説明

物品移載装置

【課題】 狭いスペースでも使用できる物品移載装置を提供する。
【解決手段】 フレームと、フレームに往復移動可能に設けられた移動体と、移動体の表面側と裏面側に周回されたベルトを備え、移動体はその駆動側を縦移動させて送り出すと先端側が先方に横移動し、駆動側を縦移動させて引き戻すと先端側が横移動して引き戻され、ベルトは周回方向任意箇所がフレームに固定されてリング状であり、移動体はその駆動側が縦移動する先端側が横移動し、ベルトは移動体の先端側が先方に横移動すると同方向に繰り出されてベルト先方の物品をベルトの上に掬い上げることができ、移動体の駆動側が縦方向に引き戻されて先端側が横方向に引き戻されると、その戻り方向に引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、固形物のほか、形の崩れやすい軟質物、フランス料理で使用されるソースのような粘度のある液体(液状物)、ゲル状物、粉末等を、型崩れさせずに持ち上げて移動させることのできる物品移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルや作業台等の上にある、変形や型崩れしやすい物品を、型崩れさせずに掬い上げて他の場所に移動することがある。その移動装置として、従来は、本件出願人の特許に係る移載装置(特許文献1)、他人の特許に係る食品の移動装置(特許文献2)があった。特許文献1の移載装置は、その図1や図7に示すように、薄板(平面)を押し出すことによって、平板の外周に回したベルトの上に物品を載せることができ、平面を引き戻すことによってベルトを逆回転させて、ベルトの上の物品を送り出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4406775号公報
【特許文献2】特許第3557242号公報
【0004】
前記特許文献1記載の移載装置は特に課題はないが、平板が横方向に直線的に往復移動するため、スペースの狭い場所では使用し難いという点に改善の余地があった。
【0005】
前記特許文献2記載の食品の移載装置は、引張りばねを使用するため、長期間の使用で引張りばねの引張り力が弱まることがあり、又、構造が複雑になるという難点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の解決課題は、変形や型崩れしやすい物品を、変形も型崩れもさせずに他の場所に移動、移送、移し変え等(これらをまとめて「移載」という。)することができ、かつ、狭いスペースでも使用することができる物品移載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の物品移載装置は、往復移動可能な移動体の表面(上面)側と裏面(下面)側にベルトがリング状に周回され、移動体をベルトの内側で先方に移動させるとベルトが移動体の移動方向に繰り出されてベルト先方の物品をベルトに掬い上げることができ、移動体がベルト内で戻り移動するとベルトが引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができる物品移載装置において、フレームと、フレームに往復移動可能に設けられた移動体と、移動体の表面側と裏面側に周回されたベルトを備え、前記移動体はその駆動側を縦移動させて送り出すと先端側が先方に横移動し、駆動側を縦移動させて引き戻すと先端側が横移動して引き戻され、前記ベルトは周回方向任意箇所がフレームに固定されてリング状であり、リング状のベルトは移動体の駆動側が縦移動して先端側が横移動するとその横移動方向先方に繰り出されて、ベルト先方の物品をベルトの上に掬い上げることができ、移動体の駆動側が縦方向に引き戻されて先端側が横方向に引き戻されると、移動体の先端側の戻り方向に引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができる。
【0008】
本願発明の物品移載装置は、前記物品移載装置において、移動体を、縦−横方向に屈曲又は湾曲可能としてある。前記移動体に、移動体を縦−横方向に往復移動させる駆動体を連結した。前記フレームに、縦方向から横方向に連続して曲げられたガイドを設け、移動体をそのガイドにセットして、移動体がガイドに沿って縦−横方向に往復移動できるようにした。前記ベルトの先方に、ベルトで掬い上げる物品を支持できる支持具を設けることができる。
