説明

物品搬送設備

【課題】緊急地震速報を受信した場合に、長時間に亘って設備の運転が停止することを極力防止できる物品搬送設備を提供すること。
【解決手段】受信端末が緊急地震速報を受信すると、電力供給手段を供給状態に維持したまま搬送装置の搬送作動を停止させる通常停止制御を行い、受信端末が緊急地震速報を受信してから設定時間Tが経過するまでの待機期間中は、地震検出手段の検出情報に基づいて、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には非供給状態に切り換え、かつ、待機期間中における地震検出手段の検出情報に基づいて、搬送装置の搬送作動の再開を許容するか否かを判別し、再開を許容すると判別した場合には搬送装置の搬送作動を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に作動用の電力を供給する供給状態及び非供給状態に切換自在な電力供給手段と、発生した地震の到達を予報する緊急地震速報を受信する受信端末と、前記搬送装置の搬送作動及び前記電力供給手段の切換作動を制御する制御手段とが設けられている物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
上記物品搬送設備は、例えば、物品を多数収納する収納棚を備えた自動倉庫において収納棚に対する物品の入出庫を行うスタッカークレーンや、自動倉庫に対して入庫すべき物品や自動倉庫から出庫した物品を搬送する有軌道又は無軌道の無人搬送台車や、物品を載置搬送するコンベヤなどを搬送装置として備えている。昨今では、物品搬送設備の物品処理能力を向上させるために、例えば、スタッカークレーンの走行速度や昇降速度、無人搬送台車の走行速度、コンベヤの搬送速度は、高速化されている。そのため、これらの搬送装置が搬送作動している最中に地震が発生すると、例えば、無人搬送台車の脱線や衝突、スタッカークレーンの脱線や傾倒などの事故が発生して、設備の破損や火災の発生など甚大な被害が想定される。
【0003】
そこで、物品搬送設備における地震による被害を極力小さなものとする技術として、地震の揺れが到達する前に搬送装置の作動を確実に停止させるとともに搬送装置に対する電力の供給を絶って電気系統からの出火を回避するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1(請求項6、段落「0056」、図4)参照)。
【0004】
特許文献1には、発生した地震の到達を予報する緊急地震速報を受信する受信端末を設けて、緊急地震速報を受信した場合、制御手段は、揺れが発生するまでの予測時間内に極力安全な状態となるまで退避用の作動を継続させた後、搬送装置を停止状態にし、電力供給手段を非供給状態に切り換える技術が提案されている。特許文献1では、その実施形態において、緊急地震速報を受信した場合に、予測震度が基準値以上であれば必ず、制御手段が電力供給手段を非供給状態に切り換えるようになっている。
【0005】
ここで、緊急地震速報は、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予測し、可能な限り素早く知らせる地震動の予報である。その一例として、気象庁及び認可を受けた地震動予報業務許可事業者により配信される緊急地震速報があるが、この緊急地震速報を受信するためには、専用の受信端末が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−298520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の物品搬送設備であると、受信端末が受信した緊急地震速報に基づく予測震度が基準値以上であれば必ず、制御手段が電力供給手段を非供給状態に切り換えるので、緊急地震速報により基準値以上の地震の発生が予報されたものの物品搬送設備が設置されている場所では実際には地震による揺れが発生しなかった場合や発生しても微弱であった場合にまで、搬送装置に対する作動用の電力の供給が遮断されることになる。搬送装置に対する作動用の電力の供給が遮断されると、例えば、無人搬送台車の走行位置情報等といった搬送装置の搬送作動を制御するために必要な搬送装置の動作状態についての情報を失ってしまうことになる。よって、搬送装置の搬送作動を再開するためには、搬送装置の動作状態についての情報を取得し直す等の作業を行わなければならないので、搬送装置の搬送作動を迅速に再開することができず、物品搬送設備の運転が長時間停止してしまう。
【0008】
このように、従来の物品搬送設備であると、受信端末が緊急地震速報を受信した場合、その緊急地震速報に基づく予測震度が基準値以上であれば、実際には地震による揺れが発生しなかった又は微弱な揺れしか発生しなかった場合にまで、物品搬送設備の運転が長時間停止してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、緊急地震速報を受信した場合に、長時間に亘って設備の運転が停止することを極力防止できる物品搬送設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る物品搬送設備の第1特徴構成は、物品を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に作動用の電力を供給する供給状態及び非供給状態に切換自在な電力供給手段と、発生した地震の到達を予報する緊急地震速報を受信する受信端末と、前記搬送装置の搬送作動及び前記電力供給手段の切換作動を制御する制御手段とが設けられているものにおいて、地震による揺れの大きさを検出する地震検出手段が設けられ、前記制御手段は、前記受信端末が前記緊急地震速報を受信すると、前記電力供給手段を前記供給状態に維持したまま前記搬送装置の搬送作動を停止させる通常停止制御を行うように構成され、前記受信端末が前記緊急地震速報を受信してから設定時間が経過するまでの待機期間中は、前記地震検出手段の検出情報に基づいて、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、前記非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換え、前記待機期間中における前記地震検出手段の検出情報に基づいて、前記搬送装置の搬送作動の再開を許容するか否かを判別し、再開を許容すると判別した場合には、前記搬送装置の搬送作動を再開するように構成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、受信端末が緊急地震速報を受信すると、制御手段が、電力供給手段を供給状態に維持したまま搬送装置の搬送作動を停止させる通常停止制御を行うことにより、実際に地震の揺れが物品搬送設備の設置場所に到達するまでに、できるだけ、搬送装置を停止状態に切り換えることができる。