説明

物品検査装置

【課題】最適な搬送速度または検査能力の限界に対する稼動中の検査能力の余裕の度合いを搬入間隔から求めることができる物品検査装置を提供する。
【解決手段】搬送部3と、搬入センサ4と、搬入センサ4によって搬送部3に被検査物Wが搬入されたことが検出されてから基準時間経過後に搬送部3に搬入された被検査物Wの品質データを取得する品質データ取得手段と、品質データ取得手段により取得した品質データに基づいて被検査物Wの品質の良否を判定する品質判定手段24と、を備えた物品検査装置において、搬入センサ4によって検出された被検査物Wの搬入間隔を測定し記憶する搬入間隔測定記憶部8と、搬入間隔測定記憶部8によって測定し記憶された搬入間隔の内の所定範囲内の搬入間隔に関する統計量を算出する統計手段9aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物を搬送している間に取得した品質データに基づいて被検査物の品質の良否を判定する物品検査装置に関し、特に、被検査物の搬入間隔を的確に調整できる物品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査物の品質の良否を判定する物品検査装置として、被検査物の重量を選別する重量選別機が知られている。このような従来の重量選別機は、生産ライン内に設置され、上流の搬送コンベアから所定の間隔で搬送されてくる被検査物の重量を、搬送している間に測定し、得られた測定値が基準範囲内にあるか否かを判定し、基準範囲内の良品とそれ以外の不良品とを選別している。この重量選別機は、搬入センサと、荷重センサと、質量検出部と、良否判定部とで構成されており、搬入センサにより上流から搬送されてくる被検査物の通過が感知されると、その感知から質量の検出が開始されるまでの時間、すなわち計測タイミングを表す基準時間の経過後に荷重センサが動作し、被検査物の質量が測定され、質量検出部に測定信号が出力されるようになっている。質量検出部により、この測定信号に基づいて被検査物の質量が検出され、質量信号が良否判定部に出力され、この質量信号に基づいて良否判定部により被検査物の良否が判定されるようになっている。
【0003】
しかしながら、予め設定された基準時間が、実際に搬送された被検査物に対応する最適な基準時間からずれていると、測定値にばらつきが生じ誤判定を招くおそれがあるので、最適な基準時間の設定が要求される。この種の従来の物品検査装置として、計量信号を読み取る読み取り手段と、この読み取り手段が読み取った複数の計量信号を重量データとして記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されている重量データのばらつき度を各組ごとに算出するばらつき度算出手段と、このばらつき度算出手段が算出した複数のばらつき度のうち比較的小さいばらつき度を選択しその選択したばらつき度の組と対応する計測時点を本稼働時の基準時間として決定する基準時間決定手段とを具備し自動的に基準時間を設定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3226974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、重量データのばらつき度を算出し、そのばらつき度に基づいて基準時間が設定されているので、被検査物が重量選別機に搬入される搬入間隔がばらついていた場合には、設定された基準時間で重量が測定されるため、本来の最適な測定位置からずれた位置で重量が測定されてしまい、測定値にばらつきが生じていた。重量データは、このような測定値に基づいて算出されるので、搬入間隔のばらつきで重量データのばらつきが増大してしまい、このようなばらつきのある重量データに基づく不適切な基準時間が自動的に設定されてしまう。そのため最適な基準時間を得るにはなお不充分であるという問題があった。
【0006】
特に、被検査物の搬入間隔が小さくなってしまった場合には、被検査物と次に測定すべき被検査物の一部または全部が同時に荷重センサに載置されてしまい、適正な被検査物の測定値が得られないといういわゆる2個乗りが発生し、重量データのばらつきがより大きくなるという問題があった。図12は従来の重量選別機の搬送部を示す斜視図であり、搬送部で2個乗りが発生した状態を示している。図12に示すように、矢印A方向から搬送部52に搬送された被検査物W1と被検査物W2の一部が搬送部52の荷重センサ53に同時に乗ってしまった場合には、荷重センサ53により被検査物W1と被検査物W2の一部が同時に測定されてしまい適正な重量データが得られない。このような場合には、重量データのばらつきが増大し最適な基準時間が得られず、検査精度が低下してしまうとともに、被検査物W1および被検査物W2を搬送部52から除去し、基準時間を再設定しなければならず、検査効率が低下するという問題もあった。この基準時間を最適な値に設定するには、被検査物の搬入間隔のばらつきや搬入間隔に応じた搬送部の搬送速度を適格に把握し、この搬入間隔や搬送速度の最適値に対応する基準時間を得る必要がある。また、検査効率の向上を図るためには、現在設定されている搬送速度および基準時間で制限される検査の限界能力に対し、稼動中の検査能力は余裕があるか否かを把握する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、前述のような従来の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、最適な搬送速度または検査能力の限界に対する稼動中の検査能力の余裕の度合いを搬入間隔から求めることができる物品検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る物品検査装置においては、上記目的を達成するため、(1)順次搬入される被検査物を搬送する搬送手段と、前記搬送手段に前記被検査物が搬入されたことを検出する搬入検出手段と、前記搬入検出手段によって前記搬送手段に前記被検査物が搬入されたことが検出されてから基準時間経過後に前記搬送手段に搬入された前記被検査物の品質データを取得する品質データ取得手段と、前記品質データ取得手段により取得した前記品質データに基づいて前記被検査物の品質の良否を判定する品質判定手段と、を備えた物品検査装置において、前記搬入検出手段によって検出された前記被検査物の搬入間隔を測定し記憶する搬入間隔測定記憶手段と、前記搬入間隔測定記憶手段によって測定し記憶された前記搬入間隔の内の所定範囲内の搬入間隔に関する統計量を算出する統計手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、搬送手段に被検査物が搬入されたことが搬入検出手段により検出されると、この検出時から基準時間経過後に品質データ取得手段により被検査物の品質データが取得される。品質データが取得されると品質判定手段により被検査物の品質の良否が判定される。また、搬入検出手段によって検出された搬入間隔が搬入間隔測定記憶手段により測定され記憶される。測定された搬入間隔が記憶されると統計手段により記憶された搬入間隔の内の所定範囲内の搬入間隔が読み出され、この読み出された搬入間隔に関する統計量が算出される。この統計量が算出されると、重量選別などの物品検査が行われている被検査物の搬入間隔がこの統計量に基づいて的確に把握されるので、搬送速度や基準時間を搬入間隔の分布に適した速度および基準時間になるよう再設定することができ、2個乗りの発生が低減されるとともに被検査物の検査精度が高まり検査効率が向上する。
【0010】
また、(1)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(2)前記統計手段により算出された前記搬入間隔のばらつきを表す統計量および前記基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段と、前記最適搬入間隔算出手段により算出された最適搬入間隔に基づいて最適搬送速度を算出する最適搬送速度算出手段とを備えてもよい。
【0011】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、ばらつきを表す統計量および基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段と、この最適搬入間隔算出手段により算出された最適搬入間隔に基づいて最適搬送速度を算出する最適搬送速度算出手段とを備えていると、被検査物の搬入間隔に対応する最適な搬送速度が算出されるので、算出された最適な搬送速度に基づいてより適切な搬送速度を把握することができる。
【0012】
また、(1)または(2)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(3)単位時間当りの前記被検査物の検査個数を表す検査能力を算出する検査能力算出手段を備え、前記検査能力算出手段が、前記基準時間に基づいて検査能力の限界を表す基準検査能力を算出し、前記統計量から推定される最適な検査能力を表す推定最適検査能力を算出し、前記基準検査能力に対する前記推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度を算出するようにしてもよい。
【0013】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、検査能力算出手段により基準時間に基づいて検査能力の限界を表す基準検査能力を算出し、前記統計量から推定される最適な検査能力を表す推定最適検査能力を算出し、前記基準検査能力に対する前記推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度が算出されるので、基準検査能力に対して、稼動中の検査能力がどれくらいの余裕が有るかを的確に把握することができる。例えば、検査能力余裕度に基づいて、適切な検査能力を把握することができる。
【0014】
また、(1)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(4)前記統計手段により算出された前記搬入間隔に関する前記統計量に基づいて、前記搬入間隔に関するヒストグラムを表示するヒストグラム表示手段を備えるようにしてもよい。