【0009】
本願発明の物品移載装置は、前記物品移載装置を二つ備え、二つの物品移載装置は移動体及びベルトの先端側を対向して配置し、両物品移載装置の移動体の先端側を互いに前進させると両物品移載装置のベルト間にある物品を前記両ベルトの上に掬い上げることができ、両物品移載装置の移動体を互いに引き戻すと、両ベルトの上の物品を両ベルトの間に降ろすことができるようにすることもできる。この場合、二つの物品移載装置の駆動体を二つの移動体に共用にすることも別々にすることもできる。
【0010】
本願発明の物品移載装置は、往復移動可能な移動体の表面(上面)側と裏面(下面)側にベルトがリング状に周回され、移動体をベルトの内側で先方に移動させるとベルトが移動体の移動方向に繰り出されてベルト先方の物品をベルトに掬い上げることができ、移動体がベルト内で戻り移動するとベルトが引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができる物品移載装置において、一つのフレームと、そのフレームに往復移動可能に設けられた二つの移動体と、夫々の移動体の表面側と裏面側に周回されたベルトを備え、前記夫々の移動体はその駆動側を縦移動させて送り出すと先端側が先方に横移動し、駆動側を縦移動させて引き戻すと先端側が横移動して引き戻され、前記夫々の移動体に周回されたベルトは、周回方向任意箇所がフレームに固定されてリング状に形成され、夫々のリング状のベルトは移動体の駆動側が縦移動して先端側が横移動するとその横移動方向先方に繰り出されて、ベルト先方の物品をベルトの上に掬い上げることができ、移動体の駆動側が縦方向に引き戻されて先端側が横方向に引き戻されると、移動体の先端側の戻り方向に引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができるようにすることもできる。
【0011】
前記いずれの物品移載装置も、ロボットアームに取付け可能なロボットハンドとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の物品移載装置には、次のような効果がある。
(1)移動体が縦方向から横方向に(その逆にも)曲がって往復移動できるので、移動体が縦移動する分だけ移動体の横移動長が短くなり、フレームの横寸法を小型化できる。
(2)ベルトを移動体の表面と裏面に周回してリング状にし、移動体の移動によりベルトが移動体の表面と裏面に沿って引き出されたり引き戻されたりするので、物品を押すことなくベルトで掬い上げることができ、変形しない。
(3)フレームに縦向きと横向きのガイドを一連に設けて、移動体がそのガイドに沿って縦−横に往復移動することができるので、移動体の縦−横移動がスムース且つ確実になる。
(4)二つの物品移載装置を対向配置すれば、一つの物品を、二つの物品移載装置の対向するベルトの上に掬い上げることができるので、ベルトの上の物品が安定する。また、掬い上げられた物品の荷重が二つの移載装置のベルト及び移動体に分散されるので、ベルト及び移動体の耐荷重性が向上する。
(5)二つの移載部を一つのフレームに装備すれば、物品移載装置を小型化できる。
(6)移動体に駆動体を連結すれば、移動体を自動的に縦−横移動させることができ、自動機器と組み合わせて利用することができる。
(7)物品載置体のベルト先端側に、物品をベルトと反対側から支持する支持具を設ければ、ベルトに掬い上げられた物品の落下を防止することもできる。
(8)ロボットハンドに取付け可能な取付け部を設ければ、ロボットハンドとして使用することができるので、自動化機械の一環としての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明の物品移載装置の一例を示す斜視図。
【図2】本願発明の物品移載装置の構造を示す斜視図であって、(a)はベルトを移動体に巻きつける前の状態を示す斜視図、(b)はベルトの一端を移動体に固定した状態の斜視図、(c)はベルトの他端を移動体に固定した状態の斜視図。
【図3】図1に示す物品移載装置の移動体が縦方向に引き戻された状態の縦断側面図。
【図4】図1に示す物品移載装置の移動体が縦方向(先端側が横方向)に押し出された状態の縦断側面図。
