説明

物性及び高温安全性に優れたポリオレフィン系多層微多孔膜

本発明は、電池用分離膜に使用できるポリオレフィン系多層微多孔膜とその製造方法に関する。本発明によるポリオレフィン系多層微多孔膜の少なくとも一層は、融点130〜140℃であるポリエチレンを90〜100重量%含み、少なくとも他の一層は、耐熱樹脂を20重量%以上含み、有機フィラー、無機フィラー及びこれらの混合物から選択されるフィラーは80重量%以下含む。これらの耐熱樹脂は、半結晶性高分子または非晶質高分子を使用することが好ましく、半結晶性高分子は結晶化度が10〜45%であるか溶融熱含量が20〜90J/gであり、結晶の融点は145〜250℃であり、ガラス転移温度が−100〜90℃である。非晶質高分子は、結晶がなく、ガラス転移温度が90〜120℃であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質安全性及び耐熱性に優れたポリオレフィン系多層微多孔膜に関する。より具体的に、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、耐熱樹脂に起因する高い溶融破断温度及び低収縮特性を同時に有するだけでなく、湿式法で製造された分離膜の特徴である均一な微多孔及び高剛性/安全性の特性と、乾式法で製造された大きい気孔による高透過/高強度の特性を同時に有することにより、高容量/高出力の二次電池に使用する場合に優れた効果を奏するポリオレフィン系多層微多孔膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系微多孔膜(microporous film)は、その化学的安全性と優れた物性により、各種電池用分離膜(battery separator)、分離用フィルタ及び微細濾過用分離膜(membrane)等に広く用いられている。
【0003】
ポリオレフィンから微多孔膜を製造する方法のうち、ポリオレフィンを高温で希釈剤(diluent)と混練して単一相を製造し、冷却過程でポリオレフィンと希釈剤とを相分離した後、希釈剤部分を抽出してポリオレフィンに空隙を作る湿式法は、薄膜のフィルムを製造することができ、強度と透過度に優れ、気孔が均一で品質安全性にも優れるため、高容量/高出力のリチウムイオン二次電池等の産業用分離膜に広く使用されている。
【0004】
湿式法による一般的な多孔性フィルムの製造方法は、米国特許第4,247,498号に開示されており、この特許には、ポリエチレンとこれに適した希釈剤を使用し、これらの混合物を高温でブレンドして熱力学的単一相溶液を製造した後、これを冷却して冷却過程でポリエチレンと希釈剤とを相分離し、これを用いてポリオレフィン多孔膜を製造する技術が記載されている。
【0005】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が非常に高い優れた電池であるが、短絡発生時に爆発の危険性が存在するため、使用分離膜は高い品質水準とともに品質安全性も大きく要求されている。最近は、ハイブリッドカー用電池等のように、リチウムイオン二次電池の高容量、高出力の傾向に伴い、既存の湿式製品の品質安全性に加え、分離膜の熱的安全性がより一層要求されている。その理由は、分離膜の熱安定性が劣ると、電池の過熱により分離膜が溶融破断して爆発の危険性が高くなるためである。
【0006】
電池の熱安定性は、分離膜の閉温度、溶融破断温度、高温での収縮率、横方向(電極/分離膜が巻回される方向に対して垂直方向)溶融収縮率、高温での分離膜強度等に影響を受ける。
【0007】
閉温度は、電池の異常現象により電池の内部温度が非理想的に増加する場合、隔離膜の微多孔が閉じ、それ以上電流が流れなくなる温度である。溶融破断温度は、閉温度以上に電池の温度が上昇し続ける場合、分離膜が溶融破断され、電流が再び流れるようになる(電極間短絡が発生する)温度である。電池の熱安全性のためには、分離膜の閉温度は低く、溶融破断温度は高い方が好ましい。
【0008】
高温での収縮率は、電池が内/外的な要因により昇温する場合、溶融前の分離膜が収縮される程度であり、横方向溶融収縮率は、分離膜が溶融される過程で発生する収縮の程度である。二つの収縮率が大きいと、電池内部が高温になった場合、収縮過程で電極の端部が露出されて電極間の短絡が生じ、そのため発熱/発火/爆発等が発生する。分離膜の溶融破断温度が高くても高温での収縮率と横方向溶融収縮率が大きいと、分離膜が溶融される過程で電極の端部が露出され電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0009】
高温での高い分離膜強度は、電池の充放電過程中に電極から生成するデンドライト等により高温で発生され得る分離膜損傷を防止し、電極間の短絡を防止するために必要である。また、高温で分離膜強度が弱いと、膜破断による短絡が生じる可能性もあり、電極間短絡による発熱/発火/爆発等が発生する。
【0010】
分離膜の熱安全性を向上させるための努力は、大きく三つの方向に展開されてきた。無機物あるいは耐熱性を有する樹脂を既存のポリエチレンに添加して分離膜の耐熱性を高める方法と、耐熱性を有する物質を表面にコーティングする方法、及び耐熱性を有する層が存在する多層分離膜を製造する方法である。
【0011】
米国特許第6,949,315号には、超高分子量ポリエチレンに5〜15重量%の酸化チタン等の無機物を混練して分離膜の熱安定性を向上したフィルムが開示されている。しかし、この方法は、無機物添加による熱安定性向上の効果はあるが、無機物投入による混練性の低下及び混練性の低下による延伸時のピンホール発生及び品質不均一等の問題が発生しやすく、無機物と高分子樹脂界面の親和性(Compatibility)不足により、衝撃強度等のフィルム物性の低下が生じる。このような短所は無機物を使用する分離膜には必然的に現われるものである。
【0012】
無機物の代わりに耐熱性に優れた樹脂を混練して製造される分離膜は、米国特許第5,641,565号に開示されている。この技術は、ポリエチレンに5〜45重量%のポリプロピレンを混合した樹脂混合物に、30〜75重量%の有機液状化合物と10〜50重量%の無機物を混合した後、有機液状化合物と無機物を抽出して分離膜を製造する技術である。この技術では、無機物を抽出してはいるが、前記の無機物混練時の問題点を依然として有しており、前記特許で自ら言及したように、ポリエチレンと混練性のないポリプロピレンの添加による物性低下が発生する。また、この方法は、使用された無機物を抽出、除去するための工程が加えられて工程の複雑になる短所があり、十分な耐熱効果を得るためには、比較的多量のポリプロピレンを必要とし、この場合、分離膜の物性はさらに低くなる。
【0013】
耐熱性を有する物質を微多孔膜表面にコーティングする方法は、米国公開特許第2006−0055075号に開示されている。しかし、コーティング方式はコーティング層の透過度を高めることに限界があるため、全体フィルムの透過度が低下し、コーティング層と微多孔膜フィルムとの間のウェッティング(wetting)性低下により品質不均一が発生する可能性が高い。
【0014】
分離膜の熱安定性を増加させるために多層分離膜を製造する方法はラミネーションを利用するものである。米国特許第5,691,077号には、閉特性に優れた(低融点)ポリエチレンに、溶融破断温度が高い(高融点)ポリプロピレン樹脂をラミネートして3層構造の分離膜を製造する方法が開示されている。この分離膜は、熱的特性には優れているが低温乾式法によるフイルム製造過程における延伸不均一、ピンホール発生、厚さ偏差の増加等の短所とともに、別途の工程で行われるラミネーション工程の追加による生産性低下の問題だけでなく、ラミネーション不良によるデラミネーション問題もあるため、広く使用されていない。この方法は優れた耐熱性にもかかわらず、二次電池用分離膜で必須とする剛性、透過性、品質均一性及び生産性が劣る問題点を有している。
【0015】
日本公開特許2002−321323と国際公開特許WO2004/089627には、湿式法で製造されるポリエチレン微多孔膜層を主(main)層とし、同様に湿式法で製造されるポリエチレンとポリプロピレンが混合された層を表面層とする多層分離膜が開示されている。これらの分離膜は、湿式工程により製造され、品質安全性には優れているが、ポリプロピレン樹脂の耐熱性以上の耐熱性を有するには限界があり、耐熱性向上のためにポリプロピレンの含有量を増加させると高い透過度を具現することができず、高容量/高出力の電池に適用することができない。また、多層の分離膜を全て湿式法で製造するため、製造工程が難しくなる短所もある。国際公開特許WO2006/038532には、無機粒子を含む多層湿式分離膜が開示されており、この分離膜もまた前記のように多層の分離膜を全て湿式法で製造することによる難しい混練工程と、耐熱層にもフィルム生産過程で必ず抽出しなければならない希釈剤を50%以上含むため、製品の生産において低い物性向上の効果(耐熱層は希釈剤が含まれた軟化状態で延伸を行うため、延伸効果が低下する)を示す。国際公開特許WO2007/046473には、ポリプロピレン単独で表面層を構成する多層分離膜が開示されているが、結晶化度の高いポリプロピレンからなる層を低温で延伸して内部クラックを誘発し、高い透過度を具現する方法であって、透過度具現は容易である反面、ポリプロピレン層のネットワークが弱く形成されて耐熱性向上の効果は大きくない。
