物品空孔の検査方法および検査装置
【課題】 物品の空孔における欠陥を簡素な構成で、かつ空孔の形状が複雑で複数の開口部を有する場合にも精度良く開口部毎に検査することが可能な物品空孔の検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】 上面に検査対象の物品W底面の開口部Mに対応し、かつシャッター機構12を備えた連通孔Nを所要数有する中空のワークステージ10に、開口部Mを連通孔Nに一致させて検査対象の物品Wを載置し、物品Wの底面以外の開口部から空孔H内に状態変動を生じさせ、計測対象の開口部Mに対応する連通孔Nのシャッター12aを開とし、それ以外の開口部Mに対応する連通孔Nのシャッター12aを閉とし、計測対象の開口部Mの状態変動を計測し、その結果に基づいて当該空孔Hの欠陥の有無を判定するものである。
【解決手段】 上面に検査対象の物品W底面の開口部Mに対応し、かつシャッター機構12を備えた連通孔Nを所要数有する中空のワークステージ10に、開口部Mを連通孔Nに一致させて検査対象の物品Wを載置し、物品Wの底面以外の開口部から空孔H内に状態変動を生じさせ、計測対象の開口部Mに対応する連通孔Nのシャッター12aを開とし、それ以外の開口部Mに対応する連通孔Nのシャッター12aを閉とし、計測対象の開口部Mの状態変動を計測し、その結果に基づいて当該空孔Hの欠陥の有無を判定するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品空孔の検査方法および検査装置に関する。さらに詳しくは、エンジンの給排気のためのマニホールドなどのように空孔を有する物品における空孔の閉塞などの欠陥を検査する検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空孔を有する物品、例えばエンジンの給排気のためのマニホールドにおける空孔の欠陥(閉塞、狭窄、バリ)の有無を検査する検査手法として、下記のようなものが知られている。
【0003】
手法1:針金などを挿入して、閉塞・狭窄状況を調べる
手法2:内視鏡と光ファイバ光源などを挿入して目視で調べる
手法3:1つの開口部から光を照射し、他の開口部での光量を検知することにより閉塞、狭窄状態を判定する
手法4:1つの開口部から超音波を放射し、他の開口部での音量を検知することにより閉塞、狭窄状態を判定する(特許文献1参照)
手法5:1つの開口部から水を注入し、他の開口部まで水が流れるか否かにより閉塞を判定する。
【0004】
前記各検査手法の中では、手法2の目視検査が最も一般的であるものといえるが、この手法は大変な手間を要するとともに、精度も低く、欠陥を見逃すことも多いという難点がある。
【0005】
また、光(手法3)や超音波(手法4)を用いた検査手法は、いずれも、空孔の形状が複雑である場合には、その伝達途中の損失およびノイズ混入の度合いが大きくなり、正確な判定が困難である。また、総じて設備が大がかりなものとなり、コストが増大するといった問題もある。
【特許文献1】特開2000−338090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、物品の空孔における欠陥を簡素な構成で、かつ空孔の形状が複雑で複数の開口部を有する場合にも精度良く開口部毎に検査することが可能な物品空孔の検査方法および検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の物品空孔の検査方法は、空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査方法であって、上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有する中空のワークステージに、前記開口部を前記連通孔に一致させて前記物品を載置する手順と、前記物品の底面以外の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順と、計測対象の開口部に対応する連通孔のシャッターを開とし、それ以外の開口部に対応する連通孔のシャッターを閉とする手順と、前記計測対象の開口部の状態変動を計測する手順と、計測された状態変動に基づいて当該空孔の欠陥の有無を判定する手順とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の物品空孔の検査方法においては、空孔が反対側に開口する一対の開口部を底面以外に有し、その一方の開口部を閉塞させながら、他方の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順を含むようにされてもよい。
【0009】
本発明の物品空孔の検査装置は、空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査装置であって、前記空孔内部に状態変動を生じさせる状態変動生成手段と、前記状態変動生成手段により生じさせられた空孔内の状態変動を計測する状態変動計測手段と、制御装置と、中空のワークステージとを備え、
前記制御装置が、状態変動生成手段および状態変動計測手段を制御する制御部と、状態変動計測手段の計測結果に基づいて空孔の欠陥の有無を判定する判定部とを有し、前記ワークステージが、上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有し、前記状態変動計測手段が、前記ワークステージ内において前記連通孔を介して空孔内の状態変動を計測できるよう配設されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の物品空孔の検査装置においては、状態変動生成手段がファンとされ、状態変動計測手段が流量計または流速計とされ、ワークステージに連通管により接続された、フィルター機能を有する空気タンクが付設され、前記ファンが、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてもよく、あるいはファンおよび閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてもよい。なお、ファンはブロワーなどの空気や気体に圧力を与えて送り出す流体機械とされてもよい。
【0011】
また、本発明の物品空孔の検査装置においては、状態変動生成手段が電磁波を送信する送信アンテナを有する送信部とされ、状態変動計測手段が電磁波を受信する受信アンテナを有する受信部とされ、ワークステージの内面に電波吸収体からなるシート状部材が貼付され、前記送信部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてもよく、あるいは送信部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてもよい。
【0012】
さらに、本発明の物品空孔の検査装置においては、状態変動生成手段が音波を送波するスピーカを有する送波部とされ、状態変動計測手段が音波を受波するマイクロホンを有する受波部とされ、ワークステージの内面に音波吸収体からなる板状部材が貼付され、前記送波部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてもよく、あるいは送波部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてもよい。
【0013】
さらに、本発明の物品空孔の検査装置においては、ワークステージの上面に検査対象の物品が載置されたことを検知する圧力センサが配設されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物品における空孔の形状が複雑で、複数の開口部を有する場合にも精度良く開口部毎に検査することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
発明の概要
本発明の物品空孔の検査方法は、物品の空孔内に外乱による影響が少ない状態変動を一方の開口部から他方の開口部に向けて生じさせ、その状態変動を計測しそれらを欠陥のない物品の計測値と比較して閉塞などの欠陥を検査するものである。そのため、検査装置は、少なくとも状態変動を生じさせる状態変動生成手段と、その状態変動を計測する状態変動計測手段とを備えてなるものとされる。ここで、状態変動生成手段としては、ファン、電磁波を放射する送信アンテナを有する電磁波送信手段、音波を送波するスピーカを有する送波手段などがあり、また状態変動計測手段としては、前記各手段に対応した計測手段、例えば流量計、受信アンテナを有する受信手段およびマイクロホンを有する受波手段などがある。
【0017】
実施形態1
本発明の実施形態1に係る物品における空孔の検査方法に適用される検査装置を図1に概略図で示し、図2にブロック図で示す。また、検査装置の外観を図3に斜視図で示す。
【0018】
検査装置Aは、図1および図2に示すように、例えば図5に示すような物品(以下、ワークという)Wの空孔Hに空気の流れを生じさせるファン1と、前記空気の流れの量(流量)を計測する流量計2と、圧力センサ3と、フットスイッチ4と、遅延切断スイッチ5と、報知部6と、流量表示部7と、これらを制御しかつに欠陥の有無を判定する制御装置8とを備えるとともに、図3に示すように、中空例えば箱形のワークステージ10と、ワークWの空孔H内に導入する空気のバッファ機能および前記空気を清浄化するフィルタ機能を具備する空気タンク20と、この空気タンク20とワークステージ10内部空間とを連通させる連通管30とを備えてなるものとされる。
