物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄方法及び装置
【課題】 少ない水量でもって且つ個別の孔・袋穴の位置を追わないで小径・微細な孔・袋穴の内部を確実に清浄できるようにする。
【解決手段】 物品Bを速度1.0m/分で搬送するスラット式のコンベヤ装置Cのコンベヤ面の上下それぞれにノズル径0.3mmの噴出ノズル2を搬送方向と直角の縦方向に20mmピッチで、又送り方向には48mmピッチで、千鳥状に配置した噴水ノズル体1を配置し、同噴水ノズル体1を搬送方向と直交する縦方向に毎分600サイクルでもって揺動させながら、噴水させて孔・袋穴の内部を洗浄する。
【解決手段】 物品Bを速度1.0m/分で搬送するスラット式のコンベヤ装置Cのコンベヤ面の上下それぞれにノズル径0.3mmの噴出ノズル2を搬送方向と直角の縦方向に20mmピッチで、又送り方向には48mmピッチで、千鳥状に配置した噴水ノズル体1を配置し、同噴水ノズル体1を搬送方向と直交する縦方向に毎分600サイクルでもって揺動させながら、噴水させて孔・袋穴の内部を洗浄する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の電子機器等の物品表面に設けられているM3程度の小径の孔・袋孔・タップ穴の内部を洗浄水を用いて清浄するための技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、小型の機器物品の表面には部品取付用・連結用のネジ孔、袋孔、タップ孔があり、それらの孔底には、加工時の切削粉・ゴミ・加工液又は清浄液の液残りが残留している。この液・チップ粉の残留物が製造過程中及び保管・使用中に飛び出して製造品を汚染するという問題が生じていた。
そのため、高精度製品の製造には、製造物の水洗浄が済んだ後IPAや代替フロンを用いた仕上げ清浄が必要とされていた。
【0003】
しかしながら、IPAや代替フロンによる清浄は、手間・時間とコストを高めることとなっていた。それでもその洗浄は最近の洗浄度の要求を満たすものではなかった。
又、空気ブロアーで乾燥させる方法もあるが、空気流を袋孔内へ送り込むために袋孔の径より小さなエアブローの流れを作り出す必要があるが1mm以下に絞り込んだエアブローにすることは、困難であった。
1mm以下の極細のエアブローが生成できても袋孔の孔内に噴出するように位置制御することは難しいものであり、空気量も大きなものとなるという問題点があった。
【0004】
更に洗浄水の噴水流でもって孔・袋穴の内部を洗浄する方法もあるが、M3等の微細径の孔・袋穴に対して、その孔・袋穴の開口の口径より大きい径の水流を当てても水は孔・穴内部に水が満たされるだけで水流として流れ込まず、孔・穴内部に水の流れが発生せず、残留液・ゴミ・切削粉の排出が不充分となるものであった。
水流の径を、開口の口径例えば1mm直径より小さく絞り込んでも、この細い水流を孔・袋穴の開口に当てることが難しくなり、開口に当たらずに孔・穴内部が充分に洗浄されないことが発生し、洗浄が不完全となっていた。
【0005】
次の問題は、電器製品、中間製品の孔・袋孔の位置は、製品毎その位置が変化するものであり、孔・袋孔も種々の位置に複数取り付けられているものである。そのため、極細の水流をその袋孔に送り込むことに手間・時間がかかるとともに高い精度が要求されるものであった。又洗浄作業に時間がかかるものとなるという問題点があった。
【0006】
次に、ノズル直径φnの噴出ノズルの噴水で物品の表面を全面隅なく塗り潰すように噴水する方法(以下、塗り潰し方式という)も考えられるが、これであれば物品の搬送速度をvとすると、噴出ノズルの揺動周波数は、v/φn程のかなり高い周波数にするか、縦の噴出ノズルの間隔よりかなり大きなストローク量の振巾で揺動するか、振巾よりかなり小さい縦間隔の多くの噴出ノズルで噴水させなければ確実に全面隅なく散水することができない。揺動周波数を高くすること又はストローク量を大きくすることは、揺動する噴水装置の機械的負荷が大きくなる。特に洗浄する物品の搬送速度vを高くしたり、孔・袋穴の開口の口径φ0が小さくなって噴出ノズルのノズル直径φnも小さくなる場合は、非常に高い揺動周波数又は長いストローク量が要求されて、実用的でなくなるという問題点があった。又、噴出ノズルの数を増やすと使用する洗浄水が増大するという問題があった。
【特許文献1】特開2003−37351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする目的は、従来のこれらの問題点を解消し、噴出ノズルの低い揺動周波数でもって小径・微細な孔・袋穴を確実に洗浄でき、且つ個別の孔・袋穴の位置を追わないで孔・袋穴の内部を確実に清浄できて水流の位置の精密制御が不要であり、しかも物品の洗浄の為の搬送速度を速めて洗浄処理速度を高めるとともに使用する水量も減らすことができるという、物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する方法であって、洗浄される物品を一定方向に送るコンベヤ装置を設け、洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体を送られる物品の孔・袋穴のある物品表面に対向するように配置し、しかも噴水ノズル体の噴出ノズルは、物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設けられ、更に噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段を備えた設備を用い、
コンベヤ装置で物品を速度vで送りながら噴水ノズル体の噴出ノズルから複数の糸状の水流を物品の表面に向けて噴出させるとともに、揺動手段によって噴水ノズル体全体を物品の送り方向と直交する縦方向に高い周波数fで往復動させ、しかも噴水ノズル体の揺動で複数の噴出ノズルからの噴水流の縦方向の噴水巾が洗浄される物品表面の最大縦巾の全域を覆うようにノズルの位置の配置又は噴水ノズル体の揺動ストローク量を定め、揺動手段による往復動を高周波数とすることで、噴出ノズルからの水流が孔・袋穴の内部に確実に流入してその内部をよく洗浄できるようにしたことを特徴とする、小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
2) 噴水ノズル体に縦方向の噴出ノズルの間隔が同じである二組の格子状に配列された噴出ノズル群を設けるとともに、他方の群の噴出ノズルの縦位置が一方の群の噴出ノズルの縦位置の中間となるように且つ横位置が異なるように千鳥状に設けるようにした、前記1)記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
3) 揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数をfとし、物品の送り速度をvとし、物品の表面にある最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径をφ0とし、又噴出ノズルのノズル直径をφnとしたとき、(v/φn)>f>(v/φ0)の不等式が成立する高周波数とした、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
4) 揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数fを、物品の送り速度をvとし、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/φ)の不等式が成立する高周波数とした、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
5) 噴水巾が重複する横方向に配置された噴出ノズルの噴水流が物品表面の最小の口径の孔・袋穴の開口の先端の横位置から同開口の終端の横位置を通過するまでの間の噴水ノズル体の揺動の位相角度範囲の総和が0°〜360°の全位相を覆うように揺動周波数又は噴出ノズルの配置を定めた、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
6) 噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnとしたとき、(v/φn)>f>(v/M/φ0)の不等式が成立する周波数fとした前記5)記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
7) 噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/M/φ)の不等式が成立する周波数fとした前記5)記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
8) 噴水ノズル体の噴出ノズルが縦方向に等ピッチで配置され、同ピッチの間隔以上の長さを噴水ノズル体の揺動ストローク量とした、前記1)〜7)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
9) 噴水ノズル体の往復動の周波数fの値を、物品が噴水巾を重複させる横方向の噴出ノズルの全部を通過する時間内で時間的に変動させるようにした、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
10) 前記1)〜9)の物品の表面の孔・袋穴の洗浄方法を用いて複数回洗浄するものであって、1回目の洗浄水として水・温水又はこれらに洗浄液を入れたものを使用し、2回目の洗浄水として温純水を使用し、3回目の洗浄水として超純水を使用して完全乾燥させる行程でもって洗浄化する、物品表面の孔・袋穴の高度洗浄方法
11) 表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する洗浄装置であって、洗浄される物品を一定の方向に送るコンベヤ装置と、同コンベヤ装置で送られる物品の表面に対向して洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体と、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段とを備え、前記噴水ノズル体の噴出ノズルは物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設け、しかも噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、更に前記揺動手段の縦方向の揺動のストロークは縦方向の噴出ノズルの間隔の長さ以上とした、物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄装置
