説明

物質固定化剤、物質固定化方法および物質固定化基体

【課題】非特異吸着の防止効果に優れた、基体上に種々の物質を固定化するための手段の提供。
【解決手段】分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤及び1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤を含む、基体上に被固定化物質を固定化するための物質固定化剤。前述の水溶性モノマー、光重合開始剤、前述の光架橋剤及び被固定化物質の混合物を基体上に塗布し、光照射することを含む物質固定化方法。前述の水溶性モノマー、光重合開始剤及び前述の光架橋剤の混合物を基体上に塗布し、光照射して前記モノマーの少なくとも一部を重合させて重合体を形成し、次いで表面の少なくとも一部に前記重合体を有する基体上に被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物を塗布し、光照射することを含む物質固定化方法。前記方法により表面に物質が固定化された基体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド、核酸、脂質等の所望の物質を基体上に固定化するための物質固定化剤、および物質固定化方法ならびにそれを用いた物質固定化基体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗体または抗原をプレート上に固定化した、免疫測定のためのイムノプレートや、核酸をチップ上に固定化したDNAチップ等が広く用いられている。基体上にタンパク質や核酸を固定化する方法の1つとして、物理吸着が挙げられる。例えばポリスチレンのような疎水性の基体と、基体上に固定化すべきタンパク質や核酸の水溶液とを接触させて放置することにより、物理吸着によってタンパク質や核酸を基体上に固定化することができる。
【0003】
しかしながら、物理吸着を用いる方法では、基体と固定化物質との結合が弱く、物質を固定化した基体の安定性が不十分であるという問題がある。また、目的のタンパク質や核酸で被覆されなかった領域への非特異吸着を防止するために、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、スキムミルク等のタンパク質(タンパク質を固定化する場合)や、サケ精子DNA等のDNA(DNAを固定化する場合)、免疫学的に反応しない抗体または抗原(抗体または抗原を固定化する場合)でブロッキングすることが行われている(特許文献1参照)。しかし、このようなブロッキングによる非特異吸着の防止効果は必ずしも満足できるものではない。
【0004】
また、基体上の官能基と、固定化すべきタンパク質や核酸の官能基とを共有結合させることにより、基体上にタンパク質や核酸を固定化することも行われている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、用いる官能基が物質の活性部位の中またはその近傍にある場合には、固定化により物質の活性が失われてしまう。また、適当な官能基が存在しない場合には、この方法により固定化することができない。更に、物理吸着の場合と同様、ブロッキングにより非特異吸着を防止することも行われるが、その防止効果は必ずしも満足できるものではない。
【0005】
一方、光反応性基を利用して物質を基板に固定化することも提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法でも、依然として非特異吸着の問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−337551号公報
【特許文献2】特開2001−337089号公報
【非特許文献1】Y. Ito and M. Nogawa, “Preparation of a protein micro−array using a photo−reactive polymer for a cell adhesion assay,” Biomaterials, 24、3021−3026 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、非特異吸着の防止効果に優れた、基体上に種々の物質を固定化するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1] 分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、および1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤を含む、基体上に被固定化物質を固定化するための物質固定化剤。
[2] 前記モノマーが両極性またはノニオン性モノマーである[1]に記載の物質固定化剤。
[3] 前記重合性基が(メタ)アクリレート基である[1]または[2]に記載の物質固定化剤。
[4] 前記モノマーが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである[1]〜[3]のいずれかに記載の物質固定化剤。
[5] 前記光反応性基が、アジド基である[1]〜[4]のいずれかに記載の物質固定化剤。
[6] 前記光架橋剤が、水溶性ジアジド化合物である[5]に記載の物質固定化剤。