【0015】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、ヒストグラム表示手段により搬入間隔に関する前記統計量に基づいて、搬入間隔に関するヒストグラムが表示されると、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムを参照することができ、搬入間隔に応じた搬送速度を適切に変更することができる。
【0016】
また、(4)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(5)前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記被検査物の前記搬入間隔をデータ区間とし、前記被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと、前記基準時間を表す基準時間マークとを含むようにしてもよい。
【0017】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、表示画面にデータ区間を表す搬入間隔と、被検査物の頻度を表す検査個数とでヒストグラムが表示されると同時に基準時間マークも表示される。その結果、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムおよび基準時間マークを同時に把握することができるので、このヒストグラムおよび基準時間マークを参照して、搬送速度を適切に変更することができる。
【0018】
また、(4)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(6)前記搬入間隔を換算して前記搬入間隔毎の搬送速度を算出する搬送速度算出手段と、前記統計手段により算出された前記搬入間隔のばらつきを表す統計量および前記基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段と、前記最適搬入間隔算出手段により算出された最適搬入間隔に基づいて最適搬送速度を算出する最適搬送速度算出手段と、を備え、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記搬入速度算出手段により算出された搬送速度をデータ区間とし、前記被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと、前記最適搬送速度算出手段により算出された前記最適搬送速度を表す最適搬送速度マークとを含むようにしてもよい。
【0019】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、ヒストグラム表示手段の表示が、搬入速度算出手段により搬入間隔から換算して算出された搬送速度をデータ区間とし、被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムがヒストグラム表示手段により表示画面に表示されるとともに、最適搬送速度算出手段により算出された最適搬送速度を表す最適搬送速度マークがヒストグラムと同時に表示画面に表示される。その結果、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムおよび最適搬送速度マークを同時に参照することができ、搬送速度を直接的に適切に変更することができる。
【0020】
また、(4)または(5)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(7)前記統計手段により算出された前記搬入間隔のばらつきを表す統計量および前記基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段を備え、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記最適搬入間隔算出手段により算出された前記最適搬入間隔を表す最適搬入間隔マークを含むようにしてもよい。
【0021】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、最適搬入間隔算出手段により算出された最適搬入間隔を表す最適搬入間隔マークが、ヒストグラム表示手段によりヒストグラムと同時に表示画面に表示される。その結果、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムおよび最適搬入間隔マークを同時に参照することができ、搬送速度を変更することにより搬入間隔を適切に変更することができる。
【0022】
また、(4)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(8)前記搬入間隔に関する統計量から単位時間当りの前記被検査物の検査個数を表す検査能力を算出するとともに、前記基準時間に基づいて検査能力の限界を表す基準検査能力を算出する検査能力算出手段を備え、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記検査能力算出手段により算出された前記検査能力をデータ区間とし、前記被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと、前記検査能力算出手段により算出された前記基準検査能力を表す基準検査能力マークとを含むようにしてもよい。
【0023】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、ヒストグラム表示手段の表示が、検査能力算出手段により算出された検査能力をデータ区間とし、被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと検査能力算出手段により基準時間から算出された検査能力の限界を意味する基準検査能力を表す基準検査能力マークとが同時に表示画面に表示される。その結果、物品検査装置のオペレータは、表示された基準検査能力マークと検査能力の分布から物品検査装置の検査能力の傾向や物品検査が正しく稼動されていたかどうかを一見して認識することができ、物品検査装置より前段の生産ラインに対する適正な処置を促すことが可能となる。
【0024】
また、(8)に記載の本発明に係る物品検査装置においては、(9)前記検査能力算出手段が、前記統計量から推定される最適な検査能力を表す推定最適検査能力を算出するとともに、前記基準検査能力に対する前記推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度を算出し、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記検査能力算出手段により算出された前記検査能力余裕度を表す検査能力余裕度マークを含むようにしてもよい。
【0025】
以上の構成により、本発明に係る物品検査装置においては、基準検査能力マークが表示されたヒストグラムに、さらに基準検査能力に対する推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度マークが表示されるので、稼動されていた物品検査装置の能力に余裕があるかどうかをオペレータに視覚的に示すことができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る物品検査装置によれば、搬入間隔に関する統計量が算出され、重量選別が行われている被検査物の搬入間隔がこの統計量に基づいて的確に把握されるので、搬送速度や基準時間を搬入間隔の分布に適した速度および基準時間にするよう再設定することができ、2個乗りの発生が低減されるとともに被検査物の検査精度が高まり検査効率が向上する。また、この統計量に基づいて、搬入間隔や搬送速度の最適値に対応する基準時間から算出して得られた推定される最適な検査能力が、基準時間から算出して得られた検査能力の限界を表す基準検査能力に対して有する余裕の度合いを表す検査能力余裕度が求められる。その結果、推定される最適な検査能力が基準検査能力に対してどれくらいの余裕があるかが把握され、この検査能力余裕度の範囲内で検査能力を調整することができるので検査精度が維持されるとともに、検査効率を向上させることができる。
【0027】
請求項2に係る物品検査装置によれば、ばらつきを表す統計量と基準時間とから被検査物の搬入間隔に対応する最適な搬送速度が算出されるので、算出された最適な搬送速度に基づいてより適切な搬送速度を把握することができる。
【0028】
請求項3に係る物品検査装置によれば、推定最適検査能力および検査能力余裕度が算出されるので、物品検査装置の稼動中の検査能力が基準検査能力に対してどれくらいの余裕が有るかを的確に把握することができる。例えば、検査能力余裕度および推定最適検査能力を参照して、被検査物に対応した適切な検査能力が検査能力余裕度の範囲内にあることを把握することができる。
【0029】
請求項4に係る物品検査装置によれば、搬入間隔に関するヒストグラムが表示されるので、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムを参照することができ、搬入間隔の分布に応じて搬送速度を適切に変更することができる。
【0030】
請求項5に係る物品検査装置によれば、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムおよび基準時間マークを同時に把握することができるので、このヒストグラムおよび基準時間マークを参照して、搬送速度を適切に変更することができる。
【0031】
請求項6に係る物品検査装置によれば、最適搬送速度マークがヒストグラムと同時に表示画面に表示されるので、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムおよび最適搬送速度マークを同時に参照することができ、搬送速度を最適搬送速度に近づけるよう直接的に適切に変更することができる。
【0032】
請求項7に係る物品検査装置によれば、ヒストグラム表示手段により最適搬入間隔マークがヒストグラムと同時に表示画面に表示されるので、物品検査装置のオペレータは表示されたヒストグラムおよび最適搬入間隔マークを同時に参照することができ、搬送速度を変更することにより搬入間隔を最適搬入間隔に近づけるよう適切に変更することができる。