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ノズルの口径φnを物品表面の洗浄する孔・袋穴の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、且つ縦方向及び横方向に複数の噴出ノズルを有する噴水ノズル体を被洗浄物である物品の送り方向に対して直交する方向に所要範囲の揺動周波数(サイクル数)で往復動させることによって、孔・袋穴の開口の口径より小さい噴出ノズルからの糸状の水流を確実に物品表面にある孔・袋穴の開口を少なくとも1回以上横切らせ、よって孔・袋穴内部を確実に洗浄できるようにするものである。しかも噴出ノズルは送り方向の横方向と直交する縦方向にそれぞれ複数設け、且つ噴出ノズルの噴水巾が物品表面の縦巾の全域を覆うことによって、物品表面の孔・袋穴の位置がどこにあっても(孔・穴位置を追わないで)洗浄できるものである。更に、本発明は複数の噴出水の噴水巾を重複させることで、より確実に、又は低い揺動周波数で物品表面にある孔・袋穴の内部を洗浄できるようにできる。
又本発明の揺動周波数fは、塗り潰し方式の噴水に比べはるかに低い周波数値で洗浄ができるので、物品の搬送速度vを速くして処理能力を高めることを可能とする余裕があり、又搬送速度を速くすることで消費する洗浄水量も低減できるようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(コンベヤ装置)
本発明のコンベヤ装置としては、スラットコンベヤ,ネットコンベヤ等で噴出した水流が通過・排出し易い構造のコンベヤが主に採用される。
(噴出ノズル径)
噴出ノズルからの糸状の噴出水流の直径は物品表面にある小径の孔・袋穴の開口のうち最も小さいものの開口の口径の0.66倍より小さいようにする。1mm前後の径の噴出ノズルから、2.0MPa程の高圧水で噴出させることが多い。
(噴出ノズルの配列)
又、噴出ノズルの縦横の大略の配列状態は、格子状か千鳥状となることが多い。
噴出ノズルの送り方向の横のピッチ(間隔)は一定でもよいし、又は間隔を変えて揺動の同一周波数でも各噴出ノズルからの水流を受け始める位相を変えるようにしてもよい。開始位相をかえることでより確実に洗浄させることができる。
孔・袋穴(の開口)が、噴水ノズル体の噴出ノズルからの水流を受ける送り方向の横の複数の噴出ノズルの水流から異なった位相で受ける方法としては、噴出ノズルの横方向の間隔を適切に変える方法、又は千鳥の如く縦方向の位置を変える方法、又は周波数fに揺らぎを与える方法、又は噴出ノズルを千鳥配列又は縦方向に位置を変えることで位相の違うようにする等で可能である。
【0011】
(噴出ノズルの数と間隔)
噴出ノズルの数,噴出ノズルの間隔は、噴水する洗浄水の使用水量に関係し、噴出ノズルの数が多ければ一般的に使用水量が多くなる。孔・袋穴の噴水流による洗浄回数が適切なものとなるように、その洗浄回数と使用水量と揺動周波数とストローク量との関係で適切な間隔にする。
【0012】
(噴出ノズルの口径と揺動周波数)
まず、噴出ノズルからの水流が孔・袋穴の開口に流入して円滑に還流して排出されるための条件として、噴出ノズルの口径φn(即ち水流の横断面の直径)が孔・袋穴の開口の口径φ0より小さいばかりでなく、水流の断面積に比べて、孔・袋穴の内部での水流の外周の空間に水の粘性等を考慮して水流の断面積の3割以上大きい断面積を還流水の通路面積に確保した。この条件は、1.3*π*(φn/2)2<(π*(φ0/2)2−π*(φn/2)2)であり、これから
√2.3φn<φ0 の条件となり、φn<0.66φ0 の噴出ノズルの口径条件となる。又本発明の揺動周波数の上限の条件として、(v/φn)>fの不等式を満足させて、塗り潰し方式に比べ低い周波数とした。
【0013】
(噴出ノズルの揺動の一波長の長さと最小の口径との関係)
物品の表面にある小径の孔・袋穴の開口のうち最も小さいものの開口の口径をφ0とし、物品の搬送速度をvとし、又噴水ノズル体の揺動(往復動)の周波数をfとすると、f>(v/φ0)を満たせば、図6から分かるように、噴水ノズル体の揺動の一波長の長さの方が、開口の口径φ0より小さくなり、開口が縦方向のどの位置にあっても一波長分の噴水ノズル体の軌跡を開口が受けるので一つの噴出ノズルに対し少なくとも1回以上は噴水ノズルは開口に流入し、確実に洗浄できるものである。
【0014】
(噴出ノズルのノズル口径を考慮したみなし口径での条件)
更に、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値を開口の最小のみなし口径φとして、揺動(往復動)の周波数fをf>(v/φ)の条件を満たせば、図6に示すように、孔・袋穴の最小の開口の口径φ0にノズル口径φnを考慮したみなしの口径φが噴水ノズル体の−波長の360°揺動する間に搬送される進み巾(v/f)と等しいか、それ以上となることで、噴出ノズルからの糸状の水流が確実に孔・袋穴の開口を通過し、水流で孔・袋穴を確実に洗浄できる。よって、上記の条件より低い揺動周波数でも可能とすることができる。
【0015】
上記の周波数条件・洗浄条件は、図6に示すように、噴出ノズルのノズル直径φnを考慮すれば、実際の孔・袋穴の最小の口径値φ0とすると、最小のみなし口径φ=φ0+φnとすることができる。
【0016】
(複数の噴出ノズルの噴水と開口を通過する位相)
f<(v/φ0)又はf<(v/φ)の場合でも、噴出ノズルの噴水巾が重複し、しかも位相を変えて孔・袋穴に対して噴水し、その位相の総和が0°〜360°の全位相を覆うようにすれば、0°〜360°の全位相を覆うことができる噴出ノズルの最小の個数をM個とすると、周波数fは、不等式(v/φn)>f>(v/M/φ0)又は不等式(v/φn)>f>(v/M/φ)の不等式を満足させればよく、周波数fを更に小さくしても、確実な洗浄が行える。又は周波数は一定にしてもコンベヤ装置の送り速度vを速くして処理能力を上げても確実に洗浄できるようにできることを意味する。
【0017】
これらの請求項3,4,6,7の数値条件は、下式数1の不等式関係となる。
【0018】
【数1】
【0019】
このように、特許請求項3,4の発明は、噴出ノズルの一列の縦列(縦単列という)だけで確実に洗浄できる数値条件である。この場合横方向(搬送方向)に複数の噴出ノズルがあるのは、より確実に又はより多くの回数洗浄することで洗浄度を高めることにある。
又、特許請求項5を引用した請求項6,7の発明は、噴出ノズルの横方向(搬送方向)の他の噴出ノズルとの複数個の横方向の噴出ノズルとの組み合わせによって、確実に洗浄できるための数値条件である。この場合は、下限の揺動周波数がより低く(又は搬送速度をより高く)できる利点がある。
請求項3,4の発明の縦単列の確実に洗浄する数値条件か、又は複数の横方向の噴出ノズルを用いた請求項6,7の条件のいずれかを満足させればよい。
又、請求項3,4,6,7における数値条件において、最小の口径φ0を用いるか、みなし口径φ=φ0+φnを選択するかはどちらでもよいが、厳しい条件の最小の口径φ0の方を用いて設計すれば更に確実となる。
【0020】
又、本願発明の数値限定の発明において、揺動周波数fの上限として、不充分な塗り潰し方式で横方向に複数の噴出ノズルを設けることで、孔・袋穴の開口内部を確率的に大略洗浄できるようにできるv/(2φn)の周波数の揺動に比べて有利とするとしてもよい。即ち、下記数2としてもよい。
【0021】
【数2】
【0022】
確実な洗浄には、これらの他に副縦噴出ノズル列の存在、周波数の揺らぎ等の手段との組み合わせることでも可能である。
実用的には、組み合わせれば上記条件の必要(最低)周波数を更に低くできる。又は送り速度vを速くできる。
【0023】
例えば、確実に洗浄する別の方法として、噴水ノズル体を孔・袋穴の開口が横方向の噴水巾を重複させる全ての噴出ノズルの水流を受けている間に、噴水ノズル体の周波数fに±△fの揺らぎ(変動)を与えることで、孔・袋穴の開口に対し噴出ノズルが噴水開始する開始位相及びその時の噴水ノズル体の揺動の一波長の長さが変わることで、噴水ノズルを開口に流入させる確率を増大できる。この周波数変動は10%以上とすることで水流が開口に流れ込む確率が高く、確実な洗浄ができる。
この周波数fの揺らぎと前記の噴出ノズルの設置位置を適切にすることの組み合わせで、更に異なった位相で複数の噴出ノズルによる水流を同一の孔・袋穴の開口に与えることができるようにすることもできる。
【0024】
又、噴出ノズルを千鳥配列の如く、各縦噴出ノズル列Xの横方向にオフセットした縦方向で、縦噴出ノズル列Xの各噴出ノズルのピッチの中間位置に縦噴出ノズル列Yの噴出ノズルを設けるようにすれば、同一の孔・袋穴を複数の縦方向に位置を変えた噴出ノズルで重複させて噴水して洗浄することとなり、より確実な洗浄となる。
【0025】
又、本発明は物品の送りが円運動,円弧運動する場合にも適用できる。その場合は円周方向(物品の送りの軌跡方向)が送り方向(横方向)となり、半径方向(送り軌跡の曲率中心方向)が送り方向と直角の方向(縦方向)となり、噴水ノズル体の各噴出ノズルも半径方向と円周方向に複数設けられ、噴水ノズル体は半径方向に往復動するようにし、複数の噴出ノズル縦方向の噴水巾が重複するようにさせる。各噴出ノズルが噴水する噴水巾内にある孔・袋穴等の孔の送り速度は周速度となって孔の半径方向位置(縦位置)で送り速度が異なるが、この送り速度vと、噴水ノズル体の半径方向の往復動の周波数f,孔・袋穴の孔の口径φ0,みなし口径φ及び0°〜360°の全位相の覆うような位相差の条件を満たせば確実な洗浄を確保できる。本発明はこのようなものも含むものである。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示す実施例1の被洗浄の物品は、電気装置のHDDのケースであって、その上面及び下面の表面に金属加工で設けられたM3程の袋穴・ねじ孔を洗浄する例であり、これをスラット式のコンベヤ装置で直線的に搬送しながら、被洗浄物品の上面・下面に向けて上下の噴水ノズル体が揺動しながら噴水させて洗浄する例である。
【0027】
図1は、実施例1に用いる洗浄装置を示す平面図である。