【0019】
ファン1は、ワークWの空孔Hの1つの開口部(実施形態1では、後述の第1開口部M1(図5参照))に取り付けられ、この開口部(第1開口部M1)を介して空気を空孔H内から吸引し、これにより空気タンク20、連通管30およびワークステージ10の内部空間を通過した空気が、空孔Hの他の1つの開口部(実施形態1では、後述の第2開口部M2〜第4開口部M4のいずれか(図5参照))から空孔H内に流入して空気の流れを形成するよう動作するものとされる。なお、ファン1は、ブロワーなどの空気や気体に圧力を与えて送り出す流体機械とされてもよい。
【0020】
また、ファン1は、所望の空気の流れを空孔H内に形成できるように、制御装置8により回転数が調節される。
【0021】
流量計2は、高精度の気体流量計測がなし得るように、MEMS(MicroElectro Mechanical System)式、またはサーミスタ式の流量計とされて、後述するように、ワークステージ10に設けられた連通孔Nの空気導入側に配設される。
【0022】
これは、実施形態1の検査装置Aにおいては、空孔Hが狭窄などのない健全な状態であれば空孔H内の空気の流れが層流となるようにされる一方、狭窄などがあれば乱流が発生するようにされていることを利用し、その影響による風量の増減を調べることによって狭窄の有無を判定するものとされていることによる。そのため、微妙な流量の変化を検出する必要性が高いので、MEMS式流量計等を用いるものとされている。
【0023】
圧力センサ3は、ワークステージ10の適宜位置に配設されて、ワークステージ10にワークWが載置されるとオンするものとされる。つまり、圧力センサ3は、ワークステージ10にワークWが載置されているか否かを検知するものとされる。
【0024】
フットスイッチ4は、ワークステージ10の近傍適宜位置に配設されて、オペレータの足踏み操作により検査装置Aをオンするものとされる。
【0025】
遅延切断スイッチ5は、フットスイッチ4がオンされてから所定時間経過すると、検査装置Aをオフするものとされる。
【0026】
報知部6は、例えば、警報ブザー6aや警報灯6bを備えてなるものとされ、制御装置8により欠陥があると判定された場合、警報ブザー6aを吹奏したり、警報灯6bを点滅させたりする。
【0027】
流量表示部7は、例えばデジタル表示装置とされる。
【0028】
制御装置8は、ファン1の回転数を制御したり、フットスイッチ4のオン信号により検査装置Aをオンしたり、遅延切断スイッチ5のオン信号により検査装置Aをオフするなどする制御部8aと、流量計2の計測結果に基づいて欠陥の有無を判定する判定部8bとを有するものとされる。
【0029】
判定部8bは、良品の流量と不良品の流量とに基づいて作成された判定基準により、空孔Hの欠陥の有無を判定する。より具体的には、あらかじめ健全品におけるデータを蓄積した上で、所定時間内における風量が健全品のそれと比較して5%以上の差があるとき、あるいは風速(ある一定時間における風量の微分値)が健全品のそれと比較して5%以上の差があるときに不良品とされる。
【0030】
ワークステージ10は、図3に示すように、上面にはワークWが載置されるゴム板からなるプレート11が付設されて気密性が確保されるとともに、プレート11およびワークステージ10の上面部材を貫通するよう所定数の連通孔N1、N2、N3が設けられる。この連通孔Nの数は、検査対象のワークW底面の最大の開口部数に一致させられている。
【0031】
また、ワークステージ10の上面には、ワークWを固定するクランプC(図5参照)が適宜配置で設けられている。
【0032】
連通孔N1、N2、N3には、それぞれシャッター機構12および流量計2が設けられる。
【0033】
シャッター機構12を設けるのは、ワークステージ10は、各種ワークWに適用できるように、載置される面の開口部(第2開口部M2〜第4開口部M4)が最大数であるワークWに合わせて、その連通孔N1〜N3の数が設定されているため、開口部の数が少ないワークWとの関係では、使用されない連通孔N1〜N3が生じるために、そのような連通孔N1〜N3を閉塞する必要があるからである。
【0034】
また、連通孔N1、N2、N3間には遮蔽板13、13が配設されて、他の孔N1〜N3に導入される空気の影響を防止するようにされている。遮蔽板13の高さ寸法は、底面から1/3程度の高さの空気流路がワークステージ10内に形成されるよう調整されている。
【0035】
シャッター機構12は、図4に示すように、板状部材とされたシャッター12aを連通孔N1、N2、N3と重ならない開位置と、連通孔N1、N2、N3と重なる閉位置との間で進退させるものとされる。
【0036】
また、シャッター12aに、図示しない1または複数の貫通孔を設け、貫通孔のいずれかが連通孔N1、N2、N3と重なったときに、シャッターが「開」になるようにするとともに、前記貫通孔のサイズにより空気の流量を調節できるように構成してもよい。
【0037】
このように、連通孔N1〜N3を独立して任意に開閉可能に構成することによって、検査対象の開口部を特定することも可能となる。
【0038】
図5に、ワークWをワークステージ10に載置した様子を示す。図示例におけるワークWは、4つの開口部M1、M2、M3、M4を有する空孔Hが内部に形成されたエキゾーストマニホールドであり、第1開口部M1が単独でワークW上の1つの平面に開口し、その他の開口部、つまり第2開口部M2〜第4開口部M4は、ワークWの他の1つの平面(底面)に面一に開口している。
【0039】
また、図5に示すように、ワークWは、第2開口部M2〜第4開口部M4が連通孔N1、N2、N3と重なるように、底面を下に向けてプレート11上に載置され、その状態でクランプCにより固定される。
【0040】
この状態において、ファン1は、リング磁石14により第1開口部M1に取り付けられるとともに、パッキン15により第1開口部M1との接続部分の気密性が確保されている。すなわち、ファン1を空孔Hの開口部に取り付けるためのアタッチメント構造は、磁石14の吸着力を利用したものとされる。
【0041】
ワークステージ10の連通孔N1〜N3は、図5に示すように、ワークWの第2開口部M2〜第4開口部M4と1対1で対向するように設けられているとともに、前述したように、当該連通孔N1〜N3を通過する空気の流量を計測する流量計2がそれぞれに設けられている。この流量計2の空気導入部にはフィルタ(図示省略)が配設されて、空気に含有している粉塵の確実な除去が図られている。
【0042】
この場合、連通孔N1〜N3の径方向各位置にて風量を計測し得るように、流量計2を連通孔N1〜N3の径方向に移動させるための移動機構16をワークステージ10に設けるようにしてもよい。このような移動機構16は、例えば棒状のガイド部材と、ボールねじとの組み合わせにより実現される。
【0043】
空気タンク20は、例えば空気吸込口にフィルタが設けられてフィルタ機能を有するものとされる。
【0044】
連通管30は、管内の空気が層流となるようにその径が調整されている。
【0045】
しかして、かかる構成の検査装置Aにおいては、ファン1により第1開口部M1から空気を吸引することにより、バッファ機能およびフィルタ機能を有する空気タンク20、所定長さの円筒体である連通管30および箱形のワークステージ10の内部を通過した空気が、第2開口部M2〜第4開口部M4から空孔H内に流入するものとされ、第2開口部M2〜第4開口部M4から流入する空気の流量計測値に基づいて、判定部8bにより空孔Hの欠陥の有無が判定される。
【0046】
また、空気タンク20のバッファ機能およびワークステージ10自体の内部空間容積により空孔Hに供給される気体の温度変化を抑制することができる。つまり、空気タンク20が恒温槽として機能する。したがって、MEMS式流量計のように、所定熱量で加熱された素子温度の変動に基づいて気体流量を検出する流量計においては、ノイズである環境温度変化の影響を抑えて高精度の流量計測を実現することができる。敷衍するならば、現時点で利用可能なMEMS式流量計においても、環境温度変化の影響を補償する補償器が備えられるのが通常である。しかしながら、そのような補償器のレスポンスは現時点で十分に速いとはいえないので、空気タンク20等によりバッファされ、温度変化が抑制された空気の流れを計測対象とすることにより精度向上が見込める。
【0047】
さらに、空気タンク20のフィルタ機能により、流量計測対象の空気から粉塵を取り除くことができる。これにより、流量計2の計測精度を向上させることができる。すなわち、MEMS式流量計は、その内部に空気を導入する導入孔の径が微小であるために、粉塵等の影響を受けやすい。したがって、空気タンク20のフィルタ機能により計測対象の空気から粉塵を取り除くことによって検査精度が向上する。
【0048】
なお、空気の流量に代えて、空気の流れの静圧または流速を計測し、その計測結果に基づいて欠陥の有無を判定するものとしてもよい。例えば、静圧が一定値以上あれば、欠陥が発生したとし、流速が一定値以下であれは、欠陥が発生したとするようにしてもよい。
【0049】
実施形態2
本発明の実施形態2に係る検査装置A1の要部を図5に示す。実施形態2は、実施形態1を改変してなるものであり、ワークW1の空孔H1が、真反対の向きに開口する1対の開口部M11、M12と、それ以外の開口部M13とを有する場合に、ヘッドホン式のアタッチメント構造Bによりファン1AをワークW1に取り付けてなるものとされる。実施形態2のその余の構成は、実施形態1と同様とされる。
【0050】