これにより、搬送装置が停止している又は作動速度が低下している状態で、地震による揺れを受けることができるので、地震の揺れによる被害の拡大の防止を図ることができる。
【0012】
また、受信端末が緊急地震速報を受信してからは、設定時間が経過するまでの待機期間中に、制御手段が、地震検出手段の検出情報に基づいて、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、必要であれば、電力供給手段を非供給状態に切り換えるので、待機期間中に実際に地震の揺れが物品搬送設備の設置場所に到達して、非供給状態に切り換える必要性が具体的に発生した場合には、電力供給手段が非供給状態に切り換えられ、搬送装置の作動用の電力が絶たれる。これにより、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要性があるほどの地震の揺れが待機期間中に実際に到達した場合に、例えば、揺れが到達した時点で未だ搬送装置の作動速度が停止状態まで完全に低下していない場合には、搬送装置に誤動作などを起こさせることなくその後確実に停止状態とすることができる。また、搬送装置への電力の供給を絶つことで、電気系統からの出火等のおそれも低減できる。なお、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要性の判別は、例えば、地震検出手段の検出情報が基準値を超えるか否かにより判別することができる。
【0013】
そして、受信端末が緊急地震速報を受信してから設定時間が経過するまで、制御手段が、地震検出手段の検出情報に基づいて、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要があると判別することがなければ、前記待機期間中における地震検出手段の検出情報に基づいて、搬送装置の搬送作動の再開を許容するか否かが判別され、搬送装置の搬送作動の再開が許容できる状況である場合には、再開を許容すると判別され、搬送装置の搬送作動が再開される。
【0014】
このように、緊急地震速報を受信した場合、設定期間が経過するまでの待機期間中に、地震による実際の揺れの大きさを検出する地震検出手段の検出情報に基づいて、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要性が判別されるので、実際に必要ない場合にまで電力供給手段が非供給状態に切り換えられることを防止できる。そして、実際に非供給状態に切り換える必要がなかった場合には、緊急地震速報を受信してから設定期間が経過した後に、搬送装置の搬送作動の再開が許容できる状況であれば、搬送装置の搬送作動が再開される。したがって、緊急地震速報を受信した場合に、長時間に亘って設備の運転が停止することを極力防止できる。
【0015】
本発明に係る物品搬送設備の第2特徴構成は、前記制御手段が、前記待機期間中に、前記地震検出手段により基準値以上の地震による揺れが検出された場合は、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換える必要があると判別し、前記待機期間中に前記地震検出手段により前記基準値以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、前記待機期間中において前記地震検出手段により前記基準値未満の地震による揺れが検出されていたときには、前記搬送装置の異常を検査する検査処理を行う必要があると判別して前記検査処理を行い、前記待機期間中に前記地震検出手段により前記基準値以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、前記待機期間中において前記地震検出手段により地震による揺れが検出されなかったときには、前記検査処理を行うことなく前記搬送装置の搬送作動の再開を許容すると判別するように構成されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、制御手段は、待機期間中に、地震検出手段により基準値以上の地震による揺れが検出された場合、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要があると判別して、電力供給手段を非供給状態に切り換える。また、待機期間中に地震検出手段により基準値以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、待機期間中において地震検出手段により基準値未満の地震による揺れが検出されていたときには、搬送装置の異常を検査する検査処理を行う必要があると判別して検査処理を行う。さらに、待機期間中に地震検出手段により基準値以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、待機期間中において地震検出手段により地震による揺れが検出されなかったときには、検査処理を行うことなく搬送装置の搬送作動の再開を許容すると判別し、搬送装置の搬送作動を再開する。
【0017】