図2は、実施例1の洗浄装置の側面図である。
図3は、実施例1の噴水ノズル体における噴出ノズルの配置説明図である。
図4は、噴出ノズルの水流の物品の表面への噴出点の軌跡を示す説明図である。
図5は、噴出ノズルの水流による孔内部の洗浄の行程を示す説明図である。
図6は、噴出ノズルの水流の軌跡と最小の孔の開口との関係を示す説明図である。
図7は、実施例1での噴水巾を重複する横方向の3個の噴出ノズルの噴水の開口に対する位相と0°〜360°を覆うことを示す説明図である。
図8は、実施例1の往復動装置の変換機構を示す側面からみた説明図である。
図9は、実施例1のエキセントリックカムの拡大断面図である。
図10は、実施例1の水管を取り付けた進退自在な往復台を示す説明図である。
図11は、往復動用モータの回転出力軸に取り付ける偏芯ボスを示す拡大平面図である。
図12は、偏芯ボスのエンドプレートを示す拡大平面図である。
図13〜16は、変換機構の動作を示す説明図である。
【0028】
図中、Aは実施例1で用いる水流による洗浄装置であり、Bは被洗浄の物品である電子機器のハードディスクのHDDケース(物品ともいう)、CはHDDケースBを搬送するスラット式のコンベヤ装置、1〜5bは水流による洗浄装置Aの構成部分であって、1はコンベヤ装置Cの上方と下方の位置に対向するように配置された一対の噴水ノズル体、2は同噴水ノズル体に千鳥状に配置された噴出ノズルであって、ノズルの噴出口の口径(ノズル径)は0.3mm直径である。3は各噴出ノズル2への洗浄水を一時貯える貯水部、4は貯水部へ洗浄水を送る水管、4aは同水管と接続された耐圧で往復動に対応できる給水ホース、5は水管4・貯水部3・噴水ノズル体1とをコンベヤ装置Cの送り方向と直交する水平方向に20mmのストローク(振巾10mm)で往復動させる往復動装置、5aは同往復動装置の設置固定台6に取り付けられた往復動用モータ、5a1は同モータのキー付の回転出力軸、5bは水管4を取付けて往復動する往復台、5b1は設置固定台6に設けられた往復用レール6aに沿って往復台5bを進退させるリニアガイド、5cはモータ5aの回転を往復動に運動変換するエキセントリックカム5dを使った変換機構である。エキセントリックカム5dは、回転出力軸5a1の軸端のキーをキー溝に嵌合させて軸端に偏芯するように取り付けた円形状偏芯ボス5d1と、同偏芯ボス5d1の外周に周着したベアリング5d2と、同ベアリングが外れないように偏芯ボス5d1の頭部に被せてネジ5d4,5d5でもって回転出力軸5a1と偏芯ボス5d1とに固着されたエンドプレート5d3とから形成されている。又変換機構5cは、この偏心回転するエキセントリックカム5d(ベアリング5d2)とこの外周と前後で当接し、同エキセントリックカム5dを内側で回動できるようにする開口5e1を有する当て板5eと、水管4と当て板5eを取り付けた往復台5bと、同往復台5bを往復動させる設置固定台6上のレール6aと、往復台5bに取り付けたレール6aを摺動するリニアガイド5b1とからなっている。
又、図中6は往復動装置5を装置する設置固定台、6aは同設置固定台上に設けた左右一対のレールである。
本実施例1の水管4の揺動手段は、変換機構5cを有する往復動装置5とそれを作動させる往復動用モータ5aからなる。
本実施例の噴水ノズル体1の往復動は、モータ5aを回転させると、その回転出力軸5a1が回転し、同回転出力軸5a1に10mm偏芯して取り付けた偏芯ボス5d1がネジ5d5の偏芯位置を中心にして回転し、これによって偏芯ボス5d1の外周に取り付けたベアリング5d2も偏芯した中心まわりに回転し、これと当接する当て板5e及びこれを取り付けた往復台5bは偏芯量±10mmの振巾で水管4を管方向に往復動させる。
図8に変換機構5cを、図9にエキセントリックカム5dを、図10に往復台5bを、図11に偏芯ボス5d1を、図12にエンドプレート5d3を、図13〜16に変換機構の動作を示している。
本実施例1の洗浄対象物は、HDDケースBであり、そのHDDケースBの表面に設けられた袋穴・ねじ孔等の孔hの開口の最小の口径φ0は1.4mmである。
【0029】
この実施例1で使用する噴水ノズル体1には、縦方向の6個の20mmの等ピッチの噴出ノズル2からなる縦噴出ノズル列Xを、横方向に48mm等ピッチで3列設けている。又縦噴出ノズル列Xの噴出ノズル2の縦方向の中間位置で且つ縦噴出ノズル列Xから横方向に25mmオフセット位置に縦5個の噴出ノズル2を設けた縦噴出ノズル列Yと更にその横方向に48mm等ピッチで2列の縦噴出ノズル列Yを設け、縦噴出ノズル列Yを計3列設け、縦噴出ノズル列X,Yの各噴出ノズル2は千鳥配置状態となっている。横3列の縦噴出ノズル列Xの格子状配列の噴出ノズル群と、横3列の縦噴出ノズル列Yの格子状配列の噴出ノズル群の二群を縦横にオフセットした位置に設けた千鳥配列の例である。
各噴出ノズル2のノズル径φnは0.3mm直径のノズル径である。
【0030】
噴水ノズル体1の物品Bの送り方向の直角方向での往復動(揺動)の周波数fは、600回/分であって10回/秒であり、その往復動の振巾は10mmで20mmのストローク(全巾)である。又コンベヤ装置Cの物品Bの送り速度vは1.0m/分で16.67mm/秒である。又物品Bの表面にあるねじ孔・袋穴の孔hは複数あるがその実際の最小の口径φ0は、1.4mmである。
【0031】
噴水ノズル体1の噴出ノズル2の配置は、千鳥状であり、縦方向に20mm間隔で、縦6個の噴出ノズル列Xと縦5個の噴出ノズル列Yが交互にそれぞれ横方向に3列24mmの等ピッチに設けられている。縦5個噴出ノズル列Yの噴出ノズル2は、縦6個噴出ノズル列Xの噴出ノズル2の縦の中間位置に設けられている。
【0032】
縦6個の噴出ノズル列Xの横方向の3列の噴出ノズル2は、その噴水巾20mm(振巾10mm)が全部重複する。同様に縦5個の噴出ノズル列Yの横3列の噴水巾も全部重複する。更に縦6個の噴出ノズル列Xの各噴出ノズル2の隣り合う上下の縦位置にある縦5個の噴出ノズル列Yの噴出ノズル2とは、その噴水巾の半分毎重複する。
しかも、各噴出ノズル列X,Yの噴出ノズル2の縦の噴水巾は、物品Bの表面の最大の縦巾の全域を覆っている。
【0033】
本実施例の諸元v,f,φ0,φ,φnは下記の通りである。
・物品の送り速度=v=1.0m/分=16.67mm/sec
・揺動の周波数=f=600回/分=10回/sec
・孔・袋穴の実際の最小の口径の開口=φ0=1.4mm
・噴出ノズルのノズル径=φn=0.3mm
・−波長の長さ=v/f=1.667mm
・各噴出ノズル列X,Yの横方向の噴出ノズルによる噴水巾重複の噴出ノズルの0°〜360°全位相を覆う最小の噴出ノズルの個数M=2
・みなし口径φ=φ0+φn=1.7mm
・v/φ0=16.67/1.4=11.9
・v/φ=v/(φ0+φn)=9.8
・v/M/φ0=5.95
・v/M/φ=v/M/(φ0+φn)=4.9
・v/φn=55.6
・v/2/φn=27.8
【0034】
本発明の条件不等式は下記の通りとなり、実施例の形態は、本発明の条件を充分に満たして確実に噴水で1回以上洗浄している。
・噴出ノズルのノズル直径φnの条件
φn<0.66φ0
φn=0.3mm<0.66*1.4mm=0.92mm
・周波数の上限条件
v/φn>f
55.6>10(Hz)
尚、v/2/φn>fに対して
v/2/φn=27.8>10(Hz)
・みなし口径とした場合の条件
f>(v/(φ0+φn))
10(Hz)>9.8
・360°位相を2個の噴出ノズルで覆う場合の条件
f>v/M/(φ0+φn) 又は f>v/M/φ0
10(Hz)>4.9 又は 10(Hz)>5.95
【0035】
以下、詳細に説明する。
(実際のφ0を用いた場合/みなし口径を使わない設計の場合)
噴出ノズルの中心が速度vで送られる孔・袋穴の最小の口径の開口φ0を通過する間の噴水ノズル体1の進み位相角度θは、φ0/v*360°*f であって、302°である。
又、各噴出ノズル列X,Yの横方向の噴出ノズル2はそのピッ48mmで、0mm,48mm,96mmの横方向の位置にあるので、横方向の噴出ノズルの開口の先端への噴水開始の開始位相及び位相角度範囲は下記の通りとなる。
【0036】
【表1】
よって、この横3列の噴出ノズル2でもって各位相角度範囲の総和は0°〜360°の全位相を2回覆う。
【0037】
しかも、f>(v/M/φ0)は、M=2、V=16.67mm/sec、φ0=1.4mmで、f=10回/sec>5.95 で条件を満たしている。更にこの重複は、噴出ノズル列X,Yそれぞれで満足しているので計4回以上洗浄することができる。
【0038】
このように、噴水巾を重複させる噴出ノズル2の開口を通過する位相角度範囲の総和が0°〜360°の全位相を覆うものであれば、噴水巾を通過する開口は噴出ノズル2の噴水流によって必ず1回以上開口を横切るようになる。しかも縦方向にある噴出ノズル2の噴水巾は、洗浄する物品の表面の縦の最大巾を覆うことになるので、孔・袋穴の孔hが物品Bの表面のどの位置にあっても確実に孔・袋穴の孔hの中に開口の実際の口径φ0の1.4mmの0.66倍の0.92mmより小さい0.3mm直径の糸状の噴水流が流れ込み、孔底まで入って還流して開口から円滑に排出されて洗浄する。
【0039】
噴水流が開口を横切る時の水の流れを図5,6に示す。噴水流の水断面積は0.3mm直径であり、最小の口径φ0の1.4mmに対して一方から近づき、開口の一端から水流が入り込み、他端から水流が吐出されて水流は開口の内部の奧まで水が移動して、開口の内部空間の油、汚れ、切粉を排除できる。開口の中心部で流入すれば、環状な還水となって排出され、洗浄する。
【0040】
縦6個の噴出ノズル列Xと縦5個の噴出ノズル列Yで、各2回ずつ計4回以上開口は横切って洗浄され、確実な洗浄が行える。尚、最小の口径φ0より大きい他の孔・袋穴の開口のものは、より確実に洗浄できるものである。
【0041】
(噴出ノズルのノズル径φnを考慮した場合/みなし口径φを使用した設計の場合)
上記の例において、噴出ノズルのノズル径φnを考慮した場合の開口のみなし口径φ=φ0+φnで、φ0は実際の最小の開口の口径φ01.4mmで計算すると、みなし口径φ=1.70mmとなり、みなし口径の開口を通過する進み位相角度は、367°であり、360°を超えていて開口の噴水の位相を考慮せず(噴出ノズル2の横の方向のいずれの位置・間隔と関係なく)、全ての横の噴出ノズル2は開口を通過することとなる。従って、実施例の例で実際は噴出ノズルφnを考慮した場合は横の噴出ノズル2の間隔(横位置)を考慮せずに、開口の内部を噴水流で計6回以上洗浄できる。このみなし口径φの方が実際に近い現象である。