[7] 前記物質が、ポリペプチド、核酸、脂質、細胞およびその構成要素からなる群から選ばれる少なくとも一種である[1]〜[6]のいずれかに記載の物質固定化剤。
[8] 分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤および被固定化物質の混合物を基体上に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質固定化方法。
[9] 分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、および1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤の混合物を基体上に塗布し、光照射して前記モノマーの少なくとも一部を重合させて重合体を形成し、次いで、
表面の少なくとも一部に前記重合体を有する基体上に、被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物を塗布し、光照射することを含む、基体上への物質固定化方法。
[10] 前記モノマーが両極性またはノニオン性モノマーである[8]または[9]に記載の物質固定化方法。
[11] 前記重合性基が(メタ)アクリレート基である[8]〜[10]のいずれかに記載の物質固定化方法。
[12] 前記モノマーが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである[8]〜[11]のいずれかに記載の物質固定化方法。
[13] 前記光反応性基が、アジド基である[8]〜[12]のいずれかに記載の物質固定化剤。
[14] 前記光架橋剤が、水溶性ジアジド化合物である[13]に記載の物質固定化方法。
[15] 前記物質が、ポリペプチド、核酸、脂質、細胞およびその構成要素からなる群から選ばれる少なくとも一種である[8]〜[14]のいずれかに記載の物質固定化方法。
[16] [8]〜[15]のいずれかに記載の方法により表面に物質が固定化された基体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非特異的吸着を抑制しつつ、基体上に所望の物質を固定化することができる。本発明の物質固定化剤を用いれば、あらかじめポリマーを合成することなく所望の物質を固定化することができるため、操作が簡便であるとともに、低コスト化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。

[物質固定化剤]
本発明の物質固定化剤は、分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー(以下、単に「水溶性モノマー」、「モノマー」ともいう)、光重合開始剤、および1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤を含む、基体上に被固定化物質を固定化するための物質固定化剤である。
【0011】
本発明の物質固定化剤は、光照射により、(1)モノマーの重合、(2)光架橋剤に含まれる光反応性基のラジカル化という2種類の反応を起こすことができる。これにより、モノマーの重合により重合体が形成されるとともに、形成された重合体と基体、重合体と被固定化物質を、それぞれ光架橋剤を介して結合させることにより、結果的に被固定化物質を基体上に固定化することができる。また、本発明の物質固定化剤に含まれるモノマーは、分子全体として電気的に中性であるため、該モノマーの重合により、電気的に中性な重合体を基体上に形成することができる。こうして形成された重合体は、基体上で非特異的吸着防止効果を発揮し得る。以上により、本発明によれば、非特異的吸着を防止しつつ基体上に所望の物質を固定化することができる。なお、基体上への物質の固定化方法の詳細は後述する。
以下、本発明の物質固定化剤に含まれるモノマー、光重合開始剤、光架橋剤について説明する。
【0012】
水溶性モノマー
本発明の物質固定化剤は、分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマーを含む。本発明において、「分子全体として電気的に中性」とは、中性付近のpH(例えばpH6〜8)の水溶液中で電離してイオンになる基を有さないか、または有していても陽イオンになるものと陰イオンになるものを有していて、モノマー1分子における電荷の合計が実質的に0になることを意味する。なお、本発明において、電荷について「実質的に」とは、電荷の合計が0になるか、または0にはならないとしても本発明の効果に悪影響を与えない程度に小さいことを意味する。
【0013】
分子全体として電気的に中性であるモノマーは、両極性またはノニオン性モノマーであることができる。ここで、両極性とは、中性付近のpH(例えばpH6〜8)の水溶液中で電離して陽イオンになる基と陰イオンになる基を有していて、モノマー1分子における電荷の合計が実質的に0になることを意味する。また、「ノニオン性」とは、中性付近のpH(pH6〜8)の水溶液中で電離してイオンになる基を実質的に有さないことを意味する。ここで「電離してイオンになる基を実質的に有さない」とは、このような基を全く含まないか、または含んでいるとしても本発明の効果に悪影響を与えない程度に微量(例えば、このような基の数が炭素数の1%以下)であることを意味する。中でも、ノニオン性モノマーは、優れた非特異吸着防止効果を有し、また、安価に製造または入手可能であるという利点を有する。