【図5】(a)は図1に示す物品移載装置で物品を掬い上げる前の状態の縦断面図、(b)は物品を掬い上げた状態の縦断面図。
【図6】(a)〜(c)は本願発明の物品載置装置における移載部の動作説明図。
【図7】(a)〜(c)は本願発明の物品載置装置で物品を掬い上げる状態の説明図。
【図8】本願発明の物品移載装置の他例であり、一つのフレームに二つの移載部を設けた場合の斜視図。
【図9】(a)〜(d)は本願発明の物品載置装置の動作説明図であり、(a)は縦方向に引上げられた二つの移動体の先端部間の空間に、受け材に載せられた物品が配置される状態の縦断面図、(b)は移動体の先端が横移動して両移動体のベルトの上に物品が掬い上げられた状態の縦断面図、(c)は(b)の状態から受け材を引き抜いた状態の縦断面図、(d)は(c)の状態から二つの移動体を縦方向に引き上げて、移動体の先端部間の空間から物品が降ろされた状態の縦断面図。
【図10】図8に示す物品移載装置の移動体が上方に引上げられた状態の縦断面図。
【図11】図8に示す物品移載装置の移動体が下方に押し下げられた状態の縦断面図。
【図12】(a)〜(c)は本願発明の物品移載装置におけるフレームへのベルト固定方法の手順を示す部分説明図。
【図13】図12に示すベルト固定構造の分解説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(移載部が一つの物品移載装置の実施形態)
本願発明の物品移載装置の一例について、図面を参照しながら説明する。図1に示す物品移載装置は、フレーム1と、フレーム1に装備された移動体2と、移動体2の表側と裏側にその移動方向に周回されたベルト3を備えている。ベルト3は周回方向任意箇所がフレーム1に固定されてリング状にしてある。以下の説明では、説明の便宜上、移動体2とそれに周回してリング状にしたベルト3をまとめて移載部4ということがある。
【0015】
(フレーム)
前記フレーム1は、二枚の縦フレーム5が左右(横)に離れて平行に配置され、両縦フレーム5の上部が上連結部6で、下部が下連結部7で連結されて、一定間隔に保持されている。下連結部7は、その両端がネジ10によってフレーム1に固定されている。夫々の縦フレーム5は側面視形状が略L字状であり、縦板部5aと支持部5bがあり、縦板部5aから支持部5bまでガイド8が一連に形成されている。図1のガイド8は縦板部5aから支持部5bまで連続する溝であり、縦板部5aと支持部5bの連続部で湾曲しており、縦板部5aと支持部5bの内面に開口して、二枚の縦フレーム5のガイド8が対向している。フレーム1の材質は金属、硬質樹脂等とすることができる。
【0016】
(移動体)
図1の移動体2は図2(a)に示すように、多数本の細長板材を屈曲可能に連結してシャッター状にしたものであり、その幅方向両端部が図1のガイド8の溝に差し込まれて、ガイド8の曲がりに沿って縦−横方向に連続移動(連続スライド)可能としてある。移動体2の材質も金属、硬質樹脂等とすることができる。
【0017】
(ベルト)
図1のベルト3は移動体2の表側と裏側に周回させてあり、ベルト3の周回方向任意箇所(図1では周回方向両端部)がフレーム1の下連結部7に固定されて一定長のリング状に保持されている。詳しくは、図2(a)〜(c)に示すように、下連結部7に面ファスナー9aが固定され、その面ファスナー9aに、ベルト3の周回方向(長手方向)一端の表側に取付けられている面ファスナー9bを重ねて接合し、この長手方向一端の裏側に取付けられている面ファスナー9c(前記接合により裏返しになって表側に出る)の上に、ベルト3の周回方向(長手方向)他端に取付けられている面ファスナー9dを重ねて接合することによりベルト3の両端部を下連結部7に固定して、ベルト3をリング状に保持してある。
【0018】
前記のようにリング状に保持されたベルト3は、移動体2が縦から横方向に移動(スライド)すると、その移動に伴って周回方向にスライドすることができる。詳しくは、図3の状態から図4のように移動体2を押し下げて縦方向から横方向にスライド(縦−横移動)させると、ベルト3の表面側3a(図4では上面側)が図4のように移動体2の先方に周回動(送り出し)されて、図5(a)のようにベルト3の先方にある物品Wが、図5(b)のようにベルト3の表面側3aの上に引き上げ(掬い上げ)られ、図4の状態から図3のように移動体2を引き上げて(引き戻して)、移動体2の先端側を横方向から縦方向にスライド(横−縦移動)させると、ベルト3の表面側3aが図3のように移動体2の後方(移動体の裏面側)に周回動(引き戻し)して、図5(b)のようにベルトの表面側3aの上にあった物品Wが図5(a)のように、ベルトの表面側3aの先に降ろされるようにしてある。