このように、実際に到達した地震の揺れの大きさが基準値以上であるか否か判別し、基準値未満であれば、搬送装置に異常が発生していないかどうかを判別することで、設備が設置された場所では揺れが全く生じなかった場合には、緊急地震速報を受信してから設定時間経過後に、いち早く搬送装置の搬送作動を再開することができる。また、到達した地震の揺れの大きさが基準値未満である場合は、搬送装置の異常が検査されるので、搬送装置が正常であるか異常であるか検査することができる。
【0018】
本発明に係る物品搬送設備の第3特徴構成は、前記制御手段は、前記検査処理により前記搬送装置に異常が発見された場合には、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換える必要があると判別し、前記検査処理により前記搬送装置に異常が発見されなかった場合には、前記搬送装置の搬送作動の再開を許容すると判別するように構成されている点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、制御手段が検査処理を実行して搬送装置に異常が発見された場合には、電力供給手段を前記非供給状態に切り換えるので、異常状態の搬送装置が誤動作して、地震の揺れによる直接の事故ではない2次的な事故が発生することを防止できる。また、検査処理により搬送装置に異常が発見されなかった場合には、搬送装置の搬送作動の再開が許容され、正常な搬送装置について搬送作動が再開され、搬送作動を再開し後のトラブルを防止できる。
【0020】
本発明に係る物品搬送設備の第4特徴構成は、前記搬送装置が、第1の床部と前記第1の床部に対して変位可能な第2の床部に亘って敷設された軌道、及びこの軌道上を走行する無人搬送台車を備えて構成され、前記軌道における前記第1の床部と前記第2の床部との乗り移り箇所に、前記軌道の異常を検出する軌道異常検出手段が設けられ、前記制御手段は、前記検査処理として、前記軌道異常検出手段の検出情報に基づいて、前記軌道の異常が無いかを検査するように構成されている点にある。
【0021】
本特徴構成によれば、搬送装置として軌道上を走行する無人搬送台車が設けられた場合に、検査処理において軌道の異常が検査される。軌道は、第1の床部と第1の床部に対して変位可能な第2の床部に亘って敷設されているため、地震の揺れにより、第1の床部と第2の床部が相対移動することで、乗り移り箇所の軌道においては曲がり等の異常が発生し易くなっている。そのため、待機期間中の揺れの大きさが基準値未満の小さな揺れであったとしても、軌道に異常が発生していないことを念のため検査処理により確認するようにしている。検査処理で乗り移り箇所の軌道の異常を検査することで、乗り移り箇所の軌道に異常が発生している場合は、それを発見できるようにしている。これにより、無人搬送車を軌道に沿って走行させたときに乗り移り箇所で脱線する等の2次的なトラブルの発生を防止することができる。
【0022】
本発明に係る物品搬送設備の第5特徴構成は、前記制御手段は、前記検査処理として、前記軌道異常検出手段により前記軌道に異常が検出されない場合は、前記無人搬送台車を前記軌道に沿って走行させて、前記無人搬送台車の走行に異常が無いかを検査するテスト走行を行うように構成されている点にある。
【0023】
乗り移り箇所の軌道に異常が検出されない場合でも、例えば、無人搬送台車の駆動系統に異常があったり、軌道に沿って走行する場合の走行領域に落下物が存在したりといったような、搬送作動を正常に行えない異常が発生している可能性がある。本特徴構成によれば、テスト走行を行うことで、無人搬送台車を実際に軌道に沿って走行させて、無人搬送台車の走行に異常が無いかを検査することができる。これにより、軌道に沿って走行させることが出来るかどうかを確実に判別できる。
【0024】
本発明に係る物品搬送設備の第6特徴構成は、前記制御手段は、前記受信端末にて前記緊急地震速報を受信しなくても、前記地震検出手段の検出情報に基づいて、前記電力供給手段を前記供給状態に維持するか前記非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、前記非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0025】
本特徴構成によれば、受信端末が緊急地震速報を受信しなくても、設備が設置されている場所で地震の揺れが発生した場合には、電力供給手段を供給状態に維持するか非供給状態に切り換える必要があるか否かが判別され、必要がある場合には、電力供給手段が非供給状態に切り換えられる。したがって、例えば、地震の震源の位置が設備が設置されている場所に近いために緊急地震速報が配信される前に地震の揺れが到達する場合や、緊急地震速報のシステムや受信端末に異常が発生する等して緊急地震速報を正常に受信できない場合でも、相当な揺れの大きさの地震であれば、電力供給手段が非供給状態に切り換えられることで、地震の揺れによる被害の拡大の防止を図ることができる。
【0026】
本発明に係る物品搬送設備の第7特徴構成は、前記設定時間が、前記緊急地震速報に基づいて取得される到達予測時間に対応して変更設定される点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、緊急地震速報に含まれる震源の位置情報及び地震の規模情報に基づいて導出される予測震度、若しくは、緊急地震速報に含まれる予測震度情報を直接利用して、設定時間が変更設定される。したがって、緊急地震速報を受信してからの経過時間として適切な時間が経過するまでを待機期間とすることができ、電力供給手段を非供給状態に切り換える必要があるか否かの判別を適確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】物品搬送設備の全体平面図
【図2】物品搬送設備の制御ブロック図
【図3】地震対策処理のフローチャート
【図4】無人搬送台車チェックのフローチャート