【0033】
請求項8に係る物品検査装置によれば、ヒストグラムと基準検査能力マークとが同時に表示画面に表示されるので、物品検査装置のオペレータは、表示された基準検査能力マークと検査能力の分布状況から物品検査装置の検査能力の傾向や物品検査が正しく稼動されていたかどうかが一見して認識することができ、物品検査装置より前段の生産ラインに対する適正な処置を促すことが可能となる。
【0034】
請求項9に係る物品検査装置によれば、基準検査能力マークが表示されたヒストグラムに、さらに基準検査能力に対する推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度マークが表示されるので、稼動されていた物品検査装置の検査能力に余裕があるかどうかをオペレータに視覚的に示すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る物品検査装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1〜図11は、本発明に係る物品検査装置を重量選別機に適用した実施の形態の一例を示している。
【0036】
図1および図2に示すように、重量選別機1は、装置本体部2と、搬送手段としての搬送部3と、搬入検出手段としての搬入センサ4と、選別部5とにより構成されている。
この重量選別機1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬送されてくる被検査物Wの質量を測定し、得られた測定値を設定された質量の上限および下限の基準値とそれぞれ比較し、得られた測定値が基準値の範囲内にあるか否かを判定し、範囲内のものを良品とし範囲外のものを不良品として選別するようになっている。
【0037】
装置本体部2は、搬送制御部6と、品質データ取得手段としての重量選別部7と、搬入間隔測定記憶手段としての搬入間隔測定記憶部8と、算出処理部9と、ヒストグラム表示手段としての表示部10と、操作部11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0038】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されており、この助走コンベア31は、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。また、この秤量コンベア32は、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bとにより構成されている。
【0039】
この搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬送されてくる包装された生肉、魚、加工食品、医薬などの各種の被検査物Wを搬送するようになっている。この被検査物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に品質データが重量選別部7により取得され、さらに選別部5に搬送されるようになっている。
【0040】
搬入センサ4は、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されており、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されている。具体的には、この投光部4aは、搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置され、この受光部4bは、搬送ベルト32bの他の側面側で投光部4aに対向するように配置されており、被検査物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過すると被検査物Wにより受光部4bが遮光されるので被検査物Wの搬入が開始されたことが検出されるようになっている。検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の重量選別部7、搬入間隔測定記憶部8および算出処理部9などに出力されるようになっている。
【0041】
選別部5は、選別機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されており、この選別機構部5aは、エアジェット機構などの選別機構により構成されている。この選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、例えば、フリッパ機構やドロップアウト機構などの選別機構で構成してもよい。このエアジェット機構においては、上流の秤量コンベア32から搬送される被検査物Wが搬送ベルト5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被検査物Wに対してジェットエアが吹き付けられるようになっており、不良の被検査物Wを搬送ベルト5b上から移動させ、良品の被検査物Wと区別することにより選別を行っている。また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト5dとにより構成されており、測定を終了した被検査物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0042】
搬送制御部6は、駆動モータ12と、制御手段13とにより構成されており、この駆動モータ12は、制御手段13によりその回転速度(rpm)が制御されるようになっている。また、この制御手段13は、算出処理部9から出力された速度情報や操作部11から入力された制御情報などの各情報に基づいて駆動モータ12の回転速度を制御するようになっている。
【0043】
重量選別部7は、品質データ取得手段としての荷重センサ21と、質量検出手段22と、記憶手段23と、品質判定手段24とにより構成されており、搬送部3により搬送される被検査物Wの質量を測定し、測定した質量が所定値の範囲内にあるか否かを判定するようになっている。
【0044】
この荷重センサ21は、電磁平衡機構などのはかり機構で構成されており、被検査物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、その被検査物Wの質量を測定するようになっている。この荷重センサ21は、質量を測定できるはかり機構であればよく、例えば、差動トランス機構や歪ゲージ機構などのはかり機構で構成してもよい。
【0045】
この電磁平衡機構は、天秤を有しており、この天秤の一方側に被検査物Wを載せ、天秤の他方側に分銅を載せる代わりに、電磁力を加えて、この天秤を釣り合わせるよう構成されている。この電磁平衡機構は、天秤を釣り合わせる際に必要な電磁力が被検査物Wの質量に応じて変化することを利用したもので、天秤が釣り合ったときの電流を検知し、この電流に応じた信号を出力するようになっている。この電磁力は、搬入センサ4によって被検査物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過したときに加えられるようになっている。この基準時間Tkは、搬入センサ4で被検査物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被検査物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに荷重センサ21から出力された信号が安定するまでに必要な時間を意味し、所定の被検査物Wの品種や重量の大きさに対応して予め設定されている。具体的には、この基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被検査物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被検査物Wの品種や生産計画その他の検査条件などに基づいて設定される。
【0046】
この荷重センサ21においては、被検査物Wの品種に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件が選択されるようになっており、薬品や健康食品などの品種の場合には、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/min、検査精度が約±0.1gで選択され、検出された質量信号は品質判定手段24に出力されるようになっている。測定能力が最大150個/minの場合には、被検査物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになる。この場合の基準時間Tkは400msec以上であればよいが、品種、生産計画その他の検査条件により設定されるようになっている。この基準時間Tkは、400msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、検査精度は高まることになる。
【0047】
他方、薬品や健康食品以外の品種で小物の場合には、例えば、測定範囲が1g〜300g、測定能力が最大600個/min、検査精度が約±0.03gで選択され、検出された質量信号は品質判定手段24に出力されるようになっている。測定能力が最大600個/minであると、被検査物Wの1個当たりの測定時間は最小100msecに設定されていることになる。この場合の基準時間Tkは100msec以上であれば2個乗りの発生は防止できるが、品種、生産計画やその他の検査条件により設定されるようになっている。この基準時間Tkは、100msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、検査精度は高まる。
【0048】
質量検出手段22は、所定の検出回路で構成されており、この検出回路においては、荷重センサ21から出力された被検査物Wの質量信号が入力されると、この質量信号に基づいて、被検査物Wの質量が検出され、この質量はさらに検出された質量の信号として品質判定手段24に出力されるようになっている。また、この質量検出手段22においては、搬入センサ4によって被検査物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過し、荷重センサ21により質量が測定された被検査物Wに対して、被検査物W毎に質量検出を実行するようになっている。この質量検出手段22により検出された個々の質量は、記憶手段23に検出データとして記憶されるよう構成してもよい。