このように、みなしの口径φの方を採用できるので、揺動の周波数f,物品の送り速度v,噴出ノズルの横位置の条件を緩めることができる。周波数fはまだ少し低くしてもよい。(又は送り速度を速くしてもよい。)
【0042】
この実施例1の洗浄方法を、洗浄水として洗浄剤を入れた洗浄水・温純水・超純水と水質を変えて繰り返し洗浄すると更に高い洗浄度の洗浄が行える。
【0043】
(他の実施例)
本発明の他の方法として、周波数fがf>(v/φ)を満足するように高くすれば、最小の開口のみなしの口径φが揺動の−波長長さ以上になり、横方向に一つの噴出ノズル(縦一列の噴出ノズル列のみ)でも開口を横切ることができる。
【0044】
従って、請求項5,6の複数の横方向の噴出ノズルでもって0°〜360°の全位相を覆うようにする発明は、主にf<(v/φ)又はf<(v/φ0)の場合に採用される方法である。
【0045】
本実施例1のように横方向の噴出ノズルの噴水巾が重複し、M個の噴出ノズルで0°〜360°の全位相を覆う場合は、その覆うに必要な最小の噴出ノズルの個数Mで除した周波数f値で済ますことができ、送り速度vを一定とすれば揺動周波数を減らすことができる。又は周波数を一定にすれば送り速度を速くでき、洗浄速度を高めること及び洗浄水の水量を減らすことができる。
【0046】
更に、本発明の他の方法として、揺動の周波数fに開口が噴水ノズル体を通過する間に揺らぎを与え、変動させることで、孔・袋孔等の孔に対し、噴出ノズル毎に別の波長の軌跡をもって噴水させることができ、よって物品の表面に隅なく噴水させることができ、確実に洗浄できるようになる。
【0047】
又、本発明では、物品の表面の全面を、ノズル直径φnの噴出ノズルの噴水で塗り潰すようにする塗り潰し方式の場合の揺動周波数fzに比べ、かなり小さくできて、揺動手段の負荷を小さくできる。塗り潰す揺動周波数fzは、揺動周波数の上死点又は下死点の位置での塗り潰しの条件から大略v/φn程の周波数となることから、本発明の揺動周波数fは、v/φnの周波数の1/3〜1/8程の低い値で済む。又、大略塗り潰し方式のv/(2φn)の周波数に比べ本発明の周波数は、その1/2〜1/4程の低い値で済ますことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、小型の電機部品、マイクロ機械部品、精密プラスチック製品・部品等の孔・袋穴あるいは表面に凹部がある物品の洗浄にも使用できる。又、動物・植物の微細孔・溝の洗浄、又は細部への給水の技術にも使える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に用いる洗浄装置を示す平面図である。
【図2】実施例1の洗浄装置の側面図である。
【図3】実施例1の噴水ノズル体における噴出ノズルの配置説明図である。
【図4】噴出ノズルの水流の物品の表面への噴出点の軌跡を示す説明図である。
【図5】噴出ノズルの水流による孔内部の洗浄の行程を示す説明図である。
【図6】噴出ノズルの水流の軌跡と最小の孔の開口との関係を示す説明図である。
【図7】実施例1での噴水巾を重複する横方向の3個の噴出ノズルの噴水の開口に対する位相と0°〜360°を覆うことを示す説明図である。
【図8】実施例1の往復動装置の変換機構を示す側面からみた説明図である。
【図9】実施例1のエキセントリックカムの拡大断面図である。
【図10】実施例1の水管を取り付けた進退自在な往復台を示す説明図である。
【図11】往復動用モータの回転出力軸に取り付ける偏芯ボスを示す拡大平面図である。
【図12】偏芯ボスのエンドプレートを示す拡大平面図である。
【図13】変換機構の動作を示す説明図である。
【図14】変換機構の動作を示す説明図である。
【図15】変換機構の動作を示す説明図である。
【図16】変換機構の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
A 洗浄装置
B HDDケース(被洗浄物品)
C コンベヤ装置
X,Y 縦噴出ノズル列
1 噴水ノズル体
2 噴出ノズル
3 貯水部
4 水管
4a 給水ホース
5 往復動装置
5a 往復動用モータ
5a1 回転出力軸
5b 往復台
5b1 リニアガイド
5c 変換機構
5d エキセントリックカム
5d1 偏芯ボス
5d2 ベアリング
5d3 エンドプレート
5d4,5d5 ネジ
5e 当て板
5e1 開口
6 設置固定台
6a レール
h 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の電子機器等の物品表面に設けられているM3程度の小径の孔・袋孔・タップ穴の内部を洗浄水を用いて清浄するための技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、小型の機器物品の表面には部品取付用・連結用のネジ孔、袋孔、タップ孔があり、それらの孔底には、加工時の切削粉・ゴミ・加工液又は清浄液の液残りが残留している。この液・チップ粉の残留物が製造過程中及び保管・使用中に飛び出して製造品を汚染するという問題が生じていた。
そのため、高精度製品の製造には、製造物の水洗浄が済んだ後IPAや代替フロンを用いた仕上げ清浄が必要とされていた。
【0003】
しかしながら、IPAや代替フロンによる清浄は、手間・時間とコストを高めることとなっていた。それでもその洗浄は最近の洗浄度の要求を満たすものではなかった。
又、空気ブロアーで乾燥させる方法もあるが、空気流を袋孔内へ送り込むために袋孔の径より小さなエアブローの流れを作り出す必要があるが1mm以下に絞り込んだエアブローにすることは、困難であった。
1mm以下の極細のエアブローが生成できても袋孔の孔内に噴出するように位置制御することは難しいものであり、空気量も大きなものとなるという問題点があった。
【0004】
更に洗浄水の噴水流でもって孔・袋穴の内部を洗浄する方法もあるが、M3等の微細径の孔・袋穴に対して、その孔・袋穴の開口の口径より大きい径の水流を当てても水は孔・穴内部に水が満たされるだけで水流として流れ込まず、孔・穴内部に水の流れが発生せず、残留液・ゴミ・切削粉の排出が不充分となるものであった。
水流の径を、開口の口径例えば1mm直径より小さく絞り込んでも、この細い水流を孔・袋穴の開口に当てることが難しくなり、開口に当たらずに孔・穴内部が充分に洗浄されないことが発生し、洗浄が不完全となっていた。
【0005】
次の問題は、電器製品、中間製品の孔・袋孔の位置は、製品毎その位置が変化するものであり、孔・袋孔も種々の位置に複数取り付けられているものである。そのため、極細の水流をその袋孔に送り込むことに手間・時間がかかるとともに高い精度が要求されるものであった。又洗浄作業に時間がかかるものとなるという問題点があった。
【0006】
次に、ノズル直径φnの噴出ノズルの噴水で物品の表面を全面隅なく塗り潰すように噴水する方法(以下、塗り潰し方式という)も考えられるが、これであれば物品の搬送速度をvとすると、噴出ノズルの揺動周波数は、v/φn程のかなり高い周波数にするか、縦の噴出ノズルの間隔よりかなり大きなストローク量の振巾で揺動するか、振巾よりかなり小さい縦間隔の多くの噴出ノズルで噴水させなければ確実に全面隅なく散水することができない。揺動周波数を高くすること又はストローク量を大きくすることは、揺動する噴水装置の機械的負荷が大きくなる。特に洗浄する物品の搬送速度vを高くしたり、孔・袋穴の開口の口径φ0が小さくなって噴出ノズルのノズル直径φnも小さくなる場合は、非常に高い揺動周波数又は長いストローク量が要求されて、実用的でなくなるという問題点があった。又、噴出ノズルの数を増やすと使用する洗浄水が増大するという問題があった。
【特許文献1】特開2003−37351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする目的は、従来のこれらの問題点を解消し、噴出ノズルの低い揺動周波数でもって小径・微細な孔・袋穴を確実に洗浄でき、且つ個別の孔・袋穴の位置を追わないで孔・袋穴の内部を確実に清浄できて水流の位置の精密制御が不要であり、しかも物品の洗浄の為の搬送速度を速めて洗浄処理速度を高めるとともに使用する水量も減らすことができるという、物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する方法であって、洗浄される物品を一定方向に送るコンベヤ装置を設け、洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体を送られる物品の孔・袋穴のある物品表面に対向するように配置し、しかも噴水ノズル体の噴出ノズルは、物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設けられ、更に噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段を備えた設備を用い、
コンベヤ装置で物品を速度vで送りながら噴水ノズル体の噴出ノズルから複数の糸状の水流を物品の表面に向けて噴出させるとともに、揺動手段によって噴水ノズル体全体を物品の送り方向と直交する縦方向に高い周波数fで往復動させ、しかも噴水ノズル体の揺動で複数の噴出ノズルからの噴水流の縦方向の噴水巾が洗浄される物品表面の最大縦巾の全域を覆うようにノズルの位置の配置又は噴水ノズル体の揺動ストローク量を定め、揺動手段による往復動を高周波数とすることで、噴出ノズルからの水流が孔・袋穴の内部に確実に流入してその内部をよく洗浄できるようにしたことを特徴とする、小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
2) 噴水ノズル体に縦方向の噴出ノズルの間隔が同じである二組の格子状に配列された噴出ノズル群を設けるとともに、他方の群の噴出ノズルの縦位置が一方の群の噴出ノズルの縦位置の中間となるように且つ横位置が異なるように千鳥状に設けるようにした、前記1)記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
3) 揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数をfとし、物品の送り速度をvとし、物品の表面にある最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径をφ0とし、又噴出ノズルのノズル直径をφnとしたとき、(v/φn)>f>(v/φ0)の不等式が成立する高周波数とした、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