【図5】地震発生時の物品搬送設備の運転状態遷移図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る物品搬送設備の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、物品搬送設備には、自動倉庫棟1と物品処理棟2とが別個の建築物として設けられている。自動倉庫棟1と物品処理棟2とは、物品処理棟2の3階床面の高さにおける2箇所の接続箇所において接続床部により接続されている。接続床部は、物品処理棟2側がその3階の床に固定されており、自動倉庫棟1側は、自動倉庫棟1の架台と相対移動が許容される状態で接続されている。
【0030】
自動倉庫棟1には、物品Wを収納する複数の収納部を縦横に並設した物品収納棚4が間隔を隔てて複数対設けられており、それぞれの間隔の1階床面には、クレーン用走行レール5が敷設されている。そして、これらのクレーン用走行レール5に沿って物品収納棚4の間に形成された走行経路を走行自在なスタッカークレーン6が設けられている。
【0031】
スタッカークレーン6は、クレーン用レール5上を走行する走行台車と、この走行台車に前後に間隔を隔てて一対設けられた昇降マストに沿って昇降自在な昇降台と、この昇降台に搭載されて収納部3等の物品移載対象箇所との間で物品を移載する移載装置とを備えている。
【0032】
自動倉庫棟1の3階高さ(物品処理棟2の3階床面と一致する高さ)には架台が設けられており、この架台上における物品収納棚4の物品処理棟2側の端部に隣接する箇所には、入庫コンベヤ7や出庫コンベヤ8が設置されている。入庫コンベヤ7や出庫コンベヤ8は、各スタッカークレーン6に対して1台ずつ設けられている。なお、図1では、物品収納棚4及びクレーン用走行レール5が設置されている1階の床面と入庫コンベヤ7及び出庫コンベヤ8が設置されている3階高さの架台面との区別は省略している。
【0033】
そして、スタッカークレーン6は、クレーン用走行レール5に沿う走行台車の走行作動、昇降マストに沿う昇降台の昇降作動、及び、フォーク装置を出退させる移載装置の移載作動により、入庫コンベヤ7から収納部3への入庫作業、及び、収納部3から出庫コンベヤ8への出庫作業を行う。
【0034】
入庫コンベヤ7の搬送方向上流側の端部及び出庫コンベヤ8の搬送方向下流側の端部を経由する状態で、複数の無人搬送台車10が台車用走行レール9に沿って走行自在に設けられている。台車用走行レール9は、自動倉庫棟1の架台面、接続床部の床面及び物品処理棟2の3階の床面に亘って敷設されており、全体として環状となっている。
【0035】
自動倉庫棟1の架台と物品処理棟2の3階床とを接続する接続床部は、無人搬送台車10にとっての乗り移り箇所であり、台車用走行レール9の接続床部の床面に敷設される部分には、エキスパンションレール9aが設置されている。エキスパンションレール9aは、複数のレール部分を微小な間隔を空けて直線状に配置して構成されており、水平面に沿う相対移動を一定量許容することがきる。つまり、台車用走行レール9は、本発明の第1の床部としての自動倉庫棟1の架台と第1の床部に対して変位可能な第2の床部としての物品処理棟2に亘って敷設された軌道に相当する。
【0036】
各無人搬送台車10は、台車の下部に集電ブラシを備えており、台車用走行レール9に沿って配設された図外の給電レールに集電ブラシを接触させた状態で走行移動することにより、搬送作動用の電力の供給を受けることができるようになっている。また、各無人搬送台車10は、台車用走行レール9に沿った走行経路上に設定された基準位置からの移動距離を計測するロータリエンコーダなどの距離計測手段を備えており、これにより無人搬送台車10自身が走行経路における走行位置を常時把握することで、目標ステーションまで走行するようになっている。
【0037】
そして、環状の台車用走行レール9に沿って複数の物品搬送台車10が一方向に走行することで、自動倉庫棟1における入庫コンベヤ7及び出庫コンベヤ8並びに物品処理棟2における図外の複数のステーションとの間で物品Wが搬送される。
【0038】
次に、物品搬送設備の制御構成を説明する。図2に示すように、設備全体を管理する自動倉庫制御装置Hに、無人搬送台車コントローラ11、スタッカークレーンコントローラ12、レール異常検出器13、電源遮断器14、感震計15、及び、緊急地震速報受信端末16が通信自在に接続されている。
【0039】
自動倉庫制御装置Hは、無人搬送台車10についての搬送指令を無人搬送台車コントローラ11に指令して、無人搬送台車10の搬送作動を制御する。また、スタッカークレーン6についての入庫指令及び出庫指令をスタッカークレーンコントローラ12に指令して、スタッカークレーン6の搬送作動を制御する。また、本発明の電力供給手段としての後述する電源遮断器14の作動を制御する。つまり、自動倉庫制御装置Hは、本発明の制御手段として機能している。
【0040】
無人搬送台車コントローラ11は、複数の無人搬送台車10のそれぞれと制御情報を無線通信自在に構成されている。無人搬送台車コントローラ11は、上位の自動倉庫制御装置Hからの搬送指令を受けて、複数の無人搬送台車10のうちから当該搬送要求を処理する台車10を選択する引き当て処理などを行って、台車用走行レール9に沿った複数の物品搬送台車10の走行作動やステーションや入庫コンベヤ7及び出庫コンベヤ8に対する移載作動を制御する。無線通信される制御情報としては、無人搬送台車コントローラ11から各無人搬送台車10に送信される目標ステーション情報や走行開始指令情報、各無人搬送台車10から無人搬送台車コントローラ11に送信される走行位置情報やステーション到着情報や移載完了情報などが含まれる。
【0041】
このように、台車用走行レール9、この台車用走行レール9に沿って走行作動する無人搬送台車10、及び、無人搬送台車10の走行作動、移載作動を制御する無人搬送台車コントローラ11により物品Wが搬送される。つまり、台車用走行レール9、無人搬送台車10及び無人搬送台車コントローラ11により構成される無人搬送台車システムD1が、本発明の物品搬送装置に相当している。
【0042】