【0019】
(ベルトの動作説明)
ベルト3の周回動の動作を図6(a)〜(c)に示す。図6(a)はベルト3の両端部が固定具11によりフレームに固定されている場合であり、固定部11の位置をY−Y線上に一定にして、移動体2を前進後退させたときのベルト3の動作説明である。図6(a)は移動体2が前進した状態であり、ベルト3の表面側(上面部分)3aが移動体2の先端で先方に押されて移動体2の先端側に送り出された(先方周回した)状態である。図6(b)は移動体2が図6(a)の位置から後退した状態であり、ベルト3が移動体2の後端で押されてベルト3の表面側(図6(b)では上面)3aが移動体2の後端側に周回(後方周回)した状態である。図6(c)は移動体2が図6(b)の位置から更に後退した状態であり、ベルト3の表面側(図6(c)では上面)3aが移動体2の後端で押されて更に移動体2の後端側に周回(後方周回)した状態である。
【0020】
ベルト3の周回動により物品Wを掬うとき、降ろすときの動作を図7(a)〜(c)に示す。図7(a)のように物品WがテーブルTの上であってベルト3の先方にある状態で、図7(b)のように移動体2を前進移動させて、ベルト3の表面側(図6、図7では上面)を前方に送り出すと、物品Wがベルト3の先端の上に掬い上げられる。図7(c)のように移動体2を更に前進させると物品Wがベルト3の表面側3aの上に載る。図7(b)の状態から移動体2を前回(掬い上げ時)とは逆に、図7(b)、図7(a)の順に後退させると、ベルト3の上の物品Wがベルト3からテーブルTの上に降ろされる。
【0021】
(駆動体)
図1の移動体2の押し下げと、引き上げ(戻し)は、エアシリンダとかモータ等の駆動体により行われる。一例として図1に示す駆動体12はシリンダであり、上連結部6にエアシリンダ12が搭載され、そのロッド12aが上連結部6を貫通して移動体2の上部に連結された可動体13に連結されて、ロッド12aが図1の下方に伸びると移動体2が降下し、ロッド12aが図1の上方に縮むと移動体2が上昇するようにしてある。図1ではエアシリンダ12の両側方にガイドバー14が設けられており、その下端部14aが図2(a)に示すように可動体13に連結固定されて、前記ロッド12a(図1)の伸縮に伴って昇降する可動体13を上下に案内して、可動体13がスムースに昇降できるようにしてある。
【0022】
ベルト3の材質は、樹脂製が適するが、可撓性のある薄板鋼板等を使用することもできる。いずれの場合も、物品Wを掬い上げるときに、物品Wが滑りにくい(物品Wを掬い易い)もので、物品Wが付着し難い(ベルトから降ろし易い)ものが適する。
【0023】
(支持具)
図1に示す物品移載装置の場合は、図5(a)、(b)に示すように、ベルト3の先方に板状の支持具15を設けることもできる。支持具15はフレーム1に対向させてフレーム1の上部から下方に向けて取付けることができる。支持具15を設けることにより、ベルト3の上に掬い上げた物品Wをベルト3の先方から支持して、ベルト3からの物品Wの落下を防止することができる。支持具15の形状、構造、材質等は、物品Wの支持に適するものにする。支持具15は図5(a)の矢印X−X方向に往復移動可能とすることもできる。
【0024】
(物品移載装置が二つ配置された場合の実施形態)
本願発明は図1〜図5(a)、(b)に示す物品移載装置を二つ対向配置して、二つの物品移載装置の移載部4(移動体2及びベルト3:図5(a)、(b))を互いに向き合わせて配置することもできる。この場合、二つの物品移載装置の駆動体12は二つの移動体2に共用とすることも別々にすることもできる。
【0025】
(二つの移載部が一つのフレームに設けられた場合の実施形態)
本願発明の移載装置は、図8に示すように、一つのフレーム1に、二つの移載部4を対向させて設けることもできる。図8の二つの移載部4は図1の物品移載装置の移載部4と同じ構成であり、移動体2の外周にベルト3が周回され、ベルト3の周回方向任意箇所が下連結部22に固定されてリング状にしてある。
【0026】
図8のフレーム1は二枚の板材20を対向配置し、その上部を上連結部21で連結し、下部を下連結部22で連結して中空箱状にしてある。夫々の板材20は下方略半分に窓23が開口されている。夫々の板材20の幅方向両辺側には図1のガイドと同様に縦から横に連続する溝状のガイド8(図10)が略L字状に形成されている。二枚の板材20の夫々に形成されたガイド8の溝は、内向きに開口して開口部同士が互いに対向している。
【0027】
前記両板材20の対向するガイド8には移動体2の幅方向両端部が差し込まれている。この場合の移動体2もガイド8に沿って曲がるようにしてあり、図1の移動体2と同じく、多数本の細長の板材を屈曲可能に連結してシャッター状にしてある。図8の移動体2もその幅方向両端部がガイド8に差し込まれて、ガイド8の曲がりに沿って縦−横方向に連続して往復移動(連続往復スライド)可能としてある。
【0028】
図8の夫々の移動体2にもベルト3が周回されている。図8のベルト3も図1のベルト3と同様に、移動体2の表側と裏側に周回させて、ベルト3の周回方向両端部16a、16bをフレーム1の下連結板22に固定して一定長のリング状にしてある。
【0029】
図8のようにリング状に周回されたベルト3は、移動体2が縦−横方向に移動(スライド)すると、その移動に伴って図1のベルト3と同様に移動体2の表側と裏側を周回移動する。
【0030】
図8の移動体2の押し下げと引き上げもエアシリンダとかモータ等の駆動体12により行われる。駆動体12は図8の上連結部21に搭載されている。図8では図1の場合と同様にエアシリンダ12が使用され、その横に2本のガイドバー14が配置されている。エアシリンダ12のロッド12aもガイドバー14の下部も図9(a)〜(d)に示すように、上連結部21から下方に突出して、移動体2の上端部に連結されている可動体13に連結されて、ロッド12aを伸ばすと可動体13が押し下げられ、ロッド12aを縮めると可動体13が引き上げられ(引き戻され)て、移動体2が上方にスライドするようにしてある。
【0031】
(図8の物品移載装置の使用例)
図8の二つの移載部4の移動体2及びベルト3の先端部が図9(a)に示すように離れている状態(二つの移動体2の先端部間に空間がある状態)から、図9(b)に示すように二つの移動体2を同時に下方に押し下げると、二つの移載部4の先端部が互いに接近する方向に周回移動して両先端部間が閉塞される。このとき、図9(a)に示すように二つの移載部4の先端部間の空間に、受け皿25に載せた物品Wを送り込んでおくと、受け皿25の両側方に垂れている物品Wの両端部が、図9(b)に示す対向する二つの移載部4の先端部で押されて図9(b)のように受け皿25の下に押し込まれる。
【0032】
図9(b)の状態から、受け皿25を引き抜くと図9(c)のように、二つの移載部4の上には物品Wだけが残る。図9(c)の状態で二つの移載部4の移動体2を引き戻すと、図9(d)のように二つの移載部4の先端部間に空間ができて、二つの移載部4のベルト3の上に載っていた物品Wが前記空間に待機している受け材26の上に降ろされる。
【0033】
(移動体の他例)
図1、図2に示す移動体2は多数本の細長板材を屈曲可能に連結したものでるが、本願発明における移動体2は、図12(a)〜(c)に示すように、一枚の薄板(鋼材、樹脂板等)の内面に間隔をあけて溝24を設け、夫々の溝24を板材20の横幅方向全長に亘って設けて、その溝24部分を屈曲或いは湾曲可能なヒンジ構造にして、縦−横方向に曲がって往復スライド可能としたものであってもよい。
【0034】
(ベルトの端部固定構造の他例)
図1、図2に示すベルト3は面ファスナーとネジを使用してフレーム1に固定してあるが、本願発明におけるベルト3の固定構造は、図10〜図13のようにすることもできる。図10、図11に示す固定構造は、図8に示すように対向配置されている2枚の板材20の夫々のコーナー部30に開口された止め孔31(図8、図13)に、図13に示す横長の受け材32の両端部32aを差し込んで取付け、移動体2の外周に周回させたベルト3の両端部16a、16b(図12(c))を、図13に示す横長の嵌合具33の横長口34に図12(c)のように差し込んで横長口34の反対側に引き出し、その状態でベルト3の両端部16a、16bを指で引いて、両端部16a、16bに張り(テンション)を持たせ、その状態で図12(c)のように嵌合具33を受け材32の外側に被せて、ベルト3の両端部16a、16bを受け材32と嵌合具33の間に挟んで固定する。更に、図12(c)、図13のように嵌合具33の長手方向両端に形成されている止め孔35にネジ36を差込み、そのネジ36を縦板20のコーナー部30のネジ孔37(図13)にねじ込んで嵌合具33をそのコーナー部30に固定して、嵌合具33の緩み(抜け)を防止し、ベルト3にテンションを持たせてベルト3をフレーム1に固定する構造である。
【0035】
図12(b)、(c)、図13に示す受け材32は細長板をほぼU字形に折り曲げた細長板バネ状である。図12(c)、図13に示す嵌合具33は受け材32と同様に横長であり、横長口34の周縁を外側に略U字状に折り返して、ベルト3の周回方向両端部16a、16bを差し込み易くしてある。
【0036】
(フレームのガイド構造)
図1に示すフレーム1のガイド8は溝であるが、ガイド8は凸条であってもよい。その場合、図1の溝状のガイドと同様に、縦板部5aから支持部5bまで連続させる。凸条の場合は、移動体2の幅方向両端部に嵌合溝を設けるなどして、それを凸条にスライド可能に被せるようにすることができる。
【0037】
(ロボットハンド)
本願発明の物品移載装置は、ロボットハンドとして使用することもできる。この場合は、フレームに取付け部を設けて、その取付け部を直接又は他の連結具を介して間接的にロボットアームに取付け可能とする。
【0038】
(人体移動装置)
本願発明の物品移載装置は、ベッドの上に寝ている人を移動するのに使用することもできる。この場合は、移動体2を人の重さに耐え得る強度と構造にする。又、ベルトの周回移動によりベルトの上に掬い上げた人が落下しないようにするためには、図8のように一つフレーム1に移載部4を二つ対向配置した構造の物が適する。この場合、フレームにキャスターや車輪等の移動手段を設けて、ベルトの上に掬い上げた人を手軽に移動できるようにするのが良い。この場合、フレームをストレッチャーに取付けるとか、ストレッチャーの一部を本願発明の物品移載装置のフレームとすることもできる。また、図8のフレーム1をロボットアームに取付ければ、人を別途に載せたり、ベッドから人を移動したりする介護ロボットを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明の物品移載装置は、食品、工業製品、機械部品、農産物、魚介物といった各種物品の移載(移動を含む)に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 フレーム
2 移動体
3 ベルト
3a ベルトの表面側
3b ベルトの裏面側
4 移載部
5 縦フレーム
5a 縦板部
5b 支持部
6 上連結部
7 下連結部
8 ガイド
9a〜9d 面ファスナー
10 ネジ
11 固定具
12 駆動体(エアシリンダ)
12a ロッド
13 可動体
14 ガイドバー
14a (ガイドバーの)下端部
15 支持具
16a、16b ベルトの両端部
20 板材
21 上連結部
22 下連結部
23 窓
24 溝
25 受け皿
26 受け材
30 板材のコーナー部
31 止め孔
32 受け材
32a 受け材の両端部
33 嵌合具
34 横長口
35 止め孔
36 ネジ
37 ネジ孔
T テーブル
W 物品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動可能な移動体の表面(上面)側と裏面(下面)側にベルトがリング状に周回され、移動体をベルトの内側で先方に移動させるとベルトが移動体の移動方向に繰り出されてベルト先方の物品をベルトに掬い上げることができ、移動体がベルト内で戻り移動するとベルトが引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができる物品移載装置において、フレームと、フレームに往復移動可能に設けられた移動体と、移動体の表面側と裏面側に周回されたベルトを備え、前記移動体はその駆動側を縦移動させて送り出すと先端側が先方に横移動し、駆動側を縦移動させて引き戻すと先端側が横移動して引き戻され、前記ベルトは周回方向任意箇所がフレームに固定されてリング状であり、リング状のベルトは移動体の駆動側が縦移動して先端側が横移動するとその横移動方向先方に繰り出されて、ベルト先方の物品をベルトの上に掬い上げることができ、移動体の駆動側が縦方向に引き戻されて先端側が横方向に引き戻されると、移動体の先端側の戻り方向に引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができるようにしたことを特徴とする物品移載装置。
【請求項2】
請求項1記載の物品移載装置において、移動体が、縦−横方向に屈曲又は湾曲可能であることを特徴とする物品移載装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の物品移載装置において、移動体を縦−横方向に往復移動させる駆動体が移動体に連結されたことを特徴とする物品移載装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の物品移載装置において、フレームが、縦方向から横方向に連続して曲げられたガイドを備え、移動体を前記ガイドにセットして、移動体がガイドに沿って縦−横方向に往復移動できるようにしたことを特徴とする物品移載装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の物品移載装置において、ベルトの先方に、ベルトで掬い上げる物品を支持できる支持具を設けたことを特徴とする物品移載装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の物品移載装置を二つ備え、二つの物品移載装置は移動体及びベルトの先端側が対向して配置され、両物品移載装置の移動体の先端側を互いに前進させると両物品移載装置のベルト間にある物品を前記両ベルトの上に掬い上げることができ、両物品移載装置の移動体を互いに引き戻すと、両ベルトの上の物品を両ベルトの間に降ろすことができるようにしたことを特徴とする物品移載装置。
【請求項7】
請求項6記載の物品移載装置において、二つの物品移載装置の駆動体が、二つの移動体に共用であるか別々であることを特徴とする物品移載装置。
【請求項8】
往復移動可能な移動体の表面(上面)側と裏面(下面)側にベルトがリング状に周回され、移動体をベルトの内側で先方に移動させるとベルトが移動体の移動方向に繰り出されてベルト先方の物品をベルトに掬い上げることができ、移動体がベルト内で戻り移動するとベルトが引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができる物品移載装置において、一つのフレームと、そのフレームに往復移動可能に設けられた二つの移動体と、夫々の移動体の表面側と裏面側に周回されたベルトを備え、前記夫々の移動体はその駆動側を縦移動させて送り出すと先端側が先方に横移動し、駆動側を縦移動させて引き戻すと先端側が横移動して引き戻され、前記夫々の移動体に周回されたベルトは、周回方向任意箇所がフレームに固定されてリング状に形成され、夫々のリング状のベルトは移動体の駆動側が縦移動して先端側が横移動するとその横移動方向先方に繰り出されて、ベルト先方の物品をベルトの上に掬い上げることができ、移動体の駆動側が縦方向に引き戻されて先端側が横方向に引き戻されると、移動体の先端側の戻り方向に引き戻されてベルトの上の物品をベルトの先方に降ろすことができるようにしたことを特徴とする物品移載装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項記載の物品移載装置が、ロボットアームに取付け可能なロボットハンドであることを特徴とする物品移載装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−250825(P2012−250825A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125722(P2011−125722)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(397068056)古川機工株式会社 (10)
【Fターム(参考)】