すなわち、実施形態2のファン1Aのアタッチメント構造Bは、適宜サイズのコの字形アーム50の一方端部にファン1Aを設け、これと向かい合わせになるように、アーム50の他方端部に閉塞部材17を設けてなるものとされる。
【0051】
ファン1Aは、前記一対の開口部M11、M12の一方(M11)にリング磁石14Aにより取り付けられる。閉塞部材17も同様に、リング磁石14Bにより前記一対の開口部M11、M12の他方(M12)に取り付けられる。図中、符号15A,15Bはパッキンを示す。
【0052】
このとき、ワークW1は、前記それ以外の開口部M13がワークステージ10の連通孔N1〜N3のいずれかと重なるように、ワークステージ10に載置される。この場合、使用されない連通孔は、シャッター機構12により閉塞される。
【0053】
この構成により、ファン1Aにより空気を吸引する開口部(M11)以外の開口部(M12、M13)が1つの平面に開口していない場合にも、実施形態1と同様にして欠陥の有無を検査できる。
【0054】
実施形態3
本発明の実施形態3に係る物品における空孔の検査方法に適用される検査装置の概略構成を図7にブロック図で示す。
【0055】
図7に示すように、検査装置A2は、電磁波を放射する送信アンテナおよび解析装置を備えた送信解析部60と、物品Wの空孔Hを通過してきた電磁波を受信して解析する受信アンテナおよび解析装置を備えた受信解析部62と、送信解析部60および受信解析部62を制御する制御装置8Aと、箱形のワークステージ10A(図9参照)とを主要構成要素として備えてなる。この制御装置8Aの制御には、送受信の調整、周波数調整およびインピーダンス・マッチングなどの処理も含まれるものとされる。
【0056】
図8に、検査装置A2の主要部のより具体的な構成の一例を示す。
【0057】
検査装置A2は、図8に示すように、物品Wの空孔Hの一端より内部に電磁波を放射する送信部63と、送信部63から送信される電磁波(以下、送信電磁波という)および受信部65により受信される電磁波(以下、受信電磁波という)に対して周波数解析処理を行う周波数解析装置66と、送信電磁波および受信電磁波の周波数を制御しかつ送受信のタイミングを制御する高周波制御部8cと、前記周波数解析装置66による解析結果を基準値と比較して良否の判定をなす判定部8dと、前記各部を統括的に制御する統括制御部8eとを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0058】
前記説明および図8から明らかなように、送信部63と周波数解析装置66とにより送信解析部60が構成され、受信部65と周波数解析装置66とにより受信解析部62が構成され、高周波制御部8cと判定部8dと統括制御部8eとにより制御装置8Aが構成されるのが理解される。
【0059】
図9に、ワークステージ10Aに載置されたワークWとの関連における送信部63および受信部65の配置を示す。ワークステージ10Aは、内面および遮蔽板13に電波吸収体のシートが貼付されていること、および連通管30と接続されていないことを除いて実施形態1のワークステージ10と同様の構成とされている。つまり、ワークステージ10A上面のワークWの開口部に対応する箇所には連通孔が設けられるとともに、その連通孔にはシャッター機構12が設けられている。なお、図9において、図5と同一の符号を付したものは、同一または類似の構成要素を示す。
【0060】
図9に示すように、送信部63はワークWの空孔Hの1つの開口部に取り付けられ、この開口部を介して電磁波を放射し、この放射された電磁波が空孔H内を通過して空孔Hの他の開口部から放射されるものとされる。そして、この放射された電磁波を受信するようワークステージ10A上面内側の連通孔が設けられた箇所には、シャッター機構12を介して受信部65が配設されている。
【0061】
図10に、送信部63の送信アンテナおよび受信部65の受信アンテナのアンテナ部70を平面アンテナにより構成した一例を斜視図で示す。
【0062】
アンテナ部70は、図10に示すように、平面アンテナ71と、平面アンテナ71の送信あるいは受信範囲をアンテナ部70が配置される空孔Hの開口に合わせて調整するための窓72を有するカバー73と、平面アンテナ71を保持している枠74とを備えてなるものとされ、枠74が適宜手段によりシャッター機構12に装着されて検査がなされる。
【0063】
周波数解析装置66は、例えば高速フーリエ変換による周波数解析を行うものとされる。このような周波数解析装置66は、CPU(Central Processing Unit: 中央演算処理装置)、メモリおよび入出力装置を含むコンピュータを用い、周波数解析処理に対応するプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0064】
高周波制御部8cは、送信部63における送信周波数およびそのタイミングを制御し、かつ受信部65における受信周波数およびそのタイミングを制御するものとされる。なお、その具体的な構成は、この種の高周波制御における公知の高周波制御手段と同様とされている。
【0065】
判定部8dは、受信電磁波の周波数解析装置66による解析結果を良品についての同様の解析結果(基準値)と比較してその良否を判定するものとされる。なお、このような判定部8dは、コンピュータに対応するプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0066】
判定部8dにおいては、図11に示すように、物品Wの空孔を導波管と想定し、その導波管の伝達特性(通過特性)を良品の伝達特性(基準値)と比較するものとされる。
【0067】
ここで、物品の空孔が、例えば図11(a)に示すような矩形導波管として扱える場合には、そのカットオフ周波数(単位:ギガヘルツ)fCは、概してその長辺w(単位:ミリメートル)により規定される(図12参照)。したがって、この場合には、送信電磁波の周波数は、空孔の長辺に基づいて求められたカットオフ周波数よりも高い周波数となるように設定される。
【0068】
また、物品の空孔が、例えば図11(b)に示すような円形導波管として扱える場合には、そのカットオフ周波数(単位:ギガヘルツ)fCは、概してその径d(単位:ミリメートル)により規定される(図12参照)。したがって、この場合には、送信電磁波の周波数は、空孔の径に基づいて求められたカットオフ周波数よりも高い周波数となるように設定される。
【0069】
しかして、かかる構成とされた検査装置A2においては、判定部8dは受信電磁波について周波数解析装置66により周波数解析して得られた結果を、空孔に欠陥のない物品(以下、健全品とも称する)の場合と比較し、物品Wの空孔Hの良否を判別するものとされる。
【0070】
このように、実施形態3の検査装置A2においては、受信部65が電波吸収体のシートが貼付されたワークステージ10A内に収容され、しかも各受信部65が電波吸収体のシートが貼付された遮蔽板13により仕切られているので、反射電磁波などのノイズの影響を抑制して計測がなされ、計測精度が向上する。
【0071】
また、各受信部65にシャッター機構12が介装されているので、開口部毎に検査することが可能となる。
【0072】
実施形態4
本発明の実施形態4に係る検査装置A3の要部を図13に示す。実施形態4は、実施形態3を改変してなるものであり、ワークW1の空孔H1が、真反対の向きに開口する1対の開口部M11、M12と、それ以外の開口部M13とを有する場合に、ヘッドホン式のアタッチメント構造Bにより送信部63をワークW1に取り付けてなるものとされる。実施形態4のその余の構成は、実施形態2と同様とされる。
【0073】
すなわち、実施形態4の送信部63のアタッチメント構造Bは、適宜サイズのコの字形アーム50の一方端部に送信部63を設け、これと向かい合わせになるように、アーム50の他方端部に閉塞部材17を設けてなるものとされる。この場合、閉塞部材17からの電磁波の反射を抑えるため、閉塞部材17内面に電波吸収体のシートが貼付されるのが好ましい。
【0074】
送信部63は、前記一対の開口部M11、M12の一方(M11)にリング磁石14Aにより取り付けられる。閉塞部材17も同様に、リング磁石14Bにより前記一対の開口部M11、M12の他方(M12)に取り付けられる。図中、符号15A,15Bはパッキンを示す。
【0075】
このとき、ワークW1は、前記それ以外の開口部M13がワークステージ10Aの連通孔のいずれかと重なるように、ワークステージ10Aに載置される。この場合、使用されない連通孔は、シャッター機構12により閉塞される。
【0076】
この構成により、送信部63により電磁波が放射される開口部(M11)以外の開口部(M12、M13)が1つの平面に開口していない場合にも、実施形態3と同様にして欠陥の有無を検査できる。
【0077】
実施形態5
本発明の実施形態5に係る物品における空孔の検査方法に適用される検査装置の概略構成を図14にブロック図で示す。
【0078】
図14に示すように、検査装置A4は、音波を送波するスピーカ81および発振回路82を備えた送波部80と、物品Wの空孔Hを通過してきた音波を受波するマイクロホン85および増幅器86を備えた受波部84と、送波部80および受波部84を制御する制御装置8Bと、箱形のワークステージ10B(図16参照)とを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0079】
図15に、制御装置8Bのより具体的な構成を示す。
【0080】