4) 揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数fを、物品の送り速度をvとし、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/φ)の不等式が成立する高周波数とした、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
5) 噴水巾が重複する横方向に配置された噴出ノズルの噴水流が物品表面の最小の口径の孔・袋穴の開口の先端の横位置から同開口の終端の横位置を通過するまでの間の噴水ノズル体の揺動の位相角度範囲の総和が0°〜360°の全位相を覆うように揺動周波数又は噴出ノズルの配置を定めた、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
6) 噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnとしたとき、(v/φn)>f>(v/M/φ0)の不等式が成立する周波数fとした前記5)記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
7) 噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/M/φ)の不等式が成立する周波数fとした前記5)記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
8) 噴水ノズル体の噴出ノズルが縦方向に等ピッチで配置され、同ピッチの間隔以上の長さを噴水ノズル体の揺動ストローク量とした、前記1)〜7)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
9) 噴水ノズル体の往復動の周波数fの値を、物品が噴水巾を重複させる横方向の噴出ノズルの全部を通過する時間内で時間的に変動させるようにした、前記1)又は2)いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法
10) 前記1)〜9)の物品の表面の孔・袋穴の洗浄方法を用いて複数回洗浄するものであって、1回目の洗浄水として水・温水又はこれらに洗浄液を入れたものを使用し、2回目の洗浄水として温純水を使用し、3回目の洗浄水として超純水を使用して完全乾燥させる行程でもって洗浄化する、物品表面の孔・袋穴の高度洗浄方法
11) 表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する洗浄装置であって、洗浄される物品を一定の方向に送るコンベヤ装置と、同コンベヤ装置で送られる物品の表面に対向して洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体と、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段とを備え、前記噴水ノズル体の噴出ノズルは物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設け、しかも噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、更に前記揺動手段の縦方向の揺動のストロークは縦方向の噴出ノズルの間隔の長さ以上とした、物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄装置
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ノズルの口径φnを物品表面の洗浄する孔・袋穴の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、且つ縦方向及び横方向に複数の噴出ノズルを有する噴水ノズル体を被洗浄物である物品の送り方向に対して直交する方向に所要範囲の揺動周波数(サイクル数)で往復動させることによって、孔・袋穴の開口の口径より小さい噴出ノズルからの糸状の水流を確実に物品表面にある孔・袋穴の開口を少なくとも1回以上横切らせ、よって孔・袋穴内部を確実に洗浄できるようにするものである。しかも噴出ノズルは送り方向の横方向と直交する縦方向にそれぞれ複数設け、且つ噴出ノズルの噴水巾が物品表面の縦巾の全域を覆うことによって、物品表面の孔・袋穴の位置がどこにあっても(孔・穴位置を追わないで)洗浄できるものである。更に、本発明は複数の噴出水の噴水巾を重複させることで、より確実に、又は低い揺動周波数で物品表面にある孔・袋穴の内部を洗浄できるようにできる。
又本発明の揺動周波数fは、塗り潰し方式の噴水に比べはるかに低い周波数値で洗浄ができるので、物品の搬送速度vを速くして処理能力を高めることを可能とする余裕があり、又搬送速度を速くすることで消費する洗浄水量も低減できるようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(コンベヤ装置)
本発明のコンベヤ装置としては、スラットコンベヤ,ネットコンベヤ等で噴出した水流が通過・排出し易い構造のコンベヤが主に採用される。
(噴出ノズル径)
噴出ノズルからの糸状の噴出水流の直径は物品表面にある小径の孔・袋穴の開口のうち最も小さいものの開口の口径の0.66倍より小さいようにする。1mm前後の径の噴出ノズルから、2.0MPa程の高圧水で噴出させることが多い。
(噴出ノズルの配列)
又、噴出ノズルの縦横の大略の配列状態は、格子状か千鳥状となることが多い。
噴出ノズルの送り方向の横のピッチ(間隔)は一定でもよいし、又は間隔を変えて揺動の同一周波数でも各噴出ノズルからの水流を受け始める位相を変えるようにしてもよい。開始位相をかえることでより確実に洗浄させることができる。
孔・袋穴(の開口)が、噴水ノズル体の噴出ノズルからの水流を受ける送り方向の横の複数の噴出ノズルの水流から異なった位相で受ける方法としては、噴出ノズルの横方向の間隔を適切に変える方法、又は千鳥の如く縦方向の位置を変える方法、又は周波数fに揺らぎを与える方法、又は噴出ノズルを千鳥配列又は縦方向に位置を変えることで位相の違うようにする等で可能である。
【0011】
(噴出ノズルの数と間隔)
噴出ノズルの数,噴出ノズルの間隔は、噴水する洗浄水の使用水量に関係し、噴出ノズルの数が多ければ一般的に使用水量が多くなる。孔・袋穴の噴水流による洗浄回数が適切なものとなるように、その洗浄回数と使用水量と揺動周波数とストローク量との関係で適切な間隔にする。
【0012】
(噴出ノズルの口径と揺動周波数)
まず、噴出ノズルからの水流が孔・袋穴の開口に流入して円滑に還流して排出されるための条件として、噴出ノズルの口径φn(即ち水流の横断面の直径)が孔・袋穴の開口の口径φ0より小さいばかりでなく、水流の断面積に比べて、孔・袋穴の内部での水流の外周の空間に水の粘性等を考慮して水流の断面積の3割以上大きい断面積を還流水の通路面積に確保した。この条件は、1.3*π*(φn/2)2<(π*(φ0/2)2−π*(φn/2)2)であり、これから
√2.3φn<φ0 の条件となり、φn<0.66φ0 の噴出ノズルの口径条件となる。又本発明の揺動周波数の上限の条件として、(v/φn)>fの不等式を満足させて、塗り潰し方式に比べ低い周波数とした。
【0013】
(噴出ノズルの揺動の一波長の長さと最小の口径との関係)
物品の表面にある小径の孔・袋穴の開口のうち最も小さいものの開口の口径をφ0とし、物品の搬送速度をvとし、又噴水ノズル体の揺動(往復動)の周波数をfとすると、f>(v/φ0)を満たせば、図6から分かるように、噴水ノズル体の揺動の一波長の長さの方が、開口の口径φ0より小さくなり、開口が縦方向のどの位置にあっても一波長分の噴水ノズル体の軌跡を開口が受けるので一つの噴出ノズルに対し少なくとも1回以上は噴水ノズルは開口に流入し、確実に洗浄できるものである。
【0014】
(噴出ノズルのノズル口径を考慮したみなし口径での条件)
更に、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値を開口の最小のみなし口径φとして、揺動(往復動)の周波数fをf>(v/φ)の条件を満たせば、図6に示すように、孔・袋穴の最小の開口の口径φ0にノズル口径φnを考慮したみなしの口径φが噴水ノズル体の−波長の360°揺動する間に搬送される進み巾(v/f)と等しいか、それ以上となることで、噴出ノズルからの糸状の水流が確実に孔・袋穴の開口を通過し、水流で孔・袋穴を確実に洗浄できる。よって、上記の条件より低い揺動周波数でも可能とすることができる。
【0015】
上記の周波数条件・洗浄条件は、図6に示すように、噴出ノズルのノズル直径φnを考慮すれば、実際の孔・袋穴の最小の口径値φ0とすると、最小のみなし口径φ=φ0+φnとすることができる。
【0016】
(複数の噴出ノズルの噴水と開口を通過する位相)
f<(v/φ0)又はf<(v/φ)の場合でも、噴出ノズルの噴水巾が重複し、しかも位相を変えて孔・袋穴に対して噴水し、その位相の総和が0°〜360°の全位相を覆うようにすれば、0°〜360°の全位相を覆うことができる噴出ノズルの最小の個数をM個とすると、周波数fは、不等式(v/φn)>f>(v/M/φ0)又は不等式(v/φn)>f>(v/M/φ)の不等式を満足させればよく、周波数fを更に小さくしても、確実な洗浄が行える。又は周波数は一定にしてもコンベヤ装置の送り速度vを速くして処理能力を上げても確実に洗浄できるようにできることを意味する。
【0017】
これらの請求項3,4,6,7の数値条件は、下式数1の不等式関係となる。
【0018】
【数1】
【0019】
このように、特許請求項3,4の発明は、噴出ノズルの一列の縦列(縦単列という)だけで確実に洗浄できる数値条件である。この場合横方向(搬送方向)に複数の噴出ノズルがあるのは、より確実に又はより多くの回数洗浄することで洗浄度を高めることにある。
又、特許請求項5を引用した請求項6,7の発明は、噴出ノズルの横方向(搬送方向)の他の噴出ノズルとの複数個の横方向の噴出ノズルとの組み合わせによって、確実に洗浄できるための数値条件である。この場合は、下限の揺動周波数がより低く(又は搬送速度をより高く)できる利点がある。