【0016】
二次電池用分離膜の必須特性は、剛性、透過性及び品質均一性であり、最近、さらに熱安定性が大きく要求されている。しかし、前記従来技術は、湿式工程の分離膜水準の品質安全性と剛性/透過性と共に高い熱安定性を同時に達成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、結晶化度が10〜45%であるか溶融熱含量が20〜90J/gであり、融点が145〜250℃、ガラス転移温度が−100〜90℃である半結晶性高分子(semicrystalline polymer)またはガラス転移温度が90〜120℃である非晶質高分子(amorphous polymer)に、無機物フィラーや130℃で固相を維持する有機フィラー(融点またはガラス転移温度が130〜250℃以上の有機物)を混合して延伸すると、樹脂とフィラーとの界面が拡開して気孔が形成され、耐熱性と透過性に優れた多孔膜を製造することができ、この多孔膜を湿式法で製造される多孔膜とともに別途の層に使用すると、物性及び品質安全性に優れた湿式法で製造されるポリエチレン微多孔膜層と耐熱性に優れた多孔膜層で構成された剛性と透過性を同時に有する多層分離膜を製造することができ、また、この多層分離膜は、剛性、透過性、品質安全性及び熱安定性が同時に非常に優れているという事実に注目して本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による品質安全性、剛性、透過性、熱安定性に優れたポリオレフィン系多層分離膜の特徴は下記のとおりである。
【0019】
(1)2層以上を積層したポリオレフィン系微多孔膜であって、少なくとも一層は融点が130〜140℃であるポリエチレンを90重量%以上含み、少なくとも他の一層は耐熱樹脂を20重量%以上含み、130℃で固相を維持する有機フィラー、無機フィラー及びこれらの混合物から選択されたフィラーを80重量%以下含む。耐熱樹脂は半結晶性高分子または非晶質高分子が好適であり、半結晶性高分子は結晶化度が10〜45%であるか溶融熱含量が20〜90J/gであり、結晶の融点は145〜250℃であり、ガラス転移温度が−100〜90℃であり、非晶質高分子は、結晶がなく、ガラス転移温度が90〜120℃であるものが好ましい。本発明は、前記のように構成されたポリオレフィン系多層微多孔膜を提供する。
【0020】
(2)前記(1)において、ポリエチレンで構成された多孔層の平均気孔サイズは0.1μm以下であり、ポリエチレンでなく、半結晶性高分子または非晶質高分子で構成された多孔層の気孔の代表径が5〜100μmであるポリオレフィン系多層微多孔膜を提供する。
【0021】
(3)前記(2)において、3層以上を積層したポリオレフィン系微多孔膜であって、融点が130〜140℃であるポリエチレンを90〜100重量%含む層を両表面層とするポリオレフィン系微多孔膜を提供する。
【0022】
(4)前記(2)と(3)の何れか一つにおいて、膜厚が9〜30μm、穿孔強度0.15N/μm以上、透過度1.5×10−5Darcy以上、120℃で穿孔強度が0.05N/μm以上、溶融破断温度が170℃以上のポリオレフィン系多層微多孔膜を提供する。
【0023】
(5)前記(4)において、膜厚が9〜30μm、穿孔強度0.20N/μm以上、透過度2.0×10−5〜10.0×10−5Darcy、120℃で穿孔強度が0.06N/μm以上、溶融破断温度が180℃以上のポリオレフィン系多層微多孔膜を提供する。
【0024】
(6)前記(5)において、縦方向、横方向の120℃−1hr収縮率が0〜12%であり、分離膜厚で標準化した外部応力2.0mN/μmで、TMA上の横方向の最大収縮率が0%以下のポリオレフィン系微多孔膜を提供する。
【0025】
(7)前記(6)において、縦方向、横方向の120℃−1hr収縮率が0〜10%であり、隔離膜厚で標準化した外部応力1.5mN/μmで、TMA上の横方向の最大収縮率が0%以下のポリオレフィン系微多孔膜を提供する。
【0026】
以下、本発明をより具体的に説明すると次のとおりである。
【0027】
本発明は、2層以上を積層したポリオレフィン系多層微多孔膜であって、少なくとも一層は融点が130〜140℃であるポリエチレン90〜100重量%を含むポリエチレン系多孔層であり、少なくとも他の一層は結晶化度10〜45%であるか結晶の溶融熱含量が20〜90J/gであり、結晶の融点145〜250℃及びガラス転移温度−100〜90℃である半結晶性高分子、ガラス転移温度90〜120℃である非晶質高分子、これらの混合物からなる群から選択される耐熱樹脂が含まれる耐熱樹脂層を含むポリオレフィン系多層微多孔膜を提供する。また、前記耐熱樹脂層は、前記耐熱樹脂20〜75重量%と130℃で固相を維持する有機フィラー、無機フィラー及びこれらの混合物からなる群から選択されるフィラー25〜80重量%を含んでもよい。
【0028】
本発明は、2層以上を積層したポリオレフィン系多層微多孔膜であって、少なくとも一層は融点が130〜140℃であるポリエチレンを90〜100重量%含む。一般的なポリエチレンは融点が135℃以下であるため耐熱性を高めるには限界がある反面、閉温度が低いため電池安全性の確保には効果的である。ポリエチレンの融点が130℃未満の場合には、閉温度が必要以上に低くなり、多層分離膜全体の溶融破断温度の上昇を阻害する可能性があるため、ポリエチレンの融点は130〜140℃であることが好ましい。また、ポリエチレン層のポリエチレン含量が90重量%未満の場合には、ポリエチレン層の物性が低下するとともに全体多層分離膜の物性も低下し、電池安全性を低下させる可能性があるため、ポリエチレン層のポリエチレン含量は90〜100重量%が好ましい。
【0029】
2層以上を積層したポリオレフィン系多層微多孔膜の一層は、耐熱樹脂を20重量%以上含み、130℃で固相を維持する有機または無機フィラーを80重量%以上含んでもよい。耐熱樹脂は半結晶性高分子または非晶質高分子が好適であり、半結晶性高分子は結晶化度が10〜45%であるか溶融熱含量が20〜90J/gであり、結晶の融点は145〜250℃であり、ガラス転移温度が90℃以下、好ましくは−100〜90℃であってもよく、非晶質高分子は、結晶がなく、ガラス転移温度が90〜120℃であってもよい。
【0030】
本発明は、湿式で製造されるポリエチレンシートと耐熱樹脂を使用するシートを積層してともに延伸を行い、ポリエチレン内の結晶の一部が溶融される温度(約100〜130℃)で多層シートを延伸する。ポリエチレン層と耐熱層を同時に延伸することにより工程を簡単にすることができ、生産性向上に効果的である。ポリエチレンシートを延伸する温度で耐熱樹脂の一定含量以上が流動性のない固体として存在すると、耐熱樹脂は、延伸工程中に延伸されず破断が発生して耐熱性向上の効果が非常に小さく、物性が低下する問題が生じる可能性がある。そのため、耐熱樹脂は、延伸温度領域(約100〜130℃)で一定以上の流動性が確保されるように、結晶化度が10〜45%であるか溶融熱含量が20〜90J/gであり、ガラス転移温度は90℃以下であり、好ましくは−100〜90℃である半結晶性高分子またはガラス転移温度が90〜120℃である非晶質高分子が好ましい。半結晶性高分子の結晶化度が45%を超える場合には、延伸温度で耐熱樹脂の50%以上が固体として存在する(結晶の含量は45%であるが、結晶に連結されている樹脂鎖の一部は流動性を確保できておらず50%以上は流動性がない)ため、延伸過程で耐熱層破断が誘発される可能性があり、結晶化度が45%以下でもガラス転移温度が90℃を超えると、延伸温度で耐熱樹脂の剛性が高くなり、延伸過程で耐熱層が破断し、耐熱性及び物性が低下する。
【0031】
結晶化度は、示差走査熱量計(DSC;differential scanning calorimeter)を用いて決定する。その計算法は、DSCで測定された溶融吸熱ピークの熱含量を文献上の100%結晶の溶融熱含量で除する方法であるが、100%結晶の溶融熱含量を定めることが容易でない場合もあるため、溶融熱含量が20〜90J/gであってもよい。吸熱ピークの熱含量が90J/g以下のもの、特に、20〜90J/gのものは、結晶化度が低いか結晶の変形が容易なものであって、延伸過程で耐熱層の破断が発生しない。また、半結晶性耐熱樹脂は、ポリエチレンの融点である130℃以上の温度で溶融して流れなければ、多層分離膜の耐熱性向上を期待することができるため、融点が250℃以下であることが好ましく、145〜250℃であることがさらに好ましい。融点が250℃を超えると、溶融混練のための押出温度が過度に高くなり、樹脂の熱酸化がひどくなるため、品質を低下させる可能性がある。非晶質高分子の場合には、ガラス転移温度が90℃未満であると、延伸温度で樹脂が十分な流動性を有して延伸性は良好になるが、ポリエチレン以上の耐熱性を確保することが難く、ガラス転移温度が120℃を超えると、延伸温度で耐熱樹脂の流動性が大きくないため延伸過程で破断され、耐熱性向上が大きくないし、物性も低下する。ガラス転移温度が90〜120℃である非晶質高分子は、150℃以上の温度でもその流動性が大きくないため、多層分離膜の耐熱性向上の効果が大きい。