制御装置8Bは、図15に示すように、送波部80における送波の制御をなす同期制御部8fと、受波部84により受波された音波の音波量およびスペクトラムを解析する受波解析部8gと、受波解析部8gによる解析結果を良品についての同様の解析結果(基準値)と比較してその良否を判定する判定部8hとを有するものとされる。
【0081】
図16に、ワークステージ10Bに載置されたワークWとの関連における送波部80および受波部84の配置を示す。ワークステージ10Bは、内面および遮蔽板13に音波吸収体のボード例えばロックウールボードが貼付されていること、および連通管30と接続されていないことを除いて実施形態1のワークステージ10と同様の構成とされている。つまり、ワークステージ10B上面のワークWの開口部に対応する箇所には連通孔が設けられるとともに、その連通孔にはシャッター機構12が設けられている。なお、図16において、図5と同一の符号を付したものは、同一または類似の構成要素を示す。
【0082】
図16に示すように、送波部80はワークWの空孔Hの1つの開口部に取り付けられ、この開口部を介して音波を送波し、この送波された音波が空孔H内を通過して空孔Hの他の開口部から放射されるものとされる。そして、この放射された音波を受波するようワークステージ10B上面内側の連通孔が設けられた箇所には、シャッター機構12を介して受波部84が配設されている。
【0083】
しかして、かかる構成とされた検査装置A4においては、判定部8hは受波した音波の音量およびスペクトラムについて受波解析部8gにより得られた結果を、空孔に欠陥のない物品(以下、健全品とも称する)の場合と比較し、物品Wの空孔Hの良否を判別するものとされる。
【0084】
このように、実施形態5の検査装置A4においては、受波部84が音波吸収体のボードが貼付されたワークステージ10B内に収容され、しかも各受波部84が音波吸収体のボードが貼付された遮蔽板13により仕切られているので、反射音などのノイズの影響を抑制して計測がなされ、計測精度が向上する。
【0085】
また、各受波部84にシャッター機構12が介装されているので、開口部毎に検査することが可能となる。
【0086】
実施形態6
本発明の実施形態6に係る検査装置A5の要部を図17に示す。実施形態6は、実施形態5を改変してなるものであり、ワークW1の空孔H1が、真反対の向きに開口する1対の開口部M11、M12と、それ以外の開口部M13とを有する場合に、ヘッドホン式のアタッチメント構造Bにより送波部80をワークW1に取り付けてなるものとされる。実施形態6のその余の構成は、実施形態2と同様とされる。
【0087】
すなわち、実施形態6の送波部80のアタッチメント構造Bは、適宜サイズのコの字形アーム50の一方端部に送波部80を設け、これと向かい合わせになるように、アーム50の他方端部に閉塞部材17を設けてなるものとされる。この場合、閉塞部材17からの音波の反射を抑えるため、閉塞部材17内面に音波吸収体のボードが貼付されるのが好ましい。
【0088】
送波部80は、前記一対の開口部M11、M12の一方(M11)にリング磁石14Aにより取り付けられる。閉塞部材17も同様に、リング磁石14Bにより前記一対の開口部M11、M12の他方(M12)に取り付けられる。図中、符号15A,15Bはパッキンを示す。
【0089】
このとき、ワークW1は、前記それ以外の開口部M13がワークステージ10Bの連通孔のいずれかと重なるように、ワークステージ10Bに載置される。この場合、使用されない連通孔は、シャッター機構12により閉塞される。
【0090】
この構成により、送波部80により音波が放射される開口部(M11)以外の開口部(M12、M13)が1つの平面に開口していない場合にも、実施形態5と同様にして欠陥の有無を検査できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、空孔の形状が複雑で開口部が複数存在する物品における空孔の検査に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態1に係る検査装置の概略図である。
【図2】同検査装置のブロック図である。
【図3】同検査装置の外観を示す斜視図である。
【図4】同検査装置のシャッター機構の概略図である。
【図5】同検査装置による検査状態を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る検査装置の要部概略図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る検査装置の概略ブロック図である。
【図8】同検査装置の主要部の詳細ブロック図である。
【図9】同検査装置における送信部と受信部との配置を示す概略図である。
【図10】送信部および受信部のアンテナを平面アンテナにより構成した例の斜視図である。
【図11】導波管の各種形状を示す平面図である。
【図12】図11に示す導波管の特性を示すテーブル図である。
【図13】本発明の実施形態4に係る検査装置の要部概略図である。
【図14】本発明の実施形態5に係る検査装置の概略ブロック図である。
【図15】同検査装置の制御装置のブロック図である。
【図16】同検査装置における送波部と受波部との配置を示す概略図である。
【図17】本発明の実施形態6に係る検査装置の要部概略図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ファン
2 流量計
3 圧力センサ
4 フットスイッチ
5 遅延切断スイッチ
6 報知部
7 流量表示部
8 制御装置
8a 制御部
8b 判定部
10 ワークステージ
11 プレート
12 シャッター機構
12a シャッター
13 遮蔽板
14 リング磁石
15 パッキン
20 空気タンク
30 連通管
A 検査装置
C クランプ
H 空孔
M 開口部
N 連通孔
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品空孔の検査方法および検査装置に関する。さらに詳しくは、エンジンの給排気のためのマニホールドなどのように空孔を有する物品における空孔の閉塞などの欠陥を検査する検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空孔を有する物品、例えばエンジンの給排気のためのマニホールドにおける空孔の欠陥(閉塞、狭窄、バリ)の有無を検査する検査手法として、下記のようなものが知られている。
【0003】
手法1:針金などを挿入して、閉塞・狭窄状況を調べる
手法2:内視鏡と光ファイバ光源などを挿入して目視で調べる
手法3:1つの開口部から光を照射し、他の開口部での光量を検知することにより閉塞、狭窄状態を判定する
手法4:1つの開口部から超音波を放射し、他の開口部での音量を検知することにより閉塞、狭窄状態を判定する(特許文献1参照)
手法5:1つの開口部から水を注入し、他の開口部まで水が流れるか否かにより閉塞を判定する。
【0004】
前記各検査手法の中では、手法2の目視検査が最も一般的であるものといえるが、この手法は大変な手間を要するとともに、精度も低く、欠陥を見逃すことも多いという難点がある。
【0005】
また、光(手法3)や超音波(手法4)を用いた検査手法は、いずれも、空孔の形状が複雑である場合には、その伝達途中の損失およびノイズ混入の度合いが大きくなり、正確な判定が困難である。また、総じて設備が大がかりなものとなり、コストが増大するといった問題もある。
【特許文献1】特開2000−338090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、物品の空孔における欠陥を簡素な構成で、かつ空孔の形状が複雑で複数の開口部を有する場合にも精度良く開口部毎に検査することが可能な物品空孔の検査方法および検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の物品空孔の検査方法は、空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査方法であって、上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有する中空のワークステージに、前記開口部を前記連通孔に一致させて前記物品を載置する手順と、前記物品の底面以外の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順と、計測対象の開口部に対応する連通孔のシャッターを開とし、それ以外の開口部に対応する連通孔のシャッターを閉とする手順と、前記計測対象の開口部の状態変動を計測する手順と、計測された状態変動に基づいて当該空孔の欠陥の有無を判定する手順とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の物品空孔の検査方法においては、空孔が反対側に開口する一対の開口部を底面以外に有し、その一方の開口部を閉塞させながら、他方の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順を含むようにされてもよい。
【0009】
本発明の物品空孔の検査装置は、空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査装置であって、前記空孔内部に状態変動を生じさせる状態変動生成手段と、前記状態変動生成手段により生じさせられた空孔内の状態変動を計測する状態変動計測手段と、制御装置と、中空のワークステージとを備え、