【0014】
本発明の物質固定化剤に含まれるモノマーは、水溶性である。ここで、「水溶性」とは、例えば、前記モノマーの水に対する溶解度(水100gに溶解するグラム数)が、5以上であることをいう。水に不溶なモノマーを使用すると、水やアルコール以外の非水系の溶媒を使用しなければならないが、非水系溶媒は、被固定化物質を変性させる場合がある。そこで、本発明では、被固定化物質の変性防止のために、水溶性モノマーを使用する。更に、水溶性モノマーの重合によって形成される重合体は、非特異吸着抑制効果にも優れるという利点がある。
【0015】
前記モノマーは、重合性基を有する。本発明の物質固定化剤に光を照射すると、物質固定化剤に含まれる光重合開始剤が重合性基に作用することにより、モノマーの重合が起こり、重合体が形成される。
【0016】
前記重合性基としては、例えば、二重結合や三重結合を有するもの、具体的には、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アクリル基、アクリロイル基、メタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基、スチリルアミド基を挙げることができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。前記モノマーは、1分子中に、例えば1〜3個、好ましくは1〜2個の重合性基を含むことができる。
【0017】
前記モノマーの具体例としては、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−iso−プロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、n−プロピルシアノアクリレート、iso−プロピルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、iso−ブチルシアノアクリレート、tert−ブチルシアノアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテルなどのノニオン性のビニル系モノマーを挙げることができる。なお、本発明の物質固定化剤は、2種以上のモノマー、またはモノマーの一部を重合させたプレポリマーを含むことも可能である。これらのうち、特に好ましいものはポリエチレングリコール系モノマー(ポリエチレングリコール部分を有するビニルモノマー)であり、最も好ましくはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。ポリエチレングリコール系モノマーの分子量(数平均分子量)は、例えば100〜5000、好ましくは100〜1000であることができる。
【0018】
更に、前記モノマーの好ましい例として、下記一般式[I]で表される構造を有する、ホスホリル含有両極性モノマーを挙げることができる。
【0019】
【化1】

【0020】
(ただし、一般式[I]中、Xは、重合性原子団を表わす)
【0021】
なお、上記一般式[I]で表される構造を有する単位を以下、便宜的に「単位[I]」と言うことがある。
【0022】
前記一般式[I]に含まれるホスホリルコリンは、生体膜の構成成分である。生体膜は種々の物質と接触するにもかかわらず、非特異吸着がほとんど起きない。これは、ホスホリルコリンの非特異的吸着防止効果によるものと考えられる。本発明では、前記水溶性モノマーとしてホスホリルコリン含有モノマーを用いることにより、非特異的吸着を有効に防止することができる。
【0023】
単位[I]は、ホスホリルコリン基を含む単位であり、Xは重合性原子団を表す。Xとしては、ビニル基を含有するものが好ましい。単位[I]としては、下記一般式[I']で示されるものが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
(ただし、X'は、メタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基またはスチリルアミド基を表し、R1は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(ただし1個または2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)を表す)
【0026】
このような単位の好ましい具体例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N−(2−メタクリルアミド)エチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−メタクリロイルオキシデシルシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルジオキシエチレンホスホリルコリンまたは4−スチリルオキシブチルホスホリルコリンを挙げることができる。これらの中でも2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが特に好ましい。
【0027】