【0032】
該多層分離膜の気孔の特性は、ポリエチレン層の場合、ポリエチレンと希釈剤の相分離後に延伸及び抽出過程を経て製造されるマイクロ気孔であって、平均粒径は0.02〜0.1μmであり、耐熱樹脂層の場合、マトリックス樹脂と有機または無機フィラーとの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、気孔の代表径が0.5〜100μmである。
【0033】
ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤の相分離後に延伸及び抽出過程を経て製造されたマイクロ気孔であって、平均サイズは0.1μm以下であり、さらに好ましくは0.02〜0.1μmで均一にフィルム全体に分布されており、物性及び品質均一性、安全性等に優れている。また、耐熱樹脂からなる層の気孔は、耐熱樹脂と無機フィラーとの界面や耐熱樹脂と有機フィラーとの界面が延伸過程で拡開することにより形成されるマクロ気孔であって、多孔膜の面方向に円形板状に形成される気孔であり、その代表径は5〜100μmであり、剛性と透過性に優れている。マクロ気孔の代表径が5μm未満であると透過性が良好でなく、100μmを超えると気孔が過度に大きくなり物性及び耐熱性向上が大きくない。
【0034】
無機フィラーを含む耐熱樹脂層における無機フィラーは、気孔形成過程で気孔形成の核心として機能するだけでなく、最終製品内に残存して耐熱性向上に寄与し、電解液の含浸性を向上させる機能を行う。その含量は50〜80重量%が好ましく、耐熱樹脂は20〜50重量%が好ましい。無機フィラーの含量が50重量%未満であると、十分な量の気孔が形成されずその透過度が高くなく、80重量%超えると、耐熱樹脂の含量が少なくて延伸過程で耐熱樹脂のネットワークが破壊され、透過度は高いが分離膜の耐熱性向上が大きくないし、物性が低い。有機フィラーを用いて気孔を形成する場合、有機フィラーは延伸前のシート状態で耐熱樹脂と相分離され、耐熱樹脂内に微粒子形態で存在し、延伸過程で耐熱樹脂との界面で気孔拡開が発生して気孔が形成される。延伸過程で耐熱樹脂層に含まれている有機フィラーの量は25〜45重量%が好ましく、耐熱樹脂は55〜75重量%が好ましい。有機フィラーは無機フィラーに比べて密度が低いため、25〜45重量%だけでも十分な気孔を形成することができる。有機フィラーは延伸後にポリエチレン層の希釈剤を除去する過程で、ともに除去されてもよい。ポリエチレン層の希釈剤を抽出する溶媒に溶けることができる有機フィラーを使用すると、抽出過程で有機フィラーがともに除去されて耐熱樹脂層の透過度を向上させることができ、また、最終製品の取り扱い過程でフィラーの脱離等が発生しないため、製品の管理が容易である。このような有機フィラーを使用して製造される耐熱樹脂層の最終製品における耐熱樹脂の含量は100%である。その反面、希釈剤抽出溶媒に溶けない有機フィラーを使用する場合には、有機フィラーが耐熱樹脂層に残存して耐熱樹脂層の耐熱性及び電解液の含浸性の向上に寄与する。このような有機フィラーを使用して製造される耐熱樹脂層は、最終製品における耐熱樹脂の含量が55〜75重量%である。
【0035】
前記の無機フィラーと有機フィラーはそれぞれ単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。
【0036】
本発明は、2層以上を積層したフィルムであるが、分離膜の特性及び生産性の観点において、3層以上を積層し、融点が130〜140℃であるポリエチレンを90〜100重量%含む層を両表面層とすることが好ましい。ポリエチレンを用いて湿式で製造される層が表面層を構成すると、多層分離膜の両表面層の品質均一性に優れ、多層分離膜の品質均一性を向上させることができ、両表面層の気孔の平均サイズが0.02〜0.1μmであり、中問層の気孔の代表径が平均直径5〜100μmである大きい気孔で構成され、透過性に優れ、表面の気孔が小さく均一であり、電池の過充電特性と電解液の補液特性に優れ、耐熱樹脂層が中問層に位置するためフィラーの脱離が少なく、生産安全性を確保することが容易である。
【0037】
本発明の膜厚は、膜強度と電池の軽量化、電池安全性を考慮して9〜30μmが好ましい。膜厚が9μmより薄い場合、電池製造過程で外部応力と電池充放電時に発生するデンドライトのような針状に対する抵抗力が低下し、安全性を確保することができず、耐熱樹脂層が厚さが薄いため十分な耐熱性を確保することができない。また、膜厚が30μmより厚い場合、透過性が低下し、電池が必要以上に厚くなるという問題がある。耐熱樹脂層の厚さは3μm以上が好ましく、5〜10μmがさらに好ましい。耐熱樹脂層の厚さが3μm未満であると、耐熱性向上の効果が大きくなく、10μmを超えると膜全体の物性及び品質均一性が低下するという問題がある。
【0038】
常温での穿孔強度は0.15N/μm以上であり、好ましくは0.20N/μm〜0.50N/μmである。0.15N/μmより低いと、電池製造過程で発生され得る外傷に対する抵抗力が低くなり、電池安全性を確保することができない。
【0039】
120℃での穿孔強度は0.05N/μm以上であり、好ましくは0.10N/μm〜0.30N/μmである。120℃での穿孔強度が0.05N/μmより低いと、充放電過程で形成されたデンドライト等により高温で隔離膜が損傷され、その安全性を確保することができない。
【0040】
本発明の多層分離膜は、融点が145〜250℃である半結晶性高分子またはガラス転移温度が90〜120℃である耐熱性樹脂を用いるため、高温で熱安定性(形態維持安全性)に優れており、高温穿孔強度に優れている。
【0041】
本発明による微多孔膜の溶融破断温度は、使用される耐熱樹脂及びフィラーの種類及び含量により左右され、170℃以上が好ましく、180〜250℃がさらに好ましい。溶融破断温度が170℃未満の場合にはポリエチレンを単独で使用する分離膜の溶融破断温度が150℃であることを考慮すると電池の耐熱性向上効果が非常に小さい。
【0042】
応力が印加されていない状態で120℃での収縮率は、縦方向及び横方向にそれぞれ0〜12%であることが好ましく、それぞれ0〜10%であることがさらに好ましい。収縮率が12%を超えると、収縮により電極間の短絡が発生し、電池の安全性を確保することができない。
【0043】
厚さで標準化した外部から印加された力に対して、TMA(thermo−mechanical analysis)上の横方向の最大収縮率が0%以下である。TMAは、一定の力が印加された状態で昇温するとともに溶融過程で試片が収縮される程度を測定する装置であって、印加される力に応じて収縮される程度が異なって測定される。また収縮は同様な力が印加されても試片の厚さに応じてその大きさが異なるため、外部から印加された力を厚さで標準化しなければならない。本発明による分離膜は、厚さで標準化した外部から印加される力が2.0mN/μm(印加力/試片の厚さ)の場合、TMA上の横方向の最大収縮率が0%以下であり、好ましくは1.5mN/μmでTMA上の横方向の最大収縮率が0%以下である。本発明による分離膜は、ポリエチレンの溶融/収縮温度で耐熱樹脂が溶融されず、分離膜の溶融による収縮力が小さい。そのため、同様に外部から印加された力に対して収縮する程度が小さい。2.0mN/μmで横方向収縮率が0%を超えると、電池内部が高温になった時に溶融及び収縮過程で電極の端部が露出されて電極間の短絡が発生し、電池の安全性が低下する。
【0044】
前記ポリオレフィン系多層微多孔膜を製造する工程は次の工程を含む。その工程は、(a)耐熱性樹脂(融点が145〜250℃である半結晶性高分子またはガラス転移温度が90〜120℃である非晶質高分子)とフィラーからなる組成物を溶融混練する段階と、(b)融点が130℃以上のポリエチレンと希釈剤からなる組成物を溶融混練する段階と、(c)前記(a)及び(b)で溶融混練された溶融物を積層して多層シートに成形する段階と、(d)前記多層シートのうちポリエチレンからなる層のポリエチレンの結晶部分の30〜80%が溶ける温度範囲で前記多層シートを延伸してフィルムに成形する段階と、(e)前記フィルムから希釈剤と一部有機フィラーを抽出する段階と、(f)前記フィルムを熱固定する段階と、で構成される。
【0045】
以下、各段階をより詳細に説明すると次のとおりである。
【0046】
(a)耐熱樹脂(融点145〜250℃の半結晶性高分子またはガラス転移温度90〜120℃の非晶質高分子)とフィラーからなる組成物を溶融混練する段階を以下のように進める。
【0047】
結晶化度が10〜45%であり、融点が145〜250℃、ガラス転移温度が−100〜90℃である半結晶性高分子またはガラス転移温度が90〜120℃である非晶質高分子20〜75重量%とフィラー25〜80重量%からなる組成物を樹脂とフィラーの混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機あるいはバンバリーミキサー等を用いて溶融混練する。
【0048】
