができるタッチパネルとしての機能を有するものである。プリンタ13は、印字指令が与えられることにより所定の紙等に印字を行う印字手段である。このプリンタ13により印字された紙は、紙排出口16より排出され、利用者が取得することができる。リーダ14は、利用者が有しているIDカード等の記録媒体が所定の通信可能領域に保持されることにより当該記録媒体に格納されている情報を読み出すためのものである。
【0019】
収容ユニット20は、本実施の形態では複数(例えば2つ)設けてあり、上記主制御ユニット10を載置するものが主収容ユニット20aであって、これに隣接した態様で配設されたものが追加収容ユニット20bである。本実施の形態では、主収容ユニット20aが1つ設けてあって追加収容ユニット20bが1つ設けてある構成であるが、本発明ではこれに限定されず、追加収容ユニット20bが複数設けてあっても構わない。
【0020】
このような収容ユニット20(主収容ユニット20aおよび追加収容ユニット20b)は、収容本体21および引出し23を備えて構成してある。尚、以下においては、追加収容ユニット20bは主収容ユニット20aと同一の構成を有しているため、主収容ユニット20aを中心にして説明する。
【0021】
収容本体21は、鋼材を組み合わせてなる直方状の筐体である。この収容本体21には、前面に複数の開口(前面開口)22が左右二列で上下に複数段設けてある。
【0022】
引出し23は、収容本体21に対して前後方向に沿って移動可能となる態様で配設してある。より詳細には、引出し23は、対応する前面開口22を通じて前後方向に沿って移動可能となる態様で配設してある。この引出し23は、把手部24および収納部25を有している。
【0023】
把手部24は、引出し23の前端部分に設けてあり、対応する前面開口22を覆うのに十分な大きさを有した板状部分241と、前方に突出した水平延在部分の先端縁が下方に垂下してなる把手部分242とを有している。
【0024】
収納部25は、図3および図4に示すように、前後方向に沿って等間隔で複数形成してある。この収納部25は、物品Pを一つずつ収納する部分である。より詳細に説明すると、各収納部25には、商品を収納するための収納凹部25aが形成してあり、かかる収納凹部25aの後面を形成する支持面25a1と、収納凹部25aの前面に揺動可能に設けられ、バネ等の付勢手段の付勢力が作用することにより、収納凹部25aの内部に進出移動する押板部材25a2とが設けてある。かかる押板部材25a2と支持面25a1とにより挟持される態様で、物品Pは収納凹部25aの内部に収納されることになる。
【0025】
また、この収納部25にはレバー部材26が設けてある。レバー部材26は、一端26aが支持端、他端26bが自由端として揺動可能に配設したものであり、収納凹部25aの内部に商品が収納されていない場合(未収納の場合)には、自由端26bが前方で支持端26aが後方に位置する非収納姿勢になる一方、収納凹部25aの内部に商品が収納されている場合には、自由端26bが下方で支持端26aが上方に位置する収納姿勢になるものである。
【0026】
このような引出し23は、常態においては収納部25が収容本体21の内部にあって、かつ把手部24が前面開口22を閉成する基準位置に位置しており、これにより収納部25に収納される物品Pが収容本体21の内部に収容されている。その一方、引出し23が基準位置から前面開口22を通じて前方に向けて移動した場合には、収納部25に収納された物品Pが取り出し可能な状態になる。
【0027】
上記収容ユニット20には、収容本体21および引出し23の他に、端末制御部31、ロック機構32、開閉センサ33、ブザー34、第1センサ35および第2センサ36を備えて構成してある。端末制御部31は、主制御ユニット10を構成する主制御部11と有線または無線で通信可能となる態様で接続してあり、端末メモリ37に格納されたプログラムやデータにしたがって収容ユニット20の動作を統括的に制御するものである。ここで、主収容ユニット20aの端末制御部31と、追加収容ユニット20bの端末制御部は、図2に示すように、主制御部11に対して並列となる態様で通信可能に接続されている。
【0028】
ロック機構32は、ロック指令が与えられることにより基準位置に位置する引出し23が前方に向けて移動、すなわち引き出されることを規制するものであるとともに、ロック解除指令が与えられることにより基準位置に位置する引出し23が前方に向けて移動することを許容するものである。