【0049】
記憶手段23は、記憶媒体などから構成されており、被検査物Wの品種に対応して予め設定した各種のデータを記憶するようになっている。この記憶手段23には、例えば、助走コンベア31または秤量コンベア32の各ベルト速度(m/min)および搬送方向の長さ(mm)、被検査物Wの品種毎の大きさ(mm)と形状、被検査物Wの質量に対する許容範囲の上限値Gaと下限値Gb、秤量コンベア32の搬出端から選別部5までの距離、被検査物Wの品種毎に設定された搬入間隔t(msec)、設定された基準時間Tk、荷重センサ21によって取得された個々の被検査物Wの搬入間隔t(msec)および検査条件などの品質データなどが記憶されるようになっている。
【0050】
品質判定手段24は、品質判定回路などから構成されており、被検査物Wの良否を判定するようになっている。この品質判定手段24においては、質量検出手段22から出力された被検査物Wの質量信号を受けると、記憶手段23に予め記憶されている質量の上限値Gaおよび下限値Gbが読み出され、検出した被検査物Wの質量と上限値Gaおよび下限値Gbとがそれぞれ比較され、上限値Gaおよび下限値Gbで決定される質量の許容範囲内に被検査物Wの質量が入っているか否かが判定されるようになっている。
【0051】
この品質判定手段24において判定された判定結果は、選別部5に出力され、被検査物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。また、この判定結果は、表示部10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっており、さらに記憶手段23に出力され各被検査物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。また、搬送制御部6にも出力され、通常時の搬送部3の駆動や、不良品が続出した場合のような異常時の搬送停止などの制御情報として使用されるようになっている。
【0052】
搬入間隔測定記憶部8は、搬入間隔tを測定(以下算出処理ということがある。)する集積回路(Integrated Circuit)、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路および搬入間隔tを記憶するRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体で構成される。
【0053】
この電子回路においては、搬入センサ4から受領した検出信号に基づいて被検査物Wの搬入間隔tが算出され、記憶媒体に出力されるようになっている。例えば、搬入センサ4から最初の被検査物W(i)の搬入が開始されたことの検出信号を受領した時間をt(i)とし、次の被検査物W(i+1)の搬入が開始されたことの検出信号を受領した時間をt(i+1)とし、被検査物W(i)と次の被検査物W(i+1)との搬入間隔をt(1)とすると、搬入間隔をt(1)は、次式(1)で表される。
t(1)=t(i+1)−t(i) (1)
【0054】
最初の被検査物W(i)の搬入開始から次の被検査物W(i+1)の搬入開始までの最初の搬入間隔tは、前述の式(1)から算出処理され、t(1)として記憶媒体に出力されるようになっている。次の被検査物W(i+1)のさらに次の被検査物W(i+2)の搬入間隔t(2)も搬入間隔t(1)の算出処理と同様に算出処理され、搬入間隔t(2)として記憶媒体に出力され、n個の被検査物Wの品質検査が終了するまで、順次、n回の算出処理が繰り返し実行され、算出された搬入間隔t(1)〜t(n)が記憶媒体に出力されるようになっている。この記憶媒体が電子回路から出力された個々の搬入間隔t(1)〜t(n)を順次受領すると、個々の搬入間隔t(1)〜t(n)が順次記憶されるようになっている。
なお、本実施の形態に係る物品検査装置においては、搬入間隔tの単位を時間とした場合について説明したが、本発明に係る物品検査装置においては、搬入間隔t(sec)は、場合によっては、搬送部3の搬送速度V(mm/sec)を搬入間隔t(sec)で除算することにより、長さの単位(mm)で表してもよい。
【0055】
算出処理部9は、集積回路(Integrated Circuit)、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路からなり、統計手段9a、最適搬入間隔算出手段9e、最適搬送速度算出手段9fにより構成されている。この算出処理部9においては、搬送制御部6、搬入間隔測定記憶部8および記憶手段23などから受領する情報、例えば、搬入間隔t、搬入間隔区間毎の累積検査個数、各被検査物Wの質量その他検査条件などに基づいて、搬入間隔tのばらつきを表す統計量としての搬入間隔tの標準偏差、搬送速度V、最適搬入間隔、最適搬送速度、基準検査能力、推定最適検査能力、検査能力余裕度および2個乗りが生じないための2個乗り限界値などの搬入間隔tに関する統計量を算出処理するようになっている。この2個乗り限界値とは、被検査物Wと次に測定すべき被検査物Wの一部または全部が同時に荷重センサ21に載置されてしまい、被検査物Wの測定ができないといういわゆる2個乗りが発生しない間隔の限界値(msec)をいう。この2個乗り限界値は、前述の最適搬入間隔および最適搬送速度と同様に被検査物Wの品種の特性や被検査物Wの搬入開始の検出位置より上流に位置するベルトコンベアの搬送態様や生産計画その他の検査条件などに基づいて算出処理される。
【0056】
統計手段9aは、集積回路などの電子回路などからなり、標準偏差算出手段9b、搬送速度算出手段9cおよび検査能力算出手段9dで構成されており、所定範囲内の搬入間隔tに関する統計量を算出するようになっている。このように算出した統計量は、記憶手段23に記憶するようになっている。
なお、本実施の形態においては、統計手段9aが標準偏差算出手段9b、搬送速度算出手段9cおよび検査能力算出手段9dで構成されているものとして説明したが、本発明に係る物品検査装置においては、標準偏差算出手段9b、搬送速度算出手段9cおよび検査能力算出手段9dは、算出処理部9を構成するようにしてもよい。
【0057】
ここで、所定範囲とは、被検査物Wの統計量に用いる搬入間隔tの範囲を決定するもので、極端に大きな搬入間隔tおよび極端に小さな搬入間隔tを除外するよう設定される。この所定範囲は、被検査物の大きさや形状などの品種の特性に応じて時間で設定してもよい。この所定範囲を決定するための搬入間隔をstとすると、例えば、st≦20secとしてもよく、st≦10secとしてもよく、さらにst≦6secとしてもよい。また、この所定範囲は、基準時間Tkに対し所定の係数を乗算することにより決定してもよい。例えば、係数をaとすると、2≦a≦5、好ましくは、3≦a≦4を満足する係数aを選択し、前述の搬入間隔stと基準時間Tkと係数aとが、st<a×Tkを満足するものを所定範囲としてもよい。
【0058】
なお、本実施の形態における統計手段9aにおいては、この所定範囲内の搬入間隔tに関する統計量を算出するようにしたが、本発明の物品検査装置においては、搬入間隔測定記憶部8において、搬入間隔tを測定して記憶する際に、この所定範囲と同様の範囲内にある搬入間隔tのみを記憶手段23に記憶させ、この所定範囲を超えた搬入間隔を記憶対象のデータから除外し、記憶手段23の負担を軽減するよう構成してもよい。
【0059】
この統計手段9aにおいては、搬入間隔t(1)からt(n)までの累積検査個数が所定の検査個数、例えば、最初のt(1)から起算して50個〜1,000個内の所定の検査個数に到達したか否かがカウントされ、到達したとき、予め設定した所定の搬入間隔区間毎に被検査物Wの累積検査個数が集計されるようになっている。ここでいう搬入間隔区間は、前述の搬入間隔t(1)からt(n)までの累積検査個数、例えば、累積検査個数が101個で集計する場合、100個の前述の所定時間内の搬入間隔tのうち最小の搬入間隔tminと最大の搬入間隔tmaxを等間隔で分割し、分割された個々の区間を意味する。この統計手段9aにおいては、分割された個々の区間毎に被検査物Wの検査個数が集計され、記憶されるようになっている。このように、統計手段9aにおいて集計され記憶された、累積検査個数のデータは、外部に出力され、目的に応じて利用されるようになっている。例えば、算出処理部9では、最適搬入間隔や最適搬送速度を求めるためのデータとして用いられ、また、表示部10に出力され、表示部10によりヒストグラムとして表示される。ヒストグラム表示の場合には、分割された個々の区間が小さい区間である程、ヒストグラムの表示がきめ細かく滑らかになり、この区間が大きい程階段状に表示されるようになる。他方、分割された個々の区間が小さい区間である程、集計の算出処理や記憶により多くの時間を要し、分割された個々の区間が大きい区間である程、集計の算出処理や記憶がより短時間で実行することができる。そのため、分割の区間は、被検査物Wの品種や生産計画に基づいて効率よく算出処理および表示が実行されるよう適宜設定される。
【0060】
以下、被検査物Wの搬入間隔区間毎に集計する場合について説明する。
例えば、1分間に600個の被検査物Wを検査し得る能力のある重量選別機においては、1秒間に10個が最大検査可能検査個数であることから、1個当たりの最速検査時間は最小100msecとなり、基準時間Tkおよび搬入間隔tは、100msecより大きい値で設定されることになる。
【0061】
具体的には、生産計画や被検査物Wの品種の特性その他の検査条件に基づいて搬入間隔tを150msecで設定した場合、実際に測定された搬入間隔tが±50msecでばらついたとき、ばらつきの範囲は100msec〜200msec(150msec±50msec)となる。この範囲について20の区間に分割すると一区間は5msecになり、搬入間隔区間は5msecであることになる。このような搬入間隔tのばらつきは、被検査物Wの品種の特性や被検査物Wの搬入開始の検出位置より上流に位置するベルトコンベアの搬送態様やベルトコンベア同士の連結部を通過する際の被検査物Wのスリップなどによることが原因と考えられる。