溶融混練温度は、フィラーが無機フィラーの場合には耐熱樹脂の融点(半結晶性高分子の場合)またはガラス転移温度(非晶質高分子の場合)に対して40〜70℃高い温度で加工することが好ましく、フィラーが有機フィラーの場合には、耐熱樹脂の融点(半結晶性高分子の場合)またはガラス転移温度(非晶質高分子の場合)または有機フィラーの融点(半結晶性高分子または結晶性有機物フィラーの場合)または有機フィラーのガラス転移温度(非晶質高分子フィラーの場合)のうち最も高い温度に対して40℃〜70℃高い温度で加工することが好ましい。溶融混練温度が前記温度領域より低い場合には、樹脂の未溶融により混練不良が発生する可能性があり、前記温度領域より高い場合には、温度が高すぎて耐熱樹脂を含む有機物の熱酸化がひどくなる可能性がある。耐熱樹脂とフィラーは、予めブレンドされてコンパウンダーに投入されても、分離した供給機(feeder)からそれぞれ投入されてもよい。また、予め他の混練機で1次にコンパウンディングされた組成物形態で投入されてもよい。
【0049】
適用される耐熱樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂(ナイロン系樹脂)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)等の半結晶性高分子とポリアクリル酸、ポリメタクリルレート、ポリスチレン、ABS樹脂等の非晶質高分子等である。
【0050】
前記樹脂のうちポリプロピレンの種類は特に限定されないが、プロピレン単独重合体は結晶化度が高いため適用することができず、プロピレンと他のオレフィンの共重合体またはこれらの混合物の何れかが好ましい。共重合体はランダム共重合体またはブロック共重合体を両方とも利用してもよい。共重合されるプロピレン以外のオレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が好ましい。
【0051】
前記耐熱性樹脂の好ましい分子量は、樹脂の種類に応じて相異するが、一般的に重量平均分子量が1.0×10〜5.0×10程度が好ましい。
【0052】
無機フィラーは、平均粒径が0.1〜3μmであるシリコンジオキシド(SiO)、アルミニウムオキシド(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化チタン(TiO)、天然または有機的に変形されたクレイあるいはこれらの混合物等を使用してもよい。
【0053】
有機フィラーは、耐熱層のネットワークを形成するマトリックス樹脂と異種の樹脂であって、融点が130〜250℃である半結晶性高分子、ガラス転移温度が130〜250℃である非晶質高分子、融点が130〜200℃であり、沸点が300℃以上の有機物等が好ましく、前記の耐熱性樹脂のほかにポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド等を使用してもよい。
【0054】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤等の特定機能向上のための一般的添加剤がさらに添加されてもよい。
【0055】
(b)融点が130℃以上のポリエチレン20〜50重量%と希釈剤80〜50重量%からなる組成物を溶融混練する段階を以下のように進める。
【0056】
ポリエチレンと希釈剤を溶融/混練/押出する工程では、ポリエチレンの割合は20〜50重量%が好ましい。ポリエチレンの割合が20重量%未満であると微多孔膜の強度及び混練性の確保が難しく、50重量%以上であると押出成形性が低下して隔離膜の透過度が大変低くなる現象が発生する。
【0057】
使用されるポリエチレンは、ホモポリエチレンまたはポリエチレンコポリマーあるいはこれらの混合物である。また、本発明のポリエチレンは、エチレン単独あるいはエチレンと炭素数3〜8のαオレフィンの共重合からなるホモポリエチレンあるいは共重合ポリエチレンまたはこれらの混合物であって、融点が130℃以上である。前記炭素数3〜8のαオレフィンコモノマーは、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。ポリエチレンの融点が130℃未満の場合にはポリエチレンの結晶度が低いため分離膜の透過度が大きく低下し、全体分離膜の熱安定性を阻害する可能性がある。最も好ましいポリエチレンの融点は130〜140℃である。
【0058】
前記ポリエチレンは、重量平均分子量が2×10〜3×10であることが好ましい。ポリエチレンの重量平均分子量が2×10未満の場合には最終多孔膜の物性が低下し、重量平均分子量が3×10を超える場合には押出混練性が低下して生産性が低下する。本発明におけるポリエチレンの重量平均分子量のより好ましい領域は2×10〜1.5×10である。
【0059】
本発明で使用される希釈剤としては、有機液状化合物(organic liquid)を使用することができ、例えば、ノナン(nonane)、デカン(decane)、デカリン(decalin)、パラフィンオイル(paraffin oil)等の脂肪族(aliphatic)あるいは環状炭化水素(cyclic hydrocarbon)とジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)等のフタル酸エステル(phthalic acid ester)がある。好ましくは、人体に無害で、沸点(boiling point)が高く、揮発性(volatile)成分が少ないパラフィンオイルが好適であり、さらに好ましくは、40℃での動粘度(kinetic viscosity)が20cSt〜200cStであるパラフィンオイルが好適である。パラフィンオイルの動粘度が200cStを超えると、押出工程での動粘度が高くなり、負荷上昇、シート及びフィルムの表面不良等の問題が発生する可能性があり、抽出工程における抽出が難しくなり、生産性が低下して残留オイルによる透過度減少等の問題が発生する可能性がある。パラフィンオイルの動粘度が20cSt未満であると、押出機内における溶融ポリエチレンとの粘度差により、押出加工時に混練が難しくなる。
【0060】
前記組成物は、希釈剤とポリエチレンとの混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機あるいはバンバリーミキサー等を用いて溶融混練する。溶融混練温度は180〜250℃が好ましい。ポリエチレンと希釈剤は、予めブレンドされてコンパウンダーに投入されても、分離した供給機(feeder)からそれぞれ投入されてもよい。
【0061】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤等の特定機能向上のための一般的添加剤がさらに添加されてもよい。
【0062】
(c)前記(a)及び(b)で溶融混練された溶融物を積層して多層シートに成形する段階を以下のように進める。
【0063】
溶融物からシート状の成形物を製造する方法は、一般的なキャスティング(casting)あるいはカレンダリング(calendering)方法を両方とも使用してもよい。キャスティングあるいはカレンダリングロールの好ましい温度は30〜80℃である。冷却ロールの温度が30℃未満の場合には、シートの急冷によるシートのしわが発生する可能性があり、冷却ロールの温度が80℃を超える場合には、冷却が十分でないため、表面不良等の問題が発生する可能性がある。
【0064】
多層のシートを製造する方法は、一般的な共押出法あるいは熱融着法等を使用してもよい。共押出法は、シート成形時にそれぞれの押出機から押出される溶融物を多層Tダイを介して共押出して多層シートを製造する方法であり、熱融着法は、それぞれの押出機から得たシートを重ね合って圧力を印加して熱融着する方法である。
【0065】
(d)前記多層シート内のポリエチレンからなる層内のポリエチレンの結晶部分が30〜80%程度の融点範囲で前記多層シートを延伸してフィルムに成形する段階を以下のように進める。
【0066】
延伸は、テンタータイブの同時延伸あるいはロールを用いて縦方向の1次延伸を行い、テンターで横方向の2次延伸を行う逐次延伸等の何れの延伸法を使用してもよい。延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ4倍以上であり、総延伸比は25〜60倍であることが好ましい。一方向の延伸比が4倍未満の場合には、一方向の配向が十分でなく、且つ縦方向及び横方向間の物性バランスが崩れ穿孔強度が低下する。また、総延伸比が25倍未満の場合には、未延伸が発生し、60倍を超える場合には、延伸中に破断が発生する可能性が高く、最終フィルムの収縮率が増加する短所がある。
【0067】
延伸温度は、使用されたポリエチレンの融点と希釈剤の濃度及び種類に応じて異なる。最も好ましい延伸温度は、多層シートポリエチレン層のポリエチレン結晶部分の30〜80重量%が溶ける範囲から選択されることが好ましい。温度による結晶部分の溶融程度は、シート成形物のDSC(differential scanning calorimeter)分析から得ることができる。延伸温度が、ポリエチレン層のポリエチレン結晶部分の30重量%が溶ける温度より低い温度範囲から選択されると、フィルムの軟質性(softness)がないため延伸性が低下し延伸時に破断が発生する可能性が高く、且つ未延伸も発生する。
【0068】