スタッカークレーンコントローラ12は、複数のスタッカークレーン6の夫々について設けられている。各スタッカークレーンコントローラ12は、対応するスタッカークレーン6と制御情報を無線通信自在に構成されている。スタッカークレーンコントローラ12は、上位の自動倉庫制御装置Hからの入庫指令や出庫指令を受けて、対応するスタッカークレーン6により入出庫する収納部3を選択する処理などを行って、クレーン用走行レール5に沿った走行台車の走行作動や昇降マストに沿った昇降台の昇降作動や収納部3や入庫コンベヤ7及び出庫コンベヤ8に対する移載作動を制御する。無線通信される制御情報としては、スタッカークレーンコントローラ12からスタッカークレーン6に送信される入庫又は出庫の移載種別情報や移載対象の収納部3の位置情報、スタッカークレーン6からスタッカークレーンコントローラ12に送信される移載完了情報などが含まれる。
【0043】
このように、クレーン用走行レール5、このクレーン用走行レール5に沿って走行作動するスタッカークレーン6、及び、スタッカークレーン6の走行作動、昇降作動、移載作動を制御するスタッカークレーンコントローラ12により物品Wが搬送される。つまり、クレーン用走行レール5、スタッカークレーン6及びスタッカークレーンコントローラ12により構成されるスタッカークレーンシステムD2が、本発明の物品搬送装置に相当している。
【0044】
レール異常検出器13は、自動倉庫棟1と物品処理棟2とを接続する接続床部の付近に設置されて(図1参照)、接続床部に設置されているエキスパンションレール9aの直線状の配列が破壊されたこと検出する検出器であり、本発明の軌道異常検出手段に相当する。
【0045】
電源遮断器14は、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2に作動用の電力を供給する供給状態及び非供給状態に切換自在に構成されている。つまり、電源遮断器14は、本発明の電力供給手段として機能している。
【0046】
感震計15は、地震による揺れの大きさを検出する。つまり、感震計15は、本発明の地震検出手段として機能している。感震計15は、水平方向2方向及び鉛直方向の3方向の加速度に基づき揺れの大きさを計測震度値として演算し、得られた計測震度値データを自動倉庫制御装置Hに出力する。感震計15は、主に主揺動の大きさを検出する。
【0047】
緊急地震速報受信端末16は、発生した地震の到達を予報する緊急地震速報を受信する。つまり、緊急地震速報受信端末16は、本発明の受信端末として機能している。本実施形態では、気象庁及び認可を受けた地震動予報業務許可事業者がインターネット18により配信する緊急地震速報を受信する専用端末を用いている。
【0048】
緊急地震速報受信端末16は、受信した緊急地震速報に含まれる震源の位置情報及び地震の規模情報と、当該端末が設置される場所の地盤の種類についての情報とに基づいて、端末設置場所についての主揺動の予測震度を算出する予測震度算出機能を備えている。また、受信した緊急地震速報に含まれる震源の位置情報及び地震発生時刻情報と、端末設置場所の緯度及び経度とに基づいて、主要動の到達予測時間を算出する到達予測時間算出機能を備えている。予測震度及び到達予測時間は、自動倉庫制御装置Hに出力される。なお、緊急地震速報受信端末16には、内蔵感震計17が設けられており、主に初期微動を検出する。
【0049】
上述した制御構成における自動倉庫制御装置Hは、緊急地震速報受信端末16にて緊急地震速報を受信しなくても、感震計15の検出情報に基づいて、電源遮断器14を供給状態に維持するか非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には、電源遮断器14を非供給状態に切り換えるべく、非常停止指令を電源遮断器14に指令する。非常停止指令が指令されと、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の作動用の電力の供給が絶たれて、これらの搬送装置は非常停止する。
【0050】
一方、緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信すると、自動倉庫制御装置Hは、電源遮断器14を供給状態に維持したまま無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の搬送作動を停止させる通常停止制御を行う。
【0051】
通常停止制御では、無人搬送台車コントローラ11が、通常の物品搬送作動時と同じ形態で停止できる最寄のステーションを選択し、そのステーションに無人搬送台車10を停止させる。これにより、無人搬送台車10は、通常の物品搬送時と同じ加速度や減速度により走行できるので、無人搬送台車10が物品Wを搬送している状態であっても、急加速や急ブレーキによる荷崩れが発生するおそれはない。
【0052】
また、通常停止制御では、スタッカークレーンコントローラ12が、通常の入庫作動時や出庫作動時と同じ形態でスタッカークレーン6を停止させる。例えば、走行作動中又は昇降作動中であれば、その走行作動及び昇降作動を通常の入出庫作動時と同じ減速度で停止させた状態にし、受け渡し(卸し)又は受け取り(掬い)の移載作動中であれば、その移載作動(フォーク装置の出退作動、及び、昇降台の昇降作動)を通常通り終了させる。これにより、スタッカークレーン6は、通常の入出庫作動時と同じ加速度や減速度により作動できるので、スタッカークレーン6が物品Wを搬送している状態であっても、急加速や急ブレーキによる荷崩れが発生するおそれはない。
【0053】
また、自動倉庫制御装置Hは、緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信してから設定時間Tが経過するまでの待機期間中は、感震計15の検出情報に基づいて、電源遮断器14を非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には、電源遮断器14を非供給状態に切り換えて、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の搬送作動を非常停止させる。