【0062】
この統計手段9aにおいては、前述の20分割した搬入間隔tに基づいて、被検査物Wの累積検査個数を算出処理すると、次のようになる。この場合、搬入間隔100msec〜200msecの範囲が20個で等分割されるので、個々の搬入間隔は5msecとなり、この5msec毎の搬入間隔区間を第1の搬入間隔区間H1から第20の搬入間隔区間H20とすると、
H1は搬入間隔101msec〜105msecで、被検査物Wの累積検査個数が3個、
H2は搬入間隔106msec〜110msecで、被検査物Wの累積検査個数が6個、
H20は搬入間隔196msec〜200msecで、被検査物Wの累積検査個数が4個、などのように被検査物Wの搬入間隔区間毎(H1〜H20毎)の累積検査個数が算出処理され記憶されるようになっている。このような算出処理は、前述のように搬入間隔t(1)からt(n)までの累積検査個数が所定の検査個数、例えば、最初のt(1)から起算して50個〜1,000個内の所定の検査個数に到達したときに実行されるようになっている。
【0063】
また、この統計手段9aにおいては、搬入間隔測定記憶部8により測定および記憶された搬入間隔tから、その搬入間隔tのばらつきを表す統計量を算出し、記憶手段23に記憶するようになっている。このばらつきを表す統計量は、標準偏差だけでなく、全数値を加算して、その合計を個数で割って算出する単純相加平均や各々の特性を考慮して算出する加重相加平均などの相加平均、倍率の平均を算出する相乗平均、データの数をデータの逆数の和で割った平均を算出する調和平均などの平均値または目標値から算出する偏差、全体のばらつきを表す変動や自由度、この変動の全数をその自由度で割って算出する分散、範囲(最大値−最小値)などが含まれる。
【0064】
標準偏差算出手段9bは、統計手段9aにおいて集計され記憶された被検査物Wの搬入間隔区間毎(H1〜H20毎)の累積検査個数のデータに基づいて、次式(2)で表される標準偏差σを求めるよう構成されており、算出された標準偏差σは、記憶手段23に記憶されるようになっている。
【0065】
なお、標準偏差σは次式(2)に基づいて算出される。
【数1】


式(2)中、nは自然数(検査個数)、xは個々の搬入間隔t(msec)、mは搬入間隔tの平均値(msec)を表す。
【0066】
搬送速度算出手段9cは、搬入センサ4が被検査物Wの搬入開始を検出する検出位置Poと荷重センサ21が被検査物Wの質量を測定して品質データを取得開始する取得開始位置Psとの基準距離Lを、搬入間隔測定記憶部8により算出された搬入間隔tで除算することにより換算して搬送部3の搬送速度Vを算出するよう構成されており、算出された搬送速度Vは、記憶手段23に記憶されるようになっている。搬送速度Vとは、図3に示すように、助走コンベア31の搬送ベルト31bおよび秤量コンベア32の搬送ベルト32bの各線速度(m/min)について所定時間当たりで算出した平均値である平均線速度(m/min)をいい、搬送ベルト31bの平均線速度(m/min)はV31、搬送ベルト32bの平均線速度(m/min)はV32で表される。
【0067】
具体的には、図3に示すように、被検査物Wの搬入開始から質量を測定するまでの時間である搬入間隔tの基準を表す基準時間をTkとすると、基準距離はLであることから、搬送ベルト32bの平均線速度(m/min)V32は次式(3)で表される。
32=L/Tk (3)
この平均線速度V32および平均線速度V31は通常、ほぼ同じ速度に設定されており、常に一定の速度に保たれるよう搬送制御部6によって制御され、必要に応じて変更できるようになっている。
【0068】
例えば、前述の600個/minの検査能力のある重量選別機1において、基準時間Tkが150msecで設定された場合には、搬送されてくる被検査物Wの実際の搬入間隔tが150msecより長すぎると検査効率が低下することがあり、搬入間隔tが150msecより短すぎるといわゆる2個乗りが発生し、検査精度が低下してしまうことがある。このような搬入間隔tのばらつき状況に応じて、搬入間隔tが基準時間Tkの近傍になるようにオペレータが搬送ベルト31bの平均線速度V31および搬送ベルト32bの平均線速度V32を操作部11などを介して適宜調整できるようになっている。
【0069】
この重量選別機1においては、例えば、搬送ベルト32bの搬送方向の長さを表すLが300mmである場合には、基準距離Lは、通常、測定の安定性が良好な搬送ベルト32bの中心近傍の下流側に設定されるので、L=150mmとすると、Tkが150msecで設定されているので、搬送ベルト32bの平均線速度V32は式(3)にそれぞれ代入して、次のように算出される。
32=150mm/150msec
=1mm/msec
=1,000mm/sec
=60m/minとなる。
【0070】
このような搬送速度Vは、搬入間隔tから換算して求めることができる。例えば、搬送速度をVとすると、次式(4)により、搬送速度Vを搬入間隔tから換算して求めることができる。
V=L/t (4)
【0071】
=150mmとすると、前述の20分割した搬入間隔tに基づいて、算出処理した被検査物Wの累積検査個数は次のようになる。搬入間隔100msec〜200msecの範囲は式(4)により換算されて、例えば
V=150mm/100msec
=1.5mm/msec
=1,500mm/sec
=90m/min
の搬送速度Vになり、その範囲は45m/min〜90m/minとなる。この範囲の搬送速度Vを20分割すると、個々の搬入速度Vは2.25m/minとなり、この2.25m/min毎の搬送速度区間を第1の搬送速度区間V1から第20の搬送速度区間V20とすると、V1は搬送速度45m/min〜47.25m/minで、被検査物Wの累積検査個数が4個、V2は搬送速度47.25m/min〜49.5m/minで、被検査物Wの累積検査個数が6個、V20は搬送速度87.75m/min〜90m/minで、被検査物Wの累積検査個数が3個、などのように被検査物Wの搬送速度区間毎(V1〜V20毎)の累積検査個数が搬入間隔tから式(4)により換算され、記憶手段23に記憶されるようになっている。
【0072】
検査能力算出手段9dは、単位時間当たりの被検査物Wの検査個数を表す検査能力(個/min)を搬入間隔tに関する統計量などから換算して求めるよう構成されており、この統計量は記憶手段23に記憶されるようになっている。また、この検査能力算出手段9dは、この統計量に基づいて、搬入間隔tや搬送速度Vから算出して得られた推定最適検査能力が、基準時間Tkから算出して得られた検査能力の限界を表す基準検査能力に対して有する余裕の度合いを表す検査能力余裕度を算出するようになっている。この検査能力は、例えば、搬送ベルト32bの平均線速度V32が60m/minにおける被検査物Wの最大検査個数は、60,000msec(=1分間)÷150msec(基準時間Tk)=400であることから、400個/minとなる。
【0073】
このように、搬送ベルト32bの平均線速度V32が60m/minで一定である場合に生じた搬入間隔tのばらつきを、以下のように被検査物Wの検査能力のばらつきとして換算することができる。第1の搬入間隔区間(H1)が101msecから105msecであることから、H1に対応する第1の検査能力の区間をK1とすると、K1は、
[60,000msec(1分間)÷101msec=594(個/min)]〜
[60,000msec(1分間)÷105msec=571(個/min)]
となり、H1で被検査物Wが3個であるので、K1でも被検査物Wが3個、H2に対応する第2の検査能力区間K2は、106msec〜110msecであることから、同様に
566(個/min)〜545(個/min)で被検査物Wが6個、H20に対応する第20の検査能力区間K20は、306(個/min)〜300(個/min)で被検査物Wが4個、などのように被検査物Wの検査能力区間毎(K1〜K20毎)の累積検査個数として算出することもできる。
【0074】
この検査能力区間(K1〜K20毎)の累積検査個数は、上述したように搬送ベルト32bの平均線速度V32(m/min)が60m/minで一定の場合に、搬入間隔tが100msec〜200msecの範囲でばらついたことにより検査能力(個/min)がばらついたものとして算出している。
【0075】
この検査能力(個/min)のばらつきを、搬送ベルト32bの線速度(m/min)のばらつきとして、換算することもできる。例えば、搬入間隔tが150msecで一定で変動がないものとし、上述の検査能力(個/min)がばらついてしまったのは、搬送ベルト32bの線速度が変動したことが原因であると仮定すると、この検査能力(個/min)のばらつきを搬送ベルト32bの線速度(m/min)のばらつきとして、検査能力区間(K1〜K20)に対応する搬送ベルト32bの線速度区間毎(S1〜S20毎)に換算することもできる。
【0076】
具体的には、第1の検査能力区間(K1)の594(個/min)〜571(個/min)に対応する第1の搬送ベルトの線速度区間(S1)を換算すると、
594(個/min)×150mm(L1)=89.1m/min〜
571(個/min)×150mm(L1)=85.7m/min
となる。第2の搬入間隔区間(K2)に対応する第2の搬送ベルトの線速度区間(S2)は、同様換算にして、
566(個/min)×150mm(L1)=84.9m/min〜
545(個/min)×150mm(L1)=81.8m/min
となる。第20の搬入間隔区間(K20)に対応する第20の搬送ベルトの線速度区間(S20)も、同様に換算にして、
306(個/min)×150mm(L1)=45.9m/min〜
300(個/min)×150mm(L1)=45.0m/min
とすることができる。
このようにして、搬入間隔tが150msecで一定で変動がないものと仮定した場合の搬送ベルト32bの線速度V32の変動を検査能力(個/min)の変動から算出することができる。
【0077】
また、基準検査能力(個/min)は、重量選別機1における基準時間Tkから算出処理されるようになっており、この基準時間Tkは、被検査物Wの品種の特性や被検査物Wの搬入開始の検出位置より上流に位置するベルトコンベアの搬送態様や生産計画その他の検査条件などにより設定されるので、基準検査能力も基準時間Tkと同様に、その他の検査条件などに基づいて算出処理されることになる。