【0029】
開閉センサ33は、収容本体21の前面開口22の開閉を検知するものである。より詳細に説明すると、引出し23が基準位置に位置する場合には、該引出し23の把手部24により前面開口22は閉成されていることから開閉センサ33は、前面開口22が閉成しているものと検知し、引出し23が基準位置から前方に向けて所定量移動している場合には、前面開口22が開成していることから開閉センサ33は、前面開口22が開成しているものと検知するものである。ブザー34は、報知指令が与えられた場合に所定の警告音を発する報知手段である。
【0030】
第1センサ35および第2センサ36は、ともにそれぞれの検知個所を通過する収納部25の物品Pの有無を検知する検知手段である。本実施の形態では、第1センサ35および第2センサ36は、ともに光学式センサである。これら第1センサ35および第2センサ36は、収容本体21の各前面開口22の近傍、すなわち引出し23が基準位置にある場合に収納部25よりも下方側であって、最前列にある収納部25と把手部24との間に対応する部位に設けてある。より詳細には、第1センサ35および第2センサ36の設置高さは、レバー部材26が収納姿勢にある場合に、レバー部材26の他端側(自由端26b側)の通過を検知することができるレベルに設けてある。また、これら第1センサ35および第2センサ36は、それぞれの検知個所が互いに前後方向に変位する態様で配設してあり、第2センサ36の検知個所が第1センサ35の検知個所よりも後方側に位置するようにしてある(図7参照)。ここで、その変位の大きさは、収納姿勢にあるレバー部材26の前後幅よりも小さいものである。
【0031】
以上のような構成を有する物品収容装置1は、次のようにして物品Pの取出個数を管理している。
【0032】
図5は、主制御ユニットを構成する主制御部が実施する物品選択処理の内容を示したフローチャートである。かかる図5を参照しながら物品収容装置1の動作について説明する。
【0033】
物品選択処理における主制御部11は、液晶パネル12を通じて利用者によりID、パスワード等の個人情報が入力されると(ステップS101:Yes)、入力された個人情報と、予め主メモリ15に格納してある個人情報との間で照合を行う(ステップS102)。かかる照合の結果、両者が一致していない場合には(ステップS102:No)、液晶パネル12を通じてエラー表示をし(ステップS103)、後述する処理を実施することなく手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0034】
ステップS102において両者が一致した場合には(ステップS102:Yes)、主制御部11は、液晶パネル12を通じて物品選択画面を表示し(ステップS104)、所定時間利用者に物品が選択されない場合には(ステップS105:No,ステップS106:Yes)、後述する処理を実施することなく手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0035】
一方、利用者が液晶パネル12をタッチして物品を選択した場合には(ステップS105:Yes)、主制御部11は、選択された物品を収容する収容ユニット20の端末制御部31に選択信号を出力し(ステップS107)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。尚、ここでは主収容ユニット20aを構成する端末制御部31に選択信号を出力したものとして説明する。
【0036】
図6は、収容ユニット(主収容ユニット)を構成する端末制御部が実施する取出個数算出処理の内容を示したフローチャートである。かかる図6を参照しながら物品収容装置1の動作について更に説明する。
【0037】
取出個数算出処理における端末制御部31は、主制御部11からの選択信号を入力した場合には(ステップS201:Yes)、選択信号に含まれる物品Pを収納する引出し23に対応するロック機構32を通じてロックを解除する(ステップS202)。
【0038】
その後、端末制御部31は、開閉センサ33を通じて前面開口22が開成されているか否かを検知し(ステップS203)、所定時間が経過しても前面開口22の開成が検知されない場合は(ステップS203:No,ステップS204:Yes)、再びロック機構32にロック指令を与えて当該引出し23の移動を規制するようにし(ステップS205)、後述する処理を実施することなく手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0039】