一方、延伸温度が、ポリエチレン層のポリエチレン結晶部分の80重量%が溶ける温度より高い温度範囲から選択されると、延伸が容易で、未延伸発生は少ないが、部分的な過延伸により厚さ偏差が発生し、樹脂の配向効果が少ないため物性が大きく低下する。前記の延伸温度領域は、耐熱樹脂が溶ける温度領域ではないが、本発明で使用する耐熱樹脂が延伸されることができるように軟性を確保する領域である。この延伸により、耐熱樹脂とフィラー層では耐熱樹脂が破断されず延伸され、且つ耐熱樹脂とフィラーとの界面が拡開して気孔が生じる。このように延伸された耐熱樹脂は、希釈剤なしに延伸され、延伸効果が高く、分離膜全体の物性向上にも寄与する。
【0069】
(e)前記フィルムから希釈剤と有機フィラーを抽出する段階を以下のように進める。
【0070】
延伸過程を経て厚さが薄くなったシート、即ち、フィルムを有機溶媒を使用してポリエチレン層の希釈剤と耐熱樹脂層の抽出可能な有機フィラーを抽出して乾燥する。本発明で使用可能な有機溶媒は特に限定されず、樹脂押出に使用された希釈剤と有機フィラーを抽出することができる如何なる溶媒も使用可能であるが、好ましくは抽出効率が高く乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド、ヘキサン等が好適である。抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法等一般的な全ての溶媒抽出方法が独立して、あるいは複合的に使用できる。抽出時の残留希釈剤の含量は1重量%以下でなければならない。残留希釈剤が1重量%を超えると、物性が低下し、フィルムの透過度が減少する。
【0071】
残留希釈剤の量は、抽出温度と抽出時間により大きく左右される。抽出温度は、希釈剤と溶媒の溶解度増加のために、高いことが好ましいが、溶媒の沸騰による安全性問題を考慮すると、20〜40℃が好ましい。抽出温度が希釈剤の凝固点以下であると、抽出効率が大きく低下するため、必ず希釈剤の凝固点より高くなければならない。抽出時間は、生産されるフィルムの厚さに応じて異なるが、9〜30μm厚さの微多孔膜を生産する場合、2〜4分が好ましい。
【0072】
(f)前記フィルムを熱固定する段階を以下のように進める。
【0073】
抽出後、乾燥したフィルムは、最後に残留応力を除去して最終フィルムの収縮率を減少させるために熱固定段階を経る。熱固定工程は、熱を印加した状態で収縮しようとするフィルムを強制に固定して残留応力を除去するものであって、熱固定温度と固定の割合に応じて収縮率と高温穿孔強度が影響を受ける。熱固定温度が高いと、樹脂の応力が低くなって収縮率が小さくなり、高温穿孔強度も高くなる。穿孔強度は、測定温度が上昇するほど樹脂の応力緩和が発生しながら低くなる現象が現われるが、熱固定温度が高い場合には、熱固定過程で十分な応力緩和が行われ温度上昇による穿孔強度の減少幅が大きくないため高温穿孔強度が高くなる。しかし、熱固定温度が高すぎる場合、フィルムが部分的に溶けて形成された微多孔が詰まり透過度が低下する。好ましい熱固定温度はポリエチレン層の結晶部分の10〜40重量%が溶ける温度範囲から選択されることが好ましい。前記熱固定温度が前記ポリエチレン層の結晶部分の10重量%が溶ける温度より低い温度範囲から選択されると、フィルム内のポリエチレン分子の再配列(reorientation)が十分でなく、フィルムの残留応力除去の効果がなく、ポリエチレン層の結晶部分の40重量%が溶ける温度より高い温度範囲から選択されると、部分的溶融により微多孔が詰まって透過度が低下する。また、熱固定時にテンタータイプの機械を用いて段階ごとに熱固定を行って引張強度と穿孔強度等の機械的物性を向上させ、収縮率を減少させる。熱固定過程における第一の段階で20〜50%ほど横方向に延伸して透過度を増加させ、引張強度と穿孔強度を向上させる。50%を超えて延伸すると、透過度及び引張強度の向上する長所がある反面、収縮率が大きくなり、横方向の配向性が増加して横方向のTMA収縮率も増加し、気孔の大きさが過度に増加する短所がある。第二の段階では、第一に延伸されたフィルムの幅を15〜40%ほど収縮させる。熱を加えた状態で横方向収縮を行って応力を緩和させ、樹脂の配向性を緩和して収縮率と横方向TMA収縮率を減少させる。この場合、40%以上に製品幅を収縮させると、透過度と穿孔強度が過度に低くなる問題があり、15%以下で収縮させると、応力及び樹脂配向性が緩和されず、収縮率と横方向TMA収縮率が大きくなり、気孔の大きく維持され、電池の安全性を確保することができない。また、熱固定時間は、熱固定温度が高い場合には相対的に短く、熱固定温度の低い場合には相対的に長くしてもよい。好ましくは、15秒〜1分程度が好適である。
延伸、抽出、熱固定の段階は、連続して実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0074】
本発明による多層微多孔膜は、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、耐熱樹脂及びフィラーに起因する高い溶融破断温度特性とを同時に有するだけでなく、湿式法で製造された分離膜の特徴である均一な微多孔及び高剛性/安全性の特徴と、乾式法で製造された大きい気孔による高強度/高透過の特性も有することにより、高容量/高出力の二次電池に使用する場合に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施例により製造された微多孔膜の溶融破断温度を測定するためのフレームを示すものである。
【図2】本発明の一実施例により製造された微多孔膜の溶融破断温度を測定するためのフレームに、微多孔膜をテープで固定した形態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、下記の実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
[実施例]
1.分子量
ポリオレフィンの分子量及び分子量分布は、Polymer Laboratory社製高温GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した。
【0078】
2.熱的特性分析(融点、溶融熱含量、結晶化度、ガラス転移温度等)
延伸のためのシート成形物と耐熱樹脂の熱的特性は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、Mettler Toledo社製DSC−822E)で分析した。シート成形物の分析条件は、サンプル重量5mgをスキャン速度(scanning rate)10℃/minでシート成形物が完全に溶けるまで昇温し、これによりポリエチレン層の溶融ピーク(peak)を求めた。耐熱樹脂の分析条件は、サンプル重量5mgをスキャン速度(scanning rate)10℃/minで樹脂が完全に溶けるまで昇温し、試料を完全に溶融した後、10℃/minに降温して完全に凝固させてから10℃/minに再昇温してガラス転移温度、融点、吸熱溶融熱の含量を測定し、結晶化度は、下記の式を用いて計算した。
【0079】
[式1]
結晶化度(%)={(測定された吸熱溶融熱の含量)/(100%結晶の溶融熱含量)}×100
【0080】
3.気体透過度(Darcy)
気体透過度は、空隙測定器(porometer:PMI社製CFP−1500−AEL)で測定した。通常、気体透過度は、Gurley numberで表されるが、Gurley numberは、隔離膜厚の影響が補正されないため、隔離膜自体の空隙構造による相対的な透過度が分かり難い。これを解決するために、本発明では、Darcy's透過度常数を使用した。Darcy's透過度常数は、下記式から得られ、本発明では窒素を使用した。
【0081】
[式2]
C=(8FTV)/(πD(P−1))
ここで、C=Darcy透過度常数
F=流速
T=サンプル厚
V=気体の粘度(0.185for N
D=サンプル直径
P=圧力
(本発明では、100〜200psi領域でDarcy's透過度常数の平均値を使用した。)
【0082】
4.ポリエチレン層の平均孔径
ポリエチレン層の平均孔径は、多層分離膜からポリエチレン層を剥離してASTM F316−03に基づき、空隙測定器(porometer:PMI社製CFP−1500−AEL)を用いてハーフドライ法で測定した。また、孔径を測定するために、PMI社製のGalwick液(surface tension:15.9dyne/cm)を使用した。
【0083】
5.耐熱樹脂層の代表径
耐熱樹脂層の気孔の代表径は、耐熱樹脂層表面の電子燎微鏡写真から測定されたフィルム表面の見掛け面積のうち面積が大きい気孔から表面積を加算してその総面積がフィルム全体面積の50%を占めるまでの気孔径の平均を耐熱樹脂層の代表径として定義した。
【0084】
6.穿孔強度
Instron社製UTM(universal testing machine)に、直径1mm、曲率半径0.5mmのピンを装着して、温度23℃、移動速度120mm/minで隔離膜を破断する時の分離膜の強度を測定した。
【0085】
7.高温穿孔強度
120℃での穿孔強度は、穿孔強度測定に使用する装置をそのまま使用し、ピンとサンプルホルダーを温度が120℃に維持されるオーブンに装着した状態で、120mm/minで隔離膜を破断する時の隔離膜の強度とした。温度安定化のためにサンプルを3分以上放置した後に穿孔強度を測定し、温度安定化と時間的効率を考慮すると5分が好ましい。