単位[I]を含有するモノマーは、単位[I]のみであってもよいし、単位[I]と、本発明の効果に悪影響を与えない他の重合性モノマーとの混合物を用いることもできる。他の重合性モノマーとしては、ビニル系モノマーが好ましく、特に(メタ)アクリル酸またはその塩若しくはエステル(好ましくは低級アルキル(例えば炭素数1〜6)エステル)が好ましい。混合物または共重合体の場合、単位[I]と他の重合性モノマーとの比率は、特に限定されないが、モル比で1:0.3以下、特に1:0.1以下が好ましい。
【0028】
本発明の物質固定化剤中の前記モノマーの濃度は、0.0001〜10質量%、好ましくは0.001〜1質量%とすることができる。
【0029】
光重合開始剤
本発明の物質固定化剤は、前記水溶性モノマーとともに光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光照射、例えば紫外線照射によるエネルギーによってラジカル(活性種)を発生し、これがモノマーの重合性基に反応し重合を開始させる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤の種類によって紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等の性質が異なるため、これら性質を考慮して最適な光重合開始剤を選択することが好ましい。また、光重合開始剤の開始反応を促進させるために増感剤と呼ばれる助剤を併用することも可能である。
【0030】
本発明の物質固定化剤は、水溶性の光重合開始剤を含むことが好ましく、具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウムなどを含むことが好ましい。
【0031】
光重合開始剤の添加量としては、特に制限はないが、好ましくは前記モノマーに対して1〜20質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【0032】
光架橋剤
本発明の物質固定化剤は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤を含む。本発明において、「光反応性基」とは、光を照射することによりラジカルを生じる基を意味する。
本発明の物質固定化剤に含まれる光架橋剤は、光照射により光反応性基がラジカルを生じることにより、アミノ基やカルボキシル基、有機化合物を構成する炭素原子等と共有結合を形成することができる。これにより、本発明の物質固定化剤に光を照射することによって、基体と前記モノマーの重合体、該重合体と被固定化物質をそれぞれ光架橋剤を介して結合させることができ、結果的に、被固定化物質を基体上に固定化することができる。
【0033】
前記光架橋剤が有する光反応性基としては、アジド基(−N3)、ベンゾイル基、ジアジリン基を挙げることができる。特に、アジド基は、光を照射することにより窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカルが生じ、この窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能であるので、ほとんどの有機物と共有結合を形成し得るため好ましい。
【0034】
本発明の物質固定化剤に含まれる光架橋剤は、水溶性であることが好ましい。光架橋剤についての「水溶性」とは、0.5mM以上、好ましくは2mM以上の濃度の水溶液を与えることができることを意味する。
【0035】
前記光架橋剤は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を含む。架橋剤1分子中に含まれる光反応性基の個数は、例えば2〜4個、好ましくは2〜3個である。前記光架橋剤としては、アジド基を2個有するジアジド化合物が好ましく、特に水溶性ジアジド化合物が好ましい。本発明に用いられる光架橋剤の好ましい例として、下記一般式[II]で表されるジアジド化合物を挙げることができる。
【0036】
【化3】

【0037】
一般式[II]中、Rは単結合または任意の基を示す。−R−は、2個のフェニルアジド基を連結するための構造であるから、ジアジド化合物が必要な水溶性を有することになるものであれば特に限定されない。好ましい−R−の例として、単結合(すなわち、2個のフェニルアジド基が直接連結される)、炭素数1〜6のアルキレン基(1個または2個の炭素間不飽和結合を含んでいてもよく、1個または2個の炭素原子が酸素と二重結合してカルボニル基を構成していてもよい)(特に好ましくはメチレン基)、−O−、−SO2−、−S−S−、−S−、−R2・・・・・・3−(ただし、・・・は単結合または二重結合を示し、Yは炭素数3〜8のシクロアルキレン基、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基(1個または2個の炭素間不飽和結合を含んでいてもよく、該アルキレン基の基端の炭素原子とYとの結合が二重結合であってもよく)、1個または2個の炭素原子が酸素と二重結合してカルボニル基を構成していてもよい)を示し、シクロアルキレン基は、1個または2個以上の任意の置換基で置換されていてもよく(置換されている場合、好ましくはシクロアルキレン基を構成する炭素原子のうち、1個若しくは2個が酸素と二重結合してカルボニル基を構成し、および/若しくは1個若しくは2個の炭素数1〜6のアルキル基で置換されている)を挙げることができ、また、一般式[II]中のそれぞれのベンゼン環は、1個または2個以上の任意の置換基(好ましくはハロゲン、炭素数1〜4のアルコキシル基、スルホン酸若しくはその塩等の親水性基)で置換されていてもよい。好ましい−R−の具体例として次のものを例示することができる。−、−CH2−、−O−、−SO2−、−S−S−、−S−、−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CH=CH−CO−CH=CH−、−CH=CH−、