【0078】
また、この推定最適検査能力は、搬入間隔tに関する統計量に基づいて算出され、稼動中の重量選別機1において、推定される最適な検査能力を表しており、後述する最適搬入間隔算出手段9eにより算出された最適搬入間隔に基づいて算出処理されるようになっている。また、この推定最適検査能力も前述の基準時間Tkと同様に、その他の検査条件などに基づいて算出処理されることになる。
【0079】
また、この検査能力余裕度は、推定最適検査能力が基準検査能力に対して有する検査能力の余裕の度合いを表すよう、例えば、基準検査能力に対して所定の係数Gαを乗じた値で算出してもよい。また、搬入間隔tの標準偏差σに基づいて、例えば、検査能力余裕度をKyとし、基準検査能力をGnとすると、Ky=Gn−3σとして算出してもよい。
【0080】
最適搬入間隔算出手段9eは、標準偏差算出手段9bにより算出された標準偏差σや前述のばらつきを表す統計量と、基準時間Tkとから最適搬入間隔を算出するよう構成されており、算出された最適搬入間隔は、記憶手段23に記憶されるようになっている。
【0081】
この最適搬入間隔は、被検査物Wの品種の特性や被検査物Wの搬入開始の検出位置より上流に位置するベルトコンベアの搬送態様や生産計画その他の検査条件などに基づいて算出処理される。例えば、搬入間隔t(1)からt(n)、搬入間隔区間毎(H1〜H20毎)の累積検査個数、搬送ベルト32bの線速度V32、基準時間Tkおよび搬入間隔tまたは搬入間隔区間の式(2)で表される標準偏差σなどに基づいて、最適な搬入間隔が算出処理される。搬入間隔tが短くなればなる程検査効率は高くなるが、検査精度が低下することがある。他方、搬入間隔tが長くなればなる程検査精度は高くなるが、検査効率は低下することがある。そのため、検査効率および検査精度の双方のバランスを考慮し、検査効率および検査精度が最も良い値になるように最適な搬入間隔tが算出処理される。
【0082】
例えば、この最適搬入間隔をGtとすると最適搬入間隔Gtは、検査効率および検査精度が良好な値、すなわち、検査効率が良好であって、2個乗りが発生しにくい値、例えば、Tk<Gt<σの関係を満たすよう、被検査物Wの品種、大きさ、形状、重量選別機1の検査能力(個/min)などにより算出される。また、この最適搬入間隔Gtは、(Tk+0.1σ)<Gt<(Tk+0.5σ)などの範囲内で算出されるようにしてもよい。
また、検査条件などの統計量に基づく経験値から得られる所定の係数αを、搬入間隔tに関する統計量から得られた標準偏差σに乗ずることにより、最適搬入間隔Gtを算出してもよい。この場合には、最適搬入間隔Gtは、Gt=σ×αとして算出することができる。
【0083】
最適搬送速度算出手段9fは、基準距離Lを、最適搬入間隔算出手段9eにより算出された最適搬入間隔Gtで除算することにより、搬送部3の最適搬送速度GVを算出するよう構成されており、算出された最適搬送速度GVは、記憶手段23に記憶されるようになっている。この最適搬送速度GVは、搬入間隔tに基づいて算出されるので、前述の最適搬入間隔と同様に被検査物Wの品種の特性や被検査物Wの搬入開始の検出位置より上流に位置するベルトコンベアの搬送態様や生産計画その他の検査条件などに基づいて算出処理される。具体的には、搬入間隔t(1)からt(n)、搬入間隔区間毎(H1〜H20毎)の累積検査個数、搬送ベルト32bの線速度V32、基準時間Tkおよび標準偏差σなどに基づいて、推奨すべき最適な搬送速度Vが算出処理される。搬入間隔tと同様に、搬送速度Vが速くなればなる程検査効率は高くなるが、検査精度が低下することがある。他方、搬送速度Vが遅くなればなる程検査精度は高くなるが、検査効率は低下することがある。そのため、検査効率および検査精度の双方のバランスを考慮し、検査効率および検査精度が最も良い値になるように最適な搬送速度Vが算出処理される。
【0084】
この最適搬送速度GVは、例えば、基準距離Lが150mmで、最適搬入間隔Gtが120msecである場合には、式(4)から、最適搬送速度GVは、GV=L/Gtとなり、
GV=150mm/120msec
=1.25mm/msec
=1,250mm/sec
=75m/min
となるので、最適搬送速度GVは、75m/minとなる。
【0085】
表示部10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、具体的には、図4〜図8に示すように、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示部10は、搬入間隔測定記憶部8に記憶されている搬入間隔区間毎の累積検査個数に基づいて表示処理し表示画面に横軸にデータ区間を表す搬入間隔t、縦軸に頻度を表す被検査物Wの検査個数のヒストグラムを表示するようになっている。また、横軸にデータ区間を表す搬送速度V、縦軸に頻度を表す被検査物Wの検査個数のヒストグラムを表示するようになっている。さらに、このようなヒストグラムと同時に算出処理部9により算出処理された最適搬入間隔に対応する最適搬入間隔マーク、最適搬送速度に対応する最適搬送速度マークを表示するようになっている。
【0086】
また、表示部10は、例えば、記憶手段23に記憶されている被検査物Wの品種に対応して予め設定した検査条件、被検査物Wの品種毎の搬送方向の長さ(mm)、被検査物Wに対する質量の許容範囲の上限値Gaと下限値Gb、搬入センサ4によって取得された個々の被検査物Wの搬入間隔t(msec)、最適搬入間隔Gt、搬送部3の搬送速度V、最適搬送速度GV、2個乗り限界値(msec)、検査能力(個/min)、推定最適検査能力(個/min)、基準検査能力(個/min)、検査能力余裕度、ヒストグラムや品質判定手段24により判定された判定結果などを必要に応じて表示するようになっている。このような表示に加えて、図8に示す表示部10の一部に、表示画面をタッチすると表示された数字、文字などが入力されるタッチパネルを表示し操作部11として使用してもよい。
【0087】
図4〜図8に表示部10の表示画面に表示した一例を示す。図4は、表示部10の表示画面に、「最適搬入間隔 ○○msec」、「測定の基準時間 ○○msec」、「現在の搬送速度 ○○m/mim」、「最適搬送速度 ○○m/mim」、「2個乗り限界値 ○○msec」、「検査能力 ○○個/min」、「推定最適検査能力 ○○個/min」、「基準検査能力 ○○個/min」、「検査能力余裕度 ○○」のように、それぞれ項目および項目に対応する数値を表示したものである。
これ以外にも、必要に応じて、これらの表示とともに、またはこれらの表示と別個の表示画面に判定結果などの検査情報を表示してもよい。
【0088】
図5は、横軸にデータ区間を表す被検査物Wの搬入間隔t(msec)、縦軸に頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)を表示したもので、搬入間隔tが80msec〜400msecの範囲を約40分割し、一搬入間隔区間を8msecとして、搬入間隔区間(8msec)毎の被検査物Wの累積検査個数をヒストグラム41として表したものである。
なお、縦軸にデータ区間を表す被検査物Wの搬入間隔t(msec)を表示し、横軸に頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)を表示してもよい。
図5の左下部の搬入間隔tが80msec以下においては、いわゆる2個乗りなどにより不良品41aとして選別された被検査物Wの分布を表している。さらに、ヒストグラム41の表示と同時に基準時間マーク42、最適搬入間隔マーク43および搬入間隔tがこれ以上短くなると2個乗りが発生してしまうという2個乗り限界値マーク44が表示されている。
【0089】
これらの表示とともに、右上部には、「測定の基準時間 ○○msec」、「現在の搬送速度 ○○m/min」、「最適搬入間隔 ○○msec」、「2個乗り限界値 ○○msec」のように項目および項目に対応する数値が表示されている。このようにヒストグラム41の表示と同時に基準時間マーク42、最適搬入間隔マーク43および2個乗り限界値マーク44などが表示されるので、重量選別機1のオペレータは、これらの表示を参照して最適搬入間隔マーク43の近傍にヒストグラム41のピークが来るように搬送速度Vを容易に変更することができる。
【0090】
図6は、横軸にデータ区間を表す重量選別機1の搬入間隔tから換算された検査能力(個/min)を表示し、縦軸に頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)を表示したもので、検査能力が150個/min〜600個/minの範囲を約40分割し、一検査能力区間を11個/minとして、検査能力区間(11個/min)毎の被検査物Wの累積検査個数をヒストグラム41bとして表したものである。なお、縦軸にデータ区間を表す重量選別機1の検査能力(個/min)を表示し、横軸に頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)を表示してもよい。図6の右下部の検査能力が最大600個/minにおいては、いわゆる2個乗りなどにより不良品41cとして選別された被検査物Wの分布を表している。さらに、ヒストグラム41bの表示と同時に基準検査能力マーク48、検査能力分布の平均から3σの位置(点線の位置)と基準検査能力マーク48とを結んだ矢印で表される検査能力余裕度マーク45が表示されている。
【0091】
これらの表示とともに、左上部には、「測定の基準時間 ○○msec」、「現在の搬送速度 ○○m/min」、「推定最適検査能力 ○○個/min」、「検査能力余裕度 ○○」、「基準検査能力 ○○個/min」のように項目および項目に対応する数値が表示されている。このようにヒストグラム41bの表示と同時に、検査能力余裕度マーク45、基準検査能力マーク48などが表示されるので、重量選別機1のオペレータは、これらの表示を参照して、検査能力の分布が基準検査能力マークの下側に来るように重量選別機1の前段の生産ラインの能力を下げるよう、前段の生産ラインへの処置を促すことができる
【0092】