【0086】
8.TMAを用いた横方向収縮率
隔離膜の昇温過程での横方向収縮と、溶融状態での横方向収縮を確認するために、TMA(thermo−mechanical analysis)を実施した。測定に使用された装備はMettler toledo社製TMA/SDTA840である。横方向に外部応力を印加した状態で、30℃から200℃まで5℃/minで昇温させながら横方向の長さ変化を確認した。試片の大きさは横方向に15mmであり縦方向に6mmであった。初期の試片の長さを0%とし、初期の長さに対して変化される長さの割合を百分率で表示する方式で結果を測定したため、収縮が発生するとプラス(+)%になり、隔離膜が高温で溶融されて長さが増加するとマイナス(−)%(0%以下)になる方式で結果が示された。その式は次のとおりである。
【0087】
[式3]
TMA収縮率(%)=100×(初期の長さ−各温度での試片の長さ)/初期の長さ
(TMA収縮率における(−)%収縮(0%以下)は、収縮が発生されず、印加した外部応力により試片が延伸されたことを意味し、これは印加した外部応力に比べて収縮力が小さく、分離膜の熱安定性が確保されたことを意味する。)
【0088】
9.120℃−1hr収縮率
分離膜を15cm×15cmに切断した後、縦方向と横方向に10cm間隔で表示し、紙の間に挟んで120℃に温度安定化が行われたオーブンに入れて60分間放置した後、間隔変化を測定して収縮率を算出した。収縮率は下記式を用いて算出した。
【0089】
[式4]
収縮率(%)=100×(初期の間隔−120℃放置後の間隔)/初期の間隔
【0090】
10.溶融破断温度
フィルムの溶融破断温度を測定するために、図1のような(外径:7.5cm×7.5cm、内径: 2.5cm×2.5cm)フレームに、図2のようにフィルム(5cm×5cm)をポリイミドテープで固定した後、設定された温度に維持される熱風オーブン(convection oven)で5分間放置した後、フィルムの破断有無を観察した。オーブン内で熱風が直接的に試片に加えられることを防止するために、熱風吐出口に鉄製仕切りを設置して熱風が直接試片に加えられることを防止した。5分が経ってもフィルムが破断しない最高温度を溶融破断温度と定義した。
【実施例1】
【0091】
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱層には、重量平均分子量が2.5×10であり、エチレンがコモノマーとして使用され、融点が153℃であり、結晶化度が42%であるポリプロピレンと、フィラーとして平均粒子サイズが1.5μmである炭酸カルシウム(CaCO)が使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。耐熱樹脂層のポリプロピレンとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は220℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して220℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、2層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さは680μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは140μmであった。
【0092】
前記2層のシートは、縦方向に114℃で6倍、横方向に125℃で6倍に逐次延伸を行った。延伸されたフィルムは25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は127℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して130%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して15.4%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【実施例2】
【0093】
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱樹脂層には、重量平均分子量が3.5×10であり、エチレン−プロピレンゴム(EPR)が混合し、融点が164℃であり、結晶化度が41%であるポリプロピレンと、フィラーとしてガラス転移温度が200℃であるポリアリレート(Polyarylate)が使用され、二つの成分の含量は、それぞれ60重量%、40重量%であった。耐熱樹脂層のポリプロピレンとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は250℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して250℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、3層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層/ポリエチレン層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さはそれぞれ420μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは150μmであった。
【0094】
前記3層のシートは縦方向に110℃で6.5倍、横方向に124℃で6倍に逐次延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は130℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して140%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して21.4%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【実施例3】
【0095】
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱樹脂層には、重量平均分子量が6.0×10であり、融点が231℃であり、溶融吸熱容量が40J/gであるポリメチルペンテン(poly4−methyl−1pentene)と、フィラーとして平均粒子サイズが2.5μmである炭酸カルシウムを使用し、二つの成分の含量は、それぞれ35重量%、65重量%であった。耐熱樹脂層のポリメチルペンテンとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は280℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して280℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、3層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層/ポリエチレン層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さはそれぞれ500μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは100μmであった。
【0096】
前記3層のシートは、縦方向に116℃で7倍、横方向に128℃で6倍に逐次延伸を行った。延伸されたフィルムは25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は130℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して150%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して20%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【実施例4】
【0097】
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルは、サイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱樹脂層には、重量平均分子量が2.0×10であり、塩化三フッ化エチレン(CTFE;chlorotrifluoroethylene)が共重合された融点が167℃であり、結晶化度が34.6%であるポリビニリデンフルオライド(PVdF)と、フィラーとして平均粒子サイズが0.4μmであるチタン酸バリウム(BaTiO)を使用し、二つの成分の含量は、それぞれ35重量%、65重量%であった。耐熱樹脂層のポリビニリデンフルオライドとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は230℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して230℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、2層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さは800μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは60μmであった。