【0054】
さらに、自動倉庫制御装置Hは、待機期間中における感震計15の検出情報に基づいて、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の搬送作動の再開を許容するか否かを判別し、再開を許容すると判別した場合には、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の搬送作動を再開する。この場合、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2は、位置情報などの制御情報が維持されている通常の停止状態から運転を再開できるので、迅速に運転が再開される。
【0055】
なお、本実施形態では、待機期間を定める設定時間Tは、自動倉庫制御装置Hにより、緊急地震速報に基づいて到達予測時間に対応した時間が算出され、到達予測時間に対応した時間に変更設定される。具体的には、自動倉庫制御装置Hは、緊急地震速報受信端末16から出力される震源位置情報と端末設置場所の緯度・経度とに基づいて、震源までの距離に応じた誤差時間を取得し、この誤差時間を緊急地震速報受信端末16から出力される到達予測時間情報が示す時間に加算して、設定時間Tを算出し、当該緊急地震速報について設定時間Tとして設定している。
【0056】
本実施形態では、自動倉庫制御装置Hは、待機期間中に、感震計15により基準値N(例えば、計測震度値で3.0)以上の地震による揺れが検出された場合は、電源遮断器14を非供給状態に切り換える必要があると判別する。また、待機期間中に感震計15により基準値N以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、待機期間中において感震計15により基準値N未満の地震による揺れが検出されていたときには、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の異常を検査する検査処理Pを行う必要があると判別して検査処理Pを行う。そして、待機期間中に感震計15により基準値N以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、待機期間中において感震計15により地震による揺れが検出されなかったときには、検査処理Pを行うことなく無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の搬送作動の再開を許容すると判別する。
【0057】
本実施形態では、さらに、自動倉庫制御装置Hは、検査処理Pにより無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2に異常が発見された場合には、電源遮断器14を非供給状態に切り換える必要があると判別し、検査処理Pにより無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2に異常が発見されなかった場合には、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の搬送作動の再開を許容すると判別する。
【0058】
自動倉庫制御装置Hは、検査処理Pとして、無人搬送台車システムD1についての異常を検査する無人搬送台車チェックP1、スタッカークレーンシステムD2についての異常を検査するスタッカークレーンチェックP2、その他図示は省略するが、例えば、入庫コンベヤ7及び出庫コンベヤ8についての異常を検査する入出庫コンベヤチェックを行う。
【0059】
次に、上述した自動倉庫制御装置Hの地震対策の制御動作について、自動倉庫制御装置Hが実行する図3に示す地震対策処理のフローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
まず、ステップ#1及びステップ#2で感震計15が基準値N以上の揺れを検出するか又は、緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信するか、いずれかの事象が生じるまで、自動倉庫制御装置Hは、待機状態でループしている。緊急地震速報を受信する前にいきなり感震計15が基準値N以上の揺れを検出した場合は、非常停止指令が指令されて、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2や入出庫コンベヤ等の搬送装置が非常停止される。
【0061】
緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信すると、待機状態のループから抜けて、ステップ#2からステップ#3に移行し、通常停止制御を開始する。これにより、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2や入出庫コンベヤ等の各搬送装置が、停止状態に向かうことになる。緊急地震速報が受信された後は、設定時間Tが経過するまで、感震計15が基準値N以上の揺れを検出するか継続して監視する。感震計15により基準値N以上の揺れが検出されると、ステップ#4でYesと判別され、非常停止指令が指令される。
【0062】
緊急地震速報が受信された後、感震計15により基準値N以上の揺れが検出されることなく設定時間Tが経過すると、ステップ#5でYesと判別され、ステップ#6へ移行する。ステップ#6では、待機期間中に感震計15から出力され記憶部に記憶されている受信履歴を参照して、待機期間中に感震計15の出力値が変動したかどうかが確認される。待機期間中に、感震計15により揺れが検出されていないことが確認されれば、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2や入出庫コンベヤ等の搬送装置の運転の再開を許容できると判別し、各搬送装置におけるコントローラに運転再開指令を出力する。
【0063】