【0038】
【化4】

【0039】
好ましいジアジド化合物の具体例として、下記のものを例示することができる。
【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
光架橋剤の添加量としては、特に制限はないが、好ましくは前記モノマーに対して1〜20質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【0046】
本発明の物質固定化剤は、前述の光架橋剤、水溶性モノマーおよび光重合開始剤に加え、さらに溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水、水と任意の割合で混じり合う低級アルコール(好ましくはエタノール)およびこれらの混合物を用いることができる。中でも、溶媒として水を含むことが好ましい。更には、ガラス基板を使用する場合にはシランカップリング剤を、または、金基板を使用する場合にはチオール化合物などを含んでいても良い。
【0047】
本発明の物質固定化剤は、そのまま基体上へ塗布してもよい。または、本発明の物質固定化剤を、被固定化物質とともに水(または水と前述の低級アルコールを含む水系溶媒)に溶解して水溶液の状態で使用することもでき、水(または水系溶媒)中に懸濁させて水懸濁液の状態で使用することもできる。水溶液または水懸濁液中の前記モノマーの濃度(被固定化物質と混合する前の濃度)は、例えば、0.0001質量%〜10質量%、好ましくは0.001質量%〜1質量%程度とすることができる。
【0048】
本発明の物質固定化剤に含まれる光架橋剤、水溶性モノマーおよび光重合開始剤は、それ自体公知であり、公知の製造方法により製造可能であり、また、市販されているものもある。
【0049】
本発明の物質固定化剤を用いて固定化される物質(被固定化物質)は、特に限定されないが、ポリペプチド(糖タンパク質およびリポタンパク質を包含する)、核酸、脂質並びに細胞(動物細胞、植物細胞、微生物細胞等)およびその構成要素(核、ミトコンドリア等の細胞内小器官、細胞膜や単位膜等の膜等を包含する)を例示することができる。
【0050】
本発明の物質固定化剤を用いて被固定化物質を固定するために使用される基体としては、少なくともその表面が、前述の光反応性基含有光架橋剤と結合し得る物質からなるものであれば特に限定されず、マイクロプレート等で広く用いられているポリスチレンをはじめ、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートやポリプロピレン等の有機物からなるものを例示することができる。ガラス板にシランカップリング剤をコーティングしたもの等も用いることができ、特に金基板をチオール処理したものは好ましく用いられる。また、基体の形態は何ら限定されるものではなく、マイクロアレイ用基板のような板状のものや、ビーズ状、繊維状のもの等を用いることができる。さらに、板に設けられた穴や溝、例えば、マイクロプレートのウェル等も用いることができる。本発明の物質固定化剤は、これらのうち、特にマイクロアレイ用に適している。
【0051】
[物質固定化方法]
本発明は、更に、
分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤および被固定化物質の混合物を基体上に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質固定化方法(以下、「固定化方法I」という);および、
分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、および1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤の混合物を基体上に塗布し、光照射して前記モノマーの少なくとも一部を重合させて重合体を形成し、次いで、
表面の少なくとも一部に前記重合体を有する基体上に、被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物を塗布し、光照射することを含む、基体上への物質固定化方法(以下、「固定化方法II」という)
に関する。
【0052】
固定化方法I
固定化方法Iは、本発明の物質固定化剤、または先に説明した本発明の物質固定化剤の成分である水溶性モノマー、光重合開始剤、および光架橋剤と被固定化物質との混合物を基体上に塗布し、光照射する。これにより、先に説明したように、水溶性モノマーの重合および光架橋剤に含まれる光反応性基のラジカル化が起こり、基体上へ所望の物質を固定化することができる。
【0053】