【0098】
前記2層のシートは、縦方向に7倍、横方向に5.5倍に、117℃で同時延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は129℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して150%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して26.7%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【実施例5】
【0099】
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱樹脂層には、重量平均分子量が5.0×10であり、ガラス転移温度が98℃であるABS樹脂と、フィラーとして重量平均分子量が2.5×10であり、融点が163℃であるホモポリプロピレンが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ65重量%、35重量%であった。耐熱樹脂層のABS樹脂とフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は240℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して240℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、3層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層/ポリエチレン層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さはそれぞれ400μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは200μmであった。
【0100】
前記3層のシートは、縦方向に5.5倍、横方向に5.5倍に、118℃で同時延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のノルマルヘキサンを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は125℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して130%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して15.4%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【実施例6】
【0101】
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱樹脂層には、重量平均分子量が4.0×10であり、融点が225℃であり、結晶化度が35%であるポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)と、フィラーとして平均粒子サイズが0.8μmである炭酸カルシウム(CaCO)が使用され、二つの成分の含量は、それぞれ40重量%、60重量%であった。耐熱樹脂層のポリブチレンテレフタレートとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は280℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して280℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、2層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さは700μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは100μmであった。
【0102】
前記2層のシートは、縦方向に7.0倍、横方向に6.0倍に、115℃で同時延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は129℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して140%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して17.9%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【0103】
[比較例1]
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入され、T字型ダイを通して押出された後、30℃のキャスティングロールにより成形され、1層のシート(ポリエチレン層)に製造された。ポリエチレン層シートの厚さは1100μmであった。
【0104】
前記ポリエチレンシートは、縦方向に116℃で7.0倍、横方向に124℃で5倍に逐次延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は128℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して140%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して21.4%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【0105】
[比較例2]
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱樹脂層には、重量平均分子量が5.7×10であり、融点が163℃であり、結晶化度が51%であるホモポリプロピレンと、フィラーとして平均粒子サイズが1.5μmである炭酸カルシウム(CaCO)を使用し、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。耐熱樹脂層のホモポリプロピレンとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は230℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して230℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、3層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層/ポリエチレン層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さはそれぞれ400μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは150μmであった。
【0106】
前記3層のシートは、縦方向に112℃で7倍、横方向に122℃で6倍に逐次延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は130℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して150%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して26.7%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【0107】
[比較例3]
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。樹脂−フィラー層には、重量平均分子量が1.5×10であり、融点が134℃であり、結晶化度が72%である高密度ポリエチレンと、平均粒子サイズが2.5μmである炭酸カルシウム(CaCO)を使用し、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。樹脂−フィラー層の高密度ポリエチレンとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は220℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して220℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、2層のシート(ポリエチレン層/樹脂−フィラー層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さは600μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは200μmであった。