待機期間中に、感震計15により地震の揺れ(当然ながら基準値N未満の揺れである)が検出されていた場合は、ステップ#6で、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2の異常を検査する検査処理Pを行う必要があると判別して、ステップ#7以下に移行して検査処理Pを実行する。
【0064】
そして、上述の通り、検査処理Pとしての無人搬送台車システムD1についての異常を検査する無人搬送台車チェックP1、スタッカークレーンシステムD2についての異常を検査するスタッカークレーンチェックP2、入庫コンベヤ及び出庫コンベヤの異常を検査する入出庫コンベヤチェックが実行され、全てのチェックが正常完了した場合は、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2や入出庫コンベヤ等の搬送装置の運転の再開を許容できると判別し、各搬送装置におけるコントローラに運転再開指令が出力する。
【0065】
検査処理Pにおいて、無人搬送台車チェックP1が異常完了した場合は、ステップ#8でNoと判別し、無人搬送台車システムD1の運転の再開を許容できないと判別し、各搬送装置におけるコントローラに非常停止指令を指令する。同様に、検査処理Pにおいて、スタッカークレーンチェックP2が異常完了した場合は、ステップ#9でNoと判別し、スタッカークレーンシステムD2の運転の再開を許容できないと判別し、各搬送装置におけるコントローラに非常停止指令を指令する。
【0066】
自動倉庫制御装置Hが実行する検査処理Pとしての無人搬送台車チェックP1について図4のフローチャートに基づき説明する。図4に示すように、ステップ#71で、自動倉庫制御装置Hは、レール異常検出器13の検出情報に基づいて、エキスパンションレール9aの異常が無いかを検査する。レール異常が検出されていれば、無人搬送台車10が正常に走行することができないと判別し、異常完了フラグをセットして無人搬送台車チェックP1を終了する。レール異常が検出されていなければ、ステップ#71で、エキスパンションレール9aの異常が無いと判別される。
【0067】
自動倉庫制御装置Hは、レール異常検出器13によりエキスパンションレール9aに異常が検出されてない場合は、無人搬送台車10を環状の台車用走行レール9に沿って周回走行させて、無人搬送台車10の走行に異常が無いかを検査するテスト走行を行う。すなわち、エキスパンションレール9aの異常が無いと判別すると、ステップ#72に移行し、無人搬送台車10が台車用走行レール9に沿って正常に走行できるかどうか検査する。これにより、無人搬送台車10に対する制御指令系統や駆動系統に異常がないか、台車用走行レール9のエキスパンションレール9a以外の部分に異常がないか等、実際に無人搬送台車10を走行させてみなければ分からないような異常がないか検査できる。
【0068】
また、自動倉庫制御装置Hは、テスト走行において、物品Wを搬送するための通常速度よりも低速のテスト用速度にて無人搬送台車10を走行させる。これにより、無人搬送台車10の台車用走行レール9に沿う走行経路上に落下物などの障害物が存在していても、接触等による無人搬送台車10の破損を極力防止できる。そして、低速で走行させた場合に無人搬送台車10が障害物に接触等した場合は、無人搬送台車10がその外周部に備えるバンパースイッチがオンすることで、障害物の存在を検出できる。このようにして、無人搬送台車10の走行に異常が無いかを検査することができる。
【0069】
テスト走行が正常に完了した場合は、ステップ#73で無人搬送台車10の走行に異常は無いとしてNoと判別され、ステップ#74で正常完了フラグをセットして無人搬送台車チェックP1を終了する。
【0070】
地震が発生した場合の地震の状況と物品搬送設備の運転状態の遷移を図5に模式的に示す。図5に示すように、地震が発生して気象庁の地震計測システムがP波を検出すると、震源や規模などが解析され、緊急地震速報が配信される。図5(a)は、緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信してから設定時間Tが経過するまでに基準値N以上の揺れが検出されなかった場合の物品搬送設備の運転状態の遷移を示しており、図5(b)は、緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信してから設定時間Tが経過するまでに基準値N以上の強い揺れが物品搬送設備の設置箇所において感震計15により検出された場合の物品搬送設備の運転状態の遷移を示している。
【0071】
図5(a)及び(b)のいずれの場合も、緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信した時点で、自動倉庫制御装置Hは通常停止制御を開始して、各搬送装置におけるコントローラに停止を指示するが、電源遮断器14は供給状態に維持されている。実際に基準値N以上の強い揺れが検出されると、電源遮断器14が非供給状態に切り換えられ、図5(b)に示すように物品搬送設備の運転状態は非常停止状態になる。
【0072】
緊急地震速報受信端末16が緊急地震速報を受信した後、設定時間Tが経過しても基準値N以上の強い揺れが検出されなかった場合は、図5(a)に示すように、待機期間中は電源遮断器14が供給状態に維持されている。待機期間中に基準値N未満の弱い揺れが検出されており、かつ、各搬送装置についての検査処理Pの何れかが異常完了した場合は、図5(a)で一点鎖線にて示すように、電源遮断器14が非供給状態に切り換えられ、物品搬送設備の運転状態は非常停止状態になる。待機期間中に揺れが検出されていなければ、自動倉庫制御装置Hが、各搬送装置におけるコントローラに運転再開指令を出力することで、物品搬送設備の運転状態は運転状態に復帰する。
【0073】
〔別の実施形態〕以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0074】
(1)上記実施形態では複数の搬送装置についての検査処理を順次行うものを例示したが、これらの検査処理を同時期に並行して行ってもよい。これにより搬送作動の再開を許容できるかの判別をより迅速に行うことができる。