前記制御装置が、状態変動生成手段および状態変動計測手段を制御する制御部と、状態変動計測手段の計測結果に基づいて空孔の欠陥の有無を判定する判定部とを有し、前記ワークステージが、上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有し、前記状態変動計測手段が、前記ワークステージ内において前記連通孔を介して空孔内の状態変動を計測できるよう配設されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の物品空孔の検査装置においては、状態変動生成手段がファンとされ、状態変動計測手段が流量計または流速計とされ、ワークステージに連通管により接続された、フィルター機能を有する空気タンクが付設され、前記ファンが、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてもよく、あるいはファンおよび閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてもよい。なお、ファンはブロワーなどの空気や気体に圧力を与えて送り出す流体機械とされてもよい。
【0011】
また、本発明の物品空孔の検査装置においては、状態変動生成手段が電磁波を送信する送信アンテナを有する送信部とされ、状態変動計測手段が電磁波を受信する受信アンテナを有する受信部とされ、ワークステージの内面に電波吸収体からなるシート状部材が貼付され、前記送信部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてもよく、あるいは送信部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてもよい。
【0012】
さらに、本発明の物品空孔の検査装置においては、状態変動生成手段が音波を送波するスピーカを有する送波部とされ、状態変動計測手段が音波を受波するマイクロホンを有する受波部とされ、ワークステージの内面に音波吸収体からなる板状部材が貼付され、前記送波部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてもよく、あるいは送波部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてもよい。
【0013】
さらに、本発明の物品空孔の検査装置においては、ワークステージの上面に検査対象の物品が載置されたことを検知する圧力センサが配設されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物品における空孔の形状が複雑で、複数の開口部を有する場合にも精度良く開口部毎に検査することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
発明の概要
本発明の物品空孔の検査方法は、物品の空孔内に外乱による影響が少ない状態変動を一方の開口部から他方の開口部に向けて生じさせ、その状態変動を計測しそれらを欠陥のない物品の計測値と比較して閉塞などの欠陥を検査するものである。そのため、検査装置は、少なくとも状態変動を生じさせる状態変動生成手段と、その状態変動を計測する状態変動計測手段とを備えてなるものとされる。ここで、状態変動生成手段としては、ファン、電磁波を放射する送信アンテナを有する電磁波送信手段、音波を送波するスピーカを有する送波手段などがあり、また状態変動計測手段としては、前記各手段に対応した計測手段、例えば流量計、受信アンテナを有する受信手段およびマイクロホンを有する受波手段などがある。
【0017】
実施形態1
本発明の実施形態1に係る物品における空孔の検査方法に適用される検査装置を図1に概略図で示し、図2にブロック図で示す。また、検査装置の外観を図3に斜視図で示す。
【0018】
検査装置Aは、図1および図2に示すように、例えば図5に示すような物品(以下、ワークという)Wの空孔Hに空気の流れを生じさせるファン1と、前記空気の流れの量(流量)を計測する流量計2と、圧力センサ3と、フットスイッチ4と、遅延切断スイッチ5と、報知部6と、流量表示部7と、これらを制御しかつに欠陥の有無を判定する制御装置8とを備えるとともに、図3に示すように、中空例えば箱形のワークステージ10と、ワークWの空孔H内に導入する空気のバッファ機能および前記空気を清浄化するフィルタ機能を具備する空気タンク20と、この空気タンク20とワークステージ10内部空間とを連通させる連通管30とを備えてなるものとされる。
【0019】
ファン1は、ワークWの空孔Hの1つの開口部(実施形態1では、後述の第1開口部M1(図5参照))に取り付けられ、この開口部(第1開口部M1)を介して空気を空孔H内から吸引し、これにより空気タンク20、連通管30およびワークステージ10の内部空間を通過した空気が、空孔Hの他の1つの開口部(実施形態1では、後述の第2開口部M2〜第4開口部M4のいずれか(図5参照))から空孔H内に流入して空気の流れを形成するよう動作するものとされる。なお、ファン1は、ブロワーなどの空気や気体に圧力を与えて送り出す流体機械とされてもよい。
【0020】
また、ファン1は、所望の空気の流れを空孔H内に形成できるように、制御装置8により回転数が調節される。
【0021】
流量計2は、高精度の気体流量計測がなし得るように、MEMS(MicroElectro Mechanical System)式、またはサーミスタ式の流量計とされて、後述するように、ワークステージ10に設けられた連通孔Nの空気導入側に配設される。
【0022】
これは、実施形態1の検査装置Aにおいては、空孔Hが狭窄などのない健全な状態であれば空孔H内の空気の流れが層流となるようにされる一方、狭窄などがあれば乱流が発生するようにされていることを利用し、その影響による風量の増減を調べることによって狭窄の有無を判定するものとされていることによる。そのため、微妙な流量の変化を検出する必要性が高いので、MEMS式流量計等を用いるものとされている。
【0023】
圧力センサ3は、ワークステージ10の適宜位置に配設されて、ワークステージ10にワークWが載置されるとオンするものとされる。つまり、圧力センサ3は、ワークステージ10にワークWが載置されているか否かを検知するものとされる。
【0024】
フットスイッチ4は、ワークステージ10の近傍適宜位置に配設されて、オペレータの足踏み操作により検査装置Aをオンするものとされる。
【0025】
遅延切断スイッチ5は、フットスイッチ4がオンされてから所定時間経過すると、検査装置Aをオフするものとされる。
【0026】
報知部6は、例えば、警報ブザー6aや警報灯6bを備えてなるものとされ、制御装置8により欠陥があると判定された場合、警報ブザー6aを吹奏したり、警報灯6bを点滅させたりする。
【0027】
流量表示部7は、例えばデジタル表示装置とされる。
【0028】
制御装置8は、ファン1の回転数を制御したり、フットスイッチ4のオン信号により検査装置Aをオンしたり、遅延切断スイッチ5のオン信号により検査装置Aをオフするなどする制御部8aと、流量計2の計測結果に基づいて欠陥の有無を判定する判定部8bとを有するものとされる。
【0029】
判定部8bは、良品の流量と不良品の流量とに基づいて作成された判定基準により、空孔Hの欠陥の有無を判定する。より具体的には、あらかじめ健全品におけるデータを蓄積した上で、所定時間内における風量が健全品のそれと比較して5%以上の差があるとき、あるいは風速(ある一定時間における風量の微分値)が健全品のそれと比較して5%以上の差があるときに不良品とされる。
【0030】
ワークステージ10は、図3に示すように、上面にはワークWが載置されるゴム板からなるプレート11が付設されて気密性が確保されるとともに、プレート11およびワークステージ10の上面部材を貫通するよう所定数の連通孔N1、N2、N3が設けられる。この連通孔Nの数は、検査対象のワークW底面の最大の開口部数に一致させられている。
【0031】
また、ワークステージ10の上面には、ワークWを固定するクランプC(図5参照)が適宜配置で設けられている。
【0032】
連通孔N1、N2、N3には、それぞれシャッター機構12および流量計2が設けられる。
【0033】
シャッター機構12を設けるのは、ワークステージ10は、各種ワークWに適用できるように、載置される面の開口部(第2開口部M2〜第4開口部M4)が最大数であるワークWに合わせて、その連通孔N1〜N3の数が設定されているため、開口部の数が少ないワークWとの関係では、使用されない連通孔N1〜N3が生じるために、そのような連通孔N1〜N3を閉塞する必要があるからである。
【0034】
また、連通孔N1、N2、N3間には遮蔽板13、13が配設されて、他の孔N1〜N3に導入される空気の影響を防止するようにされている。遮蔽板13の高さ寸法は、底面から1/3程度の高さの空気流路がワークステージ10内に形成されるよう調整されている。
【0035】
シャッター機構12は、図4に示すように、板状部材とされたシャッター12aを連通孔N1、N2、N3と重ならない開位置と、連通孔N1、N2、N3と重なる閉位置との間で進退させるものとされる。
【0036】
また、シャッター12aに、図示しない1または複数の貫通孔を設け、貫通孔のいずれかが連通孔N1、N2、N3と重なったときに、シャッターが「開」になるようにするとともに、前記貫通孔のサイズにより空気の流量を調節できるように構成してもよい。
【0037】
このように、連通孔N1〜N3を独立して任意に開閉可能に構成することによって、検査対象の開口部を特定することも可能となる。
【0038】