【0108】
前記2層のシートは、縦方向に110℃で6倍、横方向に127℃で5.5倍に逐次延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は126℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して130%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して15.4%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【0109】
[比較例4]
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱層には、重量平均分子量が2.5×10であり、エチレンがコモノマーとして使用され、融点が153℃であり、結晶化度が42%であるポリプロピレンと、フィラーとして平均粒子サイズが1.5μmである炭酸カルシウム(CaCO)が使用され、二つの成分の含量は、それぞれ65重量%、35重量%であった。耐熱樹脂層のポリプロピレンとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は220℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して220℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、3層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層/ポリエチレン層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さはそれぞれ370μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは100μmであった。
【0110】
前記3層のシートは、縦方向に6倍、横方向に6倍に、119℃で同時延伸を行った。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを用いてポリエチレン層の希釈剤を抽出した。熱固定は120℃で行い、延伸段階で横方向に初期幅に対して135%まで延伸し、収縮段階で延伸段階の最終幅に対して18.5%収縮した。得られた隔離膜の物性は下記表1に示した。
【0111】
[比較例5]
ポリエチレン層には、重量平均分子量が3.0×10であり、融点が135℃であるポリエチレンと、40℃の動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。前記ポリエチレンとパラフィンオイルは、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練され、混練温度は220℃であった。前記ポリエチレンはメインホッパーに投入され、希釈剤であるパラフィンオイルはサイドフィーダーを用いて押出機に投入された。耐熱層には、重量平均分子量が2.0×10であり、ガラス転移温度が150℃であるポリカーボネート(polycarbonate)と、フィラーとして平均粒子サイズが2.5μmである炭酸カルシウム(CaCO)が使用され、二つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。耐熱樹脂層のポリカーボネートとフィラーは、Φ=40mmの二軸コンパウンダーで混練/押出され、混練/押出温度は240℃であった。このように混練/押出された組成物は、ポリエチレン層を押出する押出機に装着されている多層シートを製造するために設計された多層T字型ダイに付着されているΦ=15mmの別途の押出機を通して240℃で押出され、ポリエチレン組成物とともに30℃のキャスティングロールにより成形され、2層のシート(ポリエチレン層/耐熱樹脂層)に製造された。二つの組成物の押出量を調節してポリエチレンで構成されたシートの厚さは600μm、耐熱樹脂で構成されたシートの厚さは150μmであった。
【0112】
前記2層のシートは、縦方向に5.5倍、横方向に5.5倍に、120℃で同時延伸を行った。延伸過程で耐熱樹脂層が延伸されなかったため、抽出等の後工程は実施しなかった。
【0113】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明による多層微多孔膜は、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、耐熱樹脂及びフィラーに起因する高い溶融破断温度特性を同時に有するだけでなく、湿式法で製造された分離膜の特徴である均一な微多孔及び高剛性/安全性の特徴と、乾式法で製造された大きい気孔による高強度/高透過の特性も有することにより、高容量/高出力の二次電池に使用する場合に優れた効果を奏する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上を積層したポリオレフィン系多層微多孔膜であって、
少なくとも一層は、融点が130〜140℃であるポリエチレンを90〜100重量%含むポリエチレン系多孔層であり、少なくとも他の一層は、結晶化度が10〜45%であるか結晶の溶融熱含量が20〜90J/gであり、結晶の融点が145〜250℃及びガラス転移温度が−100〜90℃である半結晶性高分子、ガラス転移温度が90〜120℃である非晶質高分子、及びこれらの混合物からなる群から選択される耐熱樹脂を含む耐熱樹脂層であるポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項2】
耐熱樹脂層は、耐熱樹脂20〜75重量%と、130℃で固相を維持する有機フィラー、無機フィラー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるフィラー25〜80重量%と、を含む請求項1に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項3】
ポリエチレン系多孔層は、平均気孔サイズが0.02〜0.1μmであり、耐熱樹脂層は、気孔の代表径が5〜100μmである請求項2に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項4】
ポリオレフィン系多層微多孔膜は、3層以上を積層したポリオレフィン系微多孔膜であって、融点が130℃以上であるポリエチレンを90〜100重量%含む層を両表面層とする請求項3に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項5】
ポリオレフィン系微多孔膜は、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy以上であり、120℃で穿孔強度が0.05N/μm以上、溶融破断温度が170℃以上である請求項1〜4の何れか一項に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項6】
ポリオレフィン系微多孔膜は、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.20N/μm以上、透過度が2.0×10−5Darcy以上であり、120℃で穿孔強度が0.06N/μm以上、溶融破断温度が180℃以上である請求項5に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項7】
ポリオレフィン系多層微多孔膜は、縦方向及び横方向の120℃で1時間当たりの収縮率が、それぞれ0〜12%であり、隔離膜厚で標準化した外部応力2.0mN/μmでTMA上の横方向の最大収縮率が0%以下である請求項6に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
(TMA収縮率(%)=100×(初期の長さ−各温度での試片の長さ)/初期の長さ)
【請求項8】
ポリオレフィン系多層微多孔膜は、縦方向及び横方向の120℃で1時間当たりの収縮率が、それぞれ0〜10%であり、隔離膜厚で標準化した外部応力1.5mN/μmでTMA上の横方向の最大収縮率が0%以下である請求項7に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
(TMA収縮率(%)=100×(初期の長さ−各温度での試片の長さ)/初期の長さ)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−522669(P2012−522669A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504570(P2012−504570)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002057
【国際公開番号】WO2010/117166
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508171000)エスケー イノベーション  シーオー., エルティーディー. (19)
【Fターム(参考)】