ステップS203で前面開口22が開成されていることが検知され(ステップS203:Yes)、所定時間が経過しても前面開口22が閉成されていることが検知されない場合には(ステップS206:NO,ステップS207:Yes)、端末制御部31は、ブザー34に報知指令を与えて所定の警告音を発せさせて報知し(ステップS208)、後述する処理を実施することなく手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0040】
ところで、ステップS203で前面開口22が開成されていることが検知され(ステップS203:Yes)、その後に開閉センサ33を通じて前面開口22が閉成されていることが検知されると(ステップS206:Yes)、基準位置に位置する引出し23は、利用者により手動で引き出されて前方に向けて所定量だけ移動し、その後に利用者に手動で押し込まれて後方に向けて移動し基準位置に位置したことになる。かかる場合に、端末制御部31は、第1センサ35および第2センサ36からそれぞれの検知個所を通過する収納部25に収納される物品Pの有無に関する検知信号が与えられることになる。
【0041】
ステップS206において前面開口22が閉成されていることが検知されると(ステップS206:Yes)、端末制御部31は、ロック機構32にロック指令を与えて当該引出し23の移動を規制するようにし(ステップS209)、第1センサ35および第2センサ36のそれぞれから与えられた検知信号に基づき取出個数を算出する(ステップS210)。
【0042】
ここでステップS210の処理内容について詳細に説明する。図7は、取出個数算出処理の対象となる収容ユニットの要部を模式的に示した説明図である。図8は、図7に示す物品P(ハ)の後端位置(Aの位置)が第2センサ36の後方近傍まで前方に移動し、その後に後方に移動して基準位置に位置するまでにおける第1センサ35および第2センサ36による検出結果を示している。
【0043】
利用者が引出し23の把手部24を掴んで引出し23を引き出すことにより、基準位置にある引出し23は、前方に向けて移動し、上述したように図示のAの位置が第2センサ36の後方近傍に到達するまで前方に移動する。その後に当該利用者に押し込まれることにより、引出し23は、後方に向けて移動し、再び基準位置に位置することになったとする。つまり、引出し23は、利用者により引き出されて所定量だけ前方に移動し、その後に押し込まれることにより同じ量だけ後方に移動して基準位置に戻ったことになる。この過程で利用者により物品P(イ)が取り出されたとして以下の説明を行う。
【0044】
端末制御部31は、第1センサ35の検知個所よりも後方側に検知個所が位置する第2センサ36が第1センサ35よりも先に収納姿勢にあるレバー部材26(の端縁)を検知している場合には、引出し23が前方に向けて移動しているものと判定し、第1センサ35が第2センサ36よりも先に収納姿勢にあるレバー部材26(の端縁)を検知している場合には、引出し23が後方に向けて移動しているものと判定する。つまり、端末制御部31は、第1センサ35および第2センサ36の検知順序により引出し23の移動方向を判定する。そして、端末制御部31は、前方に向けて移動していると判定した場合における第1センサ35および第2センサ36がオンになった回数と、後方に向けて移動していると判定した場合における第1センサ35および第2センサ36がオンになった回数とを比較し、前者のオンの回数に比べて後者のオンの回数が一つ少ない場合には、物品Pが1つ取り出されたものとしてその取出個数を1個として算出する。
【0045】
このようにして取出個数を算出した端末制御部31は、端末メモリ37にその履歴を登録し(ステップS211)、その後に主制御部11に履歴信号を出力して(ステップS212)、手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0046】
このような取出個数算出処理が実施されて端末制御部31より履歴信号が与えられた主制御部11は、プリンタ13に当該履歴信号に含まれる履歴情報(取出個数に関する情報)を印字する旨の印字指令を与える。印字指令が与えられたプリンタ13は、所定の紙に印字を行い、印字された紙は、紙排出口16より排出されて利用者が受け取ることが可能になる。