図7は、横軸にデータ区間を表す搬送ベルト32bの線速度を搬送速度V(m/min)として表示し、縦軸に頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)を表示したもので、搬送速度Vが25m/min〜90m/minの範囲を約40分割し、一速度区間を約1.6m/minとして、速度区間(1.6m/min)毎の被検査物Wの累積検査個数をヒストグラム41dとして表したものである。なお、縦軸にデータ区間を表す搬送ベルト32bの線速度を搬送速度V(m/min)として表示し、横軸に頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)を表示してもよい。図7の右下部の搬送速度Vが90m/min以上においては、いわゆる2個乗りなどにより不良品41eとして選別された被検査物Wの分布を表している。さらに、ヒストグラム41dの表示と同時に基準時間マーク42、最適搬送速度マーク47および2個乗り限界値マーク44が表示されている。
【0093】
これらの表示とともに、左上部には、「測定の基準時間 ○○msec」、「現在の搬送速度 ○○m/min」、「最適搬送速度 ○○m/min」、「2個乗り限界値 ○○msec」のように項目および項目に対応する数値が表示されている。このようにヒストグラム41dの表示と同時に472個乗り限界値マーク44、現在の搬送速度マーク46および最適搬送速度マークなどが表示されるので、重量選別機1のオペレータは、これらの表示を参照して、最適搬送速度マーク47の近傍にヒストグラム41dのピークが来るように搬送速度Vを容易に変更することができる。
【0094】
図8は、表示部10における表示画面の右側に、横軸をデータ区間を表す搬送速度V(m/min)とし、縦軸を頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)としたヒストグラム41d、最適搬送速度マーク47および2個乗り限界値マーク44を表示し、左側に操作部11をタッチパネルとして表示した表示部10を示している。なお、縦軸をデータ区間を表す搬送速度V(m/min)とし、横軸を頻度を表す被検査物Wの累積検査個数(個)としたヒストグラムを表示してもよい。図8に示すように、右側にヒストグラム41d、左側に操作部11が前述のタッチパネルで表示されるので、重量選別機1のオペレータは、右側の表示を参照しながら、左側の入力操作部11bから直接搬送速度Vを入力することができ、最適搬送速度マーク47の近傍にヒストグラム41dのピークが来るように搬送速度Vを容易に変更することができる。
【0095】
操作部11は、図1に示すように、表示部10とともに装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、図8に示すように、表示部10の表示画面の下側部分にタッチパネルとして形成してもよい。またタッチパネルとして表示した操作部11の左上側部分に画面切換ボタン11aを表示し、この画面切換ボタン11aをタッチすることにより表示部10の表示画面の一部に入力用のボタンからなる入力操作部11bを表示してもよい。この入力操作部11bから搬送ベルト32bの線速度などの情報を入力することができる。
【0096】
本実施の形態に係る重量選別機1においては、各構成部分を制御するCPU(不図示)及びこれらに構成部分を接続するバス(不図示)を設けてもよい。例えば、重量選別機1における搬送部3、搬入センサ4、選別部5、搬送制御部6、重量選別部7、搬入間隔測定記憶部8、算出処理部9、表示部10、操作部11などの各構成部分はCPUによって動作するようにしてもよい。CPUは、装置本体部2内に格納した各構成部分に対応する制御プログラムを実行し、各構成部分を動作させるようになっている。
【0097】
次に、本実施の形態に係る重量選別機1におけるヒストグラムの表示処理について、図9〜図11のフローチャートを参照して説明する。
【0098】
まず、重量選別機1の電源が入り、医薬、加工食品、生肉、魚などの生産ラインが始動すると、重量選別機1の上流に設置された搬送コンベアから被検査物Wが搬送され、図1に示す助走コンベア31を介して、秤量コンベア32に被検査物Wの搬入が開始される(ステップS10)。被検査物Wの搬入が開始されると、搬入センサ4により搬入されたことが検出される(ステップS11)。
【0099】
次いで、搬入センサ4の検出からカウントして基準時間Tkが経過したかが判断される(ステップS12)。基準時間Tkが経過していない場合(ステップS12でNOの場合)は、搬入センサ4の検出からのカウントが続行される。基準時間Tkが経過していた場合(ステップS12でYESの場合)は、被検査物Wの品質データの取得、すなわち、荷重センサ21により被検査物Wが検知され質量信号が質量検出手段に出力され、質量検出手段22により被検査物Wの質量が検出される(ステップS13)。検出された質量は、品質判定手段に出力され品質判定手段24により、記憶手段23に記憶されている所定の範囲の基準質量と、被検査物Wの質量とが比較され所定の範囲にあるか否かにより良否が判定される(ステップS14)。被検査物Wが良品の場合(ステップS14でYESの場合)は選別部5により良品選別処理される(ステップS15)。被検査物Wが不良品の場合(ステップS14でNOの場合)は選別部5により不良品選別処理される(ステップS16)。
【0100】
次いで、被検査物Wの検査を続行するか否かが判断される(ステップS17)。被検査物Wの検査を続行しない場合(ステップS17でNOの場合)は、検査は終了し、重量選別機1の電源を切にするなどの所定の終了処理がなされる。
【0101】
被検査物Wの検査を続行する場合(ステップS17でYESの場合)は、搬入間隔測定記憶部8が搬入センサ4から最初の被検査物W(i)の搬入が開始されたことの検出信号を受領した時間t(i)と、次の被検査物W(i+1)の搬入が開始されたことの検出信号を受領した時間t(i+1)との搬入間隔t(1)を測定する(ステップS18)。搬入間隔t(1)が測定されると、搬入間隔測定記憶部8に測定された搬入間隔t(1)が記憶される(ステップS19)。
【0102】
次いで、搬入間隔測定記憶部8に測定された搬入間隔t(1)の検査個数のカウントが所定検査個数、例えば、100個を超えるか否かが判断される(ステップS20)。搬入間隔t(1)の検査個数のカウントが所定検査個数を超えていない場合(ステップS20でNOの場合)は、被検査物Wの搬入検出(ステップS11)まで戻り、搬入センサ4の検出からカウントして基準時間Tkが経過したかが判断されるステップS12に進む。搬入間隔t(1)の検査個数のカウントが所定検査個数を超えていた場合(ステップS20でYESの場合)は、図9および図10に示す(A)に進む。
【0103】
次いで、表示部10によりヒストグラムの表示処理がなされ(ステップS25)、表示部10に、図5に示すようにヒストグラム41が表示される(ステップS26)。さらに、表示部10にヒストグラム41と同時に基準時間マーク42が二重線で明確に表示される(ステップS27)。
【0104】
次いで、表示部10に最適搬入間隔マークを表示するか否かが判断される(ステップS28)。最適搬入間隔マークを表示しない場合(ステップS28でNOの場合)は、ステップS31に進む。
【0105】
最適搬入間隔マークを表示する場合(ステップS28でYESの場合)は、算出処理部9により、最適搬入間隔が算出され(ステップS29)、表示部10に、図5に示すように最適搬入間隔マーク43がヒストグラム41と同時に矢印線で縦方向に表示される(ステップS30)。
【0106】
次いで、表示部10に表示されている図5に示すヒストグラム41の横軸を搬入間隔(msec)から搬送速度V(m/min)に変換して表示の切換をするか否かが判断される(ステップS31)。表示の切換をしない場合(ステップS31でNOの場合)は、図10および図11に示す(B)のステップS41に進む。
【0107】
表示の切換をする場合(ステップS31でYESの場合)は、算出処理部9により、搬送速度V(m/min)が搬入間隔tに基づいて算出処理され(ステップS32)、表示部10に、図7に示すように最適搬送速度マーク47がヒストグラム41dと同時に矢印線で縦方向に表示される(ステップS33)。
【0108】
次いで、表示部10に最適搬送速度マークを表示するか否かが判断される(ステップS34)。最適搬送速度マークを表示しない場合(ステップS28でNOの場合)は、図10および図11に示す(B)のステップS41に進む。
【0109】
最適搬送速度マークを表示する場合(ステップS34でYESの場合)は、算出処理部9により、最適搬送速度が算出され(ステップS35)、表示部10に、図7に示すように最適搬送速度マーク43がヒストグラム41と同時に矢印線で縦方向に表示される(ステップS36)。
【0110】
次いで、表示部10に表示されている図7に示すヒストグラム41dの横軸を搬送速度V(m/min)から検査能力(個/min)に変換して表示の切換をするか否かが判断される(ステップS41)。表示の切換をしない場合(ステップS41でNOの場合)は、図11および図9に示す(C)のステップS17に進む。検査能力(個/min)に変換して表示の切換をする場合(ステップS41でYESの場合)は、算出処理部9により、検査能力(個/min)が算出され(ステップS42)、表示部10に、図6に示すようにヒストグラム41dが表示され(ステップS43)、図11および図9に示す(C)のステップS17に進む。
【0111】
以上説明したように、本実施の形態に係る重量選別機1では、順次搬入される被検査物Wを搬送する搬送部3と、搬送部3に被検査物Wが搬入されたことを検出する搬入センサ4と、搬入センサ4によって搬送部3に被検査物Wが搬入されたことが検出されてから基準時間Tkの経過時に搬送部3に搬入された被検査物Wの質量を検出する荷重センサ21および質量検出手段22と、この荷重センサ21および質量検出手段22により算出した質量に基づいて被検査物Wの品質の良否を判定する品質判定手段24と、搬入センサ4によって検出された搬入間隔tを測定し記憶する搬入間隔測定記憶部8と、搬入間隔測定記憶部8によって測定し記憶された搬入間隔tの内の所定範囲内の搬入間隔tに関する統計量を算出する統計手段9aとで構成されるので、搬送部3の最適な搬送速度V(m/min)を搬入間隔tの標準偏差σから求めることができる。