図5に、ワークWをワークステージ10に載置した様子を示す。図示例におけるワークWは、4つの開口部M1、M2、M3、M4を有する空孔Hが内部に形成されたエキゾーストマニホールドであり、第1開口部M1が単独でワークW上の1つの平面に開口し、その他の開口部、つまり第2開口部M2〜第4開口部M4は、ワークWの他の1つの平面(底面)に面一に開口している。
【0039】
また、図5に示すように、ワークWは、第2開口部M2〜第4開口部M4が連通孔N1、N2、N3と重なるように、底面を下に向けてプレート11上に載置され、その状態でクランプCにより固定される。
【0040】
この状態において、ファン1は、リング磁石14により第1開口部M1に取り付けられるとともに、パッキン15により第1開口部M1との接続部分の気密性が確保されている。すなわち、ファン1を空孔Hの開口部に取り付けるためのアタッチメント構造は、磁石14の吸着力を利用したものとされる。
【0041】
ワークステージ10の連通孔N1〜N3は、図5に示すように、ワークWの第2開口部M2〜第4開口部M4と1対1で対向するように設けられているとともに、前述したように、当該連通孔N1〜N3を通過する空気の流量を計測する流量計2がそれぞれに設けられている。この流量計2の空気導入部にはフィルタ(図示省略)が配設されて、空気に含有している粉塵の確実な除去が図られている。
【0042】
この場合、連通孔N1〜N3の径方向各位置にて風量を計測し得るように、流量計2を連通孔N1〜N3の径方向に移動させるための移動機構16をワークステージ10に設けるようにしてもよい。このような移動機構16は、例えば棒状のガイド部材と、ボールねじとの組み合わせにより実現される。
【0043】
空気タンク20は、例えば空気吸込口にフィルタが設けられてフィルタ機能を有するものとされる。
【0044】
連通管30は、管内の空気が層流となるようにその径が調整されている。
【0045】
しかして、かかる構成の検査装置Aにおいては、ファン1により第1開口部M1から空気を吸引することにより、バッファ機能およびフィルタ機能を有する空気タンク20、所定長さの円筒体である連通管30および箱形のワークステージ10の内部を通過した空気が、第2開口部M2〜第4開口部M4から空孔H内に流入するものとされ、第2開口部M2〜第4開口部M4から流入する空気の流量計測値に基づいて、判定部8bにより空孔Hの欠陥の有無が判定される。
【0046】
また、空気タンク20のバッファ機能およびワークステージ10自体の内部空間容積により空孔Hに供給される気体の温度変化を抑制することができる。つまり、空気タンク20が恒温槽として機能する。したがって、MEMS式流量計のように、所定熱量で加熱された素子温度の変動に基づいて気体流量を検出する流量計においては、ノイズである環境温度変化の影響を抑えて高精度の流量計測を実現することができる。敷衍するならば、現時点で利用可能なMEMS式流量計においても、環境温度変化の影響を補償する補償器が備えられるのが通常である。しかしながら、そのような補償器のレスポンスは現時点で十分に速いとはいえないので、空気タンク20等によりバッファされ、温度変化が抑制された空気の流れを計測対象とすることにより精度向上が見込める。
【0047】
さらに、空気タンク20のフィルタ機能により、流量計測対象の空気から粉塵を取り除くことができる。これにより、流量計2の計測精度を向上させることができる。すなわち、MEMS式流量計は、その内部に空気を導入する導入孔の径が微小であるために、粉塵等の影響を受けやすい。したがって、空気タンク20のフィルタ機能により計測対象の空気から粉塵を取り除くことによって検査精度が向上する。
【0048】
なお、空気の流量に代えて、空気の流れの静圧または流速を計測し、その計測結果に基づいて欠陥の有無を判定するものとしてもよい。例えば、静圧が一定値以上あれば、欠陥が発生したとし、流速が一定値以下であれは、欠陥が発生したとするようにしてもよい。
【0049】
実施形態2
本発明の実施形態2に係る検査装置A1の要部を図5に示す。実施形態2は、実施形態1を改変してなるものであり、ワークW1の空孔H1が、真反対の向きに開口する1対の開口部M11、M12と、それ以外の開口部M13とを有する場合に、ヘッドホン式のアタッチメント構造Bによりファン1AをワークW1に取り付けてなるものとされる。実施形態2のその余の構成は、実施形態1と同様とされる。
【0050】
すなわち、実施形態2のファン1Aのアタッチメント構造Bは、適宜サイズのコの字形アーム50の一方端部にファン1Aを設け、これと向かい合わせになるように、アーム50の他方端部に閉塞部材17を設けてなるものとされる。
【0051】
ファン1Aは、前記一対の開口部M11、M12の一方(M11)にリング磁石14Aにより取り付けられる。閉塞部材17も同様に、リング磁石14Bにより前記一対の開口部M11、M12の他方(M12)に取り付けられる。図中、符号15A,15Bはパッキンを示す。
【0052】
このとき、ワークW1は、前記それ以外の開口部M13がワークステージ10の連通孔N1〜N3のいずれかと重なるように、ワークステージ10に載置される。この場合、使用されない連通孔は、シャッター機構12により閉塞される。
【0053】
この構成により、ファン1Aにより空気を吸引する開口部(M11)以外の開口部(M12、M13)が1つの平面に開口していない場合にも、実施形態1と同様にして欠陥の有無を検査できる。
【0054】
実施形態3
本発明の実施形態3に係る物品における空孔の検査方法に適用される検査装置の概略構成を図7にブロック図で示す。
【0055】
図7に示すように、検査装置A2は、電磁波を放射する送信アンテナおよび解析装置を備えた送信解析部60と、物品Wの空孔Hを通過してきた電磁波を受信して解析する受信アンテナおよび解析装置を備えた受信解析部62と、送信解析部60および受信解析部62を制御する制御装置8Aと、箱形のワークステージ10A(図9参照)とを主要構成要素として備えてなる。この制御装置8Aの制御には、送受信の調整、周波数調整およびインピーダンス・マッチングなどの処理も含まれるものとされる。
【0056】
図8に、検査装置A2の主要部のより具体的な構成の一例を示す。
【0057】
検査装置A2は、図8に示すように、物品Wの空孔Hの一端より内部に電磁波を放射する送信部63と、送信部63から送信される電磁波(以下、送信電磁波という)および受信部65により受信される電磁波(以下、受信電磁波という)に対して周波数解析処理を行う周波数解析装置66と、送信電磁波および受信電磁波の周波数を制御しかつ送受信のタイミングを制御する高周波制御部8cと、前記周波数解析装置66による解析結果を基準値と比較して良否の判定をなす判定部8dと、前記各部を統括的に制御する統括制御部8eとを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0058】
前記説明および図8から明らかなように、送信部63と周波数解析装置66とにより送信解析部60が構成され、受信部65と周波数解析装置66とにより受信解析部62が構成され、高周波制御部8cと判定部8dと統括制御部8eとにより制御装置8Aが構成されるのが理解される。
【0059】
図9に、ワークステージ10Aに載置されたワークWとの関連における送信部63および受信部65の配置を示す。ワークステージ10Aは、内面および遮蔽板13に電波吸収体のシートが貼付されていること、および連通管30と接続されていないことを除いて実施形態1のワークステージ10と同様の構成とされている。つまり、ワークステージ10A上面のワークWの開口部に対応する箇所には連通孔が設けられるとともに、その連通孔にはシャッター機構12が設けられている。なお、図9において、図5と同一の符号を付したものは、同一または類似の構成要素を示す。
【0060】
図9に示すように、送信部63はワークWの空孔Hの1つの開口部に取り付けられ、この開口部を介して電磁波を放射し、この放射された電磁波が空孔H内を通過して空孔Hの他の開口部から放射されるものとされる。そして、この放射された電磁波を受信するようワークステージ10A上面内側の連通孔が設けられた箇所には、シャッター機構12を介して受信部65が配設されている。
【0061】
図10に、送信部63の送信アンテナおよび受信部65の受信アンテナのアンテナ部70を平面アンテナにより構成した一例を斜視図で示す。
【0062】
アンテナ部70は、図10に示すように、平面アンテナ71と、平面アンテナ71の送信あるいは受信範囲をアンテナ部70が配置される空孔Hの開口に合わせて調整するための窓72を有するカバー73と、平面アンテナ71を保持している枠74とを備えてなるものとされ、枠74が適宜手段によりシャッター機構12に装着されて検査がなされる。
【0063】
周波数解析装置66は、例えば高速フーリエ変換による周波数解析を行うものとされる。このような周波数解析装置66は、CPU(Central Processing Unit: 中央演算処理装置)、メモリおよび入出力装置を含むコンピュータを用い、周波数解析処理に対応するプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0064】
高周波制御部8cは、送信部63における送信周波数およびそのタイミングを制御し、かつ受信部65における受信周波数およびそのタイミングを制御するものとされる。なお、その具体的な構成は、この種の高周波制御における公知の高周波制御手段と同様とされている。
【0065】