請求項3,4の発明の縦単列の確実に洗浄する数値条件か、又は複数の横方向の噴出ノズルを用いた請求項6,7の条件のいずれかを満足させればよい。
又、請求項3,4,6,7における数値条件において、最小の口径φ0を用いるか、みなし口径φ=φ0+φnを選択するかはどちらでもよいが、厳しい条件の最小の口径φ0の方を用いて設計すれば更に確実となる。
【0020】
又、本願発明の数値限定の発明において、揺動周波数fの上限として、不充分な塗り潰し方式で横方向に複数の噴出ノズルを設けることで、孔・袋穴の開口内部を確率的に大略洗浄できるようにできるv/(2φn)の周波数の揺動に比べて有利とするとしてもよい。即ち、下記数2としてもよい。
【0021】
【数2】
【0022】
確実な洗浄には、これらの他に副縦噴出ノズル列の存在、周波数の揺らぎ等の手段との組み合わせることでも可能である。
実用的には、組み合わせれば上記条件の必要(最低)周波数を更に低くできる。又は送り速度vを速くできる。
【0023】
例えば、確実に洗浄する別の方法として、噴水ノズル体を孔・袋穴の開口が横方向の噴水巾を重複させる全ての噴出ノズルの水流を受けている間に、噴水ノズル体の周波数fに±△fの揺らぎ(変動)を与えることで、孔・袋穴の開口に対し噴出ノズルが噴水開始する開始位相及びその時の噴水ノズル体の揺動の一波長の長さが変わることで、噴水ノズルを開口に流入させる確率を増大できる。この周波数変動は10%以上とすることで水流が開口に流れ込む確率が高く、確実な洗浄ができる。
この周波数fの揺らぎと前記の噴出ノズルの設置位置を適切にすることの組み合わせで、更に異なった位相で複数の噴出ノズルによる水流を同一の孔・袋穴の開口に与えることができるようにすることもできる。
【0024】
又、噴出ノズルを千鳥配列の如く、各縦噴出ノズル列Xの横方向にオフセットした縦方向で、縦噴出ノズル列Xの各噴出ノズルのピッチの中間位置に縦噴出ノズル列Yの噴出ノズルを設けるようにすれば、同一の孔・袋穴を複数の縦方向に位置を変えた噴出ノズルで重複させて噴水して洗浄することとなり、より確実な洗浄となる。
【0025】
又、本発明は物品の送りが円運動,円弧運動する場合にも適用できる。その場合は円周方向(物品の送りの軌跡方向)が送り方向(横方向)となり、半径方向(送り軌跡の曲率中心方向)が送り方向と直角の方向(縦方向)となり、噴水ノズル体の各噴出ノズルも半径方向と円周方向に複数設けられ、噴水ノズル体は半径方向に往復動するようにし、複数の噴出ノズル縦方向の噴水巾が重複するようにさせる。各噴出ノズルが噴水する噴水巾内にある孔・袋穴等の孔の送り速度は周速度となって孔の半径方向位置(縦位置)で送り速度が異なるが、この送り速度vと、噴水ノズル体の半径方向の往復動の周波数f,孔・袋穴の孔の口径φ0,みなし口径φ及び0°〜360°の全位相の覆うような位相差の条件を満たせば確実な洗浄を確保できる。本発明はこのようなものも含むものである。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示す実施例1の被洗浄の物品は、電気装置のHDDのケースであって、その上面及び下面の表面に金属加工で設けられたM3程の袋穴・ねじ孔を洗浄する例であり、これをスラット式のコンベヤ装置で直線的に搬送しながら、被洗浄物品の上面・下面に向けて上下の噴水ノズル体が揺動しながら噴水させて洗浄する例である。
【0027】
図1は、実施例1に用いる洗浄装置を示す平面図である。
図2は、実施例1の洗浄装置の側面図である。
図3は、実施例1の噴水ノズル体における噴出ノズルの配置説明図である。
図4は、噴出ノズルの水流の物品の表面への噴出点の軌跡を示す説明図である。
図5は、噴出ノズルの水流による孔内部の洗浄の行程を示す説明図である。
図6は、噴出ノズルの水流の軌跡と最小の孔の開口との関係を示す説明図である。
図7は、実施例1での噴水巾を重複する横方向の3個の噴出ノズルの噴水の開口に対する位相と0°〜360°を覆うことを示す説明図である。
図8は、実施例1の往復動装置の変換機構を示す側面からみた説明図である。
図9は、実施例1のエキセントリックカムの拡大断面図である。
図10は、実施例1の水管を取り付けた進退自在な往復台を示す説明図である。
図11は、往復動用モータの回転出力軸に取り付ける偏芯ボスを示す拡大平面図である。
図12は、偏芯ボスのエンドプレートを示す拡大平面図である。
図13〜16は、変換機構の動作を示す説明図である。
【0028】
図中、Aは実施例1で用いる水流による洗浄装置であり、Bは被洗浄の物品である電子機器のハードディスクのHDDケース(物品ともいう)、CはHDDケースBを搬送するスラット式のコンベヤ装置、1〜5bは水流による洗浄装置Aの構成部分であって、1はコンベヤ装置Cの上方と下方の位置に対向するように配置された一対の噴水ノズル体、2は同噴水ノズル体に千鳥状に配置された噴出ノズルであって、ノズルの噴出口の口径(ノズル径)は0.3mm直径である。3は各噴出ノズル2への洗浄水を一時貯える貯水部、4は貯水部へ洗浄水を送る水管、4aは同水管と接続された耐圧で往復動に対応できる給水ホース、5は水管4・貯水部3・噴水ノズル体1とをコンベヤ装置Cの送り方向と直交する水平方向に20mmのストローク(振巾10mm)で往復動させる往復動装置、5aは同往復動装置の設置固定台6に取り付けられた往復動用モータ、5a1は同モータのキー付の回転出力軸、5bは水管4を取付けて往復動する往復台、5b1は設置固定台6に設けられた往復用レール6aに沿って往復台5bを進退させるリニアガイド、5cはモータ5aの回転を往復動に運動変換するエキセントリックカム5dを使った変換機構である。エキセントリックカム5dは、回転出力軸5a1の軸端のキーをキー溝に嵌合させて軸端に偏芯するように取り付けた円形状偏芯ボス5d1と、同偏芯ボス5d1の外周に周着したベアリング5d2と、同ベアリングが外れないように偏芯ボス5d1の頭部に被せてネジ5d4,5d5でもって回転出力軸5a1と偏芯ボス5d1とに固着されたエンドプレート5d3とから形成されている。又変換機構5cは、この偏心回転するエキセントリックカム5d(ベアリング5d2)とこの外周と前後で当接し、同エキセントリックカム5dを内側で回動できるようにする開口5e1を有する当て板5eと、水管4と当て板5eを取り付けた往復台5bと、同往復台5bを往復動させる設置固定台6上のレール6aと、往復台5bに取り付けたレール6aを摺動するリニアガイド5b1とからなっている。
又、図中6は往復動装置5を装置する設置固定台、6aは同設置固定台上に設けた左右一対のレールである。
本実施例1の水管4の揺動手段は、変換機構5cを有する往復動装置5とそれを作動させる往復動用モータ5aからなる。
本実施例の噴水ノズル体1の往復動は、モータ5aを回転させると、その回転出力軸5a1が回転し、同回転出力軸5a1に10mm偏芯して取り付けた偏芯ボス5d1がネジ5d5の偏芯位置を中心にして回転し、これによって偏芯ボス5d1の外周に取り付けたベアリング5d2も偏芯した中心まわりに回転し、これと当接する当て板5e及びこれを取り付けた往復台5bは偏芯量±10mmの振巾で水管4を管方向に往復動させる。
図8に変換機構5cを、図9にエキセントリックカム5dを、図10に往復台5bを、図11に偏芯ボス5d1を、図12にエンドプレート5d3を、図13〜16に変換機構の動作を示している。
本実施例1の洗浄対象物は、HDDケースBであり、そのHDDケースBの表面に設けられた袋穴・ねじ孔等の孔hの開口の最小の口径φ0は1.4mmである。
【0029】
この実施例1で使用する噴水ノズル体1には、縦方向の6個の20mmの等ピッチの噴出ノズル2からなる縦噴出ノズル列Xを、横方向に48mm等ピッチで3列設けている。又縦噴出ノズル列Xの噴出ノズル2の縦方向の中間位置で且つ縦噴出ノズル列Xから横方向に25mmオフセット位置に縦5個の噴出ノズル2を設けた縦噴出ノズル列Yと更にその横方向に48mm等ピッチで2列の縦噴出ノズル列Yを設け、縦噴出ノズル列Yを計3列設け、縦噴出ノズル列X,Yの各噴出ノズル2は千鳥配置状態となっている。横3列の縦噴出ノズル列Xの格子状配列の噴出ノズル群と、横3列の縦噴出ノズル列Yの格子状配列の噴出ノズル群の二群を縦横にオフセットした位置に設けた千鳥配列の例である。
各噴出ノズル2のノズル径φnは0.3mm直径のノズル径である。
【0030】
噴水ノズル体1の物品Bの送り方向の直角方向での往復動(揺動)の周波数fは、600回/分であって10回/秒であり、その往復動の振巾は10mmで20mmのストローク(全巾)である。又コンベヤ装置Cの物品Bの送り速度vは1.0m/分で16.67mm/秒である。又物品Bの表面にあるねじ孔・袋穴の孔hは複数あるがその実際の最小の口径φ0は、1.4mmである。
【0031】
噴水ノズル体1の噴出ノズル2の配置は、千鳥状であり、縦方向に20mm間隔で、縦6個の噴出ノズル列Xと縦5個の噴出ノズル列Yが交互にそれぞれ横方向に3列24mmの等ピッチに設けられている。縦5個噴出ノズル列Yの噴出ノズル2は、縦6個噴出ノズル列Xの噴出ノズル2の縦の中間位置に設けられている。
【0032】
縦6個の噴出ノズル列Xの横方向の3列の噴出ノズル2は、その噴水巾20mm(振巾10mm)が全部重複する。同様に縦5個の噴出ノズル列Yの横3列の噴水巾も全部重複する。更に縦6個の噴出ノズル列Xの各噴出ノズル2の隣り合う上下の縦位置にある縦5個の噴出ノズル列Yの噴出ノズル2とは、その噴水巾の半分毎重複する。
しかも、各噴出ノズル列X,Yの噴出ノズル2の縦の噴水巾は、物品Bの表面の最大の縦巾の全域を覆っている。
【0033】
本実施例の諸元v,f,φ0,φ,φnは下記の通りである。
・物品の送り速度=v=1.0m/分=16.67mm/sec
・揺動の周波数=f=600回/分=10回/sec
・孔・袋穴の実際の最小の口径の開口=φ0=1.4mm
・噴出ノズルのノズル径=φn=0.3mm
・−波長の長さ=v/f=1.667mm
・各噴出ノズル列X,Yの横方向の噴出ノズルによる噴水巾重複の噴出ノズルの0°〜360°全位相を覆う最小の噴出ノズルの個数M=2
・みなし口径φ=φ0+φn=1.7mm
・v/φ0=16.67/1.4=11.9
・v/φ=v/(φ0+φn)=9.8
・v/M/φ0=5.95
・v/M/φ=v/M/(φ0+φn)=4.9
・v/φn=55.6
・v/2/φn=27.8
【0034】
本発明の条件不等式は下記の通りとなり、実施例の形態は、本発明の条件を充分に満たして確実に噴水で1回以上洗浄している。