【0047】
以上説明したように、本発明の実施の形態における物品収容装置1においては、第1センサ35および第2センサ36が、それぞれの検知個所が互いに前後に変位する態様で配設され、それぞれの検知個所を通過するレバー部材26(収納姿勢にあるレバー部材26)を検知することにより当該レバー部材26に対応する収納部25に収納された商品の有無を検知し、端末制御部31が、第1センサ35および第2センサ36の検知順序により引出し23の移動方向を判定するとともに、各移動方向における第1センサ35および第2センサ36のオン回数を比較して取り出された物品Pの個数を算出するので、利用者が引出し23を必要量だけ引き出し、その後に押し込んで基準位置に位置させた場合にも、物品Pの取出個数を容易に算出することができる。これにより、従来のように引出しを引出限界位置から押し込むことにより後方に向けて移動させる必要はない。従って、利用者に煩雑な手続を強いることなく、収納した物品Pの取出個数を確実に管理することができる。
【0048】
また、上記物品収容装置1によれば、第1センサ35および第2センサ36が収納姿勢にあるレバー部材26を検知することにより物品Pの有無を検知するようにしたので、同一の引出し23に収納される物品Pの大きさが異なる場合にも、等間隔に設けられた収納部25のレバー部材26を検知することになり良好に物品Pの有無を検知することが可能になる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0050】
図9は、本発明の変形例における収容ユニットの要部を模式的に示した説明図である。図10は、図9に示す物品P(ハ)の後端位置(Aの位置)が第1センサ35の後方近傍まで前方に移動し、その後に後方に移動して基準位置に位置するまでにおける検出結果を示している。尚、上述した実施の形態と同一の構成を有するものには同一の符号を付して説明する。
【0051】
ここに例示する物品収容装置1では、検知手段を構成するセンサが3つある場合であり、それぞれの検知個所が前後方向に変位する態様で設けてある。より詳細に説明すると、第2センサ36の検知個所が第1センサ35の検知個所よりも後方側に位置するようにしてあるとともに、第3センサ38の検知個所が第2センサ36の検知個所よりも後方側に位置するようにしてある。また、第1センサ35の検知個所と、第3センサ38の検知個所との変位の大きさは、収納姿勢にあるレバー部材26の前後幅よりも小さくしてある。
【0052】
利用者が引出し23の把手部24を掴んで引出し23を引き出すことにより、基準位置にある引出し23は、前方に向けて移動し、上述したように図示のAの位置が第1センサ35の後方近傍に到達するまで前方に移動し、その後に当該利用者に押し込まれることにより、引出し23は、後方に向けて移動し、再び基準位置に位置することになった場合であって、この過程で利用者により物品P(イ)が取り出されたとして説明を行う。
【0053】
端末制御部31は、最も後方側に検知個所が位置する第3センサ38が最も先に収納姿勢にあるレバー部材26(の端縁)を検知し、次に第2センサ36が該レバー部材26を検知している場合には、引出し23が前方に向けて移動しているものと判定し、第1センサ35が最も先に収納姿勢にあるレバー部材26(の端縁)を検知している場合には、引出し23が後方に向けて移動しているものと判定する。つまり、端末制御部31は、第1センサ35、第2センサ36および第3センサ38の検知順序により引出し23の移動方向を判定する。そして、端末制御部31は、前方に向けて移動していると判定した場合における第1センサ35、第2センサ36および第3センサ38がオンになった回数と、後方に向けて移動していると判定した場合における第1センサ35、第2センサ36および第3センサ38がオンになった回数とを比較する。ここで、図示の例のように、第1センサ35の検知パターンのみが他の2つのセンサの検知パターンと異なる場合には、当該第1センサ35の検知結果を除して比較する。つまり、検知パターンが一致する2つ以上の検知結果だけを利用して比較する。そして、第2センサ36および第3センサ38の検知結果に基づき、前者のオンの回数に比べて後者のオンの回数が一つ少ない場合には、物品Pが1つ取り出されたものとしてその取出個数を1個として算出するようにしている。
【0054】