【0075】
(2)上記実施形態では、搬送装置として、無人搬送台車システムD1及びスタッカークレーンシステムD2や入出庫コンベヤを具体的に例示したが、搬送装置としては天井搬送車や垂直リフタ等であってもよい。
【0076】
(3)上記実施形態では、検査処理として無人搬送台車システムD1について無人搬送台車チェックP2の内容を具体的に例示したが、検査処理としては例示したもの以外に、例えば、スタッカークレーンシステムD2についてのスタッカークレーンチェックP2において、予め記録しておいた正常時の走行経路の基準画像と検査処理時に記録した走行経路の検査対象画像とを比較することで走行経路の検査を行ってもよい。
【符号の説明】
【0077】
W 物品
D1、D2 搬送装置
H 制御手段
P 検査処理
N 基準値
T 設定時間
9 軌道
10 無人搬送台車
13 軌道異常検出手段
14 電力供給手段
15 地震検出手段
16 受信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に作動用の電力を供給する供給状態及び非供給状態に切換自在な電力供給手段と、
発生した地震の到達を予報する緊急地震速報を受信する受信端末と、
前記搬送装置の搬送作動及び前記電力供給手段の切換作動を制御する制御手段とが設けられている物品搬送設備であって、
地震による揺れの大きさを検出する地震検出手段が設けられ、
前記制御手段は、
前記受信端末が前記緊急地震速報を受信すると、前記電力供給手段を前記供給状態に維持したまま前記搬送装置の搬送作動を停止させる通常停止制御を行うように構成され、
前記受信端末が前記緊急地震速報を受信してから設定時間が経過するまでの待機期間中は、前記地震検出手段の検出情報に基づいて、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、前記非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換えるように構成され、かつ、前記待機期間中における前記地震検出手段の検出情報に基づいて、前記搬送装置の搬送作動の再開を許容するか否かを判別し、再開を許容すると判別した場合には、前記搬送装置の搬送作動を再開するように構成されている物品搬送設備。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記待機期間中に、前記地震検出手段により基準値以上の地震による揺れが検出された場合は、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換える必要があると判別し、
前記待機期間中に前記地震検出手段により前記基準値以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、前記待機期間中において前記地震検出手段により前記基準値未満の地震による揺れが検出されていたときには、前記搬送装置の異常を検査する検査処理を行う必要があると判別して前記検査処理を行い、
前記待機期間中に前記地震検出手段により前記基準値以上の地震による揺れが検出されなかった場合において、前記待機期間中において前記地震検出手段により地震による揺れが検出されなかったときには、前記検査処理を行うことなく前記搬送装置の搬送作動の再開を許容すると判別するように構成されている請求項1記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検査処理により前記搬送装置に異常が発見された場合には、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換える必要があると判別し、前記検査処理により前記搬送装置に異常が発見されなかった場合には、前記搬送装置の搬送作動の再開を許容すると判別するように構成されている請求項2記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記搬送装置が、第1の床部と前記第1の床部に対して変位可能な第2の床部に亘って敷設された軌道、及びこの軌道上を走行する無人搬送台車を備えて構成され、
前記軌道における前記第1の床部と前記第2の床部との乗り移り箇所に、前記軌道の異常を検出する軌道異常検出手段が設けられ、
前記制御手段は、前記検査処理として、前記軌道異常検出手段の検出情報に基づいて、前記軌道の異常が無いかを検査するように構成されている請求項3記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検査処理として、前記軌道異常検出手段により前記軌道に異常が検出されない場合は、前記無人搬送台車を前記軌道に沿って走行させて、前記無人搬送台車の走行に異常が無いかを検査するテスト走行を行うように構成されている請求項4記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記制御手段は、前記受信端末にて前記緊急地震速報を受信しなくても、前記地震検出手段の検出情報に基づいて、前記電力供給手段を前記供給状態に維持するか前記非供給状態に切り換える必要があるか否かを判別し、前記非供給状態に切り換える必要があると判別した場合には、前記電力供給手段を前記非供給状態に切り換えるように構成されている請求項1〜5の何れか1項記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記設定時間が、前記緊急地震速報に基づいて取得される到達予測時間に対応して変更設定される請求項1〜6の何れか1項記載の物品搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−12133(P2012−12133A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148005(P2010−148005)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】