・噴出ノズルのノズル直径φnの条件
φn<0.66φ0
φn=0.3mm<0.66*1.4mm=0.92mm
・周波数の上限条件
v/φn>f
55.6>10(Hz)
尚、v/2/φn>fに対して
v/2/φn=27.8>10(Hz)
・みなし口径とした場合の条件
f>(v/(φ0+φn))
10(Hz)>9.8
・360°位相を2個の噴出ノズルで覆う場合の条件
f>v/M/(φ0+φn) 又は f>v/M/φ0
10(Hz)>4.9 又は 10(Hz)>5.95
【0035】
以下、詳細に説明する。
(実際のφ0を用いた場合/みなし口径を使わない設計の場合)
噴出ノズルの中心が速度vで送られる孔・袋穴の最小の口径の開口φ0を通過する間の噴水ノズル体1の進み位相角度θは、φ0/v*360°*f であって、302°である。
又、各噴出ノズル列X,Yの横方向の噴出ノズル2はそのピッ48mmで、0mm,48mm,96mmの横方向の位置にあるので、横方向の噴出ノズルの開口の先端への噴水開始の開始位相及び位相角度範囲は下記の通りとなる。
【0036】
【表1】
よって、この横3列の噴出ノズル2でもって各位相角度範囲の総和は0°〜360°の全位相を2回覆う。
【0037】
しかも、f>(v/M/φ0)は、M=2、V=16.67mm/sec、φ0=1.4mmで、f=10回/sec>5.95 で条件を満たしている。更にこの重複は、噴出ノズル列X,Yそれぞれで満足しているので計4回以上洗浄することができる。
【0038】
このように、噴水巾を重複させる噴出ノズル2の開口を通過する位相角度範囲の総和が0°〜360°の全位相を覆うものであれば、噴水巾を通過する開口は噴出ノズル2の噴水流によって必ず1回以上開口を横切るようになる。しかも縦方向にある噴出ノズル2の噴水巾は、洗浄する物品の表面の縦の最大巾を覆うことになるので、孔・袋穴の孔hが物品Bの表面のどの位置にあっても確実に孔・袋穴の孔hの中に開口の実際の口径φ0の1.4mmの0.66倍の0.92mmより小さい0.3mm直径の糸状の噴水流が流れ込み、孔底まで入って還流して開口から円滑に排出されて洗浄する。
【0039】
噴水流が開口を横切る時の水の流れを図5,6に示す。噴水流の水断面積は0.3mm直径であり、最小の口径φ0の1.4mmに対して一方から近づき、開口の一端から水流が入り込み、他端から水流が吐出されて水流は開口の内部の奧まで水が移動して、開口の内部空間の油、汚れ、切粉を排除できる。開口の中心部で流入すれば、環状な還水となって排出され、洗浄する。
【0040】
縦6個の噴出ノズル列Xと縦5個の噴出ノズル列Yで、各2回ずつ計4回以上開口は横切って洗浄され、確実な洗浄が行える。尚、最小の口径φ0より大きい他の孔・袋穴の開口のものは、より確実に洗浄できるものである。
【0041】
(噴出ノズルのノズル径φnを考慮した場合/みなし口径φを使用した設計の場合)
上記の例において、噴出ノズルのノズル径φnを考慮した場合の開口のみなし口径φ=φ0+φnで、φ0は実際の最小の開口の口径φ01.4mmで計算すると、みなし口径φ=1.70mmとなり、みなし口径の開口を通過する進み位相角度は、367°であり、360°を超えていて開口の噴水の位相を考慮せず(噴出ノズル2の横の方向のいずれの位置・間隔と関係なく)、全ての横の噴出ノズル2は開口を通過することとなる。従って、実施例の例で実際は噴出ノズルφnを考慮した場合は横の噴出ノズル2の間隔(横位置)を考慮せずに、開口の内部を噴水流で計6回以上洗浄できる。このみなし口径φの方が実際に近い現象である。
このように、みなしの口径φの方を採用できるので、揺動の周波数f,物品の送り速度v,噴出ノズルの横位置の条件を緩めることができる。周波数fはまだ少し低くしてもよい。(又は送り速度を速くしてもよい。)
【0042】
この実施例1の洗浄方法を、洗浄水として洗浄剤を入れた洗浄水・温純水・超純水と水質を変えて繰り返し洗浄すると更に高い洗浄度の洗浄が行える。
【0043】
(他の実施例)
本発明の他の方法として、周波数fがf>(v/φ)を満足するように高くすれば、最小の開口のみなしの口径φが揺動の−波長長さ以上になり、横方向に一つの噴出ノズル(縦一列の噴出ノズル列のみ)でも開口を横切ることができる。
【0044】
従って、請求項5,6の複数の横方向の噴出ノズルでもって0°〜360°の全位相を覆うようにする発明は、主にf<(v/φ)又はf<(v/φ0)の場合に採用される方法である。
【0045】
本実施例1のように横方向の噴出ノズルの噴水巾が重複し、M個の噴出ノズルで0°〜360°の全位相を覆う場合は、その覆うに必要な最小の噴出ノズルの個数Mで除した周波数f値で済ますことができ、送り速度vを一定とすれば揺動周波数を減らすことができる。又は周波数を一定にすれば送り速度を速くでき、洗浄速度を高めること及び洗浄水の水量を減らすことができる。
【0046】
更に、本発明の他の方法として、揺動の周波数fに開口が噴水ノズル体を通過する間に揺らぎを与え、変動させることで、孔・袋孔等の孔に対し、噴出ノズル毎に別の波長の軌跡をもって噴水させることができ、よって物品の表面に隅なく噴水させることができ、確実に洗浄できるようになる。
【0047】
又、本発明では、物品の表面の全面を、ノズル直径φnの噴出ノズルの噴水で塗り潰すようにする塗り潰し方式の場合の揺動周波数fzに比べ、かなり小さくできて、揺動手段の負荷を小さくできる。塗り潰す揺動周波数fzは、揺動周波数の上死点又は下死点の位置での塗り潰しの条件から大略v/φn程の周波数となることから、本発明の揺動周波数fは、v/φnの周波数の1/3〜1/8程の低い値で済む。又、大略塗り潰し方式のv/(2φn)の周波数に比べ本発明の周波数は、その1/2〜1/4程の低い値で済ますことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、小型の電機部品、マイクロ機械部品、精密プラスチック製品・部品等の孔・袋穴あるいは表面に凹部がある物品の洗浄にも使用できる。又、動物・植物の微細孔・溝の洗浄、又は細部への給水の技術にも使える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に用いる洗浄装置を示す平面図である。
【図2】実施例1の洗浄装置の側面図である。
【図3】実施例1の噴水ノズル体における噴出ノズルの配置説明図である。
【図4】噴出ノズルの水流の物品の表面への噴出点の軌跡を示す説明図である。
【図5】噴出ノズルの水流による孔内部の洗浄の行程を示す説明図である。
【図6】噴出ノズルの水流の軌跡と最小の孔の開口との関係を示す説明図である。
【図7】実施例1での噴水巾を重複する横方向の3個の噴出ノズルの噴水の開口に対する位相と0°〜360°を覆うことを示す説明図である。
【図8】実施例1の往復動装置の変換機構を示す側面からみた説明図である。
【図9】実施例1のエキセントリックカムの拡大断面図である。
【図10】実施例1の水管を取り付けた進退自在な往復台を示す説明図である。
【図11】往復動用モータの回転出力軸に取り付ける偏芯ボスを示す拡大平面図である。
【図12】偏芯ボスのエンドプレートを示す拡大平面図である。
【図13】変換機構の動作を示す説明図である。
【図14】変換機構の動作を示す説明図である。
【図15】変換機構の動作を示す説明図である。
【図16】変換機構の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
A 洗浄装置
B HDDケース(被洗浄物品)
C コンベヤ装置
X,Y 縦噴出ノズル列
1 噴水ノズル体
2 噴出ノズル
3 貯水部
4 水管
4a 給水ホース
5 往復動装置
5a 往復動用モータ
5a1 回転出力軸
5b 往復台
5b1 リニアガイド
5c 変換機構
5d エキセントリックカム
5d1 偏芯ボス
5d2 ベアリング
5d3 エンドプレート
5d4,5d5 ネジ
5e 当て板
5e1 開口
6 設置固定台
6a レール
h 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する方法であって、洗浄される物品を一定方向に送るコンベヤ装置を設け、洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体を送られる物品の孔・袋穴のある物品表面に対向するように配置し、しかも噴水ノズル体の噴出ノズルは、物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設けられ、更に噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段を備えた設備を用い、
コンベヤ装置で物品を速度vで送りながら噴水ノズル体の噴出ノズルから複数の糸状の水流を物品の表面に向けて噴出させるとともに、揺動手段によって噴水ノズル体全体を物品の送り方向と直交する縦方向に高い周波数fで往復動させ、しかも噴水ノズル体の揺動で複数の噴出ノズルからの噴水流の縦方向の噴水巾が洗浄される物品表面の最大縦巾の全域を覆うようにノズルの位置の配置又は噴水ノズル体の揺動ストローク量を定め、揺動手段による往復動を高周波数とすることで、噴出ノズルからの水流が孔・袋穴の内部に確実に流入してその内部をよく洗浄できるようにしたことを特徴とする、小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項2】
噴水ノズル体に縦方向の噴出ノズルの間隔が同じである二組の格子状に配列された噴出ノズル群を設けるとともに、他方の群の噴出ノズルの縦位置が一方の群の噴出ノズルの縦位置の中間となるように且つ横位置が異なるように千鳥状に設けるようにした、請求項1記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項3】
揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数をfとし、物品の送り速度をvとし、物品の表面にある最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径をφ0とし、又噴出ノズルのノズル直径をφnとしたとき、(v/φn)>f>(v/φ0)の不等式が成立する高周波数とした、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項4】
揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数fを、物品の送り速度をvとし、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/φ)の不等式が成立する高周波数とした、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項5】
噴水巾が重複する横方向に配置された噴出ノズルの噴水流が物品表面の最小の口径の孔・袋穴の開口の先端の横位置から同開口の終端の横位置を通過するまでの間の噴水ノズル体の揺動の位相角度範囲の総和が0°〜360°の全位相を覆うように揺動周波数又は噴出ノズルの配置を定めた、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項6】
噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnとしたとき、(v/φn)>f>(v/M/φ0)の不等式が成立する周波数fとした請求項5記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項7】
噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/M/φ)の不等式が成立する周波数fとした請求項5記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項8】
噴水ノズル体の噴出ノズルが縦方向に等ピッチで配置され、同ピッチの間隔以上の長さを噴水ノズル体の揺動ストローク量とした、請求項1〜7いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項9】
噴水ノズル体の往復動の周波数fの値を、物品が噴水巾を重複させる横方向の噴出ノズルの全部を通過する時間内で時間的に変動させるようにした、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項10】
請求項1〜9の物品の表面の孔・袋穴の洗浄方法を用いて複数回洗浄するものであって、1回目の洗浄水として水・温水又はこれらに洗浄液を入れたものを使用し、2回目の洗浄水として温純水を使用し、3回目の洗浄水として超純水を使用して完全乾燥させる行程でもって洗浄化する、物品表面の孔・袋穴の高度洗浄方法。
【請求項11】
表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する洗浄装置であって、洗浄される物品を一定の方向に送るコンベヤ装置と、同コンベヤ装置で送られる物品の表面に対向して洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体と、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段とを備え、前記噴水ノズル体の噴出ノズルは物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設け、しかも噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、更に前記揺動手段の縦方向の揺動のストロークは縦方向の噴出ノズルの間隔の長さ以上とした、物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄装置。
【請求項1】
表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する方法であって、洗浄される物品を一定方向に送るコンベヤ装置を設け、洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体を送られる物品の孔・袋穴のある物品表面に対向するように配置し、しかも噴水ノズル体の噴出ノズルは、物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設けられ、更に噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段を備えた設備を用い、
コンベヤ装置で物品を速度vで送りながら噴水ノズル体の噴出ノズルから複数の糸状の水流を物品の表面に向けて噴出させるとともに、揺動手段によって噴水ノズル体全体を物品の送り方向と直交する縦方向に高い周波数fで往復動させ、しかも噴水ノズル体の揺動で複数の噴出ノズルからの噴水流の縦方向の噴水巾が洗浄される物品表面の最大縦巾の全域を覆うようにノズルの位置の配置又は噴水ノズル体の揺動ストローク量を定め、揺動手段による往復動を高周波数とすることで、噴出ノズルからの水流が孔・袋穴の内部に確実に流入してその内部をよく洗浄できるようにしたことを特徴とする、小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項2】
噴水ノズル体に縦方向の噴出ノズルの間隔が同じである二組の格子状に配列された噴出ノズル群を設けるとともに、他方の群の噴出ノズルの縦位置が一方の群の噴出ノズルの縦位置の中間となるように且つ横位置が異なるように千鳥状に設けるようにした、請求項1記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項3】
揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数をfとし、物品の送り速度をvとし、物品の表面にある最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径をφ0とし、又噴出ノズルのノズル直径をφnとしたとき、(v/φn)>f>(v/φ0)の不等式が成立する高周波数とした、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項4】
揺動手段による噴水ノズル体の揺動の周波数fを、物品の送り速度をvとし、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/φ)の不等式が成立する高周波数とした、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項5】
噴水巾が重複する横方向に配置された噴出ノズルの噴水流が物品表面の最小の口径の孔・袋穴の開口の先端の横位置から同開口の終端の横位置を通過するまでの間の噴水ノズル体の揺動の位相角度範囲の総和が0°〜360°の全位相を覆うように揺動周波数又は噴出ノズルの配置を定めた、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項6】
噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnとしたとき、(v/φn)>f>(v/M/φ0)の不等式が成立する周波数fとした請求項5記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項7】
噴水巾を重複させる複数の横方向の噴出ノズルによって0°〜360°の全位相を覆える最小の噴出ノズルの個数M、噴水ノズル体の揺動の周波数f、物品の送り速度v、最小の口径の孔・袋穴の開口の実際の口径φ0に噴出ノズルのノズル直径φnの長さを加えた値φ=φ0+φnを開口の最小のみなし口径φとして、(v/φn)>f>(v/M/φ)の不等式が成立する周波数fとした請求項5記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項8】
噴水ノズル体の噴出ノズルが縦方向に等ピッチで配置され、同ピッチの間隔以上の長さを噴水ノズル体の揺動ストローク量とした、請求項1〜7いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項9】
噴水ノズル体の往復動の周波数fの値を、物品が噴水巾を重複させる横方向の噴出ノズルの全部を通過する時間内で時間的に変動させるようにした、請求項1又は2いずれか記載の小径の孔・袋穴の内部の洗浄方法。
【請求項10】
請求項1〜9の物品の表面の孔・袋穴の洗浄方法を用いて複数回洗浄するものであって、1回目の洗浄水として水・温水又はこれらに洗浄液を入れたものを使用し、2回目の洗浄水として温純水を使用し、3回目の洗浄水として超純水を使用して完全乾燥させる行程でもって洗浄化する、物品表面の孔・袋穴の高度洗浄方法。
【請求項11】
表面に小径の孔又は袋穴を有する物品の孔・袋穴の内部を洗浄する洗浄装置であって、洗浄される物品を一定の方向に送るコンベヤ装置と、同コンベヤ装置で送られる物品の表面に対向して洗浄水を細い糸状の水流として噴出する噴出ノズルを噴出方向が同一方向になるように複数設けた噴水ノズル体と、同噴水ノズル体を物品の送り方向と直角の縦方向に往復運動させる揺動手段とを備え、前記噴水ノズル体の噴出ノズルは物品の送り方向と直交し且つ孔・袋穴のある表面と平行又は平行に近い略平行となる縦方向と送り方向となる横方向のそれぞれの方向に複数設け、しかも噴出ノズルのノズル直径φnを洗浄する孔・袋穴の開口の最小の口径φ0の0.66倍より小さくし、更に前記揺動手段の縦方向の揺動のストロークは縦方向の噴出ノズルの間隔の長さ以上とした、物品表面の小径の孔・袋穴の洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
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【図11】
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【図16】
【公開番号】特開2010−51947(P2010−51947A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284126(P2008−284126)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(390015761)株式会社今泉鐵工所 (2)
【出願人】(391053825)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(390015761)株式会社今泉鐵工所 (2)
【出願人】(391053825)
【Fターム(参考)】
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