物質固定化剤(またはその成分である水溶性モノマー、光重合開始剤および光架橋剤の合計量)と被固定化物質との混合比(質量比)は、特に限定されないが、通常、1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:20とすることができる。物質固定化剤(またはその成分である水溶性モノマー、光重合開始剤および光架橋剤)と被固定化物質は、そのまま混合して使用してもよく、先に説明したように、水溶液または水懸濁液の状態で使用することもできる。水溶性モノマーの濃度、水溶性モノマーに対する光重合開始剤および光架橋剤の添加量は、前述の通りである。
【0054】
前記混合物を基体上へ塗布する方法は特に限定されず、例えば、マイクロピペット等によってスポットする方法、ピン方式によるスポッティングや圧電方式によるスポッティング等の方法を用いることができる。
【0055】
固定化方法Iでは、上記方法等を用いて基体上に前記混合物を塗布した後、好ましくは該混合物の乾燥後、光照射を行う。モノマーの重合および光反応性基のラジカル化は、一段階の光照射によって行うこともでき、二段階以上の光照射によって行うこともできる。本発明では、モノマーの重合のための光照射を行った後、光反応性基のラジカル化のための光照射を行うことが好ましい。照射する光の波長および照射時間は、物質固定化剤に含まれる水溶性モノマー、光重合開始剤、光架橋剤に応じて適宜設定することができる。モノマーの重合のためには、例えば波長200〜300nmの光を照射することができ、照射時間は、例えば1〜60分間程度とすることができる。光反応性基のラジカル化のためには、例えば波長300〜400nmの光を照射することができ、照射時間は、例えば1〜15分間程度とすることができる。また、照射する光の線量は、特に限定されないが、通常、1cm2当たり1mW〜100mW程度である。
【0056】
また、本発明では、フォトマスクを介して選択的に露光を行うことも可能である。フォトマスクを使用する場合、光が照射されなかった部分では、光反応性基が基体および被固定化物質に結合しないので、洗浄すれば未反応のモノマー、光架橋剤、被固定化物質が除去される。従って、フォトマスク等を介して選択露光を行うことにより、任意のパターンで物質を固定化することができる。従って、選択露光により、マイクロアレイ等の任意の種々の形状に物質を固定化することができるので、非常に有利である。
【0057】
固定化方法II
固定化方法IIでは、まず、本発明の物質固定化剤、または、先に説明した本発明の物質固定化剤の成分である水溶性モノマー、光重合開始剤、および光架橋剤の混合物を基体上に塗布し、光照射して前記モノマーの少なくとも一部を重合させて重合体を形成し(以下、第一工程という)、次いで、表面の少なくとも一部に前記重合体を有する基体上に、被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物を塗布し、光照射する(以下、第二工程という)。この方法は、被固定化物質のスポットが、第一工程で形成された重合体上に形成されるため、最表層に露出する被固定化物質の割合が高くなり、検出感度が向上するという利点がある。
【0058】
第一工程では、本発明の物質固定化剤(またはその成分である水溶性モノマー、光重合開始剤および光架橋剤の混合物)をそのまま基体上に塗布してもよく、先に説明したように、水溶液または水懸濁液の状態で使用することもできる。水溶性モノマーの濃度、水溶性モノマーに対する光重合開始剤および光架橋剤の添加量は、前述の通りである。また、基体上への物質固定化剤の塗布方法としては、先に記載した方法等を用いることができる。
【0059】
本発明の物質固定化剤を基体上へ塗布した後、好ましくは乾燥させた後、光照射を行う。光照射の詳細については、前述の通りである。この光照射により、物質固定化剤に含まれる水溶性モノマーの少なくとも一部を重合させて重合体を形成することができる。第一工程では、光照射によって重合体を形成するとともに、光架橋剤が有する光反応性基のラジカル化により、形成された重合体を基体と結合させることが好ましい。第一工程における光照射については、前述の通りである。
【0060】
第二工程では、こうして表面の少なくとも一部に前記重合体が形成された基体上に、被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物を塗布し、光照射する。第二工程において使用する光架橋剤としては、前述の光架橋剤を用いることができる。光架橋剤と被固定化物質との混合物は、光架橋剤と被固定化物質を水(または水系溶媒)に溶解した水溶液、または水(または水系溶媒)に懸濁させた水懸濁液であることができる。混合物中の光架橋剤の濃度は、例えば、水溶性モノマーに対して1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%とすることができる。また、被固定化物質と光架橋剤との混合比(質量比)は、特に限定されないが、例えば100:0.1〜100:20、好ましくは100:1〜100:10とすることができる。前記混合物の塗布方法としては、前述の方法等を用いることができる。
【0061】
第二工程では、光反応性基のラジカル化のための光照射のみを行うことができ、または、モノマーの重合のための光照射を行い、第一工程後の未反応モノマーの重合を行った後に光反応性基のラジカル化のための光照射を行うことも可能である。第二工程における光照射の詳細は、前述の通りである。