判定部8dは、受信電磁波の周波数解析装置66による解析結果を良品についての同様の解析結果(基準値)と比較してその良否を判定するものとされる。なお、このような判定部8dは、コンピュータに対応するプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0066】
判定部8dにおいては、図11に示すように、物品Wの空孔を導波管と想定し、その導波管の伝達特性(通過特性)を良品の伝達特性(基準値)と比較するものとされる。
【0067】
ここで、物品の空孔が、例えば図11(a)に示すような矩形導波管として扱える場合には、そのカットオフ周波数(単位:ギガヘルツ)fCは、概してその長辺w(単位:ミリメートル)により規定される(図12参照)。したがって、この場合には、送信電磁波の周波数は、空孔の長辺に基づいて求められたカットオフ周波数よりも高い周波数となるように設定される。
【0068】
また、物品の空孔が、例えば図11(b)に示すような円形導波管として扱える場合には、そのカットオフ周波数(単位:ギガヘルツ)fCは、概してその径d(単位:ミリメートル)により規定される(図12参照)。したがって、この場合には、送信電磁波の周波数は、空孔の径に基づいて求められたカットオフ周波数よりも高い周波数となるように設定される。
【0069】
しかして、かかる構成とされた検査装置A2においては、判定部8dは受信電磁波について周波数解析装置66により周波数解析して得られた結果を、空孔に欠陥のない物品(以下、健全品とも称する)の場合と比較し、物品Wの空孔Hの良否を判別するものとされる。
【0070】
このように、実施形態3の検査装置A2においては、受信部65が電波吸収体のシートが貼付されたワークステージ10A内に収容され、しかも各受信部65が電波吸収体のシートが貼付された遮蔽板13により仕切られているので、反射電磁波などのノイズの影響を抑制して計測がなされ、計測精度が向上する。
【0071】
また、各受信部65にシャッター機構12が介装されているので、開口部毎に検査することが可能となる。
【0072】
実施形態4
本発明の実施形態4に係る検査装置A3の要部を図13に示す。実施形態4は、実施形態3を改変してなるものであり、ワークW1の空孔H1が、真反対の向きに開口する1対の開口部M11、M12と、それ以外の開口部M13とを有する場合に、ヘッドホン式のアタッチメント構造Bにより送信部63をワークW1に取り付けてなるものとされる。実施形態4のその余の構成は、実施形態2と同様とされる。
【0073】
すなわち、実施形態4の送信部63のアタッチメント構造Bは、適宜サイズのコの字形アーム50の一方端部に送信部63を設け、これと向かい合わせになるように、アーム50の他方端部に閉塞部材17を設けてなるものとされる。この場合、閉塞部材17からの電磁波の反射を抑えるため、閉塞部材17内面に電波吸収体のシートが貼付されるのが好ましい。
【0074】
送信部63は、前記一対の開口部M11、M12の一方(M11)にリング磁石14Aにより取り付けられる。閉塞部材17も同様に、リング磁石14Bにより前記一対の開口部M11、M12の他方(M12)に取り付けられる。図中、符号15A,15Bはパッキンを示す。
【0075】
このとき、ワークW1は、前記それ以外の開口部M13がワークステージ10Aの連通孔のいずれかと重なるように、ワークステージ10Aに載置される。この場合、使用されない連通孔は、シャッター機構12により閉塞される。
【0076】
この構成により、送信部63により電磁波が放射される開口部(M11)以外の開口部(M12、M13)が1つの平面に開口していない場合にも、実施形態3と同様にして欠陥の有無を検査できる。
【0077】
実施形態5
本発明の実施形態5に係る物品における空孔の検査方法に適用される検査装置の概略構成を図14にブロック図で示す。
【0078】
図14に示すように、検査装置A4は、音波を送波するスピーカ81および発振回路82を備えた送波部80と、物品Wの空孔Hを通過してきた音波を受波するマイクロホン85および増幅器86を備えた受波部84と、送波部80および受波部84を制御する制御装置8Bと、箱形のワークステージ10B(図16参照)とを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0079】
図15に、制御装置8Bのより具体的な構成を示す。
【0080】
制御装置8Bは、図15に示すように、送波部80における送波の制御をなす同期制御部8fと、受波部84により受波された音波の音波量およびスペクトラムを解析する受波解析部8gと、受波解析部8gによる解析結果を良品についての同様の解析結果(基準値)と比較してその良否を判定する判定部8hとを有するものとされる。
【0081】
図16に、ワークステージ10Bに載置されたワークWとの関連における送波部80および受波部84の配置を示す。ワークステージ10Bは、内面および遮蔽板13に音波吸収体のボード例えばロックウールボードが貼付されていること、および連通管30と接続されていないことを除いて実施形態1のワークステージ10と同様の構成とされている。つまり、ワークステージ10B上面のワークWの開口部に対応する箇所には連通孔が設けられるとともに、その連通孔にはシャッター機構12が設けられている。なお、図16において、図5と同一の符号を付したものは、同一または類似の構成要素を示す。
【0082】
図16に示すように、送波部80はワークWの空孔Hの1つの開口部に取り付けられ、この開口部を介して音波を送波し、この送波された音波が空孔H内を通過して空孔Hの他の開口部から放射されるものとされる。そして、この放射された音波を受波するようワークステージ10B上面内側の連通孔が設けられた箇所には、シャッター機構12を介して受波部84が配設されている。
【0083】
しかして、かかる構成とされた検査装置A4においては、判定部8hは受波した音波の音量およびスペクトラムについて受波解析部8gにより得られた結果を、空孔に欠陥のない物品(以下、健全品とも称する)の場合と比較し、物品Wの空孔Hの良否を判別するものとされる。
【0084】
このように、実施形態5の検査装置A4においては、受波部84が音波吸収体のボードが貼付されたワークステージ10B内に収容され、しかも各受波部84が音波吸収体のボードが貼付された遮蔽板13により仕切られているので、反射音などのノイズの影響を抑制して計測がなされ、計測精度が向上する。
【0085】
また、各受波部84にシャッター機構12が介装されているので、開口部毎に検査することが可能となる。
【0086】
実施形態6
本発明の実施形態6に係る検査装置A5の要部を図17に示す。実施形態6は、実施形態5を改変してなるものであり、ワークW1の空孔H1が、真反対の向きに開口する1対の開口部M11、M12と、それ以外の開口部M13とを有する場合に、ヘッドホン式のアタッチメント構造Bにより送波部80をワークW1に取り付けてなるものとされる。実施形態6のその余の構成は、実施形態2と同様とされる。
【0087】
すなわち、実施形態6の送波部80のアタッチメント構造Bは、適宜サイズのコの字形アーム50の一方端部に送波部80を設け、これと向かい合わせになるように、アーム50の他方端部に閉塞部材17を設けてなるものとされる。この場合、閉塞部材17からの音波の反射を抑えるため、閉塞部材17内面に音波吸収体のボードが貼付されるのが好ましい。
【0088】
送波部80は、前記一対の開口部M11、M12の一方(M11)にリング磁石14Aにより取り付けられる。閉塞部材17も同様に、リング磁石14Bにより前記一対の開口部M11、M12の他方(M12)に取り付けられる。図中、符号15A,15Bはパッキンを示す。
【0089】
このとき、ワークW1は、前記それ以外の開口部M13がワークステージ10Bの連通孔のいずれかと重なるように、ワークステージ10Bに載置される。この場合、使用されない連通孔は、シャッター機構12により閉塞される。
【0090】
この構成により、送波部80により音波が放射される開口部(M11)以外の開口部(M12、M13)が1つの平面に開口していない場合にも、実施形態5と同様にして欠陥の有無を検査できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、空孔の形状が複雑で開口部が複数存在する物品における空孔の検査に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態1に係る検査装置の概略図である。
【図2】同検査装置のブロック図である。
【図3】同検査装置の外観を示す斜視図である。
【図4】同検査装置のシャッター機構の概略図である。
【図5】同検査装置による検査状態を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る検査装置の要部概略図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る検査装置の概略ブロック図である。
【図8】同検査装置の主要部の詳細ブロック図である。
【図9】同検査装置における送信部と受信部との配置を示す概略図である。
【図10】送信部および受信部のアンテナを平面アンテナにより構成した例の斜視図である。
【図11】導波管の各種形状を示す平面図である。
【図12】図11に示す導波管の特性を示すテーブル図である。
【図13】本発明の実施形態4に係る検査装置の要部概略図である。
【図14】本発明の実施形態5に係る検査装置の概略ブロック図である。
【図15】同検査装置の制御装置のブロック図である。
【図16】同検査装置における送波部と受波部との配置を示す概略図である。