【0112】
なお、上述の実施の形態においては、本発明に係る物品検査装置を重量選別機1に適用した例を説明したが、本発明に係る物品検査装置は、搬送手段と、搬入検出手段と、品質データ取得手段と、品質判定手段と、搬入間隔測定記憶手段と、統計算出手段とを備えたものであればよく、物品の検査の内容、方法、被検査物の種類などに制限されるものではない。例えば、搬送される被検査物にX線を照射し、この照射したX線の透過量から被検査物中に異物が混入しているか否かを検出するX線異物検出装置に最適に実施することができる。また、搬送ラインに交番磁界を発生させておき、交番磁界中を各品種の被検査物を通過させ、磁界を通過しているときの検波出力から金属が混入しているか否かを検出する金属検出機に最適に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上説明したように、本発明は、物品検査装置において、最適な搬送速度を搬入間隔から求めることができるという効果を有し、広く物品の質量を計量する装置、例えば、重量選別機およびオート・チェッカや物品に含まれる異物を検出するX線異物検出装置および金属検出装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の一実施の形態を示すブロック図である。
【図3】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の一実施の形態における搬送部を示す模式図である。
【図4】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の表示部に表示した数値の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の表示部に表示した搬入間隔のヒストグラムの一例を示す平面図である。
【図6】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の表示部に表示した検査能力のヒストグラムの一例を示す平面図である。
【図7】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の表示部に表示した搬送速度のヒストグラムの一例を示す平面図である。
【図8】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の表示部に表示した操作ボタンおよび搬送速度のヒストグラムの一例を示す平面図である。
【図9】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の表示部に表示した操作部およびヒストグラムの一例を示す平面図である。
【図10】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の重量選別の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の物品検査装置の実施の形態に係る重量選別機の重量選別の一例を示すフローチャートである。
【図12】従来の重量選別機の搬送部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0115】
1、51 重量選別機
2 装置本体部
2a 収納筐体
3、52 搬送部(搬送手段)
4 搬入センサ(搬入検出手段)
4a 投光部
4b 受光部
5 選別部
5a 選別機構部
5b、31b、32b 搬送ベルト
5c、31a、31c、32a、32c ローラ
6 搬送制御部
7 重量選別部(品質判定手段)
8 搬入間隔測定記憶部(搬入間隔測定記憶手段)
9 算出処理部(統計手段、標準偏差算出手段、最適搬入間隔算出手段、搬送速度算出手段、最適搬送速度算出手段、検査能力算出手段)
9a 統計手段
9b 標準偏差算出手段
9c 搬送速度算出手段
9d 検査能力算出手段
9e 最適搬入間隔算出手段
9f 最適搬送速度算出手段
10 表示部(ヒストグラム表示手段)
11 操作部
11a 操作ボタン
11b 入力操作部
12 駆動モータ
13 制御手段
14 ベルトコンベア
21、53 荷重センサ(品質データ取得手段)
22 質量検出手段
23 記憶手段
24 品質判定手段
31 助走コンベア
32 秤量コンベア
41、41b、41d ヒストグラム
41a、41c、41e 不良品
42 基準時間マーク
43 最適搬入間隔マーク
44 2個乗り限界値マーク
45 検査能力余裕度マーク
46 現在の搬送速度マーク
47 最適搬送速度マーク
48 基準検査能力マーク
W、W1、W2、W3、W4 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次搬入される被検査物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に前記被検査物が搬入されたことを検出する搬入検出手段と、
前記搬入検出手段によって前記搬送手段に前記被検査物が搬入されたことが検出されてから基準時間の経過後に前記搬送手段に搬入された前記被検査物の品質データを取得する品質データ取得手段と、
前記品質データ取得手段により取得した前記品質データに基づいて前記被検査物の品質の良否を判定する品質判定手段と、を備えた物品検査装置において、
前記搬入検出手段によって検出された前記被検査物の搬入間隔を測定し記憶する搬入間隔測定記憶手段と、
前記搬入間隔測定記憶手段によって測定し記憶された前記搬入間隔の内の所定範囲内の搬入間隔に関する統計量を算出する統計手段と、
を備えたことを特徴とする物品検査装置。
【請求項2】
前記統計手段により算出された前記搬入間隔のばらつきを表す統計量および前記基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段と、前記最適搬入間隔算出手段により算出された最適搬入間隔に基づいて最適搬送速度を算出する最適搬送速度算出手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項3】
単位時間当りの前記被検査物の検査個数を表す検査能力を算出する検査能力算出手段を備え、前記検査能力算出手段が、前記基準時間に基づいて検査能力の限界を表す基準検査能力を算出し、前記統計量から推定される最適な検査能力を表す推定最適検査能力を算出し、前記基準検査能力に対する前記推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の物品検査装置。
【請求項4】
前記統計手段により算出された前記搬入間隔に関する前記統計量に基づいて、前記搬入間隔に関するヒストグラムを表示するヒストグラム表示手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項5】
前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記被検査物の前記搬入間隔をデータ区間とし、前記被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと、前記基準時間を表す基準時間マークとを含むことを特徴とする請求項4に記載の物品検査装置。
【請求項6】
前記搬入間隔を換算して前記搬入間隔毎の搬送速度を算出する搬送速度算出手段と、前記統計手段により算出された前記搬入間隔のばらつきを表す統計量および前記基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段と、前記最適搬入間隔算出手段により算出された最適搬入間隔に基づいて最適搬送速度を算出する最適搬送速度算出手段と、を備え、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記搬入速度算出手段により算出された搬送速度をデータ区間とし、前記被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと、前記最適搬送速度算出手段により算出された前記最適搬送速度を表す最適搬送速度マークとを含むことを特徴とする請求項4に記載の物品検査装置。
【請求項7】
前記統計手段により算出された前記搬入間隔のばらつきを表す統計量および前記基準時間から最適搬入間隔を算出する最適搬入間隔算出手段を備え、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記最適搬入間隔算出手段により算出された前記最適搬入間隔を表す最適搬入間隔マークを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の物品検査装置。
【請求項8】
前記搬入間隔に関する統計量から単位時間当りの前記被検査物の検査個数を表す検査能力を算出するとともに、前記基準時間に基づいて検査能力の限界を表す基準検査能力を算出する検査能力算出手段を備え、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記検査能力算出手段により算出された前記検査能力をデータ区間とし、前記被検査物の検査個数を頻度としたヒストグラムと、前記検査能力算出手段により算出された前記基準検査能力を表す基準検査能力マークとを含むことを特徴とする請求項4に記載の物品検査装置。
【請求項9】
前記検査能力算出手段が、前記統計量から推定される最適な検査能力を表す推定最適検査能力を算出するとともに、前記基準検査能力に対する前記推定最適検査能力の余裕の度合いを表す検査能力余裕度を算出し、前記ヒストグラム表示手段の表示が、前記検査能力算出手段により算出された前記検査能力余裕度を表す検査能力余裕度マークを含むことを特徴とする請求項8に記載の物品検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−296175(P2008−296175A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147222(P2007−147222)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】