このようにそれぞれの検知個所が前後方向に変位する態様で3つのセンサ35,36,38を設け、検知パターンが一致する2つ以上の検知結果だけを利用して、物品Pの取出個数を算出するようにすれば、より高い精度で取出個数を算出することが可能になる。
【0055】
また、上述した実施の形態およびその変形例では、レバー部材26を検知することにより物品Pの有無を検知しているが、直接物品Pの有無を第1センサ35および第2センサ36にて、あるいは第1センサ35、第2センサ36および第3センサ38にて検知するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明は、例えば金属の切削加工等に用いられる切削工具等の物品を収容し、必要に応じて該物品を取り出し可能な状態にするのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態における物品収容装置を模式的に示すものであり、物品収容装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した物品収容装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】図1に示した物品収容装置を構成する引出しを示す斜視図である。
【図4】図1に示した物品収容装置を構成する引出しを示す側面図である。
【図5】主制御ユニットを構成する主制御部が実施する物品選択処理の内容を示したフローチャートである。
【図6】収容ユニット(主収容ユニット)を構成する端末制御部が実施する取出個数算出処理の内容を示したフローチャートである。
【図7】取出個数算出処理の対象となる収容ユニットの要部を模式的に示した説明図である。
【図8】第1センサおよび第2センサによる検出結果を示したものである。
【図9】本発明の変形例における収容ユニットの要部を模式的に示した説明図である。
【図10】第1センサ、第2センサおよび第3センサによる検出結果を示したものである。
【符号の説明】
【0058】
1 物品収容装置
10 主制御ユニット
20 収容ユニット
20a 主収容ユニット
20b 追加収容ユニット
21 収容本体
22 前面開口
23 引出し
25 収納部
26 レバー部材
31 端末制御部
35 第1センサ
36 第2センサ
38 第3センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体である収容本体と、
前記収容本体に該収容本体の前面開口を通じて前後方向に沿って移動可能となる態様で配設され、物品を一つずつ収納する収納部が前後方向に沿って並設された引出しと
を備え、
常態においては、前記引出しが前記収容本体の内部にあって、かつ前記前面開口を閉成する基準位置に位置することにより前記収納部に収納される物品が該収容本体の内部に収容されている一方、前記引出しが前記基準位置から前面開口を通じて前方に向けて移動した場合には、前記収納部に収納された物品を取り出し可能な状態にする物品収容装置であって、
前記収容本体の前面開口近傍にそれぞれの検知個所が互いに前後に変位する態様で配設され、基準位置に位置する引出しが一旦前方に向けて移動して物品が取り出し可能な状態になった後に後方に向けて移動して再度基準位置に位置するまでの間におけるそれぞれの検知個所を通過する前記収納部の物品の有無を検知する複数の検知手段と、
前記検知手段の検知の順序により前記引出しの移動方向を判定するとともに、前記検知手段の検知結果により基準位置にある引出しが前方に移動して再度基準位置に位置するまでに前記収納部から取り出された物品の個数を算出する制御手段と
を備えたことを特徴とする物品収容装置。
【請求項2】
前記収納部は、前後方向に等間隔に設けられているとともに、物品の収納および物品の未収納に応じて姿勢を変形させるレバー部材を有してなり、
前記検知手段は、物品が収納されている場合の姿勢にあるレバー部材を検知することにより物品の有無を検知することを特徴とする請求項1に記載の物品収容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−1410(P2009−1410A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166489(P2007−166489)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】