【0062】
また、本発明では、溶液の塗布方法としてマイクロスポッティングを用いてもよい。マイクロスポッティングは、液を基体上の非常に狭い領域に塗布する手法である。この方法は、DNAチップ等の作製に常用されており、そのための装置も市販されているので、市販の装置を用いて容易に行うことができる。固定化方法IIでは、本発明の物質固定化剤(またはその成分である水溶性モノマー、光重合開始剤および光架橋剤の混合物)を基体表面全体にコーティングした後に光照射により重合体を形成し、次いで、その上に、被固定化物質と光架橋剤を含む混合物をマイクロスポッティングして光照射してもよい。さらに、本発明の物質固定化剤(またはその成分である水溶性モノマー、光重合開始剤および光架橋剤の混合物)をマイクロスポッティングした後に光照射により重合体を形成し、その上に被固定化物質と光架橋剤との混合物をマイクロスポッティングして光照射してもよい。また、固定化方法Iでも、塗布方法として、マイクロスポッティングを用いることができる。
【0063】
本発明では、固定化方法IまたはIIによって所望の物質を固定化した後、基体を洗浄して未反応モノマー等を除去することが好ましい。こうして、非特異的吸着を抑制しつつ、所望の物質が固定化された基体を得ることができる。固定化方法I、IIにおいて使用される被固定化物質および基体については、先に説明した通りである。
なお、本発明では、光反応性基により生じるラジカルを利用して結合反応を行うので、光架橋剤は、固定化すべき物質の特定の部位と結合するのではなく、ランダムな部位と結合する。従って、活性部位が結合に供されて活性を喪失する分子も出てくる可能性はあるが、活性部位に影響を与えない部位で結合する分子も多数存在するので、全体として、その影響は少ないと考えられる。本発明によれば、従来、適当な置換基が活性部位またはその近傍にあるために、共有結合で固定化することが困難であった物質であっても、全体として活性を喪失させることなく、共有結合により基体に固定化することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

[実施例1]
1. 水溶性モノマー水溶液の調製
ポリエチレングリコールメタクリレート(分子量526)を水溶性モノマーとして用いた。水に溶解し、0.0625質量%の濃度に調整した。更に、光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンを、光架橋剤として、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸ナトリウムを、それぞれ水溶性モノマーに対して5質量%加えて、物質固定化剤水溶液を得た。
【0065】
2. BSA抗原の固定化
得られた物質固定化剤水溶液(1mL)とBSA抗原0.125質量%水溶液(1mL)を混合した。得られた混合物をポリスチレン基板に0.5μLずつスポットした。乾燥後、UV照射(殺菌灯(波長253nm)7分間、次いでブラックライト(波長300〜400nm)7分間)により、BSA抗原を固定化した。
【0066】
3. BSA抗原の免疫測定
PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、抗BSA抗体(市販品:100ng/ml)と室温で20分間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体(市販品)と室温で20分間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、化学発光試薬を添加し、発光強度を測定した。
【0067】
4. 結果
測定した発光強度を下記表1に示す。尚、比較例として、物質固定化剤を使用せず、直接BSAのみをスポットしたものを下段に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例2]
ダニアレルゲンの免疫測定
水溶性モノマーとして、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量575)を使用し、0.0625質量%の水溶液を作製し、次いで光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンを、光架橋剤として、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸ナトリウムを、それぞれ水溶性モノマーに対して5質量%加えて、物質固定化剤水溶液を得た。
【0070】
得られた物質固定化剤水溶液を、アクリル基板に20μl塗布し、殺菌灯を30分間照射した。その後、ダニ抗原0.125質量%水溶液に、光架橋剤として、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸ナトリウムを抗原に対して2.5質量%加えた混合物を、0.5μlスポットし、ブラックライト7分間照射して、ダニアレルゲンを固定化した。
【0071】
PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、ダニアレルゲン抗体(市販品:250ng/ml)と室温で20分間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、HRP標識二次抗体(市販品)と室温で20分間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、化学発光試薬を添加し、発光強度を測定した。また、比較のため、物質固定化剤を用いず、ダニアレルゲンを直接スポットしたものを下段に示した。
結果を下記表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
[実施例3]
実施例2と同じ操作を行って、物質固定化剤水溶液を得た。得られた物質固定化剤水溶液を、アクリル基板に20μl塗布し、殺菌灯30分間、ブラックライト7分間照射した。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、ダニ抗原0.125質量%水溶液に、光架橋剤として、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸ナトリウムを抗原に対して2.5質量%加えた混合物を、0.5μlスポットし、ブラックライト7分間照射して、ダニアレルゲンを固定化した。
その後、実施例2と同様に処理して、免疫測定を実施した。結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の物質固定化剤および固定化方法は、抗体若しくはその抗原結合性断片または抗原を固定化した免疫測定用プレートの作製、DNAやRNAを基板上に固定化した核酸チップ、マイクロアレイ等の作製に好適に用いることができるが、これらに限定されるものではなく、例えば、細胞全体やその構成要素の固定化等にも適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、および1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤を含む、基体上に被固定化物質を固定化するための物質固定化剤。
【請求項2】
前記モノマーが両極性またはノニオン性モノマーである請求項1に記載の物質固定化剤。
【請求項3】
前記重合性基が(メタ)アクリレート基である請求項1または2に記載の物質固定化剤。
【請求項4】
前記モノマーが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
【請求項5】
前記光反応性基が、アジド基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
【請求項6】
前記光架橋剤が、水溶性ジアジド化合物である請求項5に記載の物質固定化剤。
【請求項7】
前記物質が、ポリペプチド、核酸、脂質、細胞およびその構成要素からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
【請求項8】
分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤および被固定化物質の混合物を基体上に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質固定化方法。
【請求項9】
分子全体として電気的に中性であり、重合性基を有する水溶性モノマー、光重合開始剤、および1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤の混合物を基体上に塗布し、光照射して前記モノマーの少なくとも一部を重合させて重合体を形成し、次いで、
表面の少なくとも一部に前記重合体を有する基体上に、被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物を塗布し、光照射することを含む、基体上への物質固定化方法。
【請求項10】
前記モノマーが両極性またはノニオン性モノマーである請求項8または9に記載の物質固定化方法。
【請求項11】
前記重合性基が(メタ)アクリレート基である請求項8〜10のいずれか1項に記載の物質固定化方法。
【請求項12】
前記モノマーが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである請求項8〜11のいずれか1項に記載の物質固定化方法。
【請求項13】
前記光反応性基が、アジド基である請求項8〜12のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
【請求項14】
前記光架橋剤が、水溶性ジアジド化合物である請求項13に記載の物質固定化方法。
【請求項15】
前記物質が、ポリペプチド、核酸、脂質、細胞およびその構成要素からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項8〜14のいずれか1項に記載の物質固定化方法。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか1項に記載の方法により表面に物質が固定化された基体。

【公開番号】特開2006−316010(P2006−316010A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141603(P2005−141603)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】