【図17】本発明の実施形態6に係る検査装置の要部概略図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ファン
2 流量計
3 圧力センサ
4 フットスイッチ
5 遅延切断スイッチ
6 報知部
7 流量表示部
8 制御装置
8a 制御部
8b 判定部
10 ワークステージ
11 プレート
12 シャッター機構
12a シャッター
13 遮蔽板
14 リング磁石
15 パッキン
20 空気タンク
30 連通管
A 検査装置
C クランプ
H 空孔
M 開口部
N 連通孔
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査方法であって、
上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有する中空のワークステージに、前記開口部を前記連通孔に一致させて前記物品を載置する手順と、
前記物品の底面以外の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順と、
計測対象の開口部に対応する連通孔のシャッターを開とし、それ以外の開口部に対応する連通孔のシャッターを閉とする手順と、
前記計測対象の開口部の状態変動を計測する手順と、
計測された状態変動に基づいて当該空孔の欠陥の有無を判定する手順
とを含むことを特徴とする物品空孔の検査方法。
【請求項2】
空孔が反対側に開口する一対の開口部を底面以外に有し、その一方の開口部を閉塞させながら、他方の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順を含むことを特徴する請求項1記載の物品空孔の検査方法。
【請求項3】
空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査装置であって、
前記空孔内部に状態変動を生じさせる状態変動生成手段と、前記状態変動生成手段により生じさせられた空孔内の状態変動を計測する状態変動計測手段と、制御装置と、中空のワークステージとを備え、
前記制御装置が、状態変動生成手段および状態変動計測手段を制御する制御部と、状態変動計測手段の計測結果に基づいて空孔の欠陥の有無を判定する判定部とを有し、
前記ワークステージが、上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有し、
前記状態変動計測手段が、前記ワークステージ内において前記連通孔を介して空孔内の状態変動を計測できるよう配設されてなる
ことを特徴とする物品空孔の検査装置。
【請求項4】
状態変動生成手段がファンとされ、状態変動計測手段が流量計または流速計とされ、
ワークステージに連通管により接続された、フィルター機能を有する空気タンクが付設され、
前記ファンが、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてなる
ことを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項5】
ファンおよび閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてなることを特徴とする請求項4記載の物品空孔の検査装置。
【請求項6】
状態変動生成手段が電磁波を送信する送信アンテナを有する送信部とされ、状態変動計測手段が電磁波を受信する受信アンテナを有する受信部とされ、
ワークステージの内面に電波吸収体からなるシート状部材が貼付され、
前記送信部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてなる
ことを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項7】
送信部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてなることを特徴とする請求項6記載の物品空孔の検査装置。
【請求項8】
状態変動生成手段が音波を送波するスピーカを有する送波部とされ、状態変動計測手段が音波を受波するマイクロホンを有する受波部とされ、
ワークステージの内面に音波吸収体からなる板状部材が貼付され、
前記送波部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてなる
ことを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項9】
送波部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてなることを特徴とする請求項8記載の物品空孔の検査装置。
【請求項10】
ワークステージの上面に検査対象の物品が載置されたことを検知する圧力センサが配設されてなることを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項1】
空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査方法であって、
上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有する中空のワークステージに、前記開口部を前記連通孔に一致させて前記物品を載置する手順と、
前記物品の底面以外の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順と、
計測対象の開口部に対応する連通孔のシャッターを開とし、それ以外の開口部に対応する連通孔のシャッターを閉とする手順と、
前記計測対象の開口部の状態変動を計測する手順と、
計測された状態変動に基づいて当該空孔の欠陥の有無を判定する手順
とを含むことを特徴とする物品空孔の検査方法。
【請求項2】
空孔が反対側に開口する一対の開口部を底面以外に有し、その一方の開口部を閉塞させながら、他方の開口部から空孔内に状態変動を生じさせる手順を含むことを特徴する請求項1記載の物品空孔の検査方法。
【請求項3】
空孔を有する物品の空孔内部の欠陥を検出する検査装置であって、
前記空孔内部に状態変動を生じさせる状態変動生成手段と、前記状態変動生成手段により生じさせられた空孔内の状態変動を計測する状態変動計測手段と、制御装置と、中空のワークステージとを備え、
前記制御装置が、状態変動生成手段および状態変動計測手段を制御する制御部と、状態変動計測手段の計測結果に基づいて空孔の欠陥の有無を判定する判定部とを有し、
前記ワークステージが、上面に検査対象の物品底面の開口部に対応し、かつシャッター機構を備えた連通孔を所要数有し、
前記状態変動計測手段が、前記ワークステージ内において前記連通孔を介して空孔内の状態変動を計測できるよう配設されてなる
ことを特徴とする物品空孔の検査装置。
【請求項4】
状態変動生成手段がファンとされ、状態変動計測手段が流量計または流速計とされ、
ワークステージに連通管により接続された、フィルター機能を有する空気タンクが付設され、
前記ファンが、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてなる
ことを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項5】
ファンおよび閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてなることを特徴とする請求項4記載の物品空孔の検査装置。
【請求項6】
状態変動生成手段が電磁波を送信する送信アンテナを有する送信部とされ、状態変動計測手段が電磁波を受信する受信アンテナを有する受信部とされ、
ワークステージの内面に電波吸収体からなるシート状部材が貼付され、
前記送信部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてなる
ことを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項7】
送信部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてなることを特徴とする請求項6記載の物品空孔の検査装置。
【請求項8】
状態変動生成手段が音波を送波するスピーカを有する送波部とされ、状態変動計測手段が音波を受波するマイクロホンを有する受波部とされ、
ワークステージの内面に音波吸収体からなる板状部材が貼付され、
前記送波部が、磁石により物品の開口部に取り付けられるようにされてなる
ことを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【請求項9】
送波部および閉塞部材が、コの字形アームのそれぞれの端部に配設されてなることを特徴とする請求項8記載の物品空孔の検査装置。
【請求項10】
ワークステージの上面に検査対象の物品が載置されたことを検知する圧力センサが配設されてなることを特徴とする請求項3記載の物品空孔の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−132997(P2006−132997A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319965(P2004−